説明

抗体ベース融合タンパク質の循環系内半減期の増強

【課題】抗体ベース融合タンパク質の循環系内半減期を増強するための組成物および方法を開示する。
【解決手段】抗体ベース融合タンパク質内の、抗体部分と融合タンパク質部分の連結領域におけるアミノ酸配列の変化に基づく。連結領域におけるアミノ酸配列の変換を有する抗体ベース融合タンパク質を哺乳動物に投与すると、より長期の循環系内半減期を示す。開示された組成物および方法は、哺乳動物の腫瘍の大きさおよび転移を減少せしめるために特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2000年2月11日に出願されたU.S.S.N. 60/181,768を優先権の基礎とし、そしてその利益を受けることを主張し、その開示は参照として本明細書に組み込む。
【0002】
発明の分野
本発明は、全般に、融合タンパク質に関する。より詳細には、本発明は、抗体ベース融合タンパク質の循環系内半減期を増強する方法に関する。
【0003】
発明の背景
ヒトの疾患を処置するための抗体の使用は、十分に確立されており、そして遺伝子工学の導入によってより精巧になっている。抗体の有用性を改善するためにいくつかの技術が開発されている。これらには以下が含まれる:(1)「ハイブリドーマ」を生成するための細胞融合による、または抗体産生細胞からの抗体重鎖(H)および軽鎖(L)の分子クローニングによる、モノクローナル抗体の作製;(2)生体内の好ましい部位へ抗体を送達するための、抗体への他の分子、例えば、放射性同位体、毒性薬物、タンパク質毒素、およびサイトカイン、の結合;(3)生物活性を増強または低減するための抗体エフェクター機能の操作;(4)抗体ベース融合タンパク質を産生するための、他のタンパク質、例えば、毒素およびサイトカイン、と抗体との、遺伝子レベルでの連結;ならびに(5)領域を遺伝子レベルで連結して二重特異性抗体を生成する、1組または2組以上の抗体の連結。
【0004】
タンパク質は、当技術分野において公知の方法を用いる化学的操作または遺伝子操作のいずれかによって連結され、一体化することができる。例えば、Gillies et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1428-1432(1992);および米国特許第5,650,150号を参照。
【0005】
しかし、組換えによって産生される抗体ベース融合タンパク質の利用は、循環系からのそれらの迅速な生体内におけるクリアランスによって制限される場合がある。例えば、抗体−サイトカイン融合タンパク質は、遊離の抗体よりも有意に短い生体内における循環系内半減期を有することが示されている。Gilliesらは、種々の抗体−サイトカイン融合タンパク質を試験した場合、試験した全ての融合タンパク質が、1.5時間未満のα相(分配相)半減期を有していたことを報告した。実際、大部分の抗体ベース融合タンパク質は、2時間経過までに、遊離抗体の血清中濃度の10%までクリアランスされた。Gillies et al., Bioconj.Chem.4:230-235(1993)を参照されたい。
【0006】
さらに近時において、Fc受容体に対する結合親和性を低減した抗体ベース融合タンパク質が、増強された循環系内半減期を有することが示された。Fc受容体に対する低減した結合親和性、抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)などの抗体エフェクタ機能を阻害するが、補体結合または抗原結合などの機能は阻害しないことも示された。Gillies et al., Cancer Res.59(9):2159-66(1999)を参照されたい。
癌またはウイルス疾患などのいくつかのケースでは、抗体エフェクタ機能および長い循環系内半減期を維持することが望まれ得る。したがって、当該技術において、抗体ベース融合タンパク質の生体内での循環系内半減期を増強するさらなる方法に対する要求がある。
【0007】
発明の要約
免疫グロブリンG(IgG) 分子は、IgGのクラスの抗体に特異的な3種類のFcγ 受容体(FcγR)、すなわち、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを含む、種々の細胞受容体と相互に作用し合う。それらは、pH依存的にFcRp群の受容体とも相互作用し、中性のpHにおいては僅かしか相互作用しないかまたは全く相互作用しないが、pH6.0においては大きく相互作用をする。
抗体の血清中半減期は、その抗体の、Fc受容体(FcR)およびFc保護受容体(FcRp)への結合能によって影響を受ける。免疫グロブリン融合タンパク質の血清中半減期も、そのような受容体への結合能によって影響を受ける(Gillies et al., Cancer Res. 59: 2159-66(1999))。
【0008】
本発明は、融合タンパク質内に免疫グロブリン(Ig)部分および非免疫グロブリン(非Ig)部分を有し、該2つの部分の連結部位の近傍におけるアミノ酸の変化によって、融合タンパク質の血清中半減期が顕著に増加するという驚くべき発見を開示する。該発見が驚くべきものであるのは、アミノ酸の前記変化が、Fc領域のFc受容体およびFc保護受容体との相互作用表面とは異なるタンパク質表面に影響を及ぼすからである。さらに、本発明の前記アミノ酸変化は、既知のFc受容体およびFc保護受容体が、融合タンパク質の血清中半減期を優先的に決定するものではない場合にもその効果を有する。したがって、本発明の前記アミノ酸変化は、Fc受容体および/またはFc保護受容体との相互作用に影響を及ぼすアミノ酸変化と組み合わせることによって、相乗効果を奏せしめることができる。
【0009】
本発明は、Fc受容体およびFc保護受容体(FcRp)との相互作用表面とは異なる場所における変化の結果によって血清中半減期が改善される、免疫グロブリンを含有する融合タンパク質を提供する。本発明は、免疫グロブリン部分および第二の、非免疫グロブリンタンパク質による、改善された血清中半減期を有する融合タンパク質を産生する方法も提供する。
【0010】
前記融合タンパク質のアミノ酸配列の変化は、好ましくはIg部分および非Ig部分との連結部位のものである。融合タンパク質の前記連結領域は、Ig重鎖および非Igタンパク質の天然において生じる配列を基準にして、前記連結点から約10個のアミノ酸より内側にあると好ましい変化を含む。アミノ酸変化によって疎水性が増大するとさらに好ましい。アミノ酸変化が、抗体部分のC末端リジンのアラニンまたはロイシンなどの疎水性アミノ酸への変化を含むとまたさらに好ましい。好ましい態様において、本発明の融合タンパク質は、Ig重鎖、好ましくは、第二の、非Igタンパク質のN末端側に位置するIg重鎖を含む。
【0011】
本発明の他の一態様において、融合タンパク質のFcRpに対する結合親和性は、FcRpに接触するFc部分の相互作用表面の変化によって最適化される。IgGのFcRp受容体への結合のための重要な配列は、CH2およびCH3ドメインに存在することが報告されている。本発明によって、融合タンパク質における融合連結部位の変化をFcのFcRpとの相互作用表面の変化と組み合わせることによって、相乗効果が奏せられる。Fc部分のpH6におけるFcRpとの相互作用を増大させることが有用である場合があり、そしてFc部分のpH8におけるFcRpとの相互作用を低減させることが有用である場合もある。このような修飾は、Fc受容体との接触のために必要な残基の変化またはコンフォメーションの変化の誘導による、他の重鎖残基とFcRp受容体との接触に影響を及ぼす他の変化を含む。
【0012】
したがって、好ましい態様において、生体内における循環系内半減期が増強された抗体ベース融合タンパク質は、Ig定常領域と第二の、非免疫グロブリンタンパク質のコード配列とをまず結合し、そして次にIgG 定常領域の、Ile253、His310およびHis435からなる群から選択されるまたは1個または2個以上のアミノ酸、またはその近傍に変異(点変異、欠失、挿入または遺伝子再配列)を導入することによって得られる。得られる抗体ベース融合タンパク質は、未修飾の融合タンパク質より、生体内における長い循環系内半減期を有する。
【0013】
ある条件下においては、Fc部分のあるエフェクタ機能を変異せしめることは有用である。例えば、補体の結合を排除してもよい。あるいは、またはさらに、他の態様のセットにおいては、融合タンパク質のIg成分は、FcγRI、FcγRIIまたはFcγRIIIの少なくとも1つとの結合親和性が低減されている、IgGの定常領域の少なくとも1つの部位を有する。例えば、IgGのガンマ4鎖を、ガンマ1鎖の代わりに用いてもよい。当該変化は、ガンマ4鎖によってより長期の血清中半減期がもたらされ、融合連結部における1または2以上の変異と相乗的に機能するという利点を有する。したがって、IgG2もIgG1の代わりに用いてもよい。本発明の他の態様において、融合タンパク質は、変異IgG1定常領域、例えば、Leu234、Leu235、Gly236、Gly237、Asn297、またはPro331の1または2以上の変異または欠失を有するIgG1 定常領域を含む。本発明のさらなる態様において、融合タンパク質は変異IgG3定常領域、例えば、Leu28l、Leu282、Gly283、Gly284、Asn344、またはPro378の1または2以上の変異または欠失を有するIgG3 定常領域を含む。しかし、いくつかの適用場面において、ADCCのようなFc受容体への結合に伴うエフェクタ機能を保持しておくことは有用であり得る。
【0014】
好ましい態様において、融合タンパク質の前記第二の、非免疫グロブリン部分はサイトカインである。本明細書における「サイトカイン」の用語は、天然由来タンパク質または組み換えタンパク質、それらの類縁体およびそれらの断片であって、そのサイトカインの受容体を有する細胞において特異的な生物的反応を解発するものとして用いられる。サイトカインは、好ましくは、細胞によって産生されるかまたは分泌され得るタンパク質である。サイトカインは、好ましくは、インターロイキン−2(IL−2)、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−10、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16およびIL−18などのインターロイキン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)およびエリスロポエチンなどの造血因子、TNFαなどの腫瘍壊死因子(TNF)、リンホトキシンなどのリンホカイン、レプチンなどの代謝経路の制御物質、インターフェロンα、インターフェロンβおよびインターフェロンγなどのインターフェロン、ならびにケモカインを含む。好ましくは、本発明の抗体−サイトカイン融合タンパク質は、サイトカインの生物活性を示す。
【0015】
他の好ましい態様において、融合タンパク質の前記第二の、非免疫グロブリン部分は、生物活性を有するリガンド結合タンパク質である。そのようなリガンド結合タンパク質は、例えば、(1)細胞表面における受容体−リガンド相互作用を阻害するか;または(2)血液の液相において分子(例えばサイトカイン)の生物活性を中和し、それによって、それが細胞内の標的に到達するのを妨げる。リガンド結合タンパク質は、好ましくは、CD4、CTLA−4、TNF 受容体、またはIL−1およびIL−4受容体などのインターロイキン受容体を含む。
本発明の抗体−受容体融合タンパク質は、好ましくは、前記リガンド結合タンパク質の生物活性を示す。
【0016】
さらに他の別異の好ましい態様において、融合タンパク質の前記第二の、非免疫グロブリン部分は、タンパク質毒素である。本発明の抗体−毒素融合タンパク質は、好ましくは前記タンパク質毒素の毒素活性を示す。
さらなる他の別異の好ましい態様において、融合タンパク質の前記第二の、非免疫グロブリン部分は、ホルモン、ニューロトロフィン、体重調節物質、血清タンパク質、凝固因子、プロテアーゼ、細胞外マトリクス成分、血管新生因子、抗血管新生因子、または他の分泌タンパク質または分泌ドメインである。例えば、CD26、IgE受容体、重合型IgA受容体、他の抗体受容体、VIII因子、IX因子、X因子、TrkA、PSA、PSMA、Flt−3リガンド、エンドスタチン、アンジオスタチン、およびこれらのタンパク質のドメインである。
【0017】
さらに他の別異の好ましい態様において、融合タンパク質の前記第二の、非免疫グロブリン部分は、非ヒトまたは非哺乳類タンパク質である。例えば、HIV gpl20、HIV Tat、アデノウィルス、およびRSVなどの他のウィルスの表面タンパク質、他のHIV成分、マラリア抗体などの寄生虫性表面タンパク質、および細菌性表面タンパク質が好ましい。これらの非ヒトタンパク質は、例えば抗原として用いてもよく、またはそれらが有用な活性を有しているという理由で用いてもよい。例えば、前記第二の、非免疫グロブリン部分は、ストレプトキナーゼ、スタフィロキナーゼ、ウロキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、または有用な酵素活性を有する他のタンパク質であってよい。
【0018】
本発明において、非免疫グロブリン部分は、タンパク質の部分であってもよい。好ましくは、非Igタンパク質部分は、無処置のタンパク質の機能的およびまたは構造的性質を実質的に保持しているタンパク質の部分である。好ましい態様において、非Igタンパク質部分は、本明細書に記載されているタンパク質の機能的または構造的部位である。
好ましい態様において、抗体ベース融合タンパク質は、定常領域のみならず、標的である抗原に特異的な可変領域を含み、それらのうちいずれかは、ペプチド結合を介して、第二の、非免疫グロブリンに結合している。定常領域とは、通常、可変領域に対応させられる定常領域であってもよく、または、例えば異なる種からの可変領域および定常領域であってもよい。
【0019】
前記重鎖は、CH1、CH2、またはCH3ドメインの1または2以上のあらゆる組み合わせを含んでよい。重鎖は、好ましくは、CH1、CH2、およびCH3ドメインを含み、そしてより好ましくは、CH2およびCH3ドメインのみを含む。ある態様において、抗体ベースの1つの融合タンパク質は、融合した重鎖および軽鎖可変領域を有するFv領域を含む。「融合タンパク質」の用語には、異なる種由来のフレームワーク領域および可変領域(すなわち、相補性決定領域)を含む結合ドメインを有する構造体も含まれ、例えばWinterらの英国特許第2,188,638号に開示されている。可変領域を含む抗体ベース融合タンパク質は、好ましくは抗原結合特異性を示す。好ましいさらに異なる態様において、抗体ベース融合タンパク質はさらに軽鎖を含む。したがって、本発明は、抗原結合特異性および抗体の活性が、サイトカインなどの第二の、非免疫グロブリンタンパク質の有効な生物活性と組み合わされた融合タンパク質を提供する。本発明の融合タンパク質は、第二の、非免疫グロブリンタンパク質を生体内の標的細胞に選択的に送達して、該第二の、非免疫グロブリンタンパク質をして、局所的な生物活性を発揮せしめるために用いることができる。
【0020】
別異の好ましい態様において、抗体ベース融合タンパク質は、ペプチド結合を介して第二の、非免疫グロブリンタンパク質に結合する重鎖定常領域を含むが、重鎖可変領域を含まない。したがって、本発明は、第二の、非免疫グロブリンタンパク質の有効な生物活性を保持しているが、抗体の抗原結合特異性および活性を有しない融合タンパク質をさらに提供する。
好ましい態様において、融合タンパク質は、少なくとも1つの重鎖の部位およびジスルフィド結合によって結合した第二の、非Igタンパク質を含む2つのキメラ鎖を含む。
好ましい態様において、本発明の融合タンパク質は、癌、ウィルス感染、免疫障害の治療、および特定の細胞型の成長(増殖を含む)に有用である。
本発明は、上記融合タンパク質の配列をコードするDNA構造体、およびセルライン、例えばミエローマであって、これらの前記構造体によってトランスフェクトされたものを特徴とする。
これらおよび他の目的を、本明細書において開示された本発明の利点及び特長とともに、以下の説明、図面、およびクレームによって、より明確にする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】KS−IL−2融合タンパク質および重鎖のC末端リジン部分の置換または例に記載された他の変化を含有する、種々の変異融合タンパク質の薬物動態挙動を示す。抗体または融合タンパク質のレベルは、ELISAによって、IL−2(図1A)またはヒトFc(図1B)について測定した。
【図1B】KS−IL−2融合タンパク質および重鎖のC末端リジン部分の置換または例に記載された他の変換を含有する、種々の変異融合タンパク質の薬物動態挙動を示す。抗体または融合タンパク質のレベルは、ELISAによって、IL−2(図1A)またはヒトFc(図1B)について測定した。
【図2】野生型リジンまたは抗体鎖のC末端にリジンからアラニンへの変異を担持するガンマ1またはガンマ4鎖を有する、KS−IL−2融合タンパク質の薬物動態特性を示す。抗体または融合タンパク質のレベルは、ELISAによって、IL−2部分について測定した。.
【図3】腫瘍壊死因子アルファ(TNFアルファ)へのヒト抗体の融合体の薬物動態特性を示す。融合タンパク質のレベルは、ELISAによって、ヒトFc領域について測定した。抗体−TNFアルファ融合タンパク質のレベル(黒ダイヤ)および抗体部分のC末端リジンを欠失した以外の部分は同一である融合タンパク質(灰色四角)のレベルを示す。
【図4】抗体−IL−2融合タンパク質の、FcγRのクラスの受容体リッチなJ774細胞の膜への結合を示す。非変異KS−IL−12融合タンパク質(黒ダイヤ)および重鎖のC末端リジンがアラニンに変異したKS−IL−12融合タンパク質(灰色四角)の結合を示す。
【図5】KSの抗原であるヒトEpCAMを発現するように操作した、CT26大腸癌細胞由来の皮下腫瘍を有する、Balb/Cマウスに対する、抗体−サイトカイン融合タンパク質による処置の効果を示す。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は、Ig部分および非Ig部分間の連結部に、循環系内半減期を増大せしめる、1または2以上の変異を有する抗体融合タンパク質を提供する。本発明の変異融合タンパク質は、抗体部分の、体内における2つの既知の薬物動態決定受容体(Fc受容体およびFcRp)のいずれとの相互作用にも影響することなく、その血清中半減期を改善することができるという有利な特性を有する。
本発明の抗体ベース融合タンパク質は総じて、免疫グロブリン(Ig)タンパク質部位が非免疫グロブリン(非Ig)タンパク質に連結し、Igおよび非Igタンパク質間の連結部を架橋する領域のアミノ酸配列が、Igおよび非Igタンパク質の野生型アミノ酸配列と比較した場合に、少なくとも1つの変異を含んでいる。
【0023】
一態様において、Ig部位のC末端領域に、少なくとも1つの変異が存在する。他の一態様においては、非Igタンパク質のN末端領域に、少なくとも1つの変異が存在する。さらなる一態様においては、融合タンパク質は、Ig部位のC末端領域に少なくとも1つの変異を含み、非Igタンパク質のN末端領域に少なくとも1つの変異を含む。変異は、点変異、挿入、欠失、または遺伝子再配列であってよい。好ましい態様において、前記変異は連結部の疎水性を増大せしめる。例えば、変異によって荷電またはイオン化したアミノ酸を、非荷電または疎水性アミノ酸に置換する(例えば、Lys、Argまたは他のイオン化可能残基を、Ala、Leu、Gly、Trpまたは他の非荷電または疎水性残基に置換する)。
【0024】
任意選択可能な態様において、スペーサーペプチドまたはリンカーペプチドが、Igおよび非Igタンパク質の間に挿入される。前記スペーサーペプチドまたはリンカーペプチドは、好ましくは非荷電性であり、より好ましくは非極性、およびまたは疎水性である。スペーサーペプチドまたはリンカーペプチドの長さは、好ましくは1〜約100アミノ酸、より好ましくは1〜約50アミノ酸、または1〜約25アミノ酸、およびさらにより好ましくは1〜約15アミノ酸である。本発明の他の態様において、融合タンパク質のIgおよび非Ig部分は、スペーサーペプチドまたはリンカーペプチドを介して連結され、そしてIgおよび非Ig部分の一方または両方に、少なくとも1つの変異がある。本発明の別異の態様において、Igおよび非Ig部分は、合成スペーサー、例えばPNAスペーサーによって隔てられていて、それは好ましくは非荷電性であり、より好ましくは非極性であり、およびまたは疎水性である。
【0025】
本発明においては、免疫グロブリン(Ig)鎖は、可変または定常ドメインを含む免疫グロブリンタンパク質または免疫グロブリンタンパク質の部分である。Ig鎖は、好ましくは免疫グロブリン重鎖の部位であり、例えば、予め選択された細胞型に結合可能な免疫グロブリン可変領域である。好ましい態様において、Ig鎖は、定常領域のみならず、標的抗原に対して特異的な可変領域を含む。定常領域は、可変領域に通常関連する可変領域、または例えば異なる種からの可変および定常領域などの異なるものであってもよい。より好ましい態様において、Ig鎖は重鎖を含む。該重鎖は、CH1、CH2、またはCH3ドメインの1または2以上のあらゆる組み合わせを含んでよい。重鎖は、好ましくは、CH1、CH2、およびCH3ドメインを含み、そしてより好ましくは、CH2およびCH3ドメインのみを含む。ある態様において、免疫グロブリンの部分は、融合した重鎖および軽鎖可変領域を有するFv領域を含む。
【0026】
本発明において、非免疫グロブリンタンパク質は、免疫グロブリンでない天然由来タンパク質、または免疫グロブリンでない合成もしくは組み換えタンパク質、または上記の任意の断片を含む。好ましい態様において、非免疫グロブリンタンパク質は、リガンド結合ドメイン、酵素ドメイン、調節ドメイン、または1または2以上の細胞因子と相互作用するドメインなどの機能的ドメインを含む。別異の態様において、非免疫グロブリンドメインは、構造ドメインまたはエピトープを含む。
好ましい態様において、Ig鎖は、遺伝子融合によって非Igタンパク質に連結されている。好ましくは、前記遺伝子融合は、合成、または組み換えであり、そして化学合成または分子生物学の標準的な手法を用いて産生される。典型的には、変異は、遺伝子融合構造体の部分として導入される。これとは別に、変異は、変異誘発に関する既知の方法(例えば、遺伝子融合構造体を放射線照射、または化学的もしくは生物的変異誘発手法に付す)を用いて後から導入してもよい。
【0027】
本発明において、連結領域は、融合タンパク質のIgおよび非Ig部分間の連結点を囲む、融合タンパク質の領域である。好ましい態様において、連結領域は、Ig部分のC末端部位および非Ig部分のN末端部位を含む。一態様において、連結領域は、Igおよび非Ig部分間の連結点に挿入されたスペーサーペプチドまたはリンカーペプチドを含む。
本発明の好ましい態様において、Ig部分の変異は、Ig部分のC末端部位に存し、好ましくはIg部分のC末端から約100残基より内側に存し、より好ましくは約50残基より内側、または約25残基より内側に存し、およびさらにより好ましくは約10残基より内側に存する。
本発明の好ましい態様において、Ig部分の変異は、Ig部分のC末端部位に存し、好ましくは非Ig部分のN末端から約100残基より内側に存し、より好ましくは約50残基より内側、または約25残基より内側に存し、およびさらにより好ましくは約10残基より内側に存する。
本発明の好ましい態様において、変異は、Ig部分のC末端領域に存するが、該変異は、Fc受容体(FcR)またはFcRpと相互作用するIgタンパク質の部分には存しない。
【0028】
本発明による変異を有する抗体融合タンパク質は、変異を有しない、対応する抗体融合タンパク質の循環系内半減期と比較して、生体内におけるより長い循環系内半減期を有する。抗体融合タンパク質の循環系内半減期は、融合タンパク質の血清中レベルを時間の関数としてアッセイすることによって測定することができる。
実験的な証拠によって、本発明の好ましい変異の効果は、FcRまたはFcRpとの相互作用には依存しないことが示唆されている。第一に、融合タンパク質の循環系内半減期を増大せしめる好ましい変異は、三次元構造において、FcRまたはFcRp抗体と結合する相互作用表面の部分である領域には影響を及ぼさない。第二に、本発明の好ましい変異による血清中半減期の改善は、FcRとの相互作用をIgG−ガンマ4鎖を用いて除去した場合、およびFcRpが欠損しているβ2−マイクログロブリン変異マウスを用いた薬物動態学的研究によって、FcRpとの相互作用を除去した場合においても生じる。第三に、本発明の好ましい変異は、Ig融合タンパク質のJ774細胞のFcRに対する結合には影響を及ぼさない。
【0029】
部位特異的変異誘発解析によって、Fc受容体と相互作用するFcの表面は、CH2ドメインのヒンジ領域近傍に存在することが示唆されている。Fc領域のFcR相互作用表面は、3次元において、FcのC末端から極めて遠方にある。同様な解析によって、FcRpはCH2およびCH3ドメイン間の境界面に存在するアミノ酸残基と相互作用をすることが示唆されている。
FcRpのそのリガンドとの結合は、中性または弱塩基pH(pH7.4)より、酸性pH(pH6.0)において、はるかに高い親和性を示す。このことは、エンドソーム内における細胞内部移行後の抗体などのFc含有分子を保護するというFcRpの機能と整合する。これらの細胞コンパートメントは、リソソームとの融合の後に酸性化され、そしてそれらのタンパク質成分は酸性プロテアーゼによって分解される。このプロセス中の膜結合型FcRpへの結合によって、抗体の分解が妨げられ、それが細胞外へ(循環系への回帰)、または細胞層を越えて(トランスサイト−シス)再利用されることを可能にする。この後者のプロセスによって、消化管の酸性環境における乳の消化の後に、IgGは新生児腸粘膜を通過できるようになる。
【0030】
Fc/FcRp複合体の構造から、FcRpはFc領域の側部に、CH2およびCH3ドメインの両方に接触しながら結合すること、および該接触領域は、Fc領域のC末端に特に近接しているわけではないことが示唆される。したがって、FcのC末端領域自体の変化が、FcRpとの相互作用を変化させるとは予測されない。
如何なる特定の理論に束縛されることも望まないが、本発明の融合タンパク質の循環系内半減期を増大せしめる連結領域における変異は、例15に示すように、プロテアーゼ切断アッセイにおける融合タンパク質の切断も減じると考えられている。さらに、プロテアーゼによる消化は、融合タンパク質を含む、無処置タンパク質の体からの消失に影響するであろうと考えられている。したがって、プロテアーゼ耐性は、タンパク質の薬物動態の改善に直接寄与すると考えられる。さらに、非変性タンパク質のプロテアーゼによる消化には、アミノ酸の特定の配列の認識に加えて、未変性の構成を有する露出したアミノ酸配列へのプロテアーゼによる接近が含まれるとも考えられている。すなわち、タンパク質全体の構成に影響を及ぼし、それによってそれらの切断部位へのプロテアーゼの接近に影響を及ぼす融合連結部位における変異は、プロテアーゼ耐性および薬物動態の改善に寄与する可能性がある。さらに、特定のプロテアーゼ認識配列を変化せしめる変異は、プロテアーゼ耐性および薬物動態の改善に寄与する可能性がある。
【0031】
本発明の変異の特長は、抗体部分のその他の変異または置換と組み合わせることによって、Ig部分の血清中半減期または他の特性を相乗的に調節することができることである。例えば、抗体融合タンパク質の循環系内半減期を増強せしめる1または2以上の本発明の変異は、抗体融合タンパク質とFcRまたはFcRpとの間の相互作用に影響を及ぼす1または2以上の変異と組み合わせることができる。
さらに、本発明の変異は、広範な抗体部分および広範な非Ig融合パートナーに用いることができる。免疫グロブリンは、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを含む。非Ig融合パートナーは、サイトカイン、他の分泌タンパク質、酵素、またはリガンド結合ドメインなどの膜貫通性受容体の可溶性断片を含む。
【0032】
本発明において、生体内における循環系内半減期が増強された抗体ベース融合タンパク質を、Fc部位自体を変更することによってさらに増強することができる。これらは、Ile253、His310またはHis435またはその3次元構造に折り畳まれた場合に、これらの残基のイオン環境に影響し得る他の残基を含む残基であってよい。結果物であるタンパク質は、pH6およびpH7.4〜8において至適結合についての試験を行うことが可能であり、そしてpH6において高いレベルの結合を有するものおよびpH8において低いレベルの結合を有するものが、生体内における使用のために選択される。このような変異は、本発明の連結部位変異と有効に組み合わせることができる。
【0033】
本発明の方法および組成物は、PCT/US99/08335(WO 99/52562)に開示された血管新生阻害剤またはPCT/US99/08376(WO 99/53958)に開示されたプロスタグランジン阻害剤と共投与する場合に有用である。本発明の方法および組成物は、PCT/US00/21715に開示された複数のサイトカインタンパク質複合体において用いることもできる。本発明の方法および組成物は、PCT/US99/03966(WO 99/43713)に開示された、融合タンパク質の循環系内半減期を増大せしめる他の変異と組み合わせると有用である。
本発明の有用な態様を合成するための限定的でない方法は、本明細書の例において記載され、インビトロおよび臨床前の生体内モデル動物の両方における薬物動態挙動のアッセイにも有用である。キメラ鎖をコードする好ましい遺伝子構造体は、5’から3’方向へ、少なくとも免疫グロブリン部位をコードするDNA断片および第二の、非免疫グロブリンタンパク質をコードするDNAを含む。別異の好ましい遺伝子構造体は、5’から3’方向へ、第二の、非免疫グロブリンタンパク質をコードするDNA断片および少なくとも免疫グロブリン部位をコードするDNAを含む。融合した遺伝子は、それが発現せしめられる、適切な受容細胞にトランスフェクションするための発現ベクターにおいて構築されるか、またはそれに挿入される。
【0034】
本発明は、抗体ベース融合タンパク質の循環系内半減期を増大せしめる変異を検出するための方法も提供する。該方法は、抗体ベース融合タンパク質のIg部位と非Ig部位との間の連結部を架橋する領域への変異の導入を含む。変異融合タンパク質の循環系内半減期は、好ましくは、その生体内における血清中レベルを時間の関数としてモニターすることによってアッセイする。
本発明の一態様において、抗体ベース融合タンパク質の循環系内半減期を増大せしめる変異は、例15において議論するように、プロテアーゼ切断アッセイにおいて、融合タンパク質の切断を減少せしめる変異である。変異は、好ましくは、融合タンパク質のIg部分および非Ig部分の間の連結部を架橋する領域における変異(例えば、上記において議論した連結部における変異)である。これとは別に、変異は、融合タンパク質のプロテアーゼによる切断を減少せしめ、融合タンパク質の循環系内半減期を増大せしめる、あらゆる変異であってよく、このことは例16に記載されている。したがって、本発明は、融合タンパク質の循環系内半減期を増大せしめる変異を検出するために、タンパク質全般および好ましくはIg−サイトカイン融合タンパク質における変異をスクリーニングするための方法を提供する。
【0035】
本発明は、以下の非限定的な例によってさらに説明される。本明細書において用いられるアミノ酸残基の番号は、IgG1アミノ酸配列を参照するものである。当業者は、他のIgタンパク質を含む融合タンパク質の対応する変異が、循環系内半減期を増大せしめるために有用であることを理解するであろう。
したがって、本明細書において提供される教示は、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgD、またはIgEなどの他のIg分子にも適用し得る。
【0036】

例1. 融合連結点におけるLysコドンの置換による抗体−IL−2 遺伝子の構築
抗体−IL−2 融合タンパク質の連結点におけるアミノ酸配列は、SerProGlyLys−AlaProThr(配列番号1)であり、SerProGlyLys(配列番号2)は、抗体の重鎖の通常のカルボキシ末端であり、そしてAlaProThrは、成熟IL−2のN末端配列である。融合連結領域における、融合タンパク質の薬物動態に関する変化の効果を決定するために、以下に記載するように変異誘導によって残基の置換または欠失を行った。
免疫サイトカインの発現ベクターは、Gillies at al.,(1998)J.Immunol. 160: 6195-6203に記載されている。重鎖をコードしているヒトガンマ−1遺伝子において、サイレント変異(TCCからTCAへ)を導入することによって、翻訳停止コドンから280bp上流にあるXmaI制限部位を破壊した。もう1つのサイレント変異(TCTからTCCへ)を、重鎖のC末端リジンから3残基上流のSerコドンに導入し、新たなXmaI部位配列を含んでいるTCC CCG GGT AAA(配列番号3)を作製した[Lo at al.,(1998)Protein Engineering 11: 495-500]。IL−2cDNAを化学合成によって構築し、そしてそれが新しく、独自のPvuII制限部位を含むようにした[Gillies at al,(1992)Proc. Natl. Acad. Sci. 89: 1428-1432]。前記XmaI部位およびPvuII部位は、ともに発現ベクターが独自のものであり、そしてそれらは、CH3およびIL−2DNAの連結点にあるリジンコドンに対する変異誘発を容易にするものであった。
【0037】
Lysコドンの置換または欠失は、免疫サイトカインの発現ベクターのXmaI−PvuII断片を、所望の変異をコードするオリゴヌクレオチド二量体と置換することによって行った。この場合、重鎖および軽鎖の可変領域は、ヒト化KS抗体由来であり、該抗体はEpCAM(上皮細胞接着分子)と呼ばれるヒト抗原を認識するものであった。本発明において用いたオリゴヌクレオチド二量体の配列は下記に示すが、太字のコドンが所望の変異をコードし、斜字体の配列である
【化1】

が、XmaI部位の粘着末端およびPvuII部位の平滑末端をそれぞれ表す。5’−水酸基末端を有する前記オリゴヌクレオチド二量体を、XmaI−PvuII消化発現ベクターへの連結に用いた。5’−水酸基末端を有する前記オリゴヌクレオチドの使用によって、該オリゴヌクレオチド二量体の自己連結が排除された。
【0038】
1.)LysのAlaへの置換
【化2】

【0039】
2.)LysのArgへの置換
【化3】

NarI制限部位(GGCGCC)もサイレント変異によって導入し、組み換えクローンのスクリーニングを容易にした。
【0040】
3.)Lysの欠失
【化4】

【0041】
4.)LysのGlyへの置換
【化5】

ApaI制限部位(GGGCCC)もサイレント変異によって導入し、組み換えクローンのスクリーニングを容易にした。
【0042】
5.)LysのLeuへの置換
【化6】

NarI制限部位(GGCGCC)もサイレント変異によって導入し、組み換えクローンのスクリーニングを容易にした。
【0043】
6.)LysのAlaAlaAlaへの置換
【化7】

【0044】
7.)LysのCysへの置換
【化8】

FspI制限部位(TGCGCA)もサイレント変異によって導入し、組み換えクローンのスクリーニングを容易にした。
【0045】
8.)LysのAspへの置換
【化9】

Lysコドンの種々の置換または欠失を含んでいる組み換え遺伝子構造体は、DNAシークエンシングによって確認した。
【0046】
例2.融合連結点においてさらなるアミノ酸残基をコードする抗体−IL−2 遺伝子の構築
融合タンパク質中のドメインを、グリシンおよびセリンなどのアミノ酸残基を含有するフレキシブルなリンカーによって分離することは、当技術分野において普通に行われることである。CH3およびIL−2のスペーシングの重要性について、以下の変異誘発実験によって調べた。異なる数のアミノ酸残基をコードしている平滑末端を有するオリゴヌクレオチド二量体を、連結によってhuKS−IL−2発現ベクターのSmaIエンドヌクレアーゼ制限部位(上記XmaIと同一の部位)に挿入した;そして、DNAシークエンシングによって、挿入が正確に配置されたことを確認した。上記において議論したように、5’−水酸基末端を有するオリゴヌクレオチド二量体を使用することによって、自己連結を排除した。
【0047】
9.)リンカー連結を有するLysのCysへの置換
連結によって、huKS−IL−2発現ベクターのSmaIエンドヌクレアーゼ制限部位に、以下のリンカー(オリゴヌクレオチド二量体)を挿入した。配列GCATGCはSphI制限部位をコードし、それによってリンカーの挿入を含んでいる組み換え体のスクリーニングを容易にした。
5' GGCATGC GG 3'
3' C CGT ACG CC 5'
SmaI部位(CCCGGG)へのリンカーの連結後に、融合連結部位の配列は
C CCG GCA TGC GGG GGT AAA(配列番号20)(リンカーの配列に下線を付した)
Pro Ala Cys Gly Gly Lys(配列番号21)
になった。
したがって、リンカーによって元のLys残基の位置にCys残基が挿入され、鎖間のジスルフィド結合が形成され得るようになった。元のLys残基は、3アミノ酸残基分(AlaCysGly)押し戻された。
【0048】
10.)6アミノ酸残基をコードするリンカー
huKS−IL−2発現ベクターのSmaIエンドヌクレアーゼ制限部位に、下記のリンカー(オリゴヌクレオチド二量体)を連結によって挿入した。配列GGATCCは、BamHI制限部位をコードするものであり、それによってリンカーの挿入を含んでいる組み換え体のスクリーニングを容易にした。
5' G GGT TCA GGA TCC GGA GG 3'(配列番号22)
3' C CCA AGT CCT AGG CCT CC 5'(配列番号23)
SmaI部位へのリンカーの連結後に、融合連結部位の配列は
ProGlySerGlySerGlyGlyGlyLys(配列番号24)
になった。挿入された6アミノ酸残基に下線を付した。
【0049】
11.)11個のアミノ酸残基をコードするリンカー
下記のリンカー(オリゴヌクレオチド二量体)をhuKS−IL−2発現ベクターのSmaIエンドヌクレアーゼ制限部位に、連結によって挿入した。配列GGATCCは、BamHI制限部位をコードし、それによってリンカーの挿入を含んでいる組み換え体のスクリーニングを容易にした。
5' G GGT TCA GGC TCT GGA TCA GGG TCC GGA TCC GG 3'(配列番号25)
3' C CCA AGT CCG AGA CCT AGT CCC AGG CCT AGG CC 5'(配列番号26)
SmaI部位へのリンカーの連結後に、融合連結部位の配列は
ProGlySerGlySerGlySerGlySerGlySerGlyGlyLys(配列番号27)
になった。挿入された11個のアミノ酸残基に下線を付した。
【0050】
例3.融合連結点におけるProコドンの置換による、抗体−IL−2遺伝子の構築
CH3のカルボキシ末端に存する配列ProGlyLys中のプロリンを、Ala、LeuまたはGly、および他のアミノ酸に変異せしめた。これは、25塩基対であるKS−IL−2発現ベクターのSapI−SmaI断片を、所望の変化をコードするオリゴヌクレオチド二量体によって置換して行った。下記オリゴヌクレオチド二量体は、それぞれSapI粘着末端(3塩基のオーバーハング)および平滑末端(制限断片のSmaIへの連結のため)を有する。Proコドンにおける置換を太字で表した。これらの置換が融合タンパク質の薬物動態に対して有意な影響を及ぼさなかったことから、Pro残基は、融合タンパク質の薬物動態に対して有意な影響を及ぼさないことが示された。
【0051】
12.)ProのAlaへの置換
【化10】

【0052】
13.)ProのLeuへの置換
【化11】

【0053】
12.)ProのGlyへの置換
【化12】

【0054】
例4. hu14.18−(Lys to Ala)−IL−2DNA の構築
LysのAlaへの置換の抗体−IL−2融合タンパク質の薬物動態に対する影響が、huKS抗体に限定されないことを示すために、本発明者らは異なる抗体であるヒト化14.18(hu14.18)を選択したが、これは多くのヒト腫瘍細胞表面に過剰発現したガングリオシドであるGD2を認識するものであった。hu14.18−(Lys to Ala)−IL−2の発現ベクターは、上記のように構築した。
【0055】
例5. huKS−(Lys欠失)−TNFαDNA
Lys残基の抗体−IL−2融合タンパク質の薬物動態に対する効果が、他のサイトカインにも適用し得ることを示すために、本発明者らは異なるサイトカインであるTNFαを選択した。TNFαの完全なcDNA配列は、Nedwin at al.のNucleic Acids Res.(1985)13: 6361-6373において報告され、そして抗体−TNFαの発現も、Gillies at al. の Bioconjugate Chem.(1993)4: 230-235に記載されている。抗体−TNFαの融合連結部は、SerProGlyLys−ValArgSerSerSer(配列番号34)の配列を有し、ここでValは、成熟TNFαのN末端残基である。huKS−TNFαと比較するために、huKS−(Lys欠失)−TNFαをコードするDNAをオーバーラッッピングPCR法[Daugherty at al.,(1991)Nucleic Acids Res. 19: 2471-2476] によって、Lys残基の欠失をコードする変異プライマーを用いて構築した。したがって、結果物である、huKS−(Lys欠失)−TNFαの発現ベクターは、融合連結部においてペプチド配列SerProGly−ValArgSerSerSer(配列番号35)をコードする。本新規発明によるこの融合タンパク質の他の変更には、連結領域の総電荷をさらに減じるために、TNFのアミノ末端配列におけるArg残基の除去を含み得る。
【0056】
例6.huKS−(EU)−(Lys to Ala)−IL−2DNAの構築
上記例において述べた抗体−サイトカイン融合タンパク質は全て、ミエローマH鎖によって表されるヒトIgG1のあるアロタイプであるKOLをベースにした。LysのAlaへの置換の抗体−IL−2融合タンパク質の薬物動態における効果がKOLに限定されるものではないことを示すために、本発明者らは、ミエローマH鎖によって表される異なるIgGlのアロタイプであるEUを選択した。EUアロタイプは、KOLアロタイプとは定常領域の3アミノ酸残基が異なる。EUアロタイプはCH1末端部にLys−229を含み、そしてAsp356およびLeu−358をCH3開始部に含む。KOLアロタイプは、Arg−229、Glu−356およびMet−358を、対応する位置に含む。EUアロタイプをコードするDNAは、KOLのDNAの変異によって、オーバーラッピングPCR法を用いて作製した。結果物であるEUのDNAを用い、対応するKOLのDNA断片の置換によって、huKS−(EU)−(Lys to Ala)−IL−2を産生する発現ベクターを作製した。
【0057】
例7.細胞のトランスフェクションおよびタンパク質の発現
一時的なトランスフェクションのために、Lipofectamine Plus(Life Technologies、Gaithersburg、MD)を用い、供給者のプロトコールに従い、リポフェクションによってBaby Hamster Kidney(BHK)細胞にプラスミドを導入した。
安定的にトランスフェクトされたクローンを得るため、プラスミドDNAをマウスミエローマNS/0細胞に、エレクトロポレーションによって導入した。NS/0細胞を、ウシ胎児血清10%、2mMグルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを加えたDulbeccoの改変Eagle's培地によって培養した。約5×10個の細胞をPBSによって1回洗浄し、0.5mlのPBS中に再懸濁した。次に、直線化したプラスミドDNA10μgを細胞とともに、Gene Pulser Cuvette(電極間隔0.4cm、BioRad)内、氷上にて10分間インキュベートした。0.25Vおよび500μFの条件下、Gene Pulser(BioRad、Hercules、CA)を用いてエレクトロポレーションを行った。細胞を氷上にて10分間回復させた後、それを増殖培地に再懸濁し、そして2枚の96穴プレートに植え付けた。トランスフェクションの2日後にメトトレキセート(MTX)100nMを導入し、その存在下における増殖によって、安定的にトランスフェクトされたクローンを選択した。細胞に3日に1回、2回から3回以上、栄養を与え、そしてMTX耐性クローンが2〜3週間のうちに現れた。クローンからの上清を、抗FcELISAによってアッセイし、産生能が高いものを検出した。高産生クローンを単離し、そしてMTXを100nM含有する増殖培地において増殖させた。
【0058】
ゲル電気泳動によるルーチンの特性評価のため、調整した培地中の抗体−サイトカイン融合タンパク質をProtein A Sepharose(Repligen、Cambridge、MA)において捕捉し、そして次に、2−メルカプトエタノールを含むかまたは含まないタンパク質サンプル緩衝液中にてボイルすることによって溶出せしめた。SDSゲルによる電気泳動の後、タンパク質のバンドをクーマシー染色によって可視化した。抗体の重鎖−IL−2および軽鎖は、SDS−PAGEによって、それぞれ67kDおよび28kDの分子量を有することが明らかになった。
精製のため、Protein A Sepharoseに結合した融合タンパク質を、リン酸ナトリウム緩衝液(100mMのNaHPO、pH3、および150mMのNaCl)中にて溶出せしめた。そして、溶出液は、0.1NのNaOHによって直ちに中和した。
【0059】
例8.ELISA法
MTX耐性クローンおよび他の試験サンプルの、上清中のタンパク質産物の濃度を決定するためにELISAを用いた。抗huFcELISAは、ヤギの抗ヒトIgG(重鎖および軽鎖の両方に抗する)を用いる捕捉ステップおよびFc断片特異的である、ヤギの抗ヒトIgG 西洋ワサビペルオキシダーゼ結合性 F(ab’)断片を用いる検出ステップからなる。したがって、抗huFcELISAによって、ヒトIgGが、抗体自体としてまたはサイトカイン融合タンパク質として定量される。無処置の抗体−IL−2融合タンパク質の濃度を決定するために、IL−2検出ELISAを用いた。ヤギの抗ヒトIgG(重鎖および軽鎖の両方に抗する)を用いる同一の捕捉ステップからなるが、検出ステップにはIL−2に対して方向付けられた検出抗体を用いる。いくつかの実験においては、捕捉抗体の代わりにEPCAMを用いてKS−IL−2融合タンパク質を検出したが、それはKS抗体がEPCAMを認識するからである。いくつかの実験においては、市販のヒトIL−2ELISA検出キット(R & D Systems)を用いた。IL−2検出抗体を含む異なるELISA法の全てによって、同様な結果が得られた。しかし、図1Aおよび図1Bの対比から示されるように、薬物動態の後半の時点においては、ヒトFc免疫反応物質と比較すると、IL2免疫反応物質の減少が漸増している。この影響は、最も好ましくない薬物動態を有する融合タンパク質において最も顕著である。
抗huFcELISAについて、下記に詳細に記載した。
【0060】
コーティングプレート
ELISAプレートは、PBS中の5μg/mLのAffiniPureヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson Immuno Research Laboratories、West Grove、PA)によって、そして96穴プレートに100μl/穴(Nunc-Immuno plate Maxisorp)でコートした。コートしたプレートは、蓋をして、4℃で一晩インキュベートした。続いて、0.05%Tween(Tween20)のPBS溶液によって4回洗浄し、そして1%BSA/1%ヤギ血清のPBS溶液によって、200μl/穴の割合でブロッキングした。前記ブロッキング緩衝液とともに37℃において2時間インキュベートした後、プレートを0.05%TweenのPBS溶液によって4回洗浄し、ペーパータオル上にてたたきながら乾燥した。
【0061】
試験サンプルおよび2次抗体とのインキュベーション
試験サンプルを、1%BSA/1%ヒツジ血清/0.05%TweenのPBS溶液を含有するサンプル緩衝液中において適切な濃度に希釈した。濃度がわかっているキメラ抗体(ヒトFcとの)によって、標準曲線を得た。標準曲線を得るに際しては、125ng/ml〜3.9ng/mlの範囲の標準曲線が得られるように、サンプル緩衝液を連続的に希釈した。希釈したサンプルおよび標準液を100μl/穴の割合でプレートに添加し、そしてプレートを37℃で2時間インキュベートした。インキュベーションの後、プレートを8回、0.05%TweenのPBS溶液によって洗浄した。次に、それぞれの穴に、2次抗体である、サンプル緩衝液中にて約1:120,000に希釈した、Fc断片に特異的なヤギ抗ヒトIgGの西洋ワサビペルオキシダーゼ結合AffiniPure F(ab’)断片(Jackson Immuno Research)を100μl添加した。2次抗体の正確な希釈率は、HRP結合抗ヒトIgGのそれぞれのロットに対して決定しなければならない。37℃における2時間インキュベーションの後、プレートを0.05%TweenのPBS溶液にて8回洗浄した。
【0062】
発色
100μl/穴の割合で基質溶液を添加した。基質溶液は、OPD(o−フェニレンジアミン二塩酸塩、1タブレット)30mgを、0.025Mクエン酸/0.05M NaHPO、pH5であり、直前に添加したHを含有する緩衝液に溶解せしめて調製した。暗黒の室温下にて、30分間発色させた。発色時間は、コートしたプレート、2次抗体などのロット間の変動に応じて変化させた。標準曲線における色の発色を観察して反応の停止時期を決定した。反応の停止は、4N HSOを100μl/穴添加することによって行った。プレートは、490および650nmの両方にセットし、650nmにおけるバックグラウンドODから490nmにおけるODを減じるようにプログラムしたプレートリーダーによって読み取った。
【0063】
例9.融合連結部に変化を有する抗体−サイトカイン融合タンパク質の薬物動態挙動
融合タンパク質の薬物動態挙動の試験を、Balb/cマウスへの静脈内注射の後に行った。マウスから眼窩後方出血(retro-orbital bleeding)によって採血し、そしてエッペンドルフ製微小遠心管内において、4℃にて保存した。場合によって、2種の異なるELISA法を用いて、種々の時点において血中に残存しているヒト抗体の量および第二の、融合非−Igタンパク質の量の両方を測定した。これとは別に、非Ig部分の存在を、薬物動態の時点におけるウェスタンブロット分析によって推測した。
【0064】
前記例において記載した手法を用いて、KS(ガンマ1)−IL−2融合変異タンパク質をマウスに注射し、そして血清中半減期に対する効果を決定した。いくつかの結果を図1および図2に示す。さらに、抗体重鎖のC末端リジン欠失の効果を、抗体が異なる結合特異性を有するIgG(ガンマ1)−IL−2融合体において調べた。14.18(Lys→Ala)−IL−2の薬物動態特性は、14.18−IL−2より優れ、その改善の程度は、KS(Lys→Ala)−IL−2をKS−IL−2と比較した場合の改善度合いと同程度であった。
抗体−IL−2融合体において、薬物動態特性に対する、重鎖C末端リジンに影響を及ぼす変異の効果の序列は(最高から最低の順で):Lys→Leu〜Lys→Ala〜Lys→Ala>Lys→(欠失)>Lys→Asp〜Lys→Gly>Lys→(無変化)〜Lys→Cys>Lys→Argであった。
【0065】
KS(Lys→除去)−TNFアルファの薬物動態特性は、KS−TNFαに比して有意に改善されていた(図3)。KS−TNFアルファ融合タンパク質の薬物動態学的プロファイルは、ヒト抗体レベルをFcELISAによって測定した場合、最初の30分以内に、検出されるタンパク質のレベルが急激に減少し、続いてヒトFc反応物質のレベルが緩やかに上昇するという点で通常とは異なっていた。この効果の再現性は高かった。
ウェスタンブロッティングによって薬物動態サンプルを分析した場合、ヒトFc交差反応性物質は、無損傷抗体の形態であることが見出された;TNF部分は切断され、失われていた。しかし、C末端リジンを欠失したKS−TNFアルファ融合タンパク質の同様な分析によって、このタンパク質は、優占的に無損傷形態で、TNFを未だ有して存在することが示唆された。
【0066】
さらに、成熟TNFアルファ配列の最初の8個のアミノ酸を欠失しているKS−TNFα融合タンパク質を発現させた。欠失型KS−TNFアルファ融合タンパク質の薬物動態特性は、成熟TNF配列の全てを有する対応するタンパク質より優れていた。これは、恐らく、連結領域の疎水性を増大せしめる、成熟TNFの+2位に存する荷電Arg残基を除去したことによるものである。
KOLからEUへの、KS(Lys→Ala)−IL−2およびKS−IL−2タンパク質の重鎖定常領域の変化は、いずれのタンパク質の薬物動態特性に対しても効果がなかった。
これらの結果は、総じて、連結部の変異によって、Ig融合タンパク質の薬物動態特性は有意に改善されることを示唆している。該効果は多岐にわたる抗体、およびIg部分に融合された、多岐にわたる非Igタンパク質において認められた。
【0067】
例10.融合連結点における変異とIgタイプのガンマ1からガンマ4への変換とを組み合わせることは、FcRp機能とは独立して血清中半減期の相乗的増大につながる
ヒトガンマ4Fc領域のFc受容体への結合は弱い。その結果、ガンマ4Fc領域を含む融合タンパク質は、ガンマ1鎖を有する融合タンパク質と比べて、一般に優れた薬物動態特性を有する。Fc受容体に対する効果、FcRp相互作用、またはこれらの両方を介して、連結部における変異が、薬物動態に影響を及ぼすのかを明らかにするために、連結部に変異を有するかまたは有しない、ガンマ1含有融合タンパク質およびガンマ4含有融合タンパク質の薬物動態特性を、FcRpが正常であるかまたはそれが欠損しているマウスにおいて調べた。図2に、これらの薬物動態実験の結果を示した。
図2は、KS(ガンマ1)−IL−2融合タンパク質、KS(ガンマ4)−IL−2融合タンパク質、KS(ガンマ1)(Lys to Ala)−IL−2融合タンパク質、およびKS(ガンマ4)(Lys to Ala)−IL−2融合タンパク質の薬物動態挙動を示している。正常のマウスおよびベータ2マイクログロブリン欠損マウスによって調べた。
【0068】
これらのデータによって、正常のマウスにおいては、IgG−ガンマ1抗体−IL−2融合タンパク質の薬物動態は、抗体部分のC末端にLysのAlaへの変異を導入することによって改善されることが示唆された。同様に、IgG−ガンマ4 抗体IL−2融合タンパク質の薬物動態は、LysのAlaへの変異を導入することによって改善された。これらのデータは、連結部の変異によって、Fc受容体への結合を低減することによって既に薬物動態を改善せしめた、融合タンパク質の薬物動態が改善されることを示唆している。
図2は、FcRpの必須のサブユニットであるベータ2マイクログロブリンタンパク質(Junghans and Anderson, Proc. Nat Acad. Sci.(1996)93: 5512-5516)を欠損しているマウスに、同じタンパク質を注射した場合の、該タンパク質の薬物動態的特性も示している。したがって、これらの変異マウスは、FcRp活性を欠損している。その結果、該変異マウスにおける抗体の異化は、正常のマウスより、約10倍速かった。
【0069】
図2のデータによって、KS(ガンマ1)抗体、KS(ガンマ1)−IL−2融合タンパク質、KS(ガンマ4)−IL−2融合タンパク質、KS(ガンマ1)(Lys to Ala)−IL−2融合タンパク質、およびKS(ガンマ4)(Lys to Ala)−IL−2融合タンパク質は、いずれもベータ2マイクログロブリン変異マウスにおいて、野生型マウスより速く異化されることが示唆された。しかし、血清中半減期の相対的序列は、いずれの系統のマウスにおいても同様であった:非融合抗体が最も優れた薬物動態を有し、KS(ガンマ4)(Lys to Ala)−IL−2融合タンパク質、KS(ガンマ1)(Lys to Ala)−IL−2融合タンパク質、KS(ガンマ4)−IL−2融合タンパク質がこれに次ぎ、KS(ガンマ1)−IL−2融合タンパク質の薬物動態特性が最も劣っていた。連結部変異が、融合タンパク質のFcRpとの相互作用を変化させることによってのみ効果を有するものであれば、FcRp機能非存在下においては、該連結部変異は薬物動態に対して影響を及ぼさなかったはずである。
【0070】
例11.無処置抗体の連結領域の変異は、血清中半減期に対する効果を有しない
無処置の、非融合KS抗体の重鎖をコードしている遺伝子における変異によって、C末端リジンをアラニンに変換する操作を行った。野生型および変異型KSを発現させ、さらに上記の方法によって精製し、そして薬物動態特性を比較した。野生型および変異型抗体の薬物動態挙動は、分別することができないことが見出された。
【0071】
例12.融合連結部における変異を有するかまたは有しない抗体融合タンパク質によるFc受容体への結合
標準的な手法を用いて、KS−IL−2およびKS(K−A)−IL−2のFc受容体への結合を調べた。変異による効果は見出せなかった。融合タンパク質を発現させ、さらに上記の方法によって精製し、そしてFc受容体を発現する固定したJ774細胞へのそれらの結合能を調べた。結果を図4に示す。
【0072】
例13.連結部変異を含む抗体−サイトカイン融合タンパク質による、哺乳動物における大腸癌の処置
連結部変異を有するサイトカイン−抗体融合タンパク質が、哺乳動物における大腸癌腫の処置において有利な効果を有するか否かを試験するために、以下の実験を行った。CT26は、Balb/Cマウス由来の大腸癌腫セルラインである。標準的な遺伝工学的手法によって、該セルラインを、KS抗体が認識する抗原であるヒト真皮細胞接着分子(EpCAM)を発現するように操作した;前記細胞はCT26/EpCAM細胞(Gillies at al. Journal of Immunology(1998)160: 6195-6203)と称せられている。
Balb/Cマウスに、2×10個のCT26/EpCAM細胞を皮下接種した。腫瘍の体積が、約50〜200立方ミリメートルに達したとき、マウスをランダムに7頭ずつの3群に分けて、その後の調査に供した。0日目から、PBS、IgG1重鎖(KS−IL2ガンマ1)を有する約10マイクログラムのKS−IL2、またはIgGl 重鎖ならびに上記例に記載したLysの Alaへの変異(KS−IL2ガンマ1[Lys to Ala])を有する約10マイクログラムのKS−IL2で、腫瘍担持マウスを処理した。マウスへの処理は、静脈内投与によって、日に1回ずつ、5日間にわたって行った。腫瘍の大きさは、ノギスによって測定した。
【0073】
このような実験の1つの結果を図5に示す。この実験において、KS−IL2ガンマ1によって、全てではないが、多くの腫瘍の大きさを有意に減少した。7頭のKS−IL2ガンマ1処理個体群のうち6頭において、21日目には、腫瘍はまだ測定可能な大きさであった。しかし、KS−IL2ガンマ1(Lys to Ala)処理個体群においては、腫瘍は収縮し、7頭全ての個体において、21日目までに腫瘍は測定不能になり、そして16日目までに、測定可能な個体は7頭のマウス中僅か2頭になった。図5中、黒ダイヤは、コントロールとして0、1、2、3、および4日目にPBSを注射したマウスの平均腫瘍サイズを示す。黒丸は、10マイクログラムのKS−IL2ガンマ1で処置したマウスの平均腫瘍サイズを示す。静脈注射を行った。x軸は、最初の注射からの経過日数を示す;y軸は、平均腫瘍サイズを、立方ミリリットルによって示す。
【0074】
例14.連結部変異を含有する抗体−サイトカイン融合タンパク質の処置による、哺乳類における転移の阻害
抗体−サイトカイン融合タンパク質が、腫瘍細胞の転移性増殖を阻害できるか否かを試験するために、以下の実験を行った。ルイス肺癌腫(LLC)は、C57/B16マウス由来の肺癌腫セルラインである。標準的な遺伝工学的手法によって、該セルラインを、KS抗体が認識する抗原であるヒト上皮細胞接着分子(EpCAM)を発現するように改変した;前記細胞はLLC/EpCAM細胞と称せられている。
C57/B16 マウスに、1×10個のLLC/EpCAM細胞を静脈内注射した。5日後に、マウスをランダムに6頭ずつの3群に分け、PBS、約20マイクログラムのKS−IL2、または約20マイクログラムのKS−Ala−IL2(Ig部分のC末端にLysの Alaへの変異を有するKS−IL2)のいずれかで処置した。24日後に転移を定量した。下表に示すように、PBS処置群は、肺に多数の転移を有していた。KS−γ1−IL2処置個体群においては、転移数は有意に少なかった。しかし、KS−γl−Ala−IL2処置個体群における転移は、KS−γ1−IL2処理個体群よりはるかに少数であり、そして一個体においては、転移は全く検出されなかった。
【0075】
【表1】

総合すると、例13および14は、抗体−サイトカイン融合タンパク質によって、原発の部位における腫瘍細胞の増殖のみならず、転移の定着も阻害できることを示している。さらに、これらの結果から、抗体−サイトカイン融合タンパク質によって、大腸癌および肺癌などの種々の異なるタイプの腫瘍に起因する疾患を阻害することもできる。しかも、リンカー領域に少なくとも1つのアミノ酸変化を有する本発明による抗体−サイトカイン融合タンパク質は、転移および腫瘍の増殖を、リンカー領域にアミノ酸変化を有しない抗体−サイトカイン融合タンパク質より効果的に阻害する。
【0076】
例15.連結部変異を有する抗体融合タンパク質の、プロテアーゼ耐性のアッセイ
連結部変異を有する抗体−サイトカイン融合タンパク質が、プロテアーゼによる消化に対して、より感受性が高いか低いかを明確にするために、精製したKS−IL2およびKS−Ala−IL2を、種々のプロテアーゼによって種々の回数にわたって処理し、結果物をSDS−PAGEによって分析した。
1つの実験においては、4マイクログラムのKS−IL2およびKS−Ala−IL2を0.1mUまたは0.4mUのCathepsin D(Enzyme Systems、Livermore、California)によって、37℃において約16時間にわたり処理し、SDS−PAGEによって分析した。緩衝液の条件は、製造者の指示によるものを用いた。0.4mUのCathepsin DによってKS−IL2を処理した場合、約50%のKS−IL2重鎖が、種々のより小さい分子量の形態に変換された。優占的な消化産物は、KS−IL2重鎖より僅かに小さい分子量を有していたが、KS重鎖よりはるかに大きかった。この結果から、Cathepsin Dによる切断の大部分は、重鎖−IL2連結部位には起こらなかったことが示唆された。
【0077】
対照的に、KS−Ala−IL2を、0.4mUのCathepsin D とともに同一の条件でインキュベーションした場合には、Cathepsin Dによる切断程度ははるかに小さく、そしてKS−IL2の主たる分解産物の分子量のバンドは、本質的に検出不可能であった。
第二の実験においては、4マイクログラムのKS−IL2およびKS−Ala−IL2を25mUまたは50mUのCathepsin L(Enzyme Systems、Livermore、California) によって、37℃において約16時間にわたり処理し、SDS−PAGEによって分析した。緩衝液の条件は、製造者の指示によるものを用いた。KS−IL2を50mUのCathepsin Lで処理した場合、大部分のKS−IL2重鎖は、種々のより小さい分子量の形態に変換された。優占的な消化産物は、KS重鎖とほぼ同一の分子量を有していた。この結果から、Cathepsin Lによる切断の大部分は、重鎖−IL2連結部近傍または該部位に起こったことが示唆された。
対照的に、KS−Ala−IL2を、50mUのCathepsin Lとともに同一の条件でインキュベーションした場合には、Cathepsin Lによる切断程度ははるかに小さく、そしてKS−IL2の主たる分解産物の分子量のバンドは、依然として、観察された分子量種の主たるものであった。
【0078】
第三の実験においては、4マイクログラムのKS−IL2およびKS−Ala−IL2を0.04mU、0.1mUまたは0.2mUのプラスミン(Sigma,
St. Louis、Minnesota)によって、37℃において約16時間にわたり処理し、SDS−PAGEによって分析した。緩衝液の条件は、製造者の指示によるものを用いた。0.04mUのプラスミンによってKS−IL2を処理した場合、約3/4のKS−IL2重鎖が、より小さい分子量の形態に変換され、その見かけの分子量はKS重鎖の分子量より約30個のアミノ酸の分大きかった。0.2mUのプラスミンによってKS−IL2を処理した場合、本質的に全てのKS−IL2 重鎖は、見かけの分子量がKS重鎖の分子量より約30個のアミノ酸の分大きい、分子量がより小さい形態に変換された。これらの結果から、プラスミンによるKS−IL2の切断の大部分は、重鎖−IL2連結部位の近傍に生じ、重鎖−IL2連結部位には生じなかったことが示唆される。
【0079】
対照的に、KS−Ala−IL2を、0.04mUのプラスミンとともに同一の条件でインキュベーションした場合には、プラスミンによる切断はほとんど検出不能であった。KS−Ala−IL2を0.2mUのプラスミンとともにインキュベーションした場合には、いくつかの非切断産物が検出された。さらに、KS−IL2重鎖をプラスミンによって切断した場合には、KS−IL2重鎖より約90アミノ酸の分大きい種が、有意な程度に蓄積した;プラスミンによるKS−IL2の消化においては、この+90種は、恐らく、低分子量の+30種に迅速に切断され、その結果蓄積することはなかった。しかし、LysのAlaへの変異によって、プラスミン存在下において、無傷のKS−IL2は安定化した。それぞれの場合において、抗体の軽鎖は、用いられた条件下において切断されなかった。
総合すると、これらの結果から、LysのAlaへの変異によって、プロテアーゼによる切断に対する一般的な耐性が生じ、変異部位に起こるものではない切断に対する耐性も生じた。如何なる特定の理論に束縛されることも望まないが、LysのAlaへの変異によって、KSのIL−2部分のプロテアーゼに対する耐性は、より大きくなるのかもしれない。プロテアーゼは、抗体融合タンパク質の薬物動態において、重要な役割を果たすかもしれない。例えば、抗体融合タンパク質が、Fc受容体を有している細胞に取り込まれ、初期のエンドソームに移送された場合、その抗体部分は、用いられるタンパク質分解条件に耐性を有するかもしれないが、融合のパートナー部分はより感受性が高く、その結果、抗体融合タンパク質は、部分的に、または完全に消化される可能性がある。
【0080】
例16.抗体融合タンパク質の変異の評価における、プロテアーゼによる消化の使用
本例は、タンパク質の薬物動態特性を改善するための一般的な方法を提供する。タンパク質の薬物動態特性を試験し、そしてそのプロテアーゼ感受性も試験する。変異体タンパク質を作製し、タンパク質分解に対するより優れた耐性のための試験を行う。次に、タンパク質分解耐性を増強したそれらの変異体について、薬物動態特性の試験を行う。薬物動態特性が改善されているタンパク質分解耐性タンパク質の割合は、変異体タンパク質全体より大きいことが見出される。薬物動態特性が改善されている変異体タンパク質の中には、N架橋性グリコシレーションの導入のような、コード配列の調査によって推測される、タンパク質の構造を大きく変化させない1種または2種以上のアミノ酸置換を有するものがある。
変異体タンパク質は、例えば発現構造体の変異誘発および個々の変異体タンパク質を発現するクローンの単離によって作製する。あらゆる変異誘発手法が用いられ、それは部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、PCR変異誘発、および関連する遺伝子から雑種配列を作製せしめる変異誘発手法を含む。
これらのアッセイにおいて、エンドソームプロテアーゼなどの細胞内プロテアーゼの使用は有用である。如何なる特定の理論に束縛されることも望まないが、ある種のタンパク質、特に腎臓による濾過作用によって除去されないタンパク質の薬物動態は、エンドサイトーシスの際に生じるタンパク質分解によって決定されると考えられる。
【0081】
トリプシン、キモトリプシン、プラスミンなどの細胞外プロテアーゼ、他の消化プロテアーゼ、凝固因子などの他の血清プロテアーゼ、および組織特異的なプロテアーゼの使用も有用である。例えば、腫瘍特異的プロテアーゼは、変異体タンパク質の試験を行い、改善された薬物動態特性および腫瘍内の微細環境中における安定性を有するそれらの変異体タンパク質を特定する場合に用いられる。他の例においては、経口的に送達される必要があるタンパク質に関し、それらの胃腸管内に存在する酵素であるトリプシンおよびキモトリプシンなどに対する耐性についての試験が行われる。胃腸管内酵素に対する耐性が増強されたタンパク質は、薬物動態も改善され、AUC(曲線下面積:Area Under the Curve)が大きいことなどが見出される。
例えば、抗体の部分または全体を有する融合タンパク質をコードする発現構造体を変異させる。クローンを作製し、対応するタンパク質を発現せしめ、そして個々にまたは小さいプールとして、前記タンパク質の相対的プロテアーゼ感受性に関する試験を行う。プロテアーゼ耐性が増強されている変異体抗体融合タンパク質について、次に薬物動態特性の試験を行うと、改善された薬物動態特性を有しているプロテアーゼ耐性抗体融合タンパク質は、有意な数にのぼる。改良変異体融合タンパク質をコードする核酸配をシークエンスすることによって、いくつかの改良変異体は、融合タンパク質連結部以外の部位に、増強されたタンパク質分解耐性および改善された薬物動態の表現形を生じせしめる変異を含んでいることが見出される。
【0082】
均等物
本発明は、他の特定の形態によって、本発明の思想および特徴から乖離することなく実施され得る。したがって、前述した態様は、如何なる点においても、本明細書中に記載されている発明を説明するものであって、限定するものではないと解されるべきものである。すなわち、本発明の範囲は、付随するクレームによって示されるものであって前記記載によって示されるものではなく、また、クレームの意味の範囲および均等の範囲を逸脱しないあらゆる変形は、クレームに含まれることを意図している。
【0083】
引用文献による導入
本明細書において開示された各特許文献および科学刊行物の全体は、本出願に引用文献として組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非Igタンパク質に、連結点を介して結合した免疫グロブリン(Ig)鎖を含む抗体ベース融合タンパク質であって、該抗体ベース融合タンパク質は、前記連結点から10個のアミノ酸より内側であって、該Ig鎖または前記非Igタンパク質にアミノ酸変化を含み、かつ、前記抗体ベース融合タンパク質は、前記アミノ酸変化を有しない対応する抗体ベース融合タンパク質より長い循環系内半減期を生体内において有する、前記抗体ベース融合タンパク質。
【請求項2】
アミノ酸変化が、抗体ベース融合タンパク質の疎水性を増大せしめる、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
Ig鎖が、非Igタンパク質のN末端側にある、請求項1または2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
変化が、Ig鎖のC末端アミノ酸を変化せしめる、請求項1〜3のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項5】
非Igタンパク質が、分泌タンパク質である、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
非Igタンパク質が、分泌タンパク質の成熟型である、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
Ig鎖がIg重鎖の部分を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
Ig鎖が、IgG2またはIgG4の定常領域のCH2ドメインを少なくとも含む、請求項7に記載の抗体ベース融合タンパク質。
【請求項9】
Ig鎖が、Leu234、Leu235、Gly236、Gly237、Asn297、およびPro331からなる群から選択される1または2以上のアミノ酸における変異または欠失を有するIgG1定常領域の、少なくとも1つの部位を含む、請求項7に記載の抗体ベース融合タンパク質。
【請求項10】
Ig鎖が、Leu28l、Leu282、Gly283、Gly284、Asn344、およびPro378からなる群から選択される1または2以上のアミノ酸における変異または欠失を有するIgG3定常領域の、少なくとも1つの部位を含む、請求項7に記載の抗体ベース融合タンパク質。
【請求項11】
Ig鎖が、免疫グロブリン保護受容体への結合親和性を有する、請求項7に記載の抗体ベース融合タンパク質。
【請求項12】
Ig鎖が、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIからなる群から選択されるFc受容体に対して、実質的に低減された結合親和性を有する、請求項7に記載の抗体ベース融合タンパク質。
【請求項13】
非Igタンパク質が、サイトカイン、リガンド結合タンパク質、およびタンパク質毒素からなる群から選択される、請求項7に記載の抗体ベース融合タンパク質。
【請求項14】
サイトカインが、腫瘍壊死因子、インターロイキン、およびリンホカインからなる群から選択される、請求項13に記載の抗体ベース融合タンパク質。
【請求項15】
腫瘍壊死因子が、腫瘍壊死因子アルファである、請求項14に記載の抗体ベース融合タンパク質。
【請求項16】
インターロイキンが、インターロイキン−2である、請求項14に記載の抗体ベース融合タンパク質。
【請求項17】
リンホカインが、リンホトキシンまたはコロニー刺激因子である、請求項14に記載の抗体ベース融合タンパク質。
【請求項18】
コロニー刺激因子が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子である、請求項11に記載の抗体ベース融合タンパク質。
【請求項19】
リガンド結合タンパク質が、CD4、CTLA−4、TNF受容体、およびインターロイキン受容体からなる群から選択される、請求項13に記載の抗体ベース融合タンパク質。
【請求項20】
非Igタンパク質に連結点を介して結合したIg鎖を有する抗体ベース融合タンパク質の循環系内半減期を増大せしめる方法であって、置換、除去、挿入または他の方法によって、前記連結点もしくは該連結点の近傍においてアミノ酸を変化せしめるステップを含む、前記方法。
【請求項21】
融合タンパク質が、重鎖の部位を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
融合タンパク質が、少なくともIgG2またはIgG4定常領域のCH2ドメインを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
融合タンパク質が、Fc保護受容体との相互作用に影響する変異を有する重鎖の部分を含む、請求項20、21または22に記載の方法。
【請求項24】
Ig鎖と非Igタンパク質との間にリンカーを有する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項25】
変化が、1個または2個以上のアミノ酸の置換である、請求項4、5、6、または7に記載の融合タンパク質。
【請求項26】
抗体ベース融合タンパク質であって、
a)Ig鎖を含む第一のポリペプチド、および、
b)非Igタンパク質を含む第二のポリペプチド、
とを含み、前記第一のポリペプチドは、前記第二のポリペプチドに連結されて少なくとも1つの変異を有する連結領域を形成し、そして前記融合タンパク質は、前記変異を有しない連結領域を有する融合タンパク質より長い循環系内半減期を有する、前記抗体ベース融合タンパク質。
【請求項27】
変異が、第一のポリペプチドのC末端部位に存在する、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項28】
変異が、第二のポリペプチドのN末端部位に存在する、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項29】
変異が、第一のポリペプチドのC末端部位における第一の変異および第二のポリペプチドのN末端部位における第二の変異を含む、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項30】
C末端部位が、第一のポリペプチドのC末端アミノ酸を1〜100個含む、請求項27または29に記載の融合タンパク質。
【請求項31】
C末端部位が、第一のポリペプチドのC末端アミノ酸を1〜10個含む、請求項30に記載の融合タンパク質。
【請求項32】
N末端部位が、第二のポリペプチドのN末端アミノ酸を1〜100個含む、請求項28または29に記載の融合タンパク質。
【請求項33】
N末端部位が、第二のポリペプチドのN末端アミノ酸を1〜10個含む、請求項32に記載の融合タンパク質。
【請求項34】
Igが、IgG1である、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項35】
変異が、点変異、欠失、挿入および再配列からなる群から選択される、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項36】
第一のポリペプチドのC末端残基が、非イオン化側鎖を有するアミノ酸に変異している
、請求項34に記載の融合タンパク質。
【請求項37】
C末端残基が、非リジンアミノ酸である、請求項36に記載の融合タンパク質。
【請求項38】
連結領域が、第一のポリペプチドのC末端領域および第二のポリペプチドのN末端領域からなり、そして変異が、前記C末端領域およびN末端領域の一方に存在する、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項39】
連結領域が、スペーサーペプチドまたはリンカーペプチドを含む、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項40】
変異が、第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチドの間のスペーサーペプチドまたはリンカーペプチドの存在からなる、請求項39に記載の融合タンパク質。
【請求項41】
変異が、FcRまたはFcRpと相互作用しない領域に存する、請求項26に記載の融合タンパク質。
【請求項42】
Ig部分および非Ig部分を有する抗体ベース融合タンパク質の循環系内半減期を増大せしめる変異を検出するための方法であって、以下のステップ:
a)Ig部分と非Ig部分との間の連結を架橋せしめる領域に、変異を導入するステップ;
b)変異を有する抗体ベース融合タンパク質と有しない抗体ベース融合タンパク質の血清半減期を比較するステップ;および
c)前記抗体ベース融合タンパク質の血清中半減期を増加せしめる変異を選択するステップ、
を含む、前記方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法によって検出された変異を含む、抗体ベース融合タンパク質。
【請求項44】
請求項26に記載の抗体ベース融合タンパク質を患者に投与するステップを含む、病気を治療するための方法。
【請求項45】
疎水性または非極性アミノ酸を、付加または置換によって前記連結部位またはその近傍に導入した、請求項1、26、または36に記載の融合タンパク質。
【請求項46】
アミノ酸が、Leu、Ala、Trp、およびGlyからなる群から選択される、請求項45に記載の融合タンパク質。
【請求項47】
アミノ酸が、Alaである、請求項48に記載の融合タンパク質。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−176969(P2012−176969A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−108394(P2012−108394)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【分割の表示】特願2001−558103(P2001−558103)の分割
【原出願日】平成13年2月9日(2001.2.9)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】