説明

抗体含有発酵食品の製造方法

【課題】 生乳から食中毒菌や病原菌等の有害細菌を除去し、生乳に含有される抗体をその活性を保持した状態で摂取できる健康機能の高い安全な食品の製造方法を提供する。
【解決手段】 牛または牛以外の哺乳動物の生乳に、ラクトパーオキシダーゼ、チオシアン酸塩含有物および過酸化水素もしくは過酸化水素発生剤からなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物を添加して殺菌したのち、乳酸菌またはビフィズス菌の1種または2種以上を添加して発酵させる抗体含有発酵食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体含有発酵食品の製造方法に関し、さらに詳しくは牛乳等に由来する抗体を含有する健康機能の高い、しかもおいしく安全な発酵食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食べ物と共に体内に入り込んできた細菌や腸内の悪玉菌が腸壁から体内組織に侵入することから多くの病気が起こると考えられており、これらから人体を防御する免疫系の最前線は腸管免疫であり、その主役は抗体である。この抗体は、体内で産生されるが、加齢とともに産生量は減少し、ストレスや環境の変化によっても免疫力が低下することが認められている。ヒトと近接した環境で生育する家畜の生乳中には、ヒトが持つ抗体と特異性を同一とする抗体が多く含まれることから、これを摂取することにより、腸管における免疫力を高めることができ、病気にかかる率が減り、自己免疫疾患が起きにくくなり、寿命を延ばすことができると考えられる。
【0003】
例えば、牛乳中の抗体を人や動物が摂取することにより、消化管において疾病の原因となる細菌やウイルスによる病気の治療と予防に有効であることや、消化管内の微生物バランスを健常に保ち、健康増進に役立つことが報告されている(非特許文献1)。
【0004】
生の牛乳(以下、生乳という場合には特に断らない限り、生牛乳をさす)には抗体が0.01重量%程度含まれているが、生乳は通常採取された時点では、細菌に汚染されており、そのまま飲用に用いることは危険である。このため、乳等省令では、「保持式により摂氏63度で30分間加熱殺菌するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌すること。」とされている。日本で流通する90%以上の牛乳は超高温殺菌(UHT、120〜140℃、2秒)処理されており、この処理により抗体はほとんど失活してしまう。それ以外は高温短時間殺菌(HTST、72〜75℃、15秒)あるいは低温長時間殺菌(LTLT、63〜66℃、30分)処理されているが、これらの加熱処理により抗体含量も減少し、生乳の持つ良好なフレーバーが飛散してしまい、また、不快な加熱臭も生じ、生乳本来の味のバランスも壊れてしまう。
【0005】
ところで、ラクトパーオキシダーゼ、チオシアン酸イオン及び過酸化水素の共存下においてはヒポチオシアン酸イオンが生成することが知られている。ヒポチオシアン酸イオンは、タンパク質中のスルフィド結合と反応してタンパク質を変性させ、また、微生物の細胞膜に損傷を与えることにより、殺菌又は静菌作用を示す。反応後、ヒポチオシアン酸イオンは、チオシアン酸イオンに戻るが、ラクトパーオキシダーゼによって再びヒポチオシアン酸イオンに変換される。このサイクルを繰り返すことによって、殺菌作用は一定期間持続する。この反応は、ラクトパーオキシダーゼシステム(LPシステム)と呼ばれ、このLPシステムを利用して食品の保存期間を延長する方法が検討されている(非特許文献2)。
【0006】
このLPシステムを利用するためには、上記したようにラクトパーオキシダーゼ、チオシアン酸イオン及び過酸化水素が必要である。ラクトパーオキシダーゼ、チオシアン酸イオンは生乳中に含まれており、過酸化水素は細菌が好気的条件下で産生する。しかし、これらは含有量に変動が大きく、常に一定の効果が期待できるわけではない。上述したように乳等省令が加熱殺菌を義務付けていることからも、自然に存在する量のみでLPシステムが十分な殺菌作用を持たないのは明らかである。
【非特許文献1】Korhonen H. et al. Bovine milk antibodies for health, British J. Nutrition(2000),84,suppl.1,S135-S146)
【非特許文献2】IDF Bulletin No. 234, 1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、加熱殺菌以外の方法で食中毒菌(大腸菌、黄色ブドウ球菌等)や病原菌(結核菌等)等の有害細菌を死滅させ、生乳に含有される抗体をその活性を維持した状態で摂取できる食品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、生乳にラクトパーオキシダーゼ、チオシアン酸塩含有物、過酸化水素または過酸化水素発生剤の1種または2種以上を添加することにより、LPシステムをより活性化することで有害細菌を殺菌、死滅させ、その後に、乳酸菌またはビフィズス菌の1種または2種以上を添加して発酵させると、生乳中に含まれる抗体の活性が損なわれないまま残った発酵食品を得ることができることを見出し、ここに新規な抗体含有発酵食品を得て、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
1)牛または牛以外の哺乳動物の生乳に、ラクトパーオキシダーゼ、チオシアン酸塩含有物および過酸化水素もしくは過酸化水素発生剤からなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物を添加して殺菌したのち、乳酸菌またはビフィズス菌の1種または2種以上を添加して発酵させることを特徴とする抗体含有発酵食品の製造方法、
2)チオシアン酸塩含有物がアブラナ科植物の抽出物である前記1)に記載の抗体含有発酵食品の製造方法、
3)過酸化水素発生剤がグルコースオキシダーゼである前記1)または2)に記載の抗体含有発酵食品の製造方法、および
4)生乳を脱脂して発酵させる前記1)〜3)に記載の抗体含有発酵食品の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生乳を加熱せずに有害菌を殺菌、除去することができるため、抗体の活性が損なわれないまま残った発酵食品を得ることができる。これを摂取することにより、消化管において疾病の原因となる細菌やウイルスによる病気の治療と予防に有効であり、また、消化管内の微生物バランスを健常に保ち、健康増進に役立たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において、生乳とは牛または牛以外の哺乳動物の乳を搾乳した後、63℃以上に加熱されていないものをいい、搾乳後48時間以内のものが好ましい。牛以外の哺乳動物としては、例えば、ヤギ、ヒツジ、馬、水牛を挙げることができる。牛乳を原料とした代表的な乳酸菌発酵食品であるヨーグルトの場合、生乳を原料とする場合においては通常、混入している雑菌をはじめ、大腸菌、黄色ブドウ球菌その他の食中毒菌等の有害細菌に汚染されている恐れがあり、予めそれらを死滅させるため、超高温殺菌等の加熱処理が行われる。本発明においては、生乳は63℃以上に加熱されると抗体が失活し、生乳の持つ良好なフレーバーが飛散してしまい、また、不快な加熱臭も生じ、生乳本来の味のバランスも崩れてしまうため、63℃以上に加熱しないで殺菌される。もし、大腸菌等の有害細菌が混入していたとしても、LPシステムがより活性化されるため死滅してしまい、食中毒等の危険はない。また、本発明においては、63℃以上に加熱されないため、生乳中の抗体が失活することなく、抗体の持つ健康機能効果が十分に発揮される。
【0012】
また、生乳は脱脂して使用すると、脂肪含量の少ない発酵食品を製造することができ、低カロリー食品を望む糖尿病患者や体重減少をめざす人のための食品として好適である。脱脂の方法としては遠心分離等、通常の乳脂肪分の分離方法によればよい。脱脂は乳酸菌等を添加する前であればいつ行ってもよいが、好ましくは搾乳後、速やかに行ったほうが良い。
【0013】
本発明において添加するラクトパーオキシダーゼは、市販のラクトパーオキシダーゼ製剤を使用すればよい。これらの例としては、例えば、BIOPOLE社、TATURA社等から市販されている。生乳に添加される場合の濃度(生乳中の)については、特に限定はされないが、1ppmでも効果を示し、50ppmを超えても効果は変わらないことを確認しているため、ラクトパーオキシダーゼの濃度は生乳中に1〜50ppmとすることが好ましい。
【0014】
野菜中にはチオシアン酸塩を含有するものがあり、特にアブラナ科に属する野菜(例えば、キャベツ、白菜、ダイコン、カブ、ケール、チンゲンサイ、小松菜、ブロッコリー、カリフラワー等)に多く含まれている。本発明において添加するチオシアン酸含有物は、これらの野菜中のチオシアン酸塩を利用し、これら野菜の水、含水エタノール等を用いて抽出された抽出エキスを用いるのが好ましい。市販されているキャベツエキス、ケール粉末といったアブラナ科に属する野菜を原料とした食品素材を使用することもできる。添加されるときの生乳中の濃度については、特に限定はされないが、チオシアン酸イオンとして1ppmでも効果を示し、100ppmを超えると抗体含有発酵食品の風味に影響があるため、生乳中に1〜100ppmの濃度とすることが好ましい。
【0015】
過酸化水素は、例えば、L−アスコルビン酸オキシダーゼによるアスコルビン酸の酸化、グルコースオキシダーゼによるグルコースの酸化、キサンチンオキシダーゼによるヒポキサンチンの酸化等において発生することが知られており、L−アスコルビン酸オキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ等の酵素を過酸化水素発生剤としてそれぞれの基質に作用させて用いるとよい。過酸化水素を添加するよりも過酸化水素発生剤をLPシステムに添加するほうがより効果的であることも示されている。
【0016】
本発明において添加する過酸化水素発生剤としては、食品への使用実績が多い点からグルコースオキシダーゼを用いることが好ましい。基質として必要なグルコースは生乳中に微量存在するので、添加する必要はないが、添加を妨げるものではない。グルコースオキシダーゼは市販のグルコースオキシダーゼ製剤を用いればよい。市販のグルコースオキシダーゼ製剤としては、例えば、(株)ナガセ生化学工業、(株)協和エンザイム、ダニスコカルタージャパン(株)等から提供されている。添加する生乳中の濃度については、特に限定はされないが、1ppmでも効果を示し、50ppmを越えても効果は変わらないことを確認しているため、グルコースオキシダーゼの濃度は生乳中に1〜50ppmとすることが好ましい。
【0017】
本発明においては、スターターとしての乳酸菌やビフィズス菌の添加時期は、前記ラクトパーオキシダーゼ、チオシアン酸塩含有物および過酸化水素もしくは過酸化水素発生剤のうちの1種または2種以上を添加してLPシステムを活性化させた後、6〜24時間経過後が好ましい。この間、生乳は、好ましくは5〜20℃に静置される。経過時間が6時間未満では、有害細菌の殺菌が不十分であり、乳酸菌、ビフィズス菌を添加するとこれらの菌も減少してしまうおそれがある。一方、24時間を超えて置いておくと、生乳の品質が低下してしまう。
【0018】
本発明において添加する乳酸菌としては、ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクス(Lb.delbrueckii subsp.bulgaricus)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ラクティス(Lb.delbrueckii subsp.lactis)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・デルブルッキー(Lb.delbrueckii subsp.delbrueckii)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lb.acidphilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lb.casei)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lb.reuteri)、ラクトバチルス・ブレビス(Lb.brevis)、ラクトバチルス・ガッセリ(Lb.gasseri)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lb.johnsonii)、ラクトバチルス・アラビノサス(Lb.arabinosus)、ラクトバチルス・ヘルベチカス(Lb.helveticus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属するストレプトコッカス・サーモフィルス(Stc.thermophilus)、ラクトコッカス(Lactococcus)属のラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lc.lactis subsp.lactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lc.lactis subsp.cremoris)、ラクトコッカス・プランタラム(Lc.plantarum)、ラクトコッカス・ラフィノラクティス(Lc.raffinolactis)、ペディオコッカス(Pediococcus)属のペディオコッカス・ハロフィルス(P.halophilus)、ペディオコッカス・ペントサシウス(P.pentosaceus)、ロイコノストック(Leuconostoc)属のロイコノストック・メセンテロイデス(Leu.mesenteroides)、ロイコノストック・ラクティス(Leu.lactis)、エンテロコッカス(Enterococcus)属のエンテロコッカス・フェカーリス(Ec.faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Ec.faecium)を挙げることができる。
【0019】
ビフィズス菌としては、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属のビフィドバクテリウム・ビフィダス(B.bifidus)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B.longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B.breve)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B.infantis)、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(B.adolescentis)を挙げることができる。
【0020】
また、いわゆるケフィアヨーグルト等のように酵母を添加して複合発酵させることもできる。
【0021】
発酵は通常の発酵条件下、すなわち、20〜50℃、8〜24時間、発酵培養する。
【0022】
発酵に際しては、発酵に影響を及ぼさない範囲であれば、発酵前の生乳に砂糖等の甘味料、香料等の通常、食品に添加される副原料を添加して発酵させることができる。
【0023】
乳酸菌やビフィズス菌は整腸作用、血中コレステロール低減作用、血圧降下作用、制癌作用、免疫賦活作用等の効果があることが知られており(乳酸菌の科学と技術、学会出版センター)、本発明で得られる発酵食品は、乳酸菌やビフィズス菌の持つ健康機能と抗体の持つ健康機能を併せもち、相乗的効果の期待できる非常に有用な食品である。また、生乳を原料とし、高温に加熱されていないため、生乳本来のおいしさを有する食品である
【0024】
上記のようにして得られた発酵食品は、そのまま、ヨーグルト等として食することができる。さらには、ヨーグルトムース、ヨーグルトケーキ、フローズンヨーグルトあるいはヨーグルトソースなどの食品原料として用いることもできる。
【0025】
また、本発明の製造方法で得られた抗体含有発酵食品は、砂糖等の甘味料、香料等の通常、食品に添加される副原料を添加して、乳酸菌飲料、ビフィズス菌飲料、酸性飲料を製造することもできる。さらには、抗体含有発酵食品を乾燥させて粉末化して、抗体を含有する全粉乳、脱脂粉乳等の乾燥食品を得ることもできる。
【0026】
[実施例]
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらの限定されるものではない。実施例中、抗体量の測定は次の方法によった。
【0027】
(抗体量の測定法)
抗牛IgGウサギ免疫血清(ヤガイ製)からプロテインGカラムで吸着画分を分画したものを1次抗体とし、HRP標識抗牛IgG抗体(コスモバイオ製)を2次抗体として、通常の方法でELISAによる定量を行った。
【0028】
(大腸菌、大腸菌群数の測定法)
ESコリマーク寒天培地(栄研器材(株)製)を用いて測定した。
(黄色ブドウ球菌数の測定法)
食塩卵寒天基礎培地(ニッスイ(株)製)を用いた。
【0029】
[参考例1](抗体の分離)
牛の初乳を遠心分離して脂肪分を除き、この脱脂乳に塩酸を添加し、pHを4.6としてカゼインを沈殿させ除去した。上清に水酸化ナトリウムを添加しpHを7.0とした後、凍結乾燥して、初乳ホエー粉末を得た。この初乳ホエー粉末を再溶解し、プロテインGカラムで常法どおりに3回吸脱着を行った後、透析して低分子画分を除去して得られたプロテインG吸着画分を牛乳中の抗体の標品とした。この標品を用いて標準曲線を求め、試料中の抗体濃度を測定した。
【0030】
[実施例1〜4、比較例](LPシステムの活性化による除菌の確認)
生乳を入手し、抗体量をELISA法で測定したところ、151μg/ml含まれていた。大腸菌群数は20/ml、黄色ブドウ球菌数は50/mlであった。この生乳に、ラクトパーオキシダーゼ(BIOPOLE社製)、キャベツエキス(チオシアン酸含量1000ppm、井村屋製菓(株)製)、グルコースオキシダーゼ(GRINDAMYL S757 ダニスコカルタージャパン(株)製)を表1中の濃度となるように添加し、15℃にて経時的に大腸菌群数、黄色ブドウ球菌数を測定し、その結果を表2、表3に示した。
【0031】
(表1)
比較例 実施例1 実施例2 実施例3 実施例4
ラクトパーオキシダーゼ − 50ppm − − −
キャベツエキス − − 1% − 0.1%
グルコースオキシダーゼ − − − 50ppm 20ppm
【0032】
(表2)
大腸菌群数の経時的な変化(cfu/ml)
比較例 実施例1 実施例2 実施例3 実施例4
3時間後 22 3 9 4 3
6時間後 29 <1 2 <1 <1
9時間後 40 <1 <1 <1 <1
【0033】
(表3)
黄色ブドウ球菌数の経時的な変化(cfu/ml)
比較例 実施例1 実施例2 実施例3 実施例4
3時間後 61 8 22 11 9
6時間後 75 <1 9 <1 <1
9時間後 92 <1 <1 <1 <1
【0034】
表2および表3に示すとおり、LPシステムを活性化することで、6〜9時間後までに大腸菌群数、黄色ブドウ球菌数は検出限界以下になった。
【0035】
[実施例5]
上記の生乳1リットルにキャベツエキス(前記と同じ)10mlを加え、15℃にて9時間置いた後、前培養した乳酸菌(Lactobacillus acidphilus)スターターを50ml加え、37℃で15時間発酵させたところ、良好な風味を持つヨーグルトが得られた。このヨーグルト中の抗体量を測定したところ、144μg/ml含まれており、抗体の発酵中の損失はみられなかった。また、大腸菌群数、黄色ブドウ球菌数ともに検出限界以下であった。
【0036】
[実施例6]
上記の生乳を遠心分離法で脱脂した。この脱脂乳1リットルにグルコースオキシダーゼを50mg加え、15℃にて6時間置いた後、前培養した乳酸菌(Enterococcus faecalis)スターターを20ml、ビフィズス菌(Bifidobacterium bifidum)スターターを20ml加え、37℃で20時間発酵させたところ、良好な風味を持つヨーグルトが得られた。このヨーグルト中の抗体量を測定したところ、148μg/ml含まれており、抗体の発酵中の損失はみられなかった。また、大腸菌群数、黄色ブドウ球菌数ともに検出限界以下であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
牛または牛以外の哺乳動物の生乳に、ラクトパーオキシダーゼ、チオシアン酸塩含有物および過酸化水素もしくは過酸化水素発生剤からなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物を添加して殺菌したのち、乳酸菌またはビフィズス菌の1種または2種以上を添加して発酵させることを特徴とする抗体含有発酵食品の製造方法。
【請求項2】
チオシアン酸塩含有物がアブラナ科植物の抽出物である請求項1に記載の抗体含有発酵食品の製造方法。
【請求項3】
過酸化水素発生剤がグルコースオキシダーゼである請求項1または2に記載の抗体含有発酵食品の製造方法。
【請求項4】
生乳を脱脂して発酵させる請求項1〜3に記載の抗体含有発酵食品の製造方法。

【公開番号】特開2007−53930(P2007−53930A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240826(P2005−240826)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000101215)アサマ化成株式会社 (37)
【Fターム(参考)】