抗体精製法
本発明は、液体試料中のその他の化合物から抗体を分離する方法に関するものであり、方法では、試料を含む移動相をマルチモーダル分離マトリックスと接触させ、抗体を液体中に遊離した状態で、所望でない化合物を吸着させ、マルチモーダル分離マトリックスは、目標化合物の負に荷電した部位と相互作用する能力を有する第1の基及び目標化合物と電荷−電荷相互作用以外の1種以上の相互作用ができる第2の基を含む。本発明は、又、上述のマルチモーダル分離マトリックスを充填したクロマトグラフィーカラム及びその表面に吸着されたこのようなマルチモーダル基を有するフィルターに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体の精製方法に関する。本方法は、例えば、粗供給液に対して又は残留夾雑物及び親和性樹脂からのリーク物質を除去するためのアフィニティークロマトグラフィーに続く段階として使用される。本発明は、抗体を精製するためのキットも包含する。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、細菌、寄生虫、真菌、ウイルスへの感染から及び腫瘍細胞の増殖から身体を集合的に防護する多くの相互依存性細胞型から構成される。免疫系の監視者は、その宿主の血流を絶え間なく動きまわるマクロファージである。感染又は免疫感作で攻撃されると、マクロファージは、抗原として知られる外来分子で刻印された侵入物をとり込むことで応答する。この事象は、ヘルパーT細胞によって仲介され、B−細胞の賦活を引き起こす複雑な連鎖応答を示す。これらのB−細胞は、今度は、外来侵入物に結合する抗体と呼ばれるタンパク質を産生する。抗体と抗原の間の結合事象は、食作用又は補体系の活性化による破壊に向けて外来侵入物に刻印する。IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMなど、免疫グロブリンとしても知られるいつかの異なる部類の抗体が存在する。それらは、その生理学的役割のみならずそれらの構造も異にする。構造の観点から、IgG抗体は、多分それらが成熟免疫応答で演じる顕著な役割ゆえに、広範に研究されている。ポリクロナール抗体は、適切な抗原を用いる動物の免疫感作による標準的方法に従って産生される。応答して、動物は、ポリクロナールである抗体を産生する。しかし、多くの目的に対して、モノクロナール抗体として知られる特定抗体の単一クローンを有することが望まれる。モノクロナール抗体(MAb)は、単一の抗体のみを産生する正常B−細胞と異常ミエローマ腫瘍細胞の間の融合から構成されるハイブリッド又は融合細胞によって産生される。得られるハイブリッドは、ハイブリドーマとして知られ、今日、抗体を産生するための標準方法で使用されている。
【0003】
免疫グロブリンが所持する生物学的活性は、今日、ヒトの及び獣医学上の診断、ヘルスケア−及び治療の分野における様々な応用の領域で利用されている。実際、この数年、モノクロナール抗体及び組換え抗体構築物は、臨床試験で現在調べられ、治療薬及び診断薬としてFDAの承認を受けている最も大きな部類のタンパク質になっている。簡単で費用効果の高い方式で高純度の抗体を得るためには、発現系に対する補足及び産生戦略、効率的な精製プロトコルが求められる。
【0004】
免疫グロブリンの在来的単離方法は、タンパク質のその他の群を溶液中に残しながらの、免疫グロブリンを含むタンパク質画分の選択的な可逆的沈殿を基本にしている。典型的な沈殿剤は、エタノール、ポリエチレングリコール、リオトロピック塩(硫酸アンモニウム及びリン酸カリウムなど)及びカプリル酸である。典型的には、これらの沈殿方法は、極めて不純な産物を与え、同時に、時間がかかり、骨が折れる。更に、原料に沈殿剤を添加すると、上清を他の目的に使用することが困難になり、処理の問題が新たに生じる。このことは、免疫グロブリンの大規模精製の場合に特に実際的な重要性をもつ。
【0005】
免疫グロブリンの代替的単離方法はクロマトグラフィーであり、それは一群の密接に関連した分離方法を包含する。大部分の他の物理的及び化学的分離方法からクロマトグラフィーを区別する特徴は、1つの相が固定であり、他の相が移動可能である2つの相互に混和できない相を接触させることである。試料混合物は、移動相中に導入され、混合物が移動相によって装置を通過して運搬される間に、固定相及び移動相との一連の相互作用を受ける。相互作用は、試料中の成分の物理的又は化学的特性の差異を利用する。これらの差異は、固定相を含むカラムを通過する移動相の影響の下で、個々の成分の移動速度を決定する。分離された成分は、固定相との相互作用が増大する順序で出てくる。最も阻止されなかった成分が最初に溶出し、最も強力に保持された物質が最後に溶出する。分離は、試料成分がカラムから溶出する際に、隣接する溶質ゾーンとの重なりを防止するように、1つの成分が十分に阻止される場合に達成される。それぞれ特定の分離目的に関して最適な固定相を設計するための努力が絶えずなされている。このような固定相は、一般に、官能基即ち結合基を含むリガンドが結び付いた担体又はベースマトリックスを含む。イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー及びアフィニティークロマトグラフィーなど、それが利用する相互作用の原理に基づいた各種のクロマトグラフィーが一般に参照される。
【0006】
イオン交換クロマトグラフィーは、免疫グロブリンを単離するためのプロトコルで使用されることが多い。陰イオン交換クロマトグラフィーでは、免疫グロブリンの負に荷電したアミノ酸側鎖が、クロマトグラフィーマトリックスの正に荷電したリガンドと相互作用する。他方、陽イオン交換クロマトグラフィーでは、免疫グロブリンの正に荷電したアミノ酸側鎖が、クロマトグラフィーマトリックスの負に荷電したリガンドと相互作用する。
【0007】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)は、免疫グロブリンを単離するためのプロトコルで記述され使用されるもう1つの方法である。高純度の免疫グロブリン製品が目的である場合には、HICを1以上の更なる段階と組み合わせることが一般に推奨される。HICでは、免疫グロブリンをHICマトリックスに効率的に結合させるために、移動相にリオトロピック塩を添加する必要がある。結合した免疫グロブリンは、続いて、リオトロピック塩の濃度を低下させることによってマトリックスから放出される。従って、この方法の欠点は、原料にリオトロピック塩を添加する必要があることであり、このことは、大規模使用者対して諸問題と結果として費用の増大を引き起こす可能性がある。例えば、ホエー、血漿及び卵黄のような原料の場合、原料にリオトロピック塩を添加することは、その塩が、免疫グロブリンの激減した原料の商業的に可能ななんらかの使用を妨げる可能性があるので、多くの場合、大規模な応用では採用されない。大規模応用における更なる問題は、数千リットルの廃液の処分である。
【0008】
アフィニティークロマトグラフィーは、鍵−鍵穴認識の原理における目標生体分子と生体分子特異的リガンドの間の特異的相互作用に基づく。従って、目標とリガンドは、抗原/抗体、酵素/受容体のような親和性対を構成する。抗体を単離及び精製するための双方とも普及している方法であるプロテインA及びプロテインGアフィニティークロマトグラフィーのように、タンパク質系親和性リガンドが広く知られている。プロテインAクロマトグラフィーが、特にモノクロナール抗体に対して顕著な特異性を提供し、結果として高い純度が得られることが広く知られている。プロテインAに基づく方法は、イオン交換、疎水性相互作用、ヒドロキシアパタイト及び/又はゲル濾過段階と組み合わせて使用され、多くの生物薬剤会社のための優れた抗体精製法となっており、例えば、国際公開第8400773号及び米国特許第5151350号を参照されたい。しかし、タンパク質のペプチド結合により、プロテインAマトリックスは、ある程度のアルカリ感受性を示す。更に、プロテインAを使用して細胞培養培地から抗体を精製する場合には、細胞に由来するプロテアーゼが、プロテインA又はそのペプチドフラグメントのリークを引き起こす可能性がある。
【0009】
アフィニティークロマトグラフィーマトリックスからのリガンドリークを低減するための試みが、国際公開第03/041859号(Boehringer Ingelheim Pharma KG)に発表されており、そこでは、リガンドリークを低減するために、1種以上の界面活性剤で例えばプロテインAを前処理することが提案されている。例えば5〜15ベッド容積の界面活性剤で親和性マトリックスを処理すればよい。接触時間は、処理の有効性にとって極めて重要である。リークを低減するためには、例えば、室温で16時間以上の接触時間が必要である。
【0010】
アフィニティークロマトグラフィーマトリックスからのリガンドリークの問題に対する代替的接近手段が、米国特許第4983722号(Miles Inc.)で提供されており、そこでは、抗体及びプロテインAを含む液体から、それを陰イオン交換材料にさらすことによってプロテインAが選択的に単離される。双方の成分は陰イオン交換材料に吸着され、次いで、抗体及びプロテインAは、イオン強度が増加する条件下で順次溶出される。例示的な陰イオン交換体が、ジエチルアミノエチル(DEAE)Trisacryl M又はDEAE Sepharose(商標)である。
【0011】
国際公開第2004/076485号(Lonza Biologics Plc.)は、プロテインA及びイオン交換クロマトグラフィーによる抗体精製に関する。イオン交換段階は、プロテインAで精製された抗体を、プロテインAの結合及び通過液中の抗体の収集を可能にする条件下でイオン交換材料に注入することを含む。陰イオン交換体は、第4級アミン系陰イオン交換体、最も好ましくはSepharose(商標)Q(Amersham Biosciences、現GE Healthcare)である。
【0012】
米国特許第5429746号(SmithKline Beecham Corp.)は、抗体を、プロテインAクロマトグラフィー担体にまず吸着し、そして溶出し、次いで、陽イオン交換クロマトグラフィー担体に吸着し、そしてそこから選択的に溶出し、最後にHIC担体に吸着、そして溶出する方法に関する。アフィニティー及び/又は陽イオン交換クロマトグラフィーに続いて、HICカラムかけられる混合物は、免疫グロブリン凝集体、誤って折り畳まれた種、宿主細胞タンパク質及びアフィニティークロマトグラフィー段階からの残留材料を含む可能性がある。
【0013】
米国特許第6498236号(Upfront Chromatography)は、タンパク質系親和性リガンドと目標免疫グロブリンの間の小さな分子量差によって引き起こされる特定の問題を対象としている。例えば、ハイブリドーマ細胞培養上清、動物の血漿又は血清のような溶液から免疫グロブリンを単離又は精製するための1つの方法が開示されており、この方法は、プロテインA、プロテインG、合成ペプチド及びその他の比較的高分子量のリガンドの使用に対する代替として提案されている。開示の方法で使用される固相マトリックスは、式M−SP1−X−A−SP2−ACIDで定義され、ここで、Mはマトリックス骨格を表し、SP1はスペーサーを表し、XはO、S又はNHを表し、Aは単環又は二環式の置換されていてもよい芳香族又はヘテロ芳香族部分を表し、SP2は任意選択のスペーサーを表し、ACIDは酸基を表す。特定の置換基は、マトリックスが免疫グロブリンに効率的に結合するか否かに関して決定的に重要であると述べられている。
【0014】
米国特許第5945520号(Burtonら)は、結合のpHで疎水的特性を、脱離のpHで親水的及び/又は静電的特性を示す混成モードクロマトグラフィー樹脂を開示している。この樹脂は、小さな及び大きなイオン強度の双方で水性溶液から目標化合物に結合するように特別に設計されている。従って、吸着段階は、HICを利用し、一方、脱離は電荷の反発に基づく。
【0015】
米国特許第6702943号(Johanssonら)は、液体から目標物質を、陰イオン交換基及び疎水性構造を含む複数のリガンドを所持するマトリックスへのその吸着によって除去する方法を開示している。より具体的には、このリガンドは、正に荷電した陰イオン交換基の付近に芳香族環を持っている。電子供与体−電子受容体相互作用の能力があるその他の基を含めると、物質と吸着剤の間の相互作用力を高めることができると述べられている。所望の物質は、細胞、細胞の一部及びペプチドを含む物質であると述べられている。マトリックスの漏出点容量は、ウシ血清アルブミン及びIgGのような対照タンパク質に対して定義される。開示されているリガンドは、0.25M NaClなど、高い塩濃度で目標物質を吸着するそれらの能力ゆえに、「高塩リガンド」と表示される。
【0016】
更に、国際公開第01/38228号(Belewら)は、液体から負に荷電した物質を、混成モード陰イオン交換リガンドを含むマトリックスにそれらを結合することによって除去するもう1つの方法を開示している。各リガンドは、正に荷電した窒素及び荷電窒素から1〜7原子離れたチオエーテル結合を含んでいる。上記と同様、細胞、細胞の一部及びペプチド構造を含む物質のような所望する物質は、0.25M NaClの領域の塩濃度で吸着される。
【0017】
セラミックヒドロキシアパタイトが、免疫グロブリンの仕上げに有用であるとして提案されている。より具体的には、CHTセラミックヒドロキシアパタイト(Bio−Rad)上の未分画培地のIgG1−プロテインA複合体からIgG1を分割できることが報告されている(Chromatography,tech note 2849;S.G.Franklin,Bio−Rad Laboratories,Inc.,2000 Alfred Nobel Drive,Hercules,CA94547 USA)。より具体的には、ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)は、独特の分離特性を有することが判っているリン酸カルシウムの形態である。しかし、ヒドロキシアパタイト系マトリックスは、ある種の欠点を含むことも知られている。例えば、Ca−リークのため、それらのマトリックスは、酸性pH値で不安定であり、EDTAのようなキレート化剤に敏感である。更に、例えば、ヒドロキシアパタイトを充填すること及び大型カラム中で性能を維持することが困難なので、ヒドロキシアパタイト系マトリックスを用いる確固として再現性のある精製方法を開発し、規模を拡大することは困難であることが判っている。結局、金属イオン汚染及びカルシウムイオンの交換によって引き起こされる樹脂特性の変化の危険が存在し、この変化は、規制当局の重大な関心事である。
【0018】
Johanssonらは、高導電率移動相から負に荷電したタンパク質を捕捉するためのマルチモーダルリガンドプロトタイプのスクリーニングについて記載している(Journal of Chromatography A,1016(2003)21〜33:「Preparation and characterization of prototypes for multi−modal separation media aimed for capture of negatively charged biomolecules at high salt conditions」)。弱イオン交換リガンド(第1級及び第2級アミン類)系の非芳香族マルチモーダル陰イオン交換リガンドは、高塩条件での吸着によってタンパク質を捕捉するのに最適であることが見出された。
【特許文献1】国際公開第8400773号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5151350号明細書
【特許文献3】国際公開第03/041859号パンフレット
【特許文献4】米国特許第4983722号明細書
【特許文献5】国際公開第2004/076485号パンフレット
【特許文献6】米国特許第5429746号明細書
【特許文献7】米国特許第6498236号明細書
【特許文献8】米国特許第5945520号明細書
【特許文献9】米国特許第6702943号明細書
【特許文献10】国際公開第01/38228号パンフレット
【特許文献11】国際公開第02/053252号パンフレット
【特許文献12】米国特許第6428707号明細書
【特許文献13】米国特許第6602990号明細書
【特許文献14】スウェーデン特許第0402322−2号明細書
【非特許文献1】Chromatography,tech note 2849;S.G.Franklin,Bio−Rad Laboratories,Inc.,2000 Alfred Nobel Drive,Hercules,CA94547 USA
【非特許文献2】Journal of Chromatography A,1016(2003)21〜33:「Preparation and characterization of prototypes for multi−modal separation media aimed for capture of negatively charged biomolecules at high salt conditions」
【非特許文献3】Karger et al.,An Introduction into Separation Science,John Wiley&Sons(1973)page42
【非特許文献4】Hermanson et al.,Greg T.Hermanson、A.Krishma Mallia and Paul K.Smith,「Immobilized Affinity Ligand Techniques」Academic Press,INC、1992
【非特許文献5】S Hjerten:Biochim Biophys Acta 79(2)、393〜398(1964)
【非特許文献6】R Arshady:Chimica e L’Industria 70(9),70〜75(1988)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の一態様は、必要な時間及び処理段階が従来技術の方法よりも少ない、液体中の他の成分から抗体を分離する方法を提供する。これは、抗体を含む液体をマルチモーダル分離マトリックスと接触させ、非結合方式で実質的に純粋な抗体を回収する方法によって達成される。例えば、マトリックスを含むクロマトグラフィーカラムにその液体を適用すると、抗体が通過液から容易に回収される。
【0020】
本発明の他の態様は、従来技術の方法に比べて新規な特異性が得られる、液体中のその他の成分から抗体を分離する方法を提供する。
【0021】
本発明の更なる態様は、粗供給液中に存在する宿主細胞タンパク質のような夾雑物の除去率が改善される、液体中のその他の成分から抗体を分離する方法を提供する。
【0022】
本発明の更なる態様及び利点は、以下の詳細な説明から明らかであろう。
【0023】
定義
用語「抗体」及び「免疫グロブリン」は、本明細書中で互換的に使用される。
【0024】
本明細書中で、用語「分離マトリックス」は、官能基を含む1つ以上のリガンドがカップリングしている担体からなる材料を表すのに使用される。
【0025】
用語「マルチモーダル」分離マトリックスは、結合されるべき化合物と相互作用する2以上の異なるが協力的な部位を提供する能力のあるマトリックスを指す。例えば、これらの部位の1つは、リガンドと問題の物質との間に引力型の電荷−電荷相互作用を付与できる。他の部位は、電子受容体−供与体相互作用、並びに/或いは疎水性及び/又は親水性相互作用を付与できる。電子供与体−受容体相互作用には、水素結合、π−π、陽イオン−π、電荷移動、双極子−双極子、誘導双極子などが含まれる。「マルチモーダル」分離マトリックスは、「混成モード」分離マトリックスとしても知られている。
【0026】
用語「表面」は、本明細書中で、全ての外部表面を意味し、多孔性担体の場合には外側表面及び細孔内表面を含む。
【0027】
句「電子供与体−受容体相互作用」は、遊離電子対を有する電気陰性原子が、供与体として働き、供与体の電子対に対する受容体として働く電子不足原子に結合することを意味する(例えば、Karger et al.,An Introduction into Separation Science,John Wiley&Sons(1973)page42参照)。
【0028】
用語「陰イオン交換基」は、本明細書中で、正に荷電した又は荷電可能である基を意味する。
【0029】
用語「溶出液」は、この分野でのその従来からの意味、即ち、分離マトリックスから1種以上の化合物を解き放すのに適切なpH及び/又はイオン強度の緩衝液の意味で使用される。
【0030】
用語「捕捉段階」は、液体クロマトグラフィーの文脈では、分離手順の初期段階を指す。最も一般的には、捕捉段階は、清澄化、濃縮、安定化及び可溶性不純物からのかなりの精製を含む。捕捉段階の後に、宿主細胞タンパク質、DNA、ウイルス、エンドトキシン、栄養素、細胞培養培地の成分(消泡剤及び抗生物質など)及び製品関連不純物(凝集体、誤って折り畳まれた種及び凝集体など)のような不純物の残存量を更に低減する中間精製が続いてもよい。
【0031】
用語「仕上げ段階」は、液体クロマトグラフィーの文脈で、痕跡不純物を除去し有効で安全な製品を残す最終精製段階を指す。仕上げ段階中に除去される不純物は、目標分子の配座異性体又は考え得るリークであることが多い。
【0032】
用語「Fc結合タンパク質」は、抗体の結晶可能部分(Fc)に結合できる能力のあるタンパク質を意味し、例えばプロテインA及びプロテインG又は結合特性を維持しているその任意のフラグメント又は融合タンパク質が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0033】
最初の態様において、本発明は、液体試料を含む移動相をマルチモーダル分離マトリックスと接触させ、抗体を移動相中に遊離させた状態で、1種以上の目標化合物を吸着する、液体試料中の1種以上のその他の化合物から抗体を分離する方法に関するものであり、マルチモーダル分離マトリックスは、目標化合物の負に荷電した部位と相互作用する能力を有する第1の基及び目標化合物と電荷−電荷相互作用以外の1種以上の相互作用を行う能力を有する第2の基を含む。本発明は、第1及び第2の基に加え、第3の又は更なる基を追加する方法も包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
有利な実施形態では、本発明の方法は、液体クロマトグラフィーの原理を使用して、即ち、マルチモーダル分離マトリックスを含むクロマトグラフィーカラムに移動相を通過させることによって実施される。担体は、多孔性又は非多孔性粒子(本質的に球状の粒子など)、モノリス、フィルター、膜、表面、毛細管又は任意のその他の一般に使用されるフォーマットの形態でよい。代替的実施形態では、本発明の方法は、吸着流動床クロマトグラフィーの原理を使用して、即ち、高密度フィラーを含む粒子(本質的に球状の粒子など)の形態の分離マトリックスからなる吸着流動床に移動相を添加することによって実施される。他の代替的実施形態では、本発明の方法は、液体試料を入れた容器に分離マトリックスを添加するバッチ方式の処理を使用して実施される。
【0035】
従って、本発明による抗体の精製方法では、1種以上の所望でない化合物は分子マトリックスに吸着され、一方、所望の抗体は吸着されないで移動相中に残留する。本発明の文脈において、用語「目標」化合物は、分離マトリックスに吸着される化合物を指す。明らかに、吸着される化合物の性質及び本体は、液体試料の起源によって決まる。目標化合物の例は、細胞及び細胞破片、タンパク質及びペプチド、核酸(DNA及びRNAなど)、エンドトキシン、並びにウイルスである。
【0036】
本発明の一実施形態では、マルチモーダル分離マトリックスをクロマトグラフィーカラム中に用意し、移動相を重力及び/又はポンプ輸送によってカラムを通過させ、抗体をカラムの通過液中に回収する。本発明方法の利点は、カラムから抗体を溶出する必要が少しもないことである。特定の溶出段階を回避することは処理の観点から有利である。なぜなら、段階が少ないと、より迅速な精製プロトコルに帰着し、その結果処理コストが低下するからである。更に、抗体は、それらの折り畳みパターンを損なう又はそれらのペプチド結合を攻撃することによってそれらを劣化させる可能性のある特定の条件に敏感である。陰イオン交換体に対する溶出条件は、一般に、極端ななんらかの化学薬品を必要としないが、塩及びpHのあらゆる変化が、敏感な抗体に影響を与える可能性があり、その影響は、pI、電荷分布などに応じて種から種で異なる。結果として、本発明方法のもう1つの利点は、その方法が、溶出液を添加すること及び抗体に対して溶出条件を適用することを回避することである。
【0037】
上述のように、本発明による方法において、それから抗体を分離することが望まれる目標化合物は、マルチモーダル分離マトリックスに吸着される。目標化合物の吸着に最も適切な条件を達成するために、液体試料を、適切な緩衝液又はその他の液体と組み合わせて移動相を用意する。本発明方法は、有利には、比較的低い塩濃度での吸着を一般には含む、陰イオン交換クロマトグラフィーにとって通常的な条件下でランされる。従って、本発明方法の一実施形態では、移動層の導電率は、0〜25の、例えば10〜15mS/cmの範囲である。一実施形態では、移動層のpHは、約5〜6である。当業者は、例えば、精製すべき抗体の例えば電荷及び電荷分布によって決まるpH又は導電率を調節することによって、抗体の通過液を得るための条件を容易に構成することができる。必要なら、任意のこのような通液の前又は中間に、1以上の洗浄段階を適用できる。例えばマトリックスの再利用のために、続いて吸着化合物を解き放すことが望まれる場合には、溶出を、増大する塩勾配を使用することによってより高い塩濃度で実施できる。そのうえ又は代わりに、pH値を移動し、例えば低下するpH勾配で、吸着された化合物を溶出することができる。
【0038】
上述のように、マルチモーダル分離マトリックスは、目標化合物の負に荷電した部位と相互作用できる第1の基及び目標化合物と電荷−電荷相互作用以外の1種以上の相互作用ができる第2の基を含む。この文脈で、分離マトリックス中の基の異なるモードの相互作用は、同一の目標化合物に向けられ、即ち、各目標化合物は、理想的には、2種以上の方式の相互作用によって吸着される。正に荷電した又は荷電可能な陰イオン交換基を含むマルチモーダルリガンドは、この分野で周知であり、例えば、米国特許第6702943号(Johanssonら)、国際公開第01/38228号(Belewら)及び国際公開第02/053252号(Belewら)を参照されたい。
【0039】
一実施形態では、第1の基、即ち、マルチモーダル分離マトリックスの陰イオン交換基は、強陰イオン交換体である。この文脈で、用語「強」陰イオン交換体は、広範なpH範囲内で荷電したままである基と解される。有利な実施形態では、強陰イオン基は、Q基としても知られる第4級アミンである。代替的実施形態では、マルチモーダル分離マトリックスの第1の基は、弱イオン交換体である。この文脈で、用語「弱」陰イオン交換体は、特定のpH値で荷電しているがpHを変えることで電荷を失う場合がある基を意味すると解される。特定の実施形態では、第1の基は、陰イオン交換基と更なる官能基の混合物、例えば、陰イオン交換体と水素結合基を含む。従って、この実施形態では、第1の基はTRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)でよい。
【0040】
一実施形態では、マルチモーダル分離マトリックスの第2の基は、芳香族基及び/又は水素結合基を含む。一実施形態では、芳香族基は、芳香族又はヘテロ芳香族構造を含む環系を含む。有利な実施形態では、第2の基はフェニル基を含む。代わりに、第2の基は、芳香族と非芳香族疎水性基(アルキル基など)の混合物を含んでいてもよい。従って、特定の実施形態では、第1の基は、アルキル基を含む。本発明で使用される分離マトリックスは、2以上の同種の官能基、例えば2種以上の異種の疎水性基又は2種以上の異種のマルチモーダル陰イオン交換体を含んでいてもよい。
【0041】
当業者には明らかであろうが、本発明方法で使用される分離マトリックスの官能基は、同一リガンド上に(この場合、各リガンドがマルチモーダルである)又は異なるリガンド上に(この場合、分離マトリックスの総合的な性質がマルチモーダルである)存在できる。
【0042】
従って、一実施形態では、分離マトリックスは、同一リガンドにカップリングした第1及び第2の基を含む。この実施形態では、上で考察した第1及び第2の基のいずれか一方(例えば、第4級アミン基及びフェニル基など)を使用できる。一実施形態では、リガンドを、その第1の基を介して(例えば第4級アミンに帰着するアミンを経由して)カップリングさせる。一実施形態では、第1及び第2の基は、1〜6個、例えば1〜3個、好ましくは1〜2個の炭素原子で互いに離隔されている。特定の実施形態では、リガンドは、N−ベンジル−N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、2−アミノベンズイミダゾール、チオミカミン及びQ Phenylからなる群から選択される。
【0043】
代替的実施形態では、分離マトリックスは、異なるリガンドにカップリングした第1及び第2の基を含む。この実施形態では、上で考察した第1及び第2の基のいずれか一方(例えば、第4級アミン基及びフェニル基など)を使用できる。この実施形態では、粒状分離マトリックスの場合、このような異なるリガンドは、実質的に等しい又は異なる量で異なる又は同一粒子に固定される。代わりに又は追加して、粒状分離マトリックスは、異なる粒子に固定された異種の第1基又は異種の第2基を含んでいてもよい。
【0044】
本発明方法で使用されるマルチモーダルクロマトグラフィーマトリックスは、当業者によって容易に調製される。簡単に言えば、マトリックスは、この分野でベースマトリックスとして知られる担体に、担体表面と相互作用基の間に適切な距離を用意するための従来からのスペーサーを経由して直接的又は間接的にカップリングしたリガンドから構成される。高い吸着能力を得るため、担体は多孔性であり、次いで、リガンドを外表面及び細孔内表面にカップリングする。リガンドを多孔性又は非多孔性表面に固定する方法は、当分野で周知であり、例えば、Hermanson et al.,Greg T.Hermanson、A.Krishma Mallia and Paul K.Smith,「Immobilized Affinity Ligand Techniques」Academic Press,INC、1992を参照されたい。一実施形態では、担体表面のリガンド密度は、従来からのイオン交換マトリックスに通常使用されるものに近い範囲である。リガンドは、使用される化学的性質に由来するリンカー要素を経由して又はエクステンダー、触手若しくは可撓性アームとして知られるより長い要素を経由して担体に容易に直接カップリングすることができ、例えば、ここで参照により本明細書に含められる米国特許第6428707号を参照されたい。簡単に言えば、エクステンダーは、ホモ−又はコポリマーのようなポリマーの形態でよい。疎水性高分子エクステンダーは、合成起源(即ち合成骨格を有する)又は生物学的起源(即ち天然に見出される骨格を有するバイオポリマー)に属するものでよい。典型的な合成ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリアクリル−及びポリメタクリルアミド、並びにポリビニルエーテルからなる群から選択される。典型的なバイオポリマーは、デンプン、セルロース、デキストラン及びアガロースのような多糖類からなるから選択される。
【0045】
担体は、有機又は無機材料から作られる。一実施形態では、担体は、架橋炭水化物材料のような天然ポリマー、例えば、アガロース、寒天、セルロース、デキストラン、キトサン、コンニャク、カラゲナン、ジェラン、アルギン酸塩などから調製される。天然ポリマー担体は、逆懸濁ゲル化のような標準的な方法に従って容易に調製され、適宜架橋される(S Hjerten:Biochim Biophys Acta 79(2)、393〜398(1964))。特に有利な実施形態では、担体は、1種の比較的堅いが多孔性のアガロースであり、それはその流動特性を高める方法で調製され、例えば、米国特許第6602990号(Berg)又はスウェーデン特許第0402322−2号(Bergら)を参照されたい。代替的実施形態では、担体は、架橋合成ポリマーのような合成のポリマー又はコポリマー、例えば、スチレン又はスチレン誘導体、ジビニルベンゼン、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルエステル、ビニルアミドなどから調製される。このような合成ポリマーは、標準的な方法に従って容易に調製され、適宜架橋され、例えば、「Styrene Based polymer supports developed by suspension polymerization」(R Arshady:Chimica e L’Industria70(9),70(9),70〜75(1988))を参照されたい。天然又は合成のポリマー担体は、スウェーデン、UppsalaのGE Healthcareのような商業的供給源から、例えば、多孔性粒子の形態で入手することもできる。更なる代替的実施形態では、担体は、シリカのような無機ポリマーから調製される。無機の多孔性及び非多孔性担体は、この分野で周知であり、標準的な方法に従って容易に調製される。
【0046】
本発明の分離マトリックスの適切な粒子径は、5〜500μm、例えば10〜100μm、例えば20〜80μmの直径範囲でよい。本質的に球状の粒子の場合、平均粒子径は5〜1000μm、例えば10〜500μmの範囲でよい。特定の実施形態で、平均粒子径は10〜200μmの範囲である。当業者は、使用を予定した処理に応じて適切な粒子径及び気孔率を容易に選択できる。例えば、大規模処理の場合には経済的理由のため、特に捕捉段階に対して大容積の処理を可能にするように、より多孔性であるが堅い担体を選ぶことができる。クロマトグラフィーでは、カラムの大きさ及び形状のような処理パラメーターが選択に影響を及ぼす。吸着流動床法において、マトリックスは、一般に、高密度フィラー、好ましくはステンレススチールのフィラーを含む。その他の処理の場合には、他の判定基準がマトリックスの性質に影響を及ぼす可能性がある。
【0047】
本発明で分離される抗体は、任意の一般に使用される供給源(表面で培養された細胞など)に、或いは発酵タンク又は容器中でのバッチ方式又は連続細胞培養に由来することができる。従って、一実施形態では、液体は細胞発酵から得られる上清である。吸着される化合物の例は、DNA、ウイルス、エンドトキシン、栄養素、細胞培養培地の成分(消泡剤及び抗生物質など)及び製品類縁不純物(誤って折り畳まれた種及び凝集体など)である。移動相とマルチモーダル分離マトリックスを接触させる段階、即ち、吸着段階は、機械的濾過、遠心及び/又はクロマトグラフィーの段階によって先行されてもよい。例えば、液体試料が発酵培養液であるなら、マルチモーダルクロマトグラフィーの前に、細胞破片、全細胞及びその他の比較的大きな成分を機械的に除去するのが有利である。
【0048】
一実施形態では、本発明は、精製プロトコル中の捕捉段階を構成する。特定の実施形態では、液体試料は、マルチモーダルクロマトグラフィーマトリックスとの接触の前に濾過される粗供給液である。従って、この実施形態は、液体試料が機械的手段によって精製されてはいるが、やはり捕捉段階を構成する。周知のように、抗体を産生する宿主細胞も、宿主細胞タンパク質(HCP)として一般的に知られている幾つかのその他のタンパク質を含む。このようなHCPには、プロテアーゼのような酵素及び宿主細胞によって産生されるその他のタンパク質が含まれる。本発明で、意外にも、宿主細胞タンパク質がマルチモーダル分離マトリックスに吸着され、一方、抗体を移動相中に遊離した状態にできることが見出された。従って、一実施形態では、液体試料中の実質的に全ての宿主細胞タンパク質がマルチモーダル分離マトリックスに吸着される。
【0049】
代替的実施形態では、本発明は、中間精製又は最終仕上げ段階など、純化プロトコルにおける第2、第3又は更には第4の段階として使用される。従って、一実施形態では、マルチモーダル分離マトリックスに適用される移動相は、分離マトリックスからの抗体含有溶出液を含む。一実施形態では、液体試料は、先行するアフィニティークロマトグラフィーマトリックスからの溶出液である。有利な実施形態では、それから溶出液が得られる分離マトリックスは、1種以上のFc結合タンパク質リガンド、例えばプロテインAを含む。用語、プロテインAリガンドには、この文脈で、天然及び組換えのプロテインA又はその機能性フラグメントが含まれる。この文脈で、用語「機能性」フラグメントは、タンパク質の最初の結合特性を保持したフラグメントを意味する。このようなアフィニティーマトリックスは、GE HealthcareからのMabSelect(商標)のように商業的に入手できる。従って、この実施形態では、吸着される化合物は、解き放されたプロテインA、プロテインA分子当たり幾つかの抗体(1つのプロテインA分子と複合した2〜4個の抗体など)を含むプロテインAと抗体の間で形成された複合体(プロテインA−MAb複合体など)及び解き放されたプロテインAの凝集体又は抗体からなる群から選択される1以上の化合物でよい。当業者には明らかであろうが、先行段階(アフィニティークロマトグラフィーなど)で使用される特定の条件に応じて、溶出液は、適切な添加又は修正による調節を必要とする場合がある。従って、溶出液を適切な緩衝液又は液体と組み合わせて移動相を用意する。このことは、プロテインAカラムからの溶出液を精製する予定なら、実際的理由により好ましい可能性はあるが、アフィニティークロマトグラフィーに続いて直ちに又は更に同一装置で本発明の方法を実施する必要は必ずしもない。
【0050】
特定の実施形態では、本発明方法は、上述のように、プロテインAクロマトグラフィーマトリックスのようなアフィニティークロマトグラフィーマトリックス上での捕捉段階及びマルチモーダル分離マトリックス上での仕上げ段階を含む多段階法である。アフィニティークロマトグラフィーマトリックスに適用される液体試料は、移動相を用意するために濾過、並びに/又は、pH及び/若しくは導電率の修正による調節のような前処理に適宜かけられている、細胞培養液体又は発酵培養液でよい。この方法では、捕捉段階によって、1種以上の宿主細胞タンパク質及び宿主細胞残留物(細胞破片及びタンパク質、DNA、エンドトキシンなど)が除去される。続く仕上げ段階では、捕捉段階からの残留物の形態の主たる化合物(プロテインA−抗体凝集物など)が吸着される。
【0051】
本発明の方法は、任意のモノクロナール又はポリクロナール抗体、例えば、哺乳動物宿主(例えばマウス、ネズミ、霊長類、ヒト)起源の抗体又はハイブリドーマ起源の抗体の回収に有用である。一実施形態では、回収される抗体は、ヒト又はヒト化抗体である。有利な実施形態では、抗体は単量体抗体である。抗体は、任意の部類、即ち、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMからなる群から選択されるものでよい。一実施形態では、精製すべき抗体は、プロテインAに結合する能力のある抗体又はFcを含有する抗体フラグメント又は融合タンパク質である。特定の実施形態では、回収される抗体は、IgG1のような免疫グロブリンG(IgG)である。一実施形態では、本発明方法は、6〜9の範囲、例えば7〜8の範囲のpIを有する抗体の精製に使用される。特定の実施形態では、精製抗体のpIは約9である。本発明の文脈で、用語「抗体」は、抗体フラグメント及び抗体又は抗体フラグメントを含む任意の融合タンパク質も含むと解されたい。従って、本発明は、上で言及した抗体及びこのような抗体を含む融合タンパク質のいずれか1つのフラグメントの精製も包含する。一実施形態では、抗体はモノクロナール抗体である。
【0052】
上から明らかなように、本発明方法において、所望でない化合物はマルチモーダル分離マトリックスに吸着され、吸着されていない抗体の実質的に純粋な画分が回収される。この文脈において、用語「実質的に純粋」は、実質的に全ての非抗体化合物が除去されていることを意味すると解される。最も有利には、夾雑物総量の約80%以上、例えば約95%以上即ち95〜100%の区間、例えば98%以上即ち98〜100%の区間、好ましくは約99%以上即ち99〜100%の区間が、マルチモーダル分離マトリックス上で除去される。しかし、当業者が認識するように、可能な純度は、分離マトリックスに適用される液体試料中の抗体濃度及び使用されるその他の条件に左右される。従って、一実施形態では、本発明方法により分離される抗体は、治療用グレードの抗体である。従って、本発明で精製された抗体は、研究において及びMAb薬剤のような抗体医薬の調製に有用である。精製抗体の代替的用途は、診断用途に向けたものである。更に、精製抗体は、ヒト用食品添加剤のような食品においても有用である。例えば、本発明で精製されたウシ抗体は食品において有用である。
【0053】
本発明方法の特定の実施形態では、マルチモーダル分離マトリックスは、使い捨てクロマトグラフィーカラム又はフィルターとして供給される。抗体のような治療用化合物を精製する方法で使い捨て製品を使用する利点は、使用後に分離マトリックスを廃棄することによって2つの異なる処理間での相互汚染の危険が排除されることである。多くのこのような方法では、無菌状態を維持することが要求される。従って、本発明方法の一実施形態では、マルチモーダル分離マトリックスは滅菌されており、滅菌マルチモーダル分離マトリックスは、滅菌包装されたクロマトグラフィーカラム又はフィルターとして供給される。一実施形態では、本発明方法は、使い捨て分離マルチモーダルマトリックスを、抗体を回収する予定の液体を入れた容器に添加するバッチ方式処理として実施される。有利な実施形態では、使い捨て分離マトリックスは、そのうえ、水性液体に接触すると容易に膨潤する乾燥アガロース粒子のような乾燥粒子から構成される。時間が適切なら、目標化合物はマトリックスに吸着すること可能になり、その後、抗体を含む液相が容器から回収される。次いで、使用したマトリックスを、吸収された化合物を放出しないで処理することができ、このことが、更に、エンドトキシン、プリオン及び/又はある種の宿主タンパク質のような化合物をもはや更に取り扱う必要がないので、安全性の観点から有利である場合がある。
【0054】
第2の態様において、本発明は、液体中の1種以上の成分から抗体を精製するためのキットに関するものであり、キットは、分割した区画中に、第1分離マトリックスを充填した第1クロマトグラフィーカラム、目標化合物の負に荷電した部位と相互作用できる第1の基及び目標化合物と電荷−電荷相互作用以外の1以上の相互作用ができる第2の基を含むマルチモーダル分離マトリックスを充填した第2クロマトグラフィーカラム、1種以上の緩衝液及び使用説明書を含む。有利な実施形態では、使用説明書は、マルチモーダル分離マトリックスの通過液からの抗体の精製を教示する。マルチモーダル分離マトリックス中のリガンド、担体及びその他の詳細は上述の通りでよい。使用説明書は、有利には、上で規定したような方法を説明する。キットの一実施形態では、第1の分離マトリックスは、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスであり、好ましくは、プロテインA又はGのリガンドのようなタンパク質リガンドを含む。他の実施形態では、第1及び/又は第2クロマトグラフィーカラムは、滅菌及び/又は使い捨てカラムである。
【0055】
最後に、本発明は、又、抗体を精製するための使い捨てクロマトグラフィーカラムに関するものであり、カラムは、負に荷電した目標部位と相互作用できる第1の基及び電荷−電荷相互作用以外の1以上の相互作用ができる第2の基を含むマルチモーダル分離マトリックスを含む。マルチモーダル分離マトリックス中のリガンド、担体及びその他の詳細は上述の通りでよい。一実施形態では、分離マトリックスは、導電率が0〜50、例えば0〜25、例えば0〜15mS/cmの範囲である移動相から抗体以外のタンパク質を吸着する能力がある。この態様の代替的実施形態は、抗体を精製するための使い捨てフィルターであり、フィルターは、負に荷電した目標部位と相互作用できる第1の基及び電荷−電荷相互作用以外の1以上の相互作用ができる第2の基を含み、基はフィルター表面にカップリングしている。特定の実施形態では、本発明のフィルターは、導電率が0〜50、例えば0〜25、例えば0〜15mS/cmの範囲である移動相から抗体以外のタンパク質を吸着する能力がある。
【0056】
図面の詳細な説明
図1において、a)はプロトタイプマルチモーダルリガンドである2−アミノベンズイミダゾールを示し、b)はプロトタイプマルチモーダルリガンドであるチオミカミンを示し、c)はビーズ形態の担体に固定されたプロトタイプマルチモーダルリガンドであるN−ベンジル−N−メチルエタノールアミンを示し、d)はプロトタイプマルチモーダルリガンドであるN,N−ジメチルベンジルアミンを示す。実験の部で、プロトタイプリガンドを6%アガロースマトリックスであるSepharose(商標)6FFにカップリングする。
【0057】
図2は、Sepharose(商標)6FF上に固定したN−ベンジル−N−メチルエタノールアミンのリガンドを含む(901035A)、Sepharose(商標)6FF上に固定したN,N−ジメチルベンジルアミンのリガンドを含む(901035B)及びQ Sepharose(商標)FFを含むマルチモーダル分離マトリックスに、25mM Bis−Tris、100mM NaCl(〜12mS/cm)、pH6.5で適用した、50mgのMab1を含む試料のクロマトグラムを示す。溶出は、25mM Bis−Tris、0.5M NaCl、pH6.5で実施した。
【0058】
図3a及び図3bは、後記の実施例3に記載した通りのプロトタイプ及び対照に注入した、20mgのMAb2を含む試料のクロマトグラムを示す。緩衝液は、平衡化及び注入では25mM Bis−Tris、100mM NaCl(〜12mS/cm)pH6.0である。溶出緩衝液は、0.5M 酢酸ナトリウム、pH4.0である。図3a)チオミカミン(1282004、緑)、65μモル/mL;チオミカミン(1282002、青)、128μモル/mL;及びQ Sepharose(商標)FF(黒)。図3b)2−アミノベンズイミダゾール(1282045、青)、65μモル/mL;2−アミノベンズイミダゾール(1282032、緑)、146μモル/mL;及びQ Sepharose(商標)FF(黒)。
【0059】
図4a〜図4gは、mAb1−rプロテインAを用いてプロトタイプ上で実施されたクロマトグラフィーの結果を示す。A−緩衝液は、25mM Bis−Tris、50mM NaCl、pH6.0であった。導電率は、ほぼ7mS/cmであった。溶出には、B−緩衝液、0.5M酢酸ナトリウム、pH4.0を使用した。流速は、0.5mL/分(150cm/時間)であった。試料は、mAB1が4mg/mL、プロテインAが1%(w/w)の濃度で10mgのmAb1、0.10mgのrPrAであった。図4a)チオミカミン、65μモル/mL(1282004)、図4b)チオミカミン、128μモル/mL(1282002)、図4c)対照Q Sepharose(商標)FF、図4d)2−アミノベンズイミダゾール、65μモル/mL(1282045)、図4e)2−アミノベンズイミダゾール、146μモル/mL(1282032)、図4f)N−ベンジル−N−メチルエタノールアミン、146μモル/mL(901035A)及び図4g)N,N−ジメチルベンジルアミン、175μモル/mL(901035B)。
【0060】
図5a〜図5hは、MAb1、1%rPrAを含む試料及びプールした通過液及び図4のクロマトグラフィーランからの溶出液に関する分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示す。青の曲線は、通過液(FT)画分であり、赤は溶出液である。より具体的には、図5a)は、4mg/mLのmAb1試料、1%(w/w)に相当する0.04mg/mLのrPrAからなる試料を示し、図5b)は、図4a)のチオミカミン、65μモル/mL(1282004)からのFT及び溶出液を示し;図5c)は、図4bのチオカミン、128μモル/mL(1282002)からのFT及び溶出液を示し;図5d)は、図4c)のQ Sepharose(商標)FFからのFT及び溶出液を示し、図5e)は、図4d)の2−アミノベンズイミダゾール、65μモル/mL(1282045)からのFT及び溶出物を示し;図5f)は、図4e)の2−アミノベンズイミダゾール、146μモル/mL(1282032)からのFT及び溶出液を示し、図5g)は、図4f)のN−ベンジル−N−メチルエタノールアミン、146μモル/mL(901035A)からのFT及び溶出液を示し、図5h)は、図4g)のN,N−ジメチルベンジルアミン、175μモル/mL(901035B)からのFT及び溶出液を示す。
【0061】
図6は、後記の実施例5からの結果を示す。より具体的には、Q Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowに適用された、50mgのMabを含む試料から得られたクロマトグラムを示す。溶出は、25mM Tris、0.5M NaCl、pH8.0で実施した。勾配溶出でのクロマトグラムでは極めて小さなピークのみが観察されるので、図6から、モノクロナール抗体分子がQ Phenyl Sepharose(商標)Fast Flowに、いかに吸着されないかが明らかである。
【実施例】
【0062】
本発明の実施例は、例示目的のためにのみ提供され、添付の特許請求の範囲で規定される通りの本発明の範囲をいかなる点でも制限するものと解釈されるべきでない。本明細書中の以下で又は他の場所で提供される全ての参照文献を、ここで参照により本明細書に組み込む。
【0063】
処置
非結合条件下で、約50mgのmAb1を含む試料を、プロトタイプ901035A(N−ベンジル−N−メチルエタノールアミン)及び901035B(N,N−ジメチルベンジルアミン)上に約5及び12mS/cmで注入した。5、10及び15カラム体積(CV)時に通過液画分(FT)を集めた。溶出ピークからの画分をプールした。FT画分を、HCP及びプロテインAの含有量について分析した。
【0064】
マルチモーダルリガンド2−アミノベンズイミダゾール及びチオミカミンについて、高い及び低いリガンド密度を有するプロトタイプを作製した。pH6.5で、20mgのAb1を含有する試料を約5及び12mS/cmでカラムに注入した。プロトタイプの性能は、まず、分析SECで評価した。選択した画分をHCP及びプロテインAについて分析した。画分をSECでスクリーニングした後、選択した画分をHCP及びプロテインAの分析に供した。
【0065】
クロマトグラフィーの性能が、ある特定のmAbに対してのみでないことを確認するために、mAb2を含有する試料を使用し、pH6.0及び約12mS/cmでクロマトグラフィーのランを繰り返した。プロトタイプの性能は、まず、分析SECで評価した。画分をSECでスクリーニングした後、選択した画分をHCP及びプロテインAの分析に供した。
【0066】
プロトタイプのどちらが最高のrプロテインA除去を与えるかをより容易に識別するために、MAb1に1%(w/w)の組換えプロテインA(rPrA)を添加した。各プロトタイプに、10mgのMAb1、1%のrプロテインAに相当する試料容積をpH6.0及び約7mS/cmの導電率で注入した。通過液及び溶出画分を別個にプールし、SECで分析した。
【0067】
材料/調査単位
カラム及びゲルは、スウェーデン、Uppsala、GE Healthcareから入手した。
【0068】
【表1】
装置
クロマトグラフィー装置 AKTAExplore(商標)10
分光計 Spectra Max plus。
【0069】
化学薬品
使用する化学薬品は全て分析級とした。水はMilliQで濾過した。
【0070】
クロマトグラフィー媒体
対照マトリックスは、Q Sepharose(商標)Fast Flow(FF)(スウェーデン、Uppsala、GE Healthcare)とした。マルチモーダル分離マトリックスのプロトタイプは、下表1に記載した通りのリガンドを所持した。
【0071】
【表2】
プロトタイプN−ベンジル−N−メチルエタノールアミンSepharose(商標)Fast Flowの調製
A.マトリックスへのアリル基の導入
Sepharose(商標)6 Fast Flow(スウェーデン、Uppsala、GE Healthcare)をアリルグリシジルエーテルで次のように活性化した。即ち、100mlのSepharose(商標)6 Fast Flowを吸引乾燥し、0.3gのNaBH4、12gのNa2SO4及び35mlの50%NaOH水溶液と混合した。混合物を50℃で1時間撹拌した。100mlのアリルグリシジルエーテルを添加した後、懸濁液を激しく撹拌しながら更に16時間50℃に保持した。混合物を濾過した後、ゲルを500mlの蒸留水、500mlのエタノール、200mlの蒸留水、200mlの0.2M酢酸及び500mlの蒸留水で順次洗浄した。
【0072】
滴定によれば、置換度は、アリル0.22(ミリモル)/ゲル(mL)であった。
【0073】
B.ブロム化によるアリルSepharose(商標)6 Fast Flowの活性化
50mlのアリル活性化Sepharose(商標)6 Fast Flow(アリル基0.22ミリモル/ml排水ゲル)、1gの酢酸ナトリウム及び15mlの蒸留水からなる撹拌懸濁液に、臭素を黄色が持続するまで添加した。次いで、ギ酸ナトリウムを懸濁液が完全に脱色されるまで添加した。反応混合物を濾過し、ゲルを500mlの蒸留水で洗浄した。次いで、活性化ゲルを反応容器に直ちに移送し、N−ベンジル−N−メチルエタノールアミンと更に反応させた。
【0074】
C.活性化マトリックスへのBMEA(N−ベンジル−N−メチルエタノールアミン)の導入
アミン基の窒素原子を経由してマトリックスにアミン基を直接導入した。典型的な手順において、マトリックスへのカップリングは、アリル基の臭素化及び塩基性条件下での求核置換により実現された。25mlの臭素活性化ゲル(アリル基0.22ミリモル/ml排水ゲル)を、N−ベンジル−N−メチルエタノールアミン(16.0ml)の溶液を含む反応ガラス瓶に移した。5mlの水を添加し、反応溶液のpHを水酸化ナトリウム溶液で12.0に調整した。反応物を撹拌下に16時間50℃で保持した。反応混合物を濾過した後、ゲルを、10mlの蒸留水で3回、10mlの0.5HCl水で3回、最後に10mlの蒸留水で3回、順次洗浄した。BMEA Sepharose(商標)Fast Flowゲルが、アミン0.15ミリモル/mlゲルの置換度で得られた。
【0075】
高い又は低いリガンド密度を有する2−アミノベンズイミダゾール及びチオミカミンプロトタイプを標準的な手順に従って作製した(米国特許第6702943号(Johanssonら)、国際公開第01/38228号(Belewら)及び国際公開第02/053252号(Belewら)。
【0076】
試料
MAb1及びMAb2と表示され、それぞれ1.46及び1.50の吸光係数を有する2つの異なるヒト化IgG抗体、サブクラス1を使用した。双方の抗体とも、CHO培養で発現させ、続いて本発明の実験に先立って従来からのプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製した。
【0077】
緩衝液の交換は、当緩衝液で平衡化したHiPrep(商標)脱塩カラム(スウェーデン、Uppsala、GE Healthcare)で、Superloop(商標)(スウェーデン、Uppsala、GE Healthcare)を用いて適切な容積(5〜15mL)を注入して行った。流速を5mL/分とし、5mLの画分を集めた。溶出ピークを含む画分をプールし、式1により濃度を計算するために280nmでの吸光度を二重に測定した。
【0078】
A280=ε・C・l (式1)
式中、
A280は280nmでの吸光度であり、
ε(mL・mg−1・cm−1)は特定のタンパク質に対する吸光係数であり、
C(mg/mL)はタンパク質の濃度であり、
l(cm)は光路長である。
【0079】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、Superdex(商標)200 10/300カラム(スウェーデン、Uppsala、GE Healthcare)で、0.5mL/分の流速で実施した。緩衝液は、錠剤(Sigma、P−4417)から調製されたPBS(リン酸塩緩衝化生理食塩水)、即ち、10mMリン酸塩、0.137M NaCl、2.7mM KCl、pH7.4である。
【0080】
【表3】
mAbを用いるプロトタイプでのクロマトグラフィー
緩衝液は、25mM Bis−Tris、pH6.0又は6.5とした。所望される導電率、約5又は12mS/cmに応じて、35又は100mMのNaClを含めた。プロトタイプ901035A及び901035Bの場合、溶出緩衝液(B−緩衝液)は、25mM Bis−Tris、0.5M NaCl、pH6.5とした。リガンドとしてチオミカミン及びABIを用いるプロトタイプの場合、溶出緩衝液(B−緩衝液)は、0.5M酢酸ナトリウム、pH4.0とした。流速は0.5mL/分(150cm/時間)とした。
【0081】
【表4】
MAb−rプロテインAを用いるプロトタイプでのクロマトグラフィー
A−緩衝液は25mM Bis−Tris、pH6.0とした。導電率は、50mM NaClを添加して約7mS/cmとし、B−緩衝液は、0.5M酢酸ナトリウム、pH4.0とした。流速は0.5mL/分(150cm/時間)とした。試料濃度は、MAbを4mg/mL、rPrAを0.04mg/mL(1%(w/w)に相当)とした。
【0082】
【表5】
CIP(CIP洗浄)
各クロマトグラフィーランの後に、プロトタイプ及び対照マトリックスQ Sepharose(商標)FFを次のCIP処置にかけた。
【0083】
【表6】
プロテインAの分析
選択した画分を、800μLのSPA試料希釈液+200μL試料の比率でSPA試料希釈液と混合した。混合後、画分を加熱ブロック上、99℃で10分間加熱し、次いで、再混合した。次いで、試料を組換えプロテインAについて分析した。
【0084】
宿主細胞タンパク質(HCP)の分析
試料(最小で600μL)をHCP含有量について分析した。検出下限は10ng/mLである。
【0085】
実施例1
プロトタイプリガンドN−ベンジル−N−メチルエタノールアミン(901035A)及びN,N−ジメチルベンジルアミン(901035B)で精製したMAb−1含有試料
実施例1では、50mgのMAb1を含む試料を、Sepharose(商標)6FFに固定化したN−ベンジル−N−メチルエタノールアミン(901035A)、Sepharose(商標)6FFに固定化したN,N−ジメチルベンジルアミン(901035B)及び対照マトリックスQ Sepharose(商標)FFに、25mM Bis−Tris、100mM NaCl(〜12mS/cm)、pH6.5で適用した。溶出は、25mM Bis−Tris、0.5M NaCl、pH6.5で実施した。
【0086】
実施例1のクロマトグラムを図2に示す。図から、2つのプロトタイプ、N−ベンジル−N−メチルエタノールアミンSepharose(商標)6FF(901035A)及びN,N−ジメチルベンジルアミンSepharose(商標)6FF(901035B)は、Q Sepharose(商標)FFに同等であることが判る。分析用に選択した通過液(FT)画分は矢印で示す。下表2及び3に示すHCP及びプロテインAの除去に関する結果は、プロトタイプが、この点でQ Sepharose(商標)FFより優れていることを示している。
【0087】
【表7】
実施例2
プロトタイプリガンド、チオミカミン及び2−アミノベンズイミダゾールで精製したMAb−1含有試料
この実施例では、20mgのMAb1を含む試料を、プロトタイプ及び対照分離マトリックスに注入した。緩衝液は、平衡化及び注入の場合、25mM Bis−Tris、35mM NaCl(〜5mS/cm)、pH6.5とした。溶出緩衝液は、0.5M 酢酸ナトリウム、pH4.0とした。a)チオミカミン、65μモル/mL(1282004)、b)チオミカミン128μモル/mL(1282002)、c)Q Sepharose(商標)FF、d)2−アミノベンズイミダゾール(ABI)、65μモル/mL(1282045)及びe)2−アミノベンズイミダゾール(ABI)、146μモル/mL(1282032)である。HCP及びプロテインA分析の結果を下表4及び5に示す。
【0088】
【表8】
実施例3
プロトタイプリガンド、チオミカミン及び2−アミノベンズイミダゾールで精製したMAb−2含有試料
20mgのMAb2を含む試料をプロトタイプ及び対照に適用した。緩衝液は、25mM Bis−Tris、100mM NaCl(〜12mS/cm)、pH6.0とした。溶出は、0.5M酢酸ナトリウム、pH4.0で実施した。得られたクロマトグラムを図3に示す。図3a)は、チオミカミン65μモル/mL(1282004、緑)、チオミカミン128μモル/mL(1282002、青)及びQ Sepharose(商標)FF(黒)。図3b)は、2−アミノベンズイミダゾール65μモル/mL(1282045、青)、2−アミノベンズイミダゾール146μモル/mL(1282032、緑)及びQ Sepharose(商標)FF(黒)である。分析SECを使用して、下表6及び7に示すようなHCP及びプロテインA分析のための画分を選択した。
【0089】
【表9】
実施例4
プロトタイプリガンド、N−ベンジル−N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、チオミカミン及び2−アミノベンズイミダゾールでの、MAb1及び組換えプロテインA(rPrA)を含む試料からのMAb1の精製
この実施例では、Ab1−rプロテインAを含む試料についてのプロトタイプでのクロマトグラフィーを実施した。A−緩衝液は、25mM Bis−Tris、50mM NaCl、pH6.0とした。導電率は約7mS/cmであった。B−緩衝液は、0.5M酢酸ナトリウム、pH4.0とした。流速は0.5mL/分(150cm/時間)であった。試料は、mAb1が4mg/mL、rプロテインAが1%(w/w)の濃度の、10mgのmAb1、0.10mgのrPrAとした。結果を図4に示す。
【0090】
最後に、mAb1、1%rPrAを含む試料、図4のクロマトグラフィーランからのプールした通過液及び溶出画分に関する分析SECを実施した。結果を図5に示す。図5aで、斜線ピークはMAb1−プロテインAの複合体である。青色の曲線は通過液(FT)画分であり、赤線は溶出液である。
【0091】
実施例5
Q Phenyl Sepharose 6 Fast Flow配置での抗体精製
非結合条件下で、約50mgのmAbを含む試料をプロトタイプQ Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowに注入した。5、10及び15カラム容積(CV)時に通過液画分(FT)を採取した。溶出ピークからの画分を分析した。
【0092】
Q Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowは、Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flow(フェニル基45μモル/mLゲル)に標準的手順(下記参照)に従ってQ−基(−N(CH3)3)を結合することによって作製した。Q Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowのイオン交換容量は、108μモル/mlゲルであった。pH7.0又は8.0で、50mgのmAb(MabSelectで精製)を含む試料をカラムに注入し、選択した通過液画分を宿主細胞タンパク質(HCP)及びプロテインA含有量に関して分析することによって、Q Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowの性能を評価した。
【0093】
材料/調査単位
カラム及びPhenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowは、スウェーデン、Uppsala、GE Healthcareから入手した。
HR 5/5(商標) カタログ番号18−0338−01 CV=1mL。
【0094】
装置
クロマトグラフィー装置 AKTAExplorer(商標)10
分光計 Spectra MAX plus。
【0095】
化学薬品
使用する化学薬品は、全て分析級とした。水はMiLLiQで濾過した。
【0096】
Q Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowの調製
架橋アガロースゲル(Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flow(高置換)、スウェーデン、Uppsala、GE Healthcare)から出発する、本発明による分離マトリックスを調製するための1つの方法を次に例示する。
【0097】
Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flow(高置換)へのQ基の導入
Q−基(−N(CH3)3)は、次のように、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(G−MAC)との反応によってPhenyl Sepharose(商標)6 Fast Flow(高置換)に導入した。即ち、15gの吸引乾燥Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flow(高置換)を、5mlの水、5mlの50%NaOH水溶液、0.02gのNaBH4及び40mlのG−MACと混合した。混合物を30℃で16時間撹拌した。混合物を濾過した後、ゲルを、100mlの蒸留水、100mlのエタノール及び100mlの蒸留水で順次洗浄した。
【0098】
滴定によれば、置換度はアミン0.11ミリモル/mlゲルであった。
【0099】
試料
使用するモノクロナール抗体は、CHO培養で発現させ、続いて、当面の実験に先立って従来からのプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製した。
【0100】
mAbの濃度測定
mAb試料を緩衝液で10倍に希釈した。試料溶液の2つの控えをA280で測定した。平均値を使用し、Lambert−Beerの法則に従って濃度を計算した。即ち、
C=A/(l×ε)
C=IgGの濃度
A=280nmでの吸光度
l=光路長
ε=mAbに対するモル吸光係数、mg−1ml=1.46。
【0101】
Q Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowでのクロマトグラフィー
宿主細胞タンパク質及びプロテインAからのmAbの分離を、非結合条件下で試験した。カラムに適用する試料はMabSelectで精製したmAbとした。流速は、0.5ml/分(150cm/時間)とした。ラン中は終始、280nmでの吸光度を検出した。2つの異なる緩衝液(下記参照)を試験した。各ランの前にA−緩衝液への緩衝液交換を実施した。試料体積に応じてHiPrep脱塩及びHiTrap脱塩カラムを使用した。
緩衝液 A−緩衝液:25mM Tris/HCl、pH8.0
B−緩衝液:25mM Tris/HCl、0.5M NaCl、pH8.0
A−緩衝液:25mMリン酸塩緩衝液、pH7.0
B−緩衝液:25mMリン酸緩衝液、0.5M NaCl、pH7.0
方法:出発材料として、MabSelectからのpHを調整した溶出液を使用した。
【0102】
【表10】
試料注入、洗浄及び溶出の際に1mlの画分を集めた。
【0103】
各ラン後に、1M NaOHを用いてCIP(CIP洗浄)を実施した。滞留時間は約25分とした。
【0104】
プロテインA分析
選択した画分を、800μlのSPA試料希釈液+200μlの試料の比率でSPA試料希釈剤と混合した。混合した後、画分を加熱ブロック上、99℃で10分間加熱し、次いで再混合した。次いで、試料を組換えプロテインAについて分析した。
【0105】
宿主細胞(HCP)分析
試料(最小で600μl)をHCP含有量について分析した。検出下限は10ng/mLである。
【0106】
結果
非結合条件下で、約50mgのmAbを、Q Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowを充填したHR5/5カラムに2つの異なるpH(pH7.0及び8.0)で注入した。通過液画分を図1に従って5、10、15カラム容積(CV)時に採取した。表8及び9は、通過液画分のプロテインA及びHCP分析の結果を示す。画分中にプロテインAの残余は検出できなかった。更に、8.0の試料pHを使用した場合に、FT1及びFT2中に宿主細胞タンパク質は検出できなかった。7.0の試料pHを使用した場合には、少量の宿主細胞タンパク質が観察されたが、HCPは、試料中のHCP含有量に比べて約50分の1に低下した。又、図6は、勾配溶出でのクロマトグラムで極めて小さなピークのみが観察されるので(図6)、モノクロナール抗体分子がQ Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowに吸着されないことを示している。
【0107】
【表11】
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の方法で有用なマルチモーダル陰イオン交換樹脂リガンドの選択例、即ち、N−ベンジル−N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、2−アミノベンズイミダゾール及びチオミカミンを示す図である。
【図2】実施例1に記載のSepharose(商標)6 FFに固定化されたN−ベンジル−N−メチルエタノールアミン、Sepharose(商標)6 FFに固定化されたN,N−ジメチルベンジルアミン及び対照としての強陰イオン交換体Q Sepharose(商標)FFを含むマルチモーダル分離マトリックスでのモノクロナール抗体の分離クロマトグラムを示す図である。
【図3a】実施例3に記載のSepharose(商標)6 FFに異なる密度で固定されたチオミカミン及び2−アミノベンズイミダゾールを含む分離マトリックスに注入されたモノクロナール抗体のクロマトグラムを示す図である。
【図3b】実施例3に記載のSepharose(商標)6 FFに異なる密度で固定されたチオミカミン及び2−アミノベンズイミダゾールを含む分離マトリックスに注入されたモノクロナール抗体のクロマトグラムを示す図である。
【図4a】mAb1−rプロテインAの混合物のプロトタイプで実施されたクロマトグラフィーの結果を示す図である。
【図4b】mAb1−rプロテインAの混合物のプロトタイプで実施されたクロマトグラフィーの結果を示す図である。
【図4c】mAb1−rプロテインAの混合物のプロトタイプで実施されたクロマトグラフィーの結果を示す図である。
【図4d】mAb1−rプロテインAの混合物のプロトタイプで実施されたクロマトグラフィーの結果を示す図である。
【図4e】mAb1−rプロテインAの混合物のプロトタイプで実施されたクロマトグラフィーの結果を示す図である。
【図4f】mAb1−rプロテインAの混合物のプロトタイプで実施されたクロマトグラフィーの結果を示す図である。
【図4g】mAb1−rプロテインAの混合物のプロトタイプで実施されたクロマトグラフィーの結果を示す図である。
【図5a】MAb1、1%rPrAを含む試料、図4のクロマトグラフィーランからのプールした通過液及び溶出画分に関する分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示す図である。
【図5b】MAb1、1%rPrAを含む試料、図4のクロマトグラフィーランからのプールした通過液及び溶出画分に関する分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示す図である。
【図5c】MAb1、1%rPrAを含む試料、図4のクロマトグラフィーランからのプールした通過液及び溶出画分に関する分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示す図である。
【図5d】MAb1、1%rPrAを含む試料、図4のクロマトグラフィーランからのプールした通過液及び溶出画分に関する分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示す図である。
【図5e】MAb1、1%rPrAを含む試料、図4のクロマトグラフィーランからのプールした通過液及び溶出画分に関する分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示す図である。
【図5f】MAb1、1%rPrAを含む試料、図4のクロマトグラフィーランからのプールした通過液及び溶出画分に関する分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示す図である。
【図5g】MAb1、1%rPrAを含む試料、図4のクロマトグラフィーランからのプールした通過液及び溶出画分に関する分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示す図である。
【図5h】MAb1、1%rPrAを含む試料、図4のクロマトグラフィーランからのプールした通過液及び溶出画分に関する分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示す図である。
【図6】実施例5に記載のマルチモーダルマトリックスQ Phenyl Sepharose(商標)Fast Flowを使用したモノクロナール抗体分子の分離を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体の精製方法に関する。本方法は、例えば、粗供給液に対して又は残留夾雑物及び親和性樹脂からのリーク物質を除去するためのアフィニティークロマトグラフィーに続く段階として使用される。本発明は、抗体を精製するためのキットも包含する。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、細菌、寄生虫、真菌、ウイルスへの感染から及び腫瘍細胞の増殖から身体を集合的に防護する多くの相互依存性細胞型から構成される。免疫系の監視者は、その宿主の血流を絶え間なく動きまわるマクロファージである。感染又は免疫感作で攻撃されると、マクロファージは、抗原として知られる外来分子で刻印された侵入物をとり込むことで応答する。この事象は、ヘルパーT細胞によって仲介され、B−細胞の賦活を引き起こす複雑な連鎖応答を示す。これらのB−細胞は、今度は、外来侵入物に結合する抗体と呼ばれるタンパク質を産生する。抗体と抗原の間の結合事象は、食作用又は補体系の活性化による破壊に向けて外来侵入物に刻印する。IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMなど、免疫グロブリンとしても知られるいつかの異なる部類の抗体が存在する。それらは、その生理学的役割のみならずそれらの構造も異にする。構造の観点から、IgG抗体は、多分それらが成熟免疫応答で演じる顕著な役割ゆえに、広範に研究されている。ポリクロナール抗体は、適切な抗原を用いる動物の免疫感作による標準的方法に従って産生される。応答して、動物は、ポリクロナールである抗体を産生する。しかし、多くの目的に対して、モノクロナール抗体として知られる特定抗体の単一クローンを有することが望まれる。モノクロナール抗体(MAb)は、単一の抗体のみを産生する正常B−細胞と異常ミエローマ腫瘍細胞の間の融合から構成されるハイブリッド又は融合細胞によって産生される。得られるハイブリッドは、ハイブリドーマとして知られ、今日、抗体を産生するための標準方法で使用されている。
【0003】
免疫グロブリンが所持する生物学的活性は、今日、ヒトの及び獣医学上の診断、ヘルスケア−及び治療の分野における様々な応用の領域で利用されている。実際、この数年、モノクロナール抗体及び組換え抗体構築物は、臨床試験で現在調べられ、治療薬及び診断薬としてFDAの承認を受けている最も大きな部類のタンパク質になっている。簡単で費用効果の高い方式で高純度の抗体を得るためには、発現系に対する補足及び産生戦略、効率的な精製プロトコルが求められる。
【0004】
免疫グロブリンの在来的単離方法は、タンパク質のその他の群を溶液中に残しながらの、免疫グロブリンを含むタンパク質画分の選択的な可逆的沈殿を基本にしている。典型的な沈殿剤は、エタノール、ポリエチレングリコール、リオトロピック塩(硫酸アンモニウム及びリン酸カリウムなど)及びカプリル酸である。典型的には、これらの沈殿方法は、極めて不純な産物を与え、同時に、時間がかかり、骨が折れる。更に、原料に沈殿剤を添加すると、上清を他の目的に使用することが困難になり、処理の問題が新たに生じる。このことは、免疫グロブリンの大規模精製の場合に特に実際的な重要性をもつ。
【0005】
免疫グロブリンの代替的単離方法はクロマトグラフィーであり、それは一群の密接に関連した分離方法を包含する。大部分の他の物理的及び化学的分離方法からクロマトグラフィーを区別する特徴は、1つの相が固定であり、他の相が移動可能である2つの相互に混和できない相を接触させることである。試料混合物は、移動相中に導入され、混合物が移動相によって装置を通過して運搬される間に、固定相及び移動相との一連の相互作用を受ける。相互作用は、試料中の成分の物理的又は化学的特性の差異を利用する。これらの差異は、固定相を含むカラムを通過する移動相の影響の下で、個々の成分の移動速度を決定する。分離された成分は、固定相との相互作用が増大する順序で出てくる。最も阻止されなかった成分が最初に溶出し、最も強力に保持された物質が最後に溶出する。分離は、試料成分がカラムから溶出する際に、隣接する溶質ゾーンとの重なりを防止するように、1つの成分が十分に阻止される場合に達成される。それぞれ特定の分離目的に関して最適な固定相を設計するための努力が絶えずなされている。このような固定相は、一般に、官能基即ち結合基を含むリガンドが結び付いた担体又はベースマトリックスを含む。イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー及びアフィニティークロマトグラフィーなど、それが利用する相互作用の原理に基づいた各種のクロマトグラフィーが一般に参照される。
【0006】
イオン交換クロマトグラフィーは、免疫グロブリンを単離するためのプロトコルで使用されることが多い。陰イオン交換クロマトグラフィーでは、免疫グロブリンの負に荷電したアミノ酸側鎖が、クロマトグラフィーマトリックスの正に荷電したリガンドと相互作用する。他方、陽イオン交換クロマトグラフィーでは、免疫グロブリンの正に荷電したアミノ酸側鎖が、クロマトグラフィーマトリックスの負に荷電したリガンドと相互作用する。
【0007】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)は、免疫グロブリンを単離するためのプロトコルで記述され使用されるもう1つの方法である。高純度の免疫グロブリン製品が目的である場合には、HICを1以上の更なる段階と組み合わせることが一般に推奨される。HICでは、免疫グロブリンをHICマトリックスに効率的に結合させるために、移動相にリオトロピック塩を添加する必要がある。結合した免疫グロブリンは、続いて、リオトロピック塩の濃度を低下させることによってマトリックスから放出される。従って、この方法の欠点は、原料にリオトロピック塩を添加する必要があることであり、このことは、大規模使用者対して諸問題と結果として費用の増大を引き起こす可能性がある。例えば、ホエー、血漿及び卵黄のような原料の場合、原料にリオトロピック塩を添加することは、その塩が、免疫グロブリンの激減した原料の商業的に可能ななんらかの使用を妨げる可能性があるので、多くの場合、大規模な応用では採用されない。大規模応用における更なる問題は、数千リットルの廃液の処分である。
【0008】
アフィニティークロマトグラフィーは、鍵−鍵穴認識の原理における目標生体分子と生体分子特異的リガンドの間の特異的相互作用に基づく。従って、目標とリガンドは、抗原/抗体、酵素/受容体のような親和性対を構成する。抗体を単離及び精製するための双方とも普及している方法であるプロテインA及びプロテインGアフィニティークロマトグラフィーのように、タンパク質系親和性リガンドが広く知られている。プロテインAクロマトグラフィーが、特にモノクロナール抗体に対して顕著な特異性を提供し、結果として高い純度が得られることが広く知られている。プロテインAに基づく方法は、イオン交換、疎水性相互作用、ヒドロキシアパタイト及び/又はゲル濾過段階と組み合わせて使用され、多くの生物薬剤会社のための優れた抗体精製法となっており、例えば、国際公開第8400773号及び米国特許第5151350号を参照されたい。しかし、タンパク質のペプチド結合により、プロテインAマトリックスは、ある程度のアルカリ感受性を示す。更に、プロテインAを使用して細胞培養培地から抗体を精製する場合には、細胞に由来するプロテアーゼが、プロテインA又はそのペプチドフラグメントのリークを引き起こす可能性がある。
【0009】
アフィニティークロマトグラフィーマトリックスからのリガンドリークを低減するための試みが、国際公開第03/041859号(Boehringer Ingelheim Pharma KG)に発表されており、そこでは、リガンドリークを低減するために、1種以上の界面活性剤で例えばプロテインAを前処理することが提案されている。例えば5〜15ベッド容積の界面活性剤で親和性マトリックスを処理すればよい。接触時間は、処理の有効性にとって極めて重要である。リークを低減するためには、例えば、室温で16時間以上の接触時間が必要である。
【0010】
アフィニティークロマトグラフィーマトリックスからのリガンドリークの問題に対する代替的接近手段が、米国特許第4983722号(Miles Inc.)で提供されており、そこでは、抗体及びプロテインAを含む液体から、それを陰イオン交換材料にさらすことによってプロテインAが選択的に単離される。双方の成分は陰イオン交換材料に吸着され、次いで、抗体及びプロテインAは、イオン強度が増加する条件下で順次溶出される。例示的な陰イオン交換体が、ジエチルアミノエチル(DEAE)Trisacryl M又はDEAE Sepharose(商標)である。
【0011】
国際公開第2004/076485号(Lonza Biologics Plc.)は、プロテインA及びイオン交換クロマトグラフィーによる抗体精製に関する。イオン交換段階は、プロテインAで精製された抗体を、プロテインAの結合及び通過液中の抗体の収集を可能にする条件下でイオン交換材料に注入することを含む。陰イオン交換体は、第4級アミン系陰イオン交換体、最も好ましくはSepharose(商標)Q(Amersham Biosciences、現GE Healthcare)である。
【0012】
米国特許第5429746号(SmithKline Beecham Corp.)は、抗体を、プロテインAクロマトグラフィー担体にまず吸着し、そして溶出し、次いで、陽イオン交換クロマトグラフィー担体に吸着し、そしてそこから選択的に溶出し、最後にHIC担体に吸着、そして溶出する方法に関する。アフィニティー及び/又は陽イオン交換クロマトグラフィーに続いて、HICカラムかけられる混合物は、免疫グロブリン凝集体、誤って折り畳まれた種、宿主細胞タンパク質及びアフィニティークロマトグラフィー段階からの残留材料を含む可能性がある。
【0013】
米国特許第6498236号(Upfront Chromatography)は、タンパク質系親和性リガンドと目標免疫グロブリンの間の小さな分子量差によって引き起こされる特定の問題を対象としている。例えば、ハイブリドーマ細胞培養上清、動物の血漿又は血清のような溶液から免疫グロブリンを単離又は精製するための1つの方法が開示されており、この方法は、プロテインA、プロテインG、合成ペプチド及びその他の比較的高分子量のリガンドの使用に対する代替として提案されている。開示の方法で使用される固相マトリックスは、式M−SP1−X−A−SP2−ACIDで定義され、ここで、Mはマトリックス骨格を表し、SP1はスペーサーを表し、XはO、S又はNHを表し、Aは単環又は二環式の置換されていてもよい芳香族又はヘテロ芳香族部分を表し、SP2は任意選択のスペーサーを表し、ACIDは酸基を表す。特定の置換基は、マトリックスが免疫グロブリンに効率的に結合するか否かに関して決定的に重要であると述べられている。
【0014】
米国特許第5945520号(Burtonら)は、結合のpHで疎水的特性を、脱離のpHで親水的及び/又は静電的特性を示す混成モードクロマトグラフィー樹脂を開示している。この樹脂は、小さな及び大きなイオン強度の双方で水性溶液から目標化合物に結合するように特別に設計されている。従って、吸着段階は、HICを利用し、一方、脱離は電荷の反発に基づく。
【0015】
米国特許第6702943号(Johanssonら)は、液体から目標物質を、陰イオン交換基及び疎水性構造を含む複数のリガンドを所持するマトリックスへのその吸着によって除去する方法を開示している。より具体的には、このリガンドは、正に荷電した陰イオン交換基の付近に芳香族環を持っている。電子供与体−電子受容体相互作用の能力があるその他の基を含めると、物質と吸着剤の間の相互作用力を高めることができると述べられている。所望の物質は、細胞、細胞の一部及びペプチドを含む物質であると述べられている。マトリックスの漏出点容量は、ウシ血清アルブミン及びIgGのような対照タンパク質に対して定義される。開示されているリガンドは、0.25M NaClなど、高い塩濃度で目標物質を吸着するそれらの能力ゆえに、「高塩リガンド」と表示される。
【0016】
更に、国際公開第01/38228号(Belewら)は、液体から負に荷電した物質を、混成モード陰イオン交換リガンドを含むマトリックスにそれらを結合することによって除去するもう1つの方法を開示している。各リガンドは、正に荷電した窒素及び荷電窒素から1〜7原子離れたチオエーテル結合を含んでいる。上記と同様、細胞、細胞の一部及びペプチド構造を含む物質のような所望する物質は、0.25M NaClの領域の塩濃度で吸着される。
【0017】
セラミックヒドロキシアパタイトが、免疫グロブリンの仕上げに有用であるとして提案されている。より具体的には、CHTセラミックヒドロキシアパタイト(Bio−Rad)上の未分画培地のIgG1−プロテインA複合体からIgG1を分割できることが報告されている(Chromatography,tech note 2849;S.G.Franklin,Bio−Rad Laboratories,Inc.,2000 Alfred Nobel Drive,Hercules,CA94547 USA)。より具体的には、ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)は、独特の分離特性を有することが判っているリン酸カルシウムの形態である。しかし、ヒドロキシアパタイト系マトリックスは、ある種の欠点を含むことも知られている。例えば、Ca−リークのため、それらのマトリックスは、酸性pH値で不安定であり、EDTAのようなキレート化剤に敏感である。更に、例えば、ヒドロキシアパタイトを充填すること及び大型カラム中で性能を維持することが困難なので、ヒドロキシアパタイト系マトリックスを用いる確固として再現性のある精製方法を開発し、規模を拡大することは困難であることが判っている。結局、金属イオン汚染及びカルシウムイオンの交換によって引き起こされる樹脂特性の変化の危険が存在し、この変化は、規制当局の重大な関心事である。
【0018】
Johanssonらは、高導電率移動相から負に荷電したタンパク質を捕捉するためのマルチモーダルリガンドプロトタイプのスクリーニングについて記載している(Journal of Chromatography A,1016(2003)21〜33:「Preparation and characterization of prototypes for multi−modal separation media aimed for capture of negatively charged biomolecules at high salt conditions」)。弱イオン交換リガンド(第1級及び第2級アミン類)系の非芳香族マルチモーダル陰イオン交換リガンドは、高塩条件での吸着によってタンパク質を捕捉するのに最適であることが見出された。
【特許文献1】国際公開第8400773号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5151350号明細書
【特許文献3】国際公開第03/041859号パンフレット
【特許文献4】米国特許第4983722号明細書
【特許文献5】国際公開第2004/076485号パンフレット
【特許文献6】米国特許第5429746号明細書
【特許文献7】米国特許第6498236号明細書
【特許文献8】米国特許第5945520号明細書
【特許文献9】米国特許第6702943号明細書
【特許文献10】国際公開第01/38228号パンフレット
【特許文献11】国際公開第02/053252号パンフレット
【特許文献12】米国特許第6428707号明細書
【特許文献13】米国特許第6602990号明細書
【特許文献14】スウェーデン特許第0402322−2号明細書
【非特許文献1】Chromatography,tech note 2849;S.G.Franklin,Bio−Rad Laboratories,Inc.,2000 Alfred Nobel Drive,Hercules,CA94547 USA
【非特許文献2】Journal of Chromatography A,1016(2003)21〜33:「Preparation and characterization of prototypes for multi−modal separation media aimed for capture of negatively charged biomolecules at high salt conditions」
【非特許文献3】Karger et al.,An Introduction into Separation Science,John Wiley&Sons(1973)page42
【非特許文献4】Hermanson et al.,Greg T.Hermanson、A.Krishma Mallia and Paul K.Smith,「Immobilized Affinity Ligand Techniques」Academic Press,INC、1992
【非特許文献5】S Hjerten:Biochim Biophys Acta 79(2)、393〜398(1964)
【非特許文献6】R Arshady:Chimica e L’Industria 70(9),70〜75(1988)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の一態様は、必要な時間及び処理段階が従来技術の方法よりも少ない、液体中の他の成分から抗体を分離する方法を提供する。これは、抗体を含む液体をマルチモーダル分離マトリックスと接触させ、非結合方式で実質的に純粋な抗体を回収する方法によって達成される。例えば、マトリックスを含むクロマトグラフィーカラムにその液体を適用すると、抗体が通過液から容易に回収される。
【0020】
本発明の他の態様は、従来技術の方法に比べて新規な特異性が得られる、液体中のその他の成分から抗体を分離する方法を提供する。
【0021】
本発明の更なる態様は、粗供給液中に存在する宿主細胞タンパク質のような夾雑物の除去率が改善される、液体中のその他の成分から抗体を分離する方法を提供する。
【0022】
本発明の更なる態様及び利点は、以下の詳細な説明から明らかであろう。
【0023】
定義
用語「抗体」及び「免疫グロブリン」は、本明細書中で互換的に使用される。
【0024】
本明細書中で、用語「分離マトリックス」は、官能基を含む1つ以上のリガンドがカップリングしている担体からなる材料を表すのに使用される。
【0025】
用語「マルチモーダル」分離マトリックスは、結合されるべき化合物と相互作用する2以上の異なるが協力的な部位を提供する能力のあるマトリックスを指す。例えば、これらの部位の1つは、リガンドと問題の物質との間に引力型の電荷−電荷相互作用を付与できる。他の部位は、電子受容体−供与体相互作用、並びに/或いは疎水性及び/又は親水性相互作用を付与できる。電子供与体−受容体相互作用には、水素結合、π−π、陽イオン−π、電荷移動、双極子−双極子、誘導双極子などが含まれる。「マルチモーダル」分離マトリックスは、「混成モード」分離マトリックスとしても知られている。
【0026】
用語「表面」は、本明細書中で、全ての外部表面を意味し、多孔性担体の場合には外側表面及び細孔内表面を含む。
【0027】
句「電子供与体−受容体相互作用」は、遊離電子対を有する電気陰性原子が、供与体として働き、供与体の電子対に対する受容体として働く電子不足原子に結合することを意味する(例えば、Karger et al.,An Introduction into Separation Science,John Wiley&Sons(1973)page42参照)。
【0028】
用語「陰イオン交換基」は、本明細書中で、正に荷電した又は荷電可能である基を意味する。
【0029】
用語「溶出液」は、この分野でのその従来からの意味、即ち、分離マトリックスから1種以上の化合物を解き放すのに適切なpH及び/又はイオン強度の緩衝液の意味で使用される。
【0030】
用語「捕捉段階」は、液体クロマトグラフィーの文脈では、分離手順の初期段階を指す。最も一般的には、捕捉段階は、清澄化、濃縮、安定化及び可溶性不純物からのかなりの精製を含む。捕捉段階の後に、宿主細胞タンパク質、DNA、ウイルス、エンドトキシン、栄養素、細胞培養培地の成分(消泡剤及び抗生物質など)及び製品関連不純物(凝集体、誤って折り畳まれた種及び凝集体など)のような不純物の残存量を更に低減する中間精製が続いてもよい。
【0031】
用語「仕上げ段階」は、液体クロマトグラフィーの文脈で、痕跡不純物を除去し有効で安全な製品を残す最終精製段階を指す。仕上げ段階中に除去される不純物は、目標分子の配座異性体又は考え得るリークであることが多い。
【0032】
用語「Fc結合タンパク質」は、抗体の結晶可能部分(Fc)に結合できる能力のあるタンパク質を意味し、例えばプロテインA及びプロテインG又は結合特性を維持しているその任意のフラグメント又は融合タンパク質が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0033】
最初の態様において、本発明は、液体試料を含む移動相をマルチモーダル分離マトリックスと接触させ、抗体を移動相中に遊離させた状態で、1種以上の目標化合物を吸着する、液体試料中の1種以上のその他の化合物から抗体を分離する方法に関するものであり、マルチモーダル分離マトリックスは、目標化合物の負に荷電した部位と相互作用する能力を有する第1の基及び目標化合物と電荷−電荷相互作用以外の1種以上の相互作用を行う能力を有する第2の基を含む。本発明は、第1及び第2の基に加え、第3の又は更なる基を追加する方法も包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
有利な実施形態では、本発明の方法は、液体クロマトグラフィーの原理を使用して、即ち、マルチモーダル分離マトリックスを含むクロマトグラフィーカラムに移動相を通過させることによって実施される。担体は、多孔性又は非多孔性粒子(本質的に球状の粒子など)、モノリス、フィルター、膜、表面、毛細管又は任意のその他の一般に使用されるフォーマットの形態でよい。代替的実施形態では、本発明の方法は、吸着流動床クロマトグラフィーの原理を使用して、即ち、高密度フィラーを含む粒子(本質的に球状の粒子など)の形態の分離マトリックスからなる吸着流動床に移動相を添加することによって実施される。他の代替的実施形態では、本発明の方法は、液体試料を入れた容器に分離マトリックスを添加するバッチ方式の処理を使用して実施される。
【0035】
従って、本発明による抗体の精製方法では、1種以上の所望でない化合物は分子マトリックスに吸着され、一方、所望の抗体は吸着されないで移動相中に残留する。本発明の文脈において、用語「目標」化合物は、分離マトリックスに吸着される化合物を指す。明らかに、吸着される化合物の性質及び本体は、液体試料の起源によって決まる。目標化合物の例は、細胞及び細胞破片、タンパク質及びペプチド、核酸(DNA及びRNAなど)、エンドトキシン、並びにウイルスである。
【0036】
本発明の一実施形態では、マルチモーダル分離マトリックスをクロマトグラフィーカラム中に用意し、移動相を重力及び/又はポンプ輸送によってカラムを通過させ、抗体をカラムの通過液中に回収する。本発明方法の利点は、カラムから抗体を溶出する必要が少しもないことである。特定の溶出段階を回避することは処理の観点から有利である。なぜなら、段階が少ないと、より迅速な精製プロトコルに帰着し、その結果処理コストが低下するからである。更に、抗体は、それらの折り畳みパターンを損なう又はそれらのペプチド結合を攻撃することによってそれらを劣化させる可能性のある特定の条件に敏感である。陰イオン交換体に対する溶出条件は、一般に、極端ななんらかの化学薬品を必要としないが、塩及びpHのあらゆる変化が、敏感な抗体に影響を与える可能性があり、その影響は、pI、電荷分布などに応じて種から種で異なる。結果として、本発明方法のもう1つの利点は、その方法が、溶出液を添加すること及び抗体に対して溶出条件を適用することを回避することである。
【0037】
上述のように、本発明による方法において、それから抗体を分離することが望まれる目標化合物は、マルチモーダル分離マトリックスに吸着される。目標化合物の吸着に最も適切な条件を達成するために、液体試料を、適切な緩衝液又はその他の液体と組み合わせて移動相を用意する。本発明方法は、有利には、比較的低い塩濃度での吸着を一般には含む、陰イオン交換クロマトグラフィーにとって通常的な条件下でランされる。従って、本発明方法の一実施形態では、移動層の導電率は、0〜25の、例えば10〜15mS/cmの範囲である。一実施形態では、移動層のpHは、約5〜6である。当業者は、例えば、精製すべき抗体の例えば電荷及び電荷分布によって決まるpH又は導電率を調節することによって、抗体の通過液を得るための条件を容易に構成することができる。必要なら、任意のこのような通液の前又は中間に、1以上の洗浄段階を適用できる。例えばマトリックスの再利用のために、続いて吸着化合物を解き放すことが望まれる場合には、溶出を、増大する塩勾配を使用することによってより高い塩濃度で実施できる。そのうえ又は代わりに、pH値を移動し、例えば低下するpH勾配で、吸着された化合物を溶出することができる。
【0038】
上述のように、マルチモーダル分離マトリックスは、目標化合物の負に荷電した部位と相互作用できる第1の基及び目標化合物と電荷−電荷相互作用以外の1種以上の相互作用ができる第2の基を含む。この文脈で、分離マトリックス中の基の異なるモードの相互作用は、同一の目標化合物に向けられ、即ち、各目標化合物は、理想的には、2種以上の方式の相互作用によって吸着される。正に荷電した又は荷電可能な陰イオン交換基を含むマルチモーダルリガンドは、この分野で周知であり、例えば、米国特許第6702943号(Johanssonら)、国際公開第01/38228号(Belewら)及び国際公開第02/053252号(Belewら)を参照されたい。
【0039】
一実施形態では、第1の基、即ち、マルチモーダル分離マトリックスの陰イオン交換基は、強陰イオン交換体である。この文脈で、用語「強」陰イオン交換体は、広範なpH範囲内で荷電したままである基と解される。有利な実施形態では、強陰イオン基は、Q基としても知られる第4級アミンである。代替的実施形態では、マルチモーダル分離マトリックスの第1の基は、弱イオン交換体である。この文脈で、用語「弱」陰イオン交換体は、特定のpH値で荷電しているがpHを変えることで電荷を失う場合がある基を意味すると解される。特定の実施形態では、第1の基は、陰イオン交換基と更なる官能基の混合物、例えば、陰イオン交換体と水素結合基を含む。従って、この実施形態では、第1の基はTRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)でよい。
【0040】
一実施形態では、マルチモーダル分離マトリックスの第2の基は、芳香族基及び/又は水素結合基を含む。一実施形態では、芳香族基は、芳香族又はヘテロ芳香族構造を含む環系を含む。有利な実施形態では、第2の基はフェニル基を含む。代わりに、第2の基は、芳香族と非芳香族疎水性基(アルキル基など)の混合物を含んでいてもよい。従って、特定の実施形態では、第1の基は、アルキル基を含む。本発明で使用される分離マトリックスは、2以上の同種の官能基、例えば2種以上の異種の疎水性基又は2種以上の異種のマルチモーダル陰イオン交換体を含んでいてもよい。
【0041】
当業者には明らかであろうが、本発明方法で使用される分離マトリックスの官能基は、同一リガンド上に(この場合、各リガンドがマルチモーダルである)又は異なるリガンド上に(この場合、分離マトリックスの総合的な性質がマルチモーダルである)存在できる。
【0042】
従って、一実施形態では、分離マトリックスは、同一リガンドにカップリングした第1及び第2の基を含む。この実施形態では、上で考察した第1及び第2の基のいずれか一方(例えば、第4級アミン基及びフェニル基など)を使用できる。一実施形態では、リガンドを、その第1の基を介して(例えば第4級アミンに帰着するアミンを経由して)カップリングさせる。一実施形態では、第1及び第2の基は、1〜6個、例えば1〜3個、好ましくは1〜2個の炭素原子で互いに離隔されている。特定の実施形態では、リガンドは、N−ベンジル−N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、2−アミノベンズイミダゾール、チオミカミン及びQ Phenylからなる群から選択される。
【0043】
代替的実施形態では、分離マトリックスは、異なるリガンドにカップリングした第1及び第2の基を含む。この実施形態では、上で考察した第1及び第2の基のいずれか一方(例えば、第4級アミン基及びフェニル基など)を使用できる。この実施形態では、粒状分離マトリックスの場合、このような異なるリガンドは、実質的に等しい又は異なる量で異なる又は同一粒子に固定される。代わりに又は追加して、粒状分離マトリックスは、異なる粒子に固定された異種の第1基又は異種の第2基を含んでいてもよい。
【0044】
本発明方法で使用されるマルチモーダルクロマトグラフィーマトリックスは、当業者によって容易に調製される。簡単に言えば、マトリックスは、この分野でベースマトリックスとして知られる担体に、担体表面と相互作用基の間に適切な距離を用意するための従来からのスペーサーを経由して直接的又は間接的にカップリングしたリガンドから構成される。高い吸着能力を得るため、担体は多孔性であり、次いで、リガンドを外表面及び細孔内表面にカップリングする。リガンドを多孔性又は非多孔性表面に固定する方法は、当分野で周知であり、例えば、Hermanson et al.,Greg T.Hermanson、A.Krishma Mallia and Paul K.Smith,「Immobilized Affinity Ligand Techniques」Academic Press,INC、1992を参照されたい。一実施形態では、担体表面のリガンド密度は、従来からのイオン交換マトリックスに通常使用されるものに近い範囲である。リガンドは、使用される化学的性質に由来するリンカー要素を経由して又はエクステンダー、触手若しくは可撓性アームとして知られるより長い要素を経由して担体に容易に直接カップリングすることができ、例えば、ここで参照により本明細書に含められる米国特許第6428707号を参照されたい。簡単に言えば、エクステンダーは、ホモ−又はコポリマーのようなポリマーの形態でよい。疎水性高分子エクステンダーは、合成起源(即ち合成骨格を有する)又は生物学的起源(即ち天然に見出される骨格を有するバイオポリマー)に属するものでよい。典型的な合成ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリアクリル−及びポリメタクリルアミド、並びにポリビニルエーテルからなる群から選択される。典型的なバイオポリマーは、デンプン、セルロース、デキストラン及びアガロースのような多糖類からなるから選択される。
【0045】
担体は、有機又は無機材料から作られる。一実施形態では、担体は、架橋炭水化物材料のような天然ポリマー、例えば、アガロース、寒天、セルロース、デキストラン、キトサン、コンニャク、カラゲナン、ジェラン、アルギン酸塩などから調製される。天然ポリマー担体は、逆懸濁ゲル化のような標準的な方法に従って容易に調製され、適宜架橋される(S Hjerten:Biochim Biophys Acta 79(2)、393〜398(1964))。特に有利な実施形態では、担体は、1種の比較的堅いが多孔性のアガロースであり、それはその流動特性を高める方法で調製され、例えば、米国特許第6602990号(Berg)又はスウェーデン特許第0402322−2号(Bergら)を参照されたい。代替的実施形態では、担体は、架橋合成ポリマーのような合成のポリマー又はコポリマー、例えば、スチレン又はスチレン誘導体、ジビニルベンゼン、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルエステル、ビニルアミドなどから調製される。このような合成ポリマーは、標準的な方法に従って容易に調製され、適宜架橋され、例えば、「Styrene Based polymer supports developed by suspension polymerization」(R Arshady:Chimica e L’Industria70(9),70(9),70〜75(1988))を参照されたい。天然又は合成のポリマー担体は、スウェーデン、UppsalaのGE Healthcareのような商業的供給源から、例えば、多孔性粒子の形態で入手することもできる。更なる代替的実施形態では、担体は、シリカのような無機ポリマーから調製される。無機の多孔性及び非多孔性担体は、この分野で周知であり、標準的な方法に従って容易に調製される。
【0046】
本発明の分離マトリックスの適切な粒子径は、5〜500μm、例えば10〜100μm、例えば20〜80μmの直径範囲でよい。本質的に球状の粒子の場合、平均粒子径は5〜1000μm、例えば10〜500μmの範囲でよい。特定の実施形態で、平均粒子径は10〜200μmの範囲である。当業者は、使用を予定した処理に応じて適切な粒子径及び気孔率を容易に選択できる。例えば、大規模処理の場合には経済的理由のため、特に捕捉段階に対して大容積の処理を可能にするように、より多孔性であるが堅い担体を選ぶことができる。クロマトグラフィーでは、カラムの大きさ及び形状のような処理パラメーターが選択に影響を及ぼす。吸着流動床法において、マトリックスは、一般に、高密度フィラー、好ましくはステンレススチールのフィラーを含む。その他の処理の場合には、他の判定基準がマトリックスの性質に影響を及ぼす可能性がある。
【0047】
本発明で分離される抗体は、任意の一般に使用される供給源(表面で培養された細胞など)に、或いは発酵タンク又は容器中でのバッチ方式又は連続細胞培養に由来することができる。従って、一実施形態では、液体は細胞発酵から得られる上清である。吸着される化合物の例は、DNA、ウイルス、エンドトキシン、栄養素、細胞培養培地の成分(消泡剤及び抗生物質など)及び製品類縁不純物(誤って折り畳まれた種及び凝集体など)である。移動相とマルチモーダル分離マトリックスを接触させる段階、即ち、吸着段階は、機械的濾過、遠心及び/又はクロマトグラフィーの段階によって先行されてもよい。例えば、液体試料が発酵培養液であるなら、マルチモーダルクロマトグラフィーの前に、細胞破片、全細胞及びその他の比較的大きな成分を機械的に除去するのが有利である。
【0048】
一実施形態では、本発明は、精製プロトコル中の捕捉段階を構成する。特定の実施形態では、液体試料は、マルチモーダルクロマトグラフィーマトリックスとの接触の前に濾過される粗供給液である。従って、この実施形態は、液体試料が機械的手段によって精製されてはいるが、やはり捕捉段階を構成する。周知のように、抗体を産生する宿主細胞も、宿主細胞タンパク質(HCP)として一般的に知られている幾つかのその他のタンパク質を含む。このようなHCPには、プロテアーゼのような酵素及び宿主細胞によって産生されるその他のタンパク質が含まれる。本発明で、意外にも、宿主細胞タンパク質がマルチモーダル分離マトリックスに吸着され、一方、抗体を移動相中に遊離した状態にできることが見出された。従って、一実施形態では、液体試料中の実質的に全ての宿主細胞タンパク質がマルチモーダル分離マトリックスに吸着される。
【0049】
代替的実施形態では、本発明は、中間精製又は最終仕上げ段階など、純化プロトコルにおける第2、第3又は更には第4の段階として使用される。従って、一実施形態では、マルチモーダル分離マトリックスに適用される移動相は、分離マトリックスからの抗体含有溶出液を含む。一実施形態では、液体試料は、先行するアフィニティークロマトグラフィーマトリックスからの溶出液である。有利な実施形態では、それから溶出液が得られる分離マトリックスは、1種以上のFc結合タンパク質リガンド、例えばプロテインAを含む。用語、プロテインAリガンドには、この文脈で、天然及び組換えのプロテインA又はその機能性フラグメントが含まれる。この文脈で、用語「機能性」フラグメントは、タンパク質の最初の結合特性を保持したフラグメントを意味する。このようなアフィニティーマトリックスは、GE HealthcareからのMabSelect(商標)のように商業的に入手できる。従って、この実施形態では、吸着される化合物は、解き放されたプロテインA、プロテインA分子当たり幾つかの抗体(1つのプロテインA分子と複合した2〜4個の抗体など)を含むプロテインAと抗体の間で形成された複合体(プロテインA−MAb複合体など)及び解き放されたプロテインAの凝集体又は抗体からなる群から選択される1以上の化合物でよい。当業者には明らかであろうが、先行段階(アフィニティークロマトグラフィーなど)で使用される特定の条件に応じて、溶出液は、適切な添加又は修正による調節を必要とする場合がある。従って、溶出液を適切な緩衝液又は液体と組み合わせて移動相を用意する。このことは、プロテインAカラムからの溶出液を精製する予定なら、実際的理由により好ましい可能性はあるが、アフィニティークロマトグラフィーに続いて直ちに又は更に同一装置で本発明の方法を実施する必要は必ずしもない。
【0050】
特定の実施形態では、本発明方法は、上述のように、プロテインAクロマトグラフィーマトリックスのようなアフィニティークロマトグラフィーマトリックス上での捕捉段階及びマルチモーダル分離マトリックス上での仕上げ段階を含む多段階法である。アフィニティークロマトグラフィーマトリックスに適用される液体試料は、移動相を用意するために濾過、並びに/又は、pH及び/若しくは導電率の修正による調節のような前処理に適宜かけられている、細胞培養液体又は発酵培養液でよい。この方法では、捕捉段階によって、1種以上の宿主細胞タンパク質及び宿主細胞残留物(細胞破片及びタンパク質、DNA、エンドトキシンなど)が除去される。続く仕上げ段階では、捕捉段階からの残留物の形態の主たる化合物(プロテインA−抗体凝集物など)が吸着される。
【0051】
本発明の方法は、任意のモノクロナール又はポリクロナール抗体、例えば、哺乳動物宿主(例えばマウス、ネズミ、霊長類、ヒト)起源の抗体又はハイブリドーマ起源の抗体の回収に有用である。一実施形態では、回収される抗体は、ヒト又はヒト化抗体である。有利な実施形態では、抗体は単量体抗体である。抗体は、任意の部類、即ち、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMからなる群から選択されるものでよい。一実施形態では、精製すべき抗体は、プロテインAに結合する能力のある抗体又はFcを含有する抗体フラグメント又は融合タンパク質である。特定の実施形態では、回収される抗体は、IgG1のような免疫グロブリンG(IgG)である。一実施形態では、本発明方法は、6〜9の範囲、例えば7〜8の範囲のpIを有する抗体の精製に使用される。特定の実施形態では、精製抗体のpIは約9である。本発明の文脈で、用語「抗体」は、抗体フラグメント及び抗体又は抗体フラグメントを含む任意の融合タンパク質も含むと解されたい。従って、本発明は、上で言及した抗体及びこのような抗体を含む融合タンパク質のいずれか1つのフラグメントの精製も包含する。一実施形態では、抗体はモノクロナール抗体である。
【0052】
上から明らかなように、本発明方法において、所望でない化合物はマルチモーダル分離マトリックスに吸着され、吸着されていない抗体の実質的に純粋な画分が回収される。この文脈において、用語「実質的に純粋」は、実質的に全ての非抗体化合物が除去されていることを意味すると解される。最も有利には、夾雑物総量の約80%以上、例えば約95%以上即ち95〜100%の区間、例えば98%以上即ち98〜100%の区間、好ましくは約99%以上即ち99〜100%の区間が、マルチモーダル分離マトリックス上で除去される。しかし、当業者が認識するように、可能な純度は、分離マトリックスに適用される液体試料中の抗体濃度及び使用されるその他の条件に左右される。従って、一実施形態では、本発明方法により分離される抗体は、治療用グレードの抗体である。従って、本発明で精製された抗体は、研究において及びMAb薬剤のような抗体医薬の調製に有用である。精製抗体の代替的用途は、診断用途に向けたものである。更に、精製抗体は、ヒト用食品添加剤のような食品においても有用である。例えば、本発明で精製されたウシ抗体は食品において有用である。
【0053】
本発明方法の特定の実施形態では、マルチモーダル分離マトリックスは、使い捨てクロマトグラフィーカラム又はフィルターとして供給される。抗体のような治療用化合物を精製する方法で使い捨て製品を使用する利点は、使用後に分離マトリックスを廃棄することによって2つの異なる処理間での相互汚染の危険が排除されることである。多くのこのような方法では、無菌状態を維持することが要求される。従って、本発明方法の一実施形態では、マルチモーダル分離マトリックスは滅菌されており、滅菌マルチモーダル分離マトリックスは、滅菌包装されたクロマトグラフィーカラム又はフィルターとして供給される。一実施形態では、本発明方法は、使い捨て分離マルチモーダルマトリックスを、抗体を回収する予定の液体を入れた容器に添加するバッチ方式処理として実施される。有利な実施形態では、使い捨て分離マトリックスは、そのうえ、水性液体に接触すると容易に膨潤する乾燥アガロース粒子のような乾燥粒子から構成される。時間が適切なら、目標化合物はマトリックスに吸着すること可能になり、その後、抗体を含む液相が容器から回収される。次いで、使用したマトリックスを、吸収された化合物を放出しないで処理することができ、このことが、更に、エンドトキシン、プリオン及び/又はある種の宿主タンパク質のような化合物をもはや更に取り扱う必要がないので、安全性の観点から有利である場合がある。
【0054】
第2の態様において、本発明は、液体中の1種以上の成分から抗体を精製するためのキットに関するものであり、キットは、分割した区画中に、第1分離マトリックスを充填した第1クロマトグラフィーカラム、目標化合物の負に荷電した部位と相互作用できる第1の基及び目標化合物と電荷−電荷相互作用以外の1以上の相互作用ができる第2の基を含むマルチモーダル分離マトリックスを充填した第2クロマトグラフィーカラム、1種以上の緩衝液及び使用説明書を含む。有利な実施形態では、使用説明書は、マルチモーダル分離マトリックスの通過液からの抗体の精製を教示する。マルチモーダル分離マトリックス中のリガンド、担体及びその他の詳細は上述の通りでよい。使用説明書は、有利には、上で規定したような方法を説明する。キットの一実施形態では、第1の分離マトリックスは、アフィニティークロマトグラフィーマトリックスであり、好ましくは、プロテインA又はGのリガンドのようなタンパク質リガンドを含む。他の実施形態では、第1及び/又は第2クロマトグラフィーカラムは、滅菌及び/又は使い捨てカラムである。
【0055】
最後に、本発明は、又、抗体を精製するための使い捨てクロマトグラフィーカラムに関するものであり、カラムは、負に荷電した目標部位と相互作用できる第1の基及び電荷−電荷相互作用以外の1以上の相互作用ができる第2の基を含むマルチモーダル分離マトリックスを含む。マルチモーダル分離マトリックス中のリガンド、担体及びその他の詳細は上述の通りでよい。一実施形態では、分離マトリックスは、導電率が0〜50、例えば0〜25、例えば0〜15mS/cmの範囲である移動相から抗体以外のタンパク質を吸着する能力がある。この態様の代替的実施形態は、抗体を精製するための使い捨てフィルターであり、フィルターは、負に荷電した目標部位と相互作用できる第1の基及び電荷−電荷相互作用以外の1以上の相互作用ができる第2の基を含み、基はフィルター表面にカップリングしている。特定の実施形態では、本発明のフィルターは、導電率が0〜50、例えば0〜25、例えば0〜15mS/cmの範囲である移動相から抗体以外のタンパク質を吸着する能力がある。
【0056】
図面の詳細な説明
図1において、a)はプロトタイプマルチモーダルリガンドである2−アミノベンズイミダゾールを示し、b)はプロトタイプマルチモーダルリガンドであるチオミカミンを示し、c)はビーズ形態の担体に固定されたプロトタイプマルチモーダルリガンドであるN−ベンジル−N−メチルエタノールアミンを示し、d)はプロトタイプマルチモーダルリガンドであるN,N−ジメチルベンジルアミンを示す。実験の部で、プロトタイプリガンドを6%アガロースマトリックスであるSepharose(商標)6FFにカップリングする。
【0057】
図2は、Sepharose(商標)6FF上に固定したN−ベンジル−N−メチルエタノールアミンのリガンドを含む(901035A)、Sepharose(商標)6FF上に固定したN,N−ジメチルベンジルアミンのリガンドを含む(901035B)及びQ Sepharose(商標)FFを含むマルチモーダル分離マトリックスに、25mM Bis−Tris、100mM NaCl(〜12mS/cm)、pH6.5で適用した、50mgのMab1を含む試料のクロマトグラムを示す。溶出は、25mM Bis−Tris、0.5M NaCl、pH6.5で実施した。
【0058】
図3a及び図3bは、後記の実施例3に記載した通りのプロトタイプ及び対照に注入した、20mgのMAb2を含む試料のクロマトグラムを示す。緩衝液は、平衡化及び注入では25mM Bis−Tris、100mM NaCl(〜12mS/cm)pH6.0である。溶出緩衝液は、0.5M 酢酸ナトリウム、pH4.0である。図3a)チオミカミン(1282004、緑)、65μモル/mL;チオミカミン(1282002、青)、128μモル/mL;及びQ Sepharose(商標)FF(黒)。図3b)2−アミノベンズイミダゾール(1282045、青)、65μモル/mL;2−アミノベンズイミダゾール(1282032、緑)、146μモル/mL;及びQ Sepharose(商標)FF(黒)。
【0059】
図4a〜図4gは、mAb1−rプロテインAを用いてプロトタイプ上で実施されたクロマトグラフィーの結果を示す。A−緩衝液は、25mM Bis−Tris、50mM NaCl、pH6.0であった。導電率は、ほぼ7mS/cmであった。溶出には、B−緩衝液、0.5M酢酸ナトリウム、pH4.0を使用した。流速は、0.5mL/分(150cm/時間)であった。試料は、mAB1が4mg/mL、プロテインAが1%(w/w)の濃度で10mgのmAb1、0.10mgのrPrAであった。図4a)チオミカミン、65μモル/mL(1282004)、図4b)チオミカミン、128μモル/mL(1282002)、図4c)対照Q Sepharose(商標)FF、図4d)2−アミノベンズイミダゾール、65μモル/mL(1282045)、図4e)2−アミノベンズイミダゾール、146μモル/mL(1282032)、図4f)N−ベンジル−N−メチルエタノールアミン、146μモル/mL(901035A)及び図4g)N,N−ジメチルベンジルアミン、175μモル/mL(901035B)。
【0060】
図5a〜図5hは、MAb1、1%rPrAを含む試料及びプールした通過液及び図4のクロマトグラフィーランからの溶出液に関する分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示す。青の曲線は、通過液(FT)画分であり、赤は溶出液である。より具体的には、図5a)は、4mg/mLのmAb1試料、1%(w/w)に相当する0.04mg/mLのrPrAからなる試料を示し、図5b)は、図4a)のチオミカミン、65μモル/mL(1282004)からのFT及び溶出液を示し;図5c)は、図4bのチオカミン、128μモル/mL(1282002)からのFT及び溶出液を示し;図5d)は、図4c)のQ Sepharose(商標)FFからのFT及び溶出液を示し、図5e)は、図4d)の2−アミノベンズイミダゾール、65μモル/mL(1282045)からのFT及び溶出物を示し;図5f)は、図4e)の2−アミノベンズイミダゾール、146μモル/mL(1282032)からのFT及び溶出液を示し、図5g)は、図4f)のN−ベンジル−N−メチルエタノールアミン、146μモル/mL(901035A)からのFT及び溶出液を示し、図5h)は、図4g)のN,N−ジメチルベンジルアミン、175μモル/mL(901035B)からのFT及び溶出液を示す。
【0061】
図6は、後記の実施例5からの結果を示す。より具体的には、Q Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowに適用された、50mgのMabを含む試料から得られたクロマトグラムを示す。溶出は、25mM Tris、0.5M NaCl、pH8.0で実施した。勾配溶出でのクロマトグラムでは極めて小さなピークのみが観察されるので、図6から、モノクロナール抗体分子がQ Phenyl Sepharose(商標)Fast Flowに、いかに吸着されないかが明らかである。
【実施例】
【0062】
本発明の実施例は、例示目的のためにのみ提供され、添付の特許請求の範囲で規定される通りの本発明の範囲をいかなる点でも制限するものと解釈されるべきでない。本明細書中の以下で又は他の場所で提供される全ての参照文献を、ここで参照により本明細書に組み込む。
【0063】
処置
非結合条件下で、約50mgのmAb1を含む試料を、プロトタイプ901035A(N−ベンジル−N−メチルエタノールアミン)及び901035B(N,N−ジメチルベンジルアミン)上に約5及び12mS/cmで注入した。5、10及び15カラム体積(CV)時に通過液画分(FT)を集めた。溶出ピークからの画分をプールした。FT画分を、HCP及びプロテインAの含有量について分析した。
【0064】
マルチモーダルリガンド2−アミノベンズイミダゾール及びチオミカミンについて、高い及び低いリガンド密度を有するプロトタイプを作製した。pH6.5で、20mgのAb1を含有する試料を約5及び12mS/cmでカラムに注入した。プロトタイプの性能は、まず、分析SECで評価した。選択した画分をHCP及びプロテインAについて分析した。画分をSECでスクリーニングした後、選択した画分をHCP及びプロテインAの分析に供した。
【0065】
クロマトグラフィーの性能が、ある特定のmAbに対してのみでないことを確認するために、mAb2を含有する試料を使用し、pH6.0及び約12mS/cmでクロマトグラフィーのランを繰り返した。プロトタイプの性能は、まず、分析SECで評価した。画分をSECでスクリーニングした後、選択した画分をHCP及びプロテインAの分析に供した。
【0066】
プロトタイプのどちらが最高のrプロテインA除去を与えるかをより容易に識別するために、MAb1に1%(w/w)の組換えプロテインA(rPrA)を添加した。各プロトタイプに、10mgのMAb1、1%のrプロテインAに相当する試料容積をpH6.0及び約7mS/cmの導電率で注入した。通過液及び溶出画分を別個にプールし、SECで分析した。
【0067】
材料/調査単位
カラム及びゲルは、スウェーデン、Uppsala、GE Healthcareから入手した。
【0068】
【表1】
装置
クロマトグラフィー装置 AKTAExplore(商標)10
分光計 Spectra Max plus。
【0069】
化学薬品
使用する化学薬品は全て分析級とした。水はMilliQで濾過した。
【0070】
クロマトグラフィー媒体
対照マトリックスは、Q Sepharose(商標)Fast Flow(FF)(スウェーデン、Uppsala、GE Healthcare)とした。マルチモーダル分離マトリックスのプロトタイプは、下表1に記載した通りのリガンドを所持した。
【0071】
【表2】
プロトタイプN−ベンジル−N−メチルエタノールアミンSepharose(商標)Fast Flowの調製
A.マトリックスへのアリル基の導入
Sepharose(商標)6 Fast Flow(スウェーデン、Uppsala、GE Healthcare)をアリルグリシジルエーテルで次のように活性化した。即ち、100mlのSepharose(商標)6 Fast Flowを吸引乾燥し、0.3gのNaBH4、12gのNa2SO4及び35mlの50%NaOH水溶液と混合した。混合物を50℃で1時間撹拌した。100mlのアリルグリシジルエーテルを添加した後、懸濁液を激しく撹拌しながら更に16時間50℃に保持した。混合物を濾過した後、ゲルを500mlの蒸留水、500mlのエタノール、200mlの蒸留水、200mlの0.2M酢酸及び500mlの蒸留水で順次洗浄した。
【0072】
滴定によれば、置換度は、アリル0.22(ミリモル)/ゲル(mL)であった。
【0073】
B.ブロム化によるアリルSepharose(商標)6 Fast Flowの活性化
50mlのアリル活性化Sepharose(商標)6 Fast Flow(アリル基0.22ミリモル/ml排水ゲル)、1gの酢酸ナトリウム及び15mlの蒸留水からなる撹拌懸濁液に、臭素を黄色が持続するまで添加した。次いで、ギ酸ナトリウムを懸濁液が完全に脱色されるまで添加した。反応混合物を濾過し、ゲルを500mlの蒸留水で洗浄した。次いで、活性化ゲルを反応容器に直ちに移送し、N−ベンジル−N−メチルエタノールアミンと更に反応させた。
【0074】
C.活性化マトリックスへのBMEA(N−ベンジル−N−メチルエタノールアミン)の導入
アミン基の窒素原子を経由してマトリックスにアミン基を直接導入した。典型的な手順において、マトリックスへのカップリングは、アリル基の臭素化及び塩基性条件下での求核置換により実現された。25mlの臭素活性化ゲル(アリル基0.22ミリモル/ml排水ゲル)を、N−ベンジル−N−メチルエタノールアミン(16.0ml)の溶液を含む反応ガラス瓶に移した。5mlの水を添加し、反応溶液のpHを水酸化ナトリウム溶液で12.0に調整した。反応物を撹拌下に16時間50℃で保持した。反応混合物を濾過した後、ゲルを、10mlの蒸留水で3回、10mlの0.5HCl水で3回、最後に10mlの蒸留水で3回、順次洗浄した。BMEA Sepharose(商標)Fast Flowゲルが、アミン0.15ミリモル/mlゲルの置換度で得られた。
【0075】
高い又は低いリガンド密度を有する2−アミノベンズイミダゾール及びチオミカミンプロトタイプを標準的な手順に従って作製した(米国特許第6702943号(Johanssonら)、国際公開第01/38228号(Belewら)及び国際公開第02/053252号(Belewら)。
【0076】
試料
MAb1及びMAb2と表示され、それぞれ1.46及び1.50の吸光係数を有する2つの異なるヒト化IgG抗体、サブクラス1を使用した。双方の抗体とも、CHO培養で発現させ、続いて本発明の実験に先立って従来からのプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製した。
【0077】
緩衝液の交換は、当緩衝液で平衡化したHiPrep(商標)脱塩カラム(スウェーデン、Uppsala、GE Healthcare)で、Superloop(商標)(スウェーデン、Uppsala、GE Healthcare)を用いて適切な容積(5〜15mL)を注入して行った。流速を5mL/分とし、5mLの画分を集めた。溶出ピークを含む画分をプールし、式1により濃度を計算するために280nmでの吸光度を二重に測定した。
【0078】
A280=ε・C・l (式1)
式中、
A280は280nmでの吸光度であり、
ε(mL・mg−1・cm−1)は特定のタンパク質に対する吸光係数であり、
C(mg/mL)はタンパク質の濃度であり、
l(cm)は光路長である。
【0079】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、Superdex(商標)200 10/300カラム(スウェーデン、Uppsala、GE Healthcare)で、0.5mL/分の流速で実施した。緩衝液は、錠剤(Sigma、P−4417)から調製されたPBS(リン酸塩緩衝化生理食塩水)、即ち、10mMリン酸塩、0.137M NaCl、2.7mM KCl、pH7.4である。
【0080】
【表3】
mAbを用いるプロトタイプでのクロマトグラフィー
緩衝液は、25mM Bis−Tris、pH6.0又は6.5とした。所望される導電率、約5又は12mS/cmに応じて、35又は100mMのNaClを含めた。プロトタイプ901035A及び901035Bの場合、溶出緩衝液(B−緩衝液)は、25mM Bis−Tris、0.5M NaCl、pH6.5とした。リガンドとしてチオミカミン及びABIを用いるプロトタイプの場合、溶出緩衝液(B−緩衝液)は、0.5M酢酸ナトリウム、pH4.0とした。流速は0.5mL/分(150cm/時間)とした。
【0081】
【表4】
MAb−rプロテインAを用いるプロトタイプでのクロマトグラフィー
A−緩衝液は25mM Bis−Tris、pH6.0とした。導電率は、50mM NaClを添加して約7mS/cmとし、B−緩衝液は、0.5M酢酸ナトリウム、pH4.0とした。流速は0.5mL/分(150cm/時間)とした。試料濃度は、MAbを4mg/mL、rPrAを0.04mg/mL(1%(w/w)に相当)とした。
【0082】
【表5】
CIP(CIP洗浄)
各クロマトグラフィーランの後に、プロトタイプ及び対照マトリックスQ Sepharose(商標)FFを次のCIP処置にかけた。
【0083】
【表6】
プロテインAの分析
選択した画分を、800μLのSPA試料希釈液+200μL試料の比率でSPA試料希釈液と混合した。混合後、画分を加熱ブロック上、99℃で10分間加熱し、次いで、再混合した。次いで、試料を組換えプロテインAについて分析した。
【0084】
宿主細胞タンパク質(HCP)の分析
試料(最小で600μL)をHCP含有量について分析した。検出下限は10ng/mLである。
【0085】
実施例1
プロトタイプリガンドN−ベンジル−N−メチルエタノールアミン(901035A)及びN,N−ジメチルベンジルアミン(901035B)で精製したMAb−1含有試料
実施例1では、50mgのMAb1を含む試料を、Sepharose(商標)6FFに固定化したN−ベンジル−N−メチルエタノールアミン(901035A)、Sepharose(商標)6FFに固定化したN,N−ジメチルベンジルアミン(901035B)及び対照マトリックスQ Sepharose(商標)FFに、25mM Bis−Tris、100mM NaCl(〜12mS/cm)、pH6.5で適用した。溶出は、25mM Bis−Tris、0.5M NaCl、pH6.5で実施した。
【0086】
実施例1のクロマトグラムを図2に示す。図から、2つのプロトタイプ、N−ベンジル−N−メチルエタノールアミンSepharose(商標)6FF(901035A)及びN,N−ジメチルベンジルアミンSepharose(商標)6FF(901035B)は、Q Sepharose(商標)FFに同等であることが判る。分析用に選択した通過液(FT)画分は矢印で示す。下表2及び3に示すHCP及びプロテインAの除去に関する結果は、プロトタイプが、この点でQ Sepharose(商標)FFより優れていることを示している。
【0087】
【表7】
実施例2
プロトタイプリガンド、チオミカミン及び2−アミノベンズイミダゾールで精製したMAb−1含有試料
この実施例では、20mgのMAb1を含む試料を、プロトタイプ及び対照分離マトリックスに注入した。緩衝液は、平衡化及び注入の場合、25mM Bis−Tris、35mM NaCl(〜5mS/cm)、pH6.5とした。溶出緩衝液は、0.5M 酢酸ナトリウム、pH4.0とした。a)チオミカミン、65μモル/mL(1282004)、b)チオミカミン128μモル/mL(1282002)、c)Q Sepharose(商標)FF、d)2−アミノベンズイミダゾール(ABI)、65μモル/mL(1282045)及びe)2−アミノベンズイミダゾール(ABI)、146μモル/mL(1282032)である。HCP及びプロテインA分析の結果を下表4及び5に示す。
【0088】
【表8】
実施例3
プロトタイプリガンド、チオミカミン及び2−アミノベンズイミダゾールで精製したMAb−2含有試料
20mgのMAb2を含む試料をプロトタイプ及び対照に適用した。緩衝液は、25mM Bis−Tris、100mM NaCl(〜12mS/cm)、pH6.0とした。溶出は、0.5M酢酸ナトリウム、pH4.0で実施した。得られたクロマトグラムを図3に示す。図3a)は、チオミカミン65μモル/mL(1282004、緑)、チオミカミン128μモル/mL(1282002、青)及びQ Sepharose(商標)FF(黒)。図3b)は、2−アミノベンズイミダゾール65μモル/mL(1282045、青)、2−アミノベンズイミダゾール146μモル/mL(1282032、緑)及びQ Sepharose(商標)FF(黒)である。分析SECを使用して、下表6及び7に示すようなHCP及びプロテインA分析のための画分を選択した。
【0089】
【表9】
実施例4
プロトタイプリガンド、N−ベンジル−N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、チオミカミン及び2−アミノベンズイミダゾールでの、MAb1及び組換えプロテインA(rPrA)を含む試料からのMAb1の精製
この実施例では、Ab1−rプロテインAを含む試料についてのプロトタイプでのクロマトグラフィーを実施した。A−緩衝液は、25mM Bis−Tris、50mM NaCl、pH6.0とした。導電率は約7mS/cmであった。B−緩衝液は、0.5M酢酸ナトリウム、pH4.0とした。流速は0.5mL/分(150cm/時間)であった。試料は、mAb1が4mg/mL、rプロテインAが1%(w/w)の濃度の、10mgのmAb1、0.10mgのrPrAとした。結果を図4に示す。
【0090】
最後に、mAb1、1%rPrAを含む試料、図4のクロマトグラフィーランからのプールした通過液及び溶出画分に関する分析SECを実施した。結果を図5に示す。図5aで、斜線ピークはMAb1−プロテインAの複合体である。青色の曲線は通過液(FT)画分であり、赤線は溶出液である。
【0091】
実施例5
Q Phenyl Sepharose 6 Fast Flow配置での抗体精製
非結合条件下で、約50mgのmAbを含む試料をプロトタイプQ Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowに注入した。5、10及び15カラム容積(CV)時に通過液画分(FT)を採取した。溶出ピークからの画分を分析した。
【0092】
Q Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowは、Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flow(フェニル基45μモル/mLゲル)に標準的手順(下記参照)に従ってQ−基(−N(CH3)3)を結合することによって作製した。Q Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowのイオン交換容量は、108μモル/mlゲルであった。pH7.0又は8.0で、50mgのmAb(MabSelectで精製)を含む試料をカラムに注入し、選択した通過液画分を宿主細胞タンパク質(HCP)及びプロテインA含有量に関して分析することによって、Q Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowの性能を評価した。
【0093】
材料/調査単位
カラム及びPhenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowは、スウェーデン、Uppsala、GE Healthcareから入手した。
HR 5/5(商標) カタログ番号18−0338−01 CV=1mL。
【0094】
装置
クロマトグラフィー装置 AKTAExplorer(商標)10
分光計 Spectra MAX plus。
【0095】
化学薬品
使用する化学薬品は、全て分析級とした。水はMiLLiQで濾過した。
【0096】
Q Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowの調製
架橋アガロースゲル(Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flow(高置換)、スウェーデン、Uppsala、GE Healthcare)から出発する、本発明による分離マトリックスを調製するための1つの方法を次に例示する。
【0097】
Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flow(高置換)へのQ基の導入
Q−基(−N(CH3)3)は、次のように、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(G−MAC)との反応によってPhenyl Sepharose(商標)6 Fast Flow(高置換)に導入した。即ち、15gの吸引乾燥Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flow(高置換)を、5mlの水、5mlの50%NaOH水溶液、0.02gのNaBH4及び40mlのG−MACと混合した。混合物を30℃で16時間撹拌した。混合物を濾過した後、ゲルを、100mlの蒸留水、100mlのエタノール及び100mlの蒸留水で順次洗浄した。
【0098】
滴定によれば、置換度はアミン0.11ミリモル/mlゲルであった。
【0099】
試料
使用するモノクロナール抗体は、CHO培養で発現させ、続いて、当面の実験に先立って従来からのプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製した。
【0100】
mAbの濃度測定
mAb試料を緩衝液で10倍に希釈した。試料溶液の2つの控えをA280で測定した。平均値を使用し、Lambert−Beerの法則に従って濃度を計算した。即ち、
C=A/(l×ε)
C=IgGの濃度
A=280nmでの吸光度
l=光路長
ε=mAbに対するモル吸光係数、mg−1ml=1.46。
【0101】
Q Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowでのクロマトグラフィー
宿主細胞タンパク質及びプロテインAからのmAbの分離を、非結合条件下で試験した。カラムに適用する試料はMabSelectで精製したmAbとした。流速は、0.5ml/分(150cm/時間)とした。ラン中は終始、280nmでの吸光度を検出した。2つの異なる緩衝液(下記参照)を試験した。各ランの前にA−緩衝液への緩衝液交換を実施した。試料体積に応じてHiPrep脱塩及びHiTrap脱塩カラムを使用した。
緩衝液 A−緩衝液:25mM Tris/HCl、pH8.0
B−緩衝液:25mM Tris/HCl、0.5M NaCl、pH8.0
A−緩衝液:25mMリン酸塩緩衝液、pH7.0
B−緩衝液:25mMリン酸緩衝液、0.5M NaCl、pH7.0
方法:出発材料として、MabSelectからのpHを調整した溶出液を使用した。
【0102】
【表10】
試料注入、洗浄及び溶出の際に1mlの画分を集めた。
【0103】
各ラン後に、1M NaOHを用いてCIP(CIP洗浄)を実施した。滞留時間は約25分とした。
【0104】
プロテインA分析
選択した画分を、800μlのSPA試料希釈液+200μlの試料の比率でSPA試料希釈剤と混合した。混合した後、画分を加熱ブロック上、99℃で10分間加熱し、次いで再混合した。次いで、試料を組換えプロテインAについて分析した。
【0105】
宿主細胞(HCP)分析
試料(最小で600μl)をHCP含有量について分析した。検出下限は10ng/mLである。
【0106】
結果
非結合条件下で、約50mgのmAbを、Q Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowを充填したHR5/5カラムに2つの異なるpH(pH7.0及び8.0)で注入した。通過液画分を図1に従って5、10、15カラム容積(CV)時に採取した。表8及び9は、通過液画分のプロテインA及びHCP分析の結果を示す。画分中にプロテインAの残余は検出できなかった。更に、8.0の試料pHを使用した場合に、FT1及びFT2中に宿主細胞タンパク質は検出できなかった。7.0の試料pHを使用した場合には、少量の宿主細胞タンパク質が観察されたが、HCPは、試料中のHCP含有量に比べて約50分の1に低下した。又、図6は、勾配溶出でのクロマトグラムで極めて小さなピークのみが観察されるので(図6)、モノクロナール抗体分子がQ Phenyl Sepharose(商標)6 Fast Flowに吸着されないことを示している。
【0107】
【表11】
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の方法で有用なマルチモーダル陰イオン交換樹脂リガンドの選択例、即ち、N−ベンジル−N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、2−アミノベンズイミダゾール及びチオミカミンを示す図である。
【図2】実施例1に記載のSepharose(商標)6 FFに固定化されたN−ベンジル−N−メチルエタノールアミン、Sepharose(商標)6 FFに固定化されたN,N−ジメチルベンジルアミン及び対照としての強陰イオン交換体Q Sepharose(商標)FFを含むマルチモーダル分離マトリックスでのモノクロナール抗体の分離クロマトグラムを示す図である。
【図3a】実施例3に記載のSepharose(商標)6 FFに異なる密度で固定されたチオミカミン及び2−アミノベンズイミダゾールを含む分離マトリックスに注入されたモノクロナール抗体のクロマトグラムを示す図である。
【図3b】実施例3に記載のSepharose(商標)6 FFに異なる密度で固定されたチオミカミン及び2−アミノベンズイミダゾールを含む分離マトリックスに注入されたモノクロナール抗体のクロマトグラムを示す図である。
【図4a】mAb1−rプロテインAの混合物のプロトタイプで実施されたクロマトグラフィーの結果を示す図である。
【図4b】mAb1−rプロテインAの混合物のプロトタイプで実施されたクロマトグラフィーの結果を示す図である。
【図4c】mAb1−rプロテインAの混合物のプロトタイプで実施されたクロマトグラフィーの結果を示す図である。
【図4d】mAb1−rプロテインAの混合物のプロトタイプで実施されたクロマトグラフィーの結果を示す図である。
【図4e】mAb1−rプロテインAの混合物のプロトタイプで実施されたクロマトグラフィーの結果を示す図である。
【図4f】mAb1−rプロテインAの混合物のプロトタイプで実施されたクロマトグラフィーの結果を示す図である。
【図4g】mAb1−rプロテインAの混合物のプロトタイプで実施されたクロマトグラフィーの結果を示す図である。
【図5a】MAb1、1%rPrAを含む試料、図4のクロマトグラフィーランからのプールした通過液及び溶出画分に関する分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示す図である。
【図5b】MAb1、1%rPrAを含む試料、図4のクロマトグラフィーランからのプールした通過液及び溶出画分に関する分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示す図である。
【図5c】MAb1、1%rPrAを含む試料、図4のクロマトグラフィーランからのプールした通過液及び溶出画分に関する分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示す図である。
【図5d】MAb1、1%rPrAを含む試料、図4のクロマトグラフィーランからのプールした通過液及び溶出画分に関する分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示す図である。
【図5e】MAb1、1%rPrAを含む試料、図4のクロマトグラフィーランからのプールした通過液及び溶出画分に関する分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示す図である。
【図5f】MAb1、1%rPrAを含む試料、図4のクロマトグラフィーランからのプールした通過液及び溶出画分に関する分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示す図である。
【図5g】MAb1、1%rPrAを含む試料、図4のクロマトグラフィーランからのプールした通過液及び溶出画分に関する分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示す図である。
【図5h】MAb1、1%rPrAを含む試料、図4のクロマトグラフィーランからのプールした通過液及び溶出画分に関する分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果を示す図である。
【図6】実施例5に記載のマルチモーダルマトリックスQ Phenyl Sepharose(商標)Fast Flowを使用したモノクロナール抗体分子の分離を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料中の1種以上の抗体を1種以上の他の化合物から分離する方法であって、液体試料を含む移動相をマルチモーダル分離マトリックスと接触させ、抗体を移動相中に遊離させた状態で、1種以上の目標化合物を吸着し、マルチモーダル分離マトリックスが、目標化合物の負に荷電した部位と相互作用できる第1の基及び目標化合物と電荷−電荷相互作用以外の1種以上の相互作用ができる第2の基を含む分離方法。
【請求項2】
マルチモーダル分離マトリックスがクロマトグラフィーカラム中に用意され、移動相が重力及び/又はポンプ輸送によってカラムを通過し、抗体がカラムの通過液中に回収される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
液体試料が、細胞発酵から得られる上清を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
マルチモーダル分離マトリックスとの接触の前に、機械的濾過及び/又はクロマトグラフィーの段階を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
液体試料が粗供給液を含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
目標化合物が宿主細胞タンパク質であり、実質的に全てのタンパク質がマルチモーダル分離マトリックスに吸着される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
液体試料が、分離マトリックスからの溶出液を含む、請求項4記載の方法。
【請求項8】
溶出液が得られる分離マトリックスが、タンパク質リガンド、好ましくはプロテインA又はGリガンドを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
プロテインA及び/又はプロテインGリガンドがマルチモーダル分離マトリックスに吸着される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
移動相の導電率が、0〜25mS/cm、例えば0〜15mS/cmの範囲である、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
第1の基が第4級アミンである、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
第2の基が水素結合基である、請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
第2の基が、芳香族又はヘテロ芳香族の環構造を含む基のような疎水性基である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
分離マトリックスが、同一リガンドにカップリングした第1及び第2の基を含む、請求項1乃至請求項13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
第1及び第2の基が、炭素原子数1〜3の炭化水素鎖で互いに離隔されている、請求項14記載の方法。
【請求項16】
リガンドがその第1の基を介して担体に固定されている、請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
分離マトリックスが、異なるリガンドにカップリングした第1及び第2の基を含む、請求項1乃至請求項16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
分離マトリックスが粒状であり、第1の基を含むリガンドが固定された第1粒子と第2の基を含むリガンドが固定された第2粒子との混合物を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
分離マトリックスが、第1の基を含む第1リガンドと第2の基を含む第2リガンドとの混合物が固定されたフィルターである、請求項17記載の方法。
【請求項20】
分離マトリックスが、目標化合物と第3の相互作用ができる第3の基を含む、請求項1乃至請求項19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
抗体がモノクロナール抗体である、請求項1乃至請求項20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
抗体がヒト化抗体である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
分離された抗体が治療用グレードのモノクロナール抗体である、請求項1乃至請求項22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
マルチモーダル分離マトリックスが、使い捨てクロマトグラフィーカラムとして用意される、請求項1乃至請求項23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
使い捨てカラムが、移動相との接触前に滅菌されている、請求項1乃至請求項24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
液体中の1種以上のその他の成分から抗体を精製するためのキットであって、分離された区画に、第1分離マトリックスを充填した第1クロマトグラフィーカラム、目標化合物の負に荷電した部位と相互作用できる第1の基及び目標化合物と電荷−電荷相互作用以外の1種以上の相互作用ができる第2の基を含むマルチモーダル分離マトリックスを充填した第2クロマトグラフィーカラム、1種以上の緩衝剤及びマルチモーダル分離マトリックスの通過液からの抗体の精製を教示する使用説明書を備えるキット。
【請求項27】
第1クロマトグラフィーカラムにおいて、分離マトリックスが、タンパク質リガンド、好ましくはプロテインA又はGリガンドを含む、請求項26記載のキット。
【請求項28】
分離マトリックスが、同一リガンドにカップリングした第1及び第2の基を含む、請求項26又は27記載のキット。
【請求項29】
分離マトリックスが、異なるリガンドにカップリングした第1及び第2の基を含む、請求項26又は27記載のキット。
【請求項30】
第1及び/又は第2クロマトグラフィーカラムが使い捨てカラムである、請求項26乃至請求項29のいずれか1項記載のキット。
【請求項31】
液体中の1種以上のその他の成分から抗体を捕捉するためのキットであって、分離された区分に、目標化合物の負に荷電した部位と相互作用できる第1の基及び目標化合物と電荷−電荷相互作用以外の1種以上の相互作用ができる第2の基を含むマルチモーダル分離マトリックスを充填したクロマトグラフィーカラム、1種以上の緩衝剤及び使用説明書を備えるキット。
【請求項32】
第1の基が第4級アミンである、請求項26乃至請求項31のいずれか1項記載のキット。
【請求項33】
第2の基が疎水性及び/又は水素結合基である、請求項26乃至請求項32のいずれか1項記載キット。
【請求項34】
分離マトリックスが、同一リガンドにカップリングした第1及び第2の基を含む、請求項26乃至請求項33のいずれか1項記載のキット。
【請求項35】
分離マトリックスが、異なるリガンドにカップリングした第1及び第2の基を含む、請求項26乃至請求項34のいずれか1項記載のキット。
【請求項36】
目標化合物の負に荷電した部位と相互作用できる第1の基及び目標化合物と電荷−電荷相互作用以外の1種以上の相互作用ができる第2の基を含むマルチモーダル分離マトリックスを含むクロマトグラフィーカラム。
【請求項37】
抗体を精製するための使い捨てクロマトグラフィーカラムであって、負に荷電した目標部位と相互作用できる第1の基及び電荷−電荷相互作用以外の1種以上の相互作用ができる第2の基を含むマルチモーダル分離マトリックスを含み、基が多孔性担体の表面にカップリングされているカラム。
【請求項38】
分離マトリックスが、導電率が0〜25mS/cm、例えば0〜15mS/cmの範囲である移動相から抗体以外のタンパク質を吸着する能力を有する、請求項36又は37記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項39】
抗体を精製するための使い捨てフィルターであって、負に荷電した目標部位と相互作用できる第1の基及び電荷−電荷相互作用以外の1種以上の相互作用ができる第2の基を含み、基がフィルター表面にカップリングされているフィルター。
【請求項40】
導電率が0〜25mS/cm、例えば0〜15mS/cmの範囲である移動相から抗体以外のタンパク質を吸着する能力を有する、請求項39記載のフィルター。
【請求項1】
液体試料中の1種以上の抗体を1種以上の他の化合物から分離する方法であって、液体試料を含む移動相をマルチモーダル分離マトリックスと接触させ、抗体を移動相中に遊離させた状態で、1種以上の目標化合物を吸着し、マルチモーダル分離マトリックスが、目標化合物の負に荷電した部位と相互作用できる第1の基及び目標化合物と電荷−電荷相互作用以外の1種以上の相互作用ができる第2の基を含む分離方法。
【請求項2】
マルチモーダル分離マトリックスがクロマトグラフィーカラム中に用意され、移動相が重力及び/又はポンプ輸送によってカラムを通過し、抗体がカラムの通過液中に回収される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
液体試料が、細胞発酵から得られる上清を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
マルチモーダル分離マトリックスとの接触の前に、機械的濾過及び/又はクロマトグラフィーの段階を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
液体試料が粗供給液を含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
目標化合物が宿主細胞タンパク質であり、実質的に全てのタンパク質がマルチモーダル分離マトリックスに吸着される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
液体試料が、分離マトリックスからの溶出液を含む、請求項4記載の方法。
【請求項8】
溶出液が得られる分離マトリックスが、タンパク質リガンド、好ましくはプロテインA又はGリガンドを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
プロテインA及び/又はプロテインGリガンドがマルチモーダル分離マトリックスに吸着される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
移動相の導電率が、0〜25mS/cm、例えば0〜15mS/cmの範囲である、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
第1の基が第4級アミンである、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
第2の基が水素結合基である、請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
第2の基が、芳香族又はヘテロ芳香族の環構造を含む基のような疎水性基である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
分離マトリックスが、同一リガンドにカップリングした第1及び第2の基を含む、請求項1乃至請求項13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
第1及び第2の基が、炭素原子数1〜3の炭化水素鎖で互いに離隔されている、請求項14記載の方法。
【請求項16】
リガンドがその第1の基を介して担体に固定されている、請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
分離マトリックスが、異なるリガンドにカップリングした第1及び第2の基を含む、請求項1乃至請求項16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
分離マトリックスが粒状であり、第1の基を含むリガンドが固定された第1粒子と第2の基を含むリガンドが固定された第2粒子との混合物を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
分離マトリックスが、第1の基を含む第1リガンドと第2の基を含む第2リガンドとの混合物が固定されたフィルターである、請求項17記載の方法。
【請求項20】
分離マトリックスが、目標化合物と第3の相互作用ができる第3の基を含む、請求項1乃至請求項19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
抗体がモノクロナール抗体である、請求項1乃至請求項20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
抗体がヒト化抗体である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
分離された抗体が治療用グレードのモノクロナール抗体である、請求項1乃至請求項22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
マルチモーダル分離マトリックスが、使い捨てクロマトグラフィーカラムとして用意される、請求項1乃至請求項23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
使い捨てカラムが、移動相との接触前に滅菌されている、請求項1乃至請求項24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
液体中の1種以上のその他の成分から抗体を精製するためのキットであって、分離された区画に、第1分離マトリックスを充填した第1クロマトグラフィーカラム、目標化合物の負に荷電した部位と相互作用できる第1の基及び目標化合物と電荷−電荷相互作用以外の1種以上の相互作用ができる第2の基を含むマルチモーダル分離マトリックスを充填した第2クロマトグラフィーカラム、1種以上の緩衝剤及びマルチモーダル分離マトリックスの通過液からの抗体の精製を教示する使用説明書を備えるキット。
【請求項27】
第1クロマトグラフィーカラムにおいて、分離マトリックスが、タンパク質リガンド、好ましくはプロテインA又はGリガンドを含む、請求項26記載のキット。
【請求項28】
分離マトリックスが、同一リガンドにカップリングした第1及び第2の基を含む、請求項26又は27記載のキット。
【請求項29】
分離マトリックスが、異なるリガンドにカップリングした第1及び第2の基を含む、請求項26又は27記載のキット。
【請求項30】
第1及び/又は第2クロマトグラフィーカラムが使い捨てカラムである、請求項26乃至請求項29のいずれか1項記載のキット。
【請求項31】
液体中の1種以上のその他の成分から抗体を捕捉するためのキットであって、分離された区分に、目標化合物の負に荷電した部位と相互作用できる第1の基及び目標化合物と電荷−電荷相互作用以外の1種以上の相互作用ができる第2の基を含むマルチモーダル分離マトリックスを充填したクロマトグラフィーカラム、1種以上の緩衝剤及び使用説明書を備えるキット。
【請求項32】
第1の基が第4級アミンである、請求項26乃至請求項31のいずれか1項記載のキット。
【請求項33】
第2の基が疎水性及び/又は水素結合基である、請求項26乃至請求項32のいずれか1項記載キット。
【請求項34】
分離マトリックスが、同一リガンドにカップリングした第1及び第2の基を含む、請求項26乃至請求項33のいずれか1項記載のキット。
【請求項35】
分離マトリックスが、異なるリガンドにカップリングした第1及び第2の基を含む、請求項26乃至請求項34のいずれか1項記載のキット。
【請求項36】
目標化合物の負に荷電した部位と相互作用できる第1の基及び目標化合物と電荷−電荷相互作用以外の1種以上の相互作用ができる第2の基を含むマルチモーダル分離マトリックスを含むクロマトグラフィーカラム。
【請求項37】
抗体を精製するための使い捨てクロマトグラフィーカラムであって、負に荷電した目標部位と相互作用できる第1の基及び電荷−電荷相互作用以外の1種以上の相互作用ができる第2の基を含むマルチモーダル分離マトリックスを含み、基が多孔性担体の表面にカップリングされているカラム。
【請求項38】
分離マトリックスが、導電率が0〜25mS/cm、例えば0〜15mS/cmの範囲である移動相から抗体以外のタンパク質を吸着する能力を有する、請求項36又は37記載のクロマトグラフィーカラム。
【請求項39】
抗体を精製するための使い捨てフィルターであって、負に荷電した目標部位と相互作用できる第1の基及び電荷−電荷相互作用以外の1種以上の相互作用ができる第2の基を含み、基がフィルター表面にカップリングされているフィルター。
【請求項40】
導電率が0〜25mS/cm、例えば0〜15mS/cmの範囲である移動相から抗体以外のタンパク質を吸着する能力を有する、請求項39記載のフィルター。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図4f】
【図4g】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図5f】
【図5g】
【図5h】
【図6】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図4e】
【図4f】
【図4g】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図5f】
【図5g】
【図5h】
【図6】
【公表番号】特表2008−517906(P2008−517906A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537850(P2007−537850)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【国際出願番号】PCT/SE2005/001591
【国際公開番号】WO2006/043895
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(597064713)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ (109)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【国際出願番号】PCT/SE2005/001591
【国際公開番号】WO2006/043895
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(597064713)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ (109)
【Fターム(参考)】
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