説明

抗微生物系

要約
本発明は、抗微生物剤としてのイオン液体の使用、ならびにイオン液体、膜増強組成物および粘度調整剤を含む抗微生物組成物の使用に関する。本発明はさらに、基質表面を消毒する方法、このような方法によって生成される基質、および新規なイオン液体組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗微生物系(antimicrobial system)を対象とし、さらに具体的には、膜増強組成物、粘度調整剤およびイオン液体を含む抗微生物系を対象とする。本発明はまた、このような組成物の使用、基質表面を消毒する方法、および抗微生物層を含む基質を対象とする。本発明はさらに、新規なイオン液体組成物、および抗微生物剤としてのそれらの使用を対象とする。
【背景技術】
【0002】
病原微生物はヒトの健康にかなりの脅威を及ぼし、この脅威に対抗するため種々の解決策が開発されてきた。特に懸念がある領域は、表面の微生物汚染、ならびにこのような汚染された表面と接触することによる疾患および感染の拡大の可能性である。例えば家庭内環境および医療環境における影響を受けやすい表面の微生物汚染を減少させるために、有効な消毒管理が必要である。特に、有効な消毒溶液は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、クロストリジウム・ディフィシル、ヘリコバクター・ピロリ、サルモネラ菌および大腸菌などの病原体に起因するものなどの、院内感染の拡大を防止する上での重要な手段である。
【0003】
典型的には、消毒手段は、それらが塗布されたときに、表面上に存在する真菌および/または細菌を殺滅するが、塗布のときのみに効果的に殺滅する傾向がある。これについての1つの理由は、消毒剤の大部分は、蒸発によって乾燥すると、それ以降における表面の感染からの保護を与えないことである。さらに、布で表面をふき取るなどの一般のクリーニングによって、多くの公知の消毒剤が除去され得る。このような表面は、再汚染を容易にこうむり、消毒剤の頻繁な再塗布が必要となることがある。さらに、従来の消毒剤溶液は、広域消毒を得るためには相対的に高濃度で塗布しなければならないことが多い。高濃度の消毒剤は食物と接触する場合有害であり、また皮膚および目への刺激も引き起こし得る。
【0004】
したがって、長期間に亘り広域抗微生物活性を実現する新規な消毒組成物が求められている。好ましくは、このような組成物は、ヒトおよび動物に対して毒性問題をもたらさないレベルで活性抗微生物剤を含む。
【0005】
アンモニウムおよびホスホニウム化合物は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌、真菌、原虫、ならびに特定のウイルスに対する抗微生物化合物としての使用が示唆されてきた。
【0006】
本発明の発明者らは驚いたことに、複素環カチオンを含むまたはそれからなるイオン液体は、従来技術において今までに記載されてきた公知のアンモニウムおよびホスホニウム化合物と比較して、優れた広域抗微生物活性を有することを見出した。特に、本発明のイオン液体は、業界標準の消毒剤である塩化ベンザルコニウム(塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム)と比較したとき、抗微生物活性が増加していることが見出された。抗微生物活性の増加は、使用される消毒剤の量を減少させることを潜在的に可能にし、対応して毒性も減少する。
【0007】
イオン液体は、ここ数年に亘り開発されてきた新規なクラスの化合物である。「イオン液体」という用語は、本明細書において使用する場合、固体を融解することによって生成することができ、このように生成された場合に、イオンのみからなる液体を意味する。イオン液体は、有機塩に由来し得る。
【0008】
イオン液体は、1種のカチオンおよび1種のアニオンを含む均質な物質から形成してもよく、あるいはそれは複数種のカチオンおよび/またはアニオンから構成することができる。したがって、イオン液体は、複数種のカチオンおよび1種のアニオンから構成し得る。イオン液体はさらに、1種のカチオン、および複数種のアニオンから構成し得る。したがって、本発明において使用される混合塩は、アニオンおよびカチオンを含有する混合塩を含むことができる。
【0009】
「イオン液体」という用語には、高い融解温度を有する化合物、および低い融点を有する化合物(例えば、室温以下(すなわち、15〜30℃))の両方が含まれる。後者は、「室温イオン液体」と称されることが多く、ピリジニウムおよびイミダゾリウムをベースとするカチオンを有する有機塩に由来することが多い。イオン液体の特徴は、特に低い(本質的に0)蒸気圧を有するということである。多くの有機イオン液体は、低い融点、例えば、100℃未満、特に80℃未満、および概ね室温、例えば、15〜30℃を有し、いくつかは、0℃をはるかに下回る融点を有する。本発明の目的のために、有機イオン液体は、250℃以下、好ましくは、150℃以下、さらに好ましくは、100℃、よりさらに好ましくは、80℃以下の融点を有することが望ましい。しかし、アニオンおよびカチオンからなる塩であるという基準に合致し、かつ抗微生物特性を有する任意の化合物を、本発明の組成物中に使用してもよい。
【0010】
イオン液体は、それらの不揮発性、低引火性、広い温度範囲での塗布性、および再利用の可能性によって、環境を害さないものとなるため、溶媒として最も広範に知られている。このような溶媒は、工業プロセスのために非常に望ましい。
【0011】
理論に束縛されるものではないが、本発明のイオン液体が示す抗微生物作用の機序は、イオン液体中に存在するアルキル様部分(好ましくは、アルキル鎖)などのヒドロカルビル鎖による、分子間相互作用の撹乱によるものと考えられている。細菌において、特にこれは細胞膜二重層の解離をもたらすことがあり、それによって細胞内容物の漏出、および細菌細胞中の他の生体分子構造の解離を誘発する。細菌細胞内の酵素も、イオン液体との相互作用から引き起こされる立体配座変化によって変性され得、それによって細胞の呼吸および代謝過程が撹乱される。細胞のエネルギー源が撹乱される場合、細胞は浸透圧を維持することができず、微生物は急速に死滅する。
【0012】
本発明の抗微生物系がバイオフィルムに対して驚くべき抗微生物活性を有することも見出された。
【0013】
バイオフィルムは、分泌された高分子化合物の細胞外マトリックスによって結合している、固体表面上に増殖する微生物の複雑な集合である。バイオフィルムは、単一の微生物種で形成されていることがあるが、より多くの場合、バイオフィルムは細菌、真菌、藻類、原虫、および他の細片の複雑な集合である。
【0014】
バイオフィルムのポリマーマトリックスは、その中にある細胞を保護し、結果として、バイオフィルム中の微生物は、密な細胞外マトリックスおよび微生物細胞の外層がフィルム内部で微生物を保護するので、浮遊性(プランクトン様)細菌と非常に異なる特性を有することが多い。さらに、異なる遺伝子がバイオフィルム内の細菌中で活性化され、これによってバイオフィルム中の細菌は、相当するプランクトン様細菌と表現型的に異なる生物となることが見出された。米国国立衛生研究所(NIH)は、全てのヒト慢性感染の80%までがバイオフィルムが媒介したものであり、水界生態系中の細菌の99.9%がバイオフィルム群集として生存すると推定している。
【0015】
バイオフィルム環境の1つの重要な作用は、微生物に洗剤および抗生物質への耐性の増加を与え、場合によって耐性は、相当するプランクトン様細菌と比較して1000倍ほども増加することがある。例えば基質表面における、細菌増殖の大半がバイオフィルムの形態である環境または臨床シナリオに、プランクトン様殺菌のデータを当てはめることは困難である。バイオフィルム中の微生物が健康なままであるため、フィルムは再成長することができ、バイオフィルム上での抗微生物剤の繰り返し使用によって、殺生物剤へのフィルム中の微生物の耐性増加進行を引き起こし得る。したがって、従来の消毒手段は、バイオフィルム汚染に対処するのに無効であることが多い。さらに、多くの場合、バイオフィルム汚染を除去するのに必要とされる高用量の殺生物剤は、環境に害を与え、ヒトおよび動物の健康に対して有害である。
【0016】
バイオフィルムは性質が共通であり、表面(床、調理用表面および衛生器具など)上のバイオフィルムは、微生物感染の重要な源である。商業用調理施設において、および病原体への患者の耐性が既に減少していることが多い病院において、これは特に懸念される。さらに、バイオフィルムは、配管システムおよび産業用機械のパイプの内部に形成され、目詰まり、生産物汚染、機器故障、および汚染された部分の洗浄または交替のための装置の休止時間による生産性の損失をもたらすことがある。
【0017】
本発明の抗微生物系はしたがって、バイオフィルム汚染を根絶するための、有用および非常に有効な、従来の方法に代わるものを提供する。特に、本発明は、バイオフィルム根絶の公知の方法を超えるいくつか利点を提供する。特に、本発明の抗微生物系は、バイオフィルムに対する殺生物活性の増加、および再汚染を防止するための活性の持続を実現する。上で述べたように、バイオフィルム中の細菌は、従来の消毒剤への耐性が1000倍もの増加を示すことが知られている。対照的に、本発明の抗微生物系は場合によっては、プランクトン状の相当する細菌についての最小殺菌濃度(MBC)と同じぐらいに低い、最小バイオフィルム除去濃度(MBEC)を有することが見出された。
【0018】
イオン液体は、それらの広域抗微生物活性に加えて、それらを消毒剤としての使用に特に適したものとするいくつかの物理的および化学的性質を有する。特に、イオン液体の蒸気圧は無視することができ、したがってそれらの消毒能力は、蒸発によって消耗されない。したがって、抗微生物活性は長期間に亘って維持される。さらに、イオン液体の蒸気圧がないことは、イオン液体の消毒剤が不快または有害な匂いを有さないことを意味する。酸化消毒剤(漂白剤など)と異なり、イオン液体の消毒剤は、表面に害を与えず、一般に太陽光によって不活性化されず、時間と共に有意に劣化しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかし、このようなイオン液体は非常に粘稠となる傾向があり、そのためにそれらを基質表面上に広げることが困難となり、薄層として塗布することがさらにより困難となる。本発明の発明者らは、優れた抗微生物特性を有するイオン液体を同定することに加えて、イオン液体を、病院内などの産業用用途、および個人の家などの家庭内用途に適した、薄い、好ましくは均質の層として塗布することを可能にする組成物も開発した。
【0020】
本発明の一態様によれば、抗菌剤としての、式
[Cat+][X-
(式中、[Cat+]は、少なくとも1種のキノリニウムまたはイソキノリニウムカチオン種を含む1種または複数のカチオン種であり、
[X-]は、1種または複数のアニオン種である)を有するイオン液体の使用を提供する。
【0021】
本発明によると、少なくとも1種のキノリニウムまたはイソキノリニウムカチオン種は、
【0022】
【化1】

【0023】
(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RhおよびRiは、同一でもまたは異なっていてもよく、各々独立に、水素、C1〜C40直鎖状もしくは分岐状アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基、またはC6〜C10アリール基から選択され、あるいは近接する炭素原子に結合しているRb、Rc、Rd、Re、Rf、RhおよびRiの任意の2つは、メチレン鎖−(CH2q−(qは、8〜20である)を形成し、前記アルキル、シクロアルキルまたはアリール基、または前記メチレン鎖は、未置換であり、あるいはC1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C7〜C30アラルキルおよびC7〜C30アルカリルから選択される1〜3個の基で置換されていてもよい)から選択してもよい。
【0024】
好ましくは、Raは、C1〜C30直鎖状もしくは分岐状アルキル、または水素から選択される。さらに好ましくは、Raは、C1〜C30直鎖状または分岐状アルキル、さらに好ましくはC2〜C20直鎖状または分岐状アルキル、よりさらに好ましくはC4〜C18直鎖状または分岐状アルキル、よりさらに好ましくはC8〜C18直鎖状または分岐状アルキル、最も好ましくはC8〜C14直鎖状または分岐状アルキルから選択される。
【0025】
さらなる例には、Raが、エチル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシルおよびオクタデシルから選択されるものが含まれる。
【0026】
さらなる好ましい実施形態において、Raは、C1〜C30直鎖状または分岐状アルキルおよびC1〜C15アルコキシアルキルから選択される。
【0027】
さらなる実施形態において、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RhおよびRiは、各々独立に、水素またはC1〜C30直鎖状もしくは分岐状アルキル基から選択される。さらに好ましくは、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RhおよびRiは、各々独立に、水素またはC1〜C12直鎖状もしくは分岐状アルキル基、さらに好ましくは、水素またはC1〜C6直鎖状もしくは分岐状アルキル基、よりさらに好ましくは水素またはメチル基から選択される。
【0028】
さらに好ましくは、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RhおよびRiの1つは、水素またはC1〜C30直鎖状もしくは分岐状アルキル基から選択され、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RhおよびRiの残りは、各々水素である。好ましくは、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RhおよびRiの1つは、水素またはC1〜C12直鎖状もしくは分岐状アルキル基、よりさらに好ましくは水素またはC1〜C6直鎖状もしくは分岐状アルキル基、最も好ましくは水素またはメチル基から選択され、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RhおよびRiの残りは、各々水素である。
【0029】
好ましくは、Rdは、水素またはC1〜C30直鎖状もしくは分岐状アルキル基、さらに好ましくは水素またはC1〜C12直鎖状もしくは分岐状アルキル基、よりさらに好ましくは水素またはC1〜C6直鎖状もしくは分岐状アルキル基、最も好ましくは水素またはメチル基から選択される。
【0030】
よりさらに好ましくは、Rdは、水素またはC1〜C30直鎖状もしくは分岐状アルキル基から選択され、Rb、Rc、Re、Rf、RhおよびRiは、各々水素である。好ましくは、Rdは、水素またはC1〜C12直鎖状もしくは分岐状アルキル基、よりさらに好ましくは水素またはC1〜C6直鎖状もしくは分岐状アルキル基、最も好ましくは水素またはメチル基から選択され、Rb、Rc、Re、Rf、RhおよびRiは、各々水素である。
【0031】
本発明のこの態様に従って使用し得る好ましいキノリニウムおよびイソキノリニウムカチオンの例には、N−(C8〜C18)アルキル−キノリニウム、N−(C8〜C18)アルキル−イソキノリニウム、N−(C8〜C18)アルキル−6−メチルキノリニウムおよびN−(C8〜C18)アルキル−6−メチルイソキノリニウムカチオン、さらに好ましくは、N−(C12〜C16)アルキル−キノリニウム、N−(C12〜C16)アルキル−イソキノリニウム、N−(C12〜C16)アルキル−6−メチルキノリニウムおよびN−(C12〜C16)アルキル−6−メチルイソキノリニウムカチオンが含まれる。
【0032】
さらなる例には、N−オクチルキノリニウム、N−デシルキノリニウム、N−ドデシルキノリニウム、N−テトラデシルキノリニウム、N−オクチルイソキノリニウム、N−デシルイソキノリニウム、N−ドデシル−イソキノリニウム、N−テトラデシルイソキノリニウム、N−オクチル−6−メチルキノリニウム、N−デシル−6−メチルキノリニウム、N−ドデシル−6−メチル−キノリニウム、N−テトラデシル−6−メチルキノリニウム、N−オクチル−6−メチルイソキノリニウム、N−デシル−6−メチルイソキノリニウム、N−ドデシル−6−メチルイソキノリニウム、およびN−テトラデシル−6−メチルイソキノリニウムが含まれる。
【0033】
N−テトラデシルイソキノリニウムおよびN−テトラデシル−6−メチルキノリニウムカチオンが、特に好ましい。
【0034】
本発明によると、[Cat+]は、上記のような単一のキノリニウムまたはイソキノリニウムカチオン種を表し得る。
【0035】
代わりに、[Cat+]は、上記のような2つ以上のキノリニウムまたはイソキノリニウムカチオン種の組合せを表し得る。
【0036】
さらなる実施形態において、[Cat+]は、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリウム、アザチアゾリウム、オキサチアゾリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、オキサボロリウム、ジチアゾリウム、トリアゾリウム、セレナゾリウム、オキサホスホリウム、ピロリウム、ボロリウム、フラニウム、チオフェニウム、ホスホリウム、ペンタゾリウム、インドリウム、インドリニウム、イソ−オキサゾリウム、イソ−トリアゾリウム、テトラゾリウム、ベンゾフラニウム、チアジアゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピラニウム、アンヌレニウム、フタラジニウム、キナゾリニウム、キノキサリニウム、チアジニウム、アザアンヌレニウム、アンモニウム、ピロリジニウム、ジアザビシクロウンデセニウム、ジアザビシクロノネニウム、ジアザビシクロデセニウム、ホスホニウムまたはトリアザデセニウムから選択される1種または複数のさらなるカチオン種に加えて、上記のような1種または複数のキノリニウムまたはイソキノリニウムカチオン種を含み得る。
【0037】
本発明のこの実施形態によると、1種または複数のさらなるカチオン種は、
【0038】
【化2】

【0039】
(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、Rh、RiおよびRjは、同一でもまたは異なっていてもよく、各々独立に、水素、C1〜C40、直鎖もしくは分岐状アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基、またはC6〜C10アリール基から選択され、前記アルキル、シクロアルキルまたはアリール基は、未置換であり、あるいはC1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C7〜C30アラルキルおよびC7〜C30アルカリルから選択される1〜3個の基で置換されていてもよく、あるいは近接する炭素原子に結合しているRb、Rc、Rd、Re、Rf、RhおよびRiの任意の2つは、メチレン鎖−(CH2q−(qは、8〜20である)を形成し、Rjは、存在しなくてよい)から選択してもよい。
【0040】
さらに好ましくは、1種または複数のさらなるカチオン種は、
【0041】
【化3】

【0042】
(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、Rh、RiおよびRjは、上記定義の通りである)から選択してもよい。
【0043】
よりさらに好ましくは、1種または複数のさらなるカチオン種は、
【0044】
【化4】

【0045】
(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Rgは、上記定義の通りである)から選択してもよい。
【0046】
存在する場合、Ra、RgおよびRjは、好ましくはC1〜C30直鎖状または分岐状アルキルから独立に選択され、Ra、RgおよびRjの1つはまた、水素でよい。
【0047】
aは、好ましくはC2〜C20直鎖状または分岐状アルキル、さらに好ましくはC4〜C18直鎖状または分岐状アルキル、よりさらに好ましくはC8〜C18直鎖状または分岐状アルキル、最も好ましくはC8〜C14直鎖状または分岐状アルキルから選択される。
【0048】
存在する場合、RgおよびRjは、独立に、好ましくはC1〜C10直鎖状または分岐状アルキル、さらに好ましくはC1〜C5直鎖状または分岐状アルキル、最も好ましくはメチル基から選択される。
【0049】
さらなる例には、Ra、RgおよびRjの1つが、エチル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシルおよびオクタデシルから選択されるものが含まれる。
【0050】
さらなる好ましい実施形態において、Ra、RgおよびRjは、存在する場合、各々独立に、C1〜C30直鎖状または分岐状アルキル、およびC1〜C15アルコキシアルキルから選択し得る。
【0051】
aおよびRgが両方とも存在する場合、それらは各々独立に、好ましくはC1〜C30直鎖状または分岐状アルキルから選択され、RaおよびRgの1つはまた水素でよい。さらに好ましくは、RaおよびRgの1つは、C2〜C20直鎖状または分岐状アルキル、さらに好ましくはC4〜C18直鎖状または分岐状アルキル、よりさらに好ましくはC8〜C18直鎖状または分岐状アルキル、最も好ましくはC8〜C14直鎖状または分岐状アルキルから選択してもよく、RaおよびRgの他の1つは、C1〜C10直鎖状または分岐状アルキル、さらに好ましくはC1〜C5直鎖状または分岐状アルキル、最も好ましくはメチル基から選択してもよい。
【0052】
本発明のこの態様によると、イオン液体は、[BF4-、[PF6-、[SbF6-、[F]-、[Cl]-、[Br]-、[I]-、[NO3-、[NO2-、[H2PO4-、[HPO42-、[Rx2PO4-、[RxPO42-、[Rx3PF3-、[Rx2P(O)O]-[HSO3-、[HSO4-、[RxSO3-、[RxSO4-、[SO42-、[H3CO(CH22O(CH2)OSO3-、[BBDB]-、[BOB]-、[(CF3SO23C]-、[Co(CO4)]-、[(CN)2N]-、[(CF32N]-、[(RxSO22N]-、[SCN]-、[H3C(OCH2CH2nOSO3-、[Rx2CCH2CH(CO2x)SO3-、[RxCO2-、ラクテート、およびドキュセートから選択される1種または複数のアニオン種を含んでもよく、各Rxは、(C1〜C20)アルキル、(C6〜C10)アリール、および(C1〜C10)アルキル(C6〜C10)アリールから独立に選択され、さらに前記アルキル、アリールおよびアルキルアリール基は、F、ClおよびIから独立に選択される1個または複数の置換基を含み得る。
【0053】
好ましい実施形態において、イオン液体は、[Cl]-、[Br]-、[I]-、[H2PO4-、[HPO42-、[Rx2PO4-、[Rx2P(O)O-]、[RxSO3-、[CH3SO3-、[RxSO4-、[CH3SO4-、[C25SO4-、[SO42-、[Rx2CCH2CH(CO2x)SO3-、[RxCO2-、[C64CO2-、ラクテートおよびドキュセートから選択される1種または複数のアニオン種を含んでもよく、Rxは、上記定義の通りである。さらに好ましくは、イオン液体は、[Cl]-、[Br]-、および[I]-から選択される1種または複数のアニオン種を含み得る。
【0054】
さらなる好ましい実施形態において、イオン液体は、[BF4-、[PF6-、[BBDB]-、[BOB]-、[N(CF32-、[(CF3SO22N]-、[(CF3SO23C]-、[(C253PF3-、[(C373PF3-、[(C252P(O)O]-、[SbF6-、[Co(CO)4-、[NO3-、[NO2-、[CF3SO3-、[CH3SO3-、[C817OSO3-、およびトシレートから選択される1種または複数のアニオン種を含み得る。
【0055】
本発明は、一重荷電のみを有するアニオンおよびカチオンを含むイオン液体に限定されないことを理解されたい。したがって、式[Cat+][X-]は、例えば、二重、三重および四重荷電アニオンおよび/またはカチオンを含むイオン液体を包含することを意図する。イオン液体中の[Cat+]および[X-]の相対的化学量論量はしたがって固定されないが、多数の電荷を有するカチオンおよびアニオンを考慮して変更することができる。例えば、式[Cat+][X-]には、式[Cat+2[X2-]、[Cat2+][X-2、[Cat2+][X2-]、[Cat+3[X3-]、[Cat3+][X-3などを有するイオン液体種が含まれることを理解すべきである。
【0056】
本発明は、単一のカチオンおよび単一のアニオンを含むイオン液体に限定されないことも理解されたい。したがって、[Cat+]は、特定の実施形態において、N−アルキルキノリニウムカチオンおよび1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンの混合物などの2種以上のカチオンを表し得る。同様に、[X-]は、特定の実施形態において、クロリド([Cl]-)およびビストリフルイミド([N(SO2CF32-)アニオンの混合物などの2種以上のアニオンを表し得る。
【0057】
[Cat+]がカチオンの混合物を表す場合、カチオンの混合物は、好ましくは少なくとも10モル%の上記のようなキノリニウムもしくはイソキノリニウムカチオン、またはこれらの混合物、さらに好ましくは少なくとも20モル%、さらに好ましくは少なくとも30モル%、さらに好ましくは少なくとも40モル%、さらに好ましくは少なくとも50モル%、さらに好ましくは少なくとも60モル%、さらに好ましくは少なくとも70モル%、さらに好ましくは少なくとも80モル%、よりさらに好ましくは少なくとも90モル%を含む。最も好ましくは、カチオンの混合物は、少なくとも95モル%の上記のようなキノリニウムもしくはイソキノリニウムカチオン、またはこれらの混合物を含む。
【0058】
さらなる実施形態において、イオン液体は、銀、銅、スズおよび亜鉛イオンから選択される金属イオンを含み得る。好ましくは、金属イオンは、Ag+、Cu+、Cu2+、Sn2+およびZn2+イオンから選択され、よりさらに好ましくは、金属イオンは、Ag+、Cu+およびCu2+イオンから選択され、最も好ましくは、金属イオンは、Ag+およびCu2+イオンから選択される。
【0059】
本発明による金属イオンを含むイオン液体は、電荷バランスを維持するために十分な量のアニオン種[X-]を必然的に含むことを理解されたい。
【0060】
イオン液体中の金属イオンは、錯体の形態をとってもよく、「錯体」という用語は、1つまたは複数のリガンドによって囲まれている金属イオンを意味することを意図することを当業者であれば認識するであろう。好ましい実施形態において、リガンドは、イオン液体のアニオンの1つと同じである。さらなる好ましい実施形態において、金属イオンは、ハロゲン化金属錯体、さらに好ましくは、金属塩化物または臭化物の錯体の形態である。
【0061】
本発明はさらに、抗菌剤としての、式
[Cat+][M+][X-
(式中、[Cat+]は、上記のような少なくとも1種のキノリニウムまたはイソキノリニウムカチオン種を含む1種または複数のカチオン種であり、
[M+]は、銀、銅、スズおよび亜鉛イオンから選定される1種または複数の金属イオンであり、
[X-]は、上記のような1種または複数のアニオン種である)を有する種を含むイオン液体の使用に関する。
【0062】
上記のように、種[Cat+][M+][X-]中の[Cat+]、[M+]、および[X-]の各々の相対的化学量論量は限定されず、[Cat+]、[M+]、および[X-]の各々の電荷(それらの各々は、単一または多数の電荷を有し得る)、および電荷バランス要件、および金属イオンの配位数を考慮して当業者が決定してもよい。
【0063】
最も好ましくは、イオン液体は、式[Cat+][Ag+][Br-2、式[Cat+2[Cu2+][Cl-4、または式[Cat+][Cu+][Cl-2を有する種を含む。さらに好ましくは、イオン液体は、式[Cat+][Ag+][Br-2または式[Cat+2[Cu2+][Cl-4を有する種を含む。したがって、金属錯体は好ましくは、式[Ag+][Br-2または式[Cu2+][Cl-4を有する。
【0064】
さらなる態様において、本発明は、抗菌剤としての、式[Cat+][X-
(式中、[Cat+]は、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリウム、アザチアゾリウム、オキサチアゾリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、オキサボロリウム、ジチアゾリウム、トリアゾリウム、セレナゾリウム、オキサホスホリウム、ピロリウム、ボロリウム、フラニウム、チオフェニウム、ホスホリウム、ペンタゾリウム、インドリウム、インドリニウム、イソ−オキサゾリウム、イソ−トリアゾリウム、テトラゾリウム、ベンゾフラニウム、チアジアゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピラニウム、アンヌレニウム、フタラジニウム、キナゾリニウム、キノキサリニウム、チアジニウム、アザアンヌレニウム、ピロリジニウム、ジアザビシクロウンデセニウム、ジアザビシクロノネニウム、ジアザビシクロデセニウムおよびトリアザデセニウムから選択される1種または複数の複素環カチオン種であり、
[X-]は、1種または複数のアニオン種である)を有し、
銀、銅、スズおよび亜鉛イオンから選択される金属イオンをさらに含むイオン液体の使用を提供する。
【0065】
好ましくは、金属イオンは、Ag+、Cu+、Cu2+、Sn2+およびZn2+イオンから選択され、よりさらに好ましくは、金属イオンは、Ag+、Cu+およびCu2+イオンから選択され、最も好ましくは、金属イオンは、Ag+およびCu2+イオンから選択される。
【0066】
上記のように、金属イオンは、錯体の形態をとり得る。好ましい実施形態において、リガンドは、イオン液体のアニオンの1つと同じである。
【0067】
本発明のこの態様によると、[Cat+]は、
【0068】
【化5】

【0069】
(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、Rh、RiおよびRjは、同一でもまたは異なっていてもよく、各々独立に、水素、C1〜C40、直鎖もしくは分岐状アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基、またはC6〜C10アリール基から選択され、前記アルキル、シクロアルキルまたはアリール基は、未置換であり、あるいはC1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C7〜C30アラルキルおよびC7〜C30アルカリルから選択される1〜3個の基で置換されていてもよく、あるいは近接する炭素原子に結合しているRb、Rc、Rd、Re、Rf、RhおよびRiの任意の2つは、メチレン鎖−(CH2q−(qは、8〜20である)を形成し、Rjは、存在しなくてよい)から選択される好ましくは1種または複数のカチオン種である。
【0070】
さらに好ましくは、[Cat+]は、
【0071】
【化6】

【0072】
(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、Rh、RiおよびRjは、上記定義の通りである)から選択される1種または複数のカチオン種である。
【0073】
別の好ましい実施形態において、[Cat+]は、
【0074】
【化7】

【0075】
(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Rgは、上記定義の通りである)から選択される。
【0076】
存在する場合、Ra、RgおよびRjは、好ましくはC1〜C30直鎖状または分岐状アルキルから独立に選択され、Ra、RgおよびRjの1個はまた、水素でよい。
【0077】
aは、好ましくはC2〜C20直鎖状または分岐状アルキル、さらに好ましくはC4〜C18直鎖状または分岐状アルキル、よりさらに好ましくはC8〜C18直鎖状または分岐状アルキル、最も好ましくはC8〜C14直鎖状または分岐状アルキルから選択される。
【0078】
存在する場合、RgおよびRjは、好ましくはC1〜C10直鎖状または分岐状アルキル、さらに好ましくはC1〜C5直鎖状または分岐状アルキル、最も好ましくは、メチル基から選択される。
【0079】
さらなる例には、Ra、RgおよびRjの1つが、エチル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシルおよびオクタデシルから選択されるものが含まれる。
【0080】
さらなる好ましい実施形態において、Ra、RgおよびRjは、存在する場合、各々独立に、C1〜C30直鎖状または分岐状アルキル、およびC1〜C15アルコキシアルキルから選択し得る。
【0081】
aおよびRgが両方とも存在する場合、それらは各々独立に、好ましくはC1〜C30直鎖状または分岐状アルキルから選択され、RaおよびRgの1つはまた水素でよい。さらに好ましくは、RaおよびRgの1つは、C2〜C20直鎖状または分岐状アルキル、さらに好ましくはC4〜C18直鎖状または分岐状アルキル、よりさらに好ましくはC8〜C18直鎖状または分岐状アルキル、最も好ましくはC8〜C14直鎖状または分岐状アルキルから選択してもよく、RaおよびRgの他の1つは、C1〜C10直鎖状または分岐状アルキル、さらに好ましくはC1〜C5直鎖状または分岐状アルキル、最も好ましくはメチル基から選択してもよい。
【0082】
本発明のこの態様によると、[X-]は、[BF4-、[PF6-、[SbF6-、[F]-、[Cl]-、[Br]-、[I]-、[NO3-、[NO2-、[H2PO4-、[HPO42-、[Rx2PO4-、[RxPO42-、[Rx3PF3-、[Rx2P(O)O]-、[HSO3-、[HSO4-、[RxSO3-、[RxSO4-、[SO42-、[H3CO(CH22O(CH2)OSO3-、[ビス(1,2−ベンゼンジオキシ)ボレート]-([BBDB]-)、[ビス(オキサラト)−ボレート]-([BOB]-)、[(CF3SO23C]-、[Co(CO4)]-、[(CN)2N]-、[(CF32N]-、[(RxSO22N]-、[SCN]-、[H3C(OCH2CH2nOSO3-、[Rx2CCH2CH(CO2x)SO3-、[RxCO2-、ラクテート、およびドキュセートから選択してもよく、各Rxは、(C1〜C20)アルキル、(C6〜C10)アリール、および(C1〜C10)アルキル(C6〜C10)アリールから独立に選択され、さらに前記アルキル、アリールおよびアルキルアリール基は、F、ClおよびIから独立に選択される1個または複数の置換基を含み得る。
【0083】
好ましくは、[X-]は、[Cl]-、[Br]-、[I]-、[H2PO4-、[HPO42-、[Rx2PO4-、[Rx2P(O)O-]、[RxSO3-、[CH3SO3-、[RxSO4-、[CH3SO4-、[C25SO4-、[SO42-、[Rx2CCH2CH(CO2x)SO3-、[RxCO2-、ベンゾエート、置換ベンゾエート、ラクテートおよびドキュセートから選択してもよく、Rxは、上記定義の通りである。最も好ましくは、[X-]は、[Cl]-、[Br]-および[I]-から選択される。
【0084】
[X-]はまた、好ましくは[BF4-、[PF6-、[BBDB]-、[BOB]-、[N(CF32-、[(CF3SO22N]-、[(CF3SO23C]-、[(C253PF3-、[(C373PF3-、[(C252P(O)O]-、[SbF6]−、[Co(CO)4-、[NO3-、[NO2-、[CF3SO3-、[CH3SO3-、[C817OSO3-、およびトシレートから選択される。
【0085】
本発明のこの態様による好ましいイオン液体の例は、式CyMIMXを有し、式中、CyMIMは、1−アルキル−3−メチルイミダゾリウムカチオンを意味し、アルキル基は、y個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、yは、4〜18、好ましくは8〜14であり、Xは、ハロゲン化物アニオンであり、最も好ましくは、クロリドである。
【0086】
本発明のこの態様は、一重荷電のみを有するアニオンおよびカチオンを含むイオン液体に限定されない。したがって、式[Cat+][X-]は、例えば、二重、三重および四重荷電アニオンおよび/またはカチオンを含むイオン液体を包含することを意図する。イオン液体中の[Cat+]および[X-]の相対的化学量論量は、したがって固定されないが、多数の電荷を有するカチオンおよびアニオンを考慮して変更することができる。例えば、式[Cat+][X-]には、式[Cat+2[X2-]、[Cat2+][X-2、[Cat2+][X2-]、[Cat+3[X3-]、[Cat3+][X-3などを有するイオン液体が含まれることを理解すべきである。
【0087】
本発明のこの態様はまた、単一のカチオンおよび単一のアニオンを含むイオン液体に限定されない。したがって、[Cat+]は、特定の実施形態において、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムおよび1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオンの統計的混合物などの2種以上のカチオンを表し得る。同様に、[X-]は、特定の実施形態において、クロリド([Cl]-)およびビストリフルイミド([N(SO2CF32-)アニオンの混合物などの2種以上のアニオンを表し得る。
【0088】
本発明はさらに、抗菌剤としての、式
[Cat+][M+][X-
(式中、[Cat+]は、上記定義のような1種または複数の複素環カチオン種であり、
[M+]は、銀、銅、スズおよび亜鉛イオンから選択される1種または複数の金属イオンであり、
[X-]は、上記のような1種または複数のアニオン種である)を有する種を含むイオン液体の使用に関する。
【0089】
本発明のこの態様による好ましい銀および銅含有イオン液体は、式C(818)MIMAgBr2および(C(818)MIM)2CuCl4を有する種を含むものである。さらにより好ましいのは、式C(1216)MIMAgBr2および(C(1216)MIM)2CuCl4を有する種を含むものである。
【0090】
種[Cat+][M+][X-]中の[Cat+]、[M+]、および[X-]の各々の相対的化学量論量は限定されず、[Cat+]、[M+]、および[X-](それらの各々は、単一または多数の電荷を有し得る)の各々の電荷、および電荷バランス要件を考慮して当業者が決定し得る。例えば、[Cat+]および[M+]が両方とも一重荷電の場合、[X-]は、二重荷電アニオンまたは2個の一重荷電アニオンでよい。[Cat+]が一重荷電であり、[M+]が二重荷電である別の例では、[X-]は、三重荷電アニオン、二重荷電アニオンおよび一重荷電アニオン、または3個の一重荷電アニオンでよい。種[Cat+][M+][X-]の化学量論はまた、金属イオンと共に錯体を形成するアニオンの数、すなわち、金属イオンの配位数によって影響されることがある。
【0091】
上記のイオン液体は、
(a)膜増強組成物、
(b)粘度調整剤、および
(c)上記定義のようなイオン液体
を含む、抗微生物系の形態で使用し得る。
【0092】
イオン液体は、微生物を阻害および/または殺滅するのに十分な量で抗微生物系中に存在するべきである。このような量は、公知の試験方法、例えば、ASTM E2180−01を使用して当業者が容易に決定してもよく、対象とする微生物に合わせて決定してもよい。適切な最小阻止濃度(MIC)は一般に、1μM〜10000μM、さらに好ましくは、10μM〜1000μM、よりさらに好ましくは、20μM〜500μM、最も好ましくは、25μM〜100μMである。
【0093】
本発明の一態様による好ましいイオン液体は、C8MIMClである。このイオン液体のMIC値は、MRSA、緑膿菌(P.aeroginosa)、K.アエルギノサ(K.Aeroginosa)、プロテウス・ミラビリス、バークホルデリア・セノセパシア、およびカンジダ・トロピカリスの各々については1200〜1800μM、表皮ブドウ球菌については300〜450μM、および大腸菌については600〜900μMの範囲である。最小殺菌濃度(MBC)値は、MRSA、表皮ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌、K.アエルギノサ、プロテウス・ミラビリス、バークホルデリア・セノセパシア、およびカンジダ・トロピカリスの各々については1200〜1700μMの範囲である。
【0094】
本発明の一態様による別の好ましいイオン液体は、C10MIMClである。このイオン液体についての適切なMIC値は、MRSAについては130〜190μM、表皮ブドウ球菌については30〜50μM、大腸菌およびカンジダ・トロピカリスについては260〜380μM、緑膿菌、プロテウス・ミラビリスおよびバークホルデリア・セノセパシアについては1000〜1500μM、ならびにK.アエルギノサについては520〜760μMの範囲である。MBC値は、MRSAおよび表皮ブドウ球菌については520〜760μM、大腸菌、緑膿菌、K.アエルギノサ、プロテウス・ミラビリスおよびバークホルデリア・セノセパシアの各々については1000〜1500μM、ならびにカンジダ・トロピカリスについては260〜380μMの範囲である。
【0095】
本発明の一態様によるさらなる好ましいイオン液体は、C12MIMClである。このイオン液体についての適切なMIC値は、MRSAおよび表皮ブドウ球菌については25〜45μM、大腸菌、K.アエルギノサおよびカンジダ・トロピカリスについては50〜90μM、緑膿菌およびプロテウス・ミラビリスについては400〜720μM、ならびにバークホルデリア・セノセパシアについては200〜360μMの範囲である。適切なMBC値は、MRSAについては200〜360μM、表皮ブドウ球菌、およびK.アエルギノサについては100〜180μM、大腸菌およびカンジダ・トロピカリスについては50〜90μM、プロテウス・ミラビリスについては1000〜1600μM、ならびにバークホルデリア・セノセパシアについては450〜720μMの範囲である。
【0096】
本発明の一態様による別の好ましいイオン液体は、C14MIMClである。このイオン液体についての適切なMIC値は、MRSA、表皮ブドウ球菌、大腸菌、およびK.アエルギノサについては25〜40μM、緑膿菌およびプロテウス・ミラビリスについては200〜320μM、バークホルデリア・セノセパシアについては100〜160μM、ならびにカンジダ・トロピカリスについては50〜80μMの範囲である。適切なMBC値は、MRSA、表皮ブドウ球菌および大腸菌については25〜40μM、緑膿菌およびバークホルデリア・セノセパシアについては200〜320μM、K.アエルギノサについては50〜80μM、プロテウス・ミラビリスについては400〜640μM、ならびにカンジダ・トロピカリスについては100〜160μMの範囲である。
【0097】
抗微生物系のための粘度調整剤は、1種もしくは複数の溶媒および/または増粘剤を含み得る。本発明の一実施形態において、抗微生物系は、溶媒中でイオン液体、膜増強組成物および任意選択の成分をブレンドすることによって調製し、溶媒は、イオン液体、膜増強組成物および任意選択の成分を溶解および/または分散することができる。抗微生物系が基質表面に塗布する適切な粘度を欠いている場合で、例えば、表面上でより高い濃度の抗微生物のイオン液体が望ましい場合、適切な厚さの層を形成するために、増粘剤も加えてもよい。溶媒および増粘剤の混合物を使用して、所望の粘度を得てもよく、適切な溶媒/増粘剤のこのような混合および選択は、十分に当業者の知識の範囲内であることを理解されたい。
【0098】
有利なことには、本発明の抗微生物系は、系の所望の用途によって、種々の粘度および広範囲の固体割合を有するように製剤することができる。特定の用途において、系は一度塗布されると、基質(基質は実質的に非多孔性である)上にコーティングを形成することが望ましいことがある。他の用途において、基質の表面下でも消毒および抗微生物作用が見られるように、系が基質の表面の少なくとも一部に浸透できることが望ましいことがある。前者の場合、相対的に粘稠な溶液(相対的に高い割合の固形分を場合により有する)が好ましくは配合され、後者では、より低い粘度の溶液(より低い割合の固体を有する)がより適切である。
【0099】
上記を考慮して、抗微生物系をコーティングとして塗布できることが望ましい本発明の実施形態のために(基質が非多孔性、例えば、ガラス、プラスチックまたは金属である場合のように)、5、6、7スピンドルによって75°Fおよび20RPMの剪断力(sheer)で測定すると、系は約5000cps〜約100,000cpsのブルックフィールド粘度を有するように製剤し得る。このような用途のための特に適切な系は、約15,000cps、または少なくとも約30,000cps、またはさらに少なくとも約50,000cpsの粘度を有し得る。同様に、このような系の固体含量は、約55.0重量%でよく、または約75.0重量%まででよい。
【0100】
他方、水を透過させ、したがって微生物の発生および増殖を受けやすい多孔性基質、例えば、木において特に望ましいことがあるように、系を塗布する基質の表面の少なくとも一部に、系が浸透することが望ましい本発明の実施形態について、適切な系は、約1cps〜約5000cpsのブルックフィールド粘度を有する。このような用途のための特に適切な系は、約1000cps未満、またはさらに約500cps未満の粘度を有し得る。このような組成物の固体含量は、約30重量%未満、20重量%未満、またはさらに約10重量%未満でよい。
【0101】
本発明の抗微生物系において使用するための適切な溶媒には、水、ならびに有機溶媒(アルコール(例えば、エタノール、メタノールおよびイソプロパノール)、ケトン(例えば、アセトン)、エステル(例えば、酢酸メチルおよび酢酸エチル)、エーテル(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルおよびテトラヒドロフラン)、炭化水素、ならびにこれらの混合物など)が含まれてもよい。好ましくは、溶媒は、水、メタノール、エタノール、およびこれらの混合物から選択される。
【0102】
適切な増粘剤には、それらの混合物を含めた、デンプン、アラビアゴム、グアーガム、およびカルボキシメチルセルロースが含まれる。特に適切な増粘剤は、DSM NeoResins、Wilmington、MAから「NEOCRYL−A1127」の商品名で市販されている。
【0103】
適切な膜増強成分には、湿潤剤、分散剤、界面活性剤、顔料、消泡剤、融合助剤、充填剤、強化剤、接着促進剤、可塑剤、流れ調整剤、抗酸化剤、UV安定剤、染料、およびポリマーの1つまたは複数が含まれる。
【0104】
適切な界面活性剤には、Huntsman Corporation、Salt Lake City、UTから市販されている「SURFONIC L」シリーズの界面活性剤、およびE.I.du Pont de Nemours and Companyから市販されている商品名「ゾニル」界面活性剤が含まれる。
【0105】
好ましくは、膜増強組成物は、有効な分子量のポリマーを含み、基質表面に塗布するときに膜を形成する。ポリマー膜は、水不溶性または水溶性でよい。好ましくは、膜は、水または他の溶媒と接触したときに、穏やかな摩耗およびイオン液体の浸出に対して耐性である。
【0106】
一実施形態において、ポリマーは、疎水性および/または水不溶性である。さらに好ましくは、ポリマーは、実質的に非イオン性、カチオン性またはアニオン性である。
【0107】
また非イオン性またはカチオン性であり、本発明の膜増強組成物中での使用に適した適切な疎水性、水不溶性の皮膜形成ポリマーには、スチレンアクリルコポリマー(商品名Acronol S702(BASF、Aktiengesellschaft、Mount Olive、N.J.)、PD−330(H.B.Fuller Company、St.Paul、Minn.)、ならびにRes1018、1019および4040(Rohm & Hass Company、Philadelphia Pa.)で市販であるものなど);アクリルホモポリマー(商品名Ucar376および351(Dow Chemical Midland、Mich.)ならびにRes3077(Rohm & Haas)で市販であるものなど);スチレンブタジエンブロックコポリマー(商品名DL313NA(Dow Chemical)で市販であるものなど);エチレン酢酸ビニルコポリマー(商品名Airflex400/A405/460(Air Products and Chemicals、Inc.、Allentown、Pa.)およびElvace1875(Reichhold Inc.、Durham、N.C)で市販であるものなど);ポリ酢酸ビニルホモポリマー(商品名PD−316(H.B.Fuller Company)およびAirflex XX220/230(Air Products and Chemicals、Inc.)で市販であるものなど);アクリレート−アクリロニトリルコポリマー(商品名Synthemul(様々なグレード、Reichhold Inc.)で市販であるものなど);酢酸ビニル−塩化ビニルエチレンコポリマー(商品名Airflex728(Air Products and Chemicals、Inc.)で市販であるものなど);エチレン酢酸ビニルアクリル酸ブチルターポリマー(商品名Airflex809およびAirflex811(Air Products and Chemicals、Inc.)で市販であるものなど);ブタジエン−アクリロニトリルコポリマー(商品名Tylac、様々なグレード(Reichhold Inc.)で市販であるものなど);ビニルアクリル−塩化ビニルコポリマー(vinyl acrylic−vinyl chloride copolymers)(商品名Haloflex563(Zeneca Resins、Wilmington、Mass.)で市販であるものなど);ポリクロロプレンポリマーおよびコポリマー(商品名DuPont Neoprene latex115(E.I.du Pont de Nemours and Company、Wilmington、Del.)で市販であるものなど);ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0108】
アニオン性であり、本発明の膜増強組成物中での使用に適した適切な疎水性、水不溶性の皮膜形成ポリマーには、スチレンアクリルコポリマー(商品名PD−600(BASF)で市販であるものなど);アクリルホモポリマー(商品名PD−431、PD−449、PD−483およびPD−2049F(H.B.Fuller Company)で市販であるものなど);ビニルアクリルコポリマー(商品名PD−119およびPD−124(H.B.Fuller Company)で市販であるものなど);スチレンブタジエンブロックコポリマー(商品名NM−565およびND−422(BASF)ならびにRovene6105(Mallard Creek Polymers Inc.、Charlotte、N.C.)で市販であるものなど);塩化ビニリデン−アクリル−塩化ビニルコポリマー(vinylidene chloride−acrylic−vinyl−chloride copolymers)(商品名Vycar660x14およびVycar460x46(Noveon Inc.、Cleveland、Ohio)で市販であるものなど);水性ウレタンポリマー(NeoRez R−962、967および972(Zeneca Resins)など);ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0109】
本発明のさらなる実施形態において、ポリマーは、水溶性である。抗微生物膜が乾燥したままであることが予想される場合、このような組成物は、環境において有用であり得る。本発明において使用するための適切な水溶性ポリマーには、ポリビニルアルコール(J.T.Baker、Phillipsburg、NJおよびSigma−Aldrich Company、St.Louis、MOから市販されているものなど);ポリビニルピロリジノン(J.T.Bakerから市販されているもの、およびPeakchem、ZheJiang、Chinaからの商品名PVP−Kxxで利用可能なもの(「xx」は、ポリマーの平均分子量(数千ダルトン)を示す。例えば、PVP−K90およびPVP−K30)など);ポリエチレンオキシド(Dow Chemical Co.、Midland、MIからの商品名POLYOXで利用可能なものなど);スルホン化ポリウレタン、ならびにこれらのコポリマーおよび混合物が含まれる。
【0110】
膜増強成分(特に、ポリマー)は、本発明の抗微生物系中に、好ましくは1重量%〜90重量%、さらに好ましくは10重量%〜80重量%、よりさらに好ましくは15重量%〜75重量%の量で存在し得る。
【0111】
抗微生物系には、紫外光源または可視光源による照射などの適切な検出装置によって表面上の組成物の検出を可能にする、光学レポーター(optical reporter)、例えば、フルオロフォアまたは蛍光増白剤をさらに含み得る。
【0112】
本発明のさらなる態様によると、上記定義のようなイオン液体または抗微生物系を基質に塗布し、イオン液体または抗微生物系を基質と一定期間接触したままにすることを含む、基質を消毒する方法を提供する。一実施形態において、イオン液体または抗微生物系を、基質の表面に塗布する。さらなる実施形態において、イオン液体または抗微生物系を、それが基質中の細孔に浸透するように基質に塗布する。
【0113】
本発明はさらに、上記定義のようなイオン液体または抗微生物系を表面に塗布し、イオン液体または抗微生物系を前記表面と一定期間接触したままにすることを含む、基質(表面および/または細孔を含めた)を消毒する方法を提供する。イオン液体または抗微生物系は、基質上に抗微生物系を噴霧、ブラッシング、塗布、ローリング、もしくはこすりつけ、またはイオン液体もしくは抗微生物系の浴中に消毒する基質を浸漬することなどによる任意の適切な方法によって基質に塗布し得る。
【0114】
さらに、溶媒の使用によって、本発明の抗微生物系を希薄溶液として塗布することを可能にし、これによって均質な抗微生物の薄膜が形成される。有利な溶媒は、容易に蒸発して、乾燥した膜を残すものである。
【0115】
好ましい実施形態において、本発明のイオン液体または抗微生物系を、加圧式エアロゾルスプレー容器から分注してもよい。
【0116】
本発明のイオン液体および抗微生物系を、多種多様の基質に好都合に塗布し、多種多様の産業において能力を見出すことができる。したがって、本発明の使用は特に制限されず、イオン液体および抗微生物系は、天然で実質的に多孔性または非多孔性であろうとなかろうと、望ましくは消毒され、密封され、長期間の抗微生物作用を付与された任意の基質に塗布してもよい。本明細書において使用する場合、「実質的に多孔性材料」とは、液体を透過させるもの、または基質の部分の間の間隙、すき間、ひび、割れ目、もしくは他の空間を介して液体を吸収させるものを示すことを意味し、木の細孔などの密集した微小な空間、または緩く織った布中などの広く開いた大きな空間のどちらでもよい。実質的に多孔性材料の例には、紙製品、スポンジ、繊維製品、織ったシートおよび不織シートまたは布帛、石膏、木、木材副産物、化粧板、泡、れんが、石、接着剤などが含まれ、一方実質的に非多孔性材料の例には、セラミクス、ガラス、金属、ポリマーシートまたはフィルムなどが含まれてもよい。
【0117】
本発明の膜形成抗微生物系は、物品の外側表面上の微生物を殺滅するのみでなく、表面の再汚染を防止する不透過性シールを形成し得る。
【0118】
本発明の抗微生物系から形成される抗微生物膜は、例えば、膜の抗微生物活性が枯渇し、新しいコーティングを塗布することが望ましいとき、または膜がダメージを受けた場合、膜除去組成物を使用して除去することが望ましいことがある。
【0119】
本発明の抗微生物系から形成される水不溶性、疎水性抗微生物膜のための適切な除去組成物には、有機溶媒および水性洗剤が含まれる。
【0120】
したがって少なくとも部分的に、膜の耐水性および耐磨耗性によって、また抗微生物剤の長期間の作用によって、ASTM D5590によって測定できるように、基質は、長期間、すなわち少なくとも約48時間まで、好ましくは少なくとも約28日まで、さらに好ましくは少なくとも約2年までの抗微生物活性を実現することができる。
【0121】
本発明の組成物のさらなる利点は、ヒ素、水銀、および鉛などの環境的に危険な金属材料(当技術分野で以前は使用されていた)が含まれないことである。
【0122】
上で述べたように、ポリマーは水溶性でよく、かつ/または1種もしくは複数の他の溶媒を含んでもよい。揮発性有機溶媒の存在または使用によって、ある環境においてまたはある使用者に対して安全上の懸念が示されることがあるので、有機溶媒を実質的に含まない水をベースとする系が特に有利であり得る。実際、本組成物は、カビまたはカビ胞子などの細片を表面に有効に密封し得るので、それらへのアレルギーに苦しんでいる、組成物の使用者に特定の利点を提供することが期待される。アレルギーに苦しんでいる人、またはカビもしくは他の微生物に対する感受性を示す他の人はまた、喘息を含めた、喘息に至るまでの関連呼吸器障害に苦しんでいることが多い。このような個人は、香水、煙、公害、スモッグ、クレンザー、および溶媒を含めた強い匂いに対して感受性を示すことが多く、それらの個人の、このような物品の選択およびそれらに対する曝露は、限定的であることが望ましく、または必然的でさえある。本発明による水をベースとする組成物は、溶媒の匂いがないだけでなく、実質的にいかなる匂いもなく、それによってこのような個人によるそれらの使用、またはこのような個人の近くの基質上でのそれらの使用を、不快でないものとし、したがって実際有益なものとする。
【0123】
本発明の抗微生物膜の耐磨耗性によってまた、基質の事前コーティングおよび/または処理を可能にし、その結果それは利害関係者、例えば、病院に販売し得る。
【0124】
さらなる態様において、本発明は、上記定義のようなイオン液体または抗菌系(antibacterial system)を含む基質を提供する。
【0125】
さらなる態様において、本発明は、上記のような方法によって調製される消毒された基質を提供する。
【0126】
さらなる態様において、本発明は、式
[Cat+][X-
(式中、[Cat+]は、少なくとも1種のキノリニウムまたはイソキノリニウムカチオン種を含む1種または複数のカチオン種であり、
[X-]は、1種または複数のアニオン種である)を有するイオン液体と、
銀、銅、スズおよび亜鉛イオンから選択される金属イオンと
を含む新規なイオン液体組成物を提供する。
【0127】
この定義内の好ましいイオン液体、および好ましい金属イオンを、上記で開示し、前記の好ましいイオン液体および金属イオンはまた、本発明のこの態様に従って好ましい。
【0128】
さらなる態様において、本発明は、
(a)膜増強組成物、
(b)粘度調整剤、
(c)式
[Cat+][X-
(式中、[Cat+]は、少なくとも1種のキノリニウムまたはイソキノリニウムカチオン種を含む1種または複数のカチオン種であり、
[X-]は、1種または複数のアニオン種である)を有するイオン液体、ならびに
(d)任意選択で銀、銅、スズおよび亜鉛イオンから選択される金属イオン
を含む抗微生物系を提供する。
【0129】
この定義内の好ましいイオン液体、および好ましい金属イオンを、上記で開示し、前記の好ましいイオン液体および金属イオンはまた、本発明のこの態様に従って好ましい。同様に、上記の膜増強組成物および粘度調整剤はまた、本発明のこの態様に従って使用し得る。
【0130】
さらなる態様において、本発明はまた、
(a)膜増強組成物、
(b)粘度調整剤、
(c)式
[Cat+][X-
(式中、[Cat+]は、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリウム、アザチアゾリウム、オキサチアゾリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、オキサボロリウム、ジチアゾリウム、トリアゾリウム、セレナゾリウム、オキサホスホリウム、ピロリウム、ボロリウム、フラニウム、チオフェニウム、ホスホリウム、ペンタゾリウム、インドリウム、インドリニウム、イソ−オキサゾリウム、イソ−トリアゾリウム、テトラゾリウム、ベンゾフラニウム、チアジアゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピラニウム、アンヌレニウム、フタラジニウム、キナゾリニウム、キノキサリニウム、チアジニウム、アザアンヌレニウム、ピロリジニウム、ジアザビシクロウンデセニウム、ジアザビシクロノネニウム、ジアザビシクロデセニウムおよびトリアザデセニウムから選択される1種または複数の複素環カチオン種であり、
[X-]は、1種または複数のアニオン種である)を有するイオン液体、ならびに
(d)銀、銅、スズおよび亜鉛塩から選択される金属塩
を含む、抗微生物系を提供する。
【0131】
この定義内の好ましいイオン液体、および好ましい金属イオンを、上記で開示し、前記の好ましいイオン液体および金属イオンはまた、本発明のこの態様に従って好ましい。同様に、上記の膜増強組成物および粘度調整剤はまた、本発明のこの態様に従って使用し得る。
【0132】
さらなる態様において、本発明は、
(a)式
[Cat+][X-
(式中、[Cat+]は、少なくとも1種のキノリニウムまたはイソキノリニウムカチオン種を含む1種または複数のカチオン種であり、
[X-]は、1種または複数のアニオン種である)を有するイオン液体、ならびに
(b)銀、銅、スズおよび亜鉛塩から選択される金属塩
を含む、上記定義のような新規なイオン液体組成物を調製するためのパーツのキット(kit of parts)を提供する。
【0133】
さらなる態様において、本発明は、
(a)膜増強組成物、
(b)粘度調整剤、
(c)式
[Cat+][X-
(式中、[Cat+]は、少なくとも1種のキノリニウムまたはイソキノリニウムカチオン種を含む1種または複数のカチオン種であり、
[X-]は、1種または複数のアニオン種である)を有するイオン液体、ならびに
(d)任意選択で銀、銅、スズおよび亜鉛塩から選択される金属塩
を含む、上記定義のような抗微生物系を調製するためのパーツのキットを提供する。
【0134】
さらなる態様において、本発明は、
(a)膜増強組成物、
(b)粘度調整剤、
(c)式
[Cat+][X-
(式中、[Cat+]は、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリウム、アザチアゾリウム、オキサチアゾリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、オキサボロリウム、ジチアゾリウム、トリアゾリウム、セレナゾリウム、オキサホスホリウム、ピロリウム、ボロリウム、フラニウム、チオフェニウム、ホスホリウム、ペンタゾリウム、インドリウム、インドリニウム、イソ−オキサゾリウム、イソ−トリアゾリウム、テトラゾリウム、ベンゾフラニウム、チアジアゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピラニウム、アンヌレニウム、フタラジニウム、キナゾリニウム、キノキサリニウム、チアジニウム、アザアンヌレニウム、ピロリジニウム、ジアザビシクロウンデセニウム、ジアザビシクロノネニウム、ジアザビシクロデセニウムおよびトリアザデセニウムから選択される1種または複数の複素環カチオン種であり、
[X-]は、1種または複数のアニオン種である)を有するイオン液体、ならびに
(d)銀、銅、スズおよび亜鉛塩から選択される金属塩
を含む、上記定義のような抗微生物系を調製するためのパーツのキットを提供する。
【0135】
上記のパーツのキットは、イオン液体組成物または抗微生物系の調製に関連して記載してきたが、本発明はまた、抗菌剤として使用するためのイオン液体組成物および抗微生物組成物の調製のための、このようなパーツのキットの使用に関することを理解されたい。
【0136】
本発明をこれより、例示として、および添付の図面を参照して記載する。
【0137】
図1は、例のグラム陽性球菌、グラム陰性桿菌および真菌についての平均最小阻止濃度(MIC)値を示すグラフである。
【0138】
図2は、Calgaryバイオフィルム装置(下記参照)上で増殖する各々の試験生物についての平均24時間バイオフィルム生細胞数を示す。各値は、6回の反復試験の平均として表す。
【0139】
図3は、10個、12個および14個の炭素原子のアルキル置換基を有する1−アルキル−3−メチルイミダゾリウムクロリドについての、様々な微生物における最小バイオフィルム除去濃度(MBEC)値を示すグラフである。
【0140】
図4は、例のグラム陽性球菌、グラム陰性桿菌および真菌についての平均最小バイオフィルム除去濃度(MBEC)値を示す。
【0141】
図5および6は、[1−(C8〜C18)アルキル−3−メチルイミダゾリウム][AgBr2]についての最小阻止濃度(MIC)値を示す。
【0142】
図7および8は、[1−(C8〜C18)アルキル−3−メチルイミダゾリウム]2[CuCl4]についての最小阻止濃度(MIC)値を示す。
【0143】
図9は、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(C10MIMCl)、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(C12MIMCl)、および1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(C14MIMCl)についてのMRSAの殺滅率を示すグラフである。
【0144】
図10は、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(C10MIMCl)、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(C12MIMCl)、および1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(C14MIMCl)についての表皮ブドウ球菌の殺滅率を示すグラフである。
【0145】
図11は、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(C10MIMCl)、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(C12MIMCl)、および1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(C14MIMCl)についての大腸菌の殺滅率を示すグラフである。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】例のグラム陽性球菌、グラム陰性桿菌および真菌についての平均最小阻止濃度(MIC)値を示すグラフである。
【図2】Calgaryバイオフィルム装置(下記参照)上で増殖する各々の試験生物についての平均24時間バイオフィルム生細胞数を示す。
【図3】異なる数の炭素原子のアルキル置換基を有する1−アルキル−3−メチルイミダゾリウムクロリドについての微生物における最小バイオフィルム除去濃度(MBEC)値を示すグラフである。
【図4】例のグラム陽性球菌、グラム陰性桿菌および真菌についての平均最小バイオフィルム除去濃度(MBEC)値を示す。
【図5】[1−(C8〜C18)アルキル−3−メチルイミダゾリウム][AgBr2]についての最小阻止濃度(MIC)値を示す。
【図6】[1−(C8〜C18)アルキル−3−メチルイミダゾリウム][AgBr2]についての最小阻止濃度(MIC)値を示す。
【図7】[1−(C8〜C18)アルキル−3−メチルイミダゾリウム]2[CuCl4]についての最小阻止濃度(MIC)値を示す。
【図8】[1−(C8〜C18)アルキル−3−メチルイミダゾリウム]2[CuCl4]についての最小阻止濃度(MIC)値を示す。
【図9】1−デシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、および1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムクロリドについてのMRSAの殺滅率を示すグラフである。
【図10】1−デシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、および1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムクロリドについての表皮ブドウ球菌の殺滅率を示すグラフである。
【図11】1−デシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、および1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムクロリドについての大腸菌の殺滅率を示すグラフである。
【0147】
イオン液体による微生物阻害
例1
表1は、MRSAを接種した寒天培養プレートに塗布した40μLのイミダゾリウムイオン液体からもたらされる阻害半径を示す。本明細書において使用する場合、CyMIMClとは、1−アルキル−3−メチル−イミダゾリウムクロリドイオン液体を意味し、アルキル基は、y個の炭素原子を有する直鎖アルキル基である。
【0148】
【表1】

【0149】
例2−MIC/MBC測定
表2および3は、一連の菌種および真菌カンジダ・トロピカリスに対する、1−アルキル−キノリニウムブロミドイオン液体および1−アルキル−3−メチル−イミダゾリウムクロリドイオン液体各々の最小阻止濃度(MIC)および最小殺菌濃度(MBC)を示し、1−アルキル基は、示した数の炭素原子を含有する直鎖アルキル基である。
【0150】
NCCLSのガイドラインによって、微量液体希釈法を行なった。Mueller−Hintonブロス(MHB)(100μl)中の各イミダゾリウム塩の連続倍数希釈物(0.22μmの無菌濾過した最初の処理用溶液から)を、0.0000625〜1%w/vの範囲に亘り96ウェルマイクロタイタープレート中で調製した。試験を行なう接種材料は、MHB中の一晩で活発に増殖するブロス培養物の濁り度を1×108CFU/mlに等しい550nmの光学濃度に調節することによって調製した。懸濁液をさらに希釈し、総生菌数によって確認すると、MHB中2×105CFU/mlの最終接種材料密度とした。試験する接種材料(100μl、2×105CFUml-1)を、微量希釈トレイの各ウェルに加え、それを好気的に37℃で24時間インキュベートした。陽性および陰性増殖対照を全てのアッセイに含めた(6回の反復試験)。MICを決定した後、最小殺菌濃度(MBC)は、MHAプレート上で増殖を示さないウェルから20μlの懸濁液を広げることによって決定し、次いでそれを24時間インキュベートし、99.9%の殺滅について調べた。
【0151】
【表2】

【0152】
【表3】

【0153】
例3
表4は、一連の菌種および真菌カンジダ・トロピカリスに対する1−アルキル−3−メチル−イミダゾリウム−AgBr2イオン液体の最小阻止濃度(MIC)を示し、1−アルキル基は、示した数の炭素原子を含有する直鎖アルキル基である。MIC値は、例2に記載したプロトコルによって決定した。
【0154】
【表4】

【0155】
例4
表5は、一連の菌種および真菌カンジダ・トロピカリスに対する(1−アルキル−3−メチル−イミダゾリウム)2CuCl4イオン液体の最小阻止濃度(MIC)濃度を示し、1−アルキル基は、示した数の炭素原子を含有する直鎖アルキル基である。MIC値は、例2に記載したプロトコルによって決定した。
【0156】
【表5】

【0157】
例5
表6は、本発明から外れるイオン液体(IL1およびIL2)、ならびに本発明によって使用されるイオン液体(IL3およびIL4)の比較最小阻止濃度(MIC)を示す。MIC値は、例2に記載されているプロトコルによって決定した。使用するイオン液体は、
IL1 1,2−ジメチル−3−テトラデシルイミダゾリウムブロミド
IL2 N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−テトラデシルアンモニウムブロミド
IL3 N−テトラデシル−6−メチルキノリニウムブロミド
IL4 N−テトラデシルイソキノリニウムブロミド
である。
【0158】
【表6】

【0159】
バイオフィルムアッセイ
例6
表7および8は、一連のバイオフィルムに対する1−アルキル−キノリニウムブロミドイオン液体および1−アルキル−3−メチル−イミダゾリウムクロリドイオン液体各々のMICおよびMBEC(最小バイオフィルム除去濃度)値を比較し、1−アルキル基は、示された数の炭素原子を含有する直鎖アルキル基である。表皮ブドウ球菌ATCC12228は、バイオフィルムを形成しないため、バイオフィルムアッセイ中に含まれていない。
【0160】
各試験生物のバイオフィルムは、Calgaryバイオフィルム装置(生理学および遺伝学用MBEC Assay(商標)として市販されている、Innovotech Inc.、Edmonton、Alberta、Canada)中で増殖させた。マイクロタイタープレートベースのアッセイであるこの装置は、2つの部分からなる(接種試験培地を含有するマイクロタイタープレート、および96個の同一のペグを有するポリスチレン蓋(その表面に、ジャイロロータリーインキュベーションのもと微生物バイオフィルムが形成される))。バイオフィルムアッセイは、メーカー提供のMBEC(商標)アッセイプロトコルに従って、僅かに修正して行なった。各々の試験生物の接種材料は、上記のようにMHB中で調製し、調整し、約107CFUml-1の最終接種材料密度を得た(生菌数によって確認)。150μlの接種培地を、96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに移し、96個のペグを有するアッセイプレート蓋を、マイクロタイタープレート中に置いた。MBECアッセイプレートをジャイロロータリーインキュベーター(37℃、95%相対湿度)中に24時間置き、各試験株の24時間バイオフィルムを増殖させ、比較を行なった。陽性および陰性増殖対照を、各プレートに含めた(6回の反復試験)。24時間バイオフィルム数の測定に加えて、最初および24時間のプランクトン様生菌数を測定し、メーカーの指示に従ってCFUペグ-1として表した。24時間後、MBECアッセイプレートのペグ蓋(peg lid)を、3度穏やかにすすいだ。すすいだ後、MBECアッセイのペグ蓋を、「負荷(challenge)」プレートに移した。各イミダゾリウム塩の段階希釈物は、各ウェル中の様々な濃度のILを含有する200μlのMHB中で調製した。陽性増殖対照および無菌対照を、各アッセイプレート中に含めた。24±1時間の抗微生物負荷へのバイオフィルムの曝露の後、ペグ蓋を負荷プレート(challenged)から除去し、記載したように0.9%食塩水中で3回すすぎ、「回復」プレートに移した。各ウェルは、中和剤が補充されているMHBを含有した(各ウェル中の最終濃度;0.125%L−ヒスチジン、0.125%L−システイン(cystiene)、0.25%還元型グルタチオン)。バイオフィルムを5分間の超音波処理によって回復培地中に取り出し、ペグ蓋を廃棄した。回復プレートを、一晩インキュベートし、24時間後に濁り度を目視検査する。さらに、各プレートについての光学濃度測定を、550nmで記録した。透明なウェルはバイオフィルム根絶の証拠と考え、MBEC値は、24時間のインキュベーション後に増殖が観察されない最も低い濃度として割り当てた。プレートをさらに24時間インキュベートし、バイオフィルム除去濃度を確認した。
【0161】
【表7】

【0162】
【表8】

【0163】
例7
表9は、イオン液体IL3(N−テトラデシル−6−メチルキノリニウムブロミド)およびIL4(N−テトラデシルイソキノリニウムブロミド)について得た最小バイオフィルム除去濃度(MBEC)値を示す。
【0164】
【表9】

【0165】
例8
表10は、例示した1−(C8〜C14)アルキル−3−メチルイミダゾリウムイオン液体についての質量対容量百分率(%w/v)およびμM濃度を比較する。
【0166】
【表10】

【0167】
MRSA殺滅動態
例9
表11a〜11cは、1−アルキル−3−メチル−イミダゾリウムクロリドイオン液体で処理したMRSA、表皮ブドウ球菌、および大腸菌プランクトン様細胞培養物についての細菌細胞死滅率を表し、1−アルキル基は、各々、デシル(C10)、ドデシル(C12)およびテトラデシル(C14)である。殺滅動態データを測定した1ミリリットル当りのコロニー形成単位(CFU/mL)値に換算して示し、また図9〜11においてグラフで提示する。
【0168】
【表11】

【0169】
膜の調製
例10
水溶性膜組成物は、180,000ダルトンの分子量を有するポリビニルアルコールポリマー5部(Sigma−Aldrich Chemical Company)と水95部を併せ、混合物を温浴中で24時間振盪し、ポリマーを完全に溶解することによって調製した。
【0170】
例11
さらなる膜組成物は、イソプロパノールおよびメチルエチルケトンの50:50溶液中のポリビニルピロリドン(水中の2%固体−International Specialty Productsから)に溶解することによって調製した。
【0171】
例12
例10の膜組成物(30部)を、0.2部の1−オクチル−3−メチルピリジニウムテトラフルオロボレートと混合した。
【0172】
例13
6重量%の1−オクチル−2−メチルピリダジニウムテトラフルオロボレートを、例11の膜組成物と混合した。
【0173】
試験
例14
(A)例12の組成物を2つのポリプロピレン基質上に塗布し、55℃で5分間乾燥させた。
(B)例13の組成物を2つのポリエチレンテレフタレート基質上にコーティングし、室温で20分間、次いで80℃で10分間乾燥させた。
【0174】
対照膜も、各々例10および例11の組成物を使用して生成した。
【0175】
大腸菌および枯草菌の培養物を、公知の標準的方法を使用して増殖させ、大腸菌および枯草菌を含む寒天スラリーを生じさせた。概ね0.5mlのスラリーを試料上に置いた。
【0176】
試料を12時間放置し、この時間の後、試験基質からD/E中和ブロスへの寒天スラリーの溶出によって生存する微生物を回収し、超音波処理およびボルテックスによって抽出した。
【0177】
段階希釈物を調製し、寒天プレートに塗布し、それを概ね28℃で48時間インキュベートした。
【0178】
細菌コロニー形成ユニットを次いで計数した。
【0179】
結果
結果は、対照試料と比較したときに、イオン液体を含有する試料について細菌コロニーの有意により少ない検出/非検出を示し、それによって、本発明のイオン液体は、良好な抗微生物特性を有し、薄膜を生成するように首尾よく作製できることを示した。
【0180】
摩耗試験
例15
例14に従って生成した膜の試料を、除去の容易さについて試験した。
【0181】
室温で布を水に浸し、抗微生物膜上を擦った。膜が除去されるのに少なくとも2回撫でることを必要とし、固形で残った、すなわち容易に消失しなかった。
【0182】
本出願にはまた、下記の項が含まれる。
1.抗菌剤としての、式[Cat+][X-
(式中、[Cat+]は、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリウム、アザチアゾリウム、オキサチアゾリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、オキサボロリウム、ジチアゾリウム、トリアゾリウム、セレナゾリウム、オキサホスホリウム、ピロリウム、ボロリウム、フラニウム、チオフェニウム、ホスホリウム、ペンタゾリウム、インドリウム、インドリニウム、イソ−オキサゾリウム、イソ−トリアゾリウム、テトラゾリウム、ベンゾフラニウム、チアジアゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピラニウム、アンヌレニウム、フタラジニウム、キナゾリニウム、キノキサリニウム、チアジニウム、アザアンヌレニウム、ピロリジニウム、ジアザビシクロウンデセニウム、ジアザビシクロノネニウム、ジアザビシクロデセニウムおよびトリアザデセニウムから選択される1種または複数の複素環カチオン種であり、
[X-]は、1種または複数のアニオン種である)を有し、
銀、銅、スズおよび亜鉛イオンから選択される金属イオンをさらに含む、イオン液体の使用。
2.金属イオンが、Ag+、Cu+、Cu2+、Sn2+およびZn2+イオン、さらに好ましくは、Ag+、Cu+およびCu2+イオン、最も好ましくは、Ag+およびCu2+イオンから選択される、第1項に記載の使用。
3.金属イオンが、錯体、さらに好ましくは、ハロゲン化金属錯体、さらに好ましくは、金属塩化物または臭化物錯体、最も好ましくは、式[Ag+][Br-2または式[Cu2+][Cl-4を有する錯体の形態である、第2項に記載の使用。
4.1種または複数の複素環カチオン種が、
【0183】
【化8】

【0184】
(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、Rh、RiおよびRjは、同一でもまたは異なっていてもよく、各々独立に、水素、C1〜C40、直鎖もしくは分岐状アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基、またはC6〜C10アリール基から選択され、前記アルキル、シクロアルキルまたはアリール基は、未置換であり、あるいはC1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C7〜C30アラルキルおよびC7〜C30アルカリルから選択される1〜3個の基で置換されていてもよく、あるいは近接する炭素原子に結合しているRb、Rc、Rd、Re、Rf、RhおよびRiの任意の2つは、メチレン鎖−(CH2q−(qは、8〜20である)を形成し、Rjは、存在しなくてよい)から選択される、第1〜3項のいずれかに記載の使用。
5.1種または複数のカチオン種が、
【0185】
【化9】

【0186】
(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、Rh、RiおよびRjは、第4項に記載の通りである)から選択される、第4項に記載の使用。
6.1種または複数のさらなるカチオン種が、
【0187】
【化10】

【0188】
(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Rgは、第4項に記載の通りである)から選択される、第5項に記載の使用。
7.Ra、Rgおよび、Rjが、存在する場合、C1〜C30直鎖状または分岐状アルキルから独立に選択され、Ra、RgおよびRjの1つがまた水素でよい、第4〜6項のいずれかに記載の使用。
8.Raが、C2〜C20直鎖状または分岐状アルキル、さらに好ましくはC4〜C18直鎖状または分岐状アルキル、よりさらに好ましくはC8〜C18直鎖状または分岐状アルキル、最も好ましくはC8〜C14直鎖状または分岐状アルキルから選択される、第7項に記載の使用。
9.RgおよびRjが、存在する場合、独立に、C1〜C10直鎖状または分岐状アルキル、さらに好ましくはC1〜C5直鎖状または分岐状アルキル、最も好ましくは、メチル基から選択される、第7項または第8項に記載の使用。
10.Ra、RgおよびRjの1つが、エチル、ブチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシルおよびオクタデシルから選択される、第7項に記載の使用。
11.Ra、RgおよびRjが、存在する場合、各々独立に、C1〜C30直鎖状または分岐状アルキル、およびC1〜C15アルコキシアルキルから選択される、第4〜6項のいずれかに記載の使用。
12.[X-]が、[BF4-、[PF6-、[SbF6-、[F]-、[Cl]-、[Br]-、[I]-、[NO3-、[NO2-、[H2PO4-、[HPO42-、[Rx2PO4-、[RxPO42-、[Rx3PF3-、[Rx2P(O)O]-[HSO3-、[HSO4-、[RxSO3-、[RxSO4-、[SO42-、[H3CO(CH22O(CH2)OSO3-、[BBDB]-、[BOB]-、[(CF3SO23C]-、[Co(CO4)]-、[(CN)2N]-、[(CF32N]-、[(RxSO22N]-、[SCN]-、[H3C(OCH2CH2nOSO3-、[Rx2CCH2CH(CO2x)SO3-、[RxCO2-、ラクテート、およびドキュセートから選択される1種または複数のアニオン種であり、各Rxが、(C1〜C20)アルキル、(C6〜C10)アリール、および(C1〜C10)アルキル(C6〜C10)アリールから独立に選択され、さらに前記アルキル、アリールおよびアルキルアリール基が、F、ClおよびIから独立に選択される1個または複数の置換基を含み得る、第1〜11項のいずれかに記載の使用。
13.[X-]が、[Cl]-、[Br]-、[I]-、[H2PO4-、[HPO42-、[Rx2PO4-、[Rx2P(O)O-]、[RxSO3-、[CH3SO3-、[RxSO4-、[CH3SO4-、[C25SO4-、[SO42-、[Rx2CCH2CH(CO2x)SO3-、[RxCO2-、[C64CO2-、ラクテートおよびドキュセートから選択され、Rxが、第12項に記載の通りである、第12項に記載の使用。
14.[X-]が、[Cl]-、[Br]-、および[I]-から選択される、第13項に記載の使用。
15.[X-]が、[BF4-、[PF6-、[BBDB]-、[BOB]-、[N(CF32-、[(CF3SO22N]-、[(CF3SO23C]-、[(C253PF3-、[(C373PF3-、[(C252P(O)O]-、[SbF6-、[Co(CO)4-、[NO3-、[NO2-、[CF3SO3-、[CH3SO3-、[C817OSO3-、およびトシレートから選択される、第12項に記載の使用。
16.抗菌剤としての、式
[Cat+][M+][X-
(式中、[Cat+]は、第1項および第4〜11項のいずれかに記載の1種または複数の複素環カチオン種であり、[M+]は、第1〜3項のいずれかに記載の1種または複数の金属イオンであり、
[X-]は、第1項および第12〜15項のいずれかに記載の1種または複数のアニオン種である)を有する種を含むイオン液体の使用。
17.イオン液体が、式C(818)MIMAgBr2または(C(818)MIM)2CuCl4を有する種、さらに好ましくは、式C(1216)MIMAgBr2または(C(1216)MIM)2CuCl4を有する種を含む、第16項に記載の使用。
18.イオン液体が、
(a)膜増強組成物、
(b)粘度調整剤、および
(c)第1〜17項のいずれかに記載のイオン液体
を含む抗微生物系の形態で使用される、第1〜17項のいずれかに記載の使用。
19.イオン液体が、0.001重量%〜10重量%の量で存在し、さらに好ましくは、イオン液体が、0.005重量%〜7重量%の量で存在し、最も好ましくは、イオン液体が、0.01重量%〜0.5重量%の量で存在する、第18項に記載の使用。
20.粘度調整剤が、1種もしくは複数の溶媒および/または増粘剤を含む、第18項または第19項に記載の使用。
21.膜増強組成物が、湿潤剤、分散補助剤、界面活性剤、顔料、消泡剤、融合助剤、充填剤、強化剤、接着促進剤、可塑剤、流れ調整剤、抗酸化剤、紫外線安定剤、ポリマー、またはこれらの組合せから選択される1種または複数の膜増強成分を含む、第18〜20項のいずれかに記載の使用。
22.膜増強組成物が、1重量%〜90重量%、さらに好ましくは、10重量%〜80重量%、最も好ましくは、15重量%〜75重量%の範囲の量で存在する、第18〜21項のいずれかに記載の使用。
23.膜増強組成物が、皮膜形成ポリマーを含む、第18〜22項のいずれかに記載の使用。
24.ポリマーが、疎水性および/または水不溶性である、第23項に記載の使用。
25.ポリマーが、実質的に非イオン性またはカチオン性である、第23項に記載の使用。
26.ポリマーが、実質的にアニオン性である、第23項に記載の使用。
27.ポリマーが、水溶性である、第23項に記載の使用。
28.抗微生物系が、紫外光源または可視光源による照射などの適切な検出装置によって表面上の組成物の検出を可能にする光学レポーター、例えば、フルオロフォアまたは蛍光増白剤をさらに含む、第18〜27項のいずれかに記載の使用。
29.表面に、第1〜17項のいずれかに記載のイオン液体、または第18〜28項のいずれかに記載の抗微生物系を塗布することを含む、表面を消毒する方法。
30.イオン液体または抗微生物系を、加圧エアロゾルスプレー缶からエアロゾルとして塗布する、第29項に記載の方法。
31.抗微生物系を、塗布の後に乾燥させる、第29項または第30項に記載の方法。
32.第1〜17項のいずれかに記載のイオン液体を含む基質。
33.第18〜28項のいずれかに記載の抗菌系を含む基質。
34.第29〜31項のいずれかに記載の方法によって調製される基質。
35.(a)膜増強組成物、
(b)粘度調整剤、
(c)式
[Cat+][X-
(式中、[Cat+]は、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリウム、アザチアゾリウム、オキサチアゾリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、オキサボロリウム、ジチアゾリウム、トリアゾリウム、セレナゾリウム、オキサホスホリウム、ピロリウム、ボロリウム、フラニウム、チオフェニウム、ホスホリウム、ペンタゾリウム、インドリウム、インドリニウム、イソ−オキサゾリウム、イソ−トリアゾリウム、テトラゾリウム、ベンゾフラニウム、チアジアゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピラニウム、アンヌレニウム、フタラジニウム、キナゾリニウム、キノキサリニウム、チアジニウム、アザアンヌレニウム、ピロリジニウム、ジアザビシクロウンデセニウム、ジアザビシクロノネニウム、ジアザビシクロデセニウムおよびトリアザデセニウムから選択される1種または複数の複素環カチオン種であり、
[X-]は、1種または複数のアニオン種である)を有するイオン液体、ならびに
(d)銀、銅、スズおよび亜鉛イオンから選択される金属イオン
を含む抗微生物系。
36.金属イオンが、第2項または第3項に記載の通りである、第35項に記載の抗微生物系。
37.[Cat+]が、第4〜11項のいずれかに記載の1種または複数の複素環カチオン種である、第35項または第36項に記載の抗微生物系。
38.[X-]が、第12〜15項のいずれかに記載の1種または複数のアニオン種である、第35〜37項のいずれかに記載の抗微生物系。
39.(a)膜増強組成物、
(b)粘度調整剤、
(c)式
[Cat+][X-
(式中、[Cat+]は、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリウム、アザチアゾリウム、オキサチアゾリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、オキサボロリウム、ジチアゾリウム、トリアゾリウム、セレナゾリウム、オキサホスホリウム、ピロリウム、ボロリウム、フラニウム、チオフェニウム、ホスホリウム、ペンタゾリウム、インドリウム、インドリニウム、イソ−オキサゾリウム、イソ−トリアゾリウム、テトラゾリウム、ベンゾフラニウム、チアジアゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピラニウム、アンヌレニウム、フタラジニウム、キナゾリニウム、キノキサリニウム、チアジニウム、アザアンヌレニウム、ピロリジニウム、ジアザビシクロウンデセニウム、ジアザビシクロノネニウム、ジアザビシクロデセニウムおよびトリアザデセニウムから選択される1種または複数の複素環カチオン種であり、
[X-]は、1種または複数のアニオン種である)を有するイオン液体、ならびに
(d)銀、銅、スズおよび亜鉛イオンから選択される金属イオン
を含む、第35〜38項のいずれかに記載の抗微生物系を調製するためのパーツのキット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌剤としての、式
[Cat+][X-
(式中、[Cat+]は、少なくとも1種のキノリニウムまたはイソキノリニウムカチオン種を含む1種または複数のカチオン種であり、
[X-]は、1種または複数のアニオン種である)を有するイオン液体の使用。
【請求項2】
[Cat+]が、
【化1】



(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RhおよびRiは、同一でもまたは異なっていてもよく、各々独立に、水素、C1〜C40直鎖状もしくは分岐状アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基、またはC6〜C10アリール基から選択され、あるいは近接する炭素原子に結合しているRb、Rc、Rd、Re、Rf、RhおよびRiの任意の2つは、メチレン鎖−(CH2q−(qは、8〜20である)を形成し、前記アルキル、シクロアルキルまたはアリール基、または前記メチレン鎖は、未置換であり、あるいはC1〜C6アルコキシ、C6〜C10アリール、CN、OH、NO2、C7〜C30アラルキルおよびC7〜C30アルカリルから選択される1〜3個の基で置換されていてもよい)から選択される少なくとも1種のカチオン種を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
aが、C1〜C30直鎖状もしくは分岐状アルキル、または水素から選択される、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
aが、C1〜C30直鎖状または分岐状アルキルから選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
aが、C8〜C14直鎖状または分岐状アルキルから選択される、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
b、Rc、Rd、Re、Rf、RhおよびRiが、各々独立に、水素、またはC1〜C30直鎖状もしくは分岐状アルキル基から選択される、請求項1から5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
b、Rc、Rd、Re、Rf、RhおよびRiの1つが、C1〜C30直鎖状もしくは分岐状アルキル基または水素であり、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、RhおよびRiの残りが、各々水素である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
dが、C1〜C30直鎖状もしくは分岐状アルキル基または水素であり、Rb、Rc、Re、Rf、RhおよびRiが、各々水素である、請求項1から7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
[Cat+]が、N−オクチルキノリニウム、N−デシルキノリニウム、N−ドデシルキノリニウム、N−テトラデシルキノリニウム、N−オクチルイソキノリニウム、N−デシルイソキノリニウム、N−ドデシル−イソキノリニウム、およびN−テトラデシルイソキノリニウムから選択される、少なくとも1種のキノリニウムまたはイソキノリニウムカチオン種を含む1種または複数のカチオン種である、請求項1から8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
dが、メチル基である、請求項6から8のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
[Cat+]が、N−オクチル−6−メチルキノリニウム、N−デシル−6−メチルキノリニウム、N−ドデシル−6−メチル−キノリニウム、N−テトラデシル−6−メチルキノリニウム、N−オクチル−6−メチルイソキノリニウム、N−デシル−6−メチルイソキノリニウム、N−ドデシル−6−メチルイソキノリニウム、およびN−テトラデシル−6−メチルイソキノリニウムから選択される、少なくとも1種のキノリニウムまたはイソキノリニウムカチオン種を含む1種または複数のカチオン種である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
[X-]が、[BF4-、[PF6-、[SbF6-、[F]-、[Cl]-、[Br]-、[I]-、[NO3-、[NO2-、[H2PO4-、[HPO42-、[Rx2PO4-、[RxPO42-、[Rx3PF3-、[Rx2P(O)O]-[HSO3-、[HSO4-、[RxSO3-、[RxSO4-、[SO42-、[H3CO(CH22O(CH2)OSO3-、[BBDB]-、[BOB]-、[(CF3SO23C]-、[Co(CO4)]-、[(CN)2N]-、[(CF32N]-、[(RxSO22N]-、[SCN]-、[H3C(OCH2CH2nOSO3-、[Rx2CCH2CH(CO2x)SO3-、[RxCO2-、ラクテート、およびドキュセートから選択される1種または複数のアニオン種であり、各Rxが、(C1〜C20)アルキル、(C6〜C10)アリール、および(C1〜C10)アルキル(C6〜C10)アリールから独立に選択され、さらに前記アルキル、アリールおよびアルキルアリール基が、F、ClおよびIから独立に選択される1個または複数の置換基を含み得る、請求項1から11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
[X-]が、[Cl]-、[Br]-、[I]-、[H2PO4-、[HPO42-、[Rx2PO4-、[Rx2P(O)O-]、[RxSO3-、[CH3SO3-、[RxSO4-、[CH3SO4-、[C25SO4-、[SO42-、[Rx2CCH2CH(CO2x)SO3-、[RxCO2-、[C64CO2-、ラクテートおよびドキュセートから選択され、Rxが、請求項12に記載した通りである、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
[X-]が、[Cl]-、[Br]-、および[I]-から選択される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
[X-]が、[BF4-、[PF6-、[BBDB]-、[BOB]-、[N(CF32-、[(CF3SO22N]-、[(CF3SO23C]-、[(C253PF3-、[(C373PF3-、[(C252P(O)O]-、[SbF6-、[Co(CO)4-、[NO3-、[NO2-、[CF3SO3-、[CH3SO3-、[C817OSO3-、およびトシレートから選択される、請求項12に記載の使用。
【請求項16】
前記イオン液体が、銀、銅、スズおよび亜鉛イオンから選択される金属イオンをさらに含む、請求項1から15のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
前記金属イオンが、Ag+、Cu+、Cu2+、Sn2+およびZn2+イオンから選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記金属イオンが、Ag+、Cu+およびCu2+イオンから選択される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記金属イオンが、Ag+およびCu2+イオンから選択される、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記金属イオンが、ハロゲン化金属錯体の形態である、請求項16から19のいずれかに記載の使用。
【請求項21】
前記金属イオンが、金属塩化物錯体または金属臭化物錯体の形態である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記金属錯体が、式[Ag+][Br-2または式[Cu2+][Cl-4を有する、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
抗菌剤としての、式[Cat+][X-
(式中、[Cat+]は、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリウム、アザチアゾリウム、オキサチアゾリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、オキサボロリウム、ジチアゾリウム、トリアゾリウム、セレナゾリウム、オキサホスホリウム、ピロリウム、ボロリウム、フラニウム、チオフェニウム、ホスホリウム、ペンタゾリウム、インドリウム、インドリニウム、イソ−オキサゾリウム、イソ−トリアゾリウム、テトラゾリウム、ベンゾフラニウム、チアジアゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピラニウム、アンヌレニウム、フタラジニウム、キナゾリニウム、キノキサリニウム、チアジニウム、アザアンヌレニウム、ピロリジニウム、ジアザビシクロウンデセニウム、ジアザビシクロノネニウム、ジアザビシクロデセニウムおよびトリアザデセニウムから選択される1種または複数の複素環カチオン種であり、
[X-]は、1種または複数のアニオン種である)を有し、
銀、銅、スズおよび亜鉛イオンから選択される金属イオンをさらに含む、イオン液体の使用。
【請求項24】
前記金属イオンが、Ag+、Cu+、Cu2+、Sn2+およびZn2+イオンから選択される、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記イオン液体が、
(a)膜増強組成物、
(b)粘度調整剤、および
(c)請求項1から24のいずれかに記載のイオン液体
を含む抗微生物系の形態で使用される、請求項1から24のいずれかに記載の使用。
【請求項26】
前記イオン液体が、0.001重量%〜10重量%の量で存在する、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記イオン液体が、0.01重量%〜0.5重量%の量で存在する、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記粘度調整剤が、1種もしくは複数の溶媒および/または増粘剤を含む、請求項25から27のいずれかに記載の使用。
【請求項29】
前記膜増強組成物が、湿潤剤、分散補助剤、界面活性剤、顔料、消泡剤、融合助剤、充填剤、強化剤、接着促進剤、可塑剤、流れ調整剤、抗酸化剤、紫外線安定剤、ポリマー、またはこれらの組合せから選択される1種または複数の膜増強成分を含む、請求項25から28のいずれかに記載の使用。
【請求項30】
前記膜増強組成物が、1重量%〜90重量%の範囲の量で存在する、請求項25から29のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
前記膜増強組成物が、皮膜形成ポリマーを含む、請求項25から30のいずれかに記載の使用。
【請求項32】
前記ポリマーが、疎水性および/または水不溶性である、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記ポリマーが、実質的に非イオン性またはカチオン性である、請求項31に記載の使用。
【請求項34】
前記ポリマーが、実質的にアニオン性である、請求項31に記載の使用。
【請求項35】
前記ポリマーが、水溶性である、請求項31に記載の使用。
【請求項36】
請求項1から24のいずれかに記載のイオン液体、または請求項25から35のいずれかに記載の抗微生物系を表面に塗布することを含む、表面を消毒する方法。
【請求項37】
前記イオン液体または前記抗微生物系を、加圧エアロゾルスプレー缶からエアロゾルとして塗布する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記抗微生物系を、塗布の後に乾燥させる、請求項36または請求項37に記載の方法。
【請求項39】
請求項1から24のいずれかに記載のイオン液体を含む基質。
【請求項40】
請求項25から35のいずれかに記載の抗菌系を含む基質。
【請求項41】
請求項36から38のいずれかに記載の方法によって調製される基質。
【請求項42】

[Cat+][X-
(式中、[Cat+]は、少なくとも1種のキノリニウムまたはイソキノリニウムカチオン種を含む1種または複数のカチオン種であり、
[X-]は、1種または複数のアニオン種である)を有するイオン液体と、
銀、銅、スズおよび亜鉛イオンから選択される金属イオンと
を含む、イオン液体組成物。
【請求項43】
(a)膜増強組成物、
(b)粘度調整剤、
(c)式
[Cat+][X-
(式中、[Cat+]は、少なくとも1種のキノリニウムまたはイソキノリニウムカチオン種を含む1種または複数のカチオン種であり、
[X-]は、1種または複数のアニオン種である)を有するイオン液体、ならびに
(d)任意選択で銀、銅、スズおよび亜鉛イオンから選択される金属イオン
を含む、抗微生物系。
【請求項44】
(a)膜増強組成物、
(b)粘度調整剤、
(c)式
[Cat+][X-
(式中、[Cat+]は、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリウム、アザチアゾリウム、オキサチアゾリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、オキサボロリウム、ジチアゾリウム、トリアゾリウム、セレナゾリウム、オキサホスホリウム、ピロリウム、ボロリウム、フラニウム、チオフェニウム、ホスホリウム、ペンタゾリウム、インドリウム、インドリニウム、イソ−オキサゾリウム、イソ−トリアゾリウム、テトラゾリウム、ベンゾフラニウム、チアジアゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピラニウム、アンヌレニウム、フタラジニウム、キナゾリニウム、キノキサリニウム、チアジニウム、アザアンヌレニウム、ピロリジニウム、ジアザビシクロウンデセニウム、ジアザビシクロノネニウム、ジアザビシクロデセニウムおよびトリアザデセニウムから選択される1種または複数の複素環カチオン種であり、
[X-]は、1種または複数のアニオン種である)を有するイオン液体、ならびに
(d)銀、銅、スズおよび亜鉛イオンから選択される金属イオン
を含む、抗微生物系。
【請求項45】
(a)式
[Cat+][X-
(式中、[Cat+]は、少なくとも1種のキノリニウムまたはイソキノリニウムカチオン種を含む1種または複数のカチオン種であり、
[X-]は、1種または複数のアニオン種である)を有するイオン液体、ならびに
(b)銀、銅、スズおよび亜鉛イオンから選択される金属イオン
を含む、請求項42に記載のイオン液体組成物を調製するためのパーツのキット。
【請求項46】
(a)膜増強組成物、
(b)粘度調整剤、
(c)式
[Cat+][X-
(式中、[Cat+]は、少なくとも1種のキノリニウムまたはイソキノリニウムカチオン種を含む1種または複数のカチオン種であり、
[X-]は、1種または複数のアニオン種である)を有するイオン液体、ならびに
(d)任意選択で銀、銅、スズおよび亜鉛イオンから選択される金属イオン
を含む、請求項43に記載の抗微生物系を調製するためのパーツのキット。
【請求項47】
(a)膜増強組成物、
(b)粘度調整剤、
(c)式
[Cat+][X-
(式中、[Cat+]は、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、イソチアゾリウム、アザチアゾリウム、オキサチアゾリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、オキサボロリウム、ジチアゾリウム、トリアゾリウム、セレナゾリウム、オキサホスホリウム、ピロリウム、ボロリウム、フラニウム、チオフェニウム、ホスホリウム、ペンタゾリウム、インドリウム、インドリニウム、イソ−オキサゾリウム、イソ−トリアゾリウム、テトラゾリウム、ベンゾフラニウム、チアジアゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、ピリダジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、ピラニウム、アンヌレニウム、フタラジニウム、キナゾリニウム、キノキサリニウム、チアジニウム、アザアンヌレニウム、ピロリジニウム、ジアザビシクロウンデセニウム、ジアザビシクロノネニウム、ジアザビシクロデセニウムおよびトリアザデセニウムから選択される1種または複数の複素環カチオン種であり、
[X-]は、1種または複数のアニオン種である)を有するイオン液体、ならびに
(d)銀、銅、スズおよび亜鉛イオンから選択される金属イオン
を含む、請求項44に記載の抗微生物系を調製するためのパーツのキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−517682(P2011−517682A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503500(P2011−503500)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050343
【国際公開番号】WO2009/125222
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(510271004)ザ クイーンズ ユニヴァーシティー オブ ベルファスト (1)
【氏名又は名称原語表記】THE QUEEN’S UNIVERSITY OF BELFAST
【Fターム(参考)】