説明

抗菌剤組成物

【課題】 光照射なしでも抗菌活性を有する新たな抗菌剤組成物を提供する。
【解決手段】 ハロゲンと酸化チタン(IV)とを含み、前記ハロゲンの少なくとも一部が、前記酸化チタン(IV)と化学結合したハロゲン含有酸化チタン(IV)を含み、暗所でも抗菌活性を発現する抗菌剤組成物である。暗所でも抗菌活性を発現することから、本発明の抗菌剤組成物は、例えば、紫外線光源を備えない空質浄化装置及び/又は液質浄化装置及び/又は加湿装置の内部に配置して使用するフィルタや、暗所除菌モードを備える空質浄化装置及び/又は液質浄化装置及び/又は加湿装置の内部に配置して使用するフィルタ等に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンは、光(紫外線)の照射により、脱臭、防汚、空気浄化、抗菌等の光触媒効果を有することが知られている。この光触媒効果を利用した様々な製品が開発されている。また、酸化チタンの光触媒効果は、酸化チタンの格子欠陥を鉱酸等によって除去することにより向上することが知られている。このため、酸化チタンに様々な処理を施し、酸化チタンの光触媒活性を向上させる方法が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4)。
【0003】
一方、酸化チタンは、比較的安全性が高く、耐熱性にも優れ、光触媒活性により優れた抗菌性を示すことから、生活用品などに用いられる抗菌剤として使用されている。しかしながら、酸化チタンの抗菌効果は、光(紫外線)を照射すると得られるが、光(紫外線)が照射されない条件では、抗菌効果が得られず、暗所や紫外線非照射時では、菌が増殖・拡大するという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、暗所でも抗菌活性を示す銀、銅、亜鉛等の金属を酸化チタンに担持させること等が提案されている(特許文献5及び6)。このような金属を担持した酸化チタンは、比較的良好な抗菌性を示すが、これらの金属、特に、銀は、光やハロゲンに対する耐性が低いという問題があった。このため、紫外線照射を行わなくても抗菌効果を発揮する新たな抗菌剤組成物が求められている。
【特許文献1】特開平3−40919号公報
【特許文献2】特開平11−188703号公報
【特許文献3】特許第3759960号公報
【特許文献4】特許第2909403号公報
【特許文献5】特公平08−005767号公報(特許第2138057号公報)
【特許文献6】特開平02−00633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、光照射なしでも抗菌活性を有する抗菌剤組成物の提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の抗菌剤組成物は、ハロゲンを含有する酸化チタン(IV)を含む抗菌剤組成物であって、前記ハロゲンの少なくとも一部が、前記酸化チタン(IV)と化学結合し、かつ、少なくとも暗所で抗菌活性を発現させるための抗菌剤組成物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、暗所でも抗菌活性を発現する新たな抗菌剤組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[抗菌剤組成物]
本発明の抗菌剤組成物は、ハロゲンを含有する酸化チタン(IV)(以下、「ハロゲン含有酸化チタン(IV)」ともいう)を含む抗菌剤組成物であって、前記ハロゲンの少なくとも一部が、前記酸化チタン(IV)と化学結合し、かつ、少なくとも暗所で抗菌活性を発現させるための抗菌剤組成物である。本発明の抗菌剤組成物によれば、ハロゲンと化学結合した酸化チタン(IV)を有するハロゲン含有酸化チタン(IV)を含むため、従来、暗所でも抗菌活性を示すとされている銀、銅、亜鉛等の金属等を含まなくても、暗所において抗菌活性を発現できるという効果を好ましくは奏する。
【0009】
本発明の抗菌剤組成物の形態は、特に制限されず、例えば、乾燥状態の上記ハロゲン含有酸化チタン(IV)であってもよいし、また、後述するように、ハロゲン含有酸化チタン(IV)と水系溶媒とを含む形態であってもよい。
【0010】
本発明は、ハロゲンの少なくとも一部が酸化チタン(IV)と化学結合したハロゲン含有酸化チタン(IV)であれば、暗所において抗菌活性を発現できるという知見に基づく。暗所において抗菌活性が発現するメカニズムは明らかではないが、ハロゲン含有酸化チタン(IV)におけるチタン−ハロゲン構造と、タンパク質、特に、タンパク質のアミノ基とが結合することや、ハロゲン含有酸化チタン(IV)の一部が疎水化し、ハロゲン含有酸化チタン(IV)と菌を構成するタンパク質及び/または脂質との間に疎水結合力が働くことにより、ハロゲン含有酸化チタン(IV)に菌が吸着し、これにより、暗所において抗菌活性が発現されるものと推定される。また、ハロゲン含有酸化チタン(IV)表面に結合したハロゲンがハロゲンイオン化し、このハロゲン含有酸化チタン(IV)表面のハロゲンイオンが菌を酸化するため、暗所において抗菌活性が発現されるものと推定される。但し、これらのメカニズムの推定は、本発明を限定するものではない。
【0011】
本発明において「抗菌」とは、気相及び/又は液相中の菌を増殖抑制すること、殺菌すること及び/又は分解することを含み、好適には気相及び/又は液相中の菌濃度の低減及び/又は菌の増殖を防止させることを含む。
【0012】
本発明において、「暗所で抗菌活性を発現する」とは、例えば、少なくとも紫外光(400nm以下の波長の光)を含む光が照射されない条件下で、抗菌剤組成物を被対象試料に24時間以上接触させた場合に、被対象試料中の菌濃度を処理前の濃度よりも2桁以上減少できることをいう。なお、菌濃度の測定方法は、後述する実施例に示す方法で行うことができる。本発明において、抗菌活性の対象は特に制限されず、例えば、細菌(例えば、大腸菌、黄色ぶどう球菌、緑膿菌、MRSA、セレウス菌、肺炎桿菌等)、カビ、ウイルス等が挙げられる。
【0013】
本発明において「ハロゲンの少なくとも一部が酸化チタン(IV)と化学結合している」とは、酸化チタン(IV)とハロゲンの少なくとも一部とが化学的に結合していることをいう。好適には担持や混合ではなく酸化チタンとハロゲンとが原子レベルで結びついている状態のことをいい、より好適には酸化チタンとハロゲンとがイオン結合していることをいう。ハロゲン含有酸化チタン(IV)において、抗菌活性及び光触媒活性の向上の点から、酸化チタン(IV)と化学結合しているハロゲンは、ハロゲン含有酸化チタン(IV)における全てのハロゲンのうち90重量%以上であり、95重量%以上であることが好ましく、より好ましくは100重量%すなわちハロゲン含有酸化チタン(IV)に含まれるハロゲンの全量が化学結合していることである。
【0014】
本発明において「化学結合しているハロゲン」とは、ハロゲン含有酸化チタンに含まれるハロゲンのうち、水に溶出しにくいハロゲンのことをいう。酸化チタン(IV)と化学結合しているハロゲンの量は、酸化チタンを水中に分散させ、pH調整剤(例えば、塩酸、アンモニア水)でpH=3以下又はpH=10以上に保持し、水中へのハロゲンの溶出量を比色滴定等により測定し、ハロゲン含有酸化チタン(IV)に含まれるハロゲンの総量から上記溶出量を差し引くことにより算出できる。なお、ハロゲン含有酸化チタン(IV)におけるハロゲンの総量は、吸光光度分析法(JIS K 0102)により求めることができる。
【0015】
化学結合は、ハロゲンと酸化チタンとが強固に結合し、抗菌活性や光触媒反応の促進作用を向上できる観点から、イオン結合であることが好ましい。酸化チタンとハロゲンとのイオン結合は、光電子分光装置により分析できる。ハロゲンがフッ素である場合、ハロゲン含有酸化チタンを光電子分光分析装置で分析した際に、フッ素の1s軌道(F1s)のピークトップが683eV〜686eVの範囲となるスペクトルを示す場合をいう。これは、フッ素とチタンとがイオン結合したフッ化チタンのピークトップの値が上記範囲内であることに由来する。
【0016】
酸化チタンの抗菌活性をより向上できることから、酸化チタンと化学結合しているハロゲンの少なくとも一部が、酸化チタンの表面に配置されていることが好ましい。
【0017】
ハロゲン含有酸化チタン(IV)におけるチタン、酸素及びハロゲンの合計の含有量(モル%)は、抗菌活性の点から、96モル%以上であることが好ましく、より好ましくは97モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上、さらにより好ましくは99モル%以上、特に好ましくは実質的に100モル%又は100モル%である。ハロゲン含有酸化チタン(IV)におけるチタン、酸素及びハロゲンの合計の含有量(モル%)は、ハロゲン含有酸化チタン(IV)に含まれる元素の含有量(重量%)を各元素の原子量により除することによって各原子のモル含有量を算出し、得られたモル含有量を用いて下記式より算出できる。なお、ハロゲン含有酸化チタン(IV)におけるハロゲン(フッ素、臭素、ヨウ素、塩素)の含有量は吸光光度分析法(JIS K 0102)により求めることができ、チタン及び酸素の含有量は、蛍光X線分析により求めることができる。
合計の含有量=[(チタン(mol)+酸素(mol)+ハロゲン(mol))/(チタン(mol)+酸素(mol)+ハロゲン(mol)+その他原子(mol))]×100
【0018】
ハロゲン含有酸化チタン(IV)において、暗所での抗菌活性向上の点から、ハロゲンは、酸化チタン(IV)1モルに対して0.0007〜0.17モルであることが好ましい。特に、フッ素は、酸化チタン(IV)1モルに対して0.053〜0.17モルであることが好ましく、より好ましくは0.053〜0.11モルである。また、暗所における抗菌活性のさらなる向上の点からは、0.11〜0.17モルであることが好ましい。ハロゲンの含有量(モル)は、ハロゲン又は酸化チタンの含有量(重量%)を後述する各ハロゲンの原子量又は酸化チタンの式量で除することにより得られたハロゲンのモル含有量を用いて下記式より算出できる。
ハロゲン含有量(モル)=(ハロゲン(mol))/(酸化チタン(mol))
【0019】
酸化チタン(IV)としては、例えば、アナタース型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンが挙げられ、暗所における抗菌効果が得られることに加えて、高い光触媒活性が得られることから、アナタース型酸化チタンが好ましい。本発明において「アナタース型酸化チタン」とは、粉末X線回折スペクトル測定において(使用電極:銅電極)、回折角度2θ=25.5度付近に回折ピークが現れる酸化チタンのことをいう。
【0020】
本発明において、ハロゲンとしては、フッ素、ヨウ素、臭素及び塩素が挙げられる。
【0021】
(フッ素含有酸化チタン(IV))
フッ素含有酸化チタンにおけるフッ素の含有量は、暗所における抗菌活性の点から、1.25重量%〜4.0重量%であることが好ましく、より好ましくは1.25重量%以上2.5重量%未満である。また、本発明者等は、アナタース型酸化チタンとフッ素とを少なくとも含み、フッ素の含有量が2.5重量%〜3.5重量%であり、前記フッ素の90重量%以上が前記アナタース型酸化チタンと化学結合している酸化チタン光触媒が、高い光触媒活性を有することを見出している(国際公開第2008/132824号)。このため、暗所における抗菌活性のさらなる向上及び光触媒活性の点からは、2.5重量%〜4.0重量%が好ましく、より好ましくは2.5重量%〜3.5重量%である。
【0022】
フッ素含有酸化チタンは、組成式Ti(IV)Oab(但し、0.053≦b≦0.17であり、2.026≦(a+b)≦2.086)で表されることが好ましい。より少量のフッ素で十分な抗菌活性が得られる点からは、bは0.053〜0.11がより好ましく、a+bは2.026〜2.053がより好ましい。また、暗所における抗菌活性のさらなる向上及び光触媒活性の点からは、bは0.11〜0.17がより好ましく、さらに好ましくは0.11〜0.15であり、a+bは2.053〜2.086がより好ましく、さらに好ましくは2.053〜2.075である。また、aはTi(IV)を維持する値であって、bとの関係で決定されても良い。上記組成式におけるa及びbは、フッ素の含有量(X)(重量%)を用いて下記式より算出できる。なお、下記式におけるYはフッ素原子量(19)であり、Zは酸化チタン式量(79.9)のことをいう。
b(フッ素のモル含有量)=[Z*(X/100)]/[Y−(Y−8)*(X/100)]
a(酸素のモル含有量)=2−(b/2)
【0023】
(ヨウ素含有酸化チタン(IV))
ヨウ素含有酸化チタンにおけるヨウ素の含有量は、抗菌活性向上の点からは、0.2重量%〜2.5重量%であることが好ましい。暗所における抗菌活性向上の点からは、0.3重量%〜2.0重量%が好ましく、0.35重量%〜1.0重量%がより好ましい。
【0024】
ヨウ素含有酸化チタンは、組成式Ti(IV)Oab(但し、0.0013≦b≦0.016であり、2.0006≦(a+b)≦2.008)で表されることが好ましい。また、bは、0.0019〜0.0128がより好ましく、さらに好ましくは0.0022〜0.0079である。a+bは、2.0009〜2.0064がより好ましく、さらに好ましくは2.0011〜2.0032である。また、aはTi(IV)を維持する値であって、bとの関係で決定されても良い。上記組成式におけるa及びbは、Xをヨウ素の含有量(重量%)、Yをヨウ素原子量(126.9)として上述したフッ素の換算式を用いて算出できる。
【0025】
(臭素含有酸化チタン(IV))
臭素含有酸化チタンにおける臭素の含有量は、抗菌活性向上の点からは、0.2重量%〜2.5重量%であることが好ましい。暗所における抗菌活性向上の点からは、0.2重量%〜2.0重量%が好ましく、0.2重量%〜1.0重量%がより好ましい。
【0026】
臭素含有酸化チタンは、組成式Ti(IV)OaBrb(但し、0.002≦b≦0.026であり、2.001≦(a+b)≦2.013)で表されることが好ましい。また、bは、0.002〜0.020がより好ましく、さらに好ましくは0.002〜0.013である。a+bは、2.001〜2.010がより好ましく、さらに好ましくは2.001〜2.005である。また、aはTi(IV)を維持する値であって、bとの関係で決定されても良い。上記組成式におけるa及びbは、Xを臭素の含有量(重量%)、Yを臭素原子量(79.9)として上述したフッ素の換算式を用いて算出できる。
【0027】
(塩素含有酸化チタン(IV))
塩素含有酸化チタンにおける塩素の含有量は、抗菌活性向上の点からは、0.03重量%〜2.5重量%であることが好ましい。暗所における抗菌活性向上の点からは、0.038重量%〜2.0重量%未満が好ましく、0.045重量%〜1.0重量%がより好ましい。
【0028】
塩素含有酸化チタンは、組成式Ti(IV)OaClb(但し、0.0007≦b≦0.057であり、2.003≦(a+b)≦2.029)で表されることが好ましい。また、bは、0.0009〜0.046がより好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.023である。a+bは、2.004〜2.023がより好ましく、さらに好ましくは2.005〜2.011である。また、aはTi(IV)を維持する値であって、bとの関係で決定されても良い。上記組成式におけるa及びbは、Xを塩素の含有量(重量%)を用い、Yを塩素原子量(35.5)として上述したフッ素の換算式を用いて算出できる。
【0029】
本発明のハロゲン含有酸化チタンにおけるハロゲンの含有量については、上述のとおり、ハロゲンの種類によって最適な範囲が異なる。その理由は、明確ではないが、本発明の方法では、酸化チタンとハロゲンの電子的相互作用により、酸化チタン表面への配位に差が生じるためであると推定される。つまり、電気陰性度のより大きなフッ素は、他の阻害要因を廃して尚、酸化チタン表面との反応が優先されることからより多くの量のイオンが結合できるものと推定される。一方、その他のハロゲンについても、酸化チタン表面との親和性、電気陰性度などの影響で酸化チタンとの反応量が異なるものと推定される。但し、これらの推定は、本発明を限定するものではない。
【0030】
ハロゲン含有酸化チタン(IV)は、比表面積が200〜350m2/gであることが好ましく、より好ましくは250〜350m2/gの範囲である。ここで、本発明において比表面積とは、BET法(窒素の吸着・脱離方式)により測定した、ハロゲン含有酸化チタンの粉末1g当たりの表面積値である。比表面積が200m2/g以上の場合、分解する対象物との接触面積を大きくすることができる。また、アナタース型酸化チタンを用いる場合は、比表面積が350m2/g以下であると、アモルファス状の酸化チタンを用いた場合よりも高効率な光触媒反応を行うことができる。
【0031】
ハロゲン含有酸化チタン(IV)は、例えば、n−ブチルアミンの吸着量が8μmol/g以下である酸化チタンの水分散液とハロゲン化合物とを混合し、前記混合液中で前記酸化チタンと前記ハロゲン化合物とを反応させて得られるハロゲン含有酸化チタン(IV)であってもよく、好ましくは、前記酸化チタンとハロゲン化合物との混合液のpHが3を超えた場合は酸を用いてpHを3以下に調整することによって、前記混合液中で前記酸化チタンと前記ハロゲン化合物とを反応させ、ついで、洗浄することによって得られるハロゲン含有酸化チタン(IV)である。このようにして得られるハロゲン含有酸化チタンは、前述のように、例えば、ハロゲンの水への溶出量が極めて少なく、強制的に酸化チタン表面に位置させるその他の手法と比べて、ハロゲンの酸化チタンへの結合性という意味で異なるものである。ハロゲン化合物としては、後述のものが使用できる。
【0032】
本発明の抗菌剤組成物は、さらに、水系溶媒を含むことが好ましい。水系溶媒としては、例えば、水、緩衝液、生理食塩水、脱イオン水、蒸留水、JIS R1702法に用いられている1/500NB液(普通ブイヨン培地を精製水で500倍に希釈し、高圧蒸気殺菌したもの)等が挙げられ、抗菌活性の向上の点から、好ましくは、水、脱イオン水、JIS R1702法に用いられている1/500NB液である。
【0033】
本発明の抗菌剤組成物が水系溶媒を含む場合、抗菌剤組成物のpHは特に制限されないが、例えば、pH1〜9であり、暗所における抗菌活性向上の点からは、pH1〜8が好ましく、pH1〜4がより好ましく、さらに好ましくはpH1〜3、さらにより好ましくはpH1〜2である。なお、抗菌剤組成物と接触する被抗菌処理物が、紙、繊維、樹脂、金属等であって、被抗菌処理物質の損傷や変色、染料の流出などが予測される用途においては、抗菌剤組成物のpHは3〜6.5にすることが好ましく、より好ましくはpH4〜6.5であり、さらに好ましくはpH4〜5である。
【0034】
本発明の抗菌剤組成物は、その他の態様において、フッ素を含有する酸化チタン(IV)を含む抗菌剤組成物であって、酸化チタン(IV)とフッ素化合物と水系溶媒との混合物であり、前記酸化チタン(IV)の少なくとも一部と、前記フッ素化合物におけるフッ素の少なくとも一部とが化学結合したフッ素を含有する酸化チタン(IV)を含み、かつ、少なくとも暗所で抗菌活性を発現させるための抗菌剤組成物である。
【0035】
酸化チタン(IV)としては、抗菌活性の点から、n−ブチルアミンの吸着量が8μmol/g以下である酸化チタンが好ましい。n−ブチルアミンの吸着量が8μmol/g以下である酸化チタンとしては、例えば、堺化学工業株式会社製SSP−25が使用できる。フッ素化合物としては、例えば、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素酸が挙げられ、これらの中でも、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム及びフッ化水素酸が好ましい。水系溶媒としては、上述のものが使用できる。
【0036】
本発明の抗菌剤組成物は、例えば、暗所での抗菌のために用いられるものである旨の表示を付した抗菌剤組成物であってもよい。表示は、例えば、抗菌剤組成物の収納容器、包装等に行うことができる。
【0037】
本発明の抗菌剤組成物は、少なくとも暗所で抗菌活性を発現することから、例えば、じめじめしていて細菌等が繁殖しやすい、加湿機、浴室、換気扇等の内部に配置して使用できる。また、例えば、紫外線光源を備えない空質浄化装置及び/又は液質浄化装置及び/又は加湿装置の内部に配置して使用するフィルタ、作動モードとして光照射光源をオフにした状態での除菌モードを備える空質浄化装置及び/又は液質浄化装置及び/又は加湿装置の内部に配置して使用するフィルタ等に配置して使用することができる。このため、本発明の抗菌剤組成物は、紫外線光源を備えない空質浄化装置及び/又は液質浄化装置及び/又は加湿装置の内部に配置して使用するフィルタに使用するための抗菌剤組成物であってもよい。また、本発明の抗菌剤組成物は、光照射光源をオフにした状態での除菌モードを備える空質浄化装置及び/又は液質浄化装置及び/又は加湿装置の内部に配置して使用するフィルタに使用するための抗菌剤組成物であってもよい。
【0038】
本発明の抗菌剤組成物は、例えば、空質浄化モジュールや液質浄化モジュールに配置して使用することができる。本発明の抗菌剤組成物によれば、光の照射の有無に関らず、抗菌効果を発揮できる。また、光を照射することにより、抗菌効果をより向上でき、さらに、菌の死骸や毒素まで分解することができる。照射する光は、例えば、波長400nm以下の光を放つものが使用できる。また、光強度としては、光触媒の活性度向上の点からは、0.001mW/cm2以上が好ましく、光の均一性、消費電力、寿命の観点からは、0.001〜5mW/cm2程度が好ましく、さらに好ましくは0.5〜2mW/cm2程度である。
【0039】
[抗菌剤組成物の製造方法]
本発明の抗菌剤組成物は、例えば、n−ブチルアミンの吸着量が8μmol/g以下である酸化チタン(IV)の水分散液とハロゲン化合物とを混合し、前記混合液中で前記酸化チタン(IV)と前記ハロゲン化合物とを反応させることによって、ハロゲンの少なくとも一部が酸化チタン(IV)と化学結合しているハロゲン含有酸化チタン(IV)を得る工程を含む製造方法により製造することができる。得られるハロゲン含有酸化チタン(IV)におけるハロゲンと酸化チタンの結合性及びハロゲンの水への溶出量の点からは、前記酸化チタン(IV)とハロゲン化合物との混合液のpHが3を超えた場合は酸を用いてpHを3以下に調整して反応させることを含むことが好ましく、より好ましくは前記反応させて得られた反応物を洗浄することを含むことである。
【0040】
ハロゲン化合物の添加量は、酸化チタン(IV)に含有させるハロゲンの量に応じて適宜決定できる。ハロゲン化合物としては、特に限定されないが、一般的なハロゲン化合物を使用できる。ハロゲン化合物が、フッ素化合物である場合、例えば、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素酸が挙げられ、これらの中でも、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム及びフッ化水素酸が好ましい。ハロゲン化合物がヨウ素化合物である場合、ヨウ化水素、過ヨウ素酸、ヨウ化アンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化合物が臭素化合物である場合、臭化水素酸、臭化アンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化合物が塩素化合物である場合、塩酸、塩化ナトリウム、次亜塩素酸が挙げられる。
【0041】
ハロゲン化合物と酸化チタン(IV)の水分散液との混合方法としては、例えば、固体の状態のハロゲン化合物を酸化チタン(IV)の水分散液に加える方法、ハロゲン化合物の水溶液を酸化チタン(IV)の水分散液に加える方法、分散液中でハロゲンガスをバブリングする方法等が挙げられる。中でも、経済性や取り扱いの利便性の観点からは、固体のハロゲン化合物を酸化チタン(IV)の水分散液に加える方法、ハロゲン化合物の水溶液を酸化チタン(IV)の水分散液に加える方法が好ましい。また、酸化チタン(IV)とハロゲンとの反応効率の点からは、酸化チタン(IV)の水分散液に比表面積を下げる条件で水熱処理を行うことなく、ハロゲン化合物と混合することが好ましい。
【0042】
酸化チタン(IV)とハロゲン化合物との反応時間は、特に限定されるものではないが、加えたハロゲン化合物が十分拡散でき、また、活性の高い酸化チタン(IV)が得られるという観点から、5分から90分の間が好ましく、より好ましくは30分から60分の間である。酸化チタン(IV)とハロゲン化合物との反応温度は、通常、10℃以上であり、酸化チタン(IV)の比表面積の低下を抑制する観点から、40℃以下が好ましい。
【0043】
n−ブチルアミンの吸着量が8μmol/g以下であるアナタース型酸化チタンとしては、例えば、堺化学工業株式会社製SSP−25等が使用でき、その水分散液としては、例えば、堺化学工業株式会社製CSB−M等が使用できる。また、n−ブチルアミンの吸着量が8μmol/g以下である酸化チタン(IV)の水分散液は、例えば、以下に示す方法によって調製しても良い。
【0044】
(方法1)
チタニル硫酸水溶液を80℃〜100℃の温度まで加熱し、加水分解して得られる白色沈殿物のスラリー状水溶液を冷却した後、得られた白色沈殿スラリー(酸化チタンの水性分散液)のpHが7.5〜9.5の範囲になるまでアンモニア水にてpH調整し、これをろ過する。そして、得られたろ過物を水洗して十分に不純物の塩類を除去する。得られたろ過物からなるケーキを純水に再分散させることで、酸化チタン(IV)の水分散液を得ることができる。
【0045】
(方法2)
チタニル硫酸水溶液へアンモニア水を添加した後、得られた酸化チタン(IV)の水性分散液のpHが7.5〜9.5の範囲になるまでアンモニア水にてpH調整し、これをろ過する。そして、得られたろ過物を水洗して十分に不純物の塩類を除去する。得られたろ過物からなるケーキを100℃で加熱、熟成させて、これを純水に再分散させることで、酸化チタン(IV)の水分散液を得ることができる。
【0046】
(方法3)
四塩化チタン水溶液を加熱して加水分解し、得られた白色沈殿スラリー(酸化チタンの水性分散液)のpHが7.5〜9.5の範囲になるまでアンモニア水にてpH調整し、これをろ過する。そして、得られたろ過物を水洗して十分に不純物の塩類を除去する。得られたろ過物からなるケーキを80℃〜100℃の温度まで加熱、熟成させて、これを純水に再分散させることで、酸化チタン(IV)の水分散液を得ることができる。
【0047】
(方法4)
チタンテトラアルコキシドを溶媒中で加水分解し、得られた沈殿物の懸濁液(酸化チタンの水性分散液)のpHが7.5〜9.5の範囲になるまでアンモニア水にてpH調整し、これをろ過する。そして、得られたろ過物を水洗して十分に不純物の塩類を除去する。得られたろ過物からなるケーキを80℃〜100℃の温度まで加熱し、熟成させて、これを純水に再分散させることで、酸化チタン(IV)の水分散液を得ることができる。
【0048】
酸化チタン(IV)の分散液を調製する段階で用いるアルカリ性溶液や、ハロゲンと反応させた後に必要に応じて加える添加剤には、実質的にナトリウムを含まないものが望ましい。上記アルカリ性溶液としては、アンモニア水、炭酸アンモニウム水溶液、ヒドラジン水溶液等が例示できる。
【0049】
ここで、酸化チタン(IV)1g当たりのn−ブチルアミンの吸着量の測定方法は以下の通りである。つまり、130℃で2時間乾燥した酸化チタン(IV)のサンプル1gを、50mLの共栓付き三角フラスコにて精秤し、これにメタノールで希釈した0.003Mのn−ブチルアミン溶液を30mL加える。次いで、これを1時間超音波分散させた後、10時間静置し、その上澄み液を10mL採取する。そして、採取した上澄み液を、メタノールで希釈した0.003Mの過塩素酸溶液を用いて電位差滴定し、そのときの中和点における滴定量からn−ブチルアミンの吸着量を求めることができる。
【0050】
酸化チタン(IV)1g当たりのn−ブチルアミンの吸着量が8μモル以下となる表面酸性度を有するアナタース型酸化チタンは、不純物としてのナトリウムの含有量が、1000重量ppm以下が好ましい。不純物としてのナトリウムの含有量が1000重量ppm以下であると、抗菌活性及び/又は光触媒活性の低下を抑制できる。その理由は明確ではないが、例えば、ナトリウムがハロゲンと反応することにより、ハロゲンと酸化チタン(IV)との反応が阻害されることを抑制できるためと考えられる。
【0051】
本発明において、pHの調整に使用する酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ化水素酸等が例示できる。酸化チタン(IV)の水分散液にハロゲン化合物を加えて得られる懸濁液、及び、上記アナタース型酸化チタンとハロゲン化合物とを含む混合液のpHは、3以下であることが好ましい。懸濁液及び混合液のpHの下限は特に制限されないが、経済性や取り扱いの利便性の観点から、pHが1以上であることが好ましい。
【0052】
本発明では、前記混合液中で酸化チタンとハロゲン化合物とを反応させることにより得られた反応物を、例えば水などを用いて洗浄してもよい。これにより、反応工程において酸化チタン(IV)と反応しなかったハロゲンや、余分な塩類、溶解性不純物などを除去できるため、抗菌活性を向上させることができる。
【0053】
水による洗浄(水洗)の場合は、洗浄度の目安として、洗浄に用いた水の電気伝導度が1mS/cm以下になるまで水洗することが好ましい。1mS/cm以下とすることで、余分な塩類や溶解性不純物などを十分に除去することができる。この際、ハロゲン化合物による処理直後、処理液のpHを調整することなくそのままの液組成で洗浄することが好ましい。そのままの液組成で洗浄することで、液中に溶解した不純物を容易に水洗除去できるため、抗菌活性をより向上できるからである。洗浄方法としては、遠心分離機、各種ろ過機、ロータリー洗浄機などを用いる方法が例示できる。
【0054】
本発明において、以上のようにして得られたハロゲン含有酸化チタン(IV)は、その用途に応じて仕上げ処理を行ってもよい。乾燥工程を経て粉末に仕上げる場合、乾燥による凝集を防ぐために、従来知られているいかなる処理も施すことができる。また、凝集したものをほぐすためのいかなる手段を行ってもよい。また、乾燥により凝集したものをほぐすために、一般的ないかなる粉砕機でも用いることができるが、抗菌活性が低下しないような条件で行う必要がある。例えば、酸化チタン結晶が破壊されるのを防ぐために、粉砕力を下げることが必要である。
【0055】
また、上記洗浄を終えたハロゲン含有酸化チタン(IV)を再度溶媒へ分散し、水性もしくは油性、又は、エマルションの状態で、分散液として用いても良い。この際、ケーキをほぐす目的で、湿式粉砕機を用いることもできるが、上述したように、抗菌活性を低下させない機器と条件が必要である。粉砕メディアを用いた分散機では、メディアが磨耗することによる不純物混入を防ぐために、酸化チタン(IV)の濃度を高めることが好ましい。また、メディアの衝撃で酸化チタン(IV)の結晶が破壊されるのを防ぐために、メディア径を小さくすることが好ましい。
【0056】
得られたハロゲン含有酸化チタン(IV)に、その他、用途に応じて表面処理を行っても良い。その場合、一般的に知られている方法としては、ハロゲン含有酸化チタン(IV)表面にシリカ、アパタイト、ゼオライトなどの吸着成分や吸着剤を担持することや、その逆に、ハロゲン含有酸化チタン(IV)を該吸着剤へ担持することなどが例示できる。このように表面処理をする場合、抗菌活性の低下を引き起こさない、または、許容範囲の低下率になるように、処理に用いる材料を選択する必要がある。
【0057】
本発明の製造方法において、ハロゲン含有酸化チタン(IV)を水系溶媒に分散させる工程を含むことが好ましい。水系溶媒としては、上述のものが使用できる。
【0058】
[抗菌方法]
本発明は、さらに、本発明の抗菌剤組成物を抗菌被対象物に接触させること、及び、抗菌剤組成物と接触させた前記抗菌被対象物を暗所において抗菌することを含む抗菌方法に関する。本発明の抗菌方法によれば、暗所や紫外光がほとんど照射されない室内であっても、抗菌被対象物を抗菌することができるという効果を好ましくは奏する。抗菌被対象物との接触としては、例えば、溶液又は分散液の状態の抗菌剤組成物を塗布又は噴霧(スプレー)すること等が挙げられる。被対象物としては、例えば、インテリア用品、衣料類、寝装品、キッチンやトイレ、風呂、洗面所などのサニタリー用品、空調設備、衛生設備及び日用品等が挙げられる。また、抗菌対象は、上述の抗菌活性の対象と同様である。
【0059】
[抗菌処理方法]
本発明は、さらに、ハロゲンを含有する酸化チタン(IV)と水系溶媒を含む抗菌剤組成物を用いた抗菌処理方法であって、前記ハロゲンの少なくとも一部が、前記酸化チタン(IV)と化学結合し、かつ、少なくとも暗所で抗菌活性を備えている抗菌剤組成物により、抗菌作用を発現させることを特徴とした抗菌処理方法に関する。本発明の抗菌処理方法によれば、加湿機の水タンク、エアコンのドレンパン、浴室乾燥機の内部、冷却機、冷蔵庫の内部、洗濯機の内部、水道管、配水管等の光(特に、紫外光)がほとんど照射されない部位における菌やカビの増殖を抑制できる。水系溶媒は、上述のとおりである。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
1.フッ素含有酸化チタン(IV)の調製
酸化チタン(IV)(商品名:SSP−25、堺化学工業株式会社製、アナタース型、粒径:5〜10nm、比表面積:270m2/g以上)の濃度が150g/Lとなるように酸化チタン(IV)に純水を加え、これを撹拌して酸化チタン(IV)分散液を調製した。この酸化チタン(IV)分散液に、酸化チタン(IV)に対してフッ素(元素)に換算して3重量%に相当するフッ化水素酸(和光純薬社製、特級)を添加し、pH3に保持しながら25℃で60分間反応させたのち、水洗した。水洗は、反応物を濾過して回収される濾液の電気伝導度が1mS/cm以下となるまで行った。そして、これを空気中において130℃で5時間乾燥させてフッ素含有酸化チタン(IV)を調製した。なお、濾液(25℃)の電気伝導度は、堀場製作所製pH/cond meter,D−54型(商品名)を用いて測定した。
【0061】
2.フッ素含有酸化チタン(IV)の物性分析
[フッ素含有量]
吸光光度分析法(JIS K 0102)により、フッ素含有酸化チタン(IV)中のフッ素含有量を求めたところ、2.3重量%であった。また、酸化チタン(IV)1モルに対してフッ素は0.098モルであった。
【0062】
[フッ素と酸化チタン(IV)との結合の確認]
フッ素含有酸化チタン(IV)を光電子分光分析装置で分析したところ、F1sのピークトップが683eV〜686eVの範囲となるスペクトルを示した。つまり、得られたフッ素含有酸化チタン(IV)において、酸化チタン(IV)とフッ素とがイオン結合していることが確認できた。
【0063】
[アナタース型の確認]
酸化チタン(IV)を粉末X線回折装置(使用電極:銅電極)で分析したところ、回折角度2θ=25.5度において回折ピークが現れた。つまり、得られたフッ素含有酸化チタン(IV)はアナタース型酸化チタンであった。
【0064】
[フッ素溶出量の測定]
得られたフッ素含有酸化チタン(IV)0.1gを純水100mlに懸濁させ、超音波を15分間照射後、遠心分離を行った。その上澄み液を、共立理化学研究所製のパックテスト(登録商標)を用いて比色分析を行い、溶出したフッ素イオンの量を測定した。この溶出量から酸化チタン(IV)と化学結合したフッ素の割合を求めたところ、95重量%であった。
【0065】
[表面F比率の測定方法]
10mm径の成型用金型を用い、フッ素含有酸化チタン(IV)の粉末1gに1t/cm2の荷重がかかるようにプレスにて圧力を加えて、10mm径のペレットに成型した。この成型ペレットを破断して平らな面を持つ破断小片を作製し、この小片を測定試料台の上に両面テープで固定した。これを、真空中で1日放置した後、光電子分光分析装置(島津製作所製ESCA−850型、X線源:MgKα)を用い、8kV、30mAの条件にて、チタン(Ti)の2p軌道、フッ素(F)の1s軌道及び炭素(C)の1s軌道から放出される光電子スペクトルを測定した。そして、Cの1s軌道の測定値を284.8eVとして、Tiの2p軌道及びFの1s軌道の測定から得られたスペクトルのエネルギー補正を行った。その補正後の値をそのスペクトルの結合エネルギーとし、Fの1s軌道のスペクトル面積より求められるFの原子数をNF、Tiの2p軌道のスペクトル面積より求められるTiの原子数をNTiとした。以下の計算式を用いて表面F比率を算出したところ、0.07であった。
表面F比率=NF×19.0/(NTi×47.9)
【0066】
得られたフッ素含有酸化チタン(IV)とシリカ系のバインダーを混合した液に、ガラス繊維フィルタを含浸し、乾燥させることによって、フッ素含有酸化チタン(IV)を含むフィルタを作成した。以下に示す条件以外はJIS R1702に規定されている試験方法に従い、光照射フィルム密着法によりフッ素含有酸化チタンフィルタの抗菌効果試験を行った。フッ素含有酸化チタンフィルタ(5cm×5cm)をシャーレ内に配置し、フィルタの表面に大腸菌液(初期菌数:1×105cfu/ml、NBRC3972)を塗布した。ついで、暗所で、光(紫外光)を照射することなく室温(24〜27℃)で静置した。静置開始から、10、20、180、360分経過後、回収液で回収し、寒天培養プレートにてコロニーを形成させて生存する菌数を求めた。その結果を図1に示す。
【0067】
(参考例1)
参考例1として、15Wブラックライト(1mW/cm2、365nm)で紫外線光照射を行った以外は、同様にして抗菌効果試験を行った。これらの結果を図1に示す。
【0068】
(比較例1)
比較例1として、フッ素含有酸化チタンに替えて、ハロゲンを含まず光触媒活性を有するアナタース型酸化チタン(商品名:SSP−25、堺化学工業株式会社製)を使用してフィルタを作成した以外は、実施例1と同様にして抗菌効果試験を行った。その結果を図1に示す。
【0069】
(比較例2)
比較例2として、フッ素含有酸化チタンに替えて、ハロゲンを含まず光触媒活性を有するアナタース型酸化チタン(商品名:SSP−25)を使用してフィルタを作成した以外は、参考例1と同様にして抗菌効果試験を行った。その結果を図1に示す。
【0070】
(比較例3)
比較例3として、フッ素含有酸化チタンに替えて、ハロゲンを含まず弱い光触媒活性を有するルチル型酸化チタン(商品名:STR−100N、堺化学工業株式会社製)を使用してフィルタを作成した以外は、実施例1と同様にして抗菌効果試験を行った。その結果を図1に示す。
【0071】
(比較例4)
比較例4として、フッ素含有酸化チタンに替えて、ハロゲンを含まず弱い光触媒活性を有するルチル型酸化チタン(商品名:STR−100N)を使用してフィルタを作成した以外は、参考例1と同様にして抗菌効果試験を行った。その結果を図1に示す。
【0072】
図1に示すように、実施例1の抗菌剤組成物は、光照射なしの条件で、処理開始後20分で初期菌数の7分の1以下にまで大腸菌の数を減少できた(1×104.2cfu/ml程度)。光非照射時の実施例1の抗菌剤組成物によるD値(菌数が90%減少するのに要する時間)は22分であった。これに対し、光を照射しなかった比較例1及び3の抗菌剤組成物では、処理開始から48時間経過しても大腸菌数に変化は見られなかった。光照射を行った比較例2のD値は477分であった。実施例1の抗菌剤組成物の抗菌効果は、光照射を行った、比較例2及び4の抗菌剤組成物よりも高かった。この結果から、フッ素含有酸化チタン(IV)を含む実施例1の抗菌剤組成物によれば、光を照射しない場合であっても抗菌活性を有することを確認できた。
【0073】
(実施例2)
大腸菌に替えて黄色ブドウ球菌(NBRC12732)を使用し、その初期菌数を1×106.8cfu/mlとした以外は実施例1と同様の評価を行った。
【0074】
(参考例2)
参考例2として、大腸菌に替えて黄色ブドウ球菌(NBRC12732)を使用し、その初期菌数を1×106.8cfu/mlとした以外は参考例1と同様の評価を行った。これらの結果を図2に示す。
【0075】
(比較例5)
比較例5として、フッ素含有酸化チタンに替えて、ハロゲンを含まず光触媒活性を有するアナタース型酸化チタン(商品名:SSP−25)を使用した以外は、実施例2と同様にして抗菌効果試験を行った。その結果を図2に示す。
【0076】
(比較例6)
比較例6として、フッ素含有酸化チタンに替えて、ハロゲンを含まず光触媒活性を有するアナタース型酸化チタン(商品名:SSP−25)を使用した以外は、参考例2と同様にして抗菌効果試験を行った。その結果を図2に示す。
【0077】
(比較例7)
比較例7として、フッ素含有酸化チタンに替えて、ハロゲンを含まず弱い光触媒活性を有するルチル型酸化チタン(商品名:STR−100N)を使用した以外は、実施例2と同様にして抗菌効果試験を行った。その結果を図2に示す。
【0078】
(比較例8)
比較例8として、フッ素含有酸化チタンに替えて、ハロゲンを含まず弱い光触媒活性を有するルチル型酸化チタン(商品名:STR−100N)を使用した以外は、参考例2と同様にして抗菌効果試験を行った。その結果を図2に示す。
【0079】
図2に示すように、実施例2の抗菌剤組成物は、光照射なしの条件で、処理開始後20分で初期菌数の10分の1以下にまで黄色ブドウ球菌の数を減少でき(1×102.8cfu/ml程度)、D値は6.4分であった。これに対し、光を照射しなかった、比較例5及び7の抗菌剤組成物では、処理開始から48時間経過しても黄色ブドウ球菌数はほとんど変化しなかった。光照射を行った比較例6及び8でも、実施例2に比べて抗菌効果は低かった。この結果より、フッ素含有酸化チタン(IV)を含む実施例2の抗菌剤組成物によれば、光を照射しない場合であっても抗菌活性を有することを確認できた。また、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性は、参考例2に示す光照射時と同レベルであった。光非照射時の実施例2の抗菌剤組成物によるD値は22分であった。
【0080】
(実施例3)
実施例1のフッ素含有酸化チタン(フッ素含有量:2.3重量%)をPBS(りん酸緩衝生理食塩水)に分散させて、フッ素含有酸化チタン濃度(10、100、1000及び10000mg/l)の抗菌剤組成物(pH7〜8(PBSの緩衝作用のため))を調製した。大腸菌(E.coli NBRC3972)を抗菌剤組成物に添加し、初期菌数を1×105cfu/mlに調製した。ついで、光を照射させることなく、37℃で24時間振とう培養し、その抗菌性を評価した。抗菌性は、濃度が異なる抗菌剤組成物とブランクとの24時間後における菌数を比較し、ブランクに対して2LOG低くなるハロゲン含有酸化チタンの濃度(100分の1になる濃度)を計算で求めて評価した。その結果、フッ素含有酸化チタンの抗菌性は、5776mg/lであった。なお、抗菌剤組成物を添加しない以外は、同様に、光を照射させることなく、37℃で24時間振とう培養したものをブランクとした。
【0081】
(比較例9)
比較例9として、フッ素含有酸化チタンに替えて、ハロゲンを含まず光触媒活性を有するアナタース型酸化チタン(商品名:SSP−25)を使用した以外は、それぞれ、実施例3と同様に行った。その結果、ハロゲンを含まず光触媒活性を有するアナタース型酸化チタンを含む抗菌剤組成物を使用した比較例9では、酸化チタンの濃度を10000mg/lまで高くしても、ブランクに対して2LOG低い値をとることができず、暗所での抗菌性を示さないことがわかった。
【0082】
(実施例4、実施例5)
実施例1の「1.フッ素含有酸化チタンの調製」における「3重量%に相当するフッ化水素酸」に替えて「5重量%に相当するフッ化水素酸」又は「32重量%に相当するヨウ化水素酸」を使用した以外は、同様の手順でフッ素含有酸化チタン(IV)又はヨウ素含有酸化チタン(IV)を調製した。得られたフッ素含有酸化チタン(IV)におけるフッ素含有量、及び、ヨウ素含有酸化チタン(IV)におけるヨウ素含有量は下記表1に示すとおりであった。
【0083】
得られたフッ素含有酸化チタン(IV)又はヨウ素含有酸化チタン(IV)を、JIS R1702法に用いられている1/500NB液(普通ブイヨン培地を精製水で500倍に希釈し、高圧蒸気殺菌したもの)に分散させて、フッ素含有酸化チタン濃度(62.5.125、250、500及び1000mg/l)の抗菌剤組成物をそれぞれ調製した。大腸菌(E.coli NBRC3972)を抗菌剤組成物に添加し、初期菌数を1×105cfu/mlに調製した。ついで、光を照射させることなく、37℃で24時間振とう培養し、実施例3と同様に抗菌性を求めた。その結果を、下記表1に示す。
【0084】
(比較例10)
比較例10として、フッ素含有酸化チタンに替えてハロゲンを含まず光触媒活性を有するアナタース型酸化チタン(商品名:SSP−25)を使用した以外は、それぞれ、実施例4と同様に行った。その結果、下記表1に示すように暗所における抗菌性は得られなかった。
【0085】
【表1】

【0086】
上記表1に示すように、フッ素含有酸化チタンを含む実施例4の抗菌剤組成物及びヨウ素含有酸化チタンを含む実施例5の抗菌剤組成物は、優れた抗菌性を示す。特に、フッ素含有酸化チタンを含む実施例4の抗菌剤組成物は、実施例5の抗菌剤組成物に比べて約20倍の抗菌性を示した。
【0087】
(実施例6)
実施例1の「1.フッ素含有酸化チタンの調製」におけるフッ化水素酸の濃度を変化させた以外は同様の手順でフッ素含有量の異なる5種類のフッ素含有酸化チタン(フッ素含有量:1.25、1.5、2、2.5、3重量%)を調製した。得られたそれぞれのフッ素含有酸化チタンを、1/500NB液に分散させて、フッ素含有酸化チタン濃度(62.5.125、250、500及び1000mg/l)の抗菌剤組成物を調製した。大腸菌(E.coli NBRC3972)を抗菌剤組成物に添加し、初期菌数を2.9×104cfu/mlに調整した。ついで、光を照射させることなく、37℃で24時間振とう培養し、実施例3と同様に抗菌性を求めた。その結果を、図3に示す。なお、抗菌剤組成物を含まないブランクの24時間後の菌数は4.5×106cfu/ml(Log菌数:6.65)であった。
【0088】
(比較例11)
比較例11として、フッ素含有酸化チタンに替えて、ハロゲンを含まず光触媒活性を有するアナタース型酸化チタン(商品名:SSP−25)を使用した以外は、実施例6と同様に行った。その結果を図3に示す。
【0089】
図3に示すように、フッ素を含まない比較例11(商品名:SSP25、フッ素含有量:0重量%)では、酸化チタン濃度を増加させると菌数が減少する傾向が見られるものの、抗菌性(菌数がブランクの100分の1になる濃度)は1000mg/l以上であった。一方、フッ素含有量が1.25重量%である場合、ハロゲン含有酸化チタン濃度の増加にともなって菌数が減少し、抗菌性は296mg/lであった。また、フッ素含有酸化チタンにおけるフッ素含有量を1.25〜2.5重量%まで変化させていくと、フッ素含有酸化チタンにおけるフッ素含有量が増えるとともに抗菌性能は向上した。
【0090】
フッ素含有酸化チタンにおけるフッ素含有量と抗菌性能の関係を図4に示す。図4に示すように、フッ素含有酸化チタンにおけるフッ素含有量が低い範囲(例えば、フッ素含有量が1.25重量%以上2.5重量%未満)でも、十分な抗菌性を示している。また、抗菌性(菌数がブランクの100分の1になる濃度)はフッ素含有量1.25重量%以上の範囲で、フッ素含有量の増加とともに向上し、フッ素含有量2〜4重量%程度の範囲で極大値をとるものと思われる。
【0091】
(実施例7)
実施例1の「1.フッ素含有酸化チタンの調製」におけるフッ化水素酸をフッ化アンモニウムに変え、pH条件を0〜3の範囲で反応させた以外は同様の手順で3種類のフッ素含有酸化チタンを調製した。また、実施例1の「1.フッ素含有酸化チタンの調製」におけるフッ化水素酸の濃度を変化させた以外は同様の手順でフッ素含有酸化チタンを調製した(フッ素含有量:3重量%)。得られたフッ素含有酸化チタンを、それぞれ、1/500NB液に分散させて、フッ素含有酸化チタンの濃度が異なる62.5〜1000mg/lの濃度の抗菌剤組成物を調製した。大腸菌(E.coli NBRC3972)を抗菌剤組成物に添加し、初期菌数を2.9×104cfu/mlに調製した。ついで、光を照射させることなく、37℃で24時間振とう培養し、実施例3と同様に抗菌性を求めた。その結果を、図5に示す。なお、抗菌剤組成物を含まないブランクの24時間後の菌数は4.5×106cfu/ml(Log菌数が6.65)であった。
【0092】
(比較例12)
比較例12として、フッ素含有酸化チタンに替えて、ハロゲンを含まず光触媒活性を有するアナタース型酸化チタン(商品名:SSP−25)を使用した以外は、実施例7と同様に行った。その結果を図5に示す。
【0093】
図5に示すように、ハロゲンの原料としてフッ化アンモニウムを用いたものは、前記のサンプルよりも高い抗菌性を示し、反応時のpH条件が3未満のものではさらに高い抗菌性を示した。ハロゲンの原料としてフッ化水素を用いたものは、最も高い抗菌性を示した。
【0094】
(実施例8)
実施例6及び7で作成したフッ素含有酸化チタンを1/500NB液と混合し、得られた抗菌剤組成物のpHを測定した。このときの抗菌剤組成物におけるフッ素含有酸化チタンの濃度は250mg/lに設定した。実施例6及び7の結果から、以下の式を用いて抗菌活性値を求めた。
抗菌活性値=log(ブランクの菌数(24時間後)/フッ素含有酸化チタンの菌数(24時間後))
【0095】
また、比較例として、比較例1のハロゲンを含まない酸化チタンを含む抗菌剤組成物及びその抗菌剤組成物に塩酸を添加してpHを変化させた抗菌剤組成物を準備し、実施例6と同様に抗菌性を求めた。参考例として、ハロゲン含有酸化チタン及びハロゲンを含まない酸化チタンの何れも添加せず、塩酸のみでpHを変化させたサンプルを準備し、そのサンプルを用いて同様に抗菌性を求めた。
【0096】
得られた抗菌剤組成物のpHと抗菌活性値の関係を図6に示す。実施例6及び7のフッ素含有酸化チタンを含む抗菌剤組成物の抗菌活性値は、pHに対して負の相関を示し、酸性になるほど抗菌活性値が高くなった。このとき、実施例6のフッ化水素酸を用いて調製したフッ素含有酸化チタンを含む抗菌剤組成物は、フッ素含有量が多いほど低いpHとなった。例えば、フッ素含有量が3.0重量%の時のpHは4.5であり、フッ素含有量が2.0重量%の時のpHは5.1であり、フッ素含有量が1.25重量%の時のpHは6.5であった。
【0097】
比較例1のハロゲンを含まない酸化チタンを含む抗菌剤組成物のpHは7.4であり、その時の抗菌活性値は2以下となり抗菌性を示さなかった。塩酸を添加してpHを1.6まで低下させたところ、pHが4以下の範囲で抗菌性を示した。これはハロゲン含有酸化チタン及びハロゲンを含まない酸化チタンの何れも添加せず、塩酸のみでpHを調整したときにみられる抗菌性の変化とほぼ同じであった。多くの微生物はpH6〜7付近で最適な増殖環境となる。大腸菌の場合、pH4.4〜9.0の範囲で増殖可能であり、黄色ブドウ球菌では、pH4.0〜9.8の範囲で増殖可能であることが知られている(防菌防黴ハンドブック第1版、日本防菌防黴学会編、技報堂出版、p179)。本発明のハロゲン含有酸化チタンを含む抗菌剤組成物の場合、pH4.0〜6.5の範囲でも抗菌活性値2以上となっており、単なるpH変動とは異なるメカニズムで抗菌作用が発現していることがわかる。
【0098】
(実施例9)
酸化チタン(IV)(商品名:SSP−25、堺化学工業株式会社製、アナタース型、粒径:5〜10nm、比表面積:270m2/g以上)の濃度が150g/Lとなるように酸化チタン(IV)に純水を加え、これを撹拌して、酸化チタン(IV)分散液を調製した。この酸化チタン(IV)分散液に、酸化チタン(IV)に対してフッ素(元素)に換算して5重量%に相当するフッ化アンモニウム(和光純薬社製、特級)を添加し、25℃で60分間撹拌して、この混合物を磁性皿で空気中において130℃で5時間乾燥させてフッ素含有酸化チタン(IV)を調製した。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、例えば、抗菌、殺菌等の目的で使用される浄化デバイスや、環境浄化に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、本発明の実施例1の抗菌効果の一例を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明の実施例2の抗菌効果のその他の例を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明の実施例6の抗菌効果のその他の例を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明の実施例6のハロゲン含有酸化チタンにおけるフッ素含有量と抗菌効果の関係を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の実施例7の抗菌効果のその他の例を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明の実施例8の抗菌効果のその他の例を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲンを含有する酸化チタン(IV)を含む抗菌剤組成物であって、
前記ハロゲンの少なくとも一部が前記酸化チタン(IV)と化学結合し、かつ、少なくとも暗所で抗菌活性を発現させるための抗菌剤組成物。
【請求項2】
前記ハロゲンが、酸化チタン(IV)1モルに対して0.0007〜0.17モルである、請求項1記載の抗菌剤組成物。
【請求項3】
前記ハロゲン含有酸化チタン(IV)におけるチタン、酸素及びハロゲンの合計の含有量が、96モル%以上である、請求項1又は2に記載の抗菌剤組成物。
【請求項4】
前記ハロゲンが、フッ素であり、前記ハロゲン含有酸化チタンにおけるフッ素の含有量が、1.25重量%以上2.5重量%未満である、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項5】
前記ハロゲン含有酸化チタン(IV)が、組成式Ti(IV)Oab(但し、0.053≦b≦0.17であり、2.026≦(a+b)≦2.086)で表されるハロゲン含有酸化チタンである、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項6】
前記ハロゲンが、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1又は2に記載の抗菌剤組成物。
【請求項7】
さらに、水系溶媒を含み、pHが1〜8である、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項8】
フッ素を含有する酸化チタン(IV)を含む抗菌剤組成物であって、
酸化チタン(IV)とフッ素化合物と水系溶媒との混合物であり、
前記酸化チタン(IV)の少なくとも一部と、前記フッ素化合物におけるフッ素の少なくとも一部とが化学結合したフッ素を含有する酸化チタン(IV)を含み、かつ、少なくとも暗所で抗菌活性を発現させるための抗菌剤組成物。
【請求項9】
暗所での抗菌のために用いられるものである旨の表示を付した、請求項1から8のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項10】
紫外線光源を備えない空質浄化装置及び/又は液質浄化装置及び/又は加湿装置の内部に配置して使用するフィルタに使用するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項11】
光照射光源をオフにした状態での除菌モードを備える空質浄化装置及び/又は液質浄化装置及び/又は加湿装置の内部に配置して使用するフィルタに使用するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項12】
ハロゲンを含有する酸化チタン(IV)と水系溶媒を含む抗菌剤組成物を用いた抗菌処理方法であって、
請求項1から8のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物により、抗菌作用を発現させる抗菌処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−222266(P2010−222266A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68563(P2009−68563)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(000174541)堺化学工業株式会社 (96)
【Fターム(参考)】