説明

抗ミオスタチン抗体

本発明は抗ミオスタチン抗体の同定に関し、当該抗体は高い親和性を有することを特徴とし、それはキメラ抗体、ヒト化抗体若しくは完全なヒト抗体、当該抗体の免疫複合体又はその抗原結合断片であってもよい。本発明の当該抗体は、筋肉量の増加、骨密度の上昇、又は哺乳動物における種々の障害の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医学分野、具体的には抗ミオスタチンモノクローナル抗体に関する。より具体的には、本発明は高い親和性を有する、キメラ、ヒト化若しくはヒトの抗ミオスタチン抗体、並びに哺乳類及び鳥類の様々な障害若しくは症状の治療、予防若しくは診断への、当該抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF−β)スーパーファミリーのメンバーは、胚発生及び成体の組織ホメオスタシスに関与するタンパク質である。TGF−βスーパーファミリーのメンバーは、当該タンパク質の分泌に必要な短いペプチドシグナル配列、及び成熟タンパク質となる際に、タンパク分解によって大きな前駆体タンパク質(「プロタンパク質」)のカルボキシル側部分から切除される、約105〜140アミノ酸としてのアミノ末端断片を含む共通の構造を有する。成熟型タンパク質は高度に保存されたシステイン残基を特徴とするが、その成熟型タンパク質が活性型の形態をとるときは、タンパク分解により切断を受けたプロタンパク質がジスルフィド結合によりホモ二量体を形成している(非特許文献1)。
【0003】
ミオスタチンは成長分化因子−8(GDF−8)とも呼ばれ、TGF−βスーパーファミリーのメンバーのタンパク質である。ミオスタチンは他のTGF−βファミリーと構造類似性を共有する。すなわち分泌シグナル配列として機能する疎水性アミノ末端、及びタンパク質分解にとって重要である保存されたRSRR領域を含んでなる。タンパク質の裂開により、アミノ末端側の潜伏関連のペプチド、及び生物学的に活性を有するホモ二量体を形成するカルボキシル末端側の成熟シグナリングペプチドを生じさせる。ミオスタチンは主に発生中及び成人における骨格筋において発現し、また骨格筋の負の調節因子として機能する。成体マウスにおけるミオスタチンの全身過剰発現は筋萎縮につながり(非特許文献2)、一方ミオスタチン遺伝子のノックアウトマウスでは骨格筋の肥大及び過形成につながり、その結果それらの野生型同腹仔と比較して2〜3倍の筋肉重量となり、また脂肪蓄積をもたらす(非特許文献3)。ヒトにおけるミオスタチンノックアウト突然変異は、全身的な筋肉肥大と関連することが報告されている(非特許文献4)。
【0004】
現時点では、筋肉の萎縮、又は筋ジストロフィー、虚弱、廃用性萎縮及び悪液質などの、筋肉重量及び/又は筋力の増加が必要不可欠となる障害又は症状、並びに、腎疾患、心不全又は心疾患及び肝疾患などの、筋萎縮と関連する障害の治療法が限られているのが現状である。ミオスタチンは、骨格筋の発達において負の調節因子として機能するため、かかる障害又は症状の治療的若しくは予防的介入のための、又は、かかる障害又は症状のモニタリングのための好適な標的となる。ミオスタチンは、骨格筋調節でのその直接的な役割とは別に、前脂肪細胞の脂肪細胞への分化(非特許文献5)、及び間接的ではあるがブドウ糖ホメオスタシス(非特許文献6)及び骨形成の抑制(非特許文献7及び8)などの、他の生理的プロセスに関与しうる。したがって、ミオスタチンに特異的なアンタゴニスト(例えばミオスタチン特異的抗体)は、骨密度増加が効果的な障害又は症状(例えば骨粗鬆症)、II型糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満及び骨関節炎の治療、予防又はモニタリングに有用である。
【0005】
ミオスタチンは種間にわたり高度に保存され、ヒト、マウス、げっ歯類、ニワトリ、七面鳥及びウシのミオスタチンの成熟型のアミノ酸配列は100%同一である(図2及び3を参照)。ミオスタチン突然変異が天然においてウシで生じ、二倍の筋肉を持つ表現型をもたらすことが報告されている(非特許文献9)。ミオスタチンの配列及び機能は種間で高度に保存されているため、抗ミオスタチン抗体は、ヒトのみならず、哺乳動物(家畜(例えばイヌ及びネコ)、競技用動物(例えばウマ)、食用動物(ウシ、ブタ及びヒツジ)など)、鳥類(例えばニワトリ、七面鳥、アヒル及びその他猟鳥及び家禽)においても、筋肉重量の増加、又は上記の障害若しくは症状の治療若しくは予防に対する有用なツールとして機能しうる。
【0006】
GDF−11又はBMP−11と呼ばれる成長分化因子−11は、ミオスタチンとの相同性が最も高いTGF−βスーパーファミリーのメンバーのタンパク質である。成熟型のヒトミオスタチンとGDF−11のアミノ酸配列は約90%同一であるが、GDF−11は筋肉及び脂肪組織のみならず、歯髄、脳、心臓、腎臓及び肺など、GDF−8より広範囲の組織において発現している(非特許文献10)。GDF−11ノックアウトマウスは複数の異常を表し、生後24時間以内に死亡する。特に、マウスにおける余分な肋骨対の出現、腎臓の欠失、胃、脾臓及び膵臓の異常が示されることが報告されている(非特許文献11及び12)。ヒトGDF−11は、多分化能を有する前駆細胞が個々の神経組織に分化する能力を保持する時間枠を支配することが最近解明されている(非特許文献13)。
【非特許文献1】Gray,A.及びMaston,A.Science,247:1328,1990
【非特許文献2】Zimmersら、Science,296:1486−1488,2002
【非特許文献3】McPherronら、Nature,387:83−90(1997)
【非特許文献4】Scheulkeら、New Eng.J.Med.350:2682,2004
【非特許文献5】Kimら、BBRC,281:902−906,2001
【非特許文献6】McPherron及びLee S−J.JCI 109:595,2002
【非特許文献7】Hamrick M.Mol.Cell Evol.Biol.272 388−91,2003
【非特許文献8】Hamrickら、Calcif Tissue Int.71:63,2002
【非特許文献9】McPherronら、PNAS、94:12457−61(1997)
【非特許文献10】Nakashimaら、Mech.of Development 80:185,1999
【非特許文献11】McPherronら、Nature Genetics 22:260,1999
【非特許文献12】Esquela及びLee,Dev.Biol.257:356,2003;Harmonら、Devpt.131:6163,2004
【非特許文献13】Kimら、Science 308:1927−1930,2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
他のTGF−βスーパーファミリータンパク質(特にGDF−11)と比較して選択的にミオスタチンと結合する抗ミオスタチン抗体の治療的使用に対するニーズが存在する。更に、ミオスタチンと高い親和性で結合する抗体、特にGDF−11との結合の場合よりもより高い親和性で結合する(すなわち低いK値に基づく強い親和性で結合する)抗体であって、その使用により、患者に対する投与量レベルの最小化を可能とし、その結果、かかる抗体の投与頻度を、より小さい親和性(すなわちより高いK)でミオスタチンと結合する抗体の場合よりも少なくできる、ミオスタチン特異的抗体に対するニーズが存在する。また高親和性抗体が望ましい別の理由としては、患者に対する抗体の投与ルートの選択が柔軟に行えるということが挙げられる。すなわち薬剤を静脈内に投与するよりは、例えば皮下投与する方が好ましいと患者が考えるからである。ミオスタチン生物活性アッセイにおいて低い若しくは好ましいIC50値を示すミオスタチン特異的抗体を作製して、最小限の治療的有効量により治療効果を発揮できる抗ミオスタチン抗体を得ることに対するニーズも存在する。また抗体の投与を受けている患者において生じる当該抗体に対するいかなる免疫反応も最低限に抑制できる、ミオスタチン特異的抗体の提供も望ましい。本発明はこれらのニーズを満たすと共に、更に別の関連する利点を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体若しくは純粋なヒト抗体としての抗ミオスタチンモノクローナル抗体、並びにその抗原結合部分であり、それらは、ミオスタチン又はその部分に関連する少なくとも1つのin vitro若しくはin vivoにおける生物学的活性若しくは特性をアンタゴナイズ若しくは中和する。好ましくは、本発明の抗体は、バックグランドのレベルと比較し、成熟型ミオスタチン(好ましくはヒトミオスタチン)のアミノ酸40〜64(包括的)、43〜57又は45〜59からなるペプチドと結合しないことを特徴とする。
【0009】
一実施態様では、本発明の抗体は、約40nM、30nM、25nM、20nM又は10nM以下、より好ましくは約5nM、4nM、3nM、2nM又は1nM以下のIC50を示す(in vitroミオスタチン/SBEリポーターアッセイ(実施例5)を参照)。好ましくは、本発明の抗体は、in vitroGDF−11/SBEリポーターアッセイ(本願明細書の実施例5に記載)における抗体のIC50よりも、少なくとも20%又は50%、好ましくは少なくとも約2倍、3倍又は4倍低い、in vitroミオスタチン/SBEリポーターアッセイにおけるIC50を有する。
【0010】
一実施態様では、本発明の抗体はミオスタチンとの強い結合親和性(K)を特徴とし、すなわち約4.2×10−9M又は4.0×10−9M未満、好ましくは約4.6×10−10M、4.0×10−10M又は2×10−10M未満、より好ましくは約8×10−11M、7×10−11M、5×10−12M又は1.4×10−12M未満の結合親和性を示す。あるいは、本発明の抗体は、約4.2×10−9M又は4.0×10−9M以下、好ましくは約4.6以下×10−10M、4.0×10−10M又は2×10−10M以下、より好ましくは約8×10−11M、7×10−11M、5×10−12M又は1.4×10−12M以下の、ミオスタチンとのKを示すことを特徴とする。
【0011】
他の実施態様では、本発明の抗ミオスタチン抗体は、GDF−11タンパク質と比較し、少なくとも20%、30%又は40%高い選択性でミオスタチンと結合することを特徴とする。本発明の抗体は更に、約4.2×10−9M又は4.0×10−9M未満、好ましくは約4.6×10−10M、4.0×10−10M又は2×10−10M未満、より好ましくは約5×10−12M又は1.4×10−12M未満のミオスタチンに対するK値で、GDF−11よりも選択的にミオスタチンと結合することを特徴とする。他の実施態様では、本発明の抗体は更に、in vitroミオスタチン/SBEリポーターアッセイにおいて、約40nM、20nM又は10nM以下、好ましくは約5nM、4nM、3nM、2nM又は1nM以下のIC50で、GDF−11よりも選択的にミオスタチンと結合することを特徴とする。
【0012】
他の実施態様では、本発明の抗ミオスタチンモノクローナル抗体は、配列番号74〜102、140、141及び142(図9)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)ポリペプチドを含んでなる。他の実施態様では、本発明の抗ミオスタチンモノクローナル抗体は、配列番号103〜138(図10)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)ポリペプチドを含んでなる。
【0013】
他の実施態様では、本発明の抗ミオスタチンモノクローナル抗体は、
(i)配列番号74〜102、140、141及び142からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRポリペプチド、及び、
(ii)配列番号103〜138からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVRポリペプチドを含んでなる。好適な一実施態様では、下記の表1で示す配列番号のアミノ酸配列を有するLCVRポリペプチドを含んでなる本発明の抗体は更に、下記の表1において、それらの特定のLCVRに対応する配列番号のHCVRのアミノ酸配列を有するHCVRポリペプチドを含んでなる。例えば、配列番号88のアミノ酸配列を有するLCVRポリペプチドを含んでなる本発明の抗体は、好ましくは配列番号103又は119のアミノ酸配列を有するHCVRポリペプチドを更に含んでなる。
【0014】
【表1】

【0015】
他の実施態様では、本発明のモノクローナル抗体は、当業者が利用可能な分析方法(例えば競争ELISA)に代表されるように、競合抗体との間でヒトミオスタチンとの結合を競合できるものであり、その場合、当該競合抗体は
(i)配列番号98及び138からなる群から選択される配列、並びに
(ii)配列番号74及び103からなる群から選択される配列の2つのポリペプチドを含んでなる。
【0016】
一実施態様では、本発明の抗ミオスタチン抗体は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有し、当該重鎖可変領域はCDRH1(配列番号42)、CDRH2(配列番号71)及びCDRH3(配列番号72)(図7を参照)のアミノ酸配列を有するCDR領域を含んでなり、及び/又は、当該軽鎖可変領域はCDRL1(配列番号12)CDRL2(配列番号154)及びCDRL3(配列番号37)(図6を参照)のアミノ酸配列を有するCDR領域を含んでなる。好ましくは、本発明の抗体の重鎖CDRsは、1つの抗体内に図7に示す抗体としての組み合わせを有し、また本発明の抗体の軽鎖CDRsは、1つの抗体内に図6に示す抗体として組み合わせを有する。
【0017】
本発明の抗ミオスタチンモノクローナル抗体は、ヒトの(又は実質的にヒト由来の)IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、IgE、IgM及びIgD、好ましくはIgG又はIgGからなる群から選択される重鎖定常部を更に含んでなってもよい。本発明の抗ミオスタチンモノクローナル抗体は、κ又はλ軽鎖定常領域を更に含んでなってもよい。抗体をヒトに対して治療的又は予防的に用いる場合、当該定常領域は実質的又は完全にヒト由来であるのが好ましい。抗体をヒト以外の動物又はヒト以外の動物の卵子に対して、治療的又は予防的に用いる場合、当該定常部は実質的にその抗体を治療目的で使用しようとする動物に由来するのが好ましい。(例えばClarksonら、Mol.Imm.30:1195−1204,1993、米国特許出願第2002/01651350号、及びGenbank登録番号X69797、U03778、X16701、X07174、AB016711を参照)。
【0018】
様々な形態の当該抗体が、本発明に包含される。例えば、本発明に係る抗ミオスタチンモノクローナル抗体には、完全抗体(すなわち全長で、完全なFc領域を有する)、実質的な完全抗体、その抗原結合部分(例えばFab、Fab’、F(ab’))、若しくは単鎖Fv断片を含んでなるか、又はそれらのみからなってもよい。かかるすべての形態の抗体が、本発明の用語「抗体」に包含されるものと理解される。更に本発明の抗体は、検出可能なラベルで標識してもよく、固相に固定してもよく、及び/又は異種化合物(例えば酵素又はポリエチレングリコール分子)とコンジュゲートさせてもよい。更に本発明の抗体は、それらのグリコシル化パターンが異なる場合も、モノクローナル由来であると解される。
【0019】
別の態様では、本発明は本発明の抗ミオスタチンモノクローナル抗体を含んでなる医薬組成物の提供に関する。本発明の当該医薬組成物は、薬理学的に許容できる担体を更に含んでなってもよい。当該医薬組成物では、本発明の抗ミオスタチンモノクローナル抗体は有効成分として機能する。好ましくは、当該医薬組成物は本発明の抗ミオスタチンモノクローナル抗体を均一に若しくは実質的に均一に含んでなる。当該組成物の治療的な使用は無菌状態で行い、凍結乾燥してもよく、また任意に適当な希釈剤を添加してもよい。
【0020】
本発明は、ミオスタチンに関する少なくとも1つの生物学的活性を、その阻害を必要とする動物、好ましくは哺乳類又は鳥類、より好ましくはヒトにおいて阻害する方法の提供に関し、当該方法は、治療的有効量、又は予防的有効量、又はミオスタチンの中和若しくはミオスタチンの阻害に有効な量の本発明の抗ミオスタチンモノクローナル抗体を、前記哺乳類又は鳥類に投与することを含んでなる。本発明は更に、筋肉重量を強化する方法、又はミオスタチンの生理学的活性を中和若しくはアンタゴナイズすることにより改善される疾患、障害若しくは症状を治療若しくは予防する方法の提供に関し、当該方法は、かかる治療若しくは予防を必要とする患者(例えばヒト)に対して治療的若しくは予防的有効量の本発明のモノクローナル抗体を投与することを含んでなる。
【0021】
本発明は、哺乳動物、好ましくはヒトに投与する薬剤の製造用の、本発明の抗ミオスタチンモノクローナル抗体の提供に関し、当該薬剤は、哺乳動物、好ましくはヒトにおける、例えば虚弱、悪液質、老化関連サルコペニア、筋肉疲労、筋疾患、筋ジストロフィー、骨粗鬆症、肥満、COPD、腎臓不全又は疾患、肝不全又は疾患、心不全又は疾患、メタボリックシンドローム及びII型糖尿病などの処置に用いられ、当該処置は、それを必要とする前記哺乳動物に対して、治療的有効量若しくは予防的有効量の本発明の抗ミオスタチンモノクローナル抗体を投与することによりなされる。
【0022】
本発明は、包装材料、及び当該包装材料に内包される本発明の抗体を含んでなる製品の提供に関し、当該包装材料は、当該抗体がミオスタチン活性を特異的に中和するか、又はミオスタチンレベルを減少させることを示す添付文書を含んでなる。
【0023】
本発明は更に、本発明の抗体をコードする単離された核酸、当該核酸を含んでなる1つ以上のベクター(任意に、当該ベクターで形質転換された宿主細胞により認識される制御配列と当該核酸が使用可能な状態で連結してもよい)、当該ベクターを含んでなる宿主細胞、並びに、当該核酸が発現する態様で宿主細胞を培養すること、及び任意に宿主細胞培養液から当該抗体を回収することを含んでなる本発明の抗体の製造方法の提供に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、in vitro及び/又はin vivoで、少なくとも1つのミオスタチン活性を中和若しくはアンタゴナイズできる、キメラ抗体、ヒト化抗体若しくは完全なヒト抗体としての抗ミオスタチンモノクローナル抗体、又はその抗原結合部分の提供に関し、それらは更に、in vitroミオスタチン/SBEリポーターアッセイにおいて約40nM、20nM又は10nM未満、好ましくは5nM、4nM、3nM、2nM又は1nM未満のIC50を示し、及び/又は好ましくはミオスタチンとの強い結合親和性を示すことを特徴とする。本発明の抗体は更に、それらが優先してミオスタチンの最も近縁のホモログ(GDF−11)よりも少なくとも20%選択的にミオスタチンと結合することを特徴とする。
【0025】
定義本発明では、用語「成熟型ミオスタチン」(ヒト、マウス、ラット、ニワトリ、七面鳥、イヌ、ウマ及びブタなどの種に関する配列番号2を参照)とは、ミオスタチンの375アミノ酸によるプロタンパク質の形におけるArg266の位置でのタンパク質切断の後で得られるタンパク質の単量体若しくはホモ二量体形のことを指す。本発明では、用語「ミオスタチン」とは成熟型ミオスタチンのことを指す。本発明では、用語「プロミオスタチン」又は「プロプロテイン形態のミオスタチン」とは、ヒトタンパク質に関して用いる場合、モノマー又はホモ二量体の形態としての、配列番号1に示す配列を含んでなるタンパク質のことを指す。
【0026】
天然に存在する全長抗体は、相互にジスルフィド結合で結合した4つのペプチド鎖、すなわち2つの重(H)鎖(全長約50〜70kDa)、及び2つの軽(L)鎖(全長約25kDa)を含んでなる免疫グロブリン分子である。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担う約100〜110アミノ酸又はそれ以上からなる可変領域を含む。各鎖のカルボキシル末端部分は、エフェクター機能を主に担う定常領域を構成する。
【0027】
軽鎖はκ又はλに分類され、当業者に公知の定常領域を有することを特徴とする。重鎖はγ、μ、α、δ又はεに分類され、それらにより各々の抗体アイソタイプがIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEとして決定され、これらの幾つかはサブクラス(アイソタイプ)(例えばIgG、IgG、IgG、IgG、IgA及びIgA)に更に分類されうる。重鎖の各タイプは公知の定常領域を有することを特徴とする。各種類の抗体のサブユニット構造及び三次元構成は公知である。各重鎖は重鎖可変領域(本発明における「HCVR」)及び重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、IgG、IgD及びIgAでは3つのドメイン(CH1、CH2及びCH3)からなり、IgM及びIgEでは4つのドメイン(CH1、CH2、CH3及びCH4)からなる。各軽鎖は軽鎖可変領域(本発明における「LCVR」)及び軽鎖定常領域からなる。HCVR及びLCVR領域は、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に更に再分割でき、それはフレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域中に散在している。各HCVR及びLCVRは、3つのCDRs及び4つのFRs(アミノ末端からカルボキシル末端に向かってFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配列)からなる。本発明では、重鎖中の3つのCDRsを「CDRH1、CDRH2及びCDRH3」と称し、軽鎖中の3つのCDRsを「CDRL1、CDRL2及びCDRL3」と称する。CDRs中の大部分の残基が、抗原と特異的な相互作用を形成する。CDR3は通常、抗体結合部位における分子多様性をもたらす最大の源泉として機能する。各領域に対するアミノ酸の割当ては、公知の慣例(Kabat,“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))、又はChothia付番方式(Al−Lazikaniら、J.Mol.Biol.273:927−948,1997、またインターネットサイトhttp:www.rubic.rdg.ac.uk/〜andrew/bioinf.org/abs.を参照)に従い行う。抗体が特定の抗原と結合する機能は、6つのCDRによって総合的に決定される。
【0028】
本発明で用いる、本発明の抗ミオスタチンモノクローナル抗体を指す場合の用語「抗体」(又は単に、「本発明のモノクローナル抗体」)とは、いわゆるモノクローナル抗体のことを指す。本発明では特に明記しない限り、「モノクローナル抗体」とは、本発明ではキメラ抗体、ヒト化抗体又は完全なヒト抗体のことを指す。好ましくは、本発明のモノクローナル抗体は均一な又は実質的に均一な種類の集合物として存在する。本発明のモノクローナル抗体は、例えば当該技術分野で公知のハイブリドーマ技術、並びに組換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術若しくはかかる技術の組合せ、当該技術分野で公知の他の技術を使用して作製できる。「モノクローナル抗体」とは、例えば単一の真核生物、原核生物又はファージクローンなどのコピー若しくはクローンに由来する抗体を指すが、それを作製する方法を指すものではない。「モノクローナル抗体」は、天然の抗体(完全又は全長)、実質的に天然の抗体、又は抗原結合部分(例えばキメラ抗体、ヒト化抗体若しくはヒト抗体のFab断片、Fab’断片、F(ab’)断片などの抗体の一部若しくは断片であってもよい。
【0029】
各軽/重鎖対の可変領域は抗体の抗原結合部位を形成する。すなわち、完全なIgG抗体は2つの結合部位を有する。二官能性若しくは二特異的な抗体を除き、2つの結合部位は同じである。本発明の「抗原結合部分」又は「抗原結合領域」又は「抗原結合ドメイン」とは、抗原と相互作用し、かつ抗原に対する親和性及びその特異性を抗体に付与するアミノ酸残基を含む抗体分子中の部分のことを同義的に指す。この抗体部分は抗原結合残基の適当な立体構造を維持するために必要な「フレームワーク」アミノ酸残基を含む。好ましくは、本発明の抗体中の抗原結合領域のCDRsはげっ歯類由来であるか、又は特定の活性を高めるために特定のアミノ酸残基を改変された実質的にげっ歯類由来のものである(例えば図6及び7を参照)。好ましくは、本発明の抗体のフレームワーク領域はヒト由来であるか、又は実質的にヒト由来(少なくとも95%、97%又は99%ヒト由来、例えば図9及び10を参照)である。他の実施態様では、当該抗原結合領域又は抗原結合領域のCDRsはヒト以外の他の種に由来してもよく、ウサギ、ラット又はハムスターなどが例示されるがこれに限られない。他の実施態様では、当該抗原結合領域は完全にヒト由来であるか、又は実質的に特定の活性(例えば親和性又は特異性)を高めるために特定のアミノ酸残基を改変したヒト由来のものであってもよい(例えば、図6及び7の太字及び下線で示すアミノ酸部分を参照)。
【0030】
更に、本発明の用語「モノクローナル抗体」は、リンカー配列を有するLCVR及びHCVRをコードするDNAを連結することによって調製できる単鎖Fv断片であってもよい(Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp269−315,1994を参照)。断片が特定されるか否かに拘わらず、本発明の用語「抗体」とは、かかる断片及び部分、並びに単さの形態のものを包含すると解される。当該タンパク質がその標的(すなわちエピトープ又は抗原)と特異的若しくは選択的に結合する能力を保持している限り、それらは用語「抗体」の範疇に包含される。
【0031】
「モノクローナル抗体の集合物」とは、均一又は実質的に均一な(すなわち、集合物内の少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、好ましくは少なくとも約97%若しくは98%、又は最も好ましくは少なくとも99%の抗体が、同じ抗原又はエピトープに関してELISAアッセイにおいて競合する)抗体の集合体のことを指す。抗体はグリコシル化されていてもされなくてもよく、いずれの場合も本発明の範囲に包含される。それらが異なる翻訳後修飾(例えばグリコシル化パターン)を受ける場合であっても、それらが同一のアミノ酸配列を有する場合には、モノクローナル抗体は均一であるといえる。
【0032】
本発明の「変異型」抗ミオスタチン抗体とは、「親」抗体配列における1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失及び/又は置換によって、抗ミオスタチン親抗体のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有する分子のことを指す。好ましい一実施態様では、当該変異型抗体は、親抗体の1つ以上のCDR領域上に1つ以上のアミノ酸置換を有する。例えば、当該変異型抗体は少なくとも1つ(例えば約1〜約10個、好ましくは約2〜約5個)の置換を親抗体中の1つ以上のCDR領域に有してもよい。変異型配列に関する同一性又は相同性は、本願明細書においては、変異型配列中に含まれる、親抗体のアミノ酸残基と同一のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義し、具体的には配列同士のアラインメントを形成し、必要に応じてギャップを導入した後で、配列同一性の最大値(%)として算出する。N末端、C末端、又は抗体配列の中間領域の伸長、欠失又は挿入のいかなるものも、配列同一性又は相同性に影響を及ぼすものと解釈すべきでない。当該変異型はミオスタチンとの結合能力を保持し、好ましくは親抗体より優れた当該特性を有する。例えば、変異型抗体では、強化された結合親和性、SBE/リポーターアッセイにおけるより低いIC50、又は強化されたミオスタチン生物活性阻害能を有する場合もある。本発明にとり特に好適な変異型抗体は、親抗体と比較して少なくとも約5倍、好ましくは少なくとも10倍及び更に好ましくは少なくとも20、30又は50倍強化された生物学的活性を示す。
【0033】
本発明の「親」抗体とは、変異型抗体の作成に使用するアミノ酸配列によってコードされるものである。親抗体は、げっ歯類のフレームワークを有してもよいが、好ましくはヒトのフレームワーク領域を有する。親抗体はげっ歯類由来の抗体(例えば本発明の図xを参照)、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体であってもよい。
【0034】
本発明の用語「特異的に結合」とは、従来技術において公知の技術(例えば競争的ELISA、BIACORE解析又はKINEXA解析)で測定した場合に、ある特定の結合対の1つの構成要素が、その特異的な1つ以上の結合パートナー以外の分子とは顕著に結合しない状況のことを指す。この用語は、例えば本発明の抗体の抗原結合ドメインが、多数の抗原に担持される特定のエピトープに特異的である場合にも適用でき、その場合、当該抗原結合ドメインを担持する特異的抗体は、当該エピトープを担持する種々の抗原と結合できる。したがって、本発明のモノクローナル抗体は特異的にGDF−8及びGDF−11と結合する。
【0035】
本発明の用語「選択的に結合」とは、従来技術において公知の技術(例えば競争ELISA、又はBIACORE若しくはKINEXA解析によるK測定)で測定した場合に、抗体が、異なる抗原との結合と比較し、少なくとも約20%超の程度で特異的な抗原と結合する状況のことを指す。したがって、本発明のモノクローナル抗体はGDF−11よりもGDF−8と選択的に結合する。同様に、抗体は、抗原中に存在するある1つのエピトープと、同じ抗原中に存在する異なるエピトープよりも選択的に結合してもよい。
【0036】
用語「エピトープ」とは、抗体中の1つ以上の抗原結合領域を介して抗体により認識され、それと結合できる分子の部分のことを指す。エピトープは多くの場合アミノ酸又は糖側鎖などの、化学的に活性な表面分子団からなり、特異的な三次元構造及び特異的な荷電を有することを特徴とする。「阻害エピトープ」及び/又は「中和エピトープ」とは、完全な分子(本発明ではミオスタチン)中に存在し、かつ抗体と結合することにより当該分子若しくは当該分子を含む生物体の生物学的活性をin vivo、in vitro又はin situで損失又は減少させるエピトープのことを意味する。
【0037】
本発明の用語「エピトープ」とは、動物、好ましくは哺乳動物(例えばマウス又はヒト)において抗原性及び/又は免疫原性を有する、ポリペプチドの部分を指す。本発明の用語「抗原エピトープ」は、当該技術分野において周知の方法(例えば公知イムノアッセイ)で測定した場合において、抗体が特異的に結合できるポリペプチドの部分と定義される。抗原エピトープは必ずしも免疫原性を有するわけではないが、免疫原性を有してもよい。本発明の用語「免疫原性エピトープ」とは、動物の抗原抗体反応を誘発するポリペプチド部分として定義され、公知技術のいかなる方法によって決定してもよい(Geysenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998−4002(1983)を参照)。
【0038】
本発明の抗体に関する用語「生物学的特性」、「生理活性」若しくは「活性」、又は「生物学的活性」は本発明では交換可能に用いられ、例えばエピトープ/抗原の親和性及び特異性、in vivo又はin vitroにおけるミオスタチンの活性中和若しくはアンタゴナイズする能力、ミオスタチン/SBEリポーターアッセイ又は他のin vitro活性分析により得られるIC50、抗体のin vivo安定性及び抗体の免疫原性などが例示されるがこれらに限定されない。抗体が有する他の同定可能な生物学的特性としては、例えば交差反応性(すなわち、標的ペプチドの非ヒトホモログ、又は通常は他のタンパク質又は組織との交差反応性)、及び哺乳動物細胞におけるタンパク質の高発現レベルを維持させる能力が挙げられる。上記の特性又は特徴は当該技術分野において公知の技術を使用して観察、測定又は評価でき、例えばELISA、競合ELISA、表面プラスモン共鳴分析、無制限(without limit)in vitro及びin vivo中和アッセイ、レセプター結合、サイトカイン又は成長因子の産生及び/又は分泌、ツメガエル属のアニマルキャップの発生、シグナル伝達及びヒト、霊長類、又は必要に応じて他のいかなるソースを含む様々なソースからの組織切片による免疫組織化学などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0039】
本発明の「ミオスタチン活性」という用語は、活性型ミオスタチンタンパク質に関連する1つ以上の生理的な成長調節活性若しくは形態形成活性のことを指す。例えば、活性型ミオスタチンは骨格筋重量の負の調節物質である。活性型ミオスタチンはまた筋肉特異的な酵素(例えばクレアチンキナーゼ)の産生の調節、筋芽細胞増殖の刺激、前脂肪細胞の脂肪細胞への分化の調節をすることができる。
【0040】
本発明の抗体の活性に関する本発明の用語「阻害する」又は「中和する」とは、対象となる生物学的活性若しくは特異性、又は疾患若しくは症状など(それらに限定されない)の進行若しくは重症度を実質的にアンタゴナイズ、防止、予防、抑制、減速、中断、除去、停止、又は逆転させる能力のことを指す。当該抑制又は中和の程度は、好ましくは少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又はそれ以上である。
【0041】
核酸又はタンパク質(例えば抗体)に関する本発明の用語「単離された」とは、同定された後、それが含まれている天然給源中に存在する関連する少なくとも1つの共存物質から分離された核酸配列又はタンパク質のことを指す。好ましくは、「単離された抗体」とは、異なる抗原性特性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体である(例えば、本発明の医薬組成物は、特にミオスタチンと特異的に結合する単離された抗体からなり、ミオスタチン以外の抗原と結合する抗体を実質的に含まない)。
【0042】
用語「Kabatナンバリング」及び「Kabatラベリング」は、本発明では同義的に使用される。当該技術分野において公知のこれらの用語は、抗体の重鎖及び軽鎖可変領域において、他のアミノ酸残基よりも可変的である(すなわち超可変的な)アミノ酸残基に付番するシステムを指す(Kabatら、Ann.NY Acad.Sci.190:382−93、1971)、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242、1991)。
【0043】
あるポリヌクレオチドが他のポリヌクレオチドと機能的な関係に置かれるとき、当該ポリヌクレオチドは「制御可能に連結される」という。例えば、プロモータ又はエンハンサーが配列の転写に影響を及ぼす場合に、それらはコード配列に制御可能に連結しているといえる。ペプチドの場合、それらをコードするポリヌクレオチドが他のペプチドをコードするそれと制御可能に連結している(好ましくはそれらが同じオープンリーディングフレームにある)とき、「制御可能に連結している」という。
【0044】
本発明で交換可能に用いられる「個人」、「被験者」及び「患者」とは、動物、好ましくは哺乳動物(非霊長類及び霊長類を含む)、又は鳥類のことを指し、例えばげっ歯類、サル、ヒト、哺乳類の家畜(例えばウシ、ブタ、ヒツジ)、哺乳類の競技用動物(例えばウマ)及び哺乳類のペット(例えばイヌ及びネコ)などが挙げられるがこれらに限定されず、好ましくはヒトのことを指す。当該用語は鳥類を指すこともあり、ニワトリ及び七面鳥が包含されるがこれらに限定されない。具体的な実施態様では、当該患者(好ましくは哺乳類(好ましくはヒト))は更に、ミオスタチンの濃度減少若しくは生物活性の減少により利益を受ける疾患、障害若しくは症状を有することを特徴とする。他の実施態様では、当該患者(好ましくは哺乳類(好ましくはヒト))は更に、ミオスタチンの濃度減少若しくは生物活性の減少により利益を受ける疾患、障害若しくは症状に罹患する危険性を有することを特徴とする。
【0045】
用語「ベクター」には、プラスミド及びウィルスベクターなどの連結する他の核酸を輸送できる核酸分子が挙げられるが、それらに限定されない。ある種のベクターは、それらが導入された宿主細胞内で自律増殖が可能であり、また他の種類のベクターは、宿主細胞に導入された後に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それにより宿主ゲノムと共に複製される。更に、ある種のベクターは、制御可能に連結されている遺伝子の発現を制御することが可能である。かかるベクターは本発明において「組換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)と称され、かつ典型的なベクターは当該技術分野において周知である。
【0046】
本発明における「細胞」、「宿主細胞」、「細胞株」及び「培養細胞」は交換可能に用いられ、それは個々の細胞又は培養細胞のいずれであってもよく、本発明のいかなる単離されたポリヌクレオチド、又は本発明のHCVR、LCVR又はモノクローナル抗体をコードする配列を含んでなるいかなる1つ以上の組換えベクターを受容する細胞のことを特に指す。当該宿主細胞には単一の宿主細胞の子孫が包含され、当該子孫は天然の、偶発的な、又は人工的な突然変異及び/又は変化を有してもよく、元の親細胞と必ずしも完全に(形態学的に、又は全DNAの相補性において)同一でなくてもよい。当該宿主細胞には、本発明のモノクローナル抗体又はその軽鎖若しくは重鎖を発現する組換えベクター又はポリヌクレオチドによってin vivo、in situ、又はin vitroで形質転換、形質導入又は感染させた細胞が包含される。本発明の組換えベクター(宿主染色体に安定して組み込まれてもよく、組み込まれなくともよい)を含んでなる宿主細胞は「組換え宿主細胞」とも呼ばれる。本発明で使用される好ましい宿主細胞は、CHO細胞(例えばATCC:CRL−9096)、NS0細胞、SP2/0細胞及びCOS細胞(例えばATCC:CRL−1650、CRL−1651)、HeLa細胞(ATCC:CCL−2)である。本発明に用いられる更なる宿主細胞としては、植物細胞、酵母細胞及び他の哺乳動物細胞及び原核細胞が挙げられる。
【0047】
抗体の特徴
本発明はミオスタチンと高い親和性で特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体に関する。本発明の抗体は好ましくはキメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体又はそれらの抗原結合部分である。更に、本発明の抗体は、in vivo、in vitro、又はin situでミオスタチンの生物学的活性を中和若しくはアンタゴナイズする。本発明の抗ミオスタチンモノクローナル抗体は、ミオスタチンに対して特異的な結合する性質を有するため、ミオスタチンに関連する症状、疾患又は障害(すなわちミオスタチン濃度の低下、又はミオスタチン生物学的活性のアンタゴナイズ若しくは阻害により利益をうける症状、疾患又は障害)の治療薬若しくは予防薬として機能しうる。
【0048】
本発明の好ましい一実施態様は、約4.2×10−9M又は4.0×10−9M未満、好ましくは約4.6×10−10M、4.0×10−10M又は2×10−10M未満、より好ましくは約8×10−11M、7×10−11M、5×10−12M又は1.4×10−12M未満のミオスタチンとの結合親和性(K)でミオスタチン又はその部分と結合する抗ミオスタチンモノクローナル抗体の提供に関する。あるいは本発明の抗体は、約4.2×10−9M又は4.0×10−9M以下、好ましくは約4.6×10−10M、4.0×10−10M又は2×10−10M以下、より好ましくは約8×10−11M、7×10−11M、5×10−12M又は1.4×10−12M以下のミオスタチンとのK値を有することを特徴とする。抗体の親和性は、以下の実施例にて説明する方法により測定できる。
【0049】
好ましくは、本願明細書において記載するような強い結合親和性を特徴とする本発明のかかる抗体はまた、in vitroミオスタチン/SBEリポーターアッセイにおいて、40nM、30nM、25nM、20nM又は10nM未満、好ましくは、約5nM以下、4nM、3nM、2nM又は1nMのIC50値を示す。好ましくは、本願明細書において記載するような強い結合親和性を特徴とする本発明のかかる抗体は、in vitro GDF−11/SBEリポーターアッセイにおけるIC50値と比較して少なくとも20%低い、より好ましくは少なくとも約2倍、3倍又は4倍低いin vitroミオスタチン/SBEリポーターアッセイにおける抗体のIC50値を示す(本願明細書の実施例5を参照)。好ましくは、本願明細書において記載するような強い結合親和性を特徴とする本発明のかかる抗体は更に、従来技術(例えば競争的ELISA)によって測定した場合にGDF−11よりもGDF−8と少なくとも20%選択的に反応するか、又はBIACORE若しくはKINEXA分析技術で測定した場合にGDF−11よりもGDF−8と少なくとも20%高い抗体親和性(すなわち低いK値)を示すことを特徴とする。好ましくは、本願明細書において記載するような強い結合親和性を特徴とする本発明のかかる抗体は更に、それらが成熟型ミオスタチン(好ましくはヒトミオスタチン)のアミノ酸40〜64(包括的)、43〜57又は45〜59からなるペプチドと結合しないことを特徴とする。
【0050】
本発明の他の好ましい実施態様では、in vitroミオスタチン/SBEリポーターアッセイで測定した場合に、約40nM、30nM、25nM、20nM又は10nM以下、好ましくは、約5nM、4nM、3nM、2nM又は1nM以下のIC50値を示す抗ミオスタチンモノクローナル抗体の提供に関する。更に好ましくは、in vitroミオスタチン/SBEリポーターアッセイで測定した場合の抗ミオスタチンモノクローナル抗体のIC50は、in vitroGDF−11/SBEリポーターアッセイで測定した場合の抗体のIC50より少なくとも約2倍、3倍又は4倍低い(本願明細書の実施例5を参照)。上記のIC50を有する本発明の抗体は、約4.2×10−9M又は4.0×10−9M未満、好ましくは約4.6×10−10M、4.0×10−10M又は2×10−10M未満、より好ましくは約8×10−11M、7×10−11M、5×10−12M又は1.4×10−12M未満のミオスタチンとのK値によって、あるいは、約4.2×10−9M又は4.0×10−9M以下、好ましくは約4.6×10−10M、4.0×10−10M又は2×10−10M以下、より好ましくは約8×10−11M、7×10−11M、5×10−12M又は1.4×10−12M以下のミオスタチンとのK値によって更に特徴づけられてもよく、この場合、ミオスタチンとのKは、抗体とGDF−11との場合より少なくとも約20%低い。上記のIC50を有する本発明の抗体は更に、公知の分析方法(例えばELISA分析又は競争的ELISA分析、又は例えばBIACORE若しくはKINEXA分析で測定したK値)を用いてGDF−11とのそれら結合能力を比較した場合、ミオスタチンと少なくとも約20%、好ましくは少なくとも2倍、3倍又は4倍選択的に結合することを特徴としてもよい。上記のIC50を有する本発明の抗体は更に、例えばELISAアッセイによるバックグラウンドの数値よりも顕著に高いレベルで、成熟型ミオスタチン(好ましくはヒトミオスタチン)のアミノ酸40〜64(包括的)、43〜57又は45〜59からなるペプチドと結合しないことを特徴としてもよい。
【0051】
好ましくは、本発明の抗体との選択的結合に関して試験されるミオスタチン及びGDF−11ポリペプチドは、好ましくは哺乳類の又は鳥類由来、より好ましくはヒト由来の成熟タンパク質のホモ二量体の形態である。
【0052】
しかしながら、本発明の抗体との選択的結合に関して試験されるミオスタチン及びGDF−11ポリペプチドは、成熟タンパク質又はプロタンパク質の単量体の形態であってもよい。
【0053】
モノクローナル抗体は、従来技術において公知のハイブリドーマ法(例えばKohlerら、Nature,256:495,1975)を使用して作製してもよく、又は組み換えDNA法(例えば米国特許第4816567号)によって作製してもよい。一般的にハイブリドーマは、適切な不死細胞系(例えばSP2/0のような骨髄腫細胞系)を、免疫化動物の抗体産生細胞と融合することによって作製できる。抗体産生細胞、好ましくは脾臓又はリンパ節の抗体産生細胞は、目的の抗原で免疫した動物から得られる。融合細胞(ハイブリドーマ)は、選択的な培養条件を使用して単離でき、限界希釈によってクローニングできる。ハイブリドーマ細胞を増殖させる培地を採取し、抗原と反応するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞が産生するモノクローナル抗体の結合特性を、免疫沈降法、又はin vitro結合試験(例えば標識免疫検定法(RIA)又はELISA)で測定する。所望の結合特性を有する抗体を産生する細胞は、適切なスクリーニングアッセイによって選抜できる。かかる単離及びスクリーニング方法は当該技術分野において周知である。
【0054】
本発明の抗体を産生又は単離に他の適切な方法を使用してもよく、例えばライブラリから組換え抗体(例えば単鎖Fv又はFab)を選択する方法や、又はヒト抗体のレパートリーを生成できる形質転換動物(例えばマウス)を免疫することに基づく方法が挙げられる(例えばJakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551−2555,1993、Jakobovitsら、Nature,362:255−258,1993、Lonbergら、米国特許第5545806号明細書、Suraniら、米国特許第5545807号明細書を参照)。
【0055】
様々な種に由来する部分を含む、単鎖抗体、キメラ抗体、ヒト化又は霊長類化(CDR移植)抗体、並びにキメラ又はCDR移植された単鎖抗体等は、本発明及び用語「抗体」に包含される。これらの抗体の種々の部分は、従来技術によって化学的、合成的にさせることが可能であり、又は遺伝子工学技術を使用して隣接タンパク質として調製することも可能である。例えば、キメラ又はヒト化鎖をコードする核酸を発現させて当該隣接タンパク質を調製することも可能である。例えば、米国特許第4816567号明細書、欧州特許第0125023号明細書、米国特許第4816397号明細書、欧州特許第0120694号明細書、国際公開第86/01533号パンフレット、欧州特許第0194276号明細書、米国特許第5225539号明細書、欧州特許第0239400号明細書、並びに米国特許第5585089及び5698762号明細書を参照。また霊長類化抗体に関しては、Newman,R.ら、BioTechnology,10:1455−1460,1993;Ladnerら、米国特許第4946778号明細書及びBird,R.E.ら、Science,242:423−426,1988を参照。
【0056】
更に、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体又は単鎖抗体の抗原結合部分を含む抗体の機能性部分を作製してもよい。上記の抗体の機能性断片は、それらが由来する全長抗体の少なくとも1つの結合能及び/又は生物学的機能を保持する。好ましい機能性断片は、対応する全長抗体の抗原結合機能(例えば哺乳動物の成熟型ミオスタチンに結合する能力)を保持する。特に好ましい機能性部分若しくは断片は、結合活性、シグナル伝達活性及び/又は細胞応答の刺激などの、哺乳動物の成熟ミオスタチンの1つ以上の機能又は生物活性特性を阻害する能力を保持する。例えば、一実施態様では、当該機能性部分若しくは断片は、1つ以上のそのリガンドと成熟ミオスタチンとの相互作用を阻害でき、かつ/又は1つ以上のレセプター媒介性の機能を阻害できる。
【0057】
本発明に係る哺乳動物成熟ミオスタチン又はその一部に結合できる抗体部分若しくは断片には、Fv、Fab、Fab’、及びF(ab’)断片が包含されるが、それらに限定されない。かかる断片は酵素的な切断又は組換え技術によって調製できる。例えば、パパイン又はペプシン処理によりそれぞれFab又はF(ab’)断片を調製できる。最も小さい抗原結合断片はFvであり、それはHCVR及びLCVR領域からなる。FabフラグメントはHCVR−CH1とLCVR−CL領域からなり、定常部の間でジスルフィド結合による共有結合を形成して連結されている。宿主細胞において共発現した場合に、非共有結合的に連結されたFvのHCVR及びLCVR領域が分離する傾向を抑えるため、いわゆる単鎖(sc)Fv断片(scFv)を作製してもよく、その場合、可撓性を有し、適切な長さを有するポリペプチドを、HCVRのC末端からLCVRのN末端にかけて、又はLCVRのC末端からHCVRのN末端にかけて結合させる。最も一般的に用いられるリンカーは15残基(GlySer)ペプチドであるが、他の公知のリンカーを使用してもよい。また、1つ以上の停止コドンを天然の停止部位の上流に導入した抗体遺伝子を使用し、種々の中断された形態を有する抗体を調製してもよい。例えば、F(ab’)重鎖部分をコードするキメラ遺伝子を、CHドメイン及び重鎖のヒンジ領域をコードするDNA配列を含む態様で設計することもできる。
【0058】
ファージディスプレイ法(Matthews DJ及びWells JA.Science.260:1113−7,1993)、リボソームディスプレイ法(Hanesら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:14130−5,1998)、細菌ディスプレイ法(Samuelson P.ら、Journal of Biotechnology.96:129−54,2002)、又は酵母ディスプレイ法(Kieke MCら、Protein Engineering,10:1303−10,1997)などの濃縮技術を使用したライブラリーからの抗体断片の選抜は、古典的なハイブリドーマ技術の良好な代替法であることが示されている(近年概説:Little M.ら、Immunology Today,21:364−70,2000)。
【0059】
変異型抗体
本発明では、ミオスタチン又は本発明の免疫原性エピトープからなるタンパク質で免疫して作製したげっ歯類モノクローナル抗体又はヒト抗体(例えばトランスジェニックマウスで調製)を親抗体として用いる。げっ歯類親抗体は、公知技術の方法を使用して更に改変し、キメラ抗体若しくはヒト化抗体を作製することができる。かかるキメラ抗体若しくはヒト化抗体は、更なるバリエーション又は突然変異導入のための親抗体として使用してもよい。本発明の親抗体は、例えば1つ以上のCDR領域(図6及び7参照)の中に更に突然変異を導入し、目的の特性を最適化(例えば結合親和性、IC50、特異性など)した変異異型抗体を作製してもよい。アミノ酸置換した変異型抗体が好ましく、親抗体分子の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、その位置に異なる残基を挿入する。置換突然変異生成にとって最も好適な標的部位としてはCDR領域が挙げられるが、FRの改変であってもよい。保存的アミノ酸置換が好適である。かかる置換が抗体の生物学的活性の変化をもたらす場合、更に実質的な変異(すなわち非保存的なアミノ酸変異)を導入し、得られる変異体をスクリーニングしてもよい。
【0060】
実質的な変異型の簡便な作製方法は、ファージディスプレイを使用したアフィニティ成熟である。簡潔には、幾つかのCDR領域部位を変異させ、各部位で全ての可能なアミノ酸置換変異体を得る。このようにして得た変異型抗体は、融合体としてのフィラメント状のファージ粒子から、各粒子内にパッケージされるM13の遺伝子IIIの生成物への、一価の方法でディスプレイされる。本発明で開示されるように、ファージディスプレイされた変異型を更にそれらの生物学的活性(例えば結合親和性、特異性、IC50)に関してスクリーニングする。変更を導入する候補となるCDR領域場所を同定するため、アラニンスキャニング突然変異誘導を実施し、抗原との結合に顕著に関与するCDR領域中の残基を確認してもよい。あるいは、又はそれに加えて、抗原−抗体複合体の結晶構造解析を行い、抗体とミオスタチンとの接触部分を確認してもよい。かかる接触する残基及び隣接する残基が、本願明細書の方法又は従来公知の技術に従って行われる置換の候補となる。あるいは、又はそれに加えて、1つ以上のCDR配列に1つ以上の残基をランダム突然変異導入し(CDRが可変領域に制御可能に連結されているか、又はCDRが他の可変領域配列から独立していてもよい)、更に変異したCDRを、組み換えDNA技術を用いて可変領域に戻してもよい。かかる変異型抗体を作製した後、本願明細書に記載のように変異型のパネルをスクリーニングにかけ、1つ以上の関連する分析法で優れた特性を有する抗体を更に選抜して機能を向上させてもよい。
【0061】
本発明の抗ミオスタチン抗体の適切な形態維持に関与しないシステイン残基を、通常セリンに任意に置換し、分子の酸化安定性を改善し、不適切な架橋を防止してもよい。またその反対に、1つ以上のシステイン結合を抗体中に追加し、その安定性を改善(特に当該抗体が抗体断片(例えばFv断片)である場合)してもよい。
【0062】
抗体の他のタイプのアミノ酸変異型として、グリコシル化パターンが本来とは変化した抗体が挙げられる。ここで変化とは、抗体中に存在する1つ以上の炭水化物部分の欠失、及び/又は親抗体に存在しない1つ以上のグリコシル化サイトを付加することを意味する。
【0063】
抗体のグリコシル化は典型的にはN結合型か、又はO結合型である。N結合型とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合のことを指す。アスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−スレオニンのトリペプチド配列(Xはプロリン以外の任意のアミノ酸)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列である。すなわち、ポリペプチド中のこれらのいずれかのトリペプチド配列の存在により潜在的はグリコシル化部位が形成される。O−結合型グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸(通常はセリン又はスレオニン、5−ヒドロキシプロリン又は5−ヒドロキシリシンもまた使用可能)への、N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース又はキシロースなどの1つの糖の結合のことを指す。
【0064】
抗体へのグリコシル化部位の追加はアミノ酸配列の改変、すなわち1つ以上の上記のトリペプチド配列を含ませることにより簡便に実施できる(N結合型グリコシル化部位の場合)。当該変異は、元の抗体の配列への1つ以上のセリン又はスレオニン残基の付加又は置換によって実施できる(O結合型グリコシル化部位の場合)。
【0065】
配列
本発明の好適なモノクローナル抗体は、配列番号74から102、140、141及び142(図9)からなる群から選択される配列を有するペプチドからなるLCVR、及び/又は配列番号103から138(図10)からなる群から選択される配列を有するペプチドからなるHCVRを含んでなる。好ましい一実施態様では、本願明細書の表1に示す配列番号のアミノ酸配列を有するLCVRポリペプチドを含んでなる本発明の抗体は、表1の特定のLCVRに対応するHCVRポリペプチドの配列番号を有するアミノ酸配列を有するHCVRポリペプチドを更に含んでなる。当業者であれば、本発明の抗体が本発明の図9及び10に記載のHCVR及びLCVRの配列に限定されず、本発明の抗体の抗原との結合能及び他の機能的特性を保持するこれらの配列の変異型も包含されることを認識するであろう。本発明に記載のような従来技術を使用して当該配列に由来するかかる変異体を作製してもよい。
【0066】
更に、本発明のモノクローナル抗体は、(i)配列番号98及び138及び(ii)配列番号74及び103からなる群から選択される配列を有する2つのポリペプチドからなる競合モノクローナル抗体との間で、成熟型ヒトミオスタチン(又はその部分)との結合を競争的に阻害される。かかる抗体間の競争的阻害は、当業者に公知の分析方法(例えば競争ELISA分析)で測定できる。
【0067】
好ましくは、上記で定義した競合抗体と競合する本発明の抗体は、例えば従来技術(競争ELISA、BIACORE又はKINEXA分析)で測定した場合、GDF−11よりも少なくとも20%、30%又は40%選択的にGDF−8と結合することによって更に特徴づけられ、すなわち当該抗体がGDF−11よりも少なくとも20%、30%又は40%高い親和性(すなわち低いK)でGDF−8と結合することを示す。好ましくは、上記で定義した競合抗体と競合する本発明の抗体は更に、約4.2×10−9M又は4.0×10−9M未満、好ましくは約4.6×10−10M、4.0×10−10M又は2×10−10M未満、より好ましくは、約8×10−11M、7×10−11M、5×10−12M又は1.4×10−12M未満のミオスタチンとのKを有することを特徴とするか、又は、約4.2×10−9M又は4.0×10−9M以下、好ましくは4.6×10−10M、4.0×10−10M又は2×10−10M以下、より好ましくは約8×10−11M、7×10−11M、5×10−12M又は1.4×10−12M以下のミオスタチンとのKを有することを特徴とし、及び/又は更にin vitroミオスタチン/SBEリポーターアッセイにおいて約40nM、20nM又は10nM以下、より好ましくは約5nM、4nM、3nM、2nM又は1nM以下のIC50を有することを特徴とする。
【0068】
更に好ましくは、上記で定義した競合抗体と競合する本発明の抗体は更に、in vitroミオスタチン/SBEリポーターアッセイにおいて約40nM、30nM、25nM、20nM又は10nM以下、より好ましくは、約5nM、4nM、3nM、2nM又は1nM以下のIC50を有することを特徴とする。更に好ましくは、in vitroミオスタチン/SBEリポーターアッセイにおける抗ミオスタチンモノクローナル抗体のIC50は、当該抗体のin vitro GDF−11/SBEリポーターアッセイ(本発明の実施例5を参照)の場合の少なくとも約2倍、3倍又は4倍低いIC50の値を示す。更に好ましくは、上記で定義した競合抗体と競合する本発明の抗体は更に、成熟型ミオスタチン(好ましくはヒトミオスタチン)のアミノ酸40−64(包括的)、43−57又は45−59からなるペプチドと結合しないことを特徴とする。
【0069】
一実施態様では、本発明の抗ミオスタチン抗体は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有し、当該重鎖可変領域はCDRH1(配列番号42)、CDRH2(配列番号71)及びCDRH3(配列番号72)のアミノ酸配列を有するCDR領域からなり(図7を参照)、及び/又は当該軽鎖可変領域はCDRL1(配列番号12)、CDRL2(配列番号154)及びCDRL3(配列番号37)のアミノ酸配列を有するCDR領域からなる。好ましくは、本発明の抗体の重鎖CDRsは図7に示すとおりであり、本発明の抗体の軽鎖CDRsは図6に示すとおりである。
【0070】
本発明の抗ミオスタチン抗体には更に、配列番号38−41からなる群から選択される配列を有するCDRH1、及び/又は配列番号43−70及び73からなる群から選択される配列を有するCDRH2、及び/又は配列番号72の配列を有するCDRH3を含んでなるHCVRを有するものが包含される。他の実施態様では、本発明の抗ミオスタチン抗体は、配列番号9−11からなる群から選択される配列を有するCDRL1、及び/又は配列番号13−23からなる群から選択される配列を有するCDRL2、及び/又は配列番号24−36からなる群から選択される配列を有するCDRL3を含んでなるLCVRを含む。好ましい一実施態様では、本発明の抗ミオスタチン抗体は、配列番号38−42からなる郡から選択される配列を有するCDRH1、及び/又は配列番号43−70及び73からなる郡から選択される配列を有するCDRH2、及び/又は配列番号72の配列を有するCDRH3を含んでなり、更に配列番号9−11からなる郡から選択される配列を有するCDRL1、及び/又は配列番号13−23からなる郡から選択される配列を有するCDRL2、及び/又は配列番号24−36からなる郡から選択される配列を有するCDRL3を含むLCVRを含んでなる。
【0071】
本発明のCDRを含んでなる構造は通常、抗体の重鎖若しくは軽鎖の配列、又はその実質的な部分であり、その場合、CDRは天然のHCVR及びLCVRのCDRに対応する位置に存在する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept of HHS,1991)。各鎖(軽鎖及び重鎖)の3つのCDR領域は、FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4の式により表される隣接配列として、フレームワーク領域に設けられる。上記の順番のCDRsを有する隣接配列として構成されるときに、重鎖又は軽鎖のFR1、FR2、FR3及びFR4は完全なフレームワークを形成するよう組み合わされる。好ましくは、本発明の抗体のフレームワーク領域はヒト由来、ヒト化又は実質的にヒト由来の領域である。
【0072】
ヒトの治療に使用するヒト化抗体の場合、フレームワーク配列は好ましくは完全に、又は実質的にヒト由来(すなわち少なくとも90%、92%、95%、96%、97%、98%又は99%ヒト由来)である。好ましくは、本発明のヒト化抗体、ヒト抗体若しくはキメラ抗体の軽鎖フレームワーク領域は、図9に示すように、配列番号143を有するFR1、配列番号144を有するFR2、配列番号145を有するFR3、及び配列番号146又は147を有するFR4から構成される。好ましくは、本発明のヒト化抗体、ヒト抗体若しくはキメラ抗体の重鎖フレームワーク領域は、図10に示すように、配列番号148又は149を有するFR1、配列番号150又は151を有するFR2、配列番号152又は153を有するFR3、及び配列番号139を有するFR4から構成される。例えば、抗体3−74/C1E4は、配列番号143を有するFR1、配列番号9を有するCDR1、配列番号144を有するFR2、配列番号18を有するCDR2、配列番号145を有するFR3、配列番号25を有するCDR3、及び配列番号146を有するFR4からなる軽鎖可変領域を含んでなる。抗体3−74/C1E4は更に、配列番号149を有するFR1、配列番号40を有するCDR1、配列番号151を有するFR2、配列番号60を有するCDR2、配列番号153を有するFR3、配列番号72を有するCDR3、及び配列番号139を有するFR4からなる重鎖可変領域を含んでなる。抗体をヒト以外の動物に用いる場合、当該フレームワーク領域配列は、実質的にヒトゲノム(好ましくはそれを胚若しくは新生児としてのヒト以外の動物に用いる場合)に由来してもよく、又はそれを治療に用いようとする動物のゲノムに由来してもよい。
【0073】
一実施態様では、可変領域の全て又は一部が本願明細書の配列番号で示す特定の配列に限定される本発明の抗ミオスタチン抗体は、更にキメラ抗体、ヒト化抗体若しくは完全なヒト抗体又はその抗原結合部分であることを特徴とし、in vivo又はin vitroで少なくとも1つのミオスタチン活性をアンタゴナイズ又は中和する。可変領域の全て又は一部が本願明細書の配列番号で示す特定の配列に限定される本発明の抗ミオスタチン抗体は更に、従来技術(例えば、競争ELISAによって、又はBIACORE又はKINEXA分析)によって測定した場合、GDF−11×少なくとも20%、30%又は40%以上選択的にGDF−8と結合することを特徴とし、すなわちGDF−11より少なくとも20%、30%又は40%高いGDF−8に対する抗体親和性(すなわち低いK)を示すものである。可変領域の全て又は一部が本願明細書の配列番号で示す特定の配列に限定される本発明の抗ミオスタチン抗体は更に、約4.2×10−9M又は4.0×10−9M未満、好ましくは約4.6×10−10M、4.0×10−10M又は2×10−10M未満、より好ましくは約8×10−11M、7×10−11M、5×10−12M又は1.4×10−12M未満のミオスタチンとのKを示すことを特徴とするか、あるいは約4.2×10−9M又は4.0×10−9M以下、好ましくは4.6×10−10M、4.0×10−10M又は2×10−10M以下、より好ましくは約8×10−11M、7×10−11M、5×10−12M又は1.4×10−12M以下のミオスタチンとのKを特徴とし、及び/又はin vitroミオスタチン/SBEリポーターアッセイで測定した場合、約40nM、20nM又は10nM以下、好ましくは約5nM、4nM、3nM、2nM又は1nM以下のIC50を示すことを更に特徴とする。
【0074】
更に好ましくは、可変領域の全て又は一部が本願明細書の配列番号で示す特定の配列に限定される本発明の抗ミオスタチン抗体は更に、in vitroミオスタチン/SBEリポーターアッセイで測定した結果、約40nM、30nM、25nM、20nM又は10nM以下のIC50、より好ましくはin vitroミオスタチン/SBEリポーターアッセイで測定した結果約5nM、4nM、3nM、2nM又は1nM以下のIC50を示すことを特徴とする。更に好ましくは、in vitroミオスタチン/SBEリポーターアッセイで測定した場合の抗ミオスタチンモノクローナル抗体のIC50は、in vitroGDF−11/SBEリポーターアッセイで測定した場合の当該抗体よりも少なくとも約2倍、3倍又は4倍低いIC50を示す(本願明細書の実施例5を参照)。更に好ましくは、可変領域の全て又は一部が本願明細書の配列番号で示す特定の配列に限定される本発明の抗ミオスタチン抗体は更に、成熟型ミオスタチン(好ましくはヒトミオスタチン)のアミノ酸40−64(包括的)、43−57又は45−59からなるペプチドと結合しないことを特徴とする。
【0075】
抗体の発現
本発明はまた、本発明の抗ミオスタチンモノクローナル抗体又はその一部を発現する細胞系の提供に関する。本発明のモノクローナル抗体を産生する細胞系の作製及び単離は、当該技術分野において公知の標準的技術を使用して実施できる。好ましい細胞系としては、COS、CHO、SP2/0、NS0及び酵母などが挙げられる(ATCC,American Type Culture Collection,Manassas,VAのような公的な寄託機関から入手できる)。
【0076】
原核生物(細菌)及び真核生物(例えば酵母、バキュロウイルス、植物、哺乳動物及び他の動物細胞、形質転換動物及びハイブリドーマ細胞)の発現系並びにファージディスプレイによる発現系などの多種多様な宿主発現系が本発明の抗体の発現に使用できる。適切な細菌発現ベクターの例としてはpUC119が挙げられ、適切な真核発現ベクターとしては、弱力化されたDHFR選抜システムと組み合わせた修飾pcDNA3.1ベクターが挙げられる。当該技術分野において公知の他の抗体発現系の使用も本発明に包含される。
【0077】
本発明の抗体は、宿主細胞における免疫グロブリン軽鎖及び重鎖遺伝子の組換え発現によって調製できる。抗体を組み換え発現させるために、抗体の免疫グロブリン軽鎖及び/又は重鎖をコードするDNA断片を当該軽鎖及び/又は重鎖が宿主細胞内で発現されるように担持させた1つ以上の組換え発現ベクターを用い、宿主細胞を形質転換、形質導入、感染等を行う。当該重鎖及び軽鎖は各々、1つのベクター内で、制御可能に連結されている別々のプロモーターにより独立に発現させてもよく、あるいは当該重鎖及び軽鎖は、2つのベクター(1つが重鎖を発現し、1つが軽鎖を発現する)を用いて、各々制御可能に連結された異なるプロモーターから独立に発現させてもよい。あるいは、当該重鎖及び軽鎖を異なる宿主において発現させてもよい。好ましくは、当該組み換え抗体を、細胞培養用の培地に分泌させ、当該抗体を回収若しくは精製することもできる。標準的な組換えDNA方法を使用して、抗体の重鎖及び軽鎖遺伝子を得、これらの遺伝子を組換え発現ベクターに組み込み、更に当該ベクターを宿主細胞に導入する。かかる標準的な組換えDNA技術は、例えばSambrook,Fritsch,and Maniatis(Eds.),Molecular Cloning、A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989;Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates,1989に記載されている。
【0078】
HCVR領域をコードする単離したDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2、CH3)をコードする他のDNA分子にHCVRコードDNAに制御作可能に連結することにより、全長重鎖遺伝子への転換が可能となる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当該技術分野において公知である。例えばKabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242(1991)を参照されたい。これらの領域を包含するDNA断片は、例えば標準的なPCR増幅によって調製できる。当該重鎖定常領域は、いかなる型(例えばIgG、IgG、IgG及びIgG)、クラス(例えばIgG、IgA、IgE、IgM又はIgD)若しくはサブクラスの定常領域、又はカバット(上記)にて説明したようなあらゆるアロタイプ異型体であってもよい。あるいは、当該抗原結合部分はFab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、Fd、又は単鎖Fv断片(scFv)であってもよい。Fab断片重鎖遺伝子の場合、HCVRをコードするDNAを、重鎖CH1定常領域のみをコードする他のDNA分子と制御可能に連結してもよい。
【0079】
LCVR領域をコードする単離させたDNAは、軽鎖定常領域CLをコードする他のDNA分子に当該LCVRコードDNAを制御可能に連結することによって全長軽鎖遺伝子(並びにFab軽鎖遺伝子)に転換できる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当該技術分野において公知である。例えばKabat(前掲)を参照されたい。これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって調製できる。軽鎖定常領域はκ又はλ定常領域であってもよい。
【0080】
scFv遺伝子を作製する場合、HCVR及びLCVRをコードするDNA断片を、例えばアミノ酸配列(Gly−Ser)などの可撓性リンカーをコードする他の断片を介して制御可能に連結し、HCVR及びLCVR領域が可撓性リンカーを介して連結された状態の、HCVR及びLCVR配列が隣接している単鎖タンパク質として発現される。例えば、Birdら、Science 242:423−6,1988、Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−83,1988、McCaffertyら、Nature 348:552−4,1990を参照されたい。
【0081】
本発明の抗体を発現させる際、上記のようにして得られる、部分長又は全長の軽鎖及び/又は重鎖をコードするDNAを、当該遺伝子が転写及び翻訳制御配列に制御可能に連結されるように発現ベクターに挿入する。発現ベクター及び発現制御配列を、発現に使用する宿主細胞と適合するように選択する。抗体の軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子を別個のベクターに挿入してもよいが、典型的には両方の遺伝子を同じ発現ベクターに挿入する。抗体遺伝子を、標準的な方法によって発現ベクターに挿入する。更に、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗ミオスタチンモノクローナル抗体の軽鎖及び/又は重鎖の分泌を可能にするシグナルペプチドをコードしてもよい。抗ミオスタチンモノクローナル抗体の軽鎖及び/又は重鎖遺伝子は、シグナルペプチドが、抗体鎖の遺伝子のアミノ末端側にインフレームで制御可能に連結する態様でベクターにクローニングしてもよい。当該シグナルペプチドは免疫グロブリンのシグナルペプチド又は他の種類のシグナルペプチドであってもよい。
【0082】
抗体の重鎖及び/又は軽鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞内で抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を有する。用語「調節配列」にはプロモーター、エンハンサー及び必要に応じて他の発現制御因子(例えばポリアデニル化シグナル)が包含され、それらは抗体鎖遺伝子の転写又は翻訳を制御する。調節配列の選択を含めた発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質発現レベルなどの因子に依存しうる。哺乳動物宿主細胞発現にとり好ましい調節配列としては、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、例えばアデノウイルス主要後期プロモーター、AdMLP及びポリオーマウイルスに由来するプロモーター及び/又はエンハンサーのような、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を可能にするウイルス要素が挙げられる。
【0083】
抗体の重鎖及び/又は軽鎖遺伝子及び調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞内でベクターの複製を調節する配列(例えば複製開始点)のような更なる配列、及び1つ以上の選択可能なマーカー遺伝子を有してもよい。選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入される宿主細胞の選択を容易にする。例えば、通常用いられる選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキサートなどの薬剤に対する耐性を付与する。好ましい選択可能なマーカー遺伝子としては、(メトトレキサート選択/増幅を有するDHFR−マイナス宿主細胞において使用する)ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子、(G418選択用の)ネオ遺伝子(neo gene)、及び選択/増幅用のGS陰性細胞系(NS0など)におけるグルタミン合成酵素(GS)が挙げられる。
【0084】
軽鎖及び/又は重鎖の発現の場合、重鎖及び/又は軽鎖をコードする発現ベクターを標準的な方法(例えばエレクトロポーレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクション、形質導入、感染等)を用いて宿主細胞に導入する。原核生物又は真核生物に由来する宿主細胞で本発明の抗体を発現することは理論的に可能であるが、好ましくは真核細胞、最も好ましくは哺乳動物宿主細胞が使用されるが、それはこれらの細胞では抗体が適切にフォールディングして免疫学的に活性を有する形態となり、分泌される可能性が高いからである。本発明の組換え抗体を発現させる好ましい哺乳動物宿主細胞としては、(例えばKaufman and Sharp,J.Mol.Biol.159:601−21,1982に記載されたような、DHFR選択可能マーカーにより使用されるUrlaub及びChasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−20,1980に記載されたDHFR−CHO細胞を含む)チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2/0細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入した後、宿主細胞内での抗体の発現、又は好ましくは宿主細胞を増殖させる培地への抗体の分泌を可能にするために十分な時間宿主細胞を培養することにより、抗体が産生される。標準的な精製方法を使用して、宿主細胞及び/又は培地から抗体を回収することができる。
【0085】
宿主細胞を用いて、従来技術によって完全な抗体の一部又は断片(例えばFab断片又はscFv分子)を調製してもよい。上記手順の変法も本発明の範囲内に包含されることが理解される。例えば、本発明の抗体の軽鎖又は重鎖をコードするDNAによって宿主細胞をトランスフェクトすることが望ましいと考えられる。また組換えDNA技術を用いて、ミオスタチンに結合するために必要ではない軽鎖及び重鎖の一方又は両方をコードするDNAの一部又は全部を除去してもよい。かかる切除を受けたDNA分子から発現される分子もまた本発明の抗体に包含される。
【0086】
本発明の抗体の好ましい組換え発現系では、抗体の重鎖及び抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターを、例えばリン酸カルシウムによるトランスフェクションによってDHFR−CHO細胞に導入する。抗体の重鎖及び軽鎖遺伝子は、高レベルでの遺伝子転写を促進するため、組換え発現ベクター上で各エンハンサー/プロモーター調節要素(例えばCMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節要素又はSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター調節要素などの、SV40、CMV、アデノウイルス等に由来)に制御可能に連結される。当該組換え発現ベクターはまたDHFR遺伝子も有し、それにより、当該ベクターでトランスフェクトされたCHO細胞の、メトトレキサート選択/増幅を利用した選択が可能となる。選択された形質転換体宿主細胞を培養して抗体の重鎖及び軽鎖を発現させ、完全な抗体を培地から回収する。標準的な分子生物学的手法を用いて、組換え発現ベクターを構築し、宿主細胞をトランスフェクトし、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、培地から抗体を回収できる。本発明の抗体、又はその抗原結合部分は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を場合にはトランスジェニック動物(例えばマウス)中で発現させることができる(例えばTaylorら、Nucleic Acids Res.20:6287−95,1992参照)。
【0087】
発現させた後、本発明の完全抗体、その二量体、個々の軽鎖及び重鎖、又は他の免疫グロブリンタイプを、硫酸アンモニウムによる沈殿、イオン交換、親和性、逆相、疎水性相互作用カラムクロマトグラフィ、ゲル電気泳動等などの当該技術分野における標準的な手法に従って精製できる。少なくとも約90%、92%、94%又は96%の均一性を有する実質的に純粋な免疫グロブリンが医薬品用途に好ましく、98〜99%又はそれ以上の均一性が最も好ましい。部分的又は所望の均一性まで精製した後、当該ペプチドを、本発明において示すように治療的又は予防的用途に使用できる。
【0088】
キメラ抗体
本発明では、用語「キメラ抗体」には一価、二価又は多価免疫グロブリンが包含される。一価のキメラ抗体とは、キメラ重鎖がキメラの軽鎖とジスルフィド架橋によって結合して形成された二量体である。二価のキメラ抗体とは、少なくとも1つのジスルフィド架橋によって2つの重鎖−軽鎖二量体が結合して形成された四量体である。
【0089】
抗体のキメラ重鎖は、ミオスタチンに特有の非ヒト抗体の重鎖に由来する抗原結合領域を含んでなり、それはヒト若しくは実質的にヒト(又は抗原結合領域がそれらと異なる種)由来の重鎖定常領域(例えばCH1又はCH2)の少なくとも一部と制御可能に連結されるか、又は好ましくは全長の重鎖定常部と連結される。ヒトに対して使用する抗体のキメラ軽鎖は、ミオスタチンに特有の非ヒト抗体の軽鎖に完全に若しくは部分的に由来する抗原結合領域を含んでなり、それはヒト若しくは実質的にヒト(又は抗原結合領域がそれらと異なる種)由来の軽鎖定常領域(例えばCL)の少なくとも一部と制御可能に連結されるか、又は好ましくは全長の軽鎖定常部と連結される。同一又は異なる可変領域の結合特異性を有するキメラ重鎖及び軽鎖を含んでなる抗体断片又は誘導体または、公知技術の手法に従い、個々のポリペプチド鎖を適切に結合させることによって調製できる。
【0090】
このアプローチの場合は、キメラ重鎖を発現する宿主とキメラ軽鎖を発現する宿主とは別々に培養され、免疫グロブリン鎖は別々に回収され、その後に結合される。あるいは、宿主を共培養し、各々の鎖を培地中で自然に結合させ、その後結合した免疫グロブリン又は断片の回収を行う。キメラ抗体の調製方法は当該技術分野において公知である(例えば米国特許第6284471号、第5807715号、第4816567号及び第4816397号明細書を参照)。
【0091】
ヒト化抗体
好ましくは、治療用途に用いる本発明の抗体は、それを治療に使用しようとする哺乳動物に由来する抗体中の定常領域及びフレームワーク配列を有し、それにより哺乳動物において、当該治療抗体に対する免疫応答(illicit)が誘導される可能性が減少する。ヒト化抗体は、齧歯類抗体を使用する場合に頻繁に観察されるヒト抗マウス抗体の産生による応答が回避されると考えられるので、治療用途にとり特に重要である。更に、ヒト化抗体では、当該エフェクター部分がヒト由来であるため、ヒト免疫系を構成する他の因子と良好に相互作用できる(例えば、補体依存性細胞毒性又は抗体依存性細胞毒性によってより能率的に標的細胞を破壊する)。また、注入されたヒト化抗体は(例えばげっ歯類抗体)と異なり天然型のヒト抗体とほぼ同様の半減期を有し、それにより少量、より少ない頻繁での投与が可能となる。本発明で使用される用語「ヒト化抗体」とは、少なくとも一部がヒト由来で、異なる種由来の抗体部分を含んでなる免疫グロブリンのことを指す。例えば、当該ヒト化抗体は、所望の特異性を有する非ヒト由来(マウスなど)の抗体に由来する部分と、ヒト由来の抗体に由来する部分とを含んでなってもよく、従来技術(例えば合成)により化学的に調製してもよく、又は遺伝子工学的手法を使用して隣接ポリペプチドとして調製してもよい。
【0092】
好ましくは、「ヒト化抗体」は、非ヒト抗体(好ましくはマウスモノクローナル抗体)に由来するCDRを有する一方で、そのフレームワーク領域及び定常領域は、それが存在する(又はそのかなりの、もしくは実質的な部分、すなわち少なくとも90%、92%、94%、96%、98%又は99%が存在する)場合には、ヒト生殖細胞系の免疫グロブリン領域(例えばInternational ImMunoGeneTics Database参照)に存在する核酸配列情報としてコードされるか、又は前記抗体がヒト細胞中で産生されるか否かと関わりなく、その組換え若しくは変異形態としてコードされる。ヒト化抗体のCDRsは、それらが由来する非ヒト親抗体のCDRsを基にして最適化し、所望の特性(例えば特異性、親和性及び受容能力)を付与してもよい。最適化されたCDRsでは、親CDRsにおけるアミノ酸置換、付加及び/又は欠失がなされていてもよい。例えば、図6及び7において下線を有し太字で示されるCDRsのアミノ酸部位は、図5に示すように親CDRsを最適化された部位を示す。
【0093】
ヒト化形態を有する非ヒト(例えばげっ歯類)抗体には、完全抗体、実質的に完全抗体、抗原結合部位を有する抗体の一部、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)又は単鎖Fv断片を含んでなる抗体の一部であってもよい。ヒト化抗体は、好ましくは最低限の非ヒト免疫グロブリン由来配列を含む。ヒト化抗体の残りの部分は、レシピエント抗体、又は導入されたCDR若しくはフレームワーク配列にも存在しない配列であってもよい。一般に、ヒト化抗体は実質的に少なくとも1つ、好ましくは通常は2つの可変領域を含んでからなり、非ヒト免疫グロブリン又はFR領域のアミノ酸の全て若しくは実質的に全てに対応するCDR領域のアミノ酸の全て若しくは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン共通配列中の配列である。ヒト化抗体はまた最適には、免疫グロブリン定常部(Fc)(通常ヒト免疫グロブリン由来)の少なくとも一部を含んでなる(Jonesら、Nature,321:522−525(1986);Riechmannら、Nature,332:323−329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593−596(1992))。
【0094】
ヒト化抗体は、当該技術分野において日常的に使用される方法を使用してin vitro突然変異導入(又はヒトIg配列による動物への遺伝子導入を行う場合にはin vivo体細胞突然変異導入)に供してもよく、その場合、ヒト化組換え抗体のHCVR及びLCVR領域のフレームワーク領域アミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系HCVR及びLCVR配列に関するものに由来するが、in vivoにおけるヒト抗体生殖細胞系レパートリー中には天然には存在し得ない配列である。ヒト化組換え抗体のHCVR及びLCVRフレームワーク領域のかかるアミノ酸配列としては、ヒト生殖細胞系の配列に対して少なくとも90%、92%、94%、96%、98%又は最も好ましくは少なくとも99%同一であるものが包含される。好ましくは、それらの親抗体のフレームワークの残り部分(例えばげっ歯類抗体又は通常では当該ヒト化抗体が由来する抗体)であって、結合部位の構造を維持するか又は影響を及ぼすものは、維持される。これらの残り部分は、親抗体又はFabフラグメントのX線結晶解析によって同定でき、それにより抗原結合部位の三次元構造が同定される。
【0095】
本発明のヒト化抗体は、ヒト生殖細胞系の軽鎖フレームワークを含んでなってもよく、又は由来してもよい。具体的な実施態様では、当該軽鎖の生殖細胞系における配列は、限定されないがA1、A10、A11、A14、A17、A18、A19、A2、A20、A23、A26、A27、A3、A30、A5、A7、B2、B3、L1、L10、L11、L12、L14、L15、L16、L18、L19、L2、L20、L22、L23、L24、L25、L4/18a、L5、L6、L8、L9、O1、O11、O12、O14、O18、O2、O4及びO8などのヒトVK配列から選択される。ある特定の実施態様では、この軽鎖のヒト生殖細胞系におけるフレームワークは、V1−11、V1−13、V1−16、V1−17、V1−18、V1−19、V1−2、V1−20、V1−22、V1−3、V1−4、V1−5、V1−7、V1−9、V2−1、V2−11、V2−13、V2−14、V2−15、V2−17、V2−19、V2−6、V2−7、V2−8、V3−2、V3−3、V3−4、V4−1、V4−2、V4−3、V4−4、V4−6、V5−1、V5−2、V5−4及びV5−6から選択される。異なる生殖細胞系における配列の詳細については、国際公開第2005/005604号パンフレットを参照のこと。
【0096】
他の実施態様では、本発明のヒト化抗体はヒトの生殖細胞系の重鎖フレームワークを含んでなってもよく、又は由来してもよい。具体的な実施態様では、この重鎖ヒト生殖細胞系フレームワークはVH1−18、VH1−2、VH1−24、VH1−3、VH1−45、VH1−46、VH1−58、VH1−69、VH1−8、VH2−26、VH2−5、VH2−70、VH3−11、VH3−13、VH3−15、VH3−16、VH3−20、VH3−21、VH3−23、VH3−30、VH3−33、VH3−35、VH3−38、VH3−43、VH3−48、VH3−49、VH3−53、VH3−64、VH3−66、VH3−7、VH3−72、VH3−73、VH3−74、VH3−9、VH4−28、VH4−31、VH4−34、VH4−39、VH4−4、VH4−59、VH4−61、VH5−51、VH6−1及びVH7−81から選択される。異なる生殖細胞系における配列の詳細については、国際公開第2005/005604号パンフレットを参照のこと。
【0097】
具体的な実施態様では、当該軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域は、フレームワーク領域又は少なくとも一部のフレームワーク領域(例えば2つ又は3つのサブ領域(例えばFR2及びFR3)を含む)を含んでなる。特定の実施態様では、少なくともFRL1、FRL2、FRL3又はFRL4のうちの1つは完全なヒト型である。他の実施態様では、少なくともFRH1、FRH2、FRH3又はFRH4のうちの1つは完全にヒト型である。幾つかの実施態様では、少なくともFRL1、FRL2、FRL3又はFRL4のうちの1つは、生殖細胞系の配列(例えばヒトの生殖細胞系)であるか、又はヒト特定のフレームワークの共通配列を含んでなる。他の実施態様では、少なくともFRH1、FRH2、FRH3又はFRH4は、生殖細胞系の配列(例えばヒトの生殖細胞系)であるか、又はヒトの特定のフレームワークの共通配列を含んでなる。他の好ましい実施態様では、フレームワーク領域はヒトのフレームワーク領域である。
【0098】
一般に、ヒト化抗体は抗体(例えばげっ歯類抗体又はハイブリドーマによって産生される抗体。本発明のミオスタチンエピトープと結合する。)のHCVR及びLCVRをコードする核酸配列を得、前記HCVR及びLCVR(非ヒト)のCDRsを同定し、かかるCDRをコードする核酸配列をヒトのフレームワークをコードする適切な核酸配列とグラフトさせることによって調製できる。あるいは、ランダムに若しくは特定の部位において突然変異を導入してCDR領域を最適化し、CDR領域をフレームワーク領域にグラフトする前に異なるアミノ酸でCDRの1つ以上のアミノ酸を置換してもよい。あるいは、ヒトのフレームワーク領域への挿入後、当業者に公知の方法を使用してCDR領域を最適化してもよい。好ましくは、ヒトフレームワークアミノ酸配列は、得られる抗体がヒトへのin vivo投与に適する態様となるものを選択する。このことは、例えばかかるヒトフレームワーク配列を含む抗体を使用した前例に基づき決定できる。好ましくは、当該ヒトフレームワーク配列はそれ自体顕著な免疫原性を有しない。
【0099】
あるいは、抗体のヒト化の際に用いようとするフレームワークのアミノ酸配列を、周知のヒトフレームワーク配列(当該ヒトフレームワーク配列はCDRグラフティングに使用される)のそれらと比較し、それらが親抗体(例えばミオスタチンと結合するげっ歯類抗体)のと非常に類似する配列を有することを基準として選択してもよい。多数のヒトフレームワーク配列が単離され、その配列が当該技術分野において報告されている。これにより、得られるCDRグラフトしたヒト化抗体(親抗体(例えばマウス)のCDRを含むか、選択されたヒトフレームワーク(及び場合により同様にヒト定常領域)とグラフトしている最適化された親抗体のCDRsを含む)では、抗原と結合する際の構造が実質的に維持され、結合親和性が維持される可能性が高くなる。当該ヒトフレームワーク領域は、顕著な抗原結合親和性を維持するため、好ましくはin vivo投与に適切であると考えられるヒトフレームワーク領域を有し、それにより免疫原性を有さないものを選択する。
【0100】
いずれの方法の場合も、好ましくはマウス抗ミオスタチン抗体のHCVR及びLCVR領域をコードするDNA配列が得られる。免疫グロブリンをコードする核酸配列をクローニングする方法は当該技術分野において周知である。かかる方法としては、例えば適切なプライマーを使用して、クローニングしようとする免疫グロブリンコーディング配列をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅することを含んでなる。免疫グロブリン核酸配列、及びマウスHCVR及びLCVR配列の特異的な増幅にとり適切なプライマーに関しては文献で報告されている。かかる免疫グロブリンコード配列は、クローニング後、当該技術分野において周知の方法によって配列決定される。
【0101】
CDRコード配列が適切なヒトフレームワークコード配列にグラフトされた後、得られる「ヒト化」された可変重鎖及び可変軽鎖をコードするDNA配列を更に発現させ、ミオスタチンと結合するヒト化Fv又はヒト化抗体を調製する。ヒト化HCVR及びLCVRは、抗ミオスタチン抗体分子全体中における一部として、すなわちヒト定常ドメイン配列との融合タンパク質として発現させてもよく、その場合、それをコードするDNA配列を市販のライブラリーから得てもよく、又は例えば上記のDNA配列の調製方法の1つ、若しくは当該技術分野において公知の方法を使用して得てもよい。あるいは、HCVR及びLCVR配列は、定常配列が存在しない状態のヒト化抗ミオスタチンFvとして発現させてもよい。しなしながら、ヒト定常配列との融合により、得られるヒト化抗ミオスタチン抗体がヒトエフェクター機能を発揮するため、かかる態様が望ましい。
【0102】
公知配列のタンパク質をコードするDNAの合成方法は当該技術分野において周知である。かかる方法を使用して目的のヒト化HCVR及びLCVR配列をコードするDNA配列(定常領域を有するか又は有さない)を合成し、更に組換え抗体の発現に適するベクター系において発現させる。上記の手順は、ヒト定常ドメイン配列との融合タンパク質としてヒト化HCVR及びLCVR配列が発現され、且つ機能的(抗原と結合する)抗体又は抗体断片として結合することを可能にするいかなるベクター系において実施してもよい。
【0103】
ヒト定常ドメインの配列は当該技術分野において周知であり、文献で報告されている。好ましいヒト定常軽鎖配列はκ及びλ定常軽鎖配列を含む。好適なヒト定常重鎖配列としてはヒトIgG、ヒトIgG、ヒトIgG、ヒトIgG、並びに改変されたエフェクター機能(例えばin vivo半減期の長期化、Fcレセプターの結合能の減少、脱アミド化プロファイルの改変など)を提供するその変異体が挙げられる。
【0104】
ヒトフレームワーク領域は、存在する場合、好ましくは抗原結合領域供与体(すなわち親抗体)アナログ若しくは相当領域と類似する配列を有するヒト抗体可変領域に由来する。ヒト化抗体のヒト由来部分としてのフレームワーク領域の他の給源としては、ヒト可変コンセンサス配列が挙げられる(例えばKettleborough,C.Aら、Protein Engineering 4:773−783(1991)、Carterら、国際公開第94/04679号パンフレットを参照)。例えば、非ヒト由来の部分を得るために用いる抗体又は可変領域の配列を、Kabatらの文献(Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH,U.S.Government Printing Office(1991))にて説明されるようにヒト配列と比較してもよい。特に好ましい実施態様では、ヒト化抗体の鎖中のフレームワーク領域は、非ヒト供与体の可変領域と少なくとも約60%の全体配列同一性、好ましくは少なくとも約70%の全体配列同一性、好ましくは少なくとも約85%の全体配列同一性を有するヒト可変領域に由来する。ヒト部分は、非ヒト供与体においてそれに該当する部分(例えばFR)と比較した場合、使用される特定部分(例えばFR)に対して少なくとも約65%の配列同一性、好ましくは少なくとも70%の配列同一性を有する態様でヒト抗体に由来してもよい。
【0105】
マウス抗体のヒト化に使用できる方法を更に記載した参考文献としては、例えばQueenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:2869,1991、米国特許第5693761号明細書、米国特許第4816397号明細書、米国特許第5225539号明細書、Levitt,M.,J.Mol.Biol.168:595−620,1983に記載されたコンピュータプログラムABMOD及びENCADが挙げられ、ヒト化は基本的にWinter及びその同僚による方法(Jonesら、Nature,321:522−525 (1986);Riechmannら、Nature,332:323−327(1988);Verhoeyenら、Science,239:1534−1536(1988))に従い行うことができる。
【0106】
ヒト抗体
ヒト化抗体の代替物として、ヒト抗体を作製してもよい。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリなどの様々な公知技術を使用して作製できる(Hoogenboom及びWinter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marksら、J.Mol.Biol.,222:581(1991))。Coleらの方法、及びBoernerらの方法を用いてヒトモノクローナル抗体を調製してもよい。(Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)、及びBoernerら、J.Immunol.,147(1):86−95(1991))。同様に、ヒト抗体は、例えばヒト免疫グロブリンの遺伝子座をトランスジェニック動物(例えばマウス)に導入して調製でき、そこにおいて内在性の免疫グロブリン遺伝子が部分的若しくは完全に不活性となる。例えば、本発明の免疫原性エピトープを含有する抗原による免疫の後、ヒト抗体の完全なレパートリーが産生され、それらはあらゆる点(遺伝子の再編成、アセンブリ及び抗体レパートリーなど)でヒトにおけるそれと類似している。この方法は、例えば米国特許第5545807号、第5545806号、第5569825号、第5589369号、第5591669号、第5625126号、第5633425号、第5661016号、並びに以下の科学文献:Marksら、BioTechnology 10:779−783,1992;Lonbergら、Nature 368:856−859,1994;Morrison,Nature 368:812−13,1994;Fishwildら、Nature Biotechnology 14:845−51,1996;Neuberger,Nature Biotechnology 14:826(1996);Lonberg及びHuszar,Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995)及びJobkobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551,1993に記載されている
【0107】
ヒト免疫グロブリン遺伝子であって、それをマウスに導入することにより当該トランスジェニックマウスがヒト配列を有する抗体で抗原に対する応答を行うことが可能となる当該遺伝子はまた、Bruggemannら、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA86:6709−6713(1989)に記載されている。ヒト抗体を生産する哺乳類を作製するための戦略が幾つか存在する。特に、「ミニ遺伝子座」アプローチによって外生のIg遺伝子座がミミックする方法が挙げられ、その方法は、Ig遺伝子座に由来する部分(個々の遺伝子)を含有させる方法(例えば米国特許第5545807号、第5545806号、第5625825号、第5625126号、第5633425号、第5661016号、第5770429号、第5789650号及び第5814318号、第5612205号、第5721367号、第5789215号を参照)、大型の、Ig遺伝子座の実質的な生殖細胞系断片のYAC導入(Mendezら、Nature Genetics 15:146−156(1997),Green及びJakobovits J.Exp.Med.188:483−495(1998))、及びマイクロセル融合を用いることによる、完全若しくは実質的に完全な遺伝子座の導入(欧州特許出願第0843961A1を参照)により行われる。
【0108】
例えば、ヒト配列を有する抗体で免疫した際に免疫応答できるいかなるトランスジェニックマウスを用いて本発明の抗ミオスタチン抗体を産生してもよい。その作業は、かかるマウスを本発明の免疫原性エピトープを含んでなるポリペプチドで免疫するなどの、当業者が利用できる方法を用いて行われる。
【0109】
用途
本発明の抗体は、本明細書に記載のように治療、診断及び研究用途に有用である。本発明の抗体は、ヒトミオスタチンの発現に関連する障害又は疾病の診断に使用できる。同様にして、本発明の抗体は、ミオスタチンに関連する症状の治療を受けている患者のミオスタチンレベルを監視するための検査に使用できる。研究用途としては、本発明の抗体及び標識を利用して、例えばヒト体液又は細胞若しくは組織抽出物中のミオスタチンを検出することが挙げられる。本発明の抗体の使用の際、修飾してもしなくてもよく、検出可能部分を共有結合的若しくは非共有結合的に結合して標識してもよい。当該検出可能部分は、検出可能なシグナルを直接的又は間接的に生じさせることが可能なものであれば特に限定されない。例えば、当該検出可能部分は、放射性同位元素(例えばH、14C、32P、35S又は125I)、蛍光若しくは化学発光物質(例えばフルオレセインイソチオシアネート、ローダミン又はルシフェリン)又は酵素(例えばアルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼ)。当該検出可能部分へ抗体を別個にコンジュゲートするための、当該技術分野において公知のいかなる方法も使用でき、例えばHunterら、Nature 144:945,1962、Davidら、Biochemistry 13:1014,1974、Painら、J.Immunol.Meth.40:219,1981、及びNygren,J.Histochem.And Cytochem.30:407,1982により記載される方法が挙げられる。
【0110】
例えばELISA、RIA、及びFACSなどの、ミオスタチンを測定するための種々の方法が当該技術分野において公知であり、変化した又は異常なレベルのミオスタチン発現を診断するための基準となる。正常若しくは標準的な発現値は当該技術分野において公知の技術を使用して決定でき、例えばミオスタチンポリペプチドを含む試料を、抗原:抗体複合体の形成に適した条件で例えば抗体と結合させることにより行うことができる。当該抗体を、検出可能な物質を直接又は間接的と結合させて標識することにより、結合又は非結合の抗体の検出が可能となる。適切な検出可能物質として種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質及び放射性物質などが挙げられる。適切な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼなどが挙げられ、適切な補欠分子族複合体の例としてはストレプトアビジン/ビオチン及びアビディン/ビオチンなどが挙げられ、適切な蛍光物質の例としてはウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド又はフィコエリトリンなどが挙げられ、発光物質の例としてはルミノールが挙げられ、放射性物質の例としては125I、131I、35S又はHが挙げられる(例えばZola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,CRC Press,Inc.(1987)を参照)。形成させたコントロールとしての複合体の量を分光測定などの様々な手段により測定し、更にサンプル中に発現されたミオスタチンポリペプチドの量を上記のコントロール値と比較する。
【0111】
便宜上、本発明の抗体はキットとして、検査を実行する際の取り扱い説明書と共に所定量の試薬のパッケージを組み合わせた形で提供してもよい。抗体が酵素で標識されている場合、当該キットには酵素反応に必要となる基質及び補因子(例えば検出可能な発色団又はフルオロフォアを形成する基質前駆体)が含まれる。更に、他の添加剤として安定化剤、バッファ(例えばブロッキングバッファ又は溶解バッファ)などを含めてもよい。様々な試薬の相対量を適宜調節し、分析感度が実質的に最適化される溶液中の試薬濃度を検討するのが好ましい。特に、試薬を乾燥粉末(通常凍結乾燥させ、賦形剤を含有させた状態)として提供し、使用の際にそれを溶解させ、適切な濃度の試薬を調製してもよい。
【0112】
本発明の抗体の治療への使用
ミオスタチンは、筋肉の発達及び多くの関連する障害又は疾患に関与する。成人では、ミオスタチンmRNAは低濃度で脂肪組織及び心臓組織においても検出されるが、主に骨格筋において検出される(Sharma,M.ら、J.Cell Physiol.180:1,1999)。ミオスタチンノックアウトマウスは、その野生型同腹仔よりも筋肉量が2倍〜3倍増加している。増加した筋肉量は、繊維の肥大及び過形成によるものである(McPherron,Aら、Nature 387:83−90,1997 and Zhu,X.ら、FEBS Letters 474:71)。更に、ミオスタチンノックアウトマウスでは、その野生型同腹仔より脂肪蓄積が少ないが、それ以外は、外観上正常かつ健康である。ミオスタチンはまた、脂肪生合成の重要な調節因子であることが最近明らかにされている(Rebbapragada,A.ら、Mol.and Cell.Bio.23:7230−7242,2003)。更に、ミオスタチン欠損マウスにおける骨格及び骨量が最近研究されている(Hamrick M.W.ら、J.Orthopaedic Research 21:1025,2003、Hamrick,M.W.ら、Calcif Tissue Int 71:63,2002)。
【0113】
従って、本発明の抗ミオスタチンモノクローナル抗体を含んでなる医薬組成物は、筋肉重量の増加、骨密度の増加、筋肉の萎縮の減少を目的として使用してもよく、又は、ミオスタチンの存在が望ましくない病理学的効果を生じさせるか若しくはそれに関与するか、又はミオスタチン濃度の減少が哺乳類(好ましくはヒト)の治療効果につながりうる、症状の治療若しくは予防に有効利用してもよい。当該症状としては、筋肉の萎縮、筋肉の損傷、手術、傷害を受けた筋肉の修復、虚弱、加齢に関連する筋肉減少症、廃用性筋萎縮、骨粗鬆症、骨関節炎、靭帯の発達及び修復、肥満、体脂肪蓄積の抑制、肥満、いかなるタイプの筋ジストロフィー、救命医療ミオパシー、アルコール性筋疾患、悪液質(例えば、癌関連若しくはHIV誘導、又はCOPD、慢性肺疾患、敗血症からの回復、腎不全、肝不全、心不全若しくは疾患から生じる)、メタボリックシンドローム、日焼け後の筋萎縮及びII型糖尿病などが挙げられるがこれらに限定されない。廃用性筋萎縮は多くの障害、疾患若しくは症状などを基に、多数の原因又は事象から生じる可能性があり、それにより長期にわたる不動、廃用若しくは床上安静をもたらす。当該障害、疾患若しくは症状としては、臓器移植、関節置換、脳卒中、脊髄損傷、重度の日焼けからの回復、坐業による慢性血液透析、敗血症後の回復及び微小重力曝露などが挙げられるがこれらに限定されない。ミオスタチンが種間にわたって配列及び機能が高度に保存されているため、本発明の抗体は、筋肉重量の増加、骨密度の増加、又はヒト以外の哺乳類若しくは鳥類(家畜(例えばイヌ及びネコ)、競技用動物(例えばウマ)、食用動物(例えばウシ、ブタ及びヒツジ)、鳥類(例えばニワトリ、七面鳥及び他の猟鳥又は家禽))の症状の治療若しくは予防に使用できる。当該症状とは、ミオスタチンの存在が望ましくない病理に影響を与える若しくは関与するか、又はミオスタチン濃度の減少が治療効果につながるものである。
【0114】
ミオスタチン活性が有害であるか、又は生理活性型ミオスタチンのレベル減少により利益が得られる少なくとも1つの上記障害の治療又は予防を目的とする、本発明の抗ミオスタチンモノクローナル抗体の使用が本発明に包含される。更に、少なくとも1つの前記障害の治療用薬剤の製造への、本発明の抗ミオスタチンモノクローナル抗体の使用が包含される。
【0115】
本発明の用語「治療」、「治療する」等は、所望の薬理学的及び/又は生理学的な効果を得ることを指す。当該効果は、その疾患若しくは症状を完全に若しくは部分的に予防という意味で予防的であってもよく、及び/又は、疾患及び/又は疾患に起因する悪影響を部分的若しくは完全に治癒させるという意味で治療的であってもよい。本発明の用語「処理」とは、疾患又は症状の治療用の本発明の化合物を哺乳類(特にヒト)に投与することを含んでなり、具体的には(a)当該疾患に罹患する体質有するが、そのように診断されていない患者で当該疾患が発症するのを防止すること、(b)疾患を抑止(すなわちその進行を防止する)すること、及び(c)疾患を緩和する(すなわち当該疾患若しくは障害を後退させること、又は当該症状又は合併症を緩和すること)を含んでなる。所望の反応(例えば治療的又は予防的な反応)を最適化できるように投与計画を調整することが好ましい。例えば、単一のボーラス投与を行ってもよく、幾つかの投与量に分割して所定時間において投与してもよく、又は治療状況の緊急性に応じて投与量を適宜増減させてもよい。
【0116】
医薬組成物
本発明の抗体を、患者への投与に適する医薬組成物中に添加してもよい。本発明の化合物は、一回若しくは複数回の投与において、それ単独で投与してもよく、又は薬理学的に許容できる担体、希釈剤及び/又は賦形剤と組み合わせて投与してもよい。投与用の医薬組成物は、所望の投与様式に適する態様で設計され、薬理学的に許容できる希釈剤、担体及び/又は賦形剤(例えば分散剤、バッファ、界面活性剤、防腐剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤等)を必要に応じて使用する。当該組成物は、当業者に公知の製剤技術の概略を記載したRemington,The Science and Practice of Pharmacy,19th Edition、Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA 1995等の、従来の技術に従って設計される。
【0117】
本発明の抗ミオスタチンモノクローナル抗体を含有する医薬組成物は、経口、静脈内、腹膜内、皮下、肺、経皮、筋肉内、鼻腔内、口腔内、舌下、又は坐薬投与などの標準的な投与方法により、本発明に記載するような病理の危険性を有するか、又は当該病理を示す患者に投与できる。
【0118】
本発明の医薬組成物は、好ましくは本発明の抗体を「治療的有効量」又は「予防的有効量」で含有する。「治療的有効量」とは、所望の治療効果を得るのに必要な投与量及び時間量のことを指す。当該抗体の治療的有効量は、患者の病状、年齢、性別及び体重、並びに当該個人において所望の応答を誘導する当該抗体若しくは抗体部分の能力などの要因に応じて変化し得る。治療的有効量はまた、治療的に有益な効果が、当該抗体のいかなる毒性又は有害な効果をも上回る態様のことを指す。「予防的有効量」とは、所望の予防的結果を得るのに必要となる投与量及び時間量のことを指す。典型的には、予防的投与は疾患に罹患する前又は疾患の初期段階に患者に対して行われるため、予防的有効量は治療的有効量よりも少ないと考えられる。
【0119】
治療的有効量若しくは予防的有効量は、被検者に治療的利点を与えるために必要となる、最小限量より多く、かつ毒性投与量より少ない量の有効成分のことを指す。換言すると、本発明の抗体の治療的有効量とは、筋肉重量を増加させるか、骨密度を増加させるか、ミオスタチンの存在が望ましくない病理学的効果を生じさせるか若しくはそれに関与する症状、又はミオスタチン濃度の減少が哺乳類(好ましくはヒト)の治療効果につながりうる症状の治療に有効な量のことを指す。当該症状としては、筋肉の萎縮、筋肉の損傷、手術、傷害を受けた筋肉の修復、虚弱、加齢に関連する筋肉減少症、廃用性筋萎縮、骨粗鬆症、骨関節炎、靭帯の発達及び修復、肥満、体脂肪蓄積の抑制、肥満、いかなるタイプの筋ジストロフィー、救命医療ミオパシー、アルコール性筋疾患、悪液質(例えば、癌関連若しくはHIV誘導、又はCOPD、慢性肺疾患、敗血症からの回復、腎不全、肝不全、心不全若しくは疾患から生じる)、メタボリックシンドローム、日焼け後の筋萎縮及びII型糖尿病などが挙げられるがこれらに限定されない。廃用性筋萎縮は多くの障害、疾患若しくは症状などを基に、多数の原因又は事象から生じる可能性があり、それにより長期にわたる不動、廃用若しくは床上安静をもたらす。当該障害、疾患若しくは症状としては、臓器移植、関節置換、脳卒中、脊髄損傷、重度の日焼けからの回復、坐業による慢性血液透析、敗血症後の回復及び微小重力曝露などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0120】
本発明の抗体の投与経路は、経口投与、非経口投与、吸入、又は局所投与であってもよい。好ましくは、本発明の抗体は非経口投与に適した医薬組成物中に含有させることができる。本発明で使用される用語「非経口」としては、静脈内、筋肉内、皮下、直腸内、膣内又は腹膜内投与が挙げられる。静脈内又は腹膜内又は皮下注射による末梢への全身輸送が好ましい。かかる注射に用いる適切な担体は当該技術分野において簡便に入手できる。
【0121】
医薬組成物は通常、例えば密封バイアル又は注射器などの容器中で、製造及び保存条件下で無菌的かつ安定的な状態に維持される必要がある。したがって、医薬組成物は製剤後に濾過滅菌するか、又は微生物学的に許容できる状態にするこが好ましい。静脈内への点滴に用いる典型的な組成物は250〜1000mlの流体であってもよく、例えば無菌リンガー溶液、生理食塩水、ブドウ糖溶液及びハンクス溶液、並びに治療的有効量(例えば1〜100mg/ml又はそれ以上)の抗体濃度を含有してもよい。投与量は疾患の種類及び重症度に応じて変化し得る。医療分野で周知のように、患者への投与量は、患者の体の大きさ、体表面積、年齢、投与する具体的な化合物、性別、投与時間及び経路、健康状態又は同時に投与する他の薬剤などの多数の要因を考慮しながら決定される。典型的な投与量は例えば、0.001〜1000μgの範囲であってもよいが、特に前記の諸要因を考慮してこの典型的な投与量範囲を調節するのが好ましい。非経口による連日投与計画は、総体重当り約0.1μg/kg〜約100mg/kg、好ましくは約0.3μg/kg〜約10mg/kg、好ましくは、約1μg/kg〜1mg/kgであり、最も好ましくは一日あたり体重1kg当り約0.5〜10mg/kgである。症状の進行を定期的にモニターしてもよい。数日以上にわたる繰り返し投与を行う場合、症状に応じて症状の所望の抑制効果が得られるまで当該処置を反復する。しかしながら、他の投与計画も有用であると考えられ、本発明の範囲にも依然包含される。医師が所望する薬物動態学的分解のパターンに応じて、単回のボーラス投与、複数回のボーラス投与又は連続投与によって好ましい量の抗体を輸送することができる。
【0122】
上記で提案される抗体量は、多くの治療的判断の対象となる。適当な投与量及び投与計画を選択する際の鍵となる要因は得られる結果である。この状況において考慮される要因としては、治療しようとする具体的な障害、治療しようとする具体的な哺乳動物、個々の患者の臨床条件、障害の原因、抗体の輸送部位、抗体の具体的なタイプ、投与方法、投与計画及び医師にとり公知の他の要因などが挙げられる。
【0123】
本発明の治療薬は凍結又は凍結乾燥して保存でき、使用前に適切な無菌の担体中で再調製してもよい。凍結乾燥及び再調製は若干の抗体活性の損失をもたらし得るため、それを補填するために使用量を調節するのが好ましい。通常pH6〜8が好ましい。
【0124】
製品
本発明の他の一実施態様は、上記の障害若しくは症状の治療若しくは予防に有用な材料を含んでなる製品の提供に関する。当該製品は容器とラベルとを含んでなる。好ましい容器としては、例えばボトル、ガラス瓶、シリンジ及び試験管が挙げられる。当該容器はガラス又はプラスチックなどの様々な材料で作製してもよい。当該容器は病状の治療に効果を発揮する有効成分を含有する組成物を内包し、また滅菌されたアクセスポートを有する(例えば当該容器は皮下注射針により貫通可能なストッパーを備えた静脈注入用のバッグ又はバイアルであってもよい)。当該組成物中の有効成分は本発明の抗ミオスタチン抗体である。容器上に貼り付けたラベル、若しくは容器に結び付けられたラベルには、当該組成物が所定の症状の治療に用いられることが示されている。当該製品は、薬理学的に許容できるバッファ(例えばリン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液及びブドウ糖溶液)が内包されている第二容器を更に含んでなってもよい。商取引上の観点及びユーザの観点から考慮し望ましい他の材料を更に含んでなってもよく、例えば他のバッファ、希釈剤、フィルタ、針、シリンジ及び使用説明を記載した印刷物などが挙げられる。
【0125】
以下の実施例は本発明を説明する目的でのみ提供するものであり、いかなる形であれ本発明の範囲を限定することを目的とするものではない。
【実施例】
【0126】
<実施例1>:ELISAアッセイ
A.ミオスタチン及びGDF−11被覆プレート
本発明のマウス/ヒト抗ミオスタチンFabをELISA解析し、96ウェルプレート上で種々の濃度でコーティングした成熟ミオスタチン(二量体形態)へのFabの結合を測定した。またGDF−11へのFabの結合も試験した。
【0127】
2つの96ウェルプレートを準備し、各ウェルに、組換えヒトミオスタチン溶液50μL(R&D systems社製、担体フリー、4mMのHCl溶液に最初に再懸濁させ、次に炭酸塩バッファ(pH9.6)中に1μg/mlの濃度でコーティング)、又は組換えヒトGDF−11溶液50μL(Peprotech社製(Cat.#120−11)、担体フリー、4mMのHCl溶液に最初に再懸濁させ、次に炭酸塩バッファ(pH9.6)中に1μg/mlの濃度でコーティング)でコーティングした。プレートを4℃で一晩インキュベートした。ウェルの中身を吸引し、PBST(PBS+0.1% Tween20)で二度洗浄した。ウェル当り200μLのブロッキングバッファを添加し、プレートをブロッキングした(1時間、PBST+1% BSA)。
【0128】
試験に使用する、ペリプラズム抽出物中のFabをPBSTで連続希釈した。50μLの各Fab溶液を、GDF−8及びGDF−11でコーティングしたプレートに添加した。プレートを室温で1時間インキュベートした。次にウェルを洗浄バッファで3回洗浄した。
【0129】
ペルオキシダーゼ−コンジュゲート2次抗体(50μL、ヤギ抗マウスκHRP、Southern Biotech社製、ブロッキングバッファ中に1:2000に希釈)を各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。次にウェルを洗浄バッファで3回洗浄した。50μLの発色性基質(AMP/PMP)を各ウェルに添加し、室温で発色させた。560nmのODでウェルの吸光度を測定した。各Fabにおける滴定曲線を作成し、参照Fab曲線の中央値に対する相対的なODとして算出した。
【0130】
これらのデータは、試験した全てのFabがGDF11との交叉反応性を有しながら、プレートに結合しているヒト成熟型ミオスタチンと結合することを示すものである。
【0131】
B.Fab捕捉ELISA
炭酸塩バッファ中、1ml当り2μgのヤギ抗ヒトκ抗体を含有する溶液50μLを添加し、96ウェルプレートをコーティングした。プレートを4℃で一晩インキュベートした。ウェルの中身を吸引し、PBST(PBS+0.1% Tween20)で二度洗浄した。ウェル当り200μLのブロッキングバッファを添加し、プレートをブロッキングした(1時間、PBST+1% BSA)。
【0132】
試験に使用する、ペリプラズム抽出物中のFabを、37℃で2時間、プレート中で捕捉させた。PBSTで3回洗浄した後、ビオチン化ミオスタチンの2倍連続希釈系列(100nM〜780pM)50μLを、捕捉されたFabが含まれる各カラムに添加し、37°Cで1時間インキュベートした。更に当該プレートをPBSTで洗浄し、37℃で1〜3時間PBSTでインキュベートした。
【0133】
アルカリホスファターゼ−コンジュゲートNeutravidin(PBST中で1:1000に希釈)を各ウェルに添加し、室温で2分間インキュベートした。次にウェルを洗浄バッファで3回洗浄した。50μLの発色性基質(AMP/PMP)を各ウェルに添加し、室温で発色させた。560nmのODでウェルの吸光度を測定した。各Fabにおいて滴定曲線を、参照Fab曲線の中央値に対する相対的なODとして作成した。
【0134】
試験に用いた本発明の全てのFabは、可溶性ヒト成熟型ミオスタチンと結合した。
【0135】
実施例2:ミオスタチン中和アッセイ
標準的な方法に従い、外胚葉移植片を8〜9胞胚期のXenopus胚から摘出し、成長因子(GDF8又はGDF11)を添加した0.5×MBS(1×MBS:88mMのNaCl、1mMのKCl、0.7mMのCaCl、1mMのMgSO、5mMのHEPES、2.5mMのNaHCO、1:1000v/vゲンタマイシン、0.1%のウシ血清アルブミン)中で18℃で18時間培養した(コントロールの胚では初期神経胚の段階(15−16段階)に達した)。移植片を撮影し、各移植片の長さはアニマルキャップ測定用に設計した画像解析アルゴリズムを使用して測定した。成長因子又はFab(コントロール)で処理しない移植片は、球状の表皮に変形した。ミオスタチン及びGDF−11はこれらの外胚葉移植片において中胚葉形成を誘導し、移植片を伸ばしダンベル状構造を形成させた。中和活性を試験する際、抗体又はFabを全培養期間にわたりミオスタチン含有培地に添加し、成長因子により誘導される伸長を阻害する能力を評価した。ミオスタチンを25ng/mlで移植片に添加した。試験する抗体又はFabを20μg/mlで添加した。無関係な抗原から調製したFabをコントロールとして用いた。市販の抗ミオスタチンポリクローナル抗体も同様に試験した。この抗体は精製マウスGDF8で免疫したヤギ体内で作製させたものであり、約10〜50μg/mlで存在させた場合に、25ng/mlのマウスGDF8で誘導されるXanopusのアニマルキャップの伸長を中和することが製造業者により示されている(R&D Systems社製、カタログ番号AF788)。
【0136】
ImagePro(v4.5.1.22、Media Cybernetics)を画像処理に使用した。画像処理を自動化するマクロを作成した。マクロにより画像処理され、ビット単位で長さが記録される。当該技術分野において公知の代替的な測定方法を用いてもよい。アニマルキャップ分析においてGDF8活性を中和する抗体も本発明に包含される。
【0137】
実施例3:Fabの親和性の測定
本発明の抗ミオスタチンFabの親和性(K)、並びにkon及びkoff速度を、CM4センサチップを装備したBIAcore(登録商標)2000計測器を使用して測定した。BIAcore(登録商標)とは、表面プラスモン共鳴における光学特性を利用して、デキストランバイオセンサマトリックス内で相互作用分子としてのタンパク質濃度の変化を検出するための手段である。特に断りのない限り、全ての試薬及び材料はBIAcore(登録商標)AB(Upsala、スウェーデン)から購入した。測定は全て25℃で実施した。Fabを含有するサンプルを、HBS−EPバッファ(150mMの塩化ナトリウム、3mMのEDTA、0.05%(w/v)の界面活性剤P−20及び10mMのHEPES(pH 7.4))中に溶解させた。ミオスタチン又はGDF−11(R&D Systems社製)を、アミンカップリング剤を使用してCM4チップのフローセル上へ固定させた。フローセル(1−4)を、0.1M N−ヒドロキシスクシンイミド及び0.1M 3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル−N−エチルカルボジイミドの1:1混合物で、10μL/分の流速で7分間活性化させた。ミオスタチン又はGDF−11(10mMの酢酸ナトリウム(pH4.5)バッファ中2.5μg/mL)を、10μL/分の流速で個々のフローセルに手作業で注入した。各フローセルが〜150応答単位(RU)の表面密度に達するまで表面密度をモニターした。1M エタノールアミン−HCl(pH8.5)を10μL/分で7分間注入し、表面をブロッキングした。15μLの10mMのグリシン(pH1.5)を二回添加し、非共有結合的に結合したいかなるミオスタチン又はGDF−11を完全に除去した。動態解析用に使用するランニングバッファの組成は、10mMのHEPES(pH7.4)、150mMのNaCl、0.005%のP20である。
【0138】
動力学的結合データの収集は最大流速(100μL/分)で実施した。各分析サイクルは、(i)フローセル1を対照フローセルとする、合計4フローセルへの、Fab溶液250μL注入(50nM〜0.4nMの濃度範囲となるように2倍希釈系列を作製)、(ii)バッファフローによる20分間の解離、(iii)10mMのグリシン溶液(pH1.5)15μLを2回注入することによる、GDF−8若しくはGDF−11表面の再構成、(iv)ランニングバッファ(15μL、ブランク)の注入、及び(v)次のサイクルの開始前2分間の安定化からなる。シグナルを、(フローセル2)−(フローセル1)、(フローセル3)−(フローセル1)、及び(フローセル4)−(フローセル1)としてモニターした。試料及びバッファブランクを、無作為な順序で二回注入した。SCRUBBERソフトウェア(Center for Biomolecular Interaction Analysis,Univ.of Utah)を使用してデータを処理した。各サイクルにおける結合速度及び解離速度は、単純な結合モデルを使用したClampXP(Center for Biomolecular Interaction Analysis,Univ.of Utah)に対してバイオセンサーデータを適合させてkon及びkoffの速度定数を算出し、平衡結合定数KはK=koff/konの関数を使用して算出した。上記の分析法で測定した場合、Fab 41−1及び412−6はそれぞれ4.16nM(4.16×10−9M)及び0.46nM(4.6×10−10M)のGDF−8に対する親和性、並びにそれぞれ8.96nM及び0.81nMのGDF−11に対する親和性を示し、両方のFabに対する相対的な特異性は、GDF−11と比較してGDF−8では約2倍であった(表2)。
【0139】
【表2】

【0140】
実施例4:モノクローナル抗体の親和性の測定
本発明の全長のモノクローナル抗体の結合親和性の測定は、Sapidyne KINEXAアッセイにより実施した。NHSで活性化したfast−flowセファロースビーズ(GE Healthcare社製)を、本発明の抗体でプレコート(ビーズ1ml当たり50μgの抗ミオスタチン抗体)し、1Mのトリス−HCl(pH8.0)中の10mg/ml BSAでブロッキングした。次に2pM、4pM、40pMの本発明の抗体(例えば3−74/C1E4)を、ミオスタチンを様々な濃度(例えば2.4pM〜10nM、連続希釈液)で溶解させたランニングバッファ(PBS、0.005%(v/v)のTween−20及び1mg/mlのオボアルブミン)と室温で10時間インキュベートした。平衡状態で存在する遊離抗体を測定するため、各サンプルを、ミオスタチンでコーティングしたビーズ中を通過させた。次に、ビーズの上からランニングバッファ中の、1:4000に希釈した、蛍光(Cy5)標識したヤギ抗ヒトFc抗体(Jackson Immuno Research社製)の溶液を通過させ、ビーズに結合した抗体量を測定した。測定される蛍光シグナルは、平衡状態における遊離抗体の濃度と比例する。ミオスタチンの濃度を各々2回測定した。平衡解離定数(K)は、複数曲線による、1部位における均一結合モデル(KINEXAソフトウェア)を使用した、競合曲線の非線形回帰から得られる。
【0141】
またGDF−8に対する結合速度定数(kon)も、Sapidyne KINEXAアッセイにより決定される。上記と同様の条件において、2pMの抗体を20pMのGDF−8と混合した。様々な時間、サンプルを平衡結合の解析に上記で使用した条件を使用して、遊離抗体と結合させ、得られる時間依存性を、KINEXAソフトウェアを使用して解析し、結合速度(kon)を決定した。解離率定数(koff)は関数koff=KD×konを使用して算出した。全長モノクローナル抗体3−74/C1E4(制御可能な状態でIgG Fc領域と結合)を、上記のアッセイを使用して測定し、得られた結果を以下の表3に示す。
【0142】
【表3】

【0143】
実施例5:ミオスタチン/SBEリポーターアッセイ
このリポーターアッセイでは、ミオスタチン、GDF−11又は他のTGF−βスーパーファミリーのメンバーなどの分子がそれ自身のレセプターと結合する場合に、リポーター遺伝子をコードするプラスミド(すなわちルシフェラーゼ遺伝子がSMAD結合要素(「SBE」)、より詳しくは(CAGA)12の下流に結合する)がルシフェラーゼタンパク質を発現し、それによりSMADシグナリングが活性化され、SBEと結合できるリン酸化されたSMAD複合体が生成する。CAGA配列は従来、TGF−β誘導された遺伝子PAI−1のプロモーター内のTGF−β応答配列であることが報告されている(Dennerら、EMBO J.,17:3091−3100,1998)。細胞に曝露させる活性型ミオスタチンの量は、産生されるルシフェラーゼ酵素の量と比例関係にあるため、発生する光の量の関数としてその量を測定することができる。阻害剤(例えばミオスタチンと結合する抗体)の存在により、SBEを活性化できるミオスタチンの量が減少し、最終的に光の発生量が減少する。このアッセイ方法は、本願明細書で援用する国際公開第2004/037861号にも記載されている。
【0144】
ミオスタチン/SBEレセプターアッセイは本願明細書に記載されているアッセイ条件に限定されず、他のタイプの細胞(例えば293HEK(ATCC)又はA204横紋筋細胞(例えばWhittemoreら、BBRC,200:965−71,2003))の使用、他のタイプのリポーター(例えばCAT、β−ガロン、GFP)の使用、並びに反応系中のミオスタチン含量の変化などの、細胞の増殖条件及びアッセイ条件の使用を適宜行ってもよい。当業者であれば、宿主細胞に導入したベクター上のリポーター遺伝子の上流にSBE要素が存在し、使用するSBE要素が、ミオスタチン受容体と結合しているミオスタチンに応答して生じるSMADと反応することを指標にして、分析方法がミオスタチン/SBEリポーターアッセイに適するか否かを検討することができる。R.S.Thiesら、Growth Factors,18:251−259,2001では同様のアッセイ方法が記載されており、Wittemore、L.ら、BBRC、300:965−971、2003では、そのレセプターとミオスタチンとの結合に応答して生じるSMADに対するSBE要素の応答に関して記載されている。
【0145】
このアッセイでは、T−75フラスコ中の293E細胞(Edge Biosystems社製)を、10%のFBSを添加したDMEM/F12(1:1)培地(Gibco 10565−042)中で増殖させた。細胞を、100μLのリポフェクトアミン2000(Invitrogen 11668−019)、5mlのOptiMEM I(Gibco 51985−034)及び30μgのSB−ルシフェラーゼDNAの混合物と37℃で4時間トランスフェクションした。次にトランスフェクション用混合液を除去し、完全培地を添加し37℃で1時間インキュベートした。次に細胞をトリプシン処理し、完全培地で2×10細胞/mlとなるように再懸濁し、Biocoat 96ウェルプレート(BD 35−6461)の各ウェルに50μLずつ播種し、37℃で1時間インキュベートした。培養終了後、培地を除去し、代わりに試験に使用する各濃度Fabを含有する溶液(1:2の連続希釈系列)100μLを添加し、40ng/mlのミオスタチン(R&D Systems 788−G8)又はGDF−11(R&D Systems)の培地中の1:1溶液で、37℃で1時間インキュベートした。
【0146】
プレートを37℃、5%のCOの条件で一晩静置し、次の日Glo Lysis Buffer:Bright−Glo Luciferase試薬(プロメガ社製)の1:1溶液100μLを各ウェルに添加し、ピペッティングにより混合した。この混合液から150μLを採取して白い96ウェルプレートへ移し、蛍光光度計を使用して蛍光測定した。次に蛍光をFab濃度に対してプロットし、各Fab濃度におけるミオスタチン及びGDF−11に対するIC50を算出した。
【0147】
上記のアッセイ条件を使用してFabを試験し、以下の表4に得られたIC50値を示す。
【0148】
【表4】

【0149】
実施例6:薬物動態
C57B6/SCIDマウスに対し、本発明の抗体を1mg/kgの量で静脈(IV)又は腹膜内(IP)に単回投与した後、抗体の薬物動態学(PK)を評価することができる。動物に対し、上記した投与量で、非標識抗体と125I標識抗体の混合物を投与し、その血清濃度を、血清中の125I放射能及び投与された薬物の特異的な活性基づいて測定した。時間に対する抗体の血清濃度(IV又はIP投与)をプロットした。
【0150】
実施例7:筋肉重量及び強度に対するin vivo効果
本発明の抗体がin vivoでミオスタチン活性を阻害するか否かを決定する際、本発明の抗体をSCIDマウス成体中で試験してもよい。SCIDマウスは重度の複合型免疫不全症に罹患するため、本発明の抗体の注入後に免疫学的反応が生じない。筋肉重量を指標として用い、本発明の抗体で処理したマウスにおけるミオスタチン活性が解析できる。
【0151】
雌のSCID/CB17マウス(Taconic Biotechnology社製)を体重測定し、10の群に分けた。PBSバッファ中に本発明の抗体(41C1E4)を溶解させ、0日及び7日目において、各種投与量(10、5及び2mg/kg)でマウスに皮下注射した。対照群には、10mg/kgのIgGを0日及び7日目にマウスに皮下注射した。14日目に筋力(前肢の強度)を、握力試験測定器(例えば、model 1027 csx,Columbus Instruments社製)で測定した。動物をと殺し、筋肉重量を核磁気共鳴法(NMR)で測定した。腓腹筋及び四頭筋の筋肉(湿)重量を体重と同様に測定した。結果(様々なパラメータに関する平均及び標準偏差)を下記の表5に示す。データをBox Cox変換法によって変換し、データを標準化した。各パラメータにおける異常値を、JMP 5.1ソフトウェア(SAS社)を用いて統計的手段により同定し、データセットから除外した。統計的有意性をANOVA及びスチューデントt検定により検定した。0.05未満のp値を有意であるとみなした。抗体を5mg/kg及び10mg/kgで試験した結果、試験した全てのパラメータにおいて、対照のIgG群と比較して統計学的な有意差が見られた。抗体を2mg/kgで試験した結果、NMRによる筋肉、四頭筋の湿重量及び腓腹筋の湿重量のパラメータにおいて、対照のIgG群と比較して統計学的な有意差が見られた。
【0152】
【表5】


BW=体重
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】ヒトプロミオスタチンのアミノ酸配列であり、シグナル配列を下線で示し、成熟型のミオスタチンの単量体を構成する当該タンパク質のカルボキシル末端部分を太字で示す。
【図2】ヒト成熟ミオスタチンのアミノ酸配列を示す。活性型のヒトミオスタチンは、ジスルフィド結合によって結合した当該ポリペプチドのホモ二量体である。この配列は、マウス、ラット、ニワトリ、七面鳥、イヌ、ウマ及びブタの成熟型ミオスタチンのそれと同一である。
【図3】様々な哺乳類及び鳥類の成熟型ミオスタチンのアミノ酸配列のアラインメントを示す。
【図4】ヒト成熟型ミオスタチン及びヒトGDF−11のアミノ酸配列のアラインメントを示す。
【図5】YN41抗体のHCVR及びLCVRのアミノ酸配列(本発明の抗体の典型的な親抗体)を示す。更なる図は、YN41抗体のHCVR及びLCVRをコードする典型的なヌクレオチド配列を示す。
【図6−1】本発明の様々な抗体のLCVRのCDRsのアミノ酸配列を示す。
【図6−2】本発明の様々な抗体のLCVRのCDRsのアミノ酸配列を示す。
【図7−1】本発明の様々な抗体のHCVRのCDRsのアミノ酸配列を示す。
【図7−2】本発明の様々な抗体のHCVRのCDRsのアミノ酸配列を示す。
【図8】軽鎖κ定常部のアミノ酸配列(本発明の抗体の軽鎖の全長を得る際に、本発明の抗体のLCVRと使用可能な状態で連結させてもよい)、及びIgG4定常部領域のアミノ酸配列(本発明の抗体の重鎖の全長を得る際に、本発明の抗体のHCVRに使用可能な状態で連結させてもよい)。更なる図は、軽鎖κ定常部をコードする典型的なヌクレオチド配列、及び重鎖IgG4領域をコードする典型的なヌクレオチド配列を示す。
【図9−1】本発明の様々な抗体のLCVRsのアミノ酸配列のアラインメントを示す。第1の抗体配列中にCDR領域を下線で示す。
【図9−2】本発明の様々な抗体のLCVRsのアミノ酸配列のアラインメントを示す。第1の抗体配列中にCDR領域を下線で示す。
【図10−1】本発明の様々な抗体のHCVRsのアミノ酸配列のアラインメントを示す。第1の抗体配列中にCDR領域を下線で示す。
【図10−2】本発明の様々な抗体のHCVRsのアミノ酸配列のアラインメントを示す。第1の抗体配列中にCDR領域を下線で示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
7×10−11M以下の親和性でミオスタチンと特異的に結合する抗ミオスタチンモノクローナル抗体。
【請求項2】
前記抗体が、バックグラウンドより顕著に高いレベルで成熟型ミオスタチンのアミノ酸40−64を含んでなるペプチドと結合しない、請求項1記載のモノクローナル抗体
【請求項3】
in vitroミオスタチン/SBE分析において5nM以下のIC50値を示す抗ミオスタチンモノクローナル抗体。
【請求項4】
in vitroミオスタチン/SBEリポーターアッセイで測定した場合の抗体のIC50値が、in vitroGDF−11/SBEリポーターアッセイで測定した場合の抗体のIC50値より少なくとも20%低い、請求項3記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
前記抗体がキメラ抗体、ヒト化抗体、完全なヒト抗体又はそれらの抗原結合部分である、請求項1から3のいずれか1項記載のモノクローナル抗体。
【請求項6】
競合ELISAアッセイにおいて、配列番号98及び配列番号138に示される配列を有する2つのポリペプチドを含んでなる抗体との間でミオスタチンとの結合が競合する、抗ミオスタチンモノクローナル抗体。
【請求項7】
2つのポリペプチドを含んでなり、1つのポリペプチドが配列番号74から102、140、141及び142からなる群から選択される配列を有し、もう1つのポリペプチドが配列番号103から138からなる群から選択される配列を有する、請求項1から6のいずれか1項記載のモノクローナル抗体。
【請求項8】
前記モノクローナル抗体が全長抗体、実質的な完全抗体、Fab断片、F(ab’)断片又は単鎖Fv断片である、請求項1から7のいずれか1項記載のモノクローナル抗体。
【請求項9】
前記モノクローナル抗体がIgG、IgG、IgG、IgG、IgA、IgE、IgM及びIgDからなる群から選択される重鎖定常領域を更に含んでなる、請求項1から7のいずれか1項記載のモノクローナル抗体。
【請求項10】
前記抗体中に存在する定常領域が、家畜、競技用動物及び食用動物からなる群から選択される動物のゲノムに由来する、請求項1から6のいずれか1項記載のモノクローナル抗体。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項記載の抗体を含んでなる医薬組成物。
【請求項12】
薬理学的に許容できる担体を更に含んでなる、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項13】
薬剤として用いられる、請求1から10のいずれか1項記載の抗体。
【請求項14】
虚弱、悪液質、筋肉萎縮、筋肉虚弱、筋疾患、筋ジストロフィー、骨粗鬆症、COPD、腎不全若しくは腎疾患、肝不全又は疾患、心不全、II型糖尿病又はメタボリックシンドロームから選択される1つ以上の症状の治療用若しくは予防用薬剤の調製のための、有効量の請求項1から10のいずれか1項記載の抗体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【公表番号】特表2009−511579(P2009−511579A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535569(P2008−535569)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/038817
【国際公開番号】WO2007/047112
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】