抗原でパルスされた、二重特異性抗体(BiAb)でコーティングされた樹状細胞の使用
二重特異性抗体の使用により目的の抗原または組織でコーティングした、パルスした樹状細胞は、治療用の用途を有する。本発明は、二重特異性抗CTLA−4抗体でコーティングされた半成熟樹状細胞を含有する組成物であって、上記二重特異性抗体がまた、特異的な抗原もしくは組織に結合し得る、組成物を提供する。また、上記樹状細胞がGM−CSFで処理される上記組成物を提供する。本発明は、組織特異的寛容を誘導するための方法を提供し、上記方法は、以下:(a)樹状細胞を目的の抗原で成熟させてT細胞を活性化する工程;および(b)該活性化T細胞を、抗CTLA−4抗体でコーティングされた樹状細胞と接触させ、樹状細胞に結合し得る二重特異性抗体の第二の腕を介して該活性化T細胞の表面にCTLA−4を結合させる工程を包含する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(開示の背景)
T細胞は、細胞性免疫応答の制御の中心として作用している。T細胞活性は、アップレギュレートまたはダウンレギュレートされ、それぞれ抗原への攻撃または抗原の無視を生じ得る。特異的抗原をダウンレギュレートする能力または特異的抗原に寛容になる能力は、「自己」抗原(正常な機能のために人の身体に生来存在する分子)の保存に重要である。他方で、非寛容化T細胞は、人の身体に対して異質である抗原を攻撃し、破壊する。異物の例は、ウイルスまたは癌細胞の表面上にある欠損タンパク質である。
【0002】
T細胞は、人の身体の完全性を保存するために異種抗原を攻撃することは、有益であるが、攻撃性T細胞が問題となる状況が生じ得る。例えば、器官が別のヒト(または動物であったとしても)から身体に移植された後、異種組織の細胞の表面に多数の異種抗原が存在する。T細胞は、腫瘍と有益な腎臓移植物との間の差を認識しない。従って、T細胞は、新しく移植された腎臓を身体に有害であるかのように攻撃する。T細胞による攻撃は、新しい腎臓の破壊を生じる。この事象は、移植の拒絶といわれる。
【0003】
別のヒトまたは動物から提供された器官の拒絶は、T細胞が新規の組織の細胞表面上の異種抗原を攻撃しないことを確実にすることにより避けられ得る。医師は、免疫抑制薬を用いてT細胞を遮断し、それによりT細胞は提供された器官の異種抗原を攻撃しなくなる。従って、異種器官は、身体により耐容され、拒絶されない。残念なことに、免疫抑制薬は、全免疫系を抑制し、そして他の異種抗原(例えば、ウイルスに感染した細胞および腫瘍細胞上に存在する)は、T細胞によりチェックされず、T細胞から干渉されることなく増加し得る。実際、免疫抑制薬は、免疫系の他の部分(例えば、B細胞)を無力化し、身体を細菌、ウイルスおよび真菌生物による攻撃に感受性にさせる。結果的に免疫抑制薬は、器官移植の拒絶をなくすことには有効であるが、また感染性生物の危険性を生じる。この問題は、器官移植レシピエントを感染性因子が可能な限り取り除かれた環境で維持することにより扱われているが、環境を完全に感染性因子のない状態で維持することは不可能である。
【0004】
免疫系の驚異の一つは、免疫系が、数百万の抗原のそれぞれを個々に認識するように設計されていることである。免疫系に適切な抗原性の情報が提示される場合、T細胞は、その特異的抗原のみを攻撃する。同様に、T細胞は、特異的抗原が、適切な様式で免疫系に提示される場合のみ特異的抗原に対して寛容化され得る。従って、移植器官の抗原のみが、寛容に関してT細胞に提示される場合、T細胞は、移植片のみを放置し、感染性因子に対してなお防御する。
【0005】
任意の所定の抗原に対する免疫応答の調節の中心となるのは、ヘルパーT細胞の役割である。これらのCD4+細胞は、MHCクラスII抗原と複合化した特異的抗原性ペプチドを発現する抗原提示細胞(APC)と相互作用する。二つのシグナルが、Tリンパ球の効果的な活性化に必要であることが、一般的に認められている。第一のシグナルは、T細胞レセプターと、MHCタンパク質と複合化したそのレセプター特異的抗原性ペプチドとの相互作用により提供される。第二のシグナルは、同時刺激シグナルといわれるが、これはT細胞表面タンパク質であるCD28により送達される二つのシグナルの主要な伝達物質であると現在は考えられている。CD28リガンドであるB7.1(CD80)およびB7.2(CD86)は、主に抗原提示細胞(APC)上に見出されるが、他の非リンパ系組織にも発現される。CD28の結合はまたCTLA−4の細胞表面発現に増加を生じる。CTLA−4は、重要なT細胞表面レセプターであり、CTLA−4を介したシグナル伝達は、T細胞応答の下方調節を生じる。CTLA−4ノックアウトマウスは、重篤なリンパ球増殖性の障害から早期に致死に到る。TCRシグナル伝達およびCD28架橋の存在下での抗CTLA−4抗体による架橋実験は、T細胞活性を妨害したことを示す。記憶T細胞は、CTLA−4に仲介される阻害に対して、未処置の細胞より感受性であった。抗CTLA−4抗体によるCTLA−4の結合は、免疫応答に特異的な望ましくない抗原または組織を効果的に抑制する、抗原特異的もしくは標的特異的免疫調節性T細胞を産生する。CD25マーカーを構成的に発現するT細胞(CD4+/CD25+T細胞)が、自己応答性T細胞に対する末梢の寛容を確実にするために重要であることが示唆されている。
【0006】
樹状細胞は、全ての器官に事実上少数存在する専門的抗原提示細胞(APC)に属する抗原提示細胞(DC)である。DCは、高度に移動性であり。末梢組織から血液および/またはリンパ管を介してリンパ系器官に移動する点で固有であり、この性質は、一般的に他のAPCとは関連しない。DCの全てのサブタイプの一般的な性質は、その寿命までの間に成熟のいくつかの段階を通過することである。未成熟なDCは、低レベルのMHC−クラスIIおよび同時刺激分子を発現するが、これらの分子の表面の発現は、適切な抗原性刺激または炎症性刺激に応答して成熟の際に劇的に増加する。微生物の産物および炎症性ケモカイン(例えば、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)およびIL−1)により提供される多くの刺激が、DCの移動を誘導し得、DCの表面上のケモカインレセプターおよび接触タンパク質の発現における変化を調節し得る。未成熟なDCは、末梢では、エンドサイトーシスまたはマクロピノサイトーシスによる抗原の捕捉に特殊化しているが、一旦成熟すると、DCは、抗原を捕捉する能力を失い、高度に有効な抗原提示細胞になる。これらのAPCは、末梢のリンパ系器官におけるネイティブのT細胞に特異的な抗原を活性化し、この抗原は捕捉され、両方の細胞型が共存する。そのT細胞レセプター(TCR)との相互作用に加えて、DCは、いくつかの膜結合レセプターとリガンドとの相互作用を介して、およびサイトカイン産生を介してT細胞を活性化し得る。これらの相互作用は、T細胞応答の大きさに有意に作用し得るだけでなく、T細胞応答の定性的な性質にも有意に作用し得る。DCの別の注目すべき特徴は、DCがリンパ系器官のT細胞区域に移動した後でさえ、抹消組織において抗原が遭遇する能力を維持することである。このことは、MHCクラス−1/IIペプチドの複合体の蓄積および持続(100時間より長く)を可能にする。対照的に、クラス−IIペプチド複合体の細胞内の隔離および未成熟DC内でのMHC分子へのペプチドロードの遮断は、MHCとの関連でペプチドの提示を遅延させ得る。これらの事象は、炎症性の刺激により調節され、これは、DCにロードされたペプチドの、リンパ節のT細胞区域への移動を促進する。成熟DCの表面上で発現された適切なMHCペプチド複合体は、未処置のT細胞を免疫学的なシナプスを形成し、最適なT細胞活性化を生じる。
【0007】
CTLA−4の結合は、調節性T細胞を誘導し得、自己免疫応答を抑制し得る。CTLA−4は、重要なT細胞表面レセプターであり、CTLA−4を介したシグナル伝達じゃ、T細胞応答の下方調節を生じる。インビボでの末梢T細胞寛容の誘導がCTLA−4の結合を必要とするという証拠は、蓄積し続けている。さらに、最近の研究は、CD4+CD25+Treg細胞がCTLA−4を構成的に発現することを示し、このことは、CTLA−4を介したシグナル伝達が、これらの細胞の機能および維持に不可欠であることを示唆する。B7.2の相互作用ではなく、B7.1のCTLA−4との高親和性の相互作用は、T細胞の下方調節に重要であり、B7.1のIg定常様cドメインは、この高親和性の相互作用に重要である。さらに、B7.1と活性化T細胞上のCTLA−4との間の相互作用は、調節性表現型を有するT細胞を生じる。アロ抗原系、ならびに橋本甲状腺炎のマウスモデルにおけるCTLA−4の結合の標的特異的な免疫寛容を生じる効果は、本発明者らにより実証された。このCTLA−4の結合により誘導される寛容は、CD4+CD25+Treg細胞により仲介され、サイトカイン(IL−10および/またはTGF−β1)は、これらの細胞により産生される。
【0008】
免疫仲介疾患の経費は、膨大である。米国では、これらの状態は、100億ドルを上回る直接的および間接的な費用を生じる。自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、I型糖尿病および多発性硬化症)は、合わせて米国人口の約5%が罹患している。アメリカの小児の少なくとも7%が喘息であり、米国の5人に1人より多くの個人がアレルギーに罹患している。さらに、免疫に仲介される移植片拒絶は、命を救う可能性のある器官の首尾よい移植に対して依然として大きな障害である (NIAID Publication、2001年、1月23日)。
【0009】
炎症、自己免疫疾患および移植拒絶に対して有効な介入は、免疫応答をダウンレギュレートする能力を必要とする。これらの状態に対する伝統的な臨床アプローチは、免疫応答の全体的な減衰を生じる免疫抑制薬の投与に依存している。AIDSを罹患する患者または移植拒絶を予防する免疫抑制剤を受ける患者により証明されるように、弱められた免疫応答を有する個体は、広い範囲の日和見感染症の因子に対して感受性であり、悪性疾患を発症する危険性が増加する。これらの潜在的に致命的な副作用は、現在の免疫抑制薬の制限要因であり続けている。
【0010】
他のヒト(または理論的には他の動物から)の器官移植片は、移植された器官の細胞上の抗原を正常に攻撃するT細胞がダウンレギュレートされる場合、実現可能になる。
【0011】
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)は、潜在的に、実験的自己免疫性甲状腺炎(EAT)を防止するだけでなく、またその疾患を抑制する。マウスにおけるGM−CSFに誘導されたEATの抑制は、CD4+CD25+調節性T細胞の頻度の増加を伴った。この増加は、インビトロでマウスのサイログロブリン(mTg)特異的T細胞応答を抑制し得るが、この抑制の基礎となる機構は、解明されていない。GM−CSFは、半成熟表現型(調節性T細胞の誘導および維持に重要な役割を果たすことが公知であるDCの重要な特徴)を有するDCを誘導し得る。GM−CSF処置し、mTgで初回抗原刺激したドナーから、未処置であるがmTgで初回抗原刺激したレシピエントへのCD4+CD25+T細胞の養子免疫転移は、mTg特異的なT細胞応答の減少を生じた。さらに、これらの養子免疫転移後のドナーおよびレシピエントから得たリンパ球は、mTgで初回抗原刺激した未処置のコントロールマウスに比べて有意に高いレベルのIL−10を産生した。GM−CSF処置したマウスへの抗IL−10レセプター(αIL−10)抗体の投与は、mTg特異的T細胞応答、甲状腺リンパ球浸潤および小胞の破壊の増加によって示されるようにEATの抑制を誘導した。興味深いことに、IL−10レセプターのインビボの遮断は、GM−CSFに誘導されたCD4+CD25+T細胞の拡大には影響しなかった。しかし、IL−10に誘導された免疫抑制は、mTg特異的エフェクターT細胞に対するその直接的な効果に起因した。まとめると、これらの結果は、半成熟DCによって誘導されるようなCD4+CD25+T細胞によって産生されたIL−10が、GM−CSFで処置したマウスにおける疾患の抑制に不可欠であることを示唆した。
【0012】
樹状細胞(DC)は、異種抗原に対する有効な免疫応答の誘導に不可欠であるが、それらはまた、自己抗原に対する寛容を促進し維持することにおいて重要な役割を果たし得る。インビトロおよびインビボでのDC表現型および成熟状態の調節は、T細胞の活性化および分化に大きな効果を有し得、免疫応答を歪める。DCの異なる部分集合は、潜在的にTh1型応答またはTh2型応答に影響し得る。特に、CD8a+DCの注射は、Th1細胞の発生を引き起こすが、CD8a−DCは、可溶性抗原に対するTH2型応答を誘導する。従って、特定のDCの部分集合の標的化された拡大は、一つの型から別の型へ免疫応答を移行させるために使用され得、それによって自己免疫疾患の発症を防止する。さらに、DC成熟は、種々のサイトカインを用いて調節性T細胞またはエフェクターT細胞のどちらかを誘導して調節され得る。
【0013】
CD8a+DCもCD8a−DCもどちらも、未成熟な場合には最適なT細胞応答を誘導し得ないが、成熟するとT細胞に対する強力なアクチベーターになる。未成熟なDCは、同時刺激分子および炎症誘発性サイトカインの低いレベルの発現によって特徴付けられ、アネルギーを促進し得るが、かなりのレベルのMHCクラスIIおよび同時刺激分子を発現するが、成熟DCに比べて低いレベルの炎症誘発性サイトカインを発現する半成熟DCは、調節性T細胞を誘導し得る。DCの機能的な性質の調節は、自己免疫状態に対して有効な治療アプローチであり得る。
【0014】
実験的自己免疫性甲状腺炎は、橋本甲状腺炎(HT)に対する十分に確立されたマウスモデルである。橋本甲状腺炎は、最終的には小胞の破壊を生じる甲状腺のリンパ球浸潤により特徴付けられる器官特異的自己免疫疾患である。HTにおいて、サイログロブリン特異的T細胞が産生され、それらは、甲状腺に移動する。これらの細胞は、IFN−γを産生し、それは、甲状腺細胞上でMHCクラスIIの発現を誘導し、さらに活性化されたmTg特異的T細胞の拡大および蓄積をさらに生じる。甲状腺破壊の機構は完全には理解されていないが、カスパーゼ活性化を介して甲状腺細胞のアポトーシスを促進し得るT細胞を浸潤する甲状腺によるサイトカインの産生を包含するようである。
【0015】
GM−CSFまたはFlt3−L(潜在的な樹状細胞増殖因子)の投与は、それぞれEATの抑制または増加を生じた。GM−CSFによる処置は、同時に生じるIFN−γ産生の減少を伴ったIL−4産生の増加に見られるように、CD8aのDCを誘導し、Th1応答からTh2応答へのサイログロブリンに対する免疫応答の移行を引き起こした。しかし、GM−CSFに誘導されるEATの抑制は、単なるTh2の歪みとは関連しないが、インビトロでmTg特異的応答を抑制し得るCD4+CD25+調節性T細胞の選択的拡大とも関連しなかった。CD4+CD25+調節性T細胞は、自己免疫の抑制において、重要な役割を果たす。CD4+CD25+調節性T細胞の枯渇または存在しないことにより、自己免疫疾患の発症を生じることが報告されている。CD4+CD25+調節性T細胞がどのようにして自己免疫を抑制するかは十分に理解されていないが、サプレッサーサイトカイン(例えば、IL−10)は関与している。GM−CSF処置マウスにおいて、IL−10のレベルのかなりの増加が存在し、GM−CSF処置したマウス由来のリンパ球培養物におけるIL−10の中和は、mTg特異的T細胞応答を回復した。さらに、CD4+CD25+T細胞を枯渇するGM−CSF処置したマウス由来のリンパ球は、同時に生じるインビトロでのIL−10のレベルの減少を伴うmTg特異的増殖の増強を示し、このことは、これらの細胞が、IL−10の供給源であることを示唆する。
【0016】
GM−CSFに誘導されたEATの抑制におけるCD4+CD25+T細胞およびIL−10の直接的な役割の研究は、GM−CSF処置したマウスからmTg初回免疫刺激したマウスへのCD4+CD25+T細胞の養子免疫転移が、mTg特異的増殖を抑制し得、レシピエントマウス由来の細胞がより高いレベルでIL−10を産生し得ることを示した。さらに、IL−10レセプターのインビボの遮断は、GM−CSFに誘導された抑制を排除し得、EATの発症を生じるmTg特異的T細胞応答を回復し得る。GM−CSF処置したマウスにおける半成熟表現型を有するDCの増加が観察された。半成熟DCは、調節性T細胞を誘導し得るので、本発明者らの結果は、調節性T細胞の誘導のための機構を示唆した。結果は、GM−CSFに誘導されたEATの抑制におけるCD4+CD25+T細胞およびIL−10が果たす役割を支持する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の要旨)
開示される方法および組成物は、抗CTLA−4抗体でコーティングされた樹状細胞を包含し、この抗体はまた、特異的抗原または特異的組織に結合し得る。
【0018】
二重特異性抗体は、特異的抗原または特異的組織にも結合し得る、抗CTLA−4抗体に結合した樹状細胞を含む。
【0019】
組織特異的寛容を誘導するための方法であって、上記方法は、以下の工程:
(a)樹状細胞を目的の抗原で成熟させて、T細胞を活性化する工程;および
(b)上記活性化T細胞を抗CTLA−4抗体でコーティングされた樹状細胞と接触させ、上記活性化T細胞の表面にCTLA−4を結合させる工程;
を包含する。
【0020】
抗原特異的寛容を誘導するための方法であって、上記方法は、以下:
(a)少なくとも一つの特異的抗原を樹状細胞に提示する工程;
(b)上記樹状細胞のプロセシングおよび抗原の提示を促進する工程;
(c)上記樹状細胞に、細胞表面分子の発現を安定化させることを可能にする工程;
(d)さらなる抗原のプロセシングを防止する工程;ならびに
(e)抗原発現性樹状細胞を、上記樹状細胞表面に結合しT細胞または他のリンパ球の表面上のCTLA−4分子に結合する能力を保持する二重特異性抗体で処理する工程;
を包含する。
【0021】
抗原特異的T細胞寛容を誘導するための方法は、二重特異性抗体でコーティングした樹状細胞をT細胞とともに培養する工程を包含する。上記培養は、インビボであり得る。
【0022】
哺乳動物において、宿主−移植片拒絶から移植片を防御するための方法であって、上記方法は、以下:
(a)樹状細胞に対する宿主−移植片拒絶を担う抗原を提示する工程;
(b)二重特異性抗体でコーティングされた樹状細胞をT細胞とともに培養して、抗原特異的なT細胞寛容を誘導する工程;および
(c)上記T細胞を上記宿主に投与する工程
を包含する。
【0023】
樹状細胞の成熟に作用するための方法であって、上記細胞は、調節性T細胞を誘導し得る半成熟状態に保持され、上記方法は、以下:(a)樹状細胞をパルスする工程;(b)上記パルスした樹状細胞を適切な二重特異性抗体と接触させる工程であって、一方の腕が標的/抗原特異性を提供し、もう一方の腕が、CTLA−4連結を提供する工程;および(c)上記細胞をGM−CSFと接触させる工程を包含する。
【0024】
調節性T細胞(Tregs)は、一般的であるか、または抗原特異的である。上記調節性T細胞は、Tregsが、免疫応答を抑制し得るのを媒介するTGF−βおよび/またはIL−10を産生する。
【0025】
処置の必要な患者に、抗原活性化半成熟樹状細胞を含有する組成物を治療有効量投与する工程を包含する自己免疫疾患を処置する方法であって、上記樹状細胞が、GM−CSFおよび非樹状細胞前駆体の増殖または成熟を阻害する少なくとも一つの他の因子を含有する培養培地中で、基質上で組織供給源を培養する工程を包含する方法により産生され、それにより上記培養物中で樹状細胞前駆体の産生を増加させる工程を包含し、上記樹状細胞が、自己タンパク質でパルスされ、上記樹状細胞が、自己タンパク質をプロセシングして修飾された自己タンパク質抗原を産生し、この自己タンパク質抗原が樹状細胞によって発現される。
【0026】
疾患としては、橋本甲状腺炎、I型糖尿病、重症筋無力症、アトピー性皮膚炎および多発性硬化症が挙げられる。
【0027】
調節性T細胞を作製するための方法は、以下:
1.樹状細胞をGM−CSFで処理して、インビトロまたはインビボで半成熟細胞を誘導する工程、
を包含する。
【0028】
2.これらの半成熟樹状細胞は、目的のアロ抗原または自己抗原でパルスされ得る。
【0029】
3.次いで、これらは、CTLA4に結合する能力を有する二重特異性抗体でコーティングされ得る。
【0030】
4.コーティングされた細胞は、インビトロで調節性T細胞を誘導するために使用され得る、そして/またはインビボで調節性T細胞を誘導するために、宿主に接種され得る。
【0031】
5.インビトロで誘導された調節性T細胞は宿主に注入されて、同種移植片拒絶を予防/抑制し得るか、または自己免疫疾患を処置し得る。
【0032】
6.GM−CSF、および/またはCTLA−4に結合する能力を有する二重特異性抗体を、一緒にまたは連続して直接接種して、調節性T細胞をインビボで誘導することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(開示の詳細な説明)
移植分野の最先端は、全T細胞を抑制し、移植片の異種抗原がT細胞によって攻撃されないようにする(すなわち、身体が移植された器官を拒絶しないようにする)ことに関する。このアプローチの欠点は、全免疫系が抑制されて、感染性因子または癌性腫瘍の異種抗原が認識されないことである。身体は、防御そのものに無力になる。開示される方法は、移植された器官を拒絶する免疫応答の部分のみの抑制をもたらし、これによって免疫系が有害な異種因子に対して身体を防御することを可能にする(図1)。
【0034】
所望の抗原(例えば、移植された器官の抗原)をT細胞に提示し、これによってT細胞にこれらの抗原を無視させるための方法が開示される。この方法は、結合分子を使用して、CTLA−4表面分子を介したT細胞のダウンレギュレーションのために抗原提示細胞とT細胞とを非常に近接させる。抗原の抗原提示細胞への提示は、二重特異性抗体複合体による抗原提示細胞のコーティングのように、インビトロで行われる。次いで、抗原提示細胞は、インビボで付与され、二重特異性抗体複合体の遊離(fee)結合部位がT細胞を見出して寛容化する。
【0035】
全身性の免疫抑制は、器官移植片に対して必要とされるだけでなくが、身体が身体の「良い」細胞を攻撃する任意の状況においても必要とされる。例えば、自己免疫疾患の全ては、未知の理由により、共通のT細胞攻撃「自己」抗原を有する。自己免疫疾患は、多数あり、これらとしては、関節リウマチ、I型糖尿病、多発性硬化症、全身性硬化症、狼蒼、橋本甲状腺炎などが挙げられる。
【0036】
本明細書において開示される方法および組成物は、所与の所望されない免疫応答に特異的に関与するこれらのリンパ球の標的化された除去または不活性化に関与する一方、残りの免疫系をインタクトのまま残すことに関する。この特異的除去は、所与の抗原特異性または組織特異性を有するこれらのリンパ球のみを不活性化する工程を包含し、これによって日和見感染、悪性疾患もしくは他の副作用を回避し得る。
【0037】
抗原特異的な様式でT細胞にCTLA−4を結合するための方法論は、CTLA−4の強力な阻害性シグナル伝達特性と樹状細胞(DC)の並外れた抗原提示特性とを組み合わせる。DC結合抗CTLA−4抗体は、DC上のMHC抗原性ペプチドのTCR結合によって活性化T細胞の表面に結合する。これは、T細胞活性化を抑制し、次いで、目的の抗原に特異的なTreg細胞誘導を引き起こす。
【0038】
CTLA−4結合を介した抗原特異的寛容誘導は、二重特異性抗体を使用する。寛容は、樹状細胞結合抗CTLA−4によるT細胞上のCTLA−4を介したシグナル伝達によって、抗原特異的な様式で誘導される。抗CTLA−4抗体は、架橋し、T細胞寛容をもたらすCTLA−4シグナルを誘導することが知られている。抗CTLA−4抗体のこのシグナル伝達能力は、抗原特異的な様式で操作される。この目的のため、抗CTLA−4抗体は、樹状細胞特異的抗体に結合され、樹状細胞は、特異的抗原でパルスされた樹状細胞でコーティングされ、これによってインビボまたはインビトロでの送達において、BiAbの抗CTLA−4部分は、T細胞上のCTLA−4に結合し、T細胞を弱らせる。
【0039】
開示された方法および組成物は、以下の理由に起因して、有用である:1.自己免疫性標的抗原に対する寛容を誘導し、種々の自己免疫状態を防止/処置する;2.アロ抗原または異種抗原に対する寛容を誘導し、移植組織(例えば、膵臓の島、腎臓、心臓、肝臓、象徴、皮膚など)の拒絶を防ぐ;3.アレルゲンに対する寛容の誘導;4.遺伝子治療用途におけるトランスジーンの産物およびそれらのキャリアベクターに対する寛容の誘導;5.対宿主性移植片病の処置;6.炎症状態(例えば、炎症性腸疾患)に対する寛容の誘導;7.分子的模倣を介して自己免疫疾患もしくは炎症性免疫媒介性疾患の誘導体として作用する、細菌病原もしくはウイルス病原に対する寛容の誘導。
【0040】
選択的組織特異的(または抗原特異的)免疫調節の誘導のための臨床的に有用な療法の開発は、一般的に、以下の基準を満たす:1.所望されない免疫応答に関与するT細胞の特異的不活性化;2.全ての他の抗原に対する免疫応答に対する影響をほとんど有さないか、まったく有さず、したがって日和見感染もしくは免疫監視の不全の危険を最小限にする;3.毒性の副作用のない生物学的に分解可能な因子を含む;4.種々の疾患状態において異なる組織型で発現される種々の抗原に対する免疫抑制に指向するための柔軟性を有する;5.併用免疫調節療法のために、標的抗体への種々の阻害シグナルに結合する能力を有する。
【0041】
抗原特異的免疫調節療法に対するこのアプローチは、遺伝子治療と異なり、多岐にわたる組織および抗原に対して介入する柔軟性を有する。その投薬量は、容易に力価測定されて、所望の効果を達成し得るか、または有害な副作用の事象を迅速に終わらせ得る。これは、免疫監視の長期阻害および悪性疾患の発現の遅延に関する問題を最小にする。
【0042】
バリエーションとしては、以下が挙げられる:1.任意の樹状細胞表面分子、器官もしくは組織に結合し得、そして抗CTLA−4抗体と化学的に結合した抗体。この二重特異性抗体は、移植前もしくは自己免疫プロセスの間に樹状細胞上または標的組織にコーティングされる;2.目的の組織とCTLA−4との療法に特異性を有する遺伝的に操作された抗体が作製される。この遺伝的に操作された抗体は、化学的に架橋された抗体と少なくとも同じ程度に有効である;3.樹状細胞組織または標的組織は、抗CTLA−4抗体によって受動的にまたは能動的に(化学的修飾によって)コーティングされる;4.MHCを介して提示されるペプチドは、化学的に、遺伝的操作を介して、または任意の同等の手段を介して生成され得る。
【0043】
抗CTLA−4抗体のシグナル伝達能力は、組織特異的な様式で操作される。この目的のため、抗CTLA−4抗体は、組織特異的抗体に結合され、インビボ送達もしくはインビトロ送達によって、抗体は目的の組織に結合して、標的組織に特異的な組織攻撃性T細胞を弱める。例えば、膵臓島T細胞は、自己免疫ならびにアロ免疫応答もしくは異種免疫応答から、島を、抗島T細胞特異的抗体(例:Glut−2もしくはMHCクラスI抗体)を抗CTLA−4抗体に結合させることによって作製された二重特異性抗体でコーティングすることによって、防御される。目的の組織に特異的なあらゆる抗体は、抗CTLA−4に結合されて、特定の組織を防御するために使用され得る。
【0044】
GM−CSFは、免疫系に対するその効果を延長および増強し、かつ任意の所望されない効果を防ぐように、改変され得る。
【0045】
半成熟樹状細胞は、そのTreg誘導効率を増強するように、さらに改変または処理され得る。
【実施例】
【0046】
(実施例1:抗CTLA−4抗体コーティングされたDCを使用した免疫寛容および調節性T細胞の誘導)
組織標的化CTLA−4結合方法の制限(組織特異的抗体に対する要求)を克服し、抗原特異的様式で頑強なTreg細胞応答を誘導するための新規のアプローチは、抗CTLA−4抗体コーティングされた抗原でパルスされたDCを使用して、その特異的抗原に対する寛容およびTreg細胞を誘導する。抗原でパルスされたDCは、抗CD11c抗体に対する抗CTLA−4抗体の結合の後に、架橋抗CTLA−4抗体でコーティングされる。これらの細胞は、オボアルブミン(ova)もしくはサイログロブリン(Tg)のいずれかでパルスされて、10日前にこれらの抗原で初回免疫されたマウスに静脈内注入される。抗CTLA−4抗体コーティングされたDCを注入されたマウスは、アイソタイプコントロール抗体でコーティングされたDCを受容したマウスと比較して、有意に抑制されたT細胞増殖およびIL−2産生を示したが、同じ抗原でのエキソビボ再刺激によりIL−10およびTGF−β1応答の上昇を示した(図24)。これらのマウスは、CD4+CD25+Treg細胞集団の有意な上昇を示した(図24)。
【0047】
マウス(試験群)がovaで2回免疫され、そして抗CTLA−4コーティングされたovaでパルスされたDCで2回処理され、15日間休止する場合、記憶CD4+T細胞数は、アイソタイプコントロール抗体コーティングされたDCを受容したマウス(コントロール群)と比較してより低下した。記憶CD4+T細胞数は低下したが、これらのマウスは、約70%大きいCD4+CD25+細胞を示した。ナイーブCD25+T細胞(CD4+CD25+CD62Lhigh)数は、試験群とコントロール群とでほぼ同じであったが、記憶Treg細胞(CD4+CD25+CD62Llow)数は、試験マウスにおいてはコントロールマウスと比較して約150%であった(図25)。これらのTreg細胞は、抗原特異的T細胞応答を、ナイーブ表現型によるCD4+CD25+Treg細胞と比較して、より強く抑制し得る(図26)。このことは、試験群において産生された多数の記憶細胞がTreg細胞表現型を有し、そしてそれらが寛容を維持するのに重要であることを示唆する。
【0048】
60%を超えるNODマウスが、20週齢以内に自発性糖尿病(グルコースレベル、>250g/dl)を発症した。最近、抗CTLA−4 コーティングされたDCアプローチをNODマウスにおいてインビトロで試験した。3つのGAD−65ペプチド(GAD206−226、GAD217−236およびGAD286−300)のプール(これは、NODマウスにおける自己反応性T細胞に対する一次および初期標的である)を、糖尿病マウスから回収したT細胞を用いたインビトロ実験における抗原として使用した。図27に示されるように、数は少ないが、これらのペプチドに対する自己反応性T細胞は、糖尿病マウス中に存在した。前糖尿病マウスから回収されたDC(LPSおよびTNF−αでエキソビボにおいて処理された)を、これらのペプチドでパルスし、(BiAbアプローチを用いて)抗CTLA−4抗体でコーティングし、糖尿病マウス由来のCD3+T細胞に対して試験した。図28に示されるように、抗CTLA−4抗体コーティングされたDCは、コントロール抗体でコーティングされたDCと比較して、T細胞応答を有意に抑制した。これらの結果は、DC結合抗CTLA−4抗体による免疫学的シナプスにおけるCTLA−4の結合が、NODマウスにおいてさえネガティブシグナルを送達し、Treg細胞の分化を誘導することを示唆する。
【0049】
上記の観察は、異なる手段によってTreg細胞が産生され得ることを示す。種々の条件下で異なって産生されたTreg細胞の表現型(およびその阻害性の性質)は、多様であり得る。例えば、上記のように、3つの異なるサイトカイン誘導パターン(TGF−β1単独、TGF−β1、IL−4およびIL−10、またはIL−10単独)を有するCD4+CD25+Treg細胞集団が、3つの異なる実験において観察された。これは、CD4+CD25+Treg細胞は単一の集団を含むように見えるが、機能的および/または表現型的に異なる下位集団が存在し得ることを示唆する。例えば、抗CTLA−4抗体コーティングされた、ovaまたはTgでパルスされたDCは、記憶表現型を伴う頑強なCD4+CD25+Treg細胞応答を誘導した(図25)。
【0050】
(実施例2:二重特異性抗体を使用したCTLA−4結合を介した組織特異的寛容誘導(図2))
二重特異性抗体を用いたCTLA−4結合の、組織式特異的寛容を誘導する治療上の潜在力を、甲状腺刺激ホルモンレセプターに対して特異的な抗体に結合した抗CTLA−4抗体を使用して調べた。インビボ投与の後、この二重特異性抗体(BiAb)は、マウスサイログロブリン(mTg)で免疫されたマウスにおいて、甲状腺に蓄積され、実験的自己免疫性甲状腺炎(EAT)の発祥を防止した。BiAb処置マウス由来のリンパ球は、mTg再刺激に応じて増殖し、IL−2、IFN−γおよび腫瘍壊死因子(TNF)−αを産生するその能力において、未処置マウス由来のリンパ球と比較して、有意な減少を示した。さらにBiAb処置マウスは、抗mTg抗体応答、甲状腺のリンパ球浸潤、および濾胞破壊の抑制を示した。BiAbは、甲状腺を標的し、おそらくCTLA−4の結合を促進し、CD4+CD25+T細胞の数の増加をもたらした。これらの調節性T細胞は、インビトロのmTg特異的T細胞応答を抑制し、これはトランスフォーミング成長因子(TGF)−β1産生の増強に関連した。TGF−β1の中和は、BiAb処置マウス由来のT細胞のmTg特異的インビトロ増殖、およびBiAb処置マウス由来のT細胞によるIL−2産生を増加させた。活性化自己反応性T細胞上に発現されたCTLA−4の、甲状腺に密接した結合は、調節性T細胞の数、およびTGF−β1を産生する能力を上昇させ、それに伴ってIFN−γおよびTNF−αを減少させ、EATの抑制をもたらす。
【0051】
抗CTLA−4抗体でコーティングされた同種異系細胞は、炎症誘発性サイトカインIFN−γおよびIL−2の抑制ならびに調節性サイトカインIL−10、TGF−βおよびIL−4のアップレギュレーションを介して、おそらく活性化T細胞上のCTLA−4の結合を介して、免疫反応性低下を誘導した。アロ抗原による再チャレンジは無反応性を破ることはできないが、高濃度の外因性IL−2、飽和濃度の中和性抗TGF−β1抗体および抗IL−10抗体、抗CTLA−4抗体遮断の存在下で、ならびにCD4+CD25+Treg細胞の枯渇によって、一過性の寛容からの回復が観察された。寛容マウス由来のCD4+CD25+CTLA−4highTreg細胞は、抗原初回免疫マウス由来のCD25−T細胞のエフェクター機能を抑制した。抗原初回免疫マウスへのこれらのTreg細胞の養子免疫転移は、有意に減少したアロ抗原特異的応答をもたらした。さらなる特徴づけは、免疫表現型(CD62L−)を有するTreg細胞が、アロ抗原特異的T細胞応答の抑制においてより協力であることを実証した。これらの結果は、CTLA−4の標的化された結合が、移植片拒絶の防止に関する治療上の潜在力を有することを示す。膵臓島へのBiAbのコーティングは、島へのT細胞応答を抑制し得る(図10、11、12および13)。
【0052】
図3、4、5および6は、寛容を誘導した二重特異性抗体(標的特異的抗体+抗CTLA−4抗体)が、調節性T細胞産生の増加に関連することを示し、そしてこれらの節性T細胞のエフェクターT細胞への効果を示す。これらの結果はまた、標的特異的T細胞寛容を誘導したBiAbが、特異的免疫調節性T細胞に関連することを示す。このことは、BiAb処置動物の、BiAbコーティングされた細胞上に発現されていない他の抗原に応答するそれらの能力を保持する能力を介して示された。
【0053】
(実施例3:T細胞寛容は、標的化CTLA−4結合により誘導される)
BiAb療法を通じて誘導された免疫抑制をさらに特徴付けするため、コントロール抗体またはCTLA−4抗体でコーティングされた同種異系mM12細胞を、CBA/Jマウスに注入した。1つの群(BiAb処理群2)のマウスは、チャレンジ免疫の間のみ抗CTLA−4コーティングされたmM12細胞を受容し、第二の免疫応答の間にT細胞応答が制御され得るか否かを試験した。図14に示されるように、コントロール抗体でコーティングされたmM12細胞で免疫されたマウス由来の脾臓細胞は、mM12細胞によるエキソビボ再刺激において、強力なT細胞増殖性、IL−2およびIFN−γの応答を示したが、抗CTLA−4抗体コーティングされたmM12細胞で両方の時間または第二の免疫の間のみ免疫されたマウスは、有意に減少したT細胞増殖、IL−2およびIFN−γの応答を示した。興味深いことに、CTLA−4結合によって誘導された自己免疫抑制は、IL−4、IL−10およびTGF−β1の産生の増加に関連した(図14b)。抗CTLA−4抗体コーティングされたmM12細胞を受容したマウス由来の脾臓細胞は、コントロール抗体でコーティングされたmM12細胞を受容したマウス由来の脾臓細胞と比較して、これらのサイトカインの約3〜4倍高いレベルを示した。CTLA−4結合による炎症誘発性サイトカイン(例えば、IFN−γおよびIL−2)の低レベルの産生ならびに調節性サイトカイン(TGF−β1、IL−10およびIL−4)の産生の増加は、抗CTLA−4抗体コーティングされた同種異系細胞を受容したマウスにおけるアロ反応の抑制において、重要な役割を果たしているようにみえる。
【0054】
(実施例4:CTLA−4結合で誘導される免疫抑制は持続性である)
図7、8、および9は、BiAbに誘導された免疫寛容が持続的であり、標的細胞に特異的であることを示す。1つの標的に誘導された寛容は、別の標的に対して免疫系の能力への効果を有さない。
【0055】
抗原特異的無反応性の持続性を試験するため、マウスから、それらの最後のBiAb処理受けた10日後に、脾臓細胞を回収した。これらの脾臓細胞をM12細胞でインビトロにおいて5日間刺激した。これらの培養物から細胞を回収し、M12細胞による再刺激に応答するそれらの能力について試験した。寛容マウス由来の脾臓細胞は、エキソビボ再チャレンジにおいて、寛容からの回復の徴候を示さず、M12細胞による三次刺激に応じて、増殖または有意な量のIL−2を産生することはできなかった(図15aおよびb)。しかし、試験群由来の細胞およびコントロール群由来の細胞の両方は、分裂促進刺激(ConA)に応答し、このことは明らかに、細胞が生存可能であり、増殖し得ることを示す。これらの結果は、CTLA−4結合により誘導されたアロ抗原に対する寛容が、エキソビボアロ抗原チャレンジによって容易に逆転し得ることを示唆する。次に、CTLA−4結合によって誘導された寛容が、アロ抗原によるインビボチャレンジによって逆転し得るか否か、そしてそれが長期持続性であるか否かを試験するため、コントロール(mM12免疫)マウスおよび試験(BiAb処理)マウスの両方を、50日間そのままにし、60日目にM12細胞でチャレンジし、これらのマウス由来の脾臓細胞を、エキソビボM12再刺激に対するそれらの応答について試験した。図15bに示されるように、寛容(BiAb処理)マウス由来の脾臓細胞は、M12細胞に対するその応答に上昇を示さなかった。このことは、CTLA−4結合によって誘導された寛容が、アロ抗原によるインビボチャレンジ後でさえも維持されることを示唆する。
【0056】
(実施例5:標的化されたCTLA−4結合により誘導される寛容は、標的特異的である)
CTLA−4結合による抗H2d免疫応答の抑制の特異性を、BiAbコーティングされたmM12細胞であらかじめ免疫されたマウスを、(a)異なるマウス系統(C57BL/6マウス、H2b)由来の脾臓細胞、(b)脾臓細胞(Balb/cマウス、H2d)および無細胞系(Ag8、H2d)で、第20日目;第30日目において免疫することによって、試験した。これらのマウスを、C57BL/6マウスおよびBalb/cマウス由来の脾臓細胞、Ag8およびM12細胞による再刺激に対するT細胞増殖およびIL−2産生について試験した。抗CTLA−4抗体コーティングされたmM12細胞で免疫されたマウスおよびコントロール抗体でコーティングされたmM12細胞で免疫されたマウスは、C57BL/6脾臓細胞に対して同じレベルのT細胞増殖およびIL−2応答を示した(図16a)。しかし、Balb/c脾臓細胞およびAg8細胞に対する応答のパターンは、mM12細胞で刺激された場合に示されたパターンとほぼ同様であった(図16bおよびc)。これらの結果は、CTLA−4結合によってH2dアロ抗原に対する免疫応答の間に誘導されるT寛容が、標的特異的であり、同じ抗原(すなわちH2d)を保有する細胞に対して有効であるが、他の抗原を保有する(すなわち、H2b)細胞に対して有効でないことを示唆する。
【0057】
(実施例6:CD4+CD25+T細胞は、寛容マウスにおいて選択的に増殖する)
寛容誘導がCD4+CD25+T細胞の変化に関与していたか否かを知るため、ナイーブマウス、コントロールマウスおよび寛容マウスを第20日目に屠殺し、マウス由来のリンパ節細胞と脾臓細胞とをフローサイトメトリーによってCD4+CD25+集団について分析した。tBiAb処置(寛容)マウスにおいて脾臓およびLNの両方に、CD4+CD25+T細胞のパーセンテージにおける有意な増加が観察されたが、コントロールマウスにおいては観察されなかった(図17)。寛容マウス由来のリンパ様細胞におけるCD4+CD25+T細胞のパーセンテージの増加が単にCD4+CD25−T細胞の減少に起因するものであるか否かを試験するため、CD4+T細胞集団内のCD4+CD25+細胞およびCD4+CD25−T細胞の両方のパーセンテージならびに脾臓中のCD4+CD25+細胞およびCD4+CD25−T細胞の絶対数を測定した。図17aに示されるように、コントロールに対して、寛容マウスにおけるCD4+T細胞中において、CD4+CD25+T細胞のかなりの増加があった。しかし、T細胞集団内のCD4+CD25−T細胞の数には、処置マウスと未処置マウスとで有意な差はなかった。BiAb処置マウス由来の脾臓におけるCD4+CD25+T細胞の絶対数に、コントロールマウス由来の細胞数と比較して、有意な増加があった。例えば、コントロールマウスは、脾臓あたり、平均で1.74×107のCD4+CD25−細胞および1.62×106のCD25+T細胞を示すが、寛容マウスは、平均で1.76x107のCD4+CD25−細胞および2.5x106のCD25+T細胞を示した。CD25+T細胞における同様の増加はまた、寛容マウスのリンパ節においても観察された。
【0058】
CTLA−4がCD4+CD25+T細胞上に構成的に発現され、そしてインビボおよびインビトロにおけるCD4+CD25+T細胞の調節性活性の媒介に関与することが示された。CD4+CD25+T細胞上でのCTLA−4発現が決定された。図17bに示すように、寛容マウス由来のCD4+CD25+T細胞は、コントロールマウスもしくはナイーブマウス由来のCD4+CD25+細胞と比較して、CTLA−4の増加した発現を示した。
【0059】
(実施例7:エキソビボチャレンジによるBiAb処置マウスにおけるT細胞表現型)
BiAb処置マウス由来の脾臓細胞の表現型変化を試験するため、脾臓細胞を標的(M12)細胞とともにインキュベートし、そして異なる時点において種々のマーカーについて試験した(図18)。初期活性マーカーCD69を発現する細胞の数は、BiAb処置マウス由来の脾臓細胞において、刺激の24時間後、コントロール免疫マウスと比較して有意に少なかった(図18a)。種々のサイトカイン分泌細胞の数を、刺激の36時間後、細胞内染色によって決定した。IFN−γ分泌T細胞の数は、寛容マウスと比較してmM12免疫マウスにおいて有意に多かったが、より多くのIL−4、IL−10およびTGF−β1産生細胞が寛容マウスにおいて観察された(図18b)。記憶マーカーCD62Lの発現を、刺激の5日後に試験した。この記憶マーカーを発現するT細胞の数は、コントロールと比較して、BiAb処置マウス由来のCD3+細胞において有意に少なかった(図18c)。調節性T細胞表現型を試験するため、類似の培養物由来の細胞を徹底的に洗浄し、3日間静置し、そしてCD25発現について分析した。寛容マウス由来の脾臓細胞におけるCD25を発現するCD4+細胞の数は、コントロール免疫マウスのほぼ2倍であった(図18d)。
【0060】
寛容マウスおよびコントロールマウス由来のCD4+T細胞およびCD8+T細胞の両方による、M12細胞に対する増殖応答を、CFSE希釈アッセイによってエキソビボでモニタリングした。CFSE染色された脾臓細胞を、M12細胞とともに7日間インキュベートし、そしてPE標識された抗CD4抗体もしくは抗CD8抗体で染色した後にCFSE希釈について分析した。図18eに示されるように、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の両方の増殖応答は、免疫コントロールと比較して、寛容マウス由来の脾臓細胞において有意に低い。ナイーブマウス由来のCD4+T細胞およびCD8+T細胞の両方は、長期にわたる細胞分裂を示したが、寛容マウスおよびナイーブマウスの両方に由来するこれらの細胞によって経験される分裂数は、ほぼ同じであるようにみえた。このことは、寛容マウス由来の全てのアロ抗原反応性T細胞が寛容化されていなくともよく、そして抗原反応性エフェクター細胞は、寛容化マウスになお存在し得ることを示唆する。
【0061】
(実施例8:外来性IL−2は、アロ抗原に対する無反応性を部分的に逆転したが、寛容を逆転しなかった)
外来性IL−2がCTLA−4結合により誘導された寛容を逆転し得るか否かを試験するため、M12細胞および種々の量の組換えマウスIL−2(rmIL−2)を、種々のマウスの脾臓細胞に加えた。図17は、外来性に加えられたrmIL−2の非存在下もしくは存在下のいずれかにおける、抗原性の再刺激後の脾臓細胞の増殖性応答ならびにrmIL−2単独での応答を示す。少量のrmIL−2の添加は寛容化マウス由来のT細胞の有意な増殖を誘導しなかったが、部分的な回復(コントロールマウスと比較して60%まで)が、高濃度のrmIL−2の存在下で観察された。さらに、反応性低下状態は、IL−2およびアロ抗原の両方の存在下においてのみ逆転されたが、アロ抗原またはIL−2単独では逆転されなかった。このことは、反応性低下は、抗原と過剰なレベルのIL−2とが同時に存在する場合にのみ逆転され得ることを示唆する。
【0062】
寛容マウス由来のT細胞によるアロ抗原に対する三次応答を評価するため、上記の培養物由来のエフェクター細胞(図19a)を第5日目において回収し、洗浄し、静置し、新鮮な標的M12細胞とともにインキュベートした。興味深いことに、寛容T細胞は、IL−2およびアロ抗原に反応して増殖するが、その後の三次刺激におけるアロ抗原との遭遇の間、なお無反応性であっ(図19b)。このことは、これらの細胞が寛容を維持し続けており、寛容(増殖によって測定される)の逆転は高レベルのIL−2およびアロ抗原の存在下においてのみ起こることを示す。
【0063】
(実施例9:IL−10およびTGF−β1は、寛容マウス由来のT細胞の反応性低下に重要な役割を果たす)
標的化されたCTLA−4結合による寛容誘導において、IL−4、IL−10およびTGF−β1の増加ならびにIFN−γのような炎症誘発性サイトカインの減少があった。CTLA−4結合によって誘導される阻害効果がこれらの阻害性サイトカインに依存するか否かを決定するため、それらに対する中和性抗体をエキソビボで細胞培養物に添加した。図19cに示されるように、IL−4の遮断は、M12刺激に対する寛容細胞の増殖性応答に何も有意な効果を示さなかったが、抗体の飽和濃度におけるIL−10の中和は、(中和抗体の非存在下でのコントロール脾臓細胞と比較して)反応性低下からの部分的な回復をもたらした。しかし、TGF−β1に対する中和抗体単独または抗IL−10抗体との組み合わせは、T細胞の、反応性低下からのほぼ完全な回復をもたらした(図19c)。中和抗体の存在下において増殖し得る細胞は、三次刺激内容物において抗体が除去されて新鮮な標的細胞が使用された後、反応性低下をとった。
【0064】
(実施例10:CD4+CD25+T細胞上のCTLA−4は、寛容の維持に重要である)
図17bで観察されるように、寛容マウス由来のCD4+CD25+T細胞は、その表面に増加したレベルのCTLA−4が発現される。増加したCTLA−4発現の寛容に対する役割を試験するため、抗CTLA−4抗体の遮断性F(ab)フラグメントを種々の濃度で添加した。飽和濃度での抗CTLA−4 F(ab)の添加は、T細胞の、反応性低下からのほぼ完全な回復をもたらした(図19c)。このことは、標的細胞上のB7分子によるCTLA−4の直接的結合が、アロ抗原に対する反応性低下を開始させるために必要であり得ることを示唆する。
【0065】
(実施例11:GM−CSF誘導DCは、半成熟表現型を維持する)
DCの成熟に対するGM−CSF処置の効果を決定するため、MHCクラスIIおよび同時刺激性分子の発現、ならびにmTg免疫の前後に、GM−CSF処置マウスおよび未処置マウスから単離されたDCからの炎症誘発性サイトカインの産生を分析した。GM−CSFで処理されたマウス由来の脾臓は、未処置コントロール(3.61 %)と比較して、増加した数のCD11c+細胞(7.51%)を示した(図29A)。樹状細胞数の増加にもかかわらず、MHCクラスII、B7.1、B7.2およびCD40の発現レベルは、mTgでの免疫後、GM−CSF処置マウスおよび未処置マウスの両方において類似していた(図29B)。しかし、RT−PCRによって評価された炎症誘発性サイトカイン(例えば、TNF−α、IL−12およびIL−1α)は、GM−CSF処置mTg免疫マウス由来のDCと比較して、未処置mTg免疫マウス由来のDCにおいて有意に高かった(図29C)。これらのデータは、GM−CSF処置由来のDCは、mTg免疫後に半成熟状態を維持するが、未処置マウスにおいてはそうではないことを意味すると解釈される。
【0066】
(GM−CSF処置マウス由来のCD4+CD25+T細胞は、インビボにおける抗mTg応答を抑制する)
GM−CSF処置マウス由来のCD4+CD25+T細胞がインビボにおけるmTg特異的自己免疫応答を抑制し得るか否かを決定するため、GM−CSF処置およびmTg初回刺激をされたマウス由来の精製されたCD4+CD25+T細胞を、mTgで初回刺激された未処置マウスに養子免疫転移した。図30Aに示すように、GM−CSF処置マウス由来のCD4+CD25+T細胞を受容するマウスは、mTgコントロールマウスと比較して、有意に低いmTg特異的増殖を示した(p=0.021)。種々のマウス群由来の脾臓細胞によるmTg誘導性サイトカイン産生の分析は、CD4+CD25+T細胞レシピエントおよび非レシピエントmTgコントロールマウスの両方において、同様のレベルのIFN−γを示した(図30B)。対照的に、レシピエントマウス由来の細胞は、非レシピエントmTg初回刺激マウスに対して、有意に多い量のIL−4(p=0.045)およびIL−10(p=0.035)を産生した(それぞれ、図30CおよびD)。
【0067】
(CD4+CD25+T細胞によって産生されたIL−10は、mTg特異的T細胞応答を抑制するために重要である)
GM−CSF誘導性CD4+CD25+T細胞によって産生されたIL−10がmTg特異的T細胞応答を抑制することの原因であるか否かを決定するため、未処置mTg初回刺激マウス由来のT細胞を、mTg初回刺激GM−CSF処置マウス由来のCD4+CD25+T細胞と、抗IL−10レセプター(αIL−10R)mAbもしくはアイソタイプコントロールの存在下において共培養した。ナイーブマウス由来のT細胞枯渇脾臓細胞(図31A)または単離DC(図31B)を、フィーダー細胞として使用した。図31に示すように、アイソタイプコントロールAbの存在下でmTg初回刺激GM−CSF処置マウス由来のCD4+CD25+T細胞とともに培養されたmTg初回刺激T細胞は、コントロールと比較して、減少したCFSE希釈(2.42%および11.46%と比較して、それぞれ0.72%および8.18%)によって示されるように、低下したmTg特異的T細胞増殖を示した。しかし、この応答は、αIL−10R mAbの存在下では、コントロールレベルをとるかまたはより高いレベルをとった(すなわち、2.15%および16.62%)。CD4+CD25+T細胞によって産生されたIL−10は、mTg特異的増殖を抑制するために必要である。
【0068】
(αIL−10R mAbによる処置は、EATのGM−CSF誘導性抑制を無効にする)
EATのGM−CSF誘導性抑制におけるIL−10の役割を調べた。IL−10の効果を、疾患誘導の間の種々の時間におけるGM−CSF処置マウスに対する飽和濃度のαIL−10R mAbの投与によって、遮断した。投与時間にかかわらず、GM−CSF処置の直後にαIL−10R mAbで処置された一部のマウス(すなわちGM−CSF/αIL−10R #2)を除いて、αIL−10R mAbを受容したほぼ全ての動物が、GM−CSFとアイソタイプコントロールmAbとを受容したマウスに対して、増加したmTg特異的増殖を示した。増殖における有意な増加は、GM−CSF処置後5日目αIL−10R mAbを受容するマウス(すなわち、GM−CSF/αIL−10R #3)、または疾患の経過全体にわたってαIL−10R mAbを受容するマウス(すなわち、GM−CSF/αIL−10R #1)において見出された(それぞれ、p=0.001およびp=0.005)(図32A)。αIL−10R mAbの投与の時間にかかわらず、全GM−CSF処置マウスにおいてCD4+CD25+T細胞の頻度の増加が観察された(図32B)。このことは、IL−10の遮断が、GM−CSF誘導性DCによるこれらの細胞の増殖に効果を有さないことを示唆する。
【0069】
図32Cおよび表1に見られるように、マウスのαIL−10R mAb群由来の甲状腺は、GM−CSF処置の直後にαIL−10R mAbで処置された一部のマウス(すなわちGM−CSF/αIL−10R #2)を除いて、GM−CSF/アイソタイプコントロール群のマウスに由来する甲状腺と比較して、より重篤なリンパ球浸潤を示した。IL−10は、GM−CSF誘導性疾患抑制の主要な伝達物質である。
【0070】
(甲状腺微小環境に対するGM−CSF処置の効果)
標的器官に対するGM−CSFの効果を、処置マウスの甲状腺における細胞型およびサイトカイン産生によって調べた。GM−CSF処置は、末梢におけるCD8a−DCの増殖をもたらした(図29A)。しかし、この増殖は、甲状腺内部を反映していなかった。対照的に、未処置マウスに対して、GM−CSF処置マウスの甲状腺におけるCD4+CD25+T細胞のパーセンテージの増加があった(それぞれ、24.57%および20.06%)(図33A)。以前の研究は、MCP−1が優先的にCD4+CD25+T細胞を甲状腺に誘引し、一方RANTESは優先的にCD4+エフェクターT細胞を誘引することを示している。これら2種のケモカインのレベルを試験した。MCP−1産生は、全ての実験群の間で同等であったが、RANTESは検出できなかった。これらのことは、これらのケモカインが、観察されたGM−CSF処理甲状腺におけるCD4+CD25+T細胞の頻度の増加を説明しないことを示唆する。
【0071】
甲状腺細胞および甲状腺残留リンパ球によるサイトカイン産生を定量した。mTgコントロールマウスと比較して、IFN−γ産生のわずかな減少を伴うIL−10産生のわずかな増加がGM−CSF処置マウスにおいて観察されたが(図33B)、これらの差異は、有意ではなかった。
【0072】
数件の研究は、HTにおける甲状腺細胞破壊が、増加されたカスパーゼ発現を介したFas媒介性アポトーシスに起因することを示唆している。甲状腺細胞におけるFasおよびFasリガンド(FasL)、ならびにカスパーゼ8の発現レベルが、RT−PCRによって試験された。CFAおよびmTgコントロールマウスと比較して、GM−CSF処置マウスにおけるFas発現にわずかな増加が観察されたが、いずれの群においても、検出可能なFasL発現はなかった。さらに、種々のマウスの群の間で、カスパーゼ8の発現レベルにおける大きな差はなかった(図33C)。
【0073】
GM−CSF処置がEATの抑制を引き起こし得る機構を調べた。GM−CSFがDCを増殖させ、それらをインビボで半成熟状態に維持し、CD4+CD25+T細胞の増殖を促進し、そしてEAT抑制に必要なより高いレベルのIL−10産生を誘導する。これらの結果はさらに、GM−CSF処置がCD8a−DCおよびCD4+CD25+調節性T細胞を増殖させて、EATを抑制させ得るという結果をもたらす。
【0074】
DC機能は伝統的に、一次T細胞応答の誘導に関与するが、それらが末梢寛容に重要な役割を果たすという証拠が増加しつつある。DCは、数段階の成熟段階を経るものであり、そして初期の研究は、半成熟DCが調節性T細胞の誘導および増殖に重要な役割を果たすことを示した。GM−CSF処置は、調節特性を有するCD4+CD25+T細胞の頻度の増加をもたらしたので、GM−CSFがDC成熟に影響を及ぼすことによりその効果を発揮したか否かを試験した。GM−CSF処置マウス由来のDCは、未処置mTgコントロールマウスと比較してMHCクラスIIおよびB7分子の高レベルの発現、および炎症誘発性サイトカインの低レベルの発現によって示されるような、半成熟表現型を示した。このことは、GM−CSF処置がおそらく、調節性T細胞の産生を補助することが知られている半成熟DCの増殖を介して、寛容を誘導および/または促進したことを示唆する。
【0075】
初期のレポートは、低濃度のGM−CSF中で骨髄前駆細胞を培養することによって産生されたDCが、成熟抵抗性であること、およびアロペプチド(allo−peptide)でパルスされたこれらのDCの接種が、インビボで同種移植片生存を延長したことを示した。このようなDCの主な特性の1つは、活性化されない限り有意なレベルのCD25を発現しないIL−10産生性1型調節性T(Tr1)細胞を誘導するこれらの能力である。しかし、他の研究は、未成熟DCおよび他の免疫寛容を生じるDCがIL−10産生性CD4+CD25+調節性T細胞の増殖を補助し得、これらがTr1細胞の誘導および分化において重要な役割を果たし得ることを、明らかに示している。
【0076】
数種の型の調節性T細胞が記載されており、各々、特異的な表面表現型およびサイトカインプロフィールを有するが、天然に存在するCD4+CD25+調節性T細胞(末梢CD4+T細胞の5〜10%を構成する)は、中枢性の寛容を逃れる自己反応性T細胞の優勢な抑制因子である。GM−CSF処置マウス由来のCD4+CD25+T細胞は、インビトロでエフェクターT細胞のmTg特異的増殖応答を抑制し得ることが実証された。しかし、未処置であるがmTgで初回刺激されたマウスに由来するCD4+CD25+T細胞は、同様のmTg特異的応答の抑制を示すことができなかった。GM−CSF処置マウス由来のリンパ球のインビトロ培養物中のCD4+CD25+T細胞の枯渇は、mTg特異的増殖を復活させた。このことは、エフェクターT細胞は、それらが未処置mTg初回刺激マウスで産生されたのと同様にGM−CSF処置マウス中で産生されるが、それらの機能は、GM−CSF処置マウスにおいて誘導/増殖されたCD4+CD25+T細胞によって抑制されたことを示した。GM−CSF処置マウスからmTg初回刺激マウスへのCD4+CD25+T細胞の養子免疫転移は、mTg初回刺激非レシピエントと比較して、mTg特異的増殖の有意な抑制をもたらした。この抑制性特性は、この集団が主にCD4+CD25+調節性T細胞から構成されていたことを示唆した。さらに、レシピエントマウス由来のリンパ球は、mTgによるインビトロ刺激によって、mTg初回刺激コントロールと比較して、より高レベルのIL−10およびIL−4を産生した。このことは、養子免疫転移されたCD4+CD25+T細胞が、GM−CSF処置ドナーマウスにおいて見られるような、レシピエントエフェクターT細胞に対する抑制性効果を発揮したことを示した。
【0077】
GM−CSF誘導性CD4+CD25+T細胞によるmTg特異的応答の抑制の機構を探索するため、さらなる研究を行った。GM−CSF処置マウスにおけるCD4+CD25+T細胞の増殖および機能の両方におけるIL−10の役割を試験した。αIL−10R抗体を使用したインビボでのIL−10機能の遮断は、GM−CSF処置マウス由来のCD4+CD25+T細胞のインビトロにおけるmTg特異的T細胞応答に対する抑制性効果を逆転させた。このことは、EATのGM−CSF誘導性抑制におけるこのサイトカインの重要な役割を示唆する。インビボでのIL−10機能の遮断は、GM−CSFの疾患抑制効果を無効にし、EATの発生を可能にした。疾患発達の間の種々の時点におけるαIL−10R抗体による処置の開始は、IL−10がインビボにおけるCD4+CD25+T細胞の誘導および/または増殖に必要であること、ならびにそれが自己反応性エフェクターT細胞機能を抑制し、結果としてEATの抑制をもたらすためにのみ必要とされるのか否かを示した。処置の時間にかかわらず、IL−10の遮断は、大多数のマウスにおいてEAT抑制能を無効にした。興味深いことに、CD4+CD25+T細胞の数は、αIL−10R抗体処置にかかわらず、未処置マウスと比較して、全てのGM−CSF処置マウスにおいてより多かった。IL−10は、CD4+CD25+T細胞の増殖のために必須ではない。しかし、これらの調節性T細胞によって産生されたIL−10は、エフェクターT細胞の抑制のために重要である。
【0078】
(表I:GM−CSF誘導性EAT抑制に対する抗IL−10R Abの効果)
【0079】
【表1】
材料および方法に記載されるように、マウスをGM−CSFで処置し、mTgで免疫し、そしてさらに抗IL−10R mAbもしくはアイソタイプコントロールAbで処理した。これらのマウスをコントロールマウスとともに第45日目に屠殺し、屠殺と同時にマウスから甲状腺を回収し、ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋し、そして組織学的H&E染色のために薄切した。材料および方法に記載されるように、甲状腺炎細胞浸潤指数を決定した。αIL−10R mAb処置マウスとアイソタイプコントロールマウスとを比較することによって、p値を計算した。
【0080】
IL−10は、炎症の重要な調節因子であり、これは、炎症誘発性サイントカインおよびT細胞の増殖応答の抑制を介して、Th1型およびTh2型両方の免疫応答を阻害し得る。T細胞のIL−10媒介性抑制の主要な機構の1つは、CD28同時刺激経路の選択的阻害を介する。しかし、甲状腺炎において、IL−10の作用の代替的機構は提唱されている。IL−10をコードするcDNA発現ベクターの甲状腺への注入は、リンパ球浸潤およびEATの発生を顕著に阻害して疾患の進行を妨げ得る。IL−10のこの抑制効果は、以下のいずれかを介して媒介される:甲状腺細胞上のFasリガンド発現の増強と甲状腺浸潤リンパ球の活性化誘導性細胞死の誘導、または抗アポトーシス分子(例えば、cFLIPおよびBcl−xL)の強力なアップレギュレーション(これらは、甲状腺細胞のCD95誘導性アポトーシスを防止し得る)。反対に、mTg初回刺激マウスの甲状腺へのIL−1およびTNF−αの直接注入は、甲状腺細胞のアポトーシスを誘導し、炎症誘発性サイトカインが甲状腺破壊に重要な役割を果たすことを示した。これは、IL−10が、炎症誘発性サイトカイン産生の抑制を介してその効果を媒介しているかもしれないという可能性を浮上させた。
【0081】
GM−CSF処置マウスにおける増加したIL−10応答が、甲状腺微小環境に対する何らかの効果を有するか否かを知るため、GM−CSF処置マウスの甲状腺における種々のアポトーシス誘発性(pro−apoptotic)分子の発現レベルを試験した。GM−CSF処置マウスの甲状腺において、CD4+CD25+T細胞およびIL−10の産生の頻度の増加があったが、GM−CSF処理マウスの甲状腺と未処置mTgコントロールマウスの甲状腺との間に、アポトーシス誘発性分子の発現における有意差はなかった。EATのGM−CSF媒介性抑制は、主に、mTg特異的エフェクターT細胞に対するIL−10の直接的効果に起因する。
【0082】
まとめると、半成熟DCのGM−CSF誘導性増殖およびこれらのDCによるサイログロブリンペプチド提示は、CD4+CD25+調節性T細胞の増殖をもたらした可能性がある。これらの調節性T細胞によって産生されたIL−10が、mTg特異的T細胞の自己免疫エフェクター機能を阻害し、結果としてEATを抑制した。これらの結果は、EAT、およびEATと同様の病因を有する他の自己免疫疾患における、GM−CSFの治療上の潜在力を示す。
【0083】
(実施例12.CTLA−4結合を介した寛容誘導)
CTLA−4(CD 152)は、T細胞活性化をダウンレギュレートすることおよびリンパ球ホメオスタシスを維持することに積極的に関与する。CTLA−4の標的化された結合は、T細胞応答を下方調節してアロ免疫応答および自己免疫応答を抑制し得る。標的化されたCTLA−4結合は、Ag特異的CD4+CD25+CTLA−4high調節性T細胞(Treg細胞)集団の選択的誘導を介した特異的標的に対する免疫寛容を誘導し得る。抗CTLA−4 Abでコーティングされた同種異系細胞は、炎症誘発性サイトカインIFN−γおよびIL−2の抑制、そして調節性サイトカインIL−10、TGF−β1、およびIL−4のアップレギュレーション(おそらく、活性化T細胞へのCTLA−4の結合を介する)を介して、免疫反応性低下を誘導した。アロ抗原による再チャレンジは無反応性を破ることはできなかったが、高濃度の外来性IL−2、飽和濃度の中和性抗TGF−β1および抗IL−10 Ab、抗CTLA−4抗体遮断の存在下で、そしてCD4+CD25+Treg細胞の枯渇によって、寛容からの一過性の回復が観察された。寛容マウス由来のCD4+CD25+CTLA−4highTreg細胞は、Ag初回刺激マウス由来のCD25−T細胞のエフェクター機能を抑制した。Ag初回刺激マウスへのこれらのTreg細胞の養子免疫転移は、顕著に低下したアロ抗原特異的応答をもたらした。さらなる特徴づけは、記憶表現型(CD62L−)を有するTreg細胞が、アロ抗原特異的T細胞応答の抑制においてより強力であったことを実証した。この標的化されたCTLA−4結合は、移植片拒絶の防止のための治療上の潜在力を有する。
【0084】
アロ抗原特異的T細胞寛容は、移植片拒絶の予防における主な目標の1つである。Ag特異的パターンにおいて同種反応性T細胞を標的するようなより指向的な(directed)治療の探索は続くが、非特異的な免疫抑制薬は、現在の治療戦略の中心となる。T細胞応答性低下の誘導またはT細胞寛容の誘導は、慢性の免疫抑制薬の必要のない持続性の移植片生存を促進することにおいて、可能性を維持する。
【0085】
成熟Tリンパ球の活性化は、TCR複合体のAg特異的誘発およびCD28−B7.1/B7.2経路を通して仲介される同時刺激の両方を必要とする、多工程のプロセスである。CD28リガンド、CD80(B7.1)およびCD86(B7.2)は、APC上に見出され、そしてこれらのT細胞上のCD28への連結は、IL−2のアップレギュレーションおよび細胞周期を通した進行をもたらす。CTLA−4は、CTLA−4ノックアウトマウスにおいて見られる致死性のリンパ球増殖によって証明される、T細胞活性化の重要なインヒビターである。B7/CD28経路は、T細胞ホメオスタシスにおいて主な役割を果たし、そしてこの経路の操作は、臨床適用で免疫応答を調節するための強力な戦略として出現している。抗原性刺激の存在下でのこの同時刺激の経路の阻害は、T細胞アネルギーをもたらし得る。これは、CD86および/またはCD80をブロックすることによって同種移植片拒絶を予防し、それによって移植片生存の延長をもたらすために動物モデルにおいて首尾よく使用されている。Ag刺激と同時のCTLA−4の結合は、T細胞機能を抑制し得るか、またはT細胞応答性低下をもたらし得る。この観察は、TCR−MHC Ag複合体相互作用と同時のCTLA−4の結合が、同時に起こるCD28を通した同時刺激にもかかわらずT細胞活性化の阻害をもたらし得るという、より初期の視点を支持する。同時刺激をブロックすることによって移植片拒絶および自己免疫状態を予防し得るかまたは抑制し得るCTLA−4−Igは、調節性T細胞(Treg細胞)の産生を促進しないと考えられている。CD28/B7同時刺激は、Ag−特異的Treg細胞の産生および維持に必要である。
【0086】
標的細胞と接触している同種反応性T細胞におけるCTLA−4の結合は、T細胞応答を下向き調節(down−modulate)し得る。標的化されたCTLA−4結合は、自己免疫性甲状腺炎のモデルにおいて自己反応性T細胞を下向き調節し得る。このアプローチは、甲状腺Ag特異的寛容を誘導し、この甲状腺Ag特異的寛容は、疾患の抑制をもたらす。
【0087】
アロ抗原認識の間のCTLA−4結合におけるAg特異的寛容誘導の機構を、本明細書中で分析する。この寛容誘導系において、甲状腺刺激ホルモン(TSH)レセプター発現性M12(H2d)細胞(mM12細胞)を、本明細書中で記載されるように、H2kマウスを刺激するためのアロ抗原供給源として使用した。TSHRおよびCTLA−4に対する特異性を有する二重特異性Ab(BiAb)であって、BiAbの抗TSHR部分がTSHR発現性アロ抗原性mM12細胞に結合し得、CTLA−4に結合する抗CTLA−4部分を残している二重特異性Ab(BiAb)は、攻撃性T細胞上に発現した。寛容誘導は、二次免疫応答の間に達成され得るが、また、そのアロ抗原再チャレンジは、この寛容状態に何ら効果を有さなかった。さらに、この寛容誘導は、CD4+CD25+Treg細胞の下位集団の選択的拡大と関連していた。この選択的拡大は、非寛容マウス由来のT細胞の同種応答を下向き調節し得た。この結果は、以下の通りである。
【0088】
(同種認識におけるCTLA−4の結合は、同種免疫応答を抑制する)
標的化CTLA−4結合がインビボアロ抗原性T細胞応答を阻害するか否かに取り組むため、コントロールAb(cBiAb)でコーティングされたアロ抗原性mM12細胞またはCTLA−4 Ab(tBiAb)でコーティングされたアロ抗原性mM12細胞を、CBA/Jマウスに注射した。1つの群のマウス(BiAb処置群2)に、tBiAbでコーティングされたmM12細胞をチャレンジ免疫の間のみ与えて、二次免疫応答の間T細胞応答が弱められるか否かを試験した。図34に示されるように、コントロールマウス由来の脾臓細胞は、mM12細胞によるエキソビボ再刺激において、強いT細胞増殖、IL−2応答およびIFN−γ応答を示した。しかし、2回とも免疫された処置マウスまたはBiAbでコーティングされたmM12細胞による第二の免疫の間のみ免疫された処置マウスは、T細胞増殖、IL−2応答、およびIFN−γ応答の有為な低下を示した。CTLA−4結合において誘導される同種免疫抑制は、IL−4、IL−10およびTGF−β1の増大に関連していた(図34b)。BiAbでコーティングされたmM12細胞を与えたマウス由来の脾臓細胞は、コントロールであるAbコーティングmM12細胞を与えたマウス由来の脾臓細胞と比較して、これらのサイトカインの約3〜4倍高いレベルを示した。
【0089】
CTLA−4結合において誘導される同種免疫抑制は、持続性である。インビトロのBiAb処置マウス由来のリンパ球の再刺激が寛容を壊すか否かを試験するため、脾臓 細胞を、インビトロでM12細胞によって5日間刺激した。細胞を、これらの培養物から回収し、そしてM12細胞によるさらなる再刺激に対するその応答を試験した。これらの細胞は、エキソビボ再チャレンジにおいて寛容からの回復の何らの兆候も示さず、M12細胞による三次刺激に対する応答におけるIL−2の有為な量の増殖または産生をしなかった(図35、aおよびb)。しかし、両試験群およびコントロール群のマウス由来の細胞は、細胞分裂性の刺激(Con A)に対して応答し、この細胞が生存可能であり、増殖可能であることを明らかに示した。これらの結果は、アロ抗原に対して標的化CTLA−4結合において誘導される寛容は、エキソビボアロ抗原チャレンジによって容易に逆転しないことを示唆する。
【0090】
インビボのCTLA−4結合によって誘導された寛容の持続時間および逆転可能性を試験した。コントロールマウスおよびBiAb処置マウスを、50日間休ませ、そしてM12細胞でチャレンジし、そしてこれらのマウスからの脾臓細胞を、エキソビボM12再刺激に対して応答する能力について試験した。図35cおよび図35dに示すように、寛容(BiAb処置)マウス由来の脾臓細胞は、M12細胞に対する応答において、何ら増大の兆候を示さなかった。このことは、CTLA−4結合において誘導される寛容は、アロ抗原によるインビボチャレンジ後でさえ維持されることを示唆する。
【0091】
(標的化CTLA−4結合において誘導される寛容は、標的特異的である)
CTLA−4結合における抗H2d免疫応答の抑制の特異性を、異なったT細胞によるBiAb処置CBA/J(H2k)マウスのチャレンジによって試験した。処置後20日目に、これらのマウスに、異なったマウス(C57BL/6マウス、H2b)系統由来の脾臓細胞またはBALB/cマウス由来の脾臓細胞もしくはAg8細胞株(どちらもM12細胞(H2d)に対して同系である)のいずれかを与えた。30日目に、これらのマウスを、C57BL/マウス由来の脾臓細胞およびBALB/cマウス由来の脾臓細胞、Ag8細胞およびM12細胞による再刺激に対する応答におけるT細胞増殖およびIL−2産生について試験した。コントロールマウスおよびBiAb処置マウスは、C57BL/6脾臓細胞に対して同じレベルのT細胞増殖応答およびIL−2応答を示した(図36a)。しかし、BALB/c脾臓細胞およびAg8細胞のこの応答パターンは、M12細胞で刺激した場合に記録した応答パターンとは多少類似していた(図36、bおよびc)。H2dアロ抗原に対する免疫応答の間のCTLA−4結合におけるT細胞寛容は、標的特異的であり、そして同じAgを保有する細胞(すなわち、H2d)に対して有効であるが、他のAgを保有する細胞(すなわち、H2b)に対しては有効でない。
【0092】
(CD4+CD25+T細胞は、寛容マウスにおいて選択的に発現される)
CD4+CD25+T細胞において、寛容誘導がチャレンジと関連するか否かを試験した。ネイティブのマウス、コントロールマウスおよびBiAb処置マウスを、20日目に屠殺し、そしてリンパ節および脾臓細胞を、CD4+CD25+集団についてのフローサイトメトリーによって分析した。CD4+CD25+T細胞の百分率における有為な上昇が、BiAb処置(寛容)マウスにおいて脾臓およびリンパ節の両方で観察されたが、コントロールマウスにおいて観察されなかった(図37)。寛容マウス由来のリンパ細胞におけるCD4+CD25+T細胞の百分率の上昇が、単にCD4+CD25−T細胞の減少に起因するか否かを試験するため、脾臓において、CD4+CD25+T細胞およびCD4+CD25−T細胞の両方における百分率をCD4+T細胞集団内において測定し、そしてCD4+CD25+T細胞およびCD4+CD25−T細胞の絶対数を測定した。図37aで示すように、コントロールマウスと比較し、寛容マウスにおいて、CD4+T細胞におけるCD4+CD25+T細胞において、有為な上昇(p<0.034)があった。しかし、T細胞集団におけるCD4+CD25−T細胞の数は、処置マウスおよび未処置マウスにおいて有為に異ならなかった(示さず)。コントロールマウス由来の脾臓と比較して、脾臓におけるCD4+CD25+T細胞の絶対数の有為な増加(p<0.021)を、BiAb処置マウスから観察した。例えば、コントロールマウスが脾臓あたり平均1.74×107のCD4+CD25−細胞および平均1.62×106のCD4+CD25+T細胞を示したのに対し、寛容マウスは、平均1.76×107のCD4+CD25−細胞および平均2.5×106のCD25+細胞を示した。寛容マウスのリンパ節において、CD25+T細胞における類似の増加を観察した。
【0093】
CTLA−4は、CD4+CD25+T細胞上で構成的に発現され、そしてインビトロおよびインビボでその調節活性の媒介に関連する。図37bに示すように、寛容マウス由来のCD4+CD25+T細胞は、コントロールマウスまたはネイティブマウス由来のCD4+CD25+T細胞と比較してCTLA−4の発現の増加を示した。しかし、3群全てに由来するCD4+CD25−T細胞とも、表面CTLA−4発現を殆ど示さなかったか、または全く示さなかった。
【0094】
(エキソビボチャレンジにおけるBiAb処置マウスにおけるT細胞表現型)
BiAb処置マウスにおけるアロ抗原性標的に対するT細胞応答性低下の機構およびTreg細胞産生の機構を理解するための最初のステップとして、BiAb処置マウス由来のT細胞の表現型変化を、標的(M12)細胞でのエキソビボチャレンジにおいて試験した。脾臓細胞を、M12細胞と共にインキュベートし、そして種々のマーカーについて異なる時点で試験した(図38)。初期活性化マーカーであるCD69を発現する細胞の数は、刺激の24時間後のBiAb処置マウス由来の脾臓において、コントロール免疫マウスと比較して有為に少なかった(図38a)。種々のサイトカインを分泌するT細胞を、刺激36時間後に、細胞内染色によって検出した。IFN−γを分泌しているT細胞の数は、mM12免疫マウスにおいて寛容マウスと比較して有為に多かった一方で、IL−4産生細胞、IL−10産生細胞、およびTGF−β1産生細胞の増加を、寛容マウスにおいて観察した(図38b)。CD62Lの低レベルの発現または発現がないことは記憶表現型に関連しているので、刺激5日後のCD62L発現を試験した。低レベルのCD62Lを発現しているT細胞の数は、BiAb処置マウス由来のCD3+細胞において、コントロールと比較して有為に低かった(図38c)。Treg細胞表現型を試験するため、類似の培養物由来の細胞を、完全に洗浄し、3日間休ませ、そしてCD25発現について分析した。寛容マウス由来の脾臓細胞においてCD25を発現するCD4+細胞の数は、免疫マウス由来の脾臓細胞においてCD25を発現するCD4+細胞の数のほぼ2倍であった(図38d)。CFSE染色した脾臓細胞を、M12細胞と共に7日間インキュベートし、そしてCFSE希釈について試験した。図38eに示すように、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の両方の増殖性応答は、寛容マウス由来の細胞において、免疫コントロールと比較して有為に低かった。しかし、寛容マウスおよびコントロールマウスに由来するこれらの細胞によって行われた分裂の数は、およそ同じであるようであった。
【0095】
(外因性IL−2は、アロ抗原に対する非応答性を部分的に逆転したが、寛容を逆転しない)
外因性IL−2がCTLA−4結合において誘導された寛容を逆転し得るか否かを試験するため、M12細胞および種々の量のrmIL−2を、異なるマウス由来の脾臓細胞に加えた。図39aは、外因性で加えられたrmIL−2非存在下または存在下における、抗原性再刺激後の脾臓細胞の増殖性応答を示す。少量のrmIL−2の添加は寛容化マウス由来のT細胞の有為な増殖を誘導しなかったが、高濃度でのrmIL−2存在下で部分的逆転(コントロールマウスの逆転と比較して60%まで)を観察した。さらに、応答性低下状態は、IL−2およびアロ抗原の両存在下でのみ逆転されたが、いずれのアロ抗原単独またはIL−2単独でも逆転されなかった。このことは、応答性低下は、Agおよび過剰レベルのIL−2が同時に存在する場合にのみ逆転されることを示唆する。
【0096】
寛容マウス由来のT細胞によるアロ抗原に対する三次応答を評価するため、上記培養物(図39a)由来のエフェクター細胞を、5日目に回収し、休ませ、そして新しい標的M12細胞と共にインキュベートした。IL−2およびアロ抗原の存在下で増殖した寛容T細胞は、三次刺激におけるその後のアロ抗原との遭遇の間、非応答性であった(図39b)。このことは、これらの細胞は、寛容であり続け、そして増殖性応答の逆転は、高レベルのIL−2およびアロ抗原の存在下でのみ起こることを示す。
【0097】
(IL−10およびTGF−β1は、寛容マウス由来のT細胞の応答性低下において重要な役割を果たす)
標的化CTLA−4結合による寛容誘導において、炎症促進性サイトカイン(例えば、IFN−γ)の減少に伴ってIL−4、IL−10、およびTGF−β1における増大を観察した。CTLA−4結合による誘導の抑制的効果がこれらの阻害性サイトカインに依存するか否かを決定するため、これらのサイトカインに対する中性化Abをエキソビボ細胞培養物に添加した。図39cに示すように、IL−4の遮断は、M12刺激に対する寛容細胞の増殖性応答に何ら効果を示さなかったが、IL−10中性化は、応答性低下からの部分的逆転をもたらした(中性化Ab非存在下のコントロール脾臓細胞と比較した)。しかし、TGF−β1に対する中性化Ab単独または中性化Abと抗IL−10 Abとの組み合わせは、T細胞の低応答性からのほぼ完全な逆転をもたらした(図39c)。また、外因性IL−2によって見られるように、これらの培養物から回収した細胞の中性化Ab非存在下における標的細胞と一緒のその後のインキュベーションは、サイトカイン中性化Abの存在下の増殖性応答の逆転は、一過性であることを示した。
【0098】
(CD4+CD25+T細胞上のCTLA−4は、寛容の維持に重要である)
図37bにおいて観察されるように、寛容マウス由来のCD4+CD25+T細胞は、その表面上のCTLA−4の上昇したレベルを発現した。寛容における増大したCTLA−4発現の役割を試験するため、抗CTLA−4AbのブロッキングのFabを、種々の濃度で加えた。飽和濃度での抗CTLA−4 Fabの添加は、T細胞の応答性低下からのほぼ完全な逆転をもたらした(図39c)。このことは、標的T細胞上のCTLA−4の結合は、アロ抗原に対する応答性低下を開始するために必要であることを示唆する。
【0099】
(標的化CTLA−4結合によって誘導された寛容におけるCD4+CD25+T細胞の役割)
CD4+CD25+Treg細胞がアロ抗原特異的T細胞応答のダウンレギュレーションにおいて役割を有するか否かを見るため、寛容マウスおよびコントロールマウス由来のCD4+CD25+T細胞およびCD4+CD25−T細胞を、磁気細胞分離系を用いて単離した(図40a)。寛容マウス由来のCD4+CD25+枯渇CD3+細胞は、M12細胞に対して有為に増大した増殖性応答を示したが、コントロールマウスは示さなかった(図40a)。寛容化マウス由来のCD25+細胞を欠損した培養物は、普通に応答し、アロ抗原による再刺激においてほとんどサイトカイン応答を示さなかったか、または全く示さなかった(図40、c〜e)。IL−10応答およびTGF−β1応答の両方は、主にCD25+T細胞に制限されるが、IL−4の主な供給源は、CD25−T細胞であることを見出した。寛容マウス由来のCD4+CD25+細胞を、免疫マウス由来のCD25−T細胞と共に共培養(coculture)した場合、M12細胞に対する応答は、有為に抑制された(図40f)。しかし、免疫マウス由来のCD4+CD25+T細胞の寛容マウス由来のCD25−T細胞への添加は、M12細胞に対するT細胞の応答の抑制をしなかった。
【0100】
(接触依存性は、寛容の維持における主要な機構である)
CD4+CD25+細胞による寛容誘導が、可溶性因子によって仲介されるかまたはT細胞−T細胞接触を必要とするかを調べるため、Transwellチャンバーアッセイを行った。図40fに示されるように、寛容マウス由来のCD4+CD25+細胞は、コントロールマウス由来のリンパ球の増殖を抑制した。Transwellチャンバー内での2つの集団(CD4+CD25+細胞およびCD25−T細胞)の分離は、CD4+細胞が枯渇した場合に事実上同じ効果を示した(図40g)。その上、寛容マウス由来のCD25+細胞は、CD25−T細胞の応答性低下を誘導したが、これらを別々のチャンバー内にM12細胞と共に維持した場合、同様の抑制は見られなかった。しかし、両チャンバーにおけるM12細胞の存在は、増殖において約30%の低下をもたらした。このことは、CD4+CD25+T細胞によるサイトカイン産生は、アロ抗原刺激を必要とし、そしてこれらのサイトカインは、アロ抗原と接触しているCD25−細胞に、低い効果であるが効果を有することを示唆する。図40fにおいて観察されるように、同じチャンバー内のCD4+CD25+T細胞とCD25−細胞との共培養は、最大の抑制をもたらした。直接の細胞−細胞接触(標的細胞−調節細胞の接触、標的細胞−エフェクター細胞の接触、および調節細胞−エフェクター細胞の接触)は、寛容マウス由来のCD4+CD25+T細胞による最適な阻害のために必要である。
【0101】
(CTLA−4結合において誘導された寛容は、適応的に伝達される)
M12細胞(H2d)およびC57BL/6マウス(H2b)脾臓細胞でプライムしたマウスに、寛容マウスおよびコントロールマウス由来のCD4+CD25+T細胞をi.v.注射した。これらのマウスを、M12細胞で2時間チャレンジし、そして15日後にこれらを屠殺して、標的細胞に応答する能力を試験した。寛容マウス由来のCD4+CD25+T細胞を与えたレシピエントマウス由来の脾臓細胞は、非レシピエントマウスおよびコントロールCD4+CD25+T細胞レシピエントマウスと比較して、M12細胞に対する増殖性応答およびIL−2応答の有為な低下を示した(図41a)。また、レシピエント由来の脾臓細胞を、C57BL/6脾臓細胞でエキソビボチャレンジした。図41aに示すように、寛容マウス由来のCD4+CD25+T細胞もコントロールマウス由来のCD4+CD25+T細胞も、C57BL/6脾臓細胞に対する増殖性応答およびIL−2応答を何ら有さず、そして伝達された寛容の標的特異性を示した。
【0102】
(記憶表現型を有するCD4+CD25+T細胞は、応答性低下の誘導においてより強力である)
記憶集団またはネイティブ集団に対するこの調節効果を局在化するために、寛容マウス由来のCD4+CD25+T細胞を、CD62L+画分およびCD62L−画分にさらに分離し(図42a)、そして表面CTLA−4発現、ならびにIL−10およびTGF−β1を産生する能力、ならびにT細胞増殖応答を抑制する能力について試験した。CD25+CD62L+T細胞と比較して、CD25+CD62L−細胞は、より高いレベルのCTLA−4を発現し、そしてM12細胞への曝露において有為に高い量のIL−10およびTGF−β1を産生した(図42cおよびd)。両集団とも、有為な量のIL−4、IL−2およびIFN−γを産生しなかった(示さず)。CD25+CD62L+Treg細胞およびCD25+CD62L−Treg細胞の両方は、アロ抗原に対するエフェクターT細胞応答を抑制する能力を示し、記憶表現型を有するCD25+集団(CD25+CD62L−)は、より強力であった(図42e)。
【0103】
有効なアロ抗原特異的寛容を、標的化したCTLA−4の結合において誘導し、そしてこの寛容誘導に関連する推定機構を調べた。アロ抗原性細胞に対するT細胞活性化は、マウスに抗CTLA−4 Ab(tBiAb)コーティングアロ抗原性細胞を注射した場合のみダウンレギュレートされたが、イソ型コントロールAb(cBiAb)コーティング細胞を注射した場合はダウンレギュレートされなかった。cBiAbコーティング細胞と比較して、tBiAbコーティング細胞は、有為に多い量のIL−10、IL−4およびTGF−β1、ならびに低レベルのIL−2およびIFN−γ産生を誘導した。その上、tBiAbコーティングアロ抗原性細胞を注射したマウス由来のT細胞のインビトロまたはインビボの再刺激は、低応答性を壊さなかった。このことは、これらのマウスにおいて観察された抑制は、阻害性サイトカインのみに仲介される一時的な効果ではなく、持続性であり、そしてTreg細胞は、重要な役割を果たし得ることを示唆する。
【0104】
標的化CTLA−4結合において産生される寛容の特異性を試験するため、同じ(H2d)または異なる(H2b)アロ抗原を保有する刺激細胞を使用した。H2kマウスは、H2dアロ抗原を有する異なる細胞に対する寛容を示したが、H2bアロ抗原を有する細胞には、普通に応答した。これらの結果は、特定の標的Agに対する特異性を有するT細胞のサブセットのみが寛容であり、そして残りの細胞は作用せず、非関連のアロ抗原に対して応答し得ることを示した。T細胞は、高用量の外因性IL−2の存在下での抗原性再刺激によって誘導されて、応答性低下から回復し得る。しかし、これはアネルギー状態の永久的な逆転をもたらさない。何故なら、その後のIL−2非存在下におけるIL−2処理細胞の抗原性再刺激は、有為な応答を示さなかったからである。
【0105】
Treg細胞は、標的化CTLA−4結合の後に特異的Agに対する応答性低下の維持を媒介する。CTLA−4結合は、より低いIL−2産生ならびにより高いIL−10産生およびTGF−β1産生を誘導し得、これは、Treg細胞の発生を導く条件である。組織/標的特異的パターンでのCTLA−4結合は、標的自己抗原特異的免疫寛容を誘導し得る。アロ抗原保有標的T細胞に対するCTL応答は、BiAbコーティングアロ抗原性細胞を与えたマウスにおいて有為に減少する。寛容マウスの脾臓およびリンパ節の両方におけるCD4+CD25+Treg細胞の数の増大は、コントロールマウスおよびネイティブマウスに比較して観察され、CD4+CD25−T細胞数の比例的な減少を伴わなかった。
【0106】
Treg細胞は、多くの場合、その細胞表面タンパク質(例えば、CD25、CTLA−4およびグルココルチコイド誘導TNFRファミリーによって調節される遺伝子)の構成的発現によって特徴づけられる。しかし、これらのタンパク質はまた、活性化T細胞上でも発現され、これらの分子を決定的マーカーとして使用することは、エフェクターT細胞機能を抑制するその能力が決定されない限り、信頼できない。フォークヘッド転写因子Foxp3は、CD4+CD25+Treg細胞において特異的に発現され、この細胞の発生に必要とされる。これらの細胞の枯渇は、動物を自己免疫疾患により罹患しやすくする。しかし、そのインビボの誘導および作用の正確な機構は、よく決定されていない。他のT細胞集団と異なり、CD4+CD25+Treg細胞は、その表面上にCTLA−4を構成的に発現する。これと関連して、同種寛容(allotolerant)マウス由来のCD4+CD25+Treg細胞は、免疫コントロールマウスまたはネイティブマウス由来のCD4+CD25+Treg細胞と比較して、上昇したレベルのCTLA−4をその表面上に発現した。CTLA−4は、CD4+CD25+Treg細胞機能において重要であり、CD4+CD25+Treg細胞によって仲介される寛容によって果たされるCTLA−4の役割は、議論され続けている。抗CTLA−4のFabによる処置は、外因性IL−2処置後に言及した回復に類似して、一時的にエフェクターT細胞の免疫応答を回復する。このことは、標的化CTLA−4結合におけるTreg細胞の寛容発生(tolerogenic)機能の維持のために、CTLA−4が不可欠であることを示した。
【0107】
CTLA−4遮断における応答性低下の逆転は、Treg細胞上に構成的に発現されるCTLA−4の結合を示唆する。実際に、研究は、リガンドによるCTLA−4結合が天然に発現するCD4+CD25+Treg細胞の維持およびホメオスタシスに必要であることを、B7.1ノックアウトマウスおよびB7.2ノックアウトマウスを用いて実証している。この関係において、M12細胞(使用した標的細胞株)は、B7.1およびB7.2の両方を発現する。さらに、標的細胞との接触は、Treg細胞が調節性サイトカインを産生し、そしてTCR結合を含む機構を介してそのAg特異性を維持するために必要である。同種反応性T細胞は、寛容マウスにおいて低応答性状態で存在し、この状態は、CD4+CD25+Treg細胞の除去において逆転され得るか、または過剰なIL−2もしくはIL−10およびTGF−β1中性化Abの存在下において逆転され得る。Ag特異的T細胞は、恐らくIL−10およびTGF−βによって、アネルギー状態で維持されるが、検出されない。
【0108】
Treg細胞の主要な特徴の1つは、IL−10およびTGF−β1を産生するその能力、ならびにこれらのサイトカインがTreg細胞によって誘導される抑制において果たす役割である。寛容化マウスは、より高いレベルのIL−10およびTGF−β1を産生し、そしてCD4+CD25+T細胞は、これらのサイトカインの主要な供給源であった。寛容化マウス由来のT細胞は、より多い量のIL−4を産生したが、CD25−細胞およびCD4+CD25+Treg細胞以外の細胞は、このサイトカインの供給源であった。IL−4の中性化は、T細胞応答性低下に有為な効果を有さなかったが、一方で、IL−10およびTGF−βlの中性化は、アロ抗原に応答するエフェクターT細胞の能力を一時的であるが回復した。しかし、Transwell実験からの結果は、Treg細胞がエフェクター細胞に直接接触しない場合、これらのサイトカインについての役割がより小さくなることを示唆した。エフェクター細胞(CD25−)は、Treg細胞(CD25+)および標的細胞(アロ抗原)との同時の相互作用を必要とし得る。あるいは、同じチャンバー内のこれらの細胞の存在は、Treg細胞によって放出されたサイトカインの希釈を防ぎ得、そしてこれらを近接するエフェクター細胞により容易に結合させ、そしてより容易にエフェクター細胞上で作用させる。
【0109】
CD4+CD25+Treg細胞は、ネイティブのT細胞またはAg特異的T細胞に由来し得る。Ag特異的Treg細胞は、事前に存在するAg非特異的CD4+CD25+集団およびAg特異的エフェクターT細胞から産生され得る。Treg細胞の2つの主要なサブセットが、報告されている。天然に存在するCD4+CD25+T細胞の第1のサブセットは、Ag特異性を示さず、TGF−β1を通して作用する。適合性Treg細胞の第二のサブセットは、エキソビボで誘導され得、最適未満のAg曝露および/または同時刺激によって、成熟T細胞の活性化の結果として発生する。適合性Treg細胞は、主に分泌された因子(例えば、IL−10)を通して作用する。表面分子、サイトカイン分泌パターン、および作用様式の異なる、発現レベルの明らかなCD4+CD25+T細胞集団は、寛容誘導についての方法に依存して活性化され得る。
【0110】
CD28およびCTLA−4を通したシグナル伝達は、インビトロでアネルギーの2つの明らかな形態を制御する。1つの形態は、明らかにCD28同時刺激非存在下かつCTLA−4シグナル伝達の非存在下におけるTCR占拠から生じ、IL−2によって逆転され得る。アネルギーの他の形態は、活性化後の増殖の欠損に関連し、この欠損は、CD28同時刺激シグナルの存在にもかかわらず起こり、IL−2によって逆転され得ない。長期的な寛容を誘導する、アネルギーの第1形態(CD28シグナル伝達の欠損)の能力は、十分に確立されていない。しかし、CD28活性化およびTCR結合と同時に起こるCTLA−4シグナル伝達は、細胞のさらなる増殖を阻止し、そして細胞にAg特異性を獲得させ、そして恐らくは、Treg細胞に分化させる。
【0111】
CD62L−Treg細胞は、CD62L+Treg細胞と比較して、M12細胞に対するエフェクターT細胞応答を抑制することにおいて、より強力であった。その上、CD62L−Treg細胞のこのよりよい阻害性質は、CD62L−Treg細胞の相対的により高いCTLA−4の表面発現ならびにCTLA−4アロ抗原に対する曝露におけるIL−10およびTGF−β1の産生と関連していた。このことは、両サブセットはアネルギー性であるがCD62L+集団がCD62L−集団または未分離のCD4+CD25+Treg細胞より、細胞あたりの基準でより強力であり、そして増殖し得かつ抑制機能をはるかによく維持するという、より初期の知見とは逆である。これらの研究はまた、CD62L+サブセットは培養物中でずっとはるかに拡大しやすく、そしてケモカインによって駆動される二次リンパ器官への移動に対してより応答性であるということを実証した。この食い違いは、寛容を誘導するために用いた戦略における相違に起因する。本明細書中の開示において、CD4+CD25+Treg細胞は、最もAg特異的になりやすく、従って、CD62L−サブセットは、記憶表現型を表し得る。
【0112】
要約すると、標的化されたCTLA−4結合によって作製されるTreg細胞は、治療的可能性を有する。移植片に対するアロ抗原特異的T細胞寛容の誘導が、行われる。ランゲルハンス島のような同種移植片は、移植の前に島に結合された抗CTLA−4 AbまたはMHC特異的Abでコーティングされ得る。あるいは、上記移植片のMHC Agsと同系である細胞は、移植の前に寛容を誘導するために、アロ抗原特異的Abに結合された抗CTLA−4でコーティングされ得、そしてレシピエントに注射され得る。
【0113】
(材料および方法)
(インスリン産生細胞に対する免疫応答の調節)
インスリン分泌細胞株のNIT−1を、インビトロでの同種異系β細胞の代用物として使用した。抗H2−Db抗体を抗CTLA−4抗体に結合することによって、H−2bNIT−1細胞に結合するBiAb試薬を調製した。未処置またはNIT−1細胞で初回抗原刺激されたCAB/jマウス(H2−Kk)由来の脾臓細胞をBiAbの存在下においてNIT−1細胞と共にインキュベートし、そしてT細胞増殖およびNIT細胞がインスリンを産生する能力について試験した。このBiAbは、NIT−1細胞に対するT細胞応答を、コントロール抗体と比較して有意に抑制した。さらに、BiAbおよび初回抗原刺激された脾臓細胞と共にインキュベートされたNIT−1細胞は、インスリンを産生し続け、このことは、これらの細胞が、アロ応答性T細胞による殺傷から免れることを示す(図20)。
【0114】
(インビトロのアロ−島防御アッセイ)
Balb/c(H2Kd)マウスを島ドナーとして使用し、C57BL/6(H2Kb)をレシピエントとして使用して、C57BL/6(H2−Kb)マウスからの免疫攻撃に対する防御の際の抗H2−Kd/抗CTLA−4 BiAbを試験する。膵島は、コラゲナーゼ処置、その後のパーコール勾配遠心分離によって、Balb/cマウス(H2−d)から慣用的に単離されている(図21)。これらの島は、抗H2−Kd/抗CTLA−4 BiAbがC57BL/6(H2−b)マウスからの免疫攻撃に対して防御する能力について試験するためのインビボおよびインビトロのアッセイにおいて使用されている。
【0115】
最初に、抗H2−Kd抗体を抗CTLA−4抗体に結合させて、抗H2−Kd/抗CTLA−4 BiAbを生成した。抗H2−Kd/抗CTLA4 BiAbが、インビトロでアロ応答性T細胞からH2−Kd島を防御する可能性を決定した。ハムスターIgGに結合した抗H2Kd抗体をアイソタイプコントロールBiAbとして使用した。未処置またはH2d(M12細胞)で初回抗原刺激したC57BL/6(H2−Kb)マウスのいずれか由来の脾臓細胞を、Balb/cマウス由来のトリプシン消化単一島細胞懸濁液と共に、BiAbまたはアイソタイプコントロールBiAbのいずれかの存在下においてインキュベートした。その後、アロ応答性の指標としてT細胞増殖を試験し、島細胞生存の指標として島細胞がインスリンを産生する能力を試験した。図22に示すように、BiAbは、島に対してT細胞増殖応答を、コントロールBiAbと比較して有意に抑制した。アロ応答性が抑制される場合、島がより長期間生存してインスリンを産生し続けることが予想される。予想されるように、BiAb処理培養物由来の島は、コントロールBiAbで処理した培養物に対して、より高い量のインスリンを産生した(図23)。
【0116】
移植手順の有効性について試験するために、膵島をBalb/c(H2−Kd)マウスから単離し、そして適切な腎臓カプセルのもとで同系(Balb/c)マウスまたは同種異系(C57BL/6−H2b)マウスのいずれかに移植した(200島/マウス)。これらのマウスは、ストレプトゾトシン(200mg/kg)での前処置によって糖尿病性にしてあった。血液グルコースレベルについて20日間、レシピエントをモニタリングした。図12に示すように、同系島を受容したマウスは、移植の7日以内は、正常なグルコースレベルを示した。しかし、同系異種島を受容したマウスは、正常なグルコースレベルを示さず、これは、アロ応答に起因する移植片拒絶反応を示唆した。島細胞が、それらを防御するBiAbでコーティングされたか否かを調べるために、BiAbと一緒のBalb/c(H2−Kd)マウス由来の島を洗浄し、ストレプトゾトシン前処置のC57BL/6(H2−Kb)糖尿病マウスにそれらを移植した。レシピエントのグルコースレベルを20日間モニタリングした。抗H2−Kd/抗CTLA−4 BiAbでコーティングされた島を受容したマウスのグルコースレベルにおいて、アイソタイプコントロールBiAbでコーティングされた島を受容したマウスと比較して減少が見られたが、これらは、正常グルコースレベルに達しなかった(図13)。
【0117】
(マウス)
6〜8週齢の雌CBA/Jを、The Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME)から購入した。イリノイ大学(Chicago,IL)のBiological Resources研究施設でマウスを飼育し、自由に食物および水を提供した。イリノイ大学のAnimal Care and Use Committeeによって記載されるガイドラインに従って、動物の世話をした。全てのマウスを、8週齢〜10週齢において使用した。
【0118】
(GM−CFS、Abおよびマウスサイログロブリン)
組換えマウスGM−CSFを、Cell Sciences(Cell Sciences,Canton,MA)から購入した。フローサイトメトリーにおいて、FITC結合体化の抗CD11cおよびPE結合体化の抗I−Ak(MHCクラスII)、抗CD8a、抗CD80、抗CD86、および抗CD40(BD PharMingen,San Diego,CA);PE結合体化の抗CD4、抗CD8a、および抗CD25(Caltag Laboratories,Burlingame,CA)Abを使用した。マウスIL−10レセプターに対する中和ラットモノクローナルAb(クローン1B1.3a)は、親切にもKevin Moore(DNAX,Palo Alta,CA)によって提供された。精製ラットIgG(Fitzgerald,Concord,MA)を、アイソタイプコントロールとして使用した。T細胞、CD4+CD25+T細胞、および樹状細胞の磁気ビーズ単離キットを、Miltenyi Biotec(Auburn,CA)から得た。BiochemMedから得た正常マウス甲状腺およびサイログロブリンを調製した(Winchester,VA)。
【0119】
(GM−CSF処置およびサイログロブリンによる免疫化)
特定しない限り、3つの群のマウス(viz,1,CFAコントロール;2,mTgコントロール;3,GM−CSF/mTg)を使用した。1群および2群のマウスにPBSを注射し、3群のマウスに2gのGM−CSF/マウス/日を注射した(1〜5日目および15〜19日目)。完全フロイントアジュバント(CFA)中に乳化したmTg(100μg/マウス)で、6日目および20日目に2群および3群のマウスを免疫化した(s.c.)。1群のマウス(CFAコントロール)は、6日目および20日目にCFA中に乳化したPBSを受容した。GM−CSF仲介性免疫調節の種々の局面を理解するために、これらの3群のマウスを、以下のように異なる実験のために異なる時点において屠殺した。
【0120】
(DC成熟に対するGM−CSF処置の効果)
上で言及した2群および3群のマウス(すなわち、それぞれ、mTgコントロールおよびGM−CSF/mTg)を使用した。各mTg免疫化の前(6日目および20日目)および後(8日目および22日目)で動物を屠殺した。全ての動物を同時に屠殺するような方法で、免疫化スケジュールをずらした。これらのマウス由来の脾臓細胞をPE結合体化抗マウスMHCクラスII、B7.1、B7.2、またはCD40抗体と組み合わせて、FITC結合体化抗マウスCD11cで染色し、FACS分析器(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)で分析した。CD11c単離キットを使用して脾細胞からDCを単離し、mRNA単離キット(Miltenyi Biotech,San Francisco,CA)を使用してmRNAを抽出した。全ての手順を製造業者の指示に従って実施した。cDNAsをmRNAサンプルから合成し、PCRのために使用した。IL−10、IL−6、TNF−α、IL−1、およびIL−12についてのサイトカイン転写レベルを、多重PCR方法を使用して製造業者(Maxim Biotech Inc.)のガイドラインに従って決定した。
【0121】
(CD4+CD25+T細胞の養子転移)
CFAコントロール、mTgコントロール、GM−CSF/mTgおよびCD4+CD25+T細胞のレシピエント群を、この実験に含めた。GM−CSF/mTg群由来のマウスをドナーとして使用し、34日目に屠殺して、CD4+CD25+単離キットを使用して製造業者(Miltenyi Biotech)の指示に従って、脾細胞およびリンパ節からCD4+CD25+T細胞を単離した。単離集団は、>90%純粋であった。mTg免疫化マウスの1つのセットを、免疫化の28日後にCD4+CD25+T細胞(1×106/マウス)をi.v.注射をすることによってドナーに養子転移した。動物を45日目(転移の18日後)に屠殺し、リンパ節、脾臓、甲状腺、および血清を、mTg特異的免疫応答を分析するために収集した。
【0122】
(CD4+CD25+T細胞の同時培養)
mTgコントロールおよびGM−CSF mTgのマウス群を使用した。本明細書において記載されるように、マウスをGM−CSFで処置し、mTgで免疫化した。これらのマウスを35日目に屠殺し、脾臓およびリンパ節の細胞を収集し、そして上記に記載のようにGM−CSF/mTg群のマウスからCD4+CD25+T細胞を単離した。mTgコントロール群のマウスからの脾臓およびリンパ節の細胞から、磁気細胞分取(Miltenyi Biotech)を使用してエフェクターT細胞を単離し、CFSE(濃度1μM)で10分間37℃で染色した。細胞を3回洗浄し、96ウェル平底プレートに0.5×106細胞/ウェルでプレートした。3群から単離したCD4+CD25+T細胞を、5:1のエフェクター:Tregの比で培養物に添加した。ナイーブマウス由来のT細胞枯渇脾臓細胞(0.5×106細胞/ウェル)または濃縮樹状細胞(0.1×106細胞/ウェル)(両方とも磁気細胞分取によって達成した)(Miltenyi Biotech)を、支持細胞として使用した。7日後に培養物から細胞を収集し、FACS分析器(BD Bioscience,San Jose,CA)を使用してCFSE希釈について試験した。
【0123】
(aIL−10R抗体処置)
6つの群(viz,1,CFAコントロール;2,mTgコントロール;3,GM−CSF/アイソタイプコントロール;4,GM−CSF/αIL−10R #1;5,GM−CSF/αIL−10R #2;6,GM−CSF/αIL−10R #3)を、この組の実験に含めた(1群につき4〜5匹のマウス)。1群、2群、および3群は、3群の動物が、6日目、11日目、20日目、25日目および32日目にラットIgGアイソタイプコントロール抗体(0.5mg/マウス)のi.p.注射を受けた以外は、上で言及した群と対応する。4群、5群および6群の動物をGM−CSFで処置し、上記に記載のとおりmTgで免疫化し、そしてこれらの動物は、6日目、11日目、20日目、25日目および32日目;6日目および20日目;ならびに11日目、25日目および32日目にそれぞれαIL−10Rのi.p.注射を受けた(0.5mg/マウス)。全ての動物を45日目に屠殺し、リンパ節、脾臓、甲状腺、および血清を収集して甲状腺炎を評価した。
【0124】
(甲状腺微小環境に対するGM−CSF処置の効果)
CFAコントロール、mTgコントロール、およびGM−CSF/mTgマウスを使用した。各群の3匹のマウスを21日目に屠殺し、甲状腺を収集し、群内でプールしてコラゲナーゼD(0.5mg/ml)で1時間37℃で消化し、単一細胞懸濁液を調製した。2%FBSを補充したPBSで細胞を洗浄し、氷上で30分間、抗CD16/CD32 Fc−Block(BD PharMingen)でブロックした。PE結合体化抗マウスCD25 mAbと一緒にFITC結合体化抗マウスCD4を使用して氷上で15分間、細胞を染色し、洗浄し、そしてFACS分析器(BD Biosciences)およびCellQuestソフトウェアを使用して分析した。1つのサンプルにつき少なくとも10,000個の細胞を分析した。サイトカイン/ケモカインの産生を決定するために、甲状腺細胞の懸濁液を2%正常マウス血清を含むRPMI−1640培地中で36時間維持した。これらの培養物から細胞を含まない上清を収集し、University of Pittsburgh Cancer Center,PittsburghのLuminexコア施設においてLuminex技術を使用して、自発的なサイトカイン(IL−4、IL−10、およびIFN−α)およびケモカインの産生(MCP−1およびRANTES)を複合サイトカイン/ケモカインアッセイキットによって検出した。このキットを使用して示唆される最も低い検出レベルは、IL−4について5pg/ml、IFN−αについて1pg/ml、IL−10について15pg/ml、MCP−1について5pg/ml、およびRANTESについて5pg/mlである。
【0125】
甲状腺細胞でのアポトーシス分子の発現を評価するために、甲状腺細胞を他の常在の細胞から分離し、製造業者(Miltenyi Bitoech)の指示に従ってmRNA単離キットを使用してmRNAを単離した。mRNAおよびFas、FasL、カスパーゼ−8に対する遺伝子特異的プライマー(Maxim Biotech Inc.)を使用して、RT−PCRを実施した。α−アクチンをコントロールとして使用し、このアッセイ中でRNAが当量であることを確実にした。
【0126】
(mTg特異的T細胞増殖)
マウスの脾細胞またはリンパ節細胞(5×105細胞/ウェル)を、2%正常マウス血清を含むRPMI 1640中(最終容量0.25ml/ウェル)に3重で96ウェル平底組織培養プレートにプレートした。mTgを20μg/mlの濃度で添加した。Con A(1μg/ml)をポジティブコントロールとして使用した。CO2インキュベーター中で72時間37℃において細胞をインキュベートした。培養の最後の16時間、細胞を1μCi[3H]チミジン/ウェルでパルスし、96ウェルU底組織培養プレートに移し、PBSで2回洗浄し、水中に溶解して37℃で一晩乾燥させた。シンチレーション流体をこれらのウェルに添加し(50μl/ウェル)、96ウェルプレートMicrobeta counter(PerkinElmer Wallac,Gaithersburg,MD)を使用して計測した。T細胞の増殖パターンを評価して試験するために、上記のように細胞をCFSEで染色し、2%正常マウス血清を含むRPMI 1640中のmTg(20g/ml)(最終容量0.25ml/ウェル)の存在下または非存在下において、96ウェル平底組織培養プレートに細胞をプレートし、7日間維持し、収集し、そしてFACS(BD Bioscience)を使用してCFSE希釈について試験した。
【0127】
(サイトカイン産生の測定)
脾臓またはリンパ節5×106細胞/ウェル(12ウェルプレート)を、2%正常マウス血清を補充した1.5mlのRPMI 1640培地において、mTg(20μg/ml)の存在下または非存在下において36時間インキュベートした。細胞を含まない培養上清を36時間後に遠心分離によって収集した。細胞を含まない上清中のサイトカインレベルを、製造業者(eBioscience,San Diego,CA)の指示に従って、IL−2、IL−10、IL−4およびIFN−αの検出のための対のAbを使用するELISAによってアッセイし、Microplate reader(Bio−Rad,Hercules,CA)を使用してOD450を記録した。対応するサイトカイン標準を使用してサイトカインの量を決定した。このキットを使用して示唆される最も低い検出レベルは、IL−2について2pg/ml、IL−4について4pg/ml、IFN−αについて15pg/ml、およびIL−10について15pg/mlである。
【0128】
(EATの評価)
屠殺時にマウスから収集した甲状腺をホルマリン中に固定し、パラフィン中に包埋し、切り出してH&Eで染色した。疾患重症度のマーカーとして、甲状腺のリンパ性炎症の程度について甲状腺をスコア付けした(1+〜5+のスケールを使用)。1または数個の病巣における少なくとも125個の細胞の浸潤をスコア1+をした;細胞浸潤の10〜20の病巣(腺の25%までを含む)をスコア2+とした;腺の25〜50%までを含む浸潤をスコア3+とした;腺の50%を超える破壊をスコア4+とした;そして腺のほとんど完全な破壊(小胞がほとんど残っていないか、または全く残っていない)をスコア5+とした。
【0129】
(統計学的分析)
平均、SD、および統計学的有意性を、SPSS適用を使用して計算した。統計学的有意性を、ノンパラメトリックWilcoxon符号検定(nonparametric
Wilcoxon signed test)を使用して決定した。ほとんどの場合において、個体処置群および免疫化群の値を、未処置であるが、免疫化された群の値と比較した。<0.05のp値を有意であるとみなした。平均、SD、および統計学的有意性(p値)を、SSPS統計学的適用(SSPS,Chicago,IL)を使用して計算した。p値は、ノンパラメトリックWilcoxon符号検定を使用して決定した。多くの場合において、BiAb処置群(抗CTLA−4 AbでコーティングされたmM 12細胞を受けたマウス)の値を、特定しない限りmM12免疫群(アイソタイプコントロールAbでコーティングされたmM12細胞を受けたマウス)の値と比較した。試験群とコントロール群との間の蛍光陽性細胞のパーセントの差を、ノンラパメトリック符号検定を使用して試験した。<0.05のp値を有意をみなした。
【0130】
(マウス系統)
6週齢の雌のCBA/J、BALB/c、およびC57BL/6マウスを、The Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME)から購入した。イリノイ大学(Chicago)のBiological Resources研究所でマウスを飼育し、自由に食物および水を提供した。イリノイ大学(Chicago)のAnimal Care and Use Committeeによって記載されるガイダンスに従って、全てのマウスを8週齢において使用し、世話をした。
【0131】
(Abおよび細胞株)
M12は、BALB/c起源(H−2d)のB細胞リンパ種である。M12細胞を、マウスTSHR cDNA(mM12細胞)で安定にトランスフェクトし、Ag/8マウスB細胞リンパ腫(H−2d)を使用した。ハムスター抗マウスCTLA−4ハイブリドーマ(UC10−4−F−10−11;American Type Culture Collection,Manassas,VA)およびマウス抗マウスTSHRハイブリドーマ(D6−4)を、L−グルタミン(2mM)、HEPES(15mM)、ピルビン酸ナトリウム(1mM)、2−ME(5×10−5M)、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(0.1mg/ml)、ファンギゾン(1g/ml)、および10%FBSを補充したDMEM/F12培地において増殖させた。自己免疫性グレーヴズ病を有するBALB/cマウス由来の脾臓細胞をマウスB細胞骨髄腫Sp2/0と融合させることによって、D6−4ハイブリドーマを調製した。プロテインL(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)アフィニティーカラムを使用して、Abを使用済み培地から精製し、濃縮し、そしてPBS(0.01M;pH7.2)に対して透析した。これらのAbをペプシンで消化し、F(ab)2フラグメントをゲル濾過クロマトグラフィーによって精製した。抗CTLA−4−抗TSHR BiAbを、SPDP(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート)−SMPB(スクインイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチラート)化学結合によって調製した。次いで、この結合Abを抗マウスIgG−Sepharoseを最初に通して、その後抗ハムスターIgG−Sepharoseアフィニティーカラムを通すことによって、未結合のAbから精製した。精製Abを、試験BiAb(tBiAb)として標識した。精製ハムスターIgGをFitzgerald International(Concord,MA)から購入し、そしてF(ab)2フラグメントを調製して、抗TSHR F(ab)2に結合することによってコントロールBiAb(cBiAb)を調製するために使用した。全ての調製物の結合および標的結合の効力を試験した。
【0132】
(抗CD16/CD32 Ab)
FITC結合体化の抗マウスCD3、CD4およびCD8a;ならびにPE標識の抗マウスCD4、CD8、CD25、CTLA−4、CD62L、CD69、IL−2、IL−4、IL−10、IFN−γ、およびTGF−β1(Caltag Laboratories,San Francisco,CA,およびBD Pharmingen,San Diego,CA)を、フローサイトメトリーで使用した。ELISAにおいては、対のAbと、マウスIL−2、IL−4およびIFN−γ(Caltag Laboratories)を検出するため、ならびにIL−10およびTGF−β1(BD Pharmingen)を検出するために必要なサイトカイン標準とを使用した。マウスIL−4(ラットIgG1;クローン 11B11)およびIL−10(ラットIgG1;クローンJES5−2A5)に対する中和Abを、eBioscience(San Diego, CA)から購入した。組換えマウスIL−2(rmIL−2)、マウスTGF−β1(ラットIgG1;クローン1D11)に対する中和Ab、および正常ラットIgG1アイソタイプコントロールをR&D Systems(Minneapolis,MN)から購入した;磁気ビーズ結合体化抗PEの抗マウスCD4、CD62L Ab、汎T細胞単離キット、CD4+CD25+T細胞単離キット(Miltenyi Biotec,Auburn,CA)を使用して、CD3+細胞、CD4+細胞、CD4+CD25+細胞、CD4+CD25+CD62L+細胞およびCD4+CD25+CD62L−細胞を単離した。抗CTLA−4のFabを、パパイン結合アガロースビーズ(Pierce,Rockford,IL)を製造業者の指示に従って使用して、パパイン消化によって調製した。
【0133】
(CTLA−4結合による寛容誘導)
mM12細胞をマイトマイシンC(50μg/107細胞/ml)で処理し、1×107細胞を氷上で30分間、cBiAbまたはtBiAb(100μg)のいずれかと共にインキュベートした。次いで、8週齢の雌CBA/Jマウス(H−2k)に、10日間隔で2度(0日目および10日目)、これらの細胞をi.p.注射した。コントロールマウス(mM12免疫群)は、コントロールAb(抗TSHR抗ハムスターIgG BiAb)から調製したcBiAbでコーティングされたmM12細胞を受けたが、特定しない限り試験マウス(BiAb処置群)は、抗CTLA−4 Abと抗TSHR Abとを結合することによって調製したtBiAbでコーティングされたmM12細胞を受けた。以後、cBiAbでコーティングされたmM12細胞を受けたマウスおよびtBiAbでコーティングされたmM12細胞を受けたマウスを、それぞれコントロール群およびBiAb処置群という。ブースター注射の10日後(20日目)にマウスを屠殺し、脾臓およびリンパ節からリンパ球を収集した。一部の研究のために、60日目にM12細胞で寛容化マウスを再チャレンジし、70日目に屠殺した。
【0134】
(アロ抗原による免疫化/チャレンジ)
上記に記載のように、CTLA−4結合によってマウスを寛容化した。20日目に、C57BL/6(H2b)マウスもしくはBALB/c(H2d)マウス由来のマイトマイシンC処置脾臓細胞(1×107細胞/マウス)、またはAg8(H2d)細胞(2×106細胞/マウス)でこれらのマウスを免疫した(i.p.)。これらのマウスを30日目に屠殺し、これらの細胞がM12および他のアロ抗原に対して応答する能力をリンパ球増殖およびIL−2産生アッセイによって試験した。
【0135】
(増殖アッセイ)
エファクター細胞(脾臓細胞または精製T細胞の集団;0.5×106細胞)およびマイトマイシンC処理標的細胞(M12細胞、0.5×105細胞/ウェル;脾臓細胞、5×105)を、2%正常マウス血清を含むRPMI 1640中で(最終容量0.25ml/ウェル)、3連で96ウェル平底組織培養プレートにプレートした。いくつかの実験において、このアッセイを種々の濃度(5〜200U/ml)のrm IL−2の存在下において実施した。48時間後、2%正常マウス血清を補充した上記の培地の100μlにおいて、1μCi/ウェル[3H]チミジンで18時間、細胞をパルスした。細胞を収集し、そして[3H]チミジンの取り込みをMicrobetaシンチレーションカウンター(PerkinElmer Wallac,Gaithersburg,MD)を使用して測定した。M12細胞を含まないエフェクター細胞培養物のバックグラウンドの数値を、試験値から差し引いて実際の数値を計算した。
【0136】
(CFSE染色)
免疫マウスもしくは寛容マウスのいずれかに由来する脾臓のリンパ球または精製リンパ球の単一細胞懸濁液を、HBSS中に1×106細胞/mlの濃度で懸濁し、追跡用蛍光色素CFSE(Molecular Probes,Eugene,OR)で標識した。細胞を5分間最終濃度1μMのCFSE(HBSS中)と共にインキュベートし、FCSの添加(総容量の10%)によって標識化を終わらせた。完全RPMI 1640培地中で細胞を2回洗浄し、上記に記載のように増殖アッセイにおいて使用した。インキュベーションの7日後に、CFSEの希釈をフローサイトメトリー分析によって測定した。
【0137】
(フローサイトメトリー)
脾臓およびリンパ節の単一細胞懸濁液を2%FBSを補充したPBS(pH7.4)で洗浄し、氷上で15分間抗CD16/CD32 Fcブロックでブロッキングした。種々の濃度のFITC標識、PE標識、およびシトクロム標識の適切なAbで、細胞を氷上で30分間染色し、洗浄してFACS分析器(BD Biosciences,San Jose,CA)で分析し、これらのデータをCellQuestソフトウェアまたはWinMDIソフトウェアを使用して分析した。コントロール細胞をアイソタイプ適合のコントロールAbで染色し、分析した。全ての実験において少なくとも10,000個の細胞を分析した。
【0138】
(サイトカイン産生)
合計5×106個の脾臓細胞/ウェル(12ウェルプレート)を、2%正常マウス血清を補充した1.5mlのRPMI 1640培地において、0.5×106個のマイトマイシンC処理標的M12細胞の存在下で48時間インキュベートした。48時間後に細胞を含まない培養上清(使用済み培地)を収集し、そして製造業者の指示に従って、IL−2、IL−4、IL−10、IFN−γ、およびTGF−β1を検出するための対のAbおよびそれぞれのサイトカイン標準を使用するELISAによって、サイトカインレベルをアッセイした。HRP標識のストレプトアビジンを添加し、その後洗浄してテトラメチルベンジジン−H2O2基質(BD Pharmingen)を5〜10分添加することによって、サイトカインを検出した。Microplate reader(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)を使用して、OD450を読み取った。サイトカインの量を、適切なサイトカイン特異的標準曲線を使用して決定した。M12細胞を含まないエフェクター細胞培養物のバックグラウンドのサイトカインレベルを試験値から差し引いて、実際のサイトカイン応答を計算した。
【0139】
細胞内サイトカイン発現分析のために、実験の終わりに収集した脾臓細胞を、マイトマイシンC処置M12細胞で活性化するか、または36時間静止させておくかのいずれかにした。細胞を、CD3に対してFITC結合体化Abで染色し、次いで固定してCytofix/perm試薬(BD Pharmingen)を使用して透過化処理した。その後、上記に記載のように、これらの細胞をPE標識の特異的抗サイトカインAbで染色し、洗浄し、そしてFACS分析器で分析した。いくつかの実験において、University of Pittsburgh Cancer Center(Pittsburgh,PA)のLuminexコア施設においてLuminex(Austin,TX)技術を使用する複合サイトカインアッセイによって、サイトカインを検出した。
【0140】
(サイトカイン中和およびCTLA−4遮断アッセイ)
上記に記載のように、CFSE希釈アッセイのために、マイトマイシンC処理M12細胞の存在下でT細胞を培養した。これらの培養物に対して、種々の濃度の中和抗マウスIL−4(10〜2000ng/ml)、抗マウスIL−10(10〜5000ng/ml)、抗マウスTGF−β1(10〜2000ng/ml)、および/またはアイソタイプ適合コントロールAbを添加し、7日間インキュベートした。抗マウスCTLA−4のFabの種々の濃度(100ng〜10g/ml)またはアイソタイプコントロールAbを一部の培養物に添加し、CTLA−4相互作用をブロックした。インキュベーションの7日後、フローサイトメトリー分析によってCFSEの希釈を測定した。
【0141】
(CD4+CD25+T細胞および他のT細胞小集団の単離)
製造業者の指示に従って、磁気ビーズに結合体化したAbと磁気分離カラムとを使用して、CD4+CD25+細胞を単離した。プールしたマウス脾臓細胞およびリンパ節細胞を、抗CD16/32 Abと共に氷上で15分間インキュベートしてFcRをブロックし、その後、製造業者の指示に従って汎T細胞単離(ネガティブ選択)キットを使用してCD3+T細胞を単離した。PE標識抗マウスCD25および磁気ビーズ標識抗PE Ab、またはCD4+CD25+T細胞単離キットのいずれかを使用して、CD4+CD25+T細胞を、脾臓細胞集団またはCD3+集団から単離した。PE標識抗マウスCD25 Abと共に30分間氷上で細胞をインキュベートした。次いで、磁気ビーズ結合体化抗PE Abと共に15分間氷上で細胞をインキュベートし、洗浄し、そしてLS磁気カラムまたは自動機械(Automacs;Miltenyi Biotec)を使用して分取した。単離した細胞を洗浄し、FITC標識またはPE標識の適切なAbで染色し、そしてフローサイトメーター(FACSCalibur;BD Biosciences)において純度について試験した。いくつかの実験のために、磁気分離手順を使用して、CD4+CD25+細胞をCD62L+集団およびCD62L−集団について濃縮した。このために、汎T細胞単離キットを使用してCD3+細胞を単離し、磁気ビーズ標識抗マウスCD62L Abを使用してCD62L+細胞およびCD62L−細胞を濃縮した。上記に記載のように、CD62L−画分からのCD25+細胞を濃縮した。CD62L+T細胞を酸性化PBSを使用して洗浄して結合されたビーズを除き、CD25+集団を濃縮した。
【0142】
(CD25+T細胞およびCD25−T細胞の同時培養)
コントロールマウス(mM12免疫)由来のCD4+CD25−細胞を寛容マウス由来のCD4+CD25+細胞と混合した(比率10:1)。逆もまた同じに行った。いくつかのアッセイにおいて、CD4+CD25+CD62L+濃縮集団またはCD4+CD25+CD62L−濃縮集団をCD4+CD25+細胞の代わりに使用した。種々の比率のこれらの混合物または個々の細胞集団を、上記に記載のとおりM12細胞の存在下または非存在下のいずれかで行われるT細胞増殖アッセイ(合計0.6×105細胞/ウェル)において使用した。
【0143】
(Transwell T細胞阻害アッセイ)
寛容マウス由来のCD4+CD25+細胞を上記に記載のように単離した。ウェル挿入物(上の成分)中のCD4+CD25+細胞(2.5×105)+マイトマイシンC処理M12細胞(0.5×105)およびウェル(下の成分)中のCD25−T細胞+M12細胞(2.5×106)を、Falcon Transwell組織培養ウェル挿入物(BD Biosciences)を使用するTranswellアッセイ系において24ウェルプレート様式で培養した。48時間後、細胞を2.5μCiの[3H]チミジンで18時間パルスした。上区画および下区画からの細胞をプールし、シンチレーションカウンターにおける[3H]チミジン取り込みとして増殖を測定した。
【0144】
(Treg細胞の養子転移)
上記のように、コントロールマウスおよび試験マウス(CBA/J;H2k)両方からCD4+CD25+T細胞を単離した。レシピエントマウスをM12細胞(H2d)で0日目に免疫し、C57BL/6脾臓細胞(H2b)で10日目に免疫した。およそ5×106個のCD4+CD25+T細胞を、20日目のM12細胞によるチャレンジ注射の2時間前にレシピエントマウスに養子転移(i.v.)した。これらのマウスを転移後30日目に屠殺し、上記のようにT細胞増殖ならびにM12細胞およびC57BL/6脾臓細胞に対するIL−2応答について試験した。
【0145】
(文献)
以下の文献が、本開示において使用される材料および方法に関連する範囲に対して引用される。
【0146】
【化1】
【0147】
【化2】
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】図1は、二重特異性抗体(BiAb)が、寛容の誘導を媒介することを示し、以下;(a)活性化されたT細胞が、BiAbとの相互作用の際に、抗CTLA−4抗体によるCTLA−4の結合により低下すること;一方で(b)CTLA−4と相互作用しない抗体(アイソタイプコントロール抗体)が、抗原に対するT細胞応答を調節すること;および(c)タンデムなTCRとCTLA−4との結合は、おそらく抗原特異性を有する調節性T細胞の直接的または間接的な拡大を引き起こし、これは、次に、活性化T細胞の抗原特異的応答をダウンレギュレートし、寛容を誘導することを示す。
【図2】図2は、二重特異性抗体に媒介される寛容の誘導が、組織特異的であることを示し;組織特異的抗体を使用して抗CTLA−4抗体を目的の組織に標的化する際に、この抗体は、BiAbが抗原に結合しているか否かに関係なく、組織に存在する任意の抗原に特異的なT細胞を低下することにより組織を防御するが、関連していない抗原に対する免疫応答は、関連していない抗原に特異的なT細胞が、BiAbsが存在する組織に存在しない場合、この組織を標的化したCTLA−4の結合により影響を受けない。
【図3】図3は、CD4+/CD25+T細胞に対するFACS分析を示す:同種異系の(H2d)mM12細胞で免疫したマウス(H2K)(aおよびc)またはBiAbと一緒にmM12(4)細胞で免疫したマウス(H2K);脾臓細胞およびリンパ節細胞を収集し、FITCを結合体化したマウスCD4抗体またはPE標識した抗マウスCD25抗体で染色し;CD4+細胞集団は、上記グラフのためにゲートされた。CD25+細胞の割合を、内側の長方形内に示し、各群の5個体のマウスのCD4+CD25+細胞の割合を大きな長方形内に示す。
【図4】図4は、CD4+/CD25+T細胞によるT細胞増殖の阻害を示す:mM12(H2d)細胞で免疫したH2Kマウスから単離したCD4+CD25+細胞を、二重特異性抗体と一緒にmM12細胞で免疫したマウス由来のCD4+/CD25+細胞を欠く脾細胞と一緒に培養し、逆もまた同じである。同種増幅のために、マイトマイシンC処置したmM12細胞を培養物に添加し、増殖を、標準3H−チミジン取り込みによって測定した。
【図5】図5は、CD4+/CD25+T細胞の養子免疫転移に関し、M12細胞で初回抗原刺激し、mM12細胞で免疫したマウスから単離したCD4+/CD25+細胞を養子免疫転移したか、BiAbで処置した(BiAb)か、または未処理コントロール(免疫)または細胞を受けていない(なし)マウス(H2K)におけるM12(H2d)に対するエキソビボT細胞増殖応答に関する。
【図6】図6は、ナイーブマウス(ナイーブ)、mM12(H2d)細胞のみで免疫したマウス(未処置)または二重特異性抗体と一緒にmM12で免疫したマウス(BiAb処置)から単離されたCD4+/CD25+細胞のCTLA−4の発現についてのFACS分析を示す。
【図7】図7は、インビボ同種応答の阻害を例証する:CBA/J(H2k)マウスをBiAbの存在下でmM12細胞で免疫した;群1は、0日目および10日目にmM12細胞およびBiAbを受け、群2は、0日目および10日目にmM12細胞を受けたが、BiAbは、10日目のみに受けた。ナイーブマウスまたはmM12細胞のみで免疫したマウスまたはBiAbとともにmM12細胞で免疫したマウス由来の脾臓細胞(0.6×106脾臓細胞)を、3連のウェルで、M12細胞(0.5×105/ウェル)で5日間刺激した;(a)リンパ球を収集し、洗浄し、計数し、T細胞増殖アッセイのために、M12細胞またはConAで48時間再刺激した。;(b)使用済みの培地をIL−2についてELISAにより試験した。
【図8】図8は、同種異系寛容特異性の分析を表す:CBA/J(H2k)マウスを、表面結合抗TSHR抗CTLA−4 BiAb(試験BiAb)の存在下でmM12(H2d)細胞で免疫した;ナイーブマウスは、mM12細胞もBiAbも受けなかった;mM12免疫群は、アイソタイプコントロールBiAbでコーティングされたmM12細胞を0日目および10日目に受け;BiAb処置群は、試験BiAbでコーティングされたmM12細胞を0日目および10日目に受け;mM12およびBiAbの処置群のマウスは、20日目にC57BL/6脾臓細胞(1×107細胞)の腹腔内注入を受けた;3つ全ての群由来の脾臓細胞(0.6×106脾臓細胞)を3連のウェルで、マイトマイシン処理C57BL6(H2−kB)脾臓細胞(2×105)またはM12細胞(0.5×105/ウェル)のどちらかで48時間刺激した。T細胞の増殖応答(黒塗りの棒グラフ)を標準3H−チミジン取り込み(18時間)方法により測定し、これらの培養物から48時間後に使用済みの培地を収集し、ELISAによりIL−2応答について試験した(白抜きの棒グラフ)。
【図9】図9は、同種異系寛容の効果の分析を表す:CBA/J(H2k)マウスを、図8に記載されるように、BiAbでコーティングされたmM12細胞で免疫した。mM12およびBiAb処理した群は、20日目にAg8(H2d)細胞(2×106)またはBalb/c脾臓細胞(1×107)の腹腔内注射を受けた。これらのマウス由来の脾臓細胞(0.6×106)を、3連でマイトマイシン処理したAg8細胞(0.5×105/ウェル)(黒塗りのグラフ)またはBalb/c脾臓細胞(2×105細胞/ウェル)(白抜きのグラフ)で48時間刺激した;(a)増殖応答を、標準3H−チミジン取り込み(18時間)方法により測定し、(b)使用済みの培地をELISAによりIL−2について試験した。
【図10】図10は、Balb/cマウス由来の膵島細胞に対する同種応答のインビトロ阻害を示す。トリプシン消化により調製した単一の細胞懸濁液として使用した;膵島細胞を、アイソタイプコントロールBiAbまたは抗H2−Kd−抗CTLA−4BiAbのどちらかでコーティングし、予めH2Kdアロ抗原で免疫したマウス由来の膵臓細胞と一緒にインキュベートした;T細胞増殖応答を、3H−チミジン取り込み方法により測定した。
【図11】図11は、インビトロインスリン産生アッセイを示す。膵島を、Balb/cマウスから単離し、トリプシン消化により調製した単一の細胞懸濁液として使用した;膵島細胞を、アイソタイプコントロールBiAbまたは抗H2Kd抗CTLA−4BiAbでコーティングし、H2−Kdアロ抗原に対して免疫されたマウス由来の脾臓細胞と一緒にインキュベートした。全ての培養物由来の上清を3日後に廃棄し、新鮮な培地を添加した。3〜5日間の培養物由来の使用済みの培地を収集し、マウスインスリンに対するELISAキットを使用してインスリンレベルについて試験した。
【図12】図12は、同種異系のマウスおよび同系のマウスにおける膵島移植を示す:膵島をBalb/cマウスから単離し、約200の膵島を、糖尿病を誘導するために腹腔内にストレプトゾシン(200mg/kg)で処置したBalb/cマウス(同系)またはC57BL/6マウス(同種異系)それぞれの右側の腎臓の被膜の下に移植した;これらのマウスのグルコースレベルを20日間モニタリングした。
【図13】図13は、同種異系マウスおよび同系マウスにおける膵島移植を示す:膵島をBalb/cマウスから単離し、アイソタイプコントロールBiAbまたは抗H2Kd抗CTLA−4BiAbのどちらかでコーティングし、約200の膵島を、糖尿病を誘導するために腹腔内にストレプトゾシン(200mg/kg)で処置した各C57BL/6マウス(同種異系)それぞれの右側の腎臓の被膜の下に移植した;これらのマウスのグルコースレベルを20日間モニタリングした;この実験を2回繰り返し、同様の結果を得た。
【図14】図14は、インビボ同種異系応答の阻害を示す;CBA/J(H2k)マウスを、mM12細胞で免疫した;BiAb処置群1に、0日目および10日目に、抗CTLA−4抗体(tBiAb)でコーティングされたmM12細胞を接種し、群2は、0日目に、アイソタイプコントロール抗体(cBiAb)でコーティングされたmM12細胞を受け、10日目にtBiAbでコーティングされたmM12細胞を受けた。ナイーブマウス(ナイーブ)またはcBiAbでコーティングされたmM12細胞で免疫したマウス(mM12免疫)またはtBiAbでコーティングされたmM12で免疫したマウス(BiAb処置1および2)由来の脾臓細胞を、T細胞増殖アッセイのためにマイトマイシンC処理したM12細胞で3連のウェルで刺激した(0.5×105ウェル);(a)48時間後、これらの細胞を、さらに18時間3H−チミジンでパルスし、マイクロβシンチレーションカウンターで計数した;(b)使用済みの培地を上記の培養物から48時間後に収集し、ELISAにより対のモノクローナル抗体を使用してサイトカイン応答について試験した。5個体のマウスから得た3連の値の平均±SDとして、結果を表す。この実験を3度繰り返し、同様の結果を得た。処置群に対する各値を、mM12免疫群の対応する値と比較することによりp値(統計的有意さ)を計算した。処置したマウスについては、統計的に有意な値であった。
【図15】図15は、CTLA−4の結合の際に誘導される寛容の持続効果を実証する;CBA/J(H2k)マウスを、0日目および10日目に、BiAbでコーティングしたmM12細胞で免疫した;これらのマウスを2つの組に分け、それぞれ20日目または70日目のどちらかに屠殺した;20日目に、ナイーブマウス(ナイーブ)またはcBiAbでコーティングされたmM12細胞で免疫したマウス(mM12免疫)またはtBiAbでコーティングされたmM12で免疫したマウス(BiAb処置)由来の脾臓細胞を、マイトマイシンC処理したM12細胞(0.5×105ウェル)で3連のウェルで5日目まで刺激した(0.5×106脾臓細胞/ウェル);(a)リンパ球を洗浄し、計数し、3H−チミジン取り込み方法によるT細胞増殖アッセイのために48時間M12細胞またはConAで再刺激した;(b)48時間後に収集した使用済みの培地を、IL−2についてELISAにより試験した;(c)および(d)60日目にmM12免疫マウスおよびBiAb処置マウスの第二の組をM12細胞でチャレンジし、ナイーブマウスと一緒に70日目に屠殺し、T細胞増殖およびM12細胞に対するIL−2応答を試験した。5個体のマウスから得た3連の値の平均±SDとして、結果を表す。処置群の値を、コントロール群(mM12免疫)に対応する値と比較することによりp値(統計的有意さ)を計算した。処置したマウスについては、統計的に有意な値であった。
【図16】図16は、同種異系寛容の特異性の分析を表す;CBA/J(H2k)マウスを、表面結合コントロールBiAbまたは試験BiAbの存在下でmM12(H2d)細胞で免疫した;ナイーブマウスは、mM12細胞もBiAbも受けなかった;mM12免疫群は、0日目および10日目にcBiAbでコーティングされたmM12細胞を受け、BiAb処置群は、0日目および10日目にtBiAbでコーティングされたmM12細胞を受け;mM12免疫した群およびBiAb処置した群のマウスは、20日目にC57BL/6脾臓細胞(5×106細胞)を受けた;30日目に3つの群全てから収集した脾臓細胞を、3連のウェル(0.5×106細胞/ウェル)中で、マイトマイシン処理した(a)C57BL/6(H2b)由来の脾臓細胞(1×105/ウェル)または(b)Balb/c(H2d)マウス(1×105/ウェル)またはAg8 B細胞(H2d)(0.5×105/ウェル)または(c)M12細胞(H2d)(0.5×105/ウェル)のいずれかで刺激した;T細胞増殖応答(左側のパネル)を、標準3H−チミジン取り込み方法(18時間)により測定した。使用済みの培地をこれらの培養物から48時間後に収集し、ELISAによりIL−2について試験した(右側のパネル)。3個体のマウスから得た3連の値の平均±SDとして、結果を表す。この実験を繰り返し、同様の結果を得た。処置群に対する値を、mM12免疫群の対応する値と比較することによりp値(統計的有意さ)を計算した。処置したマウスについては、統計的に有意な値であった。
【図17】図17は、CD4+CD25+調節性T細胞が、標的されたCTLA−4の結合の際に誘導されたことを表す;CBA/Jマウス(H2k)を、cBiAbまたはtBiAbと一緒に同種異系(H2d)mM12細胞で免疫した;(a)脾臓細胞およびリンパ節細胞を、これらのマウスおよびナイーブマウスから収集し、FACS分析のためにFITCが結合体化した抗マウスCD4抗体およびPE標識した抗マウスCD25抗体で染色した;CD4+細胞集団は、上記のグラフのためにゲートされた;CD25+細胞の割合を、内側の長方形内に示し、各群の5個体のマウスのCD4+CD25+細胞の割合を大きな長方形内に示す;(b)ナイーブマウス(ナイーブ)、cBiAbでコーティングしたmM12で免疫したマウス(H2d)(免疫)またはtBiAbでコーティングしたmM12細胞から単離したCD4+CD25+細胞上でのCTLA−4の発現を、抗CTLA−4−PE抗体で染色した。
【図18】図18は、BiAb処置したマウス由来の脾臓細胞の抗H2d応答を表す。CBA/Jマウス(H2k)を、cBiAbまたはtBiAbと一緒に同種異系(H2d)mM12細胞で免疫した。ナイーブマウス(左側のパネル)、mM12免疫したマウス(真ん中のパネル)またはBiAb処置したマウス(右側のパネル)から脾臓細胞を収集し、マイトマイシンC処理したM12細胞と一緒にインキュベートし、FACS分析により種々の分子について試験した;細胞を、FITC標識した抗マウスCD3抗体、およびPE標識した抗マウスCD69抗体で24時間後に染色し(a)、抗マウスIFN−γ抗体、抗マウスIL−4抗体、抗マウスIL−10抗体および抗マウスTGF−β1抗体で36時間後に染色し(b)、抗CD62L抗体で5日後に染色し(c);5日目に細胞を洗浄し、FITC標識した抗マウスCD4抗体およびPE標識した抗マウスCD25抗体を用いて調節性T細胞について試験するためにさらに3日間インキュベートし(d);屠殺の際にマウスから収集した細胞のアリコートを、CFSEで染色し、その後M12細胞と一緒にインキュベーションし、7日目にPE標識した抗マウスCD4抗体またはPE標識した抗マウスCD8抗体で染色した後にCFSE希釈について試験した;(e)CD3+、CD4+またはCD8+の細胞集団は、上記グラフのためにゲートされた。これらの実験を3回繰り返し、同様の結果を得た。選択した領域に対する細胞の割合を、各グラフに示す。
【図19】図19は、CTLA−4の結合により誘導された寛容におけるサイトカインおよびCTLA−4の役割を図示する。(a)寛容のマウス(左側のパネル)またはコントロールマウス(右側のパネル)から収集した脾臓細胞を、単独でまたはM12細胞とともに(1:10の標的:エフェクターの比で)インキュベートした、寛容細胞の二つの培養物に、種々の濃度のrmIL−2を添加し、5日目までインキュベートした;(a)2日目に、一つの組の培養物を、T細胞増殖を試験するために3H−チミジンで18時間パルスし;(b)5日目に、残りの細胞を洗浄し、48時間そのままにし、等しい数の生存可能な細胞を、rmIL−2の非存在下で48時間さらにM12細胞と一緒にインキュベートし、3H−チミジン取り込み方法によりT細胞増殖を試験した;(c)細胞のアリコートを、CFSEで染色し、その後M12細胞と一緒にインキュベーションし、抗マウスIL−4、抗マウスIL−10、抗マウスTGF−β1または抗マウスCTLA−4抗体のF(ab)フラグメントを中和する飽和濃度で補充した。細胞を、PE標識した抗マウスCD3抗体で染色した後7日目に、CFSE希釈について試験した。この実験を繰り返し、同様の結果を得た。選択した領域の細胞の割合を、各グラフに示す。
【図20】図20は、インビトロの同種異系の応答の阻害を図示する;CBA/J(H2k)マウスを、0日目および10日目にNIT−1細胞で免疫した;20日目にナイーブマウス(a)または免疫したマウス(b)から収集した脾臓細胞を、3連で、抗体の存在下または非存在下で48時間NIT−1細胞で刺激し、使用済みの培地を新鮮な培地と取替え、さらに48時間インキュベートした;この培養物から収集した上清を、インスリンの産生についてELIZAにより試験した。
【図21】図21は、膵島の単離を示す;Balb/cマウス由来の膵島を、コラゲナーゼ消化により単離し、その後パーコール密度勾配遠心を行なった;(a)および(b)コラゲナーゼ消化の間の膵島;(c)および(d)精製した膵島;ならびに(e)および(f)膵島の単離画分;膵島特異的染色(ジチアゾン)を使用した。
【図22】図22は、膵島に対する同種異系応答のインビトロ阻害を示す;膵島をBalb/cマウスから単離し、トリプシン消化により調製した単一の細胞懸濁物として使用した。膵島細胞を、アイソタイプコントロールBiAbまたは抗H2抗CTLA−4BiAbのどちらかでコーティングし、H2K同種異系抗原で予め免疫したマウス由来の脾臓細胞と一緒にインキュベートした;T細胞増殖応答を、3H−チミジン取り込み方法により測定した。
【図23】図23は、インビトロインスリン増殖アッセイを示す;膵島をBalb/cマウスから単離し、トリプシン消化により調製した単一の細胞懸濁物として使用した;膵島細胞を、アイソタイプコントロールBiAbまたは抗H2Kd抗CTLA−4BiAbのどちらかでコーティングし、H2−Kd同種異系抗原に対して免疫されたマウス由来の脾臓細胞と一緒にインキュベートした;全ての培養物由来の上清を、3日後に廃棄し、新鮮な培地を添加した;3〜5日の培養物の使用済みの培地を収集し、マウスインスリンに対するELISAキットを使用してインスリンレベルについて試験した。
【図24】図24は、抗CD11c抗CTLA−4BiabでコーティングしたDCによる寛容の誘導を示す。マウスを、オボアルブミン(ova)またはサイログロブリン(Tg)で0日目に免疫した。これらのマウスに、8日目に、アイソタイプコントロールBiAb(ova+DCまたはTg+DC)でコーティングしたDCまたは抗CD11c抗CTLA−4BiAb(ova+DC+BiAbまたはTg+DC+BiAb)でコーティングしたDCでパルスしたそれぞれの抗原(ovaまたはTg)を静脈内投与した;これらのマウスから20日目に収集した脾臓細胞を、T細胞増殖(a)、IL−2応答(b)、IL−10応答(c)およびTGFβ1応答(d)について試験した。パネルC これらのマウスから収集した休止細胞をFITCが結合体化したマウスCD4抗体およびPE標識した抗マウスCD25抗体で染色した。CD4+細胞集団は、パネル(c)、(d)の両方にゲートされた。ポジティブ細胞の割合を、内側の長方形内に示す。
【図25】図25は、抗CTLA−4抗体でコーティングしたDCをパルスしたovaによる、ovaに対するTreg細胞の誘導を示す:マウスを、0日目および10日目にova+LPSで免疫し、20日目および30日目にコントロールDCまたは抗CTLA−4抗体でコーティングしたDC(2×106細胞/マウス)をパルスしたovaで処置した;これらのマウスを45日目に屠殺し、(a)記憶CD4+T細胞について(CD4+CD62Llow);(b)調節性CD4+T細胞について(CD4+CD25+);(c)記憶調節性T細胞について(CD4+CD25+CD62Lhigh)試験した。パネル(a)および(b)は、CD4+細胞に対してゲートされ、パネル(c)は、CD4+CD62Llow細胞に対してゲートされ、パネル(d)は、CD4+CD62Lhigh細胞に対してゲートされた。
【図26】図26は、抗CTLA−4抗体でコーティングされたDCをパルスされたovaにより産生されたovaに対するTreg細胞の免疫抑制性特性を図する;マウスを、以下(a)CD4+T細胞を、コントロール抗体または抗CTLA−4抗体をコーティングしたDCを受けたマウスから単離し、CD25+細胞の枯渇した培養物をovaおよびAPCの存在下で培養した;(b)抗CTLA−4抗体をコーティングしたDCを受けたマウスから単離したナイーブTreg細胞(CD4+CD25+CD62Llow)を、コントロールマウス由来の(CD4+CD25−)T細胞と一緒に1:10の比で共培養し;T細胞増殖アッセイを、3H−チミジン取り込みアッセイを使用して行なった、に開示するように処置した。
【図27】図27は、NODマウスにおけるGAD65ペプチド特異的T細胞を示す;脾臓細胞を、前糖尿病マウスおよび糖尿病マウスから収集し、プールしたGAD65ペプチド(GAD206−226、GAD−217−236およびGAD286−300)と一緒にインキュベートし、T細胞増殖応答について試験した;標準3H−チミジン取り込みアッセイを用いてT細胞増殖アッセイを行なった。
【図28】図28は、DCの指向するCTLA−4結合の際のGAD65ペプチド特異的T細胞応答のインビトロ抑制を示す;前糖尿病NODマウスから単離したDCを、プールしたGAD65ペプチド(GAD206−226、GAD17−236およびGAD286−300)でパルスし、アイソタイプコントロール抗体(コントロールBiAb)または抗CTLA−4抗体(試験BiAb)でコーティングし、糖尿病のNODマウス由来のT細胞と一緒にインキュベートした;標準3H−チミジン取り込みアッセイを用いてT細胞増殖アッセイを行なった。
【図29】図29は、樹状細胞成熟に対するGM−CSF処理の効果を示す。CBA/Jマウスを、材料および方法の節に記載のように1日目および15日目に開始して連続5日間未処理のままにするか、GM−CSFで処理した。さらに、6日目および20日目にマウスを、CFA中で乳化したmTgにより免疫した。脾臓を得るために、マウスを第一のmTg免疫および第二のmTg免疫の前(6日目および20日目)ならびにそれらの免疫の後(8日目および22日目)に屠殺した。(A)8日目に屠殺したマウスから単離した脾細胞を、FITC抗CD11cで染色し、そして、PE抗MHC IIまたはPE抗CD8aのどちらかで染色し、FACSにより分析した。(B)同じ細胞を、FITC抗CD11cで染色し、PE抗B7.1、PE抗B7.2またはPE抗CD40のいずれかで染色し、FACSにより分析した。黒い線は、アイソタイプコントロールを示し、濃い灰色の線は、mTgコントロールを示し、薄い灰色の線は、GM−CSF処理を示す。(c)DCをmTg免疫の前または後に磁気カラム分離を用いて脾臓から単離した。mRNAを単離し、多重RT−PCRアッセイにおいて使用してサイトカイン転写物を検出した。示した結果は、群あたり2匹のマウスを使用した2つの独立した実験の代表である。
【図30】図30は、GM−CSF処置したマウス由来のCD4+CD25+T細胞の養子免疫転移を示す。CD4+CD25+T細胞を、GM−CSF処置したマウスから精製し、方法および材料の節に記載されるように、mTgで免疫した。精製したCD4+CD25+T細胞を、養子免疫によりmTg免疫したマウスに転移し(1×106細胞/マウス)、転移後18日に屠殺し、mTgに対する免疫応答をコントロールと比較して評価した。(A)脾細胞を、mTgの存在下または非存在下で培養した。mTgに対する増殖応答を、3H取り込みアッセイにより測定した。ΔCPM(mTg刺激したCPM−(非刺激の)バックグラウンドCPM)をプロットした。バックグラウンドCPMは、このアッセイでは、200未満であった。上記培養物から36時間で収集した使用済み培地を、ELISAにより、(B)IFN−γ、(C)IL−4および(D)IL−10について試験した。3個体のマウスの3連で得られた値の平均±SDとして結果を表す。*は、Tgコントロールマウスに対して統計的に有意な差を示す。
【図31】図31は、mTg特異的T細胞増殖のCD4+CD25+T細胞誘導性抑制におけるIL−10の役割を示す。CBA/Jマウスを、材料および方法に記載されるように、GM−CSFによってかまたはGM−CSFなしで、第1日目および第15日目に開始して連続5日間処置し、CFA中で乳化されたmTgで第6日目および第20日目に免疫した。マウスを第35日目に屠殺し、リンパ節細胞および脾臓細胞を得た。GM−CSF処理マウス由来のCD4+CD25+T細胞、および未処理マウス由来のT細胞(エフェクター細胞)を、プールした脾臓細胞およびリンパ節細胞から、磁気分離法を使用して精製した。エフェクターT細胞をCFSEで染色し、単離したCD4+CD25+T細胞とともに共培養し(エフェクター:Treg比5:1)、そして飽和濃度のαIL−10RもしくはアイソタイプコントロールmAbの存在下で、mTgによって刺激した。ナイーブマウス由来のT細胞枯渇脾臓細胞(A)または濃縮(enrich)DC(B)のいずれかを、APCとして使用した。mTgの増殖応答を、第7日目において、FACSによって判定されるCFSE希釈によって評価した。示されるヒストグラムは、CD4+T細胞集団においてゲート(gate)された。結果は、3連で行われた2つの個別の実験の代表である。*は、中央のパネルに示すアイソタイプコントロールと比較した場合の統計的有意差を示す。
【図32−1】図32は、EATのGM−CSF誘導性抑制に対するαIL−10R Abのインビボ効果を示す。GM−CSF処理マウスを、材料および方法に記載されるように、αIL−10R mAbで処理し、そしてコントロールマウスとともに第45日目に屠殺して、リンパ節細胞および脾臓細胞を得た。(A)脾細胞をCFSEで染色して、mTgで7日間刺激した。mTgに対する増殖応答を、FACSによって判定されるCFSE希釈によって評価した。CD4+T細胞集団においてゲートされた。(B)脾細胞をFITC標識抗マウスCD4抗体およびPE標識抗マウスCD25抗体によって染色し、FACSで分析した。パネル(A)および(B)に示される括弧内の範囲は、4〜5匹の個別のマウスについての値に対応する。
【図32−2】図32は、EATのGM−CSF誘導性抑制に対するαIL−10R Abのインビボ効果を示す。GM−CSF処理マウスを、材料および方法に記載されるように、αIL−10R mAbで処理し、そしてコントロールマウスとともに第45日目に屠殺して、リンパ節細胞および脾臓細胞を得た。(C)種々の群(表1に示される)についてのH&E染色甲状腺切片の代表的顕微鏡写真が示される(現物、40×)。括弧内に示される数字は、甲状腺炎細胞浸潤指数に対応する。
【図33】図33は、甲状腺微小環境におけるGM−CSF処置の効果を示す。マウスのCFAコントロール群、mTgコントロール群、およびGM−CSF/mTg群(材料および方法に記載される)を使用した。3匹のマウスを第21日目に屠殺し、甲状腺を得た。(A)甲状腺から得られたリンパ球をFITC標識抗マウスCD4抗体およびPE標識抗マウスCD25抗体で染色し、FACSで分析した。示される結果は、1群あたり3匹のマウスの3つの別の実験の代表である。(B)コラゲナーゼ処理甲状腺から得られた全細胞を、エキソビボで24時間維持し、多重サイトカインアッセイ(multiplex cytokine assay)によってIL−10およびIFN−γについて上清を試験した。示される結果は、2つの別個の実験の代表である。100個のデータの平均値を示す。(C)甲状腺細胞を甲状腺単一細胞懸濁物から単離し、mRNAを得てRT−PCRに供し、プライマーの特別なセットを使用して、Fas、FasLおよびカスパーゼ8を検出した。β−アクチンを内部コントロールとして含めた。コントロールレーンは、ポジティブコントロールmRNAおよび特別なプライマーを使用したRT−PCRを表す。
【図34】図34は、インビボアロ反応を示す。材料および方法に記載されるように、CBA/J(H2k)マウスをmM12細胞で免疫した。BiAb処置群1に、第0日および第10日において、抗CTLA−4 Ab(tBiAb)コーティングされたmM12細胞を接種し、群2は、アイソタイプコントロールAb(cBiAb)コーティングされたmM12細胞を、第0日目に受容し、そしてtBiAbコーティングされたmM12細胞を第10日目に受容した。ナイーブマウス(ナイーブ)、またはcBiAbコーティングされたmM12細胞で免疫されたマウス(コントロール)、またはtBiAbコーティングされたmM12細胞で免疫されたマウス(BiAb処理1および2)由来の脾臓細胞(0.5×106細胞/ウェル)を、3つ組のウェルにおいて、T細胞増殖アッセイのため、マイトマイシンC処置M12細胞(0.5×105ウェル)によって刺激した。a、48時間後、これらの細胞を[3H]チミジンでさらに18時間パルスし、マイクロベータシンチレーションカウンターで計数した。b、使用済み培地を48時間後上記培養物から回収し、ELISAにおいて対(paired)mAbを用いてサイトカイン応答について試験した。M12細胞を含まない脾臓細胞培養物における1分あたりのバックグラウンド計数(<200)およびサイトカイン(<10pg/ml)の値を、それぞれの試験値から差し引いた。結果を、5匹の別個のマウスから得られた3つ組の値の平均±SDとして表わす。この実験を3回繰り返し、同様の結果を得た。処理群についての各値をコントロール群の対応する値と比較することによって、p値を計算した。*p≦0.05。
【図35】図35は、CTLA−4結合により誘導された寛容の永続的効果を示す。材料および方法に記載されるように、CBA/J(H2k)マウスをBiAbコーティングされたmM12細胞で、第0日目および第10日目において免疫した。これらのマウスを2つのセットに分け、第20日目もしくは第70日目のいずれかにおいて屠殺した。第20日目において、ナイーブマウス由来の脾臓細胞(ナイーブ)、またはcBiAbコーティングされたmM12細胞で免疫されたマウス(コントロール)、またはtBiAbコーティングされたmM12細胞で免疫されたマウス(BiAb処理)を3つ組のウェルにおいて(0.5×106脾臓細胞/ウェル)、マイトマイシンC処理M12細胞(0.5×105/ウェル)で、5日までの間刺激した。a、リンパ球を洗浄し、計数し、そして[3H]チミジン取り込み法によるT細胞増殖アッセイのために、M12細胞もしくはCon A(1μg/ml)で48時間再刺激した。b、使用済み培地を48時間後回収し、ELISAによってIL−2について試験した。cおよびd、第60日目において、mM12免疫およびBiAb処置されたマウスの第二のセットを、M12細胞によってチャレンジし、ナイーブマウスとともに第70日目に屠殺し、そしてM12細胞に対するT細胞増殖およびIL−2応答について試験した。M12細胞またはConAを含まない脾臓細胞培養物における1分あたりのバックグラウンドカウント(<200)およびサイトカイン(<10g/ml)の値を、それぞれの試験値から差し引いた。結果を、5匹の別個のマウスから得られた3つ組の値の平均±SDとして表わす。この実験を繰り返し、同様の結果を得た。処理群の値をコントロール群の対応する値と比較することによって、p値を計算した。*p≦0.05。
【図36】図36は、アロ寛容(allotolerance)特異性の分析を示す。CBA/J(H2k)マウスを、材料および方法に記載されるように、表面結合cBiAbもしくはtBiAbの存在下でmM12(H2d)細胞で免疫した。ナイーブマウスは、mM12細胞もBiAbも受けなかった。コントロール群は、第0日目および第10日目において、cBiAbでコーティングされたmM12細胞を受容し、BiAb処置群は、第0日目および第10日目において、tBiAbコーティングされたmM12細胞を受容した。mM12免疫群およびBiAb処置群のマウスは、C57BL/6脾臓細胞(5×106細胞)を第20日目において受容した。脾臓細胞を、免疫後30日目において3群全てから回収し、3つ組ウェル(0.5×106細胞/ウェル)において、以下に由来するマイトマイシンC処理脾臓細胞のいずれかで刺激した:C57BL/6(H2b)(1×105/ウェル)(a)、またはBALB/c(H2d)(1×105/ウェル)マウスもしくはAg8B細胞(H2d)(0.5×105/ウェル)(b)、またはM12細胞(H2d)(0.5×105/ウェル)、48時間(c)。T細胞増殖応答(左パネル)を、標準的[3H]チミジン取り込み法(18時間)によって測定した。使用済み培地をこれらの培養物から48時間後に回収し、ELISAによってIL−2について試験した(右パネル)。結果を、3匹の別個のマウスから得られた3つ組の値の平均±SDとして表わす。この実験を繰り返し、同様の結果を得た。処理群の値をコントロール群の対応する値と比較することによって、p値を計算した。*p≦0.05。
【図37】図37は、標的化CTLA−4結合においてCD4+CD25+Treg細胞が誘導されることを示す。CBA/Jマウス(H2k)を、材料および方法に記載されるように、同種異系(H2d)mM12細胞、ならびにcBiAbもしくはtBiAbで免疫した。a、脾臓細胞およびリンパ節細胞をこれらのマウスおよびナイーブマウスから回収し、FACS分析のためにFITC結合体化抗マウスCD4 Ab抗体およびPE標識抗マウスCD25 Ab抗体で染色した。CD4+細胞集団を上記グラフのためにゲートした。CD25+細胞のパーセンテージは、内部の四角の中に示され、各群からの5匹の個別のマウスにおけるCD4+CD25+細胞のパーセンテージの範囲は、主要な四角の中に示される。処理群の各値をコントロール群の対応する値と比較することによって、p値を計算した。*p≦0.05。b、ナイーブマウス(ナイーブ)、cBiAbコーティングされたmM12細胞(H2d)で免疫されたマウス(コントロール)、またはtBiAbコーティングされたmM12細胞(BiAb処理)で免疫されたマウスから単離されたCD4+CD25+細胞上のCTLA−4の発現を、抗CTLA−4−PE Abによる染色後にFACS分析によって試験した。
【図38】図38は、BiAb処理マウス由来の脾臓細胞の抗H2d応答を示す。材料および方法に記載されるように、CBA/Jマウス(H2k)を、同種異系(H2d)mM12細胞ならびにcBiAbもしくはtBiAbで免疫した。ナイーブマウス(左パネル)、コントロールマウス(中央パネル)またはBiAb処置マウス(右パネル)から脾臓細胞を回収し、マイトマイシンC処理M12細胞とともにインキュベートし、そして種々の分子についてFACS分析によって試験した。細胞を、以下によって染色した:FITC標識抗マウスCD3 Ab抗体およびPE標識抗マウスCD69 Ab抗体、24時間後(a);抗マウスIFN−γ、IL−4、IL−10およびTGF−β1 Ab、36時間後(b);ならびに抗CD62L Ab、5日後(c)。第5日目、細胞を洗浄し、さらに3日間インキュベートして、FITC標識抗マウスCD4抗体およびPE標識抗マウスCD25 Abを用いてTreg細胞について試験した(d)。屠殺マウスから回収された細胞のアリコートを、CFSEで染色し、M12細胞とともにインキュベーションし、PE標識抗マウスCD4またはCD8 Abで染色した後、7日目においてCFSE希釈について試験した(e)。CD3+細胞、CD4+細胞またはCD8+細胞の集団を上記のグラフのためにゲートした。これらの実験を3回繰り返し、同様の結果を得た。選択領域についての細胞のパーセンテージを、各グラフに示す。
【図39】図39は、CTLA−4結合誘導性寛容におけるサイトカインおよびCTLA−4の役割を示す。a、寛容マウス(左パネル)または免疫マウス(右パネル)マウスから回収された脾臓細胞を、単独またはM12細胞(標的:エフェクター比1:10)とともにインキュベートした。寛容細胞の培養物は、種々の濃度のrmIL−2を受容し、5日間までインキュベートされた。a、第2日において、培養物の1つのセットを[3H]チミジンで18時間パルスし、T細胞増殖について試験した。b、第5日目において、残りの細胞を洗浄し、48時間静置した。そして同数の生存可能な細胞を、rmIL−2の非存在下で、48時間、M12細胞とともにさらにインキュベートし、[3H]チミジン取り込みアッセイによってT細胞増殖について試験した。c、細胞のアリコートをCFSEで染色し、M12細胞とともにインキュベートし、材料および方法に記載されるように、飽和濃度の中和性抗マウスIL−4、IL−10、TGF−β1、または抗マウスCTLA−4 AbのFabを補充した。細胞を、PE標識抗マウスCD3 Abによる染色後7日目においてCFSE希釈について試験した。この実験を繰り返し、同様に結果を得た。選択領域についての細胞のパーセンテージを、各グラフに示す。
【図40】図40は、CTLA−4結合誘導性寛容におけるCD4+CD25+T細胞の役割を示す。a、材料および方法に記載されるように、cBiAbコーティングされたmM12細胞もしくはtBiAbコーティングされたmM12細胞で免疫されたマウスから回収された脾臓細胞およびリンパ節細胞を混合し、次いでCD25−T細胞集団およびCD25+T細胞集に分画化した。CD25−細胞およびCD25+細胞(5×105細胞/ウェル)を、個別にインキュベートした(b〜d)か、またはM12細胞(0.5×105細胞/ウェル)とともに、(f)96ウェルプレート中でインキュベートしたか、もしくは(g)0.1μmの孔サイズのインサートを備える24トランスウェルプレート中でインキュベートした。48時間後、細胞を[3H]チミジンで18時間パルスし、T細胞増殖を測定した。bに関して記載したアッセイからの使用済み培地を、Luminex技術(c〜e)を用いた多重サイトカインアッセイを使用して、種々のサイトカインについて試験した。結果を、3匹の別個のマウスから得られた3つ組の値の平均±SDとして表わす。
【図41】図41は、CD4+CD25+Treg細胞の養子免疫転移を示す。ドナーのCBA/Jマウス(H2k)を、材料および方法に記載されるように、同種異系(H2d)mM12細胞ならびにcBiAb(コントロール)もしくはtBiAb(試験)で免疫した。コントロールドナーマウス(コントロール)および試験ドナーマウス(BiAb処理)から単離された5×106CD4+CD25+T細胞全体を、第20日目において、レシピエントマウスに、M12細胞(上パネル)またはC57BL/6脾臓細胞(下パネル)によるチャレンジ免疫の2時間前に、それぞれ移送した。第35日目において、レシピエントおよびT細胞を受容していない(なし)コントロールマウスから脾臓細胞を回収し、M12細胞(aおよびb)またはC57BL/6脾臓細胞(cおよびd)に対するエキソビボT細胞増殖について試験した(左パネル)およびIL−2(右パネル)。結果を、4匹の別個のマウスから得られた3つ組の値の平均±SDとして表わす。この実験を繰り返し、同様の結果を得た。養子免疫転移レシピエント群についての値を非レシピエント群の対応する値と比較することによって、p値を計算した。*p≦0.05。
【図42】図42は、反応性低下の誘導におけるCD4+CD25+Treg細胞部分集団の有効性を示す。CBA/J(H2k)マウスを、材料および方法に記載されるように、抗CTLA−4 Ab(tBiAb)コーティングされたmM12(H2d)細胞で免疫した。実験終了時に回収された脾臓細胞およびリンパ節細胞をプールし、CD4+CD25+CD62L+およびCD4+CD25+CD62L−細胞を、磁気分離システムを使用して濃縮し(a)、そしてFACS分析によって表面CTLA−4発現について試験した(b)。これらの濃縮された集団を、M12細胞の存在下で36時間培養し、使用済み培地をIL−10レベル(c)およびTGF−β1レベル(d)について、ELISAによって試験した。CD4+CD25+部分集団をコントロールマウス由来のCD25−T細胞とともに、種々の調節T細胞:エフェクターT細胞比(全部で0.6×106細胞/ウェル)で、マイトマイシンC処理M12細胞(0.5×105/ウェル)の存在下で共培養した。増殖応答を、標準的[3H]チミジン取り込み法(18時間)によって測定した(e)。結果を、3つ組の値の平均±SDとして表し、この実験を2回繰り返し、同様の結果を得た。
【背景技術】
【0001】
(開示の背景)
T細胞は、細胞性免疫応答の制御の中心として作用している。T細胞活性は、アップレギュレートまたはダウンレギュレートされ、それぞれ抗原への攻撃または抗原の無視を生じ得る。特異的抗原をダウンレギュレートする能力または特異的抗原に寛容になる能力は、「自己」抗原(正常な機能のために人の身体に生来存在する分子)の保存に重要である。他方で、非寛容化T細胞は、人の身体に対して異質である抗原を攻撃し、破壊する。異物の例は、ウイルスまたは癌細胞の表面上にある欠損タンパク質である。
【0002】
T細胞は、人の身体の完全性を保存するために異種抗原を攻撃することは、有益であるが、攻撃性T細胞が問題となる状況が生じ得る。例えば、器官が別のヒト(または動物であったとしても)から身体に移植された後、異種組織の細胞の表面に多数の異種抗原が存在する。T細胞は、腫瘍と有益な腎臓移植物との間の差を認識しない。従って、T細胞は、新しく移植された腎臓を身体に有害であるかのように攻撃する。T細胞による攻撃は、新しい腎臓の破壊を生じる。この事象は、移植の拒絶といわれる。
【0003】
別のヒトまたは動物から提供された器官の拒絶は、T細胞が新規の組織の細胞表面上の異種抗原を攻撃しないことを確実にすることにより避けられ得る。医師は、免疫抑制薬を用いてT細胞を遮断し、それによりT細胞は提供された器官の異種抗原を攻撃しなくなる。従って、異種器官は、身体により耐容され、拒絶されない。残念なことに、免疫抑制薬は、全免疫系を抑制し、そして他の異種抗原(例えば、ウイルスに感染した細胞および腫瘍細胞上に存在する)は、T細胞によりチェックされず、T細胞から干渉されることなく増加し得る。実際、免疫抑制薬は、免疫系の他の部分(例えば、B細胞)を無力化し、身体を細菌、ウイルスおよび真菌生物による攻撃に感受性にさせる。結果的に免疫抑制薬は、器官移植の拒絶をなくすことには有効であるが、また感染性生物の危険性を生じる。この問題は、器官移植レシピエントを感染性因子が可能な限り取り除かれた環境で維持することにより扱われているが、環境を完全に感染性因子のない状態で維持することは不可能である。
【0004】
免疫系の驚異の一つは、免疫系が、数百万の抗原のそれぞれを個々に認識するように設計されていることである。免疫系に適切な抗原性の情報が提示される場合、T細胞は、その特異的抗原のみを攻撃する。同様に、T細胞は、特異的抗原が、適切な様式で免疫系に提示される場合のみ特異的抗原に対して寛容化され得る。従って、移植器官の抗原のみが、寛容に関してT細胞に提示される場合、T細胞は、移植片のみを放置し、感染性因子に対してなお防御する。
【0005】
任意の所定の抗原に対する免疫応答の調節の中心となるのは、ヘルパーT細胞の役割である。これらのCD4+細胞は、MHCクラスII抗原と複合化した特異的抗原性ペプチドを発現する抗原提示細胞(APC)と相互作用する。二つのシグナルが、Tリンパ球の効果的な活性化に必要であることが、一般的に認められている。第一のシグナルは、T細胞レセプターと、MHCタンパク質と複合化したそのレセプター特異的抗原性ペプチドとの相互作用により提供される。第二のシグナルは、同時刺激シグナルといわれるが、これはT細胞表面タンパク質であるCD28により送達される二つのシグナルの主要な伝達物質であると現在は考えられている。CD28リガンドであるB7.1(CD80)およびB7.2(CD86)は、主に抗原提示細胞(APC)上に見出されるが、他の非リンパ系組織にも発現される。CD28の結合はまたCTLA−4の細胞表面発現に増加を生じる。CTLA−4は、重要なT細胞表面レセプターであり、CTLA−4を介したシグナル伝達は、T細胞応答の下方調節を生じる。CTLA−4ノックアウトマウスは、重篤なリンパ球増殖性の障害から早期に致死に到る。TCRシグナル伝達およびCD28架橋の存在下での抗CTLA−4抗体による架橋実験は、T細胞活性を妨害したことを示す。記憶T細胞は、CTLA−4に仲介される阻害に対して、未処置の細胞より感受性であった。抗CTLA−4抗体によるCTLA−4の結合は、免疫応答に特異的な望ましくない抗原または組織を効果的に抑制する、抗原特異的もしくは標的特異的免疫調節性T細胞を産生する。CD25マーカーを構成的に発現するT細胞(CD4+/CD25+T細胞)が、自己応答性T細胞に対する末梢の寛容を確実にするために重要であることが示唆されている。
【0006】
樹状細胞は、全ての器官に事実上少数存在する専門的抗原提示細胞(APC)に属する抗原提示細胞(DC)である。DCは、高度に移動性であり。末梢組織から血液および/またはリンパ管を介してリンパ系器官に移動する点で固有であり、この性質は、一般的に他のAPCとは関連しない。DCの全てのサブタイプの一般的な性質は、その寿命までの間に成熟のいくつかの段階を通過することである。未成熟なDCは、低レベルのMHC−クラスIIおよび同時刺激分子を発現するが、これらの分子の表面の発現は、適切な抗原性刺激または炎症性刺激に応答して成熟の際に劇的に増加する。微生物の産物および炎症性ケモカイン(例えば、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)およびIL−1)により提供される多くの刺激が、DCの移動を誘導し得、DCの表面上のケモカインレセプターおよび接触タンパク質の発現における変化を調節し得る。未成熟なDCは、末梢では、エンドサイトーシスまたはマクロピノサイトーシスによる抗原の捕捉に特殊化しているが、一旦成熟すると、DCは、抗原を捕捉する能力を失い、高度に有効な抗原提示細胞になる。これらのAPCは、末梢のリンパ系器官におけるネイティブのT細胞に特異的な抗原を活性化し、この抗原は捕捉され、両方の細胞型が共存する。そのT細胞レセプター(TCR)との相互作用に加えて、DCは、いくつかの膜結合レセプターとリガンドとの相互作用を介して、およびサイトカイン産生を介してT細胞を活性化し得る。これらの相互作用は、T細胞応答の大きさに有意に作用し得るだけでなく、T細胞応答の定性的な性質にも有意に作用し得る。DCの別の注目すべき特徴は、DCがリンパ系器官のT細胞区域に移動した後でさえ、抹消組織において抗原が遭遇する能力を維持することである。このことは、MHCクラス−1/IIペプチドの複合体の蓄積および持続(100時間より長く)を可能にする。対照的に、クラス−IIペプチド複合体の細胞内の隔離および未成熟DC内でのMHC分子へのペプチドロードの遮断は、MHCとの関連でペプチドの提示を遅延させ得る。これらの事象は、炎症性の刺激により調節され、これは、DCにロードされたペプチドの、リンパ節のT細胞区域への移動を促進する。成熟DCの表面上で発現された適切なMHCペプチド複合体は、未処置のT細胞を免疫学的なシナプスを形成し、最適なT細胞活性化を生じる。
【0007】
CTLA−4の結合は、調節性T細胞を誘導し得、自己免疫応答を抑制し得る。CTLA−4は、重要なT細胞表面レセプターであり、CTLA−4を介したシグナル伝達じゃ、T細胞応答の下方調節を生じる。インビボでの末梢T細胞寛容の誘導がCTLA−4の結合を必要とするという証拠は、蓄積し続けている。さらに、最近の研究は、CD4+CD25+Treg細胞がCTLA−4を構成的に発現することを示し、このことは、CTLA−4を介したシグナル伝達が、これらの細胞の機能および維持に不可欠であることを示唆する。B7.2の相互作用ではなく、B7.1のCTLA−4との高親和性の相互作用は、T細胞の下方調節に重要であり、B7.1のIg定常様cドメインは、この高親和性の相互作用に重要である。さらに、B7.1と活性化T細胞上のCTLA−4との間の相互作用は、調節性表現型を有するT細胞を生じる。アロ抗原系、ならびに橋本甲状腺炎のマウスモデルにおけるCTLA−4の結合の標的特異的な免疫寛容を生じる効果は、本発明者らにより実証された。このCTLA−4の結合により誘導される寛容は、CD4+CD25+Treg細胞により仲介され、サイトカイン(IL−10および/またはTGF−β1)は、これらの細胞により産生される。
【0008】
免疫仲介疾患の経費は、膨大である。米国では、これらの状態は、100億ドルを上回る直接的および間接的な費用を生じる。自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、I型糖尿病および多発性硬化症)は、合わせて米国人口の約5%が罹患している。アメリカの小児の少なくとも7%が喘息であり、米国の5人に1人より多くの個人がアレルギーに罹患している。さらに、免疫に仲介される移植片拒絶は、命を救う可能性のある器官の首尾よい移植に対して依然として大きな障害である (NIAID Publication、2001年、1月23日)。
【0009】
炎症、自己免疫疾患および移植拒絶に対して有効な介入は、免疫応答をダウンレギュレートする能力を必要とする。これらの状態に対する伝統的な臨床アプローチは、免疫応答の全体的な減衰を生じる免疫抑制薬の投与に依存している。AIDSを罹患する患者または移植拒絶を予防する免疫抑制剤を受ける患者により証明されるように、弱められた免疫応答を有する個体は、広い範囲の日和見感染症の因子に対して感受性であり、悪性疾患を発症する危険性が増加する。これらの潜在的に致命的な副作用は、現在の免疫抑制薬の制限要因であり続けている。
【0010】
他のヒト(または理論的には他の動物から)の器官移植片は、移植された器官の細胞上の抗原を正常に攻撃するT細胞がダウンレギュレートされる場合、実現可能になる。
【0011】
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)は、潜在的に、実験的自己免疫性甲状腺炎(EAT)を防止するだけでなく、またその疾患を抑制する。マウスにおけるGM−CSFに誘導されたEATの抑制は、CD4+CD25+調節性T細胞の頻度の増加を伴った。この増加は、インビトロでマウスのサイログロブリン(mTg)特異的T細胞応答を抑制し得るが、この抑制の基礎となる機構は、解明されていない。GM−CSFは、半成熟表現型(調節性T細胞の誘導および維持に重要な役割を果たすことが公知であるDCの重要な特徴)を有するDCを誘導し得る。GM−CSF処置し、mTgで初回抗原刺激したドナーから、未処置であるがmTgで初回抗原刺激したレシピエントへのCD4+CD25+T細胞の養子免疫転移は、mTg特異的なT細胞応答の減少を生じた。さらに、これらの養子免疫転移後のドナーおよびレシピエントから得たリンパ球は、mTgで初回抗原刺激した未処置のコントロールマウスに比べて有意に高いレベルのIL−10を産生した。GM−CSF処置したマウスへの抗IL−10レセプター(αIL−10)抗体の投与は、mTg特異的T細胞応答、甲状腺リンパ球浸潤および小胞の破壊の増加によって示されるようにEATの抑制を誘導した。興味深いことに、IL−10レセプターのインビボの遮断は、GM−CSFに誘導されたCD4+CD25+T細胞の拡大には影響しなかった。しかし、IL−10に誘導された免疫抑制は、mTg特異的エフェクターT細胞に対するその直接的な効果に起因した。まとめると、これらの結果は、半成熟DCによって誘導されるようなCD4+CD25+T細胞によって産生されたIL−10が、GM−CSFで処置したマウスにおける疾患の抑制に不可欠であることを示唆した。
【0012】
樹状細胞(DC)は、異種抗原に対する有効な免疫応答の誘導に不可欠であるが、それらはまた、自己抗原に対する寛容を促進し維持することにおいて重要な役割を果たし得る。インビトロおよびインビボでのDC表現型および成熟状態の調節は、T細胞の活性化および分化に大きな効果を有し得、免疫応答を歪める。DCの異なる部分集合は、潜在的にTh1型応答またはTh2型応答に影響し得る。特に、CD8a+DCの注射は、Th1細胞の発生を引き起こすが、CD8a−DCは、可溶性抗原に対するTH2型応答を誘導する。従って、特定のDCの部分集合の標的化された拡大は、一つの型から別の型へ免疫応答を移行させるために使用され得、それによって自己免疫疾患の発症を防止する。さらに、DC成熟は、種々のサイトカインを用いて調節性T細胞またはエフェクターT細胞のどちらかを誘導して調節され得る。
【0013】
CD8a+DCもCD8a−DCもどちらも、未成熟な場合には最適なT細胞応答を誘導し得ないが、成熟するとT細胞に対する強力なアクチベーターになる。未成熟なDCは、同時刺激分子および炎症誘発性サイトカインの低いレベルの発現によって特徴付けられ、アネルギーを促進し得るが、かなりのレベルのMHCクラスIIおよび同時刺激分子を発現するが、成熟DCに比べて低いレベルの炎症誘発性サイトカインを発現する半成熟DCは、調節性T細胞を誘導し得る。DCの機能的な性質の調節は、自己免疫状態に対して有効な治療アプローチであり得る。
【0014】
実験的自己免疫性甲状腺炎は、橋本甲状腺炎(HT)に対する十分に確立されたマウスモデルである。橋本甲状腺炎は、最終的には小胞の破壊を生じる甲状腺のリンパ球浸潤により特徴付けられる器官特異的自己免疫疾患である。HTにおいて、サイログロブリン特異的T細胞が産生され、それらは、甲状腺に移動する。これらの細胞は、IFN−γを産生し、それは、甲状腺細胞上でMHCクラスIIの発現を誘導し、さらに活性化されたmTg特異的T細胞の拡大および蓄積をさらに生じる。甲状腺破壊の機構は完全には理解されていないが、カスパーゼ活性化を介して甲状腺細胞のアポトーシスを促進し得るT細胞を浸潤する甲状腺によるサイトカインの産生を包含するようである。
【0015】
GM−CSFまたはFlt3−L(潜在的な樹状細胞増殖因子)の投与は、それぞれEATの抑制または増加を生じた。GM−CSFによる処置は、同時に生じるIFN−γ産生の減少を伴ったIL−4産生の増加に見られるように、CD8aのDCを誘導し、Th1応答からTh2応答へのサイログロブリンに対する免疫応答の移行を引き起こした。しかし、GM−CSFに誘導されるEATの抑制は、単なるTh2の歪みとは関連しないが、インビトロでmTg特異的応答を抑制し得るCD4+CD25+調節性T細胞の選択的拡大とも関連しなかった。CD4+CD25+調節性T細胞は、自己免疫の抑制において、重要な役割を果たす。CD4+CD25+調節性T細胞の枯渇または存在しないことにより、自己免疫疾患の発症を生じることが報告されている。CD4+CD25+調節性T細胞がどのようにして自己免疫を抑制するかは十分に理解されていないが、サプレッサーサイトカイン(例えば、IL−10)は関与している。GM−CSF処置マウスにおいて、IL−10のレベルのかなりの増加が存在し、GM−CSF処置したマウス由来のリンパ球培養物におけるIL−10の中和は、mTg特異的T細胞応答を回復した。さらに、CD4+CD25+T細胞を枯渇するGM−CSF処置したマウス由来のリンパ球は、同時に生じるインビトロでのIL−10のレベルの減少を伴うmTg特異的増殖の増強を示し、このことは、これらの細胞が、IL−10の供給源であることを示唆する。
【0016】
GM−CSFに誘導されたEATの抑制におけるCD4+CD25+T細胞およびIL−10の直接的な役割の研究は、GM−CSF処置したマウスからmTg初回免疫刺激したマウスへのCD4+CD25+T細胞の養子免疫転移が、mTg特異的増殖を抑制し得、レシピエントマウス由来の細胞がより高いレベルでIL−10を産生し得ることを示した。さらに、IL−10レセプターのインビボの遮断は、GM−CSFに誘導された抑制を排除し得、EATの発症を生じるmTg特異的T細胞応答を回復し得る。GM−CSF処置したマウスにおける半成熟表現型を有するDCの増加が観察された。半成熟DCは、調節性T細胞を誘導し得るので、本発明者らの結果は、調節性T細胞の誘導のための機構を示唆した。結果は、GM−CSFに誘導されたEATの抑制におけるCD4+CD25+T細胞およびIL−10が果たす役割を支持する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の要旨)
開示される方法および組成物は、抗CTLA−4抗体でコーティングされた樹状細胞を包含し、この抗体はまた、特異的抗原または特異的組織に結合し得る。
【0018】
二重特異性抗体は、特異的抗原または特異的組織にも結合し得る、抗CTLA−4抗体に結合した樹状細胞を含む。
【0019】
組織特異的寛容を誘導するための方法であって、上記方法は、以下の工程:
(a)樹状細胞を目的の抗原で成熟させて、T細胞を活性化する工程;および
(b)上記活性化T細胞を抗CTLA−4抗体でコーティングされた樹状細胞と接触させ、上記活性化T細胞の表面にCTLA−4を結合させる工程;
を包含する。
【0020】
抗原特異的寛容を誘導するための方法であって、上記方法は、以下:
(a)少なくとも一つの特異的抗原を樹状細胞に提示する工程;
(b)上記樹状細胞のプロセシングおよび抗原の提示を促進する工程;
(c)上記樹状細胞に、細胞表面分子の発現を安定化させることを可能にする工程;
(d)さらなる抗原のプロセシングを防止する工程;ならびに
(e)抗原発現性樹状細胞を、上記樹状細胞表面に結合しT細胞または他のリンパ球の表面上のCTLA−4分子に結合する能力を保持する二重特異性抗体で処理する工程;
を包含する。
【0021】
抗原特異的T細胞寛容を誘導するための方法は、二重特異性抗体でコーティングした樹状細胞をT細胞とともに培養する工程を包含する。上記培養は、インビボであり得る。
【0022】
哺乳動物において、宿主−移植片拒絶から移植片を防御するための方法であって、上記方法は、以下:
(a)樹状細胞に対する宿主−移植片拒絶を担う抗原を提示する工程;
(b)二重特異性抗体でコーティングされた樹状細胞をT細胞とともに培養して、抗原特異的なT細胞寛容を誘導する工程;および
(c)上記T細胞を上記宿主に投与する工程
を包含する。
【0023】
樹状細胞の成熟に作用するための方法であって、上記細胞は、調節性T細胞を誘導し得る半成熟状態に保持され、上記方法は、以下:(a)樹状細胞をパルスする工程;(b)上記パルスした樹状細胞を適切な二重特異性抗体と接触させる工程であって、一方の腕が標的/抗原特異性を提供し、もう一方の腕が、CTLA−4連結を提供する工程;および(c)上記細胞をGM−CSFと接触させる工程を包含する。
【0024】
調節性T細胞(Tregs)は、一般的であるか、または抗原特異的である。上記調節性T細胞は、Tregsが、免疫応答を抑制し得るのを媒介するTGF−βおよび/またはIL−10を産生する。
【0025】
処置の必要な患者に、抗原活性化半成熟樹状細胞を含有する組成物を治療有効量投与する工程を包含する自己免疫疾患を処置する方法であって、上記樹状細胞が、GM−CSFおよび非樹状細胞前駆体の増殖または成熟を阻害する少なくとも一つの他の因子を含有する培養培地中で、基質上で組織供給源を培養する工程を包含する方法により産生され、それにより上記培養物中で樹状細胞前駆体の産生を増加させる工程を包含し、上記樹状細胞が、自己タンパク質でパルスされ、上記樹状細胞が、自己タンパク質をプロセシングして修飾された自己タンパク質抗原を産生し、この自己タンパク質抗原が樹状細胞によって発現される。
【0026】
疾患としては、橋本甲状腺炎、I型糖尿病、重症筋無力症、アトピー性皮膚炎および多発性硬化症が挙げられる。
【0027】
調節性T細胞を作製するための方法は、以下:
1.樹状細胞をGM−CSFで処理して、インビトロまたはインビボで半成熟細胞を誘導する工程、
を包含する。
【0028】
2.これらの半成熟樹状細胞は、目的のアロ抗原または自己抗原でパルスされ得る。
【0029】
3.次いで、これらは、CTLA4に結合する能力を有する二重特異性抗体でコーティングされ得る。
【0030】
4.コーティングされた細胞は、インビトロで調節性T細胞を誘導するために使用され得る、そして/またはインビボで調節性T細胞を誘導するために、宿主に接種され得る。
【0031】
5.インビトロで誘導された調節性T細胞は宿主に注入されて、同種移植片拒絶を予防/抑制し得るか、または自己免疫疾患を処置し得る。
【0032】
6.GM−CSF、および/またはCTLA−4に結合する能力を有する二重特異性抗体を、一緒にまたは連続して直接接種して、調節性T細胞をインビボで誘導することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(開示の詳細な説明)
移植分野の最先端は、全T細胞を抑制し、移植片の異種抗原がT細胞によって攻撃されないようにする(すなわち、身体が移植された器官を拒絶しないようにする)ことに関する。このアプローチの欠点は、全免疫系が抑制されて、感染性因子または癌性腫瘍の異種抗原が認識されないことである。身体は、防御そのものに無力になる。開示される方法は、移植された器官を拒絶する免疫応答の部分のみの抑制をもたらし、これによって免疫系が有害な異種因子に対して身体を防御することを可能にする(図1)。
【0034】
所望の抗原(例えば、移植された器官の抗原)をT細胞に提示し、これによってT細胞にこれらの抗原を無視させるための方法が開示される。この方法は、結合分子を使用して、CTLA−4表面分子を介したT細胞のダウンレギュレーションのために抗原提示細胞とT細胞とを非常に近接させる。抗原の抗原提示細胞への提示は、二重特異性抗体複合体による抗原提示細胞のコーティングのように、インビトロで行われる。次いで、抗原提示細胞は、インビボで付与され、二重特異性抗体複合体の遊離(fee)結合部位がT細胞を見出して寛容化する。
【0035】
全身性の免疫抑制は、器官移植片に対して必要とされるだけでなくが、身体が身体の「良い」細胞を攻撃する任意の状況においても必要とされる。例えば、自己免疫疾患の全ては、未知の理由により、共通のT細胞攻撃「自己」抗原を有する。自己免疫疾患は、多数あり、これらとしては、関節リウマチ、I型糖尿病、多発性硬化症、全身性硬化症、狼蒼、橋本甲状腺炎などが挙げられる。
【0036】
本明細書において開示される方法および組成物は、所与の所望されない免疫応答に特異的に関与するこれらのリンパ球の標的化された除去または不活性化に関与する一方、残りの免疫系をインタクトのまま残すことに関する。この特異的除去は、所与の抗原特異性または組織特異性を有するこれらのリンパ球のみを不活性化する工程を包含し、これによって日和見感染、悪性疾患もしくは他の副作用を回避し得る。
【0037】
抗原特異的な様式でT細胞にCTLA−4を結合するための方法論は、CTLA−4の強力な阻害性シグナル伝達特性と樹状細胞(DC)の並外れた抗原提示特性とを組み合わせる。DC結合抗CTLA−4抗体は、DC上のMHC抗原性ペプチドのTCR結合によって活性化T細胞の表面に結合する。これは、T細胞活性化を抑制し、次いで、目的の抗原に特異的なTreg細胞誘導を引き起こす。
【0038】
CTLA−4結合を介した抗原特異的寛容誘導は、二重特異性抗体を使用する。寛容は、樹状細胞結合抗CTLA−4によるT細胞上のCTLA−4を介したシグナル伝達によって、抗原特異的な様式で誘導される。抗CTLA−4抗体は、架橋し、T細胞寛容をもたらすCTLA−4シグナルを誘導することが知られている。抗CTLA−4抗体のこのシグナル伝達能力は、抗原特異的な様式で操作される。この目的のため、抗CTLA−4抗体は、樹状細胞特異的抗体に結合され、樹状細胞は、特異的抗原でパルスされた樹状細胞でコーティングされ、これによってインビボまたはインビトロでの送達において、BiAbの抗CTLA−4部分は、T細胞上のCTLA−4に結合し、T細胞を弱らせる。
【0039】
開示された方法および組成物は、以下の理由に起因して、有用である:1.自己免疫性標的抗原に対する寛容を誘導し、種々の自己免疫状態を防止/処置する;2.アロ抗原または異種抗原に対する寛容を誘導し、移植組織(例えば、膵臓の島、腎臓、心臓、肝臓、象徴、皮膚など)の拒絶を防ぐ;3.アレルゲンに対する寛容の誘導;4.遺伝子治療用途におけるトランスジーンの産物およびそれらのキャリアベクターに対する寛容の誘導;5.対宿主性移植片病の処置;6.炎症状態(例えば、炎症性腸疾患)に対する寛容の誘導;7.分子的模倣を介して自己免疫疾患もしくは炎症性免疫媒介性疾患の誘導体として作用する、細菌病原もしくはウイルス病原に対する寛容の誘導。
【0040】
選択的組織特異的(または抗原特異的)免疫調節の誘導のための臨床的に有用な療法の開発は、一般的に、以下の基準を満たす:1.所望されない免疫応答に関与するT細胞の特異的不活性化;2.全ての他の抗原に対する免疫応答に対する影響をほとんど有さないか、まったく有さず、したがって日和見感染もしくは免疫監視の不全の危険を最小限にする;3.毒性の副作用のない生物学的に分解可能な因子を含む;4.種々の疾患状態において異なる組織型で発現される種々の抗原に対する免疫抑制に指向するための柔軟性を有する;5.併用免疫調節療法のために、標的抗体への種々の阻害シグナルに結合する能力を有する。
【0041】
抗原特異的免疫調節療法に対するこのアプローチは、遺伝子治療と異なり、多岐にわたる組織および抗原に対して介入する柔軟性を有する。その投薬量は、容易に力価測定されて、所望の効果を達成し得るか、または有害な副作用の事象を迅速に終わらせ得る。これは、免疫監視の長期阻害および悪性疾患の発現の遅延に関する問題を最小にする。
【0042】
バリエーションとしては、以下が挙げられる:1.任意の樹状細胞表面分子、器官もしくは組織に結合し得、そして抗CTLA−4抗体と化学的に結合した抗体。この二重特異性抗体は、移植前もしくは自己免疫プロセスの間に樹状細胞上または標的組織にコーティングされる;2.目的の組織とCTLA−4との療法に特異性を有する遺伝的に操作された抗体が作製される。この遺伝的に操作された抗体は、化学的に架橋された抗体と少なくとも同じ程度に有効である;3.樹状細胞組織または標的組織は、抗CTLA−4抗体によって受動的にまたは能動的に(化学的修飾によって)コーティングされる;4.MHCを介して提示されるペプチドは、化学的に、遺伝的操作を介して、または任意の同等の手段を介して生成され得る。
【0043】
抗CTLA−4抗体のシグナル伝達能力は、組織特異的な様式で操作される。この目的のため、抗CTLA−4抗体は、組織特異的抗体に結合され、インビボ送達もしくはインビトロ送達によって、抗体は目的の組織に結合して、標的組織に特異的な組織攻撃性T細胞を弱める。例えば、膵臓島T細胞は、自己免疫ならびにアロ免疫応答もしくは異種免疫応答から、島を、抗島T細胞特異的抗体(例:Glut−2もしくはMHCクラスI抗体)を抗CTLA−4抗体に結合させることによって作製された二重特異性抗体でコーティングすることによって、防御される。目的の組織に特異的なあらゆる抗体は、抗CTLA−4に結合されて、特定の組織を防御するために使用され得る。
【0044】
GM−CSFは、免疫系に対するその効果を延長および増強し、かつ任意の所望されない効果を防ぐように、改変され得る。
【0045】
半成熟樹状細胞は、そのTreg誘導効率を増強するように、さらに改変または処理され得る。
【実施例】
【0046】
(実施例1:抗CTLA−4抗体コーティングされたDCを使用した免疫寛容および調節性T細胞の誘導)
組織標的化CTLA−4結合方法の制限(組織特異的抗体に対する要求)を克服し、抗原特異的様式で頑強なTreg細胞応答を誘導するための新規のアプローチは、抗CTLA−4抗体コーティングされた抗原でパルスされたDCを使用して、その特異的抗原に対する寛容およびTreg細胞を誘導する。抗原でパルスされたDCは、抗CD11c抗体に対する抗CTLA−4抗体の結合の後に、架橋抗CTLA−4抗体でコーティングされる。これらの細胞は、オボアルブミン(ova)もしくはサイログロブリン(Tg)のいずれかでパルスされて、10日前にこれらの抗原で初回免疫されたマウスに静脈内注入される。抗CTLA−4抗体コーティングされたDCを注入されたマウスは、アイソタイプコントロール抗体でコーティングされたDCを受容したマウスと比較して、有意に抑制されたT細胞増殖およびIL−2産生を示したが、同じ抗原でのエキソビボ再刺激によりIL−10およびTGF−β1応答の上昇を示した(図24)。これらのマウスは、CD4+CD25+Treg細胞集団の有意な上昇を示した(図24)。
【0047】
マウス(試験群)がovaで2回免疫され、そして抗CTLA−4コーティングされたovaでパルスされたDCで2回処理され、15日間休止する場合、記憶CD4+T細胞数は、アイソタイプコントロール抗体コーティングされたDCを受容したマウス(コントロール群)と比較してより低下した。記憶CD4+T細胞数は低下したが、これらのマウスは、約70%大きいCD4+CD25+細胞を示した。ナイーブCD25+T細胞(CD4+CD25+CD62Lhigh)数は、試験群とコントロール群とでほぼ同じであったが、記憶Treg細胞(CD4+CD25+CD62Llow)数は、試験マウスにおいてはコントロールマウスと比較して約150%であった(図25)。これらのTreg細胞は、抗原特異的T細胞応答を、ナイーブ表現型によるCD4+CD25+Treg細胞と比較して、より強く抑制し得る(図26)。このことは、試験群において産生された多数の記憶細胞がTreg細胞表現型を有し、そしてそれらが寛容を維持するのに重要であることを示唆する。
【0048】
60%を超えるNODマウスが、20週齢以内に自発性糖尿病(グルコースレベル、>250g/dl)を発症した。最近、抗CTLA−4 コーティングされたDCアプローチをNODマウスにおいてインビトロで試験した。3つのGAD−65ペプチド(GAD206−226、GAD217−236およびGAD286−300)のプール(これは、NODマウスにおける自己反応性T細胞に対する一次および初期標的である)を、糖尿病マウスから回収したT細胞を用いたインビトロ実験における抗原として使用した。図27に示されるように、数は少ないが、これらのペプチドに対する自己反応性T細胞は、糖尿病マウス中に存在した。前糖尿病マウスから回収されたDC(LPSおよびTNF−αでエキソビボにおいて処理された)を、これらのペプチドでパルスし、(BiAbアプローチを用いて)抗CTLA−4抗体でコーティングし、糖尿病マウス由来のCD3+T細胞に対して試験した。図28に示されるように、抗CTLA−4抗体コーティングされたDCは、コントロール抗体でコーティングされたDCと比較して、T細胞応答を有意に抑制した。これらの結果は、DC結合抗CTLA−4抗体による免疫学的シナプスにおけるCTLA−4の結合が、NODマウスにおいてさえネガティブシグナルを送達し、Treg細胞の分化を誘導することを示唆する。
【0049】
上記の観察は、異なる手段によってTreg細胞が産生され得ることを示す。種々の条件下で異なって産生されたTreg細胞の表現型(およびその阻害性の性質)は、多様であり得る。例えば、上記のように、3つの異なるサイトカイン誘導パターン(TGF−β1単独、TGF−β1、IL−4およびIL−10、またはIL−10単独)を有するCD4+CD25+Treg細胞集団が、3つの異なる実験において観察された。これは、CD4+CD25+Treg細胞は単一の集団を含むように見えるが、機能的および/または表現型的に異なる下位集団が存在し得ることを示唆する。例えば、抗CTLA−4抗体コーティングされた、ovaまたはTgでパルスされたDCは、記憶表現型を伴う頑強なCD4+CD25+Treg細胞応答を誘導した(図25)。
【0050】
(実施例2:二重特異性抗体を使用したCTLA−4結合を介した組織特異的寛容誘導(図2))
二重特異性抗体を用いたCTLA−4結合の、組織式特異的寛容を誘導する治療上の潜在力を、甲状腺刺激ホルモンレセプターに対して特異的な抗体に結合した抗CTLA−4抗体を使用して調べた。インビボ投与の後、この二重特異性抗体(BiAb)は、マウスサイログロブリン(mTg)で免疫されたマウスにおいて、甲状腺に蓄積され、実験的自己免疫性甲状腺炎(EAT)の発祥を防止した。BiAb処置マウス由来のリンパ球は、mTg再刺激に応じて増殖し、IL−2、IFN−γおよび腫瘍壊死因子(TNF)−αを産生するその能力において、未処置マウス由来のリンパ球と比較して、有意な減少を示した。さらにBiAb処置マウスは、抗mTg抗体応答、甲状腺のリンパ球浸潤、および濾胞破壊の抑制を示した。BiAbは、甲状腺を標的し、おそらくCTLA−4の結合を促進し、CD4+CD25+T細胞の数の増加をもたらした。これらの調節性T細胞は、インビトロのmTg特異的T細胞応答を抑制し、これはトランスフォーミング成長因子(TGF)−β1産生の増強に関連した。TGF−β1の中和は、BiAb処置マウス由来のT細胞のmTg特異的インビトロ増殖、およびBiAb処置マウス由来のT細胞によるIL−2産生を増加させた。活性化自己反応性T細胞上に発現されたCTLA−4の、甲状腺に密接した結合は、調節性T細胞の数、およびTGF−β1を産生する能力を上昇させ、それに伴ってIFN−γおよびTNF−αを減少させ、EATの抑制をもたらす。
【0051】
抗CTLA−4抗体でコーティングされた同種異系細胞は、炎症誘発性サイトカインIFN−γおよびIL−2の抑制ならびに調節性サイトカインIL−10、TGF−βおよびIL−4のアップレギュレーションを介して、おそらく活性化T細胞上のCTLA−4の結合を介して、免疫反応性低下を誘導した。アロ抗原による再チャレンジは無反応性を破ることはできないが、高濃度の外因性IL−2、飽和濃度の中和性抗TGF−β1抗体および抗IL−10抗体、抗CTLA−4抗体遮断の存在下で、ならびにCD4+CD25+Treg細胞の枯渇によって、一過性の寛容からの回復が観察された。寛容マウス由来のCD4+CD25+CTLA−4highTreg細胞は、抗原初回免疫マウス由来のCD25−T細胞のエフェクター機能を抑制した。抗原初回免疫マウスへのこれらのTreg細胞の養子免疫転移は、有意に減少したアロ抗原特異的応答をもたらした。さらなる特徴づけは、免疫表現型(CD62L−)を有するTreg細胞が、アロ抗原特異的T細胞応答の抑制においてより協力であることを実証した。これらの結果は、CTLA−4の標的化された結合が、移植片拒絶の防止に関する治療上の潜在力を有することを示す。膵臓島へのBiAbのコーティングは、島へのT細胞応答を抑制し得る(図10、11、12および13)。
【0052】
図3、4、5および6は、寛容を誘導した二重特異性抗体(標的特異的抗体+抗CTLA−4抗体)が、調節性T細胞産生の増加に関連することを示し、そしてこれらの節性T細胞のエフェクターT細胞への効果を示す。これらの結果はまた、標的特異的T細胞寛容を誘導したBiAbが、特異的免疫調節性T細胞に関連することを示す。このことは、BiAb処置動物の、BiAbコーティングされた細胞上に発現されていない他の抗原に応答するそれらの能力を保持する能力を介して示された。
【0053】
(実施例3:T細胞寛容は、標的化CTLA−4結合により誘導される)
BiAb療法を通じて誘導された免疫抑制をさらに特徴付けするため、コントロール抗体またはCTLA−4抗体でコーティングされた同種異系mM12細胞を、CBA/Jマウスに注入した。1つの群(BiAb処理群2)のマウスは、チャレンジ免疫の間のみ抗CTLA−4コーティングされたmM12細胞を受容し、第二の免疫応答の間にT細胞応答が制御され得るか否かを試験した。図14に示されるように、コントロール抗体でコーティングされたmM12細胞で免疫されたマウス由来の脾臓細胞は、mM12細胞によるエキソビボ再刺激において、強力なT細胞増殖性、IL−2およびIFN−γの応答を示したが、抗CTLA−4抗体コーティングされたmM12細胞で両方の時間または第二の免疫の間のみ免疫されたマウスは、有意に減少したT細胞増殖、IL−2およびIFN−γの応答を示した。興味深いことに、CTLA−4結合によって誘導された自己免疫抑制は、IL−4、IL−10およびTGF−β1の産生の増加に関連した(図14b)。抗CTLA−4抗体コーティングされたmM12細胞を受容したマウス由来の脾臓細胞は、コントロール抗体でコーティングされたmM12細胞を受容したマウス由来の脾臓細胞と比較して、これらのサイトカインの約3〜4倍高いレベルを示した。CTLA−4結合による炎症誘発性サイトカイン(例えば、IFN−γおよびIL−2)の低レベルの産生ならびに調節性サイトカイン(TGF−β1、IL−10およびIL−4)の産生の増加は、抗CTLA−4抗体コーティングされた同種異系細胞を受容したマウスにおけるアロ反応の抑制において、重要な役割を果たしているようにみえる。
【0054】
(実施例4:CTLA−4結合で誘導される免疫抑制は持続性である)
図7、8、および9は、BiAbに誘導された免疫寛容が持続的であり、標的細胞に特異的であることを示す。1つの標的に誘導された寛容は、別の標的に対して免疫系の能力への効果を有さない。
【0055】
抗原特異的無反応性の持続性を試験するため、マウスから、それらの最後のBiAb処理受けた10日後に、脾臓細胞を回収した。これらの脾臓細胞をM12細胞でインビトロにおいて5日間刺激した。これらの培養物から細胞を回収し、M12細胞による再刺激に応答するそれらの能力について試験した。寛容マウス由来の脾臓細胞は、エキソビボ再チャレンジにおいて、寛容からの回復の徴候を示さず、M12細胞による三次刺激に応じて、増殖または有意な量のIL−2を産生することはできなかった(図15aおよびb)。しかし、試験群由来の細胞およびコントロール群由来の細胞の両方は、分裂促進刺激(ConA)に応答し、このことは明らかに、細胞が生存可能であり、増殖し得ることを示す。これらの結果は、CTLA−4結合により誘導されたアロ抗原に対する寛容が、エキソビボアロ抗原チャレンジによって容易に逆転し得ることを示唆する。次に、CTLA−4結合によって誘導された寛容が、アロ抗原によるインビボチャレンジによって逆転し得るか否か、そしてそれが長期持続性であるか否かを試験するため、コントロール(mM12免疫)マウスおよび試験(BiAb処理)マウスの両方を、50日間そのままにし、60日目にM12細胞でチャレンジし、これらのマウス由来の脾臓細胞を、エキソビボM12再刺激に対するそれらの応答について試験した。図15bに示されるように、寛容(BiAb処理)マウス由来の脾臓細胞は、M12細胞に対するその応答に上昇を示さなかった。このことは、CTLA−4結合によって誘導された寛容が、アロ抗原によるインビボチャレンジ後でさえも維持されることを示唆する。
【0056】
(実施例5:標的化されたCTLA−4結合により誘導される寛容は、標的特異的である)
CTLA−4結合による抗H2d免疫応答の抑制の特異性を、BiAbコーティングされたmM12細胞であらかじめ免疫されたマウスを、(a)異なるマウス系統(C57BL/6マウス、H2b)由来の脾臓細胞、(b)脾臓細胞(Balb/cマウス、H2d)および無細胞系(Ag8、H2d)で、第20日目;第30日目において免疫することによって、試験した。これらのマウスを、C57BL/6マウスおよびBalb/cマウス由来の脾臓細胞、Ag8およびM12細胞による再刺激に対するT細胞増殖およびIL−2産生について試験した。抗CTLA−4抗体コーティングされたmM12細胞で免疫されたマウスおよびコントロール抗体でコーティングされたmM12細胞で免疫されたマウスは、C57BL/6脾臓細胞に対して同じレベルのT細胞増殖およびIL−2応答を示した(図16a)。しかし、Balb/c脾臓細胞およびAg8細胞に対する応答のパターンは、mM12細胞で刺激された場合に示されたパターンとほぼ同様であった(図16bおよびc)。これらの結果は、CTLA−4結合によってH2dアロ抗原に対する免疫応答の間に誘導されるT寛容が、標的特異的であり、同じ抗原(すなわちH2d)を保有する細胞に対して有効であるが、他の抗原を保有する(すなわち、H2b)細胞に対して有効でないことを示唆する。
【0057】
(実施例6:CD4+CD25+T細胞は、寛容マウスにおいて選択的に増殖する)
寛容誘導がCD4+CD25+T細胞の変化に関与していたか否かを知るため、ナイーブマウス、コントロールマウスおよび寛容マウスを第20日目に屠殺し、マウス由来のリンパ節細胞と脾臓細胞とをフローサイトメトリーによってCD4+CD25+集団について分析した。tBiAb処置(寛容)マウスにおいて脾臓およびLNの両方に、CD4+CD25+T細胞のパーセンテージにおける有意な増加が観察されたが、コントロールマウスにおいては観察されなかった(図17)。寛容マウス由来のリンパ様細胞におけるCD4+CD25+T細胞のパーセンテージの増加が単にCD4+CD25−T細胞の減少に起因するものであるか否かを試験するため、CD4+T細胞集団内のCD4+CD25+細胞およびCD4+CD25−T細胞の両方のパーセンテージならびに脾臓中のCD4+CD25+細胞およびCD4+CD25−T細胞の絶対数を測定した。図17aに示されるように、コントロールに対して、寛容マウスにおけるCD4+T細胞中において、CD4+CD25+T細胞のかなりの増加があった。しかし、T細胞集団内のCD4+CD25−T細胞の数には、処置マウスと未処置マウスとで有意な差はなかった。BiAb処置マウス由来の脾臓におけるCD4+CD25+T細胞の絶対数に、コントロールマウス由来の細胞数と比較して、有意な増加があった。例えば、コントロールマウスは、脾臓あたり、平均で1.74×107のCD4+CD25−細胞および1.62×106のCD25+T細胞を示すが、寛容マウスは、平均で1.76x107のCD4+CD25−細胞および2.5x106のCD25+T細胞を示した。CD25+T細胞における同様の増加はまた、寛容マウスのリンパ節においても観察された。
【0058】
CTLA−4がCD4+CD25+T細胞上に構成的に発現され、そしてインビボおよびインビトロにおけるCD4+CD25+T細胞の調節性活性の媒介に関与することが示された。CD4+CD25+T細胞上でのCTLA−4発現が決定された。図17bに示すように、寛容マウス由来のCD4+CD25+T細胞は、コントロールマウスもしくはナイーブマウス由来のCD4+CD25+細胞と比較して、CTLA−4の増加した発現を示した。
【0059】
(実施例7:エキソビボチャレンジによるBiAb処置マウスにおけるT細胞表現型)
BiAb処置マウス由来の脾臓細胞の表現型変化を試験するため、脾臓細胞を標的(M12)細胞とともにインキュベートし、そして異なる時点において種々のマーカーについて試験した(図18)。初期活性マーカーCD69を発現する細胞の数は、BiAb処置マウス由来の脾臓細胞において、刺激の24時間後、コントロール免疫マウスと比較して有意に少なかった(図18a)。種々のサイトカイン分泌細胞の数を、刺激の36時間後、細胞内染色によって決定した。IFN−γ分泌T細胞の数は、寛容マウスと比較してmM12免疫マウスにおいて有意に多かったが、より多くのIL−4、IL−10およびTGF−β1産生細胞が寛容マウスにおいて観察された(図18b)。記憶マーカーCD62Lの発現を、刺激の5日後に試験した。この記憶マーカーを発現するT細胞の数は、コントロールと比較して、BiAb処置マウス由来のCD3+細胞において有意に少なかった(図18c)。調節性T細胞表現型を試験するため、類似の培養物由来の細胞を徹底的に洗浄し、3日間静置し、そしてCD25発現について分析した。寛容マウス由来の脾臓細胞におけるCD25を発現するCD4+細胞の数は、コントロール免疫マウスのほぼ2倍であった(図18d)。
【0060】
寛容マウスおよびコントロールマウス由来のCD4+T細胞およびCD8+T細胞の両方による、M12細胞に対する増殖応答を、CFSE希釈アッセイによってエキソビボでモニタリングした。CFSE染色された脾臓細胞を、M12細胞とともに7日間インキュベートし、そしてPE標識された抗CD4抗体もしくは抗CD8抗体で染色した後にCFSE希釈について分析した。図18eに示されるように、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の両方の増殖応答は、免疫コントロールと比較して、寛容マウス由来の脾臓細胞において有意に低い。ナイーブマウス由来のCD4+T細胞およびCD8+T細胞の両方は、長期にわたる細胞分裂を示したが、寛容マウスおよびナイーブマウスの両方に由来するこれらの細胞によって経験される分裂数は、ほぼ同じであるようにみえた。このことは、寛容マウス由来の全てのアロ抗原反応性T細胞が寛容化されていなくともよく、そして抗原反応性エフェクター細胞は、寛容化マウスになお存在し得ることを示唆する。
【0061】
(実施例8:外来性IL−2は、アロ抗原に対する無反応性を部分的に逆転したが、寛容を逆転しなかった)
外来性IL−2がCTLA−4結合により誘導された寛容を逆転し得るか否かを試験するため、M12細胞および種々の量の組換えマウスIL−2(rmIL−2)を、種々のマウスの脾臓細胞に加えた。図17は、外来性に加えられたrmIL−2の非存在下もしくは存在下のいずれかにおける、抗原性の再刺激後の脾臓細胞の増殖性応答ならびにrmIL−2単独での応答を示す。少量のrmIL−2の添加は寛容化マウス由来のT細胞の有意な増殖を誘導しなかったが、部分的な回復(コントロールマウスと比較して60%まで)が、高濃度のrmIL−2の存在下で観察された。さらに、反応性低下状態は、IL−2およびアロ抗原の両方の存在下においてのみ逆転されたが、アロ抗原またはIL−2単独では逆転されなかった。このことは、反応性低下は、抗原と過剰なレベルのIL−2とが同時に存在する場合にのみ逆転され得ることを示唆する。
【0062】
寛容マウス由来のT細胞によるアロ抗原に対する三次応答を評価するため、上記の培養物由来のエフェクター細胞(図19a)を第5日目において回収し、洗浄し、静置し、新鮮な標的M12細胞とともにインキュベートした。興味深いことに、寛容T細胞は、IL−2およびアロ抗原に反応して増殖するが、その後の三次刺激におけるアロ抗原との遭遇の間、なお無反応性であっ(図19b)。このことは、これらの細胞が寛容を維持し続けており、寛容(増殖によって測定される)の逆転は高レベルのIL−2およびアロ抗原の存在下においてのみ起こることを示す。
【0063】
(実施例9:IL−10およびTGF−β1は、寛容マウス由来のT細胞の反応性低下に重要な役割を果たす)
標的化されたCTLA−4結合による寛容誘導において、IL−4、IL−10およびTGF−β1の増加ならびにIFN−γのような炎症誘発性サイトカインの減少があった。CTLA−4結合によって誘導される阻害効果がこれらの阻害性サイトカインに依存するか否かを決定するため、それらに対する中和性抗体をエキソビボで細胞培養物に添加した。図19cに示されるように、IL−4の遮断は、M12刺激に対する寛容細胞の増殖性応答に何も有意な効果を示さなかったが、抗体の飽和濃度におけるIL−10の中和は、(中和抗体の非存在下でのコントロール脾臓細胞と比較して)反応性低下からの部分的な回復をもたらした。しかし、TGF−β1に対する中和抗体単独または抗IL−10抗体との組み合わせは、T細胞の、反応性低下からのほぼ完全な回復をもたらした(図19c)。中和抗体の存在下において増殖し得る細胞は、三次刺激内容物において抗体が除去されて新鮮な標的細胞が使用された後、反応性低下をとった。
【0064】
(実施例10:CD4+CD25+T細胞上のCTLA−4は、寛容の維持に重要である)
図17bで観察されるように、寛容マウス由来のCD4+CD25+T細胞は、その表面に増加したレベルのCTLA−4が発現される。増加したCTLA−4発現の寛容に対する役割を試験するため、抗CTLA−4抗体の遮断性F(ab)フラグメントを種々の濃度で添加した。飽和濃度での抗CTLA−4 F(ab)の添加は、T細胞の、反応性低下からのほぼ完全な回復をもたらした(図19c)。このことは、標的細胞上のB7分子によるCTLA−4の直接的結合が、アロ抗原に対する反応性低下を開始させるために必要であり得ることを示唆する。
【0065】
(実施例11:GM−CSF誘導DCは、半成熟表現型を維持する)
DCの成熟に対するGM−CSF処置の効果を決定するため、MHCクラスIIおよび同時刺激性分子の発現、ならびにmTg免疫の前後に、GM−CSF処置マウスおよび未処置マウスから単離されたDCからの炎症誘発性サイトカインの産生を分析した。GM−CSFで処理されたマウス由来の脾臓は、未処置コントロール(3.61 %)と比較して、増加した数のCD11c+細胞(7.51%)を示した(図29A)。樹状細胞数の増加にもかかわらず、MHCクラスII、B7.1、B7.2およびCD40の発現レベルは、mTgでの免疫後、GM−CSF処置マウスおよび未処置マウスの両方において類似していた(図29B)。しかし、RT−PCRによって評価された炎症誘発性サイトカイン(例えば、TNF−α、IL−12およびIL−1α)は、GM−CSF処置mTg免疫マウス由来のDCと比較して、未処置mTg免疫マウス由来のDCにおいて有意に高かった(図29C)。これらのデータは、GM−CSF処置由来のDCは、mTg免疫後に半成熟状態を維持するが、未処置マウスにおいてはそうではないことを意味すると解釈される。
【0066】
(GM−CSF処置マウス由来のCD4+CD25+T細胞は、インビボにおける抗mTg応答を抑制する)
GM−CSF処置マウス由来のCD4+CD25+T細胞がインビボにおけるmTg特異的自己免疫応答を抑制し得るか否かを決定するため、GM−CSF処置およびmTg初回刺激をされたマウス由来の精製されたCD4+CD25+T細胞を、mTgで初回刺激された未処置マウスに養子免疫転移した。図30Aに示すように、GM−CSF処置マウス由来のCD4+CD25+T細胞を受容するマウスは、mTgコントロールマウスと比較して、有意に低いmTg特異的増殖を示した(p=0.021)。種々のマウス群由来の脾臓細胞によるmTg誘導性サイトカイン産生の分析は、CD4+CD25+T細胞レシピエントおよび非レシピエントmTgコントロールマウスの両方において、同様のレベルのIFN−γを示した(図30B)。対照的に、レシピエントマウス由来の細胞は、非レシピエントmTg初回刺激マウスに対して、有意に多い量のIL−4(p=0.045)およびIL−10(p=0.035)を産生した(それぞれ、図30CおよびD)。
【0067】
(CD4+CD25+T細胞によって産生されたIL−10は、mTg特異的T細胞応答を抑制するために重要である)
GM−CSF誘導性CD4+CD25+T細胞によって産生されたIL−10がmTg特異的T細胞応答を抑制することの原因であるか否かを決定するため、未処置mTg初回刺激マウス由来のT細胞を、mTg初回刺激GM−CSF処置マウス由来のCD4+CD25+T細胞と、抗IL−10レセプター(αIL−10R)mAbもしくはアイソタイプコントロールの存在下において共培養した。ナイーブマウス由来のT細胞枯渇脾臓細胞(図31A)または単離DC(図31B)を、フィーダー細胞として使用した。図31に示すように、アイソタイプコントロールAbの存在下でmTg初回刺激GM−CSF処置マウス由来のCD4+CD25+T細胞とともに培養されたmTg初回刺激T細胞は、コントロールと比較して、減少したCFSE希釈(2.42%および11.46%と比較して、それぞれ0.72%および8.18%)によって示されるように、低下したmTg特異的T細胞増殖を示した。しかし、この応答は、αIL−10R mAbの存在下では、コントロールレベルをとるかまたはより高いレベルをとった(すなわち、2.15%および16.62%)。CD4+CD25+T細胞によって産生されたIL−10は、mTg特異的増殖を抑制するために必要である。
【0068】
(αIL−10R mAbによる処置は、EATのGM−CSF誘導性抑制を無効にする)
EATのGM−CSF誘導性抑制におけるIL−10の役割を調べた。IL−10の効果を、疾患誘導の間の種々の時間におけるGM−CSF処置マウスに対する飽和濃度のαIL−10R mAbの投与によって、遮断した。投与時間にかかわらず、GM−CSF処置の直後にαIL−10R mAbで処置された一部のマウス(すなわちGM−CSF/αIL−10R #2)を除いて、αIL−10R mAbを受容したほぼ全ての動物が、GM−CSFとアイソタイプコントロールmAbとを受容したマウスに対して、増加したmTg特異的増殖を示した。増殖における有意な増加は、GM−CSF処置後5日目αIL−10R mAbを受容するマウス(すなわち、GM−CSF/αIL−10R #3)、または疾患の経過全体にわたってαIL−10R mAbを受容するマウス(すなわち、GM−CSF/αIL−10R #1)において見出された(それぞれ、p=0.001およびp=0.005)(図32A)。αIL−10R mAbの投与の時間にかかわらず、全GM−CSF処置マウスにおいてCD4+CD25+T細胞の頻度の増加が観察された(図32B)。このことは、IL−10の遮断が、GM−CSF誘導性DCによるこれらの細胞の増殖に効果を有さないことを示唆する。
【0069】
図32Cおよび表1に見られるように、マウスのαIL−10R mAb群由来の甲状腺は、GM−CSF処置の直後にαIL−10R mAbで処置された一部のマウス(すなわちGM−CSF/αIL−10R #2)を除いて、GM−CSF/アイソタイプコントロール群のマウスに由来する甲状腺と比較して、より重篤なリンパ球浸潤を示した。IL−10は、GM−CSF誘導性疾患抑制の主要な伝達物質である。
【0070】
(甲状腺微小環境に対するGM−CSF処置の効果)
標的器官に対するGM−CSFの効果を、処置マウスの甲状腺における細胞型およびサイトカイン産生によって調べた。GM−CSF処置は、末梢におけるCD8a−DCの増殖をもたらした(図29A)。しかし、この増殖は、甲状腺内部を反映していなかった。対照的に、未処置マウスに対して、GM−CSF処置マウスの甲状腺におけるCD4+CD25+T細胞のパーセンテージの増加があった(それぞれ、24.57%および20.06%)(図33A)。以前の研究は、MCP−1が優先的にCD4+CD25+T細胞を甲状腺に誘引し、一方RANTESは優先的にCD4+エフェクターT細胞を誘引することを示している。これら2種のケモカインのレベルを試験した。MCP−1産生は、全ての実験群の間で同等であったが、RANTESは検出できなかった。これらのことは、これらのケモカインが、観察されたGM−CSF処理甲状腺におけるCD4+CD25+T細胞の頻度の増加を説明しないことを示唆する。
【0071】
甲状腺細胞および甲状腺残留リンパ球によるサイトカイン産生を定量した。mTgコントロールマウスと比較して、IFN−γ産生のわずかな減少を伴うIL−10産生のわずかな増加がGM−CSF処置マウスにおいて観察されたが(図33B)、これらの差異は、有意ではなかった。
【0072】
数件の研究は、HTにおける甲状腺細胞破壊が、増加されたカスパーゼ発現を介したFas媒介性アポトーシスに起因することを示唆している。甲状腺細胞におけるFasおよびFasリガンド(FasL)、ならびにカスパーゼ8の発現レベルが、RT−PCRによって試験された。CFAおよびmTgコントロールマウスと比較して、GM−CSF処置マウスにおけるFas発現にわずかな増加が観察されたが、いずれの群においても、検出可能なFasL発現はなかった。さらに、種々のマウスの群の間で、カスパーゼ8の発現レベルにおける大きな差はなかった(図33C)。
【0073】
GM−CSF処置がEATの抑制を引き起こし得る機構を調べた。GM−CSFがDCを増殖させ、それらをインビボで半成熟状態に維持し、CD4+CD25+T細胞の増殖を促進し、そしてEAT抑制に必要なより高いレベルのIL−10産生を誘導する。これらの結果はさらに、GM−CSF処置がCD8a−DCおよびCD4+CD25+調節性T細胞を増殖させて、EATを抑制させ得るという結果をもたらす。
【0074】
DC機能は伝統的に、一次T細胞応答の誘導に関与するが、それらが末梢寛容に重要な役割を果たすという証拠が増加しつつある。DCは、数段階の成熟段階を経るものであり、そして初期の研究は、半成熟DCが調節性T細胞の誘導および増殖に重要な役割を果たすことを示した。GM−CSF処置は、調節特性を有するCD4+CD25+T細胞の頻度の増加をもたらしたので、GM−CSFがDC成熟に影響を及ぼすことによりその効果を発揮したか否かを試験した。GM−CSF処置マウス由来のDCは、未処置mTgコントロールマウスと比較してMHCクラスIIおよびB7分子の高レベルの発現、および炎症誘発性サイトカインの低レベルの発現によって示されるような、半成熟表現型を示した。このことは、GM−CSF処置がおそらく、調節性T細胞の産生を補助することが知られている半成熟DCの増殖を介して、寛容を誘導および/または促進したことを示唆する。
【0075】
初期のレポートは、低濃度のGM−CSF中で骨髄前駆細胞を培養することによって産生されたDCが、成熟抵抗性であること、およびアロペプチド(allo−peptide)でパルスされたこれらのDCの接種が、インビボで同種移植片生存を延長したことを示した。このようなDCの主な特性の1つは、活性化されない限り有意なレベルのCD25を発現しないIL−10産生性1型調節性T(Tr1)細胞を誘導するこれらの能力である。しかし、他の研究は、未成熟DCおよび他の免疫寛容を生じるDCがIL−10産生性CD4+CD25+調節性T細胞の増殖を補助し得、これらがTr1細胞の誘導および分化において重要な役割を果たし得ることを、明らかに示している。
【0076】
数種の型の調節性T細胞が記載されており、各々、特異的な表面表現型およびサイトカインプロフィールを有するが、天然に存在するCD4+CD25+調節性T細胞(末梢CD4+T細胞の5〜10%を構成する)は、中枢性の寛容を逃れる自己反応性T細胞の優勢な抑制因子である。GM−CSF処置マウス由来のCD4+CD25+T細胞は、インビトロでエフェクターT細胞のmTg特異的増殖応答を抑制し得ることが実証された。しかし、未処置であるがmTgで初回刺激されたマウスに由来するCD4+CD25+T細胞は、同様のmTg特異的応答の抑制を示すことができなかった。GM−CSF処置マウス由来のリンパ球のインビトロ培養物中のCD4+CD25+T細胞の枯渇は、mTg特異的増殖を復活させた。このことは、エフェクターT細胞は、それらが未処置mTg初回刺激マウスで産生されたのと同様にGM−CSF処置マウス中で産生されるが、それらの機能は、GM−CSF処置マウスにおいて誘導/増殖されたCD4+CD25+T細胞によって抑制されたことを示した。GM−CSF処置マウスからmTg初回刺激マウスへのCD4+CD25+T細胞の養子免疫転移は、mTg初回刺激非レシピエントと比較して、mTg特異的増殖の有意な抑制をもたらした。この抑制性特性は、この集団が主にCD4+CD25+調節性T細胞から構成されていたことを示唆した。さらに、レシピエントマウス由来のリンパ球は、mTgによるインビトロ刺激によって、mTg初回刺激コントロールと比較して、より高レベルのIL−10およびIL−4を産生した。このことは、養子免疫転移されたCD4+CD25+T細胞が、GM−CSF処置ドナーマウスにおいて見られるような、レシピエントエフェクターT細胞に対する抑制性効果を発揮したことを示した。
【0077】
GM−CSF誘導性CD4+CD25+T細胞によるmTg特異的応答の抑制の機構を探索するため、さらなる研究を行った。GM−CSF処置マウスにおけるCD4+CD25+T細胞の増殖および機能の両方におけるIL−10の役割を試験した。αIL−10R抗体を使用したインビボでのIL−10機能の遮断は、GM−CSF処置マウス由来のCD4+CD25+T細胞のインビトロにおけるmTg特異的T細胞応答に対する抑制性効果を逆転させた。このことは、EATのGM−CSF誘導性抑制におけるこのサイトカインの重要な役割を示唆する。インビボでのIL−10機能の遮断は、GM−CSFの疾患抑制効果を無効にし、EATの発生を可能にした。疾患発達の間の種々の時点におけるαIL−10R抗体による処置の開始は、IL−10がインビボにおけるCD4+CD25+T細胞の誘導および/または増殖に必要であること、ならびにそれが自己反応性エフェクターT細胞機能を抑制し、結果としてEATの抑制をもたらすためにのみ必要とされるのか否かを示した。処置の時間にかかわらず、IL−10の遮断は、大多数のマウスにおいてEAT抑制能を無効にした。興味深いことに、CD4+CD25+T細胞の数は、αIL−10R抗体処置にかかわらず、未処置マウスと比較して、全てのGM−CSF処置マウスにおいてより多かった。IL−10は、CD4+CD25+T細胞の増殖のために必須ではない。しかし、これらの調節性T細胞によって産生されたIL−10は、エフェクターT細胞の抑制のために重要である。
【0078】
(表I:GM−CSF誘導性EAT抑制に対する抗IL−10R Abの効果)
【0079】
【表1】
材料および方法に記載されるように、マウスをGM−CSFで処置し、mTgで免疫し、そしてさらに抗IL−10R mAbもしくはアイソタイプコントロールAbで処理した。これらのマウスをコントロールマウスとともに第45日目に屠殺し、屠殺と同時にマウスから甲状腺を回収し、ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋し、そして組織学的H&E染色のために薄切した。材料および方法に記載されるように、甲状腺炎細胞浸潤指数を決定した。αIL−10R mAb処置マウスとアイソタイプコントロールマウスとを比較することによって、p値を計算した。
【0080】
IL−10は、炎症の重要な調節因子であり、これは、炎症誘発性サイントカインおよびT細胞の増殖応答の抑制を介して、Th1型およびTh2型両方の免疫応答を阻害し得る。T細胞のIL−10媒介性抑制の主要な機構の1つは、CD28同時刺激経路の選択的阻害を介する。しかし、甲状腺炎において、IL−10の作用の代替的機構は提唱されている。IL−10をコードするcDNA発現ベクターの甲状腺への注入は、リンパ球浸潤およびEATの発生を顕著に阻害して疾患の進行を妨げ得る。IL−10のこの抑制効果は、以下のいずれかを介して媒介される:甲状腺細胞上のFasリガンド発現の増強と甲状腺浸潤リンパ球の活性化誘導性細胞死の誘導、または抗アポトーシス分子(例えば、cFLIPおよびBcl−xL)の強力なアップレギュレーション(これらは、甲状腺細胞のCD95誘導性アポトーシスを防止し得る)。反対に、mTg初回刺激マウスの甲状腺へのIL−1およびTNF−αの直接注入は、甲状腺細胞のアポトーシスを誘導し、炎症誘発性サイトカインが甲状腺破壊に重要な役割を果たすことを示した。これは、IL−10が、炎症誘発性サイトカイン産生の抑制を介してその効果を媒介しているかもしれないという可能性を浮上させた。
【0081】
GM−CSF処置マウスにおける増加したIL−10応答が、甲状腺微小環境に対する何らかの効果を有するか否かを知るため、GM−CSF処置マウスの甲状腺における種々のアポトーシス誘発性(pro−apoptotic)分子の発現レベルを試験した。GM−CSF処置マウスの甲状腺において、CD4+CD25+T細胞およびIL−10の産生の頻度の増加があったが、GM−CSF処理マウスの甲状腺と未処置mTgコントロールマウスの甲状腺との間に、アポトーシス誘発性分子の発現における有意差はなかった。EATのGM−CSF媒介性抑制は、主に、mTg特異的エフェクターT細胞に対するIL−10の直接的効果に起因する。
【0082】
まとめると、半成熟DCのGM−CSF誘導性増殖およびこれらのDCによるサイログロブリンペプチド提示は、CD4+CD25+調節性T細胞の増殖をもたらした可能性がある。これらの調節性T細胞によって産生されたIL−10が、mTg特異的T細胞の自己免疫エフェクター機能を阻害し、結果としてEATを抑制した。これらの結果は、EAT、およびEATと同様の病因を有する他の自己免疫疾患における、GM−CSFの治療上の潜在力を示す。
【0083】
(実施例12.CTLA−4結合を介した寛容誘導)
CTLA−4(CD 152)は、T細胞活性化をダウンレギュレートすることおよびリンパ球ホメオスタシスを維持することに積極的に関与する。CTLA−4の標的化された結合は、T細胞応答を下方調節してアロ免疫応答および自己免疫応答を抑制し得る。標的化されたCTLA−4結合は、Ag特異的CD4+CD25+CTLA−4high調節性T細胞(Treg細胞)集団の選択的誘導を介した特異的標的に対する免疫寛容を誘導し得る。抗CTLA−4 Abでコーティングされた同種異系細胞は、炎症誘発性サイトカインIFN−γおよびIL−2の抑制、そして調節性サイトカインIL−10、TGF−β1、およびIL−4のアップレギュレーション(おそらく、活性化T細胞へのCTLA−4の結合を介する)を介して、免疫反応性低下を誘導した。アロ抗原による再チャレンジは無反応性を破ることはできなかったが、高濃度の外来性IL−2、飽和濃度の中和性抗TGF−β1および抗IL−10 Ab、抗CTLA−4抗体遮断の存在下で、そしてCD4+CD25+Treg細胞の枯渇によって、寛容からの一過性の回復が観察された。寛容マウス由来のCD4+CD25+CTLA−4highTreg細胞は、Ag初回刺激マウス由来のCD25−T細胞のエフェクター機能を抑制した。Ag初回刺激マウスへのこれらのTreg細胞の養子免疫転移は、顕著に低下したアロ抗原特異的応答をもたらした。さらなる特徴づけは、記憶表現型(CD62L−)を有するTreg細胞が、アロ抗原特異的T細胞応答の抑制においてより強力であったことを実証した。この標的化されたCTLA−4結合は、移植片拒絶の防止のための治療上の潜在力を有する。
【0084】
アロ抗原特異的T細胞寛容は、移植片拒絶の予防における主な目標の1つである。Ag特異的パターンにおいて同種反応性T細胞を標的するようなより指向的な(directed)治療の探索は続くが、非特異的な免疫抑制薬は、現在の治療戦略の中心となる。T細胞応答性低下の誘導またはT細胞寛容の誘導は、慢性の免疫抑制薬の必要のない持続性の移植片生存を促進することにおいて、可能性を維持する。
【0085】
成熟Tリンパ球の活性化は、TCR複合体のAg特異的誘発およびCD28−B7.1/B7.2経路を通して仲介される同時刺激の両方を必要とする、多工程のプロセスである。CD28リガンド、CD80(B7.1)およびCD86(B7.2)は、APC上に見出され、そしてこれらのT細胞上のCD28への連結は、IL−2のアップレギュレーションおよび細胞周期を通した進行をもたらす。CTLA−4は、CTLA−4ノックアウトマウスにおいて見られる致死性のリンパ球増殖によって証明される、T細胞活性化の重要なインヒビターである。B7/CD28経路は、T細胞ホメオスタシスにおいて主な役割を果たし、そしてこの経路の操作は、臨床適用で免疫応答を調節するための強力な戦略として出現している。抗原性刺激の存在下でのこの同時刺激の経路の阻害は、T細胞アネルギーをもたらし得る。これは、CD86および/またはCD80をブロックすることによって同種移植片拒絶を予防し、それによって移植片生存の延長をもたらすために動物モデルにおいて首尾よく使用されている。Ag刺激と同時のCTLA−4の結合は、T細胞機能を抑制し得るか、またはT細胞応答性低下をもたらし得る。この観察は、TCR−MHC Ag複合体相互作用と同時のCTLA−4の結合が、同時に起こるCD28を通した同時刺激にもかかわらずT細胞活性化の阻害をもたらし得るという、より初期の視点を支持する。同時刺激をブロックすることによって移植片拒絶および自己免疫状態を予防し得るかまたは抑制し得るCTLA−4−Igは、調節性T細胞(Treg細胞)の産生を促進しないと考えられている。CD28/B7同時刺激は、Ag−特異的Treg細胞の産生および維持に必要である。
【0086】
標的細胞と接触している同種反応性T細胞におけるCTLA−4の結合は、T細胞応答を下向き調節(down−modulate)し得る。標的化されたCTLA−4結合は、自己免疫性甲状腺炎のモデルにおいて自己反応性T細胞を下向き調節し得る。このアプローチは、甲状腺Ag特異的寛容を誘導し、この甲状腺Ag特異的寛容は、疾患の抑制をもたらす。
【0087】
アロ抗原認識の間のCTLA−4結合におけるAg特異的寛容誘導の機構を、本明細書中で分析する。この寛容誘導系において、甲状腺刺激ホルモン(TSH)レセプター発現性M12(H2d)細胞(mM12細胞)を、本明細書中で記載されるように、H2kマウスを刺激するためのアロ抗原供給源として使用した。TSHRおよびCTLA−4に対する特異性を有する二重特異性Ab(BiAb)であって、BiAbの抗TSHR部分がTSHR発現性アロ抗原性mM12細胞に結合し得、CTLA−4に結合する抗CTLA−4部分を残している二重特異性Ab(BiAb)は、攻撃性T細胞上に発現した。寛容誘導は、二次免疫応答の間に達成され得るが、また、そのアロ抗原再チャレンジは、この寛容状態に何ら効果を有さなかった。さらに、この寛容誘導は、CD4+CD25+Treg細胞の下位集団の選択的拡大と関連していた。この選択的拡大は、非寛容マウス由来のT細胞の同種応答を下向き調節し得た。この結果は、以下の通りである。
【0088】
(同種認識におけるCTLA−4の結合は、同種免疫応答を抑制する)
標的化CTLA−4結合がインビボアロ抗原性T細胞応答を阻害するか否かに取り組むため、コントロールAb(cBiAb)でコーティングされたアロ抗原性mM12細胞またはCTLA−4 Ab(tBiAb)でコーティングされたアロ抗原性mM12細胞を、CBA/Jマウスに注射した。1つの群のマウス(BiAb処置群2)に、tBiAbでコーティングされたmM12細胞をチャレンジ免疫の間のみ与えて、二次免疫応答の間T細胞応答が弱められるか否かを試験した。図34に示されるように、コントロールマウス由来の脾臓細胞は、mM12細胞によるエキソビボ再刺激において、強いT細胞増殖、IL−2応答およびIFN−γ応答を示した。しかし、2回とも免疫された処置マウスまたはBiAbでコーティングされたmM12細胞による第二の免疫の間のみ免疫された処置マウスは、T細胞増殖、IL−2応答、およびIFN−γ応答の有為な低下を示した。CTLA−4結合において誘導される同種免疫抑制は、IL−4、IL−10およびTGF−β1の増大に関連していた(図34b)。BiAbでコーティングされたmM12細胞を与えたマウス由来の脾臓細胞は、コントロールであるAbコーティングmM12細胞を与えたマウス由来の脾臓細胞と比較して、これらのサイトカインの約3〜4倍高いレベルを示した。
【0089】
CTLA−4結合において誘導される同種免疫抑制は、持続性である。インビトロのBiAb処置マウス由来のリンパ球の再刺激が寛容を壊すか否かを試験するため、脾臓 細胞を、インビトロでM12細胞によって5日間刺激した。細胞を、これらの培養物から回収し、そしてM12細胞によるさらなる再刺激に対するその応答を試験した。これらの細胞は、エキソビボ再チャレンジにおいて寛容からの回復の何らの兆候も示さず、M12細胞による三次刺激に対する応答におけるIL−2の有為な量の増殖または産生をしなかった(図35、aおよびb)。しかし、両試験群およびコントロール群のマウス由来の細胞は、細胞分裂性の刺激(Con A)に対して応答し、この細胞が生存可能であり、増殖可能であることを明らかに示した。これらの結果は、アロ抗原に対して標的化CTLA−4結合において誘導される寛容は、エキソビボアロ抗原チャレンジによって容易に逆転しないことを示唆する。
【0090】
インビボのCTLA−4結合によって誘導された寛容の持続時間および逆転可能性を試験した。コントロールマウスおよびBiAb処置マウスを、50日間休ませ、そしてM12細胞でチャレンジし、そしてこれらのマウスからの脾臓細胞を、エキソビボM12再刺激に対して応答する能力について試験した。図35cおよび図35dに示すように、寛容(BiAb処置)マウス由来の脾臓細胞は、M12細胞に対する応答において、何ら増大の兆候を示さなかった。このことは、CTLA−4結合において誘導される寛容は、アロ抗原によるインビボチャレンジ後でさえ維持されることを示唆する。
【0091】
(標的化CTLA−4結合において誘導される寛容は、標的特異的である)
CTLA−4結合における抗H2d免疫応答の抑制の特異性を、異なったT細胞によるBiAb処置CBA/J(H2k)マウスのチャレンジによって試験した。処置後20日目に、これらのマウスに、異なったマウス(C57BL/6マウス、H2b)系統由来の脾臓細胞またはBALB/cマウス由来の脾臓細胞もしくはAg8細胞株(どちらもM12細胞(H2d)に対して同系である)のいずれかを与えた。30日目に、これらのマウスを、C57BL/マウス由来の脾臓細胞およびBALB/cマウス由来の脾臓細胞、Ag8細胞およびM12細胞による再刺激に対する応答におけるT細胞増殖およびIL−2産生について試験した。コントロールマウスおよびBiAb処置マウスは、C57BL/6脾臓細胞に対して同じレベルのT細胞増殖応答およびIL−2応答を示した(図36a)。しかし、BALB/c脾臓細胞およびAg8細胞のこの応答パターンは、M12細胞で刺激した場合に記録した応答パターンとは多少類似していた(図36、bおよびc)。H2dアロ抗原に対する免疫応答の間のCTLA−4結合におけるT細胞寛容は、標的特異的であり、そして同じAgを保有する細胞(すなわち、H2d)に対して有効であるが、他のAgを保有する細胞(すなわち、H2b)に対しては有効でない。
【0092】
(CD4+CD25+T細胞は、寛容マウスにおいて選択的に発現される)
CD4+CD25+T細胞において、寛容誘導がチャレンジと関連するか否かを試験した。ネイティブのマウス、コントロールマウスおよびBiAb処置マウスを、20日目に屠殺し、そしてリンパ節および脾臓細胞を、CD4+CD25+集団についてのフローサイトメトリーによって分析した。CD4+CD25+T細胞の百分率における有為な上昇が、BiAb処置(寛容)マウスにおいて脾臓およびリンパ節の両方で観察されたが、コントロールマウスにおいて観察されなかった(図37)。寛容マウス由来のリンパ細胞におけるCD4+CD25+T細胞の百分率の上昇が、単にCD4+CD25−T細胞の減少に起因するか否かを試験するため、脾臓において、CD4+CD25+T細胞およびCD4+CD25−T細胞の両方における百分率をCD4+T細胞集団内において測定し、そしてCD4+CD25+T細胞およびCD4+CD25−T細胞の絶対数を測定した。図37aで示すように、コントロールマウスと比較し、寛容マウスにおいて、CD4+T細胞におけるCD4+CD25+T細胞において、有為な上昇(p<0.034)があった。しかし、T細胞集団におけるCD4+CD25−T細胞の数は、処置マウスおよび未処置マウスにおいて有為に異ならなかった(示さず)。コントロールマウス由来の脾臓と比較して、脾臓におけるCD4+CD25+T細胞の絶対数の有為な増加(p<0.021)を、BiAb処置マウスから観察した。例えば、コントロールマウスが脾臓あたり平均1.74×107のCD4+CD25−細胞および平均1.62×106のCD4+CD25+T細胞を示したのに対し、寛容マウスは、平均1.76×107のCD4+CD25−細胞および平均2.5×106のCD25+細胞を示した。寛容マウスのリンパ節において、CD25+T細胞における類似の増加を観察した。
【0093】
CTLA−4は、CD4+CD25+T細胞上で構成的に発現され、そしてインビトロおよびインビボでその調節活性の媒介に関連する。図37bに示すように、寛容マウス由来のCD4+CD25+T細胞は、コントロールマウスまたはネイティブマウス由来のCD4+CD25+T細胞と比較してCTLA−4の発現の増加を示した。しかし、3群全てに由来するCD4+CD25−T細胞とも、表面CTLA−4発現を殆ど示さなかったか、または全く示さなかった。
【0094】
(エキソビボチャレンジにおけるBiAb処置マウスにおけるT細胞表現型)
BiAb処置マウスにおけるアロ抗原性標的に対するT細胞応答性低下の機構およびTreg細胞産生の機構を理解するための最初のステップとして、BiAb処置マウス由来のT細胞の表現型変化を、標的(M12)細胞でのエキソビボチャレンジにおいて試験した。脾臓細胞を、M12細胞と共にインキュベートし、そして種々のマーカーについて異なる時点で試験した(図38)。初期活性化マーカーであるCD69を発現する細胞の数は、刺激の24時間後のBiAb処置マウス由来の脾臓において、コントロール免疫マウスと比較して有為に少なかった(図38a)。種々のサイトカインを分泌するT細胞を、刺激36時間後に、細胞内染色によって検出した。IFN−γを分泌しているT細胞の数は、mM12免疫マウスにおいて寛容マウスと比較して有為に多かった一方で、IL−4産生細胞、IL−10産生細胞、およびTGF−β1産生細胞の増加を、寛容マウスにおいて観察した(図38b)。CD62Lの低レベルの発現または発現がないことは記憶表現型に関連しているので、刺激5日後のCD62L発現を試験した。低レベルのCD62Lを発現しているT細胞の数は、BiAb処置マウス由来のCD3+細胞において、コントロールと比較して有為に低かった(図38c)。Treg細胞表現型を試験するため、類似の培養物由来の細胞を、完全に洗浄し、3日間休ませ、そしてCD25発現について分析した。寛容マウス由来の脾臓細胞においてCD25を発現するCD4+細胞の数は、免疫マウス由来の脾臓細胞においてCD25を発現するCD4+細胞の数のほぼ2倍であった(図38d)。CFSE染色した脾臓細胞を、M12細胞と共に7日間インキュベートし、そしてCFSE希釈について試験した。図38eに示すように、CD4+T細胞およびCD8+T細胞の両方の増殖性応答は、寛容マウス由来の細胞において、免疫コントロールと比較して有為に低かった。しかし、寛容マウスおよびコントロールマウスに由来するこれらの細胞によって行われた分裂の数は、およそ同じであるようであった。
【0095】
(外因性IL−2は、アロ抗原に対する非応答性を部分的に逆転したが、寛容を逆転しない)
外因性IL−2がCTLA−4結合において誘導された寛容を逆転し得るか否かを試験するため、M12細胞および種々の量のrmIL−2を、異なるマウス由来の脾臓細胞に加えた。図39aは、外因性で加えられたrmIL−2非存在下または存在下における、抗原性再刺激後の脾臓細胞の増殖性応答を示す。少量のrmIL−2の添加は寛容化マウス由来のT細胞の有為な増殖を誘導しなかったが、高濃度でのrmIL−2存在下で部分的逆転(コントロールマウスの逆転と比較して60%まで)を観察した。さらに、応答性低下状態は、IL−2およびアロ抗原の両存在下でのみ逆転されたが、いずれのアロ抗原単独またはIL−2単独でも逆転されなかった。このことは、応答性低下は、Agおよび過剰レベルのIL−2が同時に存在する場合にのみ逆転されることを示唆する。
【0096】
寛容マウス由来のT細胞によるアロ抗原に対する三次応答を評価するため、上記培養物(図39a)由来のエフェクター細胞を、5日目に回収し、休ませ、そして新しい標的M12細胞と共にインキュベートした。IL−2およびアロ抗原の存在下で増殖した寛容T細胞は、三次刺激におけるその後のアロ抗原との遭遇の間、非応答性であった(図39b)。このことは、これらの細胞は、寛容であり続け、そして増殖性応答の逆転は、高レベルのIL−2およびアロ抗原の存在下でのみ起こることを示す。
【0097】
(IL−10およびTGF−β1は、寛容マウス由来のT細胞の応答性低下において重要な役割を果たす)
標的化CTLA−4結合による寛容誘導において、炎症促進性サイトカイン(例えば、IFN−γ)の減少に伴ってIL−4、IL−10、およびTGF−β1における増大を観察した。CTLA−4結合による誘導の抑制的効果がこれらの阻害性サイトカインに依存するか否かを決定するため、これらのサイトカインに対する中性化Abをエキソビボ細胞培養物に添加した。図39cに示すように、IL−4の遮断は、M12刺激に対する寛容細胞の増殖性応答に何ら効果を示さなかったが、IL−10中性化は、応答性低下からの部分的逆転をもたらした(中性化Ab非存在下のコントロール脾臓細胞と比較した)。しかし、TGF−β1に対する中性化Ab単独または中性化Abと抗IL−10 Abとの組み合わせは、T細胞の低応答性からのほぼ完全な逆転をもたらした(図39c)。また、外因性IL−2によって見られるように、これらの培養物から回収した細胞の中性化Ab非存在下における標的細胞と一緒のその後のインキュベーションは、サイトカイン中性化Abの存在下の増殖性応答の逆転は、一過性であることを示した。
【0098】
(CD4+CD25+T細胞上のCTLA−4は、寛容の維持に重要である)
図37bにおいて観察されるように、寛容マウス由来のCD4+CD25+T細胞は、その表面上のCTLA−4の上昇したレベルを発現した。寛容における増大したCTLA−4発現の役割を試験するため、抗CTLA−4AbのブロッキングのFabを、種々の濃度で加えた。飽和濃度での抗CTLA−4 Fabの添加は、T細胞の応答性低下からのほぼ完全な逆転をもたらした(図39c)。このことは、標的T細胞上のCTLA−4の結合は、アロ抗原に対する応答性低下を開始するために必要であることを示唆する。
【0099】
(標的化CTLA−4結合によって誘導された寛容におけるCD4+CD25+T細胞の役割)
CD4+CD25+Treg細胞がアロ抗原特異的T細胞応答のダウンレギュレーションにおいて役割を有するか否かを見るため、寛容マウスおよびコントロールマウス由来のCD4+CD25+T細胞およびCD4+CD25−T細胞を、磁気細胞分離系を用いて単離した(図40a)。寛容マウス由来のCD4+CD25+枯渇CD3+細胞は、M12細胞に対して有為に増大した増殖性応答を示したが、コントロールマウスは示さなかった(図40a)。寛容化マウス由来のCD25+細胞を欠損した培養物は、普通に応答し、アロ抗原による再刺激においてほとんどサイトカイン応答を示さなかったか、または全く示さなかった(図40、c〜e)。IL−10応答およびTGF−β1応答の両方は、主にCD25+T細胞に制限されるが、IL−4の主な供給源は、CD25−T細胞であることを見出した。寛容マウス由来のCD4+CD25+細胞を、免疫マウス由来のCD25−T細胞と共に共培養(coculture)した場合、M12細胞に対する応答は、有為に抑制された(図40f)。しかし、免疫マウス由来のCD4+CD25+T細胞の寛容マウス由来のCD25−T細胞への添加は、M12細胞に対するT細胞の応答の抑制をしなかった。
【0100】
(接触依存性は、寛容の維持における主要な機構である)
CD4+CD25+細胞による寛容誘導が、可溶性因子によって仲介されるかまたはT細胞−T細胞接触を必要とするかを調べるため、Transwellチャンバーアッセイを行った。図40fに示されるように、寛容マウス由来のCD4+CD25+細胞は、コントロールマウス由来のリンパ球の増殖を抑制した。Transwellチャンバー内での2つの集団(CD4+CD25+細胞およびCD25−T細胞)の分離は、CD4+細胞が枯渇した場合に事実上同じ効果を示した(図40g)。その上、寛容マウス由来のCD25+細胞は、CD25−T細胞の応答性低下を誘導したが、これらを別々のチャンバー内にM12細胞と共に維持した場合、同様の抑制は見られなかった。しかし、両チャンバーにおけるM12細胞の存在は、増殖において約30%の低下をもたらした。このことは、CD4+CD25+T細胞によるサイトカイン産生は、アロ抗原刺激を必要とし、そしてこれらのサイトカインは、アロ抗原と接触しているCD25−細胞に、低い効果であるが効果を有することを示唆する。図40fにおいて観察されるように、同じチャンバー内のCD4+CD25+T細胞とCD25−細胞との共培養は、最大の抑制をもたらした。直接の細胞−細胞接触(標的細胞−調節細胞の接触、標的細胞−エフェクター細胞の接触、および調節細胞−エフェクター細胞の接触)は、寛容マウス由来のCD4+CD25+T細胞による最適な阻害のために必要である。
【0101】
(CTLA−4結合において誘導された寛容は、適応的に伝達される)
M12細胞(H2d)およびC57BL/6マウス(H2b)脾臓細胞でプライムしたマウスに、寛容マウスおよびコントロールマウス由来のCD4+CD25+T細胞をi.v.注射した。これらのマウスを、M12細胞で2時間チャレンジし、そして15日後にこれらを屠殺して、標的細胞に応答する能力を試験した。寛容マウス由来のCD4+CD25+T細胞を与えたレシピエントマウス由来の脾臓細胞は、非レシピエントマウスおよびコントロールCD4+CD25+T細胞レシピエントマウスと比較して、M12細胞に対する増殖性応答およびIL−2応答の有為な低下を示した(図41a)。また、レシピエント由来の脾臓細胞を、C57BL/6脾臓細胞でエキソビボチャレンジした。図41aに示すように、寛容マウス由来のCD4+CD25+T細胞もコントロールマウス由来のCD4+CD25+T細胞も、C57BL/6脾臓細胞に対する増殖性応答およびIL−2応答を何ら有さず、そして伝達された寛容の標的特異性を示した。
【0102】
(記憶表現型を有するCD4+CD25+T細胞は、応答性低下の誘導においてより強力である)
記憶集団またはネイティブ集団に対するこの調節効果を局在化するために、寛容マウス由来のCD4+CD25+T細胞を、CD62L+画分およびCD62L−画分にさらに分離し(図42a)、そして表面CTLA−4発現、ならびにIL−10およびTGF−β1を産生する能力、ならびにT細胞増殖応答を抑制する能力について試験した。CD25+CD62L+T細胞と比較して、CD25+CD62L−細胞は、より高いレベルのCTLA−4を発現し、そしてM12細胞への曝露において有為に高い量のIL−10およびTGF−β1を産生した(図42cおよびd)。両集団とも、有為な量のIL−4、IL−2およびIFN−γを産生しなかった(示さず)。CD25+CD62L+Treg細胞およびCD25+CD62L−Treg細胞の両方は、アロ抗原に対するエフェクターT細胞応答を抑制する能力を示し、記憶表現型を有するCD25+集団(CD25+CD62L−)は、より強力であった(図42e)。
【0103】
有効なアロ抗原特異的寛容を、標的化したCTLA−4の結合において誘導し、そしてこの寛容誘導に関連する推定機構を調べた。アロ抗原性細胞に対するT細胞活性化は、マウスに抗CTLA−4 Ab(tBiAb)コーティングアロ抗原性細胞を注射した場合のみダウンレギュレートされたが、イソ型コントロールAb(cBiAb)コーティング細胞を注射した場合はダウンレギュレートされなかった。cBiAbコーティング細胞と比較して、tBiAbコーティング細胞は、有為に多い量のIL−10、IL−4およびTGF−β1、ならびに低レベルのIL−2およびIFN−γ産生を誘導した。その上、tBiAbコーティングアロ抗原性細胞を注射したマウス由来のT細胞のインビトロまたはインビボの再刺激は、低応答性を壊さなかった。このことは、これらのマウスにおいて観察された抑制は、阻害性サイトカインのみに仲介される一時的な効果ではなく、持続性であり、そしてTreg細胞は、重要な役割を果たし得ることを示唆する。
【0104】
標的化CTLA−4結合において産生される寛容の特異性を試験するため、同じ(H2d)または異なる(H2b)アロ抗原を保有する刺激細胞を使用した。H2kマウスは、H2dアロ抗原を有する異なる細胞に対する寛容を示したが、H2bアロ抗原を有する細胞には、普通に応答した。これらの結果は、特定の標的Agに対する特異性を有するT細胞のサブセットのみが寛容であり、そして残りの細胞は作用せず、非関連のアロ抗原に対して応答し得ることを示した。T細胞は、高用量の外因性IL−2の存在下での抗原性再刺激によって誘導されて、応答性低下から回復し得る。しかし、これはアネルギー状態の永久的な逆転をもたらさない。何故なら、その後のIL−2非存在下におけるIL−2処理細胞の抗原性再刺激は、有為な応答を示さなかったからである。
【0105】
Treg細胞は、標的化CTLA−4結合の後に特異的Agに対する応答性低下の維持を媒介する。CTLA−4結合は、より低いIL−2産生ならびにより高いIL−10産生およびTGF−β1産生を誘導し得、これは、Treg細胞の発生を導く条件である。組織/標的特異的パターンでのCTLA−4結合は、標的自己抗原特異的免疫寛容を誘導し得る。アロ抗原保有標的T細胞に対するCTL応答は、BiAbコーティングアロ抗原性細胞を与えたマウスにおいて有為に減少する。寛容マウスの脾臓およびリンパ節の両方におけるCD4+CD25+Treg細胞の数の増大は、コントロールマウスおよびネイティブマウスに比較して観察され、CD4+CD25−T細胞数の比例的な減少を伴わなかった。
【0106】
Treg細胞は、多くの場合、その細胞表面タンパク質(例えば、CD25、CTLA−4およびグルココルチコイド誘導TNFRファミリーによって調節される遺伝子)の構成的発現によって特徴づけられる。しかし、これらのタンパク質はまた、活性化T細胞上でも発現され、これらの分子を決定的マーカーとして使用することは、エフェクターT細胞機能を抑制するその能力が決定されない限り、信頼できない。フォークヘッド転写因子Foxp3は、CD4+CD25+Treg細胞において特異的に発現され、この細胞の発生に必要とされる。これらの細胞の枯渇は、動物を自己免疫疾患により罹患しやすくする。しかし、そのインビボの誘導および作用の正確な機構は、よく決定されていない。他のT細胞集団と異なり、CD4+CD25+Treg細胞は、その表面上にCTLA−4を構成的に発現する。これと関連して、同種寛容(allotolerant)マウス由来のCD4+CD25+Treg細胞は、免疫コントロールマウスまたはネイティブマウス由来のCD4+CD25+Treg細胞と比較して、上昇したレベルのCTLA−4をその表面上に発現した。CTLA−4は、CD4+CD25+Treg細胞機能において重要であり、CD4+CD25+Treg細胞によって仲介される寛容によって果たされるCTLA−4の役割は、議論され続けている。抗CTLA−4のFabによる処置は、外因性IL−2処置後に言及した回復に類似して、一時的にエフェクターT細胞の免疫応答を回復する。このことは、標的化CTLA−4結合におけるTreg細胞の寛容発生(tolerogenic)機能の維持のために、CTLA−4が不可欠であることを示した。
【0107】
CTLA−4遮断における応答性低下の逆転は、Treg細胞上に構成的に発現されるCTLA−4の結合を示唆する。実際に、研究は、リガンドによるCTLA−4結合が天然に発現するCD4+CD25+Treg細胞の維持およびホメオスタシスに必要であることを、B7.1ノックアウトマウスおよびB7.2ノックアウトマウスを用いて実証している。この関係において、M12細胞(使用した標的細胞株)は、B7.1およびB7.2の両方を発現する。さらに、標的細胞との接触は、Treg細胞が調節性サイトカインを産生し、そしてTCR結合を含む機構を介してそのAg特異性を維持するために必要である。同種反応性T細胞は、寛容マウスにおいて低応答性状態で存在し、この状態は、CD4+CD25+Treg細胞の除去において逆転され得るか、または過剰なIL−2もしくはIL−10およびTGF−β1中性化Abの存在下において逆転され得る。Ag特異的T細胞は、恐らくIL−10およびTGF−βによって、アネルギー状態で維持されるが、検出されない。
【0108】
Treg細胞の主要な特徴の1つは、IL−10およびTGF−β1を産生するその能力、ならびにこれらのサイトカインがTreg細胞によって誘導される抑制において果たす役割である。寛容化マウスは、より高いレベルのIL−10およびTGF−β1を産生し、そしてCD4+CD25+T細胞は、これらのサイトカインの主要な供給源であった。寛容化マウス由来のT細胞は、より多い量のIL−4を産生したが、CD25−細胞およびCD4+CD25+Treg細胞以外の細胞は、このサイトカインの供給源であった。IL−4の中性化は、T細胞応答性低下に有為な効果を有さなかったが、一方で、IL−10およびTGF−βlの中性化は、アロ抗原に応答するエフェクターT細胞の能力を一時的であるが回復した。しかし、Transwell実験からの結果は、Treg細胞がエフェクター細胞に直接接触しない場合、これらのサイトカインについての役割がより小さくなることを示唆した。エフェクター細胞(CD25−)は、Treg細胞(CD25+)および標的細胞(アロ抗原)との同時の相互作用を必要とし得る。あるいは、同じチャンバー内のこれらの細胞の存在は、Treg細胞によって放出されたサイトカインの希釈を防ぎ得、そしてこれらを近接するエフェクター細胞により容易に結合させ、そしてより容易にエフェクター細胞上で作用させる。
【0109】
CD4+CD25+Treg細胞は、ネイティブのT細胞またはAg特異的T細胞に由来し得る。Ag特異的Treg細胞は、事前に存在するAg非特異的CD4+CD25+集団およびAg特異的エフェクターT細胞から産生され得る。Treg細胞の2つの主要なサブセットが、報告されている。天然に存在するCD4+CD25+T細胞の第1のサブセットは、Ag特異性を示さず、TGF−β1を通して作用する。適合性Treg細胞の第二のサブセットは、エキソビボで誘導され得、最適未満のAg曝露および/または同時刺激によって、成熟T細胞の活性化の結果として発生する。適合性Treg細胞は、主に分泌された因子(例えば、IL−10)を通して作用する。表面分子、サイトカイン分泌パターン、および作用様式の異なる、発現レベルの明らかなCD4+CD25+T細胞集団は、寛容誘導についての方法に依存して活性化され得る。
【0110】
CD28およびCTLA−4を通したシグナル伝達は、インビトロでアネルギーの2つの明らかな形態を制御する。1つの形態は、明らかにCD28同時刺激非存在下かつCTLA−4シグナル伝達の非存在下におけるTCR占拠から生じ、IL−2によって逆転され得る。アネルギーの他の形態は、活性化後の増殖の欠損に関連し、この欠損は、CD28同時刺激シグナルの存在にもかかわらず起こり、IL−2によって逆転され得ない。長期的な寛容を誘導する、アネルギーの第1形態(CD28シグナル伝達の欠損)の能力は、十分に確立されていない。しかし、CD28活性化およびTCR結合と同時に起こるCTLA−4シグナル伝達は、細胞のさらなる増殖を阻止し、そして細胞にAg特異性を獲得させ、そして恐らくは、Treg細胞に分化させる。
【0111】
CD62L−Treg細胞は、CD62L+Treg細胞と比較して、M12細胞に対するエフェクターT細胞応答を抑制することにおいて、より強力であった。その上、CD62L−Treg細胞のこのよりよい阻害性質は、CD62L−Treg細胞の相対的により高いCTLA−4の表面発現ならびにCTLA−4アロ抗原に対する曝露におけるIL−10およびTGF−β1の産生と関連していた。このことは、両サブセットはアネルギー性であるがCD62L+集団がCD62L−集団または未分離のCD4+CD25+Treg細胞より、細胞あたりの基準でより強力であり、そして増殖し得かつ抑制機能をはるかによく維持するという、より初期の知見とは逆である。これらの研究はまた、CD62L+サブセットは培養物中でずっとはるかに拡大しやすく、そしてケモカインによって駆動される二次リンパ器官への移動に対してより応答性であるということを実証した。この食い違いは、寛容を誘導するために用いた戦略における相違に起因する。本明細書中の開示において、CD4+CD25+Treg細胞は、最もAg特異的になりやすく、従って、CD62L−サブセットは、記憶表現型を表し得る。
【0112】
要約すると、標的化されたCTLA−4結合によって作製されるTreg細胞は、治療的可能性を有する。移植片に対するアロ抗原特異的T細胞寛容の誘導が、行われる。ランゲルハンス島のような同種移植片は、移植の前に島に結合された抗CTLA−4 AbまたはMHC特異的Abでコーティングされ得る。あるいは、上記移植片のMHC Agsと同系である細胞は、移植の前に寛容を誘導するために、アロ抗原特異的Abに結合された抗CTLA−4でコーティングされ得、そしてレシピエントに注射され得る。
【0113】
(材料および方法)
(インスリン産生細胞に対する免疫応答の調節)
インスリン分泌細胞株のNIT−1を、インビトロでの同種異系β細胞の代用物として使用した。抗H2−Db抗体を抗CTLA−4抗体に結合することによって、H−2bNIT−1細胞に結合するBiAb試薬を調製した。未処置またはNIT−1細胞で初回抗原刺激されたCAB/jマウス(H2−Kk)由来の脾臓細胞をBiAbの存在下においてNIT−1細胞と共にインキュベートし、そしてT細胞増殖およびNIT細胞がインスリンを産生する能力について試験した。このBiAbは、NIT−1細胞に対するT細胞応答を、コントロール抗体と比較して有意に抑制した。さらに、BiAbおよび初回抗原刺激された脾臓細胞と共にインキュベートされたNIT−1細胞は、インスリンを産生し続け、このことは、これらの細胞が、アロ応答性T細胞による殺傷から免れることを示す(図20)。
【0114】
(インビトロのアロ−島防御アッセイ)
Balb/c(H2Kd)マウスを島ドナーとして使用し、C57BL/6(H2Kb)をレシピエントとして使用して、C57BL/6(H2−Kb)マウスからの免疫攻撃に対する防御の際の抗H2−Kd/抗CTLA−4 BiAbを試験する。膵島は、コラゲナーゼ処置、その後のパーコール勾配遠心分離によって、Balb/cマウス(H2−d)から慣用的に単離されている(図21)。これらの島は、抗H2−Kd/抗CTLA−4 BiAbがC57BL/6(H2−b)マウスからの免疫攻撃に対して防御する能力について試験するためのインビボおよびインビトロのアッセイにおいて使用されている。
【0115】
最初に、抗H2−Kd抗体を抗CTLA−4抗体に結合させて、抗H2−Kd/抗CTLA−4 BiAbを生成した。抗H2−Kd/抗CTLA4 BiAbが、インビトロでアロ応答性T細胞からH2−Kd島を防御する可能性を決定した。ハムスターIgGに結合した抗H2Kd抗体をアイソタイプコントロールBiAbとして使用した。未処置またはH2d(M12細胞)で初回抗原刺激したC57BL/6(H2−Kb)マウスのいずれか由来の脾臓細胞を、Balb/cマウス由来のトリプシン消化単一島細胞懸濁液と共に、BiAbまたはアイソタイプコントロールBiAbのいずれかの存在下においてインキュベートした。その後、アロ応答性の指標としてT細胞増殖を試験し、島細胞生存の指標として島細胞がインスリンを産生する能力を試験した。図22に示すように、BiAbは、島に対してT細胞増殖応答を、コントロールBiAbと比較して有意に抑制した。アロ応答性が抑制される場合、島がより長期間生存してインスリンを産生し続けることが予想される。予想されるように、BiAb処理培養物由来の島は、コントロールBiAbで処理した培養物に対して、より高い量のインスリンを産生した(図23)。
【0116】
移植手順の有効性について試験するために、膵島をBalb/c(H2−Kd)マウスから単離し、そして適切な腎臓カプセルのもとで同系(Balb/c)マウスまたは同種異系(C57BL/6−H2b)マウスのいずれかに移植した(200島/マウス)。これらのマウスは、ストレプトゾトシン(200mg/kg)での前処置によって糖尿病性にしてあった。血液グルコースレベルについて20日間、レシピエントをモニタリングした。図12に示すように、同系島を受容したマウスは、移植の7日以内は、正常なグルコースレベルを示した。しかし、同系異種島を受容したマウスは、正常なグルコースレベルを示さず、これは、アロ応答に起因する移植片拒絶反応を示唆した。島細胞が、それらを防御するBiAbでコーティングされたか否かを調べるために、BiAbと一緒のBalb/c(H2−Kd)マウス由来の島を洗浄し、ストレプトゾトシン前処置のC57BL/6(H2−Kb)糖尿病マウスにそれらを移植した。レシピエントのグルコースレベルを20日間モニタリングした。抗H2−Kd/抗CTLA−4 BiAbでコーティングされた島を受容したマウスのグルコースレベルにおいて、アイソタイプコントロールBiAbでコーティングされた島を受容したマウスと比較して減少が見られたが、これらは、正常グルコースレベルに達しなかった(図13)。
【0117】
(マウス)
6〜8週齢の雌CBA/Jを、The Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME)から購入した。イリノイ大学(Chicago,IL)のBiological Resources研究施設でマウスを飼育し、自由に食物および水を提供した。イリノイ大学のAnimal Care and Use Committeeによって記載されるガイドラインに従って、動物の世話をした。全てのマウスを、8週齢〜10週齢において使用した。
【0118】
(GM−CFS、Abおよびマウスサイログロブリン)
組換えマウスGM−CSFを、Cell Sciences(Cell Sciences,Canton,MA)から購入した。フローサイトメトリーにおいて、FITC結合体化の抗CD11cおよびPE結合体化の抗I−Ak(MHCクラスII)、抗CD8a、抗CD80、抗CD86、および抗CD40(BD PharMingen,San Diego,CA);PE結合体化の抗CD4、抗CD8a、および抗CD25(Caltag Laboratories,Burlingame,CA)Abを使用した。マウスIL−10レセプターに対する中和ラットモノクローナルAb(クローン1B1.3a)は、親切にもKevin Moore(DNAX,Palo Alta,CA)によって提供された。精製ラットIgG(Fitzgerald,Concord,MA)を、アイソタイプコントロールとして使用した。T細胞、CD4+CD25+T細胞、および樹状細胞の磁気ビーズ単離キットを、Miltenyi Biotec(Auburn,CA)から得た。BiochemMedから得た正常マウス甲状腺およびサイログロブリンを調製した(Winchester,VA)。
【0119】
(GM−CSF処置およびサイログロブリンによる免疫化)
特定しない限り、3つの群のマウス(viz,1,CFAコントロール;2,mTgコントロール;3,GM−CSF/mTg)を使用した。1群および2群のマウスにPBSを注射し、3群のマウスに2gのGM−CSF/マウス/日を注射した(1〜5日目および15〜19日目)。完全フロイントアジュバント(CFA)中に乳化したmTg(100μg/マウス)で、6日目および20日目に2群および3群のマウスを免疫化した(s.c.)。1群のマウス(CFAコントロール)は、6日目および20日目にCFA中に乳化したPBSを受容した。GM−CSF仲介性免疫調節の種々の局面を理解するために、これらの3群のマウスを、以下のように異なる実験のために異なる時点において屠殺した。
【0120】
(DC成熟に対するGM−CSF処置の効果)
上で言及した2群および3群のマウス(すなわち、それぞれ、mTgコントロールおよびGM−CSF/mTg)を使用した。各mTg免疫化の前(6日目および20日目)および後(8日目および22日目)で動物を屠殺した。全ての動物を同時に屠殺するような方法で、免疫化スケジュールをずらした。これらのマウス由来の脾臓細胞をPE結合体化抗マウスMHCクラスII、B7.1、B7.2、またはCD40抗体と組み合わせて、FITC結合体化抗マウスCD11cで染色し、FACS分析器(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)で分析した。CD11c単離キットを使用して脾細胞からDCを単離し、mRNA単離キット(Miltenyi Biotech,San Francisco,CA)を使用してmRNAを抽出した。全ての手順を製造業者の指示に従って実施した。cDNAsをmRNAサンプルから合成し、PCRのために使用した。IL−10、IL−6、TNF−α、IL−1、およびIL−12についてのサイトカイン転写レベルを、多重PCR方法を使用して製造業者(Maxim Biotech Inc.)のガイドラインに従って決定した。
【0121】
(CD4+CD25+T細胞の養子転移)
CFAコントロール、mTgコントロール、GM−CSF/mTgおよびCD4+CD25+T細胞のレシピエント群を、この実験に含めた。GM−CSF/mTg群由来のマウスをドナーとして使用し、34日目に屠殺して、CD4+CD25+単離キットを使用して製造業者(Miltenyi Biotech)の指示に従って、脾細胞およびリンパ節からCD4+CD25+T細胞を単離した。単離集団は、>90%純粋であった。mTg免疫化マウスの1つのセットを、免疫化の28日後にCD4+CD25+T細胞(1×106/マウス)をi.v.注射をすることによってドナーに養子転移した。動物を45日目(転移の18日後)に屠殺し、リンパ節、脾臓、甲状腺、および血清を、mTg特異的免疫応答を分析するために収集した。
【0122】
(CD4+CD25+T細胞の同時培養)
mTgコントロールおよびGM−CSF mTgのマウス群を使用した。本明細書において記載されるように、マウスをGM−CSFで処置し、mTgで免疫化した。これらのマウスを35日目に屠殺し、脾臓およびリンパ節の細胞を収集し、そして上記に記載のようにGM−CSF/mTg群のマウスからCD4+CD25+T細胞を単離した。mTgコントロール群のマウスからの脾臓およびリンパ節の細胞から、磁気細胞分取(Miltenyi Biotech)を使用してエフェクターT細胞を単離し、CFSE(濃度1μM)で10分間37℃で染色した。細胞を3回洗浄し、96ウェル平底プレートに0.5×106細胞/ウェルでプレートした。3群から単離したCD4+CD25+T細胞を、5:1のエフェクター:Tregの比で培養物に添加した。ナイーブマウス由来のT細胞枯渇脾臓細胞(0.5×106細胞/ウェル)または濃縮樹状細胞(0.1×106細胞/ウェル)(両方とも磁気細胞分取によって達成した)(Miltenyi Biotech)を、支持細胞として使用した。7日後に培養物から細胞を収集し、FACS分析器(BD Bioscience,San Jose,CA)を使用してCFSE希釈について試験した。
【0123】
(aIL−10R抗体処置)
6つの群(viz,1,CFAコントロール;2,mTgコントロール;3,GM−CSF/アイソタイプコントロール;4,GM−CSF/αIL−10R #1;5,GM−CSF/αIL−10R #2;6,GM−CSF/αIL−10R #3)を、この組の実験に含めた(1群につき4〜5匹のマウス)。1群、2群、および3群は、3群の動物が、6日目、11日目、20日目、25日目および32日目にラットIgGアイソタイプコントロール抗体(0.5mg/マウス)のi.p.注射を受けた以外は、上で言及した群と対応する。4群、5群および6群の動物をGM−CSFで処置し、上記に記載のとおりmTgで免疫化し、そしてこれらの動物は、6日目、11日目、20日目、25日目および32日目;6日目および20日目;ならびに11日目、25日目および32日目にそれぞれαIL−10Rのi.p.注射を受けた(0.5mg/マウス)。全ての動物を45日目に屠殺し、リンパ節、脾臓、甲状腺、および血清を収集して甲状腺炎を評価した。
【0124】
(甲状腺微小環境に対するGM−CSF処置の効果)
CFAコントロール、mTgコントロール、およびGM−CSF/mTgマウスを使用した。各群の3匹のマウスを21日目に屠殺し、甲状腺を収集し、群内でプールしてコラゲナーゼD(0.5mg/ml)で1時間37℃で消化し、単一細胞懸濁液を調製した。2%FBSを補充したPBSで細胞を洗浄し、氷上で30分間、抗CD16/CD32 Fc−Block(BD PharMingen)でブロックした。PE結合体化抗マウスCD25 mAbと一緒にFITC結合体化抗マウスCD4を使用して氷上で15分間、細胞を染色し、洗浄し、そしてFACS分析器(BD Biosciences)およびCellQuestソフトウェアを使用して分析した。1つのサンプルにつき少なくとも10,000個の細胞を分析した。サイトカイン/ケモカインの産生を決定するために、甲状腺細胞の懸濁液を2%正常マウス血清を含むRPMI−1640培地中で36時間維持した。これらの培養物から細胞を含まない上清を収集し、University of Pittsburgh Cancer Center,PittsburghのLuminexコア施設においてLuminex技術を使用して、自発的なサイトカイン(IL−4、IL−10、およびIFN−α)およびケモカインの産生(MCP−1およびRANTES)を複合サイトカイン/ケモカインアッセイキットによって検出した。このキットを使用して示唆される最も低い検出レベルは、IL−4について5pg/ml、IFN−αについて1pg/ml、IL−10について15pg/ml、MCP−1について5pg/ml、およびRANTESについて5pg/mlである。
【0125】
甲状腺細胞でのアポトーシス分子の発現を評価するために、甲状腺細胞を他の常在の細胞から分離し、製造業者(Miltenyi Bitoech)の指示に従ってmRNA単離キットを使用してmRNAを単離した。mRNAおよびFas、FasL、カスパーゼ−8に対する遺伝子特異的プライマー(Maxim Biotech Inc.)を使用して、RT−PCRを実施した。α−アクチンをコントロールとして使用し、このアッセイ中でRNAが当量であることを確実にした。
【0126】
(mTg特異的T細胞増殖)
マウスの脾細胞またはリンパ節細胞(5×105細胞/ウェル)を、2%正常マウス血清を含むRPMI 1640中(最終容量0.25ml/ウェル)に3重で96ウェル平底組織培養プレートにプレートした。mTgを20μg/mlの濃度で添加した。Con A(1μg/ml)をポジティブコントロールとして使用した。CO2インキュベーター中で72時間37℃において細胞をインキュベートした。培養の最後の16時間、細胞を1μCi[3H]チミジン/ウェルでパルスし、96ウェルU底組織培養プレートに移し、PBSで2回洗浄し、水中に溶解して37℃で一晩乾燥させた。シンチレーション流体をこれらのウェルに添加し(50μl/ウェル)、96ウェルプレートMicrobeta counter(PerkinElmer Wallac,Gaithersburg,MD)を使用して計測した。T細胞の増殖パターンを評価して試験するために、上記のように細胞をCFSEで染色し、2%正常マウス血清を含むRPMI 1640中のmTg(20g/ml)(最終容量0.25ml/ウェル)の存在下または非存在下において、96ウェル平底組織培養プレートに細胞をプレートし、7日間維持し、収集し、そしてFACS(BD Bioscience)を使用してCFSE希釈について試験した。
【0127】
(サイトカイン産生の測定)
脾臓またはリンパ節5×106細胞/ウェル(12ウェルプレート)を、2%正常マウス血清を補充した1.5mlのRPMI 1640培地において、mTg(20μg/ml)の存在下または非存在下において36時間インキュベートした。細胞を含まない培養上清を36時間後に遠心分離によって収集した。細胞を含まない上清中のサイトカインレベルを、製造業者(eBioscience,San Diego,CA)の指示に従って、IL−2、IL−10、IL−4およびIFN−αの検出のための対のAbを使用するELISAによってアッセイし、Microplate reader(Bio−Rad,Hercules,CA)を使用してOD450を記録した。対応するサイトカイン標準を使用してサイトカインの量を決定した。このキットを使用して示唆される最も低い検出レベルは、IL−2について2pg/ml、IL−4について4pg/ml、IFN−αについて15pg/ml、およびIL−10について15pg/mlである。
【0128】
(EATの評価)
屠殺時にマウスから収集した甲状腺をホルマリン中に固定し、パラフィン中に包埋し、切り出してH&Eで染色した。疾患重症度のマーカーとして、甲状腺のリンパ性炎症の程度について甲状腺をスコア付けした(1+〜5+のスケールを使用)。1または数個の病巣における少なくとも125個の細胞の浸潤をスコア1+をした;細胞浸潤の10〜20の病巣(腺の25%までを含む)をスコア2+とした;腺の25〜50%までを含む浸潤をスコア3+とした;腺の50%を超える破壊をスコア4+とした;そして腺のほとんど完全な破壊(小胞がほとんど残っていないか、または全く残っていない)をスコア5+とした。
【0129】
(統計学的分析)
平均、SD、および統計学的有意性を、SPSS適用を使用して計算した。統計学的有意性を、ノンパラメトリックWilcoxon符号検定(nonparametric
Wilcoxon signed test)を使用して決定した。ほとんどの場合において、個体処置群および免疫化群の値を、未処置であるが、免疫化された群の値と比較した。<0.05のp値を有意であるとみなした。平均、SD、および統計学的有意性(p値)を、SSPS統計学的適用(SSPS,Chicago,IL)を使用して計算した。p値は、ノンパラメトリックWilcoxon符号検定を使用して決定した。多くの場合において、BiAb処置群(抗CTLA−4 AbでコーティングされたmM 12細胞を受けたマウス)の値を、特定しない限りmM12免疫群(アイソタイプコントロールAbでコーティングされたmM12細胞を受けたマウス)の値と比較した。試験群とコントロール群との間の蛍光陽性細胞のパーセントの差を、ノンラパメトリック符号検定を使用して試験した。<0.05のp値を有意をみなした。
【0130】
(マウス系統)
6週齢の雌のCBA/J、BALB/c、およびC57BL/6マウスを、The Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME)から購入した。イリノイ大学(Chicago)のBiological Resources研究所でマウスを飼育し、自由に食物および水を提供した。イリノイ大学(Chicago)のAnimal Care and Use Committeeによって記載されるガイダンスに従って、全てのマウスを8週齢において使用し、世話をした。
【0131】
(Abおよび細胞株)
M12は、BALB/c起源(H−2d)のB細胞リンパ種である。M12細胞を、マウスTSHR cDNA(mM12細胞)で安定にトランスフェクトし、Ag/8マウスB細胞リンパ腫(H−2d)を使用した。ハムスター抗マウスCTLA−4ハイブリドーマ(UC10−4−F−10−11;American Type Culture Collection,Manassas,VA)およびマウス抗マウスTSHRハイブリドーマ(D6−4)を、L−グルタミン(2mM)、HEPES(15mM)、ピルビン酸ナトリウム(1mM)、2−ME(5×10−5M)、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(0.1mg/ml)、ファンギゾン(1g/ml)、および10%FBSを補充したDMEM/F12培地において増殖させた。自己免疫性グレーヴズ病を有するBALB/cマウス由来の脾臓細胞をマウスB細胞骨髄腫Sp2/0と融合させることによって、D6−4ハイブリドーマを調製した。プロテインL(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)アフィニティーカラムを使用して、Abを使用済み培地から精製し、濃縮し、そしてPBS(0.01M;pH7.2)に対して透析した。これらのAbをペプシンで消化し、F(ab)2フラグメントをゲル濾過クロマトグラフィーによって精製した。抗CTLA−4−抗TSHR BiAbを、SPDP(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート)−SMPB(スクインイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチラート)化学結合によって調製した。次いで、この結合Abを抗マウスIgG−Sepharoseを最初に通して、その後抗ハムスターIgG−Sepharoseアフィニティーカラムを通すことによって、未結合のAbから精製した。精製Abを、試験BiAb(tBiAb)として標識した。精製ハムスターIgGをFitzgerald International(Concord,MA)から購入し、そしてF(ab)2フラグメントを調製して、抗TSHR F(ab)2に結合することによってコントロールBiAb(cBiAb)を調製するために使用した。全ての調製物の結合および標的結合の効力を試験した。
【0132】
(抗CD16/CD32 Ab)
FITC結合体化の抗マウスCD3、CD4およびCD8a;ならびにPE標識の抗マウスCD4、CD8、CD25、CTLA−4、CD62L、CD69、IL−2、IL−4、IL−10、IFN−γ、およびTGF−β1(Caltag Laboratories,San Francisco,CA,およびBD Pharmingen,San Diego,CA)を、フローサイトメトリーで使用した。ELISAにおいては、対のAbと、マウスIL−2、IL−4およびIFN−γ(Caltag Laboratories)を検出するため、ならびにIL−10およびTGF−β1(BD Pharmingen)を検出するために必要なサイトカイン標準とを使用した。マウスIL−4(ラットIgG1;クローン 11B11)およびIL−10(ラットIgG1;クローンJES5−2A5)に対する中和Abを、eBioscience(San Diego, CA)から購入した。組換えマウスIL−2(rmIL−2)、マウスTGF−β1(ラットIgG1;クローン1D11)に対する中和Ab、および正常ラットIgG1アイソタイプコントロールをR&D Systems(Minneapolis,MN)から購入した;磁気ビーズ結合体化抗PEの抗マウスCD4、CD62L Ab、汎T細胞単離キット、CD4+CD25+T細胞単離キット(Miltenyi Biotec,Auburn,CA)を使用して、CD3+細胞、CD4+細胞、CD4+CD25+細胞、CD4+CD25+CD62L+細胞およびCD4+CD25+CD62L−細胞を単離した。抗CTLA−4のFabを、パパイン結合アガロースビーズ(Pierce,Rockford,IL)を製造業者の指示に従って使用して、パパイン消化によって調製した。
【0133】
(CTLA−4結合による寛容誘導)
mM12細胞をマイトマイシンC(50μg/107細胞/ml)で処理し、1×107細胞を氷上で30分間、cBiAbまたはtBiAb(100μg)のいずれかと共にインキュベートした。次いで、8週齢の雌CBA/Jマウス(H−2k)に、10日間隔で2度(0日目および10日目)、これらの細胞をi.p.注射した。コントロールマウス(mM12免疫群)は、コントロールAb(抗TSHR抗ハムスターIgG BiAb)から調製したcBiAbでコーティングされたmM12細胞を受けたが、特定しない限り試験マウス(BiAb処置群)は、抗CTLA−4 Abと抗TSHR Abとを結合することによって調製したtBiAbでコーティングされたmM12細胞を受けた。以後、cBiAbでコーティングされたmM12細胞を受けたマウスおよびtBiAbでコーティングされたmM12細胞を受けたマウスを、それぞれコントロール群およびBiAb処置群という。ブースター注射の10日後(20日目)にマウスを屠殺し、脾臓およびリンパ節からリンパ球を収集した。一部の研究のために、60日目にM12細胞で寛容化マウスを再チャレンジし、70日目に屠殺した。
【0134】
(アロ抗原による免疫化/チャレンジ)
上記に記載のように、CTLA−4結合によってマウスを寛容化した。20日目に、C57BL/6(H2b)マウスもしくはBALB/c(H2d)マウス由来のマイトマイシンC処置脾臓細胞(1×107細胞/マウス)、またはAg8(H2d)細胞(2×106細胞/マウス)でこれらのマウスを免疫した(i.p.)。これらのマウスを30日目に屠殺し、これらの細胞がM12および他のアロ抗原に対して応答する能力をリンパ球増殖およびIL−2産生アッセイによって試験した。
【0135】
(増殖アッセイ)
エファクター細胞(脾臓細胞または精製T細胞の集団;0.5×106細胞)およびマイトマイシンC処理標的細胞(M12細胞、0.5×105細胞/ウェル;脾臓細胞、5×105)を、2%正常マウス血清を含むRPMI 1640中で(最終容量0.25ml/ウェル)、3連で96ウェル平底組織培養プレートにプレートした。いくつかの実験において、このアッセイを種々の濃度(5〜200U/ml)のrm IL−2の存在下において実施した。48時間後、2%正常マウス血清を補充した上記の培地の100μlにおいて、1μCi/ウェル[3H]チミジンで18時間、細胞をパルスした。細胞を収集し、そして[3H]チミジンの取り込みをMicrobetaシンチレーションカウンター(PerkinElmer Wallac,Gaithersburg,MD)を使用して測定した。M12細胞を含まないエフェクター細胞培養物のバックグラウンドの数値を、試験値から差し引いて実際の数値を計算した。
【0136】
(CFSE染色)
免疫マウスもしくは寛容マウスのいずれかに由来する脾臓のリンパ球または精製リンパ球の単一細胞懸濁液を、HBSS中に1×106細胞/mlの濃度で懸濁し、追跡用蛍光色素CFSE(Molecular Probes,Eugene,OR)で標識した。細胞を5分間最終濃度1μMのCFSE(HBSS中)と共にインキュベートし、FCSの添加(総容量の10%)によって標識化を終わらせた。完全RPMI 1640培地中で細胞を2回洗浄し、上記に記載のように増殖アッセイにおいて使用した。インキュベーションの7日後に、CFSEの希釈をフローサイトメトリー分析によって測定した。
【0137】
(フローサイトメトリー)
脾臓およびリンパ節の単一細胞懸濁液を2%FBSを補充したPBS(pH7.4)で洗浄し、氷上で15分間抗CD16/CD32 Fcブロックでブロッキングした。種々の濃度のFITC標識、PE標識、およびシトクロム標識の適切なAbで、細胞を氷上で30分間染色し、洗浄してFACS分析器(BD Biosciences,San Jose,CA)で分析し、これらのデータをCellQuestソフトウェアまたはWinMDIソフトウェアを使用して分析した。コントロール細胞をアイソタイプ適合のコントロールAbで染色し、分析した。全ての実験において少なくとも10,000個の細胞を分析した。
【0138】
(サイトカイン産生)
合計5×106個の脾臓細胞/ウェル(12ウェルプレート)を、2%正常マウス血清を補充した1.5mlのRPMI 1640培地において、0.5×106個のマイトマイシンC処理標的M12細胞の存在下で48時間インキュベートした。48時間後に細胞を含まない培養上清(使用済み培地)を収集し、そして製造業者の指示に従って、IL−2、IL−4、IL−10、IFN−γ、およびTGF−β1を検出するための対のAbおよびそれぞれのサイトカイン標準を使用するELISAによって、サイトカインレベルをアッセイした。HRP標識のストレプトアビジンを添加し、その後洗浄してテトラメチルベンジジン−H2O2基質(BD Pharmingen)を5〜10分添加することによって、サイトカインを検出した。Microplate reader(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)を使用して、OD450を読み取った。サイトカインの量を、適切なサイトカイン特異的標準曲線を使用して決定した。M12細胞を含まないエフェクター細胞培養物のバックグラウンドのサイトカインレベルを試験値から差し引いて、実際のサイトカイン応答を計算した。
【0139】
細胞内サイトカイン発現分析のために、実験の終わりに収集した脾臓細胞を、マイトマイシンC処置M12細胞で活性化するか、または36時間静止させておくかのいずれかにした。細胞を、CD3に対してFITC結合体化Abで染色し、次いで固定してCytofix/perm試薬(BD Pharmingen)を使用して透過化処理した。その後、上記に記載のように、これらの細胞をPE標識の特異的抗サイトカインAbで染色し、洗浄し、そしてFACS分析器で分析した。いくつかの実験において、University of Pittsburgh Cancer Center(Pittsburgh,PA)のLuminexコア施設においてLuminex(Austin,TX)技術を使用する複合サイトカインアッセイによって、サイトカインを検出した。
【0140】
(サイトカイン中和およびCTLA−4遮断アッセイ)
上記に記載のように、CFSE希釈アッセイのために、マイトマイシンC処理M12細胞の存在下でT細胞を培養した。これらの培養物に対して、種々の濃度の中和抗マウスIL−4(10〜2000ng/ml)、抗マウスIL−10(10〜5000ng/ml)、抗マウスTGF−β1(10〜2000ng/ml)、および/またはアイソタイプ適合コントロールAbを添加し、7日間インキュベートした。抗マウスCTLA−4のFabの種々の濃度(100ng〜10g/ml)またはアイソタイプコントロールAbを一部の培養物に添加し、CTLA−4相互作用をブロックした。インキュベーションの7日後、フローサイトメトリー分析によってCFSEの希釈を測定した。
【0141】
(CD4+CD25+T細胞および他のT細胞小集団の単離)
製造業者の指示に従って、磁気ビーズに結合体化したAbと磁気分離カラムとを使用して、CD4+CD25+細胞を単離した。プールしたマウス脾臓細胞およびリンパ節細胞を、抗CD16/32 Abと共に氷上で15分間インキュベートしてFcRをブロックし、その後、製造業者の指示に従って汎T細胞単離(ネガティブ選択)キットを使用してCD3+T細胞を単離した。PE標識抗マウスCD25および磁気ビーズ標識抗PE Ab、またはCD4+CD25+T細胞単離キットのいずれかを使用して、CD4+CD25+T細胞を、脾臓細胞集団またはCD3+集団から単離した。PE標識抗マウスCD25 Abと共に30分間氷上で細胞をインキュベートした。次いで、磁気ビーズ結合体化抗PE Abと共に15分間氷上で細胞をインキュベートし、洗浄し、そしてLS磁気カラムまたは自動機械(Automacs;Miltenyi Biotec)を使用して分取した。単離した細胞を洗浄し、FITC標識またはPE標識の適切なAbで染色し、そしてフローサイトメーター(FACSCalibur;BD Biosciences)において純度について試験した。いくつかの実験のために、磁気分離手順を使用して、CD4+CD25+細胞をCD62L+集団およびCD62L−集団について濃縮した。このために、汎T細胞単離キットを使用してCD3+細胞を単離し、磁気ビーズ標識抗マウスCD62L Abを使用してCD62L+細胞およびCD62L−細胞を濃縮した。上記に記載のように、CD62L−画分からのCD25+細胞を濃縮した。CD62L+T細胞を酸性化PBSを使用して洗浄して結合されたビーズを除き、CD25+集団を濃縮した。
【0142】
(CD25+T細胞およびCD25−T細胞の同時培養)
コントロールマウス(mM12免疫)由来のCD4+CD25−細胞を寛容マウス由来のCD4+CD25+細胞と混合した(比率10:1)。逆もまた同じに行った。いくつかのアッセイにおいて、CD4+CD25+CD62L+濃縮集団またはCD4+CD25+CD62L−濃縮集団をCD4+CD25+細胞の代わりに使用した。種々の比率のこれらの混合物または個々の細胞集団を、上記に記載のとおりM12細胞の存在下または非存在下のいずれかで行われるT細胞増殖アッセイ(合計0.6×105細胞/ウェル)において使用した。
【0143】
(Transwell T細胞阻害アッセイ)
寛容マウス由来のCD4+CD25+細胞を上記に記載のように単離した。ウェル挿入物(上の成分)中のCD4+CD25+細胞(2.5×105)+マイトマイシンC処理M12細胞(0.5×105)およびウェル(下の成分)中のCD25−T細胞+M12細胞(2.5×106)を、Falcon Transwell組織培養ウェル挿入物(BD Biosciences)を使用するTranswellアッセイ系において24ウェルプレート様式で培養した。48時間後、細胞を2.5μCiの[3H]チミジンで18時間パルスした。上区画および下区画からの細胞をプールし、シンチレーションカウンターにおける[3H]チミジン取り込みとして増殖を測定した。
【0144】
(Treg細胞の養子転移)
上記のように、コントロールマウスおよび試験マウス(CBA/J;H2k)両方からCD4+CD25+T細胞を単離した。レシピエントマウスをM12細胞(H2d)で0日目に免疫し、C57BL/6脾臓細胞(H2b)で10日目に免疫した。およそ5×106個のCD4+CD25+T細胞を、20日目のM12細胞によるチャレンジ注射の2時間前にレシピエントマウスに養子転移(i.v.)した。これらのマウスを転移後30日目に屠殺し、上記のようにT細胞増殖ならびにM12細胞およびC57BL/6脾臓細胞に対するIL−2応答について試験した。
【0145】
(文献)
以下の文献が、本開示において使用される材料および方法に関連する範囲に対して引用される。
【0146】
【化1】
【0147】
【化2】
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】図1は、二重特異性抗体(BiAb)が、寛容の誘導を媒介することを示し、以下;(a)活性化されたT細胞が、BiAbとの相互作用の際に、抗CTLA−4抗体によるCTLA−4の結合により低下すること;一方で(b)CTLA−4と相互作用しない抗体(アイソタイプコントロール抗体)が、抗原に対するT細胞応答を調節すること;および(c)タンデムなTCRとCTLA−4との結合は、おそらく抗原特異性を有する調節性T細胞の直接的または間接的な拡大を引き起こし、これは、次に、活性化T細胞の抗原特異的応答をダウンレギュレートし、寛容を誘導することを示す。
【図2】図2は、二重特異性抗体に媒介される寛容の誘導が、組織特異的であることを示し;組織特異的抗体を使用して抗CTLA−4抗体を目的の組織に標的化する際に、この抗体は、BiAbが抗原に結合しているか否かに関係なく、組織に存在する任意の抗原に特異的なT細胞を低下することにより組織を防御するが、関連していない抗原に対する免疫応答は、関連していない抗原に特異的なT細胞が、BiAbsが存在する組織に存在しない場合、この組織を標的化したCTLA−4の結合により影響を受けない。
【図3】図3は、CD4+/CD25+T細胞に対するFACS分析を示す:同種異系の(H2d)mM12細胞で免疫したマウス(H2K)(aおよびc)またはBiAbと一緒にmM12(4)細胞で免疫したマウス(H2K);脾臓細胞およびリンパ節細胞を収集し、FITCを結合体化したマウスCD4抗体またはPE標識した抗マウスCD25抗体で染色し;CD4+細胞集団は、上記グラフのためにゲートされた。CD25+細胞の割合を、内側の長方形内に示し、各群の5個体のマウスのCD4+CD25+細胞の割合を大きな長方形内に示す。
【図4】図4は、CD4+/CD25+T細胞によるT細胞増殖の阻害を示す:mM12(H2d)細胞で免疫したH2Kマウスから単離したCD4+CD25+細胞を、二重特異性抗体と一緒にmM12細胞で免疫したマウス由来のCD4+/CD25+細胞を欠く脾細胞と一緒に培養し、逆もまた同じである。同種増幅のために、マイトマイシンC処置したmM12細胞を培養物に添加し、増殖を、標準3H−チミジン取り込みによって測定した。
【図5】図5は、CD4+/CD25+T細胞の養子免疫転移に関し、M12細胞で初回抗原刺激し、mM12細胞で免疫したマウスから単離したCD4+/CD25+細胞を養子免疫転移したか、BiAbで処置した(BiAb)か、または未処理コントロール(免疫)または細胞を受けていない(なし)マウス(H2K)におけるM12(H2d)に対するエキソビボT細胞増殖応答に関する。
【図6】図6は、ナイーブマウス(ナイーブ)、mM12(H2d)細胞のみで免疫したマウス(未処置)または二重特異性抗体と一緒にmM12で免疫したマウス(BiAb処置)から単離されたCD4+/CD25+細胞のCTLA−4の発現についてのFACS分析を示す。
【図7】図7は、インビボ同種応答の阻害を例証する:CBA/J(H2k)マウスをBiAbの存在下でmM12細胞で免疫した;群1は、0日目および10日目にmM12細胞およびBiAbを受け、群2は、0日目および10日目にmM12細胞を受けたが、BiAbは、10日目のみに受けた。ナイーブマウスまたはmM12細胞のみで免疫したマウスまたはBiAbとともにmM12細胞で免疫したマウス由来の脾臓細胞(0.6×106脾臓細胞)を、3連のウェルで、M12細胞(0.5×105/ウェル)で5日間刺激した;(a)リンパ球を収集し、洗浄し、計数し、T細胞増殖アッセイのために、M12細胞またはConAで48時間再刺激した。;(b)使用済みの培地をIL−2についてELISAにより試験した。
【図8】図8は、同種異系寛容特異性の分析を表す:CBA/J(H2k)マウスを、表面結合抗TSHR抗CTLA−4 BiAb(試験BiAb)の存在下でmM12(H2d)細胞で免疫した;ナイーブマウスは、mM12細胞もBiAbも受けなかった;mM12免疫群は、アイソタイプコントロールBiAbでコーティングされたmM12細胞を0日目および10日目に受け;BiAb処置群は、試験BiAbでコーティングされたmM12細胞を0日目および10日目に受け;mM12およびBiAbの処置群のマウスは、20日目にC57BL/6脾臓細胞(1×107細胞)の腹腔内注入を受けた;3つ全ての群由来の脾臓細胞(0.6×106脾臓細胞)を3連のウェルで、マイトマイシン処理C57BL6(H2−kB)脾臓細胞(2×105)またはM12細胞(0.5×105/ウェル)のどちらかで48時間刺激した。T細胞の増殖応答(黒塗りの棒グラフ)を標準3H−チミジン取り込み(18時間)方法により測定し、これらの培養物から48時間後に使用済みの培地を収集し、ELISAによりIL−2応答について試験した(白抜きの棒グラフ)。
【図9】図9は、同種異系寛容の効果の分析を表す:CBA/J(H2k)マウスを、図8に記載されるように、BiAbでコーティングされたmM12細胞で免疫した。mM12およびBiAb処理した群は、20日目にAg8(H2d)細胞(2×106)またはBalb/c脾臓細胞(1×107)の腹腔内注射を受けた。これらのマウス由来の脾臓細胞(0.6×106)を、3連でマイトマイシン処理したAg8細胞(0.5×105/ウェル)(黒塗りのグラフ)またはBalb/c脾臓細胞(2×105細胞/ウェル)(白抜きのグラフ)で48時間刺激した;(a)増殖応答を、標準3H−チミジン取り込み(18時間)方法により測定し、(b)使用済みの培地をELISAによりIL−2について試験した。
【図10】図10は、Balb/cマウス由来の膵島細胞に対する同種応答のインビトロ阻害を示す。トリプシン消化により調製した単一の細胞懸濁液として使用した;膵島細胞を、アイソタイプコントロールBiAbまたは抗H2−Kd−抗CTLA−4BiAbのどちらかでコーティングし、予めH2Kdアロ抗原で免疫したマウス由来の膵臓細胞と一緒にインキュベートした;T細胞増殖応答を、3H−チミジン取り込み方法により測定した。
【図11】図11は、インビトロインスリン産生アッセイを示す。膵島を、Balb/cマウスから単離し、トリプシン消化により調製した単一の細胞懸濁液として使用した;膵島細胞を、アイソタイプコントロールBiAbまたは抗H2Kd抗CTLA−4BiAbでコーティングし、H2−Kdアロ抗原に対して免疫されたマウス由来の脾臓細胞と一緒にインキュベートした。全ての培養物由来の上清を3日後に廃棄し、新鮮な培地を添加した。3〜5日間の培養物由来の使用済みの培地を収集し、マウスインスリンに対するELISAキットを使用してインスリンレベルについて試験した。
【図12】図12は、同種異系のマウスおよび同系のマウスにおける膵島移植を示す:膵島をBalb/cマウスから単離し、約200の膵島を、糖尿病を誘導するために腹腔内にストレプトゾシン(200mg/kg)で処置したBalb/cマウス(同系)またはC57BL/6マウス(同種異系)それぞれの右側の腎臓の被膜の下に移植した;これらのマウスのグルコースレベルを20日間モニタリングした。
【図13】図13は、同種異系マウスおよび同系マウスにおける膵島移植を示す:膵島をBalb/cマウスから単離し、アイソタイプコントロールBiAbまたは抗H2Kd抗CTLA−4BiAbのどちらかでコーティングし、約200の膵島を、糖尿病を誘導するために腹腔内にストレプトゾシン(200mg/kg)で処置した各C57BL/6マウス(同種異系)それぞれの右側の腎臓の被膜の下に移植した;これらのマウスのグルコースレベルを20日間モニタリングした;この実験を2回繰り返し、同様の結果を得た。
【図14】図14は、インビボ同種異系応答の阻害を示す;CBA/J(H2k)マウスを、mM12細胞で免疫した;BiAb処置群1に、0日目および10日目に、抗CTLA−4抗体(tBiAb)でコーティングされたmM12細胞を接種し、群2は、0日目に、アイソタイプコントロール抗体(cBiAb)でコーティングされたmM12細胞を受け、10日目にtBiAbでコーティングされたmM12細胞を受けた。ナイーブマウス(ナイーブ)またはcBiAbでコーティングされたmM12細胞で免疫したマウス(mM12免疫)またはtBiAbでコーティングされたmM12で免疫したマウス(BiAb処置1および2)由来の脾臓細胞を、T細胞増殖アッセイのためにマイトマイシンC処理したM12細胞で3連のウェルで刺激した(0.5×105ウェル);(a)48時間後、これらの細胞を、さらに18時間3H−チミジンでパルスし、マイクロβシンチレーションカウンターで計数した;(b)使用済みの培地を上記の培養物から48時間後に収集し、ELISAにより対のモノクローナル抗体を使用してサイトカイン応答について試験した。5個体のマウスから得た3連の値の平均±SDとして、結果を表す。この実験を3度繰り返し、同様の結果を得た。処置群に対する各値を、mM12免疫群の対応する値と比較することによりp値(統計的有意さ)を計算した。処置したマウスについては、統計的に有意な値であった。
【図15】図15は、CTLA−4の結合の際に誘導される寛容の持続効果を実証する;CBA/J(H2k)マウスを、0日目および10日目に、BiAbでコーティングしたmM12細胞で免疫した;これらのマウスを2つの組に分け、それぞれ20日目または70日目のどちらかに屠殺した;20日目に、ナイーブマウス(ナイーブ)またはcBiAbでコーティングされたmM12細胞で免疫したマウス(mM12免疫)またはtBiAbでコーティングされたmM12で免疫したマウス(BiAb処置)由来の脾臓細胞を、マイトマイシンC処理したM12細胞(0.5×105ウェル)で3連のウェルで5日目まで刺激した(0.5×106脾臓細胞/ウェル);(a)リンパ球を洗浄し、計数し、3H−チミジン取り込み方法によるT細胞増殖アッセイのために48時間M12細胞またはConAで再刺激した;(b)48時間後に収集した使用済みの培地を、IL−2についてELISAにより試験した;(c)および(d)60日目にmM12免疫マウスおよびBiAb処置マウスの第二の組をM12細胞でチャレンジし、ナイーブマウスと一緒に70日目に屠殺し、T細胞増殖およびM12細胞に対するIL−2応答を試験した。5個体のマウスから得た3連の値の平均±SDとして、結果を表す。処置群の値を、コントロール群(mM12免疫)に対応する値と比較することによりp値(統計的有意さ)を計算した。処置したマウスについては、統計的に有意な値であった。
【図16】図16は、同種異系寛容の特異性の分析を表す;CBA/J(H2k)マウスを、表面結合コントロールBiAbまたは試験BiAbの存在下でmM12(H2d)細胞で免疫した;ナイーブマウスは、mM12細胞もBiAbも受けなかった;mM12免疫群は、0日目および10日目にcBiAbでコーティングされたmM12細胞を受け、BiAb処置群は、0日目および10日目にtBiAbでコーティングされたmM12細胞を受け;mM12免疫した群およびBiAb処置した群のマウスは、20日目にC57BL/6脾臓細胞(5×106細胞)を受けた;30日目に3つの群全てから収集した脾臓細胞を、3連のウェル(0.5×106細胞/ウェル)中で、マイトマイシン処理した(a)C57BL/6(H2b)由来の脾臓細胞(1×105/ウェル)または(b)Balb/c(H2d)マウス(1×105/ウェル)またはAg8 B細胞(H2d)(0.5×105/ウェル)または(c)M12細胞(H2d)(0.5×105/ウェル)のいずれかで刺激した;T細胞増殖応答(左側のパネル)を、標準3H−チミジン取り込み方法(18時間)により測定した。使用済みの培地をこれらの培養物から48時間後に収集し、ELISAによりIL−2について試験した(右側のパネル)。3個体のマウスから得た3連の値の平均±SDとして、結果を表す。この実験を繰り返し、同様の結果を得た。処置群に対する値を、mM12免疫群の対応する値と比較することによりp値(統計的有意さ)を計算した。処置したマウスについては、統計的に有意な値であった。
【図17】図17は、CD4+CD25+調節性T細胞が、標的されたCTLA−4の結合の際に誘導されたことを表す;CBA/Jマウス(H2k)を、cBiAbまたはtBiAbと一緒に同種異系(H2d)mM12細胞で免疫した;(a)脾臓細胞およびリンパ節細胞を、これらのマウスおよびナイーブマウスから収集し、FACS分析のためにFITCが結合体化した抗マウスCD4抗体およびPE標識した抗マウスCD25抗体で染色した;CD4+細胞集団は、上記のグラフのためにゲートされた;CD25+細胞の割合を、内側の長方形内に示し、各群の5個体のマウスのCD4+CD25+細胞の割合を大きな長方形内に示す;(b)ナイーブマウス(ナイーブ)、cBiAbでコーティングしたmM12で免疫したマウス(H2d)(免疫)またはtBiAbでコーティングしたmM12細胞から単離したCD4+CD25+細胞上でのCTLA−4の発現を、抗CTLA−4−PE抗体で染色した。
【図18】図18は、BiAb処置したマウス由来の脾臓細胞の抗H2d応答を表す。CBA/Jマウス(H2k)を、cBiAbまたはtBiAbと一緒に同種異系(H2d)mM12細胞で免疫した。ナイーブマウス(左側のパネル)、mM12免疫したマウス(真ん中のパネル)またはBiAb処置したマウス(右側のパネル)から脾臓細胞を収集し、マイトマイシンC処理したM12細胞と一緒にインキュベートし、FACS分析により種々の分子について試験した;細胞を、FITC標識した抗マウスCD3抗体、およびPE標識した抗マウスCD69抗体で24時間後に染色し(a)、抗マウスIFN−γ抗体、抗マウスIL−4抗体、抗マウスIL−10抗体および抗マウスTGF−β1抗体で36時間後に染色し(b)、抗CD62L抗体で5日後に染色し(c);5日目に細胞を洗浄し、FITC標識した抗マウスCD4抗体およびPE標識した抗マウスCD25抗体を用いて調節性T細胞について試験するためにさらに3日間インキュベートし(d);屠殺の際にマウスから収集した細胞のアリコートを、CFSEで染色し、その後M12細胞と一緒にインキュベーションし、7日目にPE標識した抗マウスCD4抗体またはPE標識した抗マウスCD8抗体で染色した後にCFSE希釈について試験した;(e)CD3+、CD4+またはCD8+の細胞集団は、上記グラフのためにゲートされた。これらの実験を3回繰り返し、同様の結果を得た。選択した領域に対する細胞の割合を、各グラフに示す。
【図19】図19は、CTLA−4の結合により誘導された寛容におけるサイトカインおよびCTLA−4の役割を図示する。(a)寛容のマウス(左側のパネル)またはコントロールマウス(右側のパネル)から収集した脾臓細胞を、単独でまたはM12細胞とともに(1:10の標的:エフェクターの比で)インキュベートした、寛容細胞の二つの培養物に、種々の濃度のrmIL−2を添加し、5日目までインキュベートした;(a)2日目に、一つの組の培養物を、T細胞増殖を試験するために3H−チミジンで18時間パルスし;(b)5日目に、残りの細胞を洗浄し、48時間そのままにし、等しい数の生存可能な細胞を、rmIL−2の非存在下で48時間さらにM12細胞と一緒にインキュベートし、3H−チミジン取り込み方法によりT細胞増殖を試験した;(c)細胞のアリコートを、CFSEで染色し、その後M12細胞と一緒にインキュベーションし、抗マウスIL−4、抗マウスIL−10、抗マウスTGF−β1または抗マウスCTLA−4抗体のF(ab)フラグメントを中和する飽和濃度で補充した。細胞を、PE標識した抗マウスCD3抗体で染色した後7日目に、CFSE希釈について試験した。この実験を繰り返し、同様の結果を得た。選択した領域の細胞の割合を、各グラフに示す。
【図20】図20は、インビトロの同種異系の応答の阻害を図示する;CBA/J(H2k)マウスを、0日目および10日目にNIT−1細胞で免疫した;20日目にナイーブマウス(a)または免疫したマウス(b)から収集した脾臓細胞を、3連で、抗体の存在下または非存在下で48時間NIT−1細胞で刺激し、使用済みの培地を新鮮な培地と取替え、さらに48時間インキュベートした;この培養物から収集した上清を、インスリンの産生についてELIZAにより試験した。
【図21】図21は、膵島の単離を示す;Balb/cマウス由来の膵島を、コラゲナーゼ消化により単離し、その後パーコール密度勾配遠心を行なった;(a)および(b)コラゲナーゼ消化の間の膵島;(c)および(d)精製した膵島;ならびに(e)および(f)膵島の単離画分;膵島特異的染色(ジチアゾン)を使用した。
【図22】図22は、膵島に対する同種異系応答のインビトロ阻害を示す;膵島をBalb/cマウスから単離し、トリプシン消化により調製した単一の細胞懸濁物として使用した。膵島細胞を、アイソタイプコントロールBiAbまたは抗H2抗CTLA−4BiAbのどちらかでコーティングし、H2K同種異系抗原で予め免疫したマウス由来の脾臓細胞と一緒にインキュベートした;T細胞増殖応答を、3H−チミジン取り込み方法により測定した。
【図23】図23は、インビトロインスリン増殖アッセイを示す;膵島をBalb/cマウスから単離し、トリプシン消化により調製した単一の細胞懸濁物として使用した;膵島細胞を、アイソタイプコントロールBiAbまたは抗H2Kd抗CTLA−4BiAbのどちらかでコーティングし、H2−Kd同種異系抗原に対して免疫されたマウス由来の脾臓細胞と一緒にインキュベートした;全ての培養物由来の上清を、3日後に廃棄し、新鮮な培地を添加した;3〜5日の培養物の使用済みの培地を収集し、マウスインスリンに対するELISAキットを使用してインスリンレベルについて試験した。
【図24】図24は、抗CD11c抗CTLA−4BiabでコーティングしたDCによる寛容の誘導を示す。マウスを、オボアルブミン(ova)またはサイログロブリン(Tg)で0日目に免疫した。これらのマウスに、8日目に、アイソタイプコントロールBiAb(ova+DCまたはTg+DC)でコーティングしたDCまたは抗CD11c抗CTLA−4BiAb(ova+DC+BiAbまたはTg+DC+BiAb)でコーティングしたDCでパルスしたそれぞれの抗原(ovaまたはTg)を静脈内投与した;これらのマウスから20日目に収集した脾臓細胞を、T細胞増殖(a)、IL−2応答(b)、IL−10応答(c)およびTGFβ1応答(d)について試験した。パネルC これらのマウスから収集した休止細胞をFITCが結合体化したマウスCD4抗体およびPE標識した抗マウスCD25抗体で染色した。CD4+細胞集団は、パネル(c)、(d)の両方にゲートされた。ポジティブ細胞の割合を、内側の長方形内に示す。
【図25】図25は、抗CTLA−4抗体でコーティングしたDCをパルスしたovaによる、ovaに対するTreg細胞の誘導を示す:マウスを、0日目および10日目にova+LPSで免疫し、20日目および30日目にコントロールDCまたは抗CTLA−4抗体でコーティングしたDC(2×106細胞/マウス)をパルスしたovaで処置した;これらのマウスを45日目に屠殺し、(a)記憶CD4+T細胞について(CD4+CD62Llow);(b)調節性CD4+T細胞について(CD4+CD25+);(c)記憶調節性T細胞について(CD4+CD25+CD62Lhigh)試験した。パネル(a)および(b)は、CD4+細胞に対してゲートされ、パネル(c)は、CD4+CD62Llow細胞に対してゲートされ、パネル(d)は、CD4+CD62Lhigh細胞に対してゲートされた。
【図26】図26は、抗CTLA−4抗体でコーティングされたDCをパルスされたovaにより産生されたovaに対するTreg細胞の免疫抑制性特性を図する;マウスを、以下(a)CD4+T細胞を、コントロール抗体または抗CTLA−4抗体をコーティングしたDCを受けたマウスから単離し、CD25+細胞の枯渇した培養物をovaおよびAPCの存在下で培養した;(b)抗CTLA−4抗体をコーティングしたDCを受けたマウスから単離したナイーブTreg細胞(CD4+CD25+CD62Llow)を、コントロールマウス由来の(CD4+CD25−)T細胞と一緒に1:10の比で共培養し;T細胞増殖アッセイを、3H−チミジン取り込みアッセイを使用して行なった、に開示するように処置した。
【図27】図27は、NODマウスにおけるGAD65ペプチド特異的T細胞を示す;脾臓細胞を、前糖尿病マウスおよび糖尿病マウスから収集し、プールしたGAD65ペプチド(GAD206−226、GAD−217−236およびGAD286−300)と一緒にインキュベートし、T細胞増殖応答について試験した;標準3H−チミジン取り込みアッセイを用いてT細胞増殖アッセイを行なった。
【図28】図28は、DCの指向するCTLA−4結合の際のGAD65ペプチド特異的T細胞応答のインビトロ抑制を示す;前糖尿病NODマウスから単離したDCを、プールしたGAD65ペプチド(GAD206−226、GAD17−236およびGAD286−300)でパルスし、アイソタイプコントロール抗体(コントロールBiAb)または抗CTLA−4抗体(試験BiAb)でコーティングし、糖尿病のNODマウス由来のT細胞と一緒にインキュベートした;標準3H−チミジン取り込みアッセイを用いてT細胞増殖アッセイを行なった。
【図29】図29は、樹状細胞成熟に対するGM−CSF処理の効果を示す。CBA/Jマウスを、材料および方法の節に記載のように1日目および15日目に開始して連続5日間未処理のままにするか、GM−CSFで処理した。さらに、6日目および20日目にマウスを、CFA中で乳化したmTgにより免疫した。脾臓を得るために、マウスを第一のmTg免疫および第二のmTg免疫の前(6日目および20日目)ならびにそれらの免疫の後(8日目および22日目)に屠殺した。(A)8日目に屠殺したマウスから単離した脾細胞を、FITC抗CD11cで染色し、そして、PE抗MHC IIまたはPE抗CD8aのどちらかで染色し、FACSにより分析した。(B)同じ細胞を、FITC抗CD11cで染色し、PE抗B7.1、PE抗B7.2またはPE抗CD40のいずれかで染色し、FACSにより分析した。黒い線は、アイソタイプコントロールを示し、濃い灰色の線は、mTgコントロールを示し、薄い灰色の線は、GM−CSF処理を示す。(c)DCをmTg免疫の前または後に磁気カラム分離を用いて脾臓から単離した。mRNAを単離し、多重RT−PCRアッセイにおいて使用してサイトカイン転写物を検出した。示した結果は、群あたり2匹のマウスを使用した2つの独立した実験の代表である。
【図30】図30は、GM−CSF処置したマウス由来のCD4+CD25+T細胞の養子免疫転移を示す。CD4+CD25+T細胞を、GM−CSF処置したマウスから精製し、方法および材料の節に記載されるように、mTgで免疫した。精製したCD4+CD25+T細胞を、養子免疫によりmTg免疫したマウスに転移し(1×106細胞/マウス)、転移後18日に屠殺し、mTgに対する免疫応答をコントロールと比較して評価した。(A)脾細胞を、mTgの存在下または非存在下で培養した。mTgに対する増殖応答を、3H取り込みアッセイにより測定した。ΔCPM(mTg刺激したCPM−(非刺激の)バックグラウンドCPM)をプロットした。バックグラウンドCPMは、このアッセイでは、200未満であった。上記培養物から36時間で収集した使用済み培地を、ELISAにより、(B)IFN−γ、(C)IL−4および(D)IL−10について試験した。3個体のマウスの3連で得られた値の平均±SDとして結果を表す。*は、Tgコントロールマウスに対して統計的に有意な差を示す。
【図31】図31は、mTg特異的T細胞増殖のCD4+CD25+T細胞誘導性抑制におけるIL−10の役割を示す。CBA/Jマウスを、材料および方法に記載されるように、GM−CSFによってかまたはGM−CSFなしで、第1日目および第15日目に開始して連続5日間処置し、CFA中で乳化されたmTgで第6日目および第20日目に免疫した。マウスを第35日目に屠殺し、リンパ節細胞および脾臓細胞を得た。GM−CSF処理マウス由来のCD4+CD25+T細胞、および未処理マウス由来のT細胞(エフェクター細胞)を、プールした脾臓細胞およびリンパ節細胞から、磁気分離法を使用して精製した。エフェクターT細胞をCFSEで染色し、単離したCD4+CD25+T細胞とともに共培養し(エフェクター:Treg比5:1)、そして飽和濃度のαIL−10RもしくはアイソタイプコントロールmAbの存在下で、mTgによって刺激した。ナイーブマウス由来のT細胞枯渇脾臓細胞(A)または濃縮(enrich)DC(B)のいずれかを、APCとして使用した。mTgの増殖応答を、第7日目において、FACSによって判定されるCFSE希釈によって評価した。示されるヒストグラムは、CD4+T細胞集団においてゲート(gate)された。結果は、3連で行われた2つの個別の実験の代表である。*は、中央のパネルに示すアイソタイプコントロールと比較した場合の統計的有意差を示す。
【図32−1】図32は、EATのGM−CSF誘導性抑制に対するαIL−10R Abのインビボ効果を示す。GM−CSF処理マウスを、材料および方法に記載されるように、αIL−10R mAbで処理し、そしてコントロールマウスとともに第45日目に屠殺して、リンパ節細胞および脾臓細胞を得た。(A)脾細胞をCFSEで染色して、mTgで7日間刺激した。mTgに対する増殖応答を、FACSによって判定されるCFSE希釈によって評価した。CD4+T細胞集団においてゲートされた。(B)脾細胞をFITC標識抗マウスCD4抗体およびPE標識抗マウスCD25抗体によって染色し、FACSで分析した。パネル(A)および(B)に示される括弧内の範囲は、4〜5匹の個別のマウスについての値に対応する。
【図32−2】図32は、EATのGM−CSF誘導性抑制に対するαIL−10R Abのインビボ効果を示す。GM−CSF処理マウスを、材料および方法に記載されるように、αIL−10R mAbで処理し、そしてコントロールマウスとともに第45日目に屠殺して、リンパ節細胞および脾臓細胞を得た。(C)種々の群(表1に示される)についてのH&E染色甲状腺切片の代表的顕微鏡写真が示される(現物、40×)。括弧内に示される数字は、甲状腺炎細胞浸潤指数に対応する。
【図33】図33は、甲状腺微小環境におけるGM−CSF処置の効果を示す。マウスのCFAコントロール群、mTgコントロール群、およびGM−CSF/mTg群(材料および方法に記載される)を使用した。3匹のマウスを第21日目に屠殺し、甲状腺を得た。(A)甲状腺から得られたリンパ球をFITC標識抗マウスCD4抗体およびPE標識抗マウスCD25抗体で染色し、FACSで分析した。示される結果は、1群あたり3匹のマウスの3つの別の実験の代表である。(B)コラゲナーゼ処理甲状腺から得られた全細胞を、エキソビボで24時間維持し、多重サイトカインアッセイ(multiplex cytokine assay)によってIL−10およびIFN−γについて上清を試験した。示される結果は、2つの別個の実験の代表である。100個のデータの平均値を示す。(C)甲状腺細胞を甲状腺単一細胞懸濁物から単離し、mRNAを得てRT−PCRに供し、プライマーの特別なセットを使用して、Fas、FasLおよびカスパーゼ8を検出した。β−アクチンを内部コントロールとして含めた。コントロールレーンは、ポジティブコントロールmRNAおよび特別なプライマーを使用したRT−PCRを表す。
【図34】図34は、インビボアロ反応を示す。材料および方法に記載されるように、CBA/J(H2k)マウスをmM12細胞で免疫した。BiAb処置群1に、第0日および第10日において、抗CTLA−4 Ab(tBiAb)コーティングされたmM12細胞を接種し、群2は、アイソタイプコントロールAb(cBiAb)コーティングされたmM12細胞を、第0日目に受容し、そしてtBiAbコーティングされたmM12細胞を第10日目に受容した。ナイーブマウス(ナイーブ)、またはcBiAbコーティングされたmM12細胞で免疫されたマウス(コントロール)、またはtBiAbコーティングされたmM12細胞で免疫されたマウス(BiAb処理1および2)由来の脾臓細胞(0.5×106細胞/ウェル)を、3つ組のウェルにおいて、T細胞増殖アッセイのため、マイトマイシンC処置M12細胞(0.5×105ウェル)によって刺激した。a、48時間後、これらの細胞を[3H]チミジンでさらに18時間パルスし、マイクロベータシンチレーションカウンターで計数した。b、使用済み培地を48時間後上記培養物から回収し、ELISAにおいて対(paired)mAbを用いてサイトカイン応答について試験した。M12細胞を含まない脾臓細胞培養物における1分あたりのバックグラウンド計数(<200)およびサイトカイン(<10pg/ml)の値を、それぞれの試験値から差し引いた。結果を、5匹の別個のマウスから得られた3つ組の値の平均±SDとして表わす。この実験を3回繰り返し、同様の結果を得た。処理群についての各値をコントロール群の対応する値と比較することによって、p値を計算した。*p≦0.05。
【図35】図35は、CTLA−4結合により誘導された寛容の永続的効果を示す。材料および方法に記載されるように、CBA/J(H2k)マウスをBiAbコーティングされたmM12細胞で、第0日目および第10日目において免疫した。これらのマウスを2つのセットに分け、第20日目もしくは第70日目のいずれかにおいて屠殺した。第20日目において、ナイーブマウス由来の脾臓細胞(ナイーブ)、またはcBiAbコーティングされたmM12細胞で免疫されたマウス(コントロール)、またはtBiAbコーティングされたmM12細胞で免疫されたマウス(BiAb処理)を3つ組のウェルにおいて(0.5×106脾臓細胞/ウェル)、マイトマイシンC処理M12細胞(0.5×105/ウェル)で、5日までの間刺激した。a、リンパ球を洗浄し、計数し、そして[3H]チミジン取り込み法によるT細胞増殖アッセイのために、M12細胞もしくはCon A(1μg/ml)で48時間再刺激した。b、使用済み培地を48時間後回収し、ELISAによってIL−2について試験した。cおよびd、第60日目において、mM12免疫およびBiAb処置されたマウスの第二のセットを、M12細胞によってチャレンジし、ナイーブマウスとともに第70日目に屠殺し、そしてM12細胞に対するT細胞増殖およびIL−2応答について試験した。M12細胞またはConAを含まない脾臓細胞培養物における1分あたりのバックグラウンドカウント(<200)およびサイトカイン(<10g/ml)の値を、それぞれの試験値から差し引いた。結果を、5匹の別個のマウスから得られた3つ組の値の平均±SDとして表わす。この実験を繰り返し、同様の結果を得た。処理群の値をコントロール群の対応する値と比較することによって、p値を計算した。*p≦0.05。
【図36】図36は、アロ寛容(allotolerance)特異性の分析を示す。CBA/J(H2k)マウスを、材料および方法に記載されるように、表面結合cBiAbもしくはtBiAbの存在下でmM12(H2d)細胞で免疫した。ナイーブマウスは、mM12細胞もBiAbも受けなかった。コントロール群は、第0日目および第10日目において、cBiAbでコーティングされたmM12細胞を受容し、BiAb処置群は、第0日目および第10日目において、tBiAbコーティングされたmM12細胞を受容した。mM12免疫群およびBiAb処置群のマウスは、C57BL/6脾臓細胞(5×106細胞)を第20日目において受容した。脾臓細胞を、免疫後30日目において3群全てから回収し、3つ組ウェル(0.5×106細胞/ウェル)において、以下に由来するマイトマイシンC処理脾臓細胞のいずれかで刺激した:C57BL/6(H2b)(1×105/ウェル)(a)、またはBALB/c(H2d)(1×105/ウェル)マウスもしくはAg8B細胞(H2d)(0.5×105/ウェル)(b)、またはM12細胞(H2d)(0.5×105/ウェル)、48時間(c)。T細胞増殖応答(左パネル)を、標準的[3H]チミジン取り込み法(18時間)によって測定した。使用済み培地をこれらの培養物から48時間後に回収し、ELISAによってIL−2について試験した(右パネル)。結果を、3匹の別個のマウスから得られた3つ組の値の平均±SDとして表わす。この実験を繰り返し、同様の結果を得た。処理群の値をコントロール群の対応する値と比較することによって、p値を計算した。*p≦0.05。
【図37】図37は、標的化CTLA−4結合においてCD4+CD25+Treg細胞が誘導されることを示す。CBA/Jマウス(H2k)を、材料および方法に記載されるように、同種異系(H2d)mM12細胞、ならびにcBiAbもしくはtBiAbで免疫した。a、脾臓細胞およびリンパ節細胞をこれらのマウスおよびナイーブマウスから回収し、FACS分析のためにFITC結合体化抗マウスCD4 Ab抗体およびPE標識抗マウスCD25 Ab抗体で染色した。CD4+細胞集団を上記グラフのためにゲートした。CD25+細胞のパーセンテージは、内部の四角の中に示され、各群からの5匹の個別のマウスにおけるCD4+CD25+細胞のパーセンテージの範囲は、主要な四角の中に示される。処理群の各値をコントロール群の対応する値と比較することによって、p値を計算した。*p≦0.05。b、ナイーブマウス(ナイーブ)、cBiAbコーティングされたmM12細胞(H2d)で免疫されたマウス(コントロール)、またはtBiAbコーティングされたmM12細胞(BiAb処理)で免疫されたマウスから単離されたCD4+CD25+細胞上のCTLA−4の発現を、抗CTLA−4−PE Abによる染色後にFACS分析によって試験した。
【図38】図38は、BiAb処理マウス由来の脾臓細胞の抗H2d応答を示す。材料および方法に記載されるように、CBA/Jマウス(H2k)を、同種異系(H2d)mM12細胞ならびにcBiAbもしくはtBiAbで免疫した。ナイーブマウス(左パネル)、コントロールマウス(中央パネル)またはBiAb処置マウス(右パネル)から脾臓細胞を回収し、マイトマイシンC処理M12細胞とともにインキュベートし、そして種々の分子についてFACS分析によって試験した。細胞を、以下によって染色した:FITC標識抗マウスCD3 Ab抗体およびPE標識抗マウスCD69 Ab抗体、24時間後(a);抗マウスIFN−γ、IL−4、IL−10およびTGF−β1 Ab、36時間後(b);ならびに抗CD62L Ab、5日後(c)。第5日目、細胞を洗浄し、さらに3日間インキュベートして、FITC標識抗マウスCD4抗体およびPE標識抗マウスCD25 Abを用いてTreg細胞について試験した(d)。屠殺マウスから回収された細胞のアリコートを、CFSEで染色し、M12細胞とともにインキュベーションし、PE標識抗マウスCD4またはCD8 Abで染色した後、7日目においてCFSE希釈について試験した(e)。CD3+細胞、CD4+細胞またはCD8+細胞の集団を上記のグラフのためにゲートした。これらの実験を3回繰り返し、同様の結果を得た。選択領域についての細胞のパーセンテージを、各グラフに示す。
【図39】図39は、CTLA−4結合誘導性寛容におけるサイトカインおよびCTLA−4の役割を示す。a、寛容マウス(左パネル)または免疫マウス(右パネル)マウスから回収された脾臓細胞を、単独またはM12細胞(標的:エフェクター比1:10)とともにインキュベートした。寛容細胞の培養物は、種々の濃度のrmIL−2を受容し、5日間までインキュベートされた。a、第2日において、培養物の1つのセットを[3H]チミジンで18時間パルスし、T細胞増殖について試験した。b、第5日目において、残りの細胞を洗浄し、48時間静置した。そして同数の生存可能な細胞を、rmIL−2の非存在下で、48時間、M12細胞とともにさらにインキュベートし、[3H]チミジン取り込みアッセイによってT細胞増殖について試験した。c、細胞のアリコートをCFSEで染色し、M12細胞とともにインキュベートし、材料および方法に記載されるように、飽和濃度の中和性抗マウスIL−4、IL−10、TGF−β1、または抗マウスCTLA−4 AbのFabを補充した。細胞を、PE標識抗マウスCD3 Abによる染色後7日目においてCFSE希釈について試験した。この実験を繰り返し、同様に結果を得た。選択領域についての細胞のパーセンテージを、各グラフに示す。
【図40】図40は、CTLA−4結合誘導性寛容におけるCD4+CD25+T細胞の役割を示す。a、材料および方法に記載されるように、cBiAbコーティングされたmM12細胞もしくはtBiAbコーティングされたmM12細胞で免疫されたマウスから回収された脾臓細胞およびリンパ節細胞を混合し、次いでCD25−T細胞集団およびCD25+T細胞集に分画化した。CD25−細胞およびCD25+細胞(5×105細胞/ウェル)を、個別にインキュベートした(b〜d)か、またはM12細胞(0.5×105細胞/ウェル)とともに、(f)96ウェルプレート中でインキュベートしたか、もしくは(g)0.1μmの孔サイズのインサートを備える24トランスウェルプレート中でインキュベートした。48時間後、細胞を[3H]チミジンで18時間パルスし、T細胞増殖を測定した。bに関して記載したアッセイからの使用済み培地を、Luminex技術(c〜e)を用いた多重サイトカインアッセイを使用して、種々のサイトカインについて試験した。結果を、3匹の別個のマウスから得られた3つ組の値の平均±SDとして表わす。
【図41】図41は、CD4+CD25+Treg細胞の養子免疫転移を示す。ドナーのCBA/Jマウス(H2k)を、材料および方法に記載されるように、同種異系(H2d)mM12細胞ならびにcBiAb(コントロール)もしくはtBiAb(試験)で免疫した。コントロールドナーマウス(コントロール)および試験ドナーマウス(BiAb処理)から単離された5×106CD4+CD25+T細胞全体を、第20日目において、レシピエントマウスに、M12細胞(上パネル)またはC57BL/6脾臓細胞(下パネル)によるチャレンジ免疫の2時間前に、それぞれ移送した。第35日目において、レシピエントおよびT細胞を受容していない(なし)コントロールマウスから脾臓細胞を回収し、M12細胞(aおよびb)またはC57BL/6脾臓細胞(cおよびd)に対するエキソビボT細胞増殖について試験した(左パネル)およびIL−2(右パネル)。結果を、4匹の別個のマウスから得られた3つ組の値の平均±SDとして表わす。この実験を繰り返し、同様の結果を得た。養子免疫転移レシピエント群についての値を非レシピエント群の対応する値と比較することによって、p値を計算した。*p≦0.05。
【図42】図42は、反応性低下の誘導におけるCD4+CD25+Treg細胞部分集団の有効性を示す。CBA/J(H2k)マウスを、材料および方法に記載されるように、抗CTLA−4 Ab(tBiAb)コーティングされたmM12(H2d)細胞で免疫した。実験終了時に回収された脾臓細胞およびリンパ節細胞をプールし、CD4+CD25+CD62L+およびCD4+CD25+CD62L−細胞を、磁気分離システムを使用して濃縮し(a)、そしてFACS分析によって表面CTLA−4発現について試験した(b)。これらの濃縮された集団を、M12細胞の存在下で36時間培養し、使用済み培地をIL−10レベル(c)およびTGF−β1レベル(d)について、ELISAによって試験した。CD4+CD25+部分集団をコントロールマウス由来のCD25−T細胞とともに、種々の調節T細胞:エフェクターT細胞比(全部で0.6×106細胞/ウェル)で、マイトマイシンC処理M12細胞(0.5×105/ウェル)の存在下で共培養した。増殖応答を、標準的[3H]チミジン取り込み法(18時間)によって測定した(e)。結果を、3つ組の値の平均±SDとして表し、この実験を2回繰り返し、同様の結果を得た。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重特異性抗CTLA−4抗体でコーティングされた半成熟樹状細胞を含有する組成物であって、該二重特異性抗体がまた、特異的な抗原もしくは組織に結合し得る、組成物。
【請求項2】
前記樹状細胞がGM−CSFで処理される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記樹状細胞が、目的の抗原でパルスされる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗体がまた特異的抗原に結合し得る、半成熟樹状細胞にコーティングした二重特異性抗CTLA−4抗体。
【請求項5】
前記抗体がまた特異的な組織もしくは細胞に結合し得る、請求項4に記載の二重特異性抗CTLA−4抗体。
【請求項6】
組織特異的寛容を誘導するための方法であって、該方法は、以下:
(a)樹状細胞を目的の抗原で成熟させてT細胞を活性化する工程;および
(b)該活性化T細胞を、抗CTLA−4抗体でコーティングされた樹状細胞と接触させ、樹状細胞に結合し得る二重特異性抗体の第二の腕を介して該活性化T細胞の表面にCTLA−4を結合させる工程;
を包含する、方法。
【請求項7】
抗原特異的寛容を誘導するための方法であって、該方法は、以下:
(a)少なくとも一つの特異的抗原を樹状細胞に提示する工程;
(b)該樹状細胞のプロセシングおよび該抗原の提示を促進する工程;
(c)該樹状細胞に、細胞表面分子の発現を安定化させることを可能にする工程;
(d)さらなる抗原のプロセシングを防止する工程;ならびに
(e)抗原発現性樹状細胞を、該樹状細胞表面に結合しT細胞または他のリンパ球の表面上のCTLA−4分子に結合する能力を保持する二重特異性抗体で処理する工程;
を包含する、方法。
【請求項8】
抗原特異的T細胞寛容を誘導するための方法であって、該方法は、以下:
(a)樹状細胞をGM−CSFで処理して半成熟樹状細胞を得る工程;
(b)該半成熟樹状細胞を目的の抗原でパルスする工程;および
(c)調節性T細胞の産生を調節する工程;
を包含する、方法。
【請求項9】
CTLA−4に結合し得る二重特異性抗体で、パルスされた半成熟樹状細胞をコーティングする工程をまた包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記目的の抗体が、アロ抗原または自己抗原である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記半成熟樹状細胞が、インビトロで調節性T細胞の産生を誘導する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記調節性T細胞を宿主内に注入して同種移植片拒絶を抑制するか、または自己免疫疾患を処置する工程をさらに包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記GM−CSFおよび前記二重特異性抗体が、インビボで導入されて、前記調節性T細胞の産生を調節する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
哺乳動物において、宿主−移植片拒絶から移植片を防御するための方法であって、該方法は、以下:
(a)樹状細胞に対する宿主−移植片拒絶を担う抗原を提示する工程;
(b)二重特異性抗体でコーティングされた樹状細胞をT細胞とともに培養して、抗原特異的なT細胞寛容を誘導する工程;および
(c)該T細胞を該宿主に投与する工程;
を包含する、方法。
【請求項15】
樹状細胞の成熟に作用するための方法であって、該細胞は、調節性T細胞を誘導し得る半成熟状態に保持され、該方法は、以下:
(a)樹状細胞をパルスする工程;
(b)該樹状細胞をGM−CSFと接触させる工程;および
(c)該パルスした樹状細胞を適切な二重特異性抗体と接触させる工程であって、一方の腕が、標的または抗原に対する特異性を提供し、もう一方の腕が、CTLA−4連結を提供する、工程;
を包含する、方法。
【請求項16】
前記調節性T細胞(Tregs)が、一般的であるか、または抗原特異的である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
調節性T細胞が、Tregsが免疫応答を抑制し得るのを媒介するTGF−βおよび/またはIL−10を産生する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
T細胞およびB細胞に仲介される自己免疫疾患を処置し、同種移植片拒絶を防止するための方法であって、該方法は、以下:
(a)樹状細胞を、目的の抗原の存在下でGM−CSFで処理する工程であって、該抗原が、アロ抗原または自己抗原である、工程;
(b)半成熟樹状細胞をインビトロまたはインビボで誘導する工程;
(c)半成熟樹状細胞をインビボまたはインビトロのどちらかで抗原提示細胞として使用して、エフェクターT細胞の機能を抑制するIL−10および/またはTGF−βを産生し得る調節性T細胞を誘導する工程;ならびに
(d)該自己免疫疾患を該調節性T細胞で処置する工程;
を包含する、方法。
【請求項19】
前記疾患が、橋本甲状腺炎、I型糖尿病、重症筋無力症、アトピー性皮膚炎および多発性硬化症からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記調節性T細胞が、インビボで投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
処置の必要な患者に、抗原活性化半成熟樹状細胞を含有する組成物を治療有効量投与する工程を包含する自己免疫疾患を処置する方法であって、該樹状細胞が、GM−CSFおよび非樹状細胞前駆体の増殖または成熟を阻害する少なくとも一つの他の因子を含有する培養培地中で組織供給源を培養する工程を包含する方法により産生され、それにより該培養物中で樹状細胞前駆体の産生を増加させる工程;
を包含する、方法であって、
該樹状細胞が、自己タンパク質またはアロ抗原でパルスされ、該樹状細胞が、自己タンパク質をプロセシングして修飾された自己タンパク質抗原またはアロ抗原を産生し、該自己タンパク質抗原またはアロ抗原が該樹状細胞により発現される、方法。
【請求項22】
T細胞およびB細胞に仲介される自己免疫疾患の発症を予防するための方法であって、該方法は、以下:
(a)樹状細胞を、自己免疫疾患の原因である自己抗原を保有する自系組織と一緒にインキュベートする工程;
(b)該樹状細胞を成熟させる工程;
(c)該樹状細胞を、調節型を担うように抗原特異的T細胞にシグナルを出す二重特異性抗体でコーティングする工程;
(d)調節性T細胞を使用して、抗原特異的B細胞を調節して自己免疫疾患の体液性成分を調節する工程;
を包含する、方法。
【請求項1】
二重特異性抗CTLA−4抗体でコーティングされた半成熟樹状細胞を含有する組成物であって、該二重特異性抗体がまた、特異的な抗原もしくは組織に結合し得る、組成物。
【請求項2】
前記樹状細胞がGM−CSFで処理される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記樹状細胞が、目的の抗原でパルスされる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗体がまた特異的抗原に結合し得る、半成熟樹状細胞にコーティングした二重特異性抗CTLA−4抗体。
【請求項5】
前記抗体がまた特異的な組織もしくは細胞に結合し得る、請求項4に記載の二重特異性抗CTLA−4抗体。
【請求項6】
組織特異的寛容を誘導するための方法であって、該方法は、以下:
(a)樹状細胞を目的の抗原で成熟させてT細胞を活性化する工程;および
(b)該活性化T細胞を、抗CTLA−4抗体でコーティングされた樹状細胞と接触させ、樹状細胞に結合し得る二重特異性抗体の第二の腕を介して該活性化T細胞の表面にCTLA−4を結合させる工程;
を包含する、方法。
【請求項7】
抗原特異的寛容を誘導するための方法であって、該方法は、以下:
(a)少なくとも一つの特異的抗原を樹状細胞に提示する工程;
(b)該樹状細胞のプロセシングおよび該抗原の提示を促進する工程;
(c)該樹状細胞に、細胞表面分子の発現を安定化させることを可能にする工程;
(d)さらなる抗原のプロセシングを防止する工程;ならびに
(e)抗原発現性樹状細胞を、該樹状細胞表面に結合しT細胞または他のリンパ球の表面上のCTLA−4分子に結合する能力を保持する二重特異性抗体で処理する工程;
を包含する、方法。
【請求項8】
抗原特異的T細胞寛容を誘導するための方法であって、該方法は、以下:
(a)樹状細胞をGM−CSFで処理して半成熟樹状細胞を得る工程;
(b)該半成熟樹状細胞を目的の抗原でパルスする工程;および
(c)調節性T細胞の産生を調節する工程;
を包含する、方法。
【請求項9】
CTLA−4に結合し得る二重特異性抗体で、パルスされた半成熟樹状細胞をコーティングする工程をまた包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記目的の抗体が、アロ抗原または自己抗原である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記半成熟樹状細胞が、インビトロで調節性T細胞の産生を誘導する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記調節性T細胞を宿主内に注入して同種移植片拒絶を抑制するか、または自己免疫疾患を処置する工程をさらに包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記GM−CSFおよび前記二重特異性抗体が、インビボで導入されて、前記調節性T細胞の産生を調節する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
哺乳動物において、宿主−移植片拒絶から移植片を防御するための方法であって、該方法は、以下:
(a)樹状細胞に対する宿主−移植片拒絶を担う抗原を提示する工程;
(b)二重特異性抗体でコーティングされた樹状細胞をT細胞とともに培養して、抗原特異的なT細胞寛容を誘導する工程;および
(c)該T細胞を該宿主に投与する工程;
を包含する、方法。
【請求項15】
樹状細胞の成熟に作用するための方法であって、該細胞は、調節性T細胞を誘導し得る半成熟状態に保持され、該方法は、以下:
(a)樹状細胞をパルスする工程;
(b)該樹状細胞をGM−CSFと接触させる工程;および
(c)該パルスした樹状細胞を適切な二重特異性抗体と接触させる工程であって、一方の腕が、標的または抗原に対する特異性を提供し、もう一方の腕が、CTLA−4連結を提供する、工程;
を包含する、方法。
【請求項16】
前記調節性T細胞(Tregs)が、一般的であるか、または抗原特異的である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
調節性T細胞が、Tregsが免疫応答を抑制し得るのを媒介するTGF−βおよび/またはIL−10を産生する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
T細胞およびB細胞に仲介される自己免疫疾患を処置し、同種移植片拒絶を防止するための方法であって、該方法は、以下:
(a)樹状細胞を、目的の抗原の存在下でGM−CSFで処理する工程であって、該抗原が、アロ抗原または自己抗原である、工程;
(b)半成熟樹状細胞をインビトロまたはインビボで誘導する工程;
(c)半成熟樹状細胞をインビボまたはインビトロのどちらかで抗原提示細胞として使用して、エフェクターT細胞の機能を抑制するIL−10および/またはTGF−βを産生し得る調節性T細胞を誘導する工程;ならびに
(d)該自己免疫疾患を該調節性T細胞で処置する工程;
を包含する、方法。
【請求項19】
前記疾患が、橋本甲状腺炎、I型糖尿病、重症筋無力症、アトピー性皮膚炎および多発性硬化症からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記調節性T細胞が、インビボで投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
処置の必要な患者に、抗原活性化半成熟樹状細胞を含有する組成物を治療有効量投与する工程を包含する自己免疫疾患を処置する方法であって、該樹状細胞が、GM−CSFおよび非樹状細胞前駆体の増殖または成熟を阻害する少なくとも一つの他の因子を含有する培養培地中で組織供給源を培養する工程を包含する方法により産生され、それにより該培養物中で樹状細胞前駆体の産生を増加させる工程;
を包含する、方法であって、
該樹状細胞が、自己タンパク質またはアロ抗原でパルスされ、該樹状細胞が、自己タンパク質をプロセシングして修飾された自己タンパク質抗原またはアロ抗原を産生し、該自己タンパク質抗原またはアロ抗原が該樹状細胞により発現される、方法。
【請求項22】
T細胞およびB細胞に仲介される自己免疫疾患の発症を予防するための方法であって、該方法は、以下:
(a)樹状細胞を、自己免疫疾患の原因である自己抗原を保有する自系組織と一緒にインキュベートする工程;
(b)該樹状細胞を成熟させる工程;
(c)該樹状細胞を、調節型を担うように抗原特異的T細胞にシグナルを出す二重特異性抗体でコーティングする工程;
(d)調節性T細胞を使用して、抗原特異的B細胞を調節して自己免疫疾患の体液性成分を調節する工程;
を包含する、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32−1】
【図32−2】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32−1】
【図32−2】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【公表番号】特表2007−537753(P2007−537753A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527364(P2007−527364)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/017210
【国際公開番号】WO2005/115419
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(500106802)ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・イリノイ (15)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/017210
【国際公開番号】WO2005/115419
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(500106802)ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・イリノイ (15)
【Fターム(参考)】
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