説明

抗癌ウイルス脱感作法

腫瘍を有する哺乳動物被験体は、この被験体を処置するために有効な量のニューカッスル病ウイルスをこの被験体に投与する工程を包含する方法によって処置され、ここで、このウイルスは、1回以上のサイクルでこの被験体に投与され;少なくとも1サイクルは、1以上の脱感作用量のこのウイルスを、続いて1以上の増加用量のこのウイルスをこの被験体に連続して投与する工程を包含し;各増加用量におけるこのウイルスの量は、各脱感作用量におけるウイルスの量よりも多く;そして第1増加用量は、第1脱感作用量の18〜36時間後に投与される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
後でのより高い用量の前での脱感作用量の腫瘍崩壊ウイルスの投与は、WO 00/62735(35〜36頁)に開示されている。Pecoraら,J.Clin.Oncol.(2002年5月)20(9):2251−2266;およびBergslandら,J.Clin.Oncol.(2002年5月)20(9):2220−2222も参照のこと。
【0002】
4分間〜24時間のクール(例えば、20分間〜60分間のクール)にわたる静脈内ポンプ、シリンジポンプ、静脈内ドリップまたは緩徐注射を用いた腫瘍崩壊ウイルスの投与は、WO 00/62735(36頁、16〜19行)に開示される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の要旨)
本発明は、腫瘍を有する哺乳動物被験体を処置するための方法を提供し、この方法は、この被験体を処置するために有効な量のニューカッスル病ウイルスをこの被験体に投与する工程を包含し、ここで、このウイルスは、1回以上のサイクルでこの被験体に投与され;少なくとも1サイクルは、1以上の脱感作用量のこのウイルスを、続いて1以上の増加用量のこのウイルスをこの被験体に連続して投与する工程を包含し;各増加用量におけるこのウイルスの量は、各脱感作用量におけるウイルスの量よりも多く;そして第1増加用量は、第1脱感作用量の18〜36時間後に投与される。
【0004】
本発明は、ニューカッスル病ウイルスに対する脱感作が、脱感作用量後短時間(例えば、24時間)で生じるという知見に基づく。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
(発明の詳細な説明)
本明細書中で用いられる場合、移行部の用語「含む」は、制限がない。この用語を用いる請求項は、このような請求項において記載される構成要素に加えて、構成要素を含み得る。従って、例えば、これらの請求項は、記載された構成要素またはそれらの均等物が存在する限り、これらの請求項に具体的には記載されていない他の治療剤または治療ウイルス用量もまた含む処置レジメンと解釈され得る。
【0006】
本明細書中で用いられる場合、「NDV」は、ニューカッスル病ウイルスについての略語である。本明細書中で用いられる場合、「DLT」は、用量を制限する毒性についての略語である。本明細書中で用いられる場合、用語「プラーク形成単位(PFU)」は、1個の感染性ウイルス粒子を意味する。本明細書中で用いられる場合、「BPFU」は、10億PFUを意味する。本明細書中で用いられる場合、「PP」は、プラーク精製されたを意味する。従って、例えば、PPMK107は、プラーク精製されたニューカッスル病ウイルスMK107株を意味する。本明細書中で用いられる場合、「PFU/m」は、投与量を表す標準的な単位であり、患者の表面積1平方メートルあたりのPFUを意味する。本明細書中で用いられる場合、用語「複製能力のある」ウイルスとは、癌細胞において感染性の子孫を生成するウイルスをいう。
【0007】
本発明に従って、第1脱感作用量から第1増加用量までの時間は、第1脱感作用量の投与の終わりから、第1増加容量の投与の始まりまでで測定される。本発明の1つの実施形態では、第1増加用量は、第1脱感作用量の投与の24〜36時間後に投与される。
【0008】
本発明の方法の1つの実施形態では、1以上の脱感作用量は、患者の表面積1平方メートルあたり約2.4×1010PFUであり、そして1以上の増加用量は、患者の表面積1平方メートルあたり約4.8×1010PFUである。
【0009】
本発明の方法に従って、利用される治療用ニューカッスル病ウイルスは、低い(レント原性)ビルレンス、中程度(中程度病原性)ビルレンスまたは高い(ヴェロ原性)ビルレンスのものである。ビルレンスの程度は、卵内平均死亡時間(Mean Death Time in Eggs(MDT))試験に従って決定される(Alexander,「Chapter 27:Newcastle Disease」,Laboratory Manual for the Isolation and Identification of Avian Pathogens,第3版,Purchaseら編(Kendall/Hunt,Iowa),117頁)。ウイルスは、MDT試験によって、レント原性(MDT>90時間);中程度病原性(60〜90時間のMDT);およびヴェロ原性(MDT<60時間)として分類される。
【0010】
本発明に従って、被験体へのウイルスの任意の従来の投与方法または投与技術が利用され得る。本発明の1つの実施形態では、このウイルスは、全身投与(例えば、静脈内投与)される。本発明に従う治療ウイルスの静脈内投与については、好ましくは、このウイルスは、ニューカッスル病ウイルスの中程度病原性株である。
【0011】
このウイルスが投与される速度を制御することにより、望ましくない副作用が低減され得ることが見出されている。ニューカッスル病ウイルスの中程度病原性株を静脈内経路によって投与する場合、このウイルスの用量が、24時間までの投与時間にわたって投与されることが好ましい;そしてこの用量は、投与時間内の任意の10分間のサンプリング時間において患者の表面積1平方メートルあたり7.0×10PFUまでの速度で投与されることが好ましい。より好ましくは、この用量が投与される速度は、投与時間内の任意の10分間のサンプリング時間において、患者の表面積1平方メートルあたり2.0×10PFUまでである。一般に、投与時間が少なくとも1時間であるような投与速度を選択することが便利である。なお少ない副作用は、この投与時間が少なくとも3時間である場合に一般的に観察される。このウイルスの第1脱感作用量を投与する速度を制御することが特に有用である。
【0012】
本発明に従って処置される被験体は、ヒト被験体または非ヒト哺乳動物被験体のいずれであってもよい。
【0013】
この処置をモニタリングすることは本発明の必須の局面ではないが、処置の治療効果を測定するための技術が存在する。これらとしては、このウイルスの投与後の腫瘍のサイズを測定することが挙げられ、腫瘍サイズの減少は、正の結果である。
【0014】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、よりよく理解される。以下の実施例は、本明細書中に記載される本発明を例示するが限定しない。以下の実施例では、用いられるNDVは、国際特許公開WO 00/62735(2000年10月26日公開)(Pro−Virus,Inc.)により十分に記載されている、ニューカッスル病ウイルスのMK107株の三重プラーク精製弱毒化(中程度病原性)バージョンであった。WO 00/62735の内容全体は、本明細書中に参考として援用される。
【実施例】
【0015】
(実施例1:24時間後または48時間後に与えられる、後の用量のPPMK107の致死率を低下させるための、脱感作用量のPPMK107の使用)
C3H/Henマウス(9週齡)に、ビヒクル(5%マンニトール/1%リジン)またはPPMK107(3E+08 PFU/マウス)のいずれかを0日目に(30秒間にわたって)静脈内注射した。1E+10 PFU/マウスというPPMK107用量からなる2回目の注射(30秒間にわたる)を、種々の時間(3時間、12時間、24時間および48時間)後に与えた。コントロールセットのマウスは、3E+08 PFU/マウスという第1のPPMK107用量のみを受け、さらなる注射はなかった。以下の表1に示すように、ビヒクルの第1処置を受けたほぼ全てのマウスは、その後、1E+10 PFU用量によって死んだ(表1におけるグループ5〜8)。対照的に、3E+08 PFUのPPMK107を、その後の、1E+10PFUという、より高い用量の24時間前および48時間前に受けたマウスは、致死から保護された(表1におけるグループ3および4)。脱感作用量を1E+10PFU用量の3時間前または12時間前に与えることは、致死を阻止しなかった(表1におけるグループ1および2)。これらのデータは、24時間または48時間離れて与えられた場合に、PPMK107を用いて、この同じ因子のその後の用量の致死を脱感作し得ることを示す。
【0016】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍を有する哺乳動物被験体を処置するための方法であって、該方法は、該被験体を処置するために有効な量のニューカッスル病ウイルスを該被験体に投与する工程を包含し、ここで、
該ウイルスは、1回以上のサイクルで該被験体に投与され;
少なくとも1サイクルは、1以上の脱感作用量の該ウイルスを、続いて1以上の増加用量の該ウイルスを該被験体に連続して投与する工程を包含し;
各増加用量における該ウイルスの量は、各脱感作用量におけるウイルスの量よりも多く;そして
第1増加用量は、第1脱感作用量の18〜36時間後に投与される、方法。
【請求項2】
前記第1増加用量が、前記第1脱感作用量の24〜36時間後に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウイルスが、ニューカッスル病ウイルスの中程度病原性株である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ウイルスが、全身投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルスが、静脈内投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記投与されるウイルスが、ニューカッスル病ウイルスの中程度病原性株である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ウイルス用量が、24時間までの投与時間にわたって投与され;そして該用量が、該投与時間内の任意の10分間のサンプリング時間において患者の表面積1平方メートルあたり7.0×10PFUまでの速度で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記速度が、前記投与時間内の任意の10分間のサンプリング時間において患者の表面積1平方メートルあたり2.0×10PFUまでである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記投与時間が、少なくとも1時間である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記投与時間が、少なくとも3時間である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記被験体がヒト被験体である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記被験体が非ヒト哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記腫瘍の大きさが、前記ウイルスの投与後に減少する、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2006−521383(P2006−521383A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508941(P2006−508941)
【出願日】平成16年3月2日(2004.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/006158
【国際公開番号】WO2005/018580
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(504397480)ウェルスタット バイオロジクス コーポレイション (13)
【Fターム(参考)】