説明

抗菌剤

【課題】長期にわたり変色を抑制することができる抗菌剤を提供する。
【解決手段】抗菌性金属イオン(a)、当該抗菌性金属イオンの担体となり得る無機化合物(b)、及び含窒素環状化合物のビス体(c)を必須成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐変色性に優れた抗菌剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、MRSA(メチシリン耐性黄色ブトウ球菌)等による院内感染や、O−157(病原性大腸菌)等を原因とする食中毒の発生が問題視されるようになってきており、清潔志向や安全志向が高まっている。このような背景のもと、細菌感染や微生物汚染を防止する目的で、種々の抗菌剤が利用されている。抗菌剤は、一般に有機系抗菌剤と無機系抗菌剤に大別されるが、最近では無機系抗菌剤が注目されている。これは、無機系抗菌剤が、有機系抗菌剤に比べ、薬剤の安定性、人体に対する安全性等に優れ、環境配慮の観点においても望ましいためである。さらに、無機系抗菌剤は、抗菌効果の持続性においても優れた効果が期待できるものである。無機系抗菌剤は、銀、銅、亜鉛、ヒ素、鉛等の抗菌性金属イオンを活性種とするものであり、これらは古くから利用されている。この中でも銀イオンは、安全性や抗菌スペクトルの広さから、最も注目を浴びている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、銀イオン等の抗菌性金属イオンは、熱や光に曝露されることで還元され、変色を引き起こすことが知られている。このような変色を抑制する技術として、ゼオライトやリン酸ジルコニウム塩等の無機質担体に銀イオンを担持させる手法(特開昭64−24860号公報、特開2000−143420号公報等)、イミダゾール、ウラシル等の含窒素環状化合物や、チオール基含有有機化合物と銀イオンとを反応させる手法(特開平11−246213号公報、特開2004−224735号公報、特開2002−308708号公報等)等が提案されている。
しかしながら、これらの手法で得られた抗菌剤では、媒体中で抗菌性金属イオンが溶出して変色が生じたり、あるいは光に対する安定性が不十分であるために変色が生じる等の問題があり、長期安定性の点においては未だ課題が残されている状況である。
【0004】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、長期にわたり変色を抑制することができる抗菌剤を提供することを目的とするものである。
【0005】
【特許文献1】特開昭64−24860号公報
【特許文献2】特開2000−143420号公報等
【特許文献3】特開平11−246213号公報
【特許文献4】特開2004−224735号公報
【特許文献5】特開2002−308708号公報
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、抗菌性金属イオン(a)、当該抗菌性金属イオンの担体となり得る無機化合物(b)、及び含窒素環状化合物のビス体(c)を必須成分として含む抗菌剤に想到し、本発明を完成させるに到った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.抗菌性金属イオン(a)、当該抗菌性金属イオンの担体となり得る無機化合物(b)、及び含窒素環状化合物のビス体(c)を含むことを特徴とする抗菌剤。
2.抗菌性金属イオン(a)と含窒素環状化合物のビス体(c)との反応生成物が、当該抗菌性金属イオンの担体となり得る無機化合物(b)に担持されてなることを特徴とする抗菌剤。
3.抗菌性金属イオン(a)、当該抗菌性金属イオンの担体となり得る無機化合物(b)、含窒素環状化合物のビス体(c)、及び媒体(d)を含むことを特徴とする抗菌剤。
4.前記抗菌性金属イオン(a)が銀イオンであることを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の抗菌剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、抗菌性金属イオンに起因する変色を抑制することができ、長期にわたる色安定性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0010】
本発明の抗菌剤は、抗菌性金属イオン(a)、当該抗菌性金属イオンの担体となり得る無機化合物(b)、及び含窒素環状化合物のビス体(c)を必須成分として含む抗菌剤である。
【0011】
このうち、抗菌性金属イオン(a)(以下「(a)成分」ともいう)としては、例えば、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオン等が挙げられ、この中でも特に銀イオンが好適である。このような(a)成分は、例えば、抗菌性金属イオンの硝酸塩、硫酸塩、塩化物等の金属塩により得ることができる。
【0012】
抗菌性金属イオンの担体となり得る無機化合物(b)(以下「(b)成分」ともいう)は、(a)成分の瞬時の溶出を抑制し、抗菌効果を持続させる役割等を担うものである。このような(b)成分は、(a)成分をイオン交換反応、物理吸着または化学吸着により担持可能なものであればよい。
具体的に(b)成分としては、例えば、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、チタン酸カリウム、含水酸化ビスマス、含水酸化ジルコニウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。本発明では、この中でも特にゼオライトが好適である。ゼオライトとしては、例えば、チャバサイト、モルデナイト、エリオナイト、クリノプチロライト等の天然ゼオライト、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト等の合成ゼオライトが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。このような(b)成分の粒子径は、通常0.01〜100μm程度である。
【0013】
含窒素環状化合物のビス体(以下「(c)成分」ともいう)は、含窒素環状構造を1分子内に2つ有する対称的な化学構造を有するものである。本発明では、含窒素環状化合物のこのような特異的な化学構造により、抗菌剤中の金属イオンの安定性が高まり、変色抑制の効果が得られるものと考えられる。
含窒素環状化合物のビス体としては、ビステトラゾール化合物が好ましく、例えば、5,5′‐ビ(1H‐テトラゾール)、5,5′‐メチレンビス(2H‐テトラゾール)、5,5′‐アゾビス(1H‐テトラゾール)、5,5′‐ジアゾアミノビス(1H‐テトラゾール)、5,5′‐(2‐ブテン‐1,4‐ジイル)ビス(1H‐テトラゾール)、5,5′‐(1,4‐フェニレン)ビス(2H‐テトラゾール)、5,5′‐(1,3‐フェニレン)ビス(2H‐テトラゾール)、5,5′‐テトラメチレンビス(2H‐テトラゾール)、1,2‐ビス(1H‐テトラゾール‐5‐イル)ヒドラジン、5,5′‐(オキシビスエチレン)ビス(1H‐テトラゾール)、4,5‐ビス(1H‐テトラゾール‐5‐イル)‐2H‐イミダゾール、ビス(1H‐テトラゾール‐5‐イル)アミン、及びこれらの誘導体(ナトリウム塩、アンモニウム塩等の塩等)が挙げられる。
【0014】
含窒素環状化合物のビス体における含窒素環状構造には、第2級アミンと第3級アミンが混在することが望ましい。このような化合物を用いた場合には、その対称的な化学構造に加え、第2級アミンにより生じるイオンと、第3級アミンが有するローンペアとの複合的作用により、耐変色性等においてより優れた効果が発揮されるものと推察される。本発明における含窒素環状化合物のビス体としては、特に5,5′‐ビ(1H‐テトラゾール)(「ビステトラゾール」ともいう)及びその誘導体が好適である。
【0015】
(a)成分と(c)成分の比率は、抗菌性金属イオンの価数と取り得る配位数、含窒素環状化合物のビス体に含まれる第2級アミン及び第3級アミンの数等にもよるが、概ねモル比で2:1〜1:4程度である。
また本発明では、(a)成分と(c)成分の合計量が(b)成分の0.001〜20重量%の範囲であることが望ましく、0.01〜10重量%の範囲にあることがより望ましい。
【0016】
本発明の抗菌剤は、粉状または液状の形態とすることができる。このうち、粉状の形態としては、(a)成分と(c)成分との反応生成物が、(b)成分に担持されてなるものが好適である。
【0017】
このような粉状の形態において、(a)成分と(c)成分との反応生成物(以下単に「反応生成物」ともいう。)を(b)成分に担持させる方法としては、公知の方法を用いればよく、例えばイオン交換反応により担持させる方法、物理吸着または化学吸着により担持させる方法等が挙げられる。このほか、結合剤により担持させる方法、金属化合物を無機化合物に打ち込むことにより担持させる方法、蒸着、溶解析出反応、スパッタ等の薄膜形成法により無機化合物の表面に金属化合物の薄層を形成させることにより担持させる方法等を採用することもできる。
【0018】
具体的に、粉状の抗菌剤は、(a)成分の塩を含む水溶液と、(c)成分を含む水溶液とを混合して反応させた後、(b)を混合して反応生成物を吸着させ、次いでろ過、洗浄、乾燥する方法等により製造することができる。この際、各水溶液のpH、濃度等は適宜設定することができる。(a)成分の塩としては、抗菌性金属イオンの硝酸塩、硫酸塩、塩化物等を使用することができる。また、乾燥工程の後に、必要に応じ粉砕等の操作を行うこともできる。最終的に得られる粉末の粒子径は、概ね0.01〜100μm程度に調整すればよい。
【0019】
液状の形態については、媒体(d)(以下「(d)成分」ともいう)に、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分が含まれるものであればよい。この液状の形態において、(a)成分は(b)成分に担持された状態であることが望ましい。(c)成分については、(a)成分とともに(b)成分に担持された状態であってもよいし、(b)成分とは別に媒体(d)に溶解ないし分散した状態であってもよい。
【0020】
媒体(d)は、上記(a)〜(c)成分を溶解ないし分散する作用を有するものである。本発明における(d)成分としては、水を必須成分とし、必要に応じその他の水溶性溶剤等を含む水系媒体が好適である。このうち水溶性溶剤としては、例えば、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類等が挙げられる。(d)成分は、増粘剤、pH調整剤、分散剤、防腐剤、消泡剤等の各種添加剤を含むものであってもよい。
このような液状の形態においては、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量が1〜80重量%、(d)成分が20〜99重量%となるように調製すればよい。
【0021】
液状の形態においては、上記(a)〜(d)成分を必須成分として含むものである限り、その製造方法は特に限定されるものではない。具体的な製造方法の一例としては、抗菌性金属イオンの塩を含む水溶液に(b)成分を混合して、(b)成分に(a)成分を担持させた後、ろ過、洗浄して(a)成分と(b)成分の複合物を得、含窒素環状化合物のビス体の塩を含む水溶液に、この複合物を分散させる方法等が挙げられる。この際、各水溶液のpH、濃度等は適宜設定することができ、必要に応じ各種添加剤を混合することもできる。
【0022】
本発明の抗菌剤は、抗菌性が求められる各種材料に適用することができる。適用可能な材料としては、例えば、プラスチック、ゴム、接着剤、糊、塗料、インク、繊維、不織布、木材、建材、紙、合成紙、皮革、シーリング材、コンクリート、モルタル等が挙げられる。本発明の抗菌剤を、これら材料に含有させるには、対象となる材料の形態等を考慮して適宜方法を選定すればよい。具体的な方法としては、例えば、混合法、溶融混合法、含浸法、噴霧法、分散混合法等が挙げられる。抗菌剤の使用量は、材料の種類や用途等に応じ適宜設定すればよいが、各材料の100重量部に対し、通常0.001〜10重量部程度、より好ましくは、0.01〜5重量部程度である。本発明の抗菌剤は、上述のような材料に抗菌性を付与するとともに、防黴、消臭、脱臭、分解、浄化等の機能を付与することもできる。また、本発明の抗菌剤を水性塗料に用いた場合には、変色抑制効果が顕著となり好適である。この変色抑制効果については、pH、ハロゲン等の影響を受けにくいという利点もある。本発明の抗菌剤は、他の薬剤(有機系抗菌剤等)と併用することもできる。
【実施例】
【0023】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0024】
[I]試験例1
(実施例1−1)
蒸留水に硝酸銀を混合して0.1Mの硝酸銀水溶液を調製した。
一方、蒸留水にビステトラゾールジアンモニウムを混合し、水酸化ナトリウムでpHを11に調整して、0.2Mのビステトラゾール水溶液を調製した。
このようにして得られたビステトラゾール水溶液を硝酸銀水溶液に混合し(銀イオンとビステトラゾールのモル比1:1)、さらに銀イオン担持量が2重量%となるようにA型ゼオライト粉末(平均粒子径75μm)を混合して、3時間攪拌・分散した。次いで、この分散液をろ過し、水で洗浄した後、50℃雰囲気下で24時間乾燥させ、粉砕することにより粉状の抗菌剤1−Aを得た。
以上の方法で得られた抗菌剤につき、以下の各試験を行った。
【0025】
(1)貯蔵安定性
アクリル樹脂エマルション200重量部に対し、白色顔料(二酸化チタン)130重量部、体質顔料(重質炭酸カルシウム)100重量部、分散剤5重量部、増粘剤5重量部、消泡剤2重量部、及び上記抗菌剤1−A5重量部を常法により均一に混合して水性塗料を作製した。
この水性塗料を、すきま150μmのフィルムアプリケータで白紙上に塗付し、遮光条件下、標準状態(温度23℃・相対湿度50%)で48時間乾燥して塗紙を得、塗紙の色を分光光度計により測定してL*1、a*1、b*1を算出した。
次に、水性塗料を容器に密封・遮光し、所定の温度(5℃、23℃、50℃)で50日間貯蔵した後、同様の方法で塗紙を作成して分光光度計による測定を行い、L*2、a*2、b*2を算出した。
以上の方法で得られた値より、貯蔵前後の色差(△E)を次式に従って算出した。評価基準は、◎:色差0.5未満、○:色差0.5以上1.0未満、△:色差1.0以上2.0未満、×:色差2.0以上、とした。
△E={(L*2−L*1+(a*2−a*1+(b*2−b*10.5
【0026】
(2)耐水性試験
予めシーラーが塗装されたスレート板に対し、上記(1)で作製した塗料を塗付量0.3kg/mでスプレー塗装した後、遮光条件下、標準状態で14日間乾燥させたものを試験体とした。この試験体の色を分光光度計により測定してL*1、a*1、b*1を算出した。
次に、試験体を23℃の水に6時間浸漬した後、再度分光光度計により測定を行い、L*2、a*2、b*2を算出した。
以上の方法で得られた値より、水浸漬前後の色差を算出し、上記(1)と同様の評価基準により評価を行った。
【0027】
(3)耐光性試験
予めシーラーが塗装されたスレート板に対し、上記(1)で作製した塗料を塗付量0.3kg/mでスプレー塗装した後、遮光条件下、標準状態で14日間乾燥させたものを試験体とした。この試験体の色を分光光度計により測定してL*1、a*1、b*1を算出した。
次に、この試験体表面に、22W蛍光灯を距離15cmで50日間照射した後、再度分光光度計により測定を行い、L*2、a*2、b*2を算出した。
以上の方法で得られた値より、照射前後の色差を算出し、上記(1)と同様の評価基準により評価を行った。
【0028】
(4)抗菌性試験
抗菌性については、固体培地法による最小発育阻止濃度の評価を行った。
薬剤濃度が100μg/mlから6.5μg/mlになるように、2倍希釈系列希釈液を作製し、抗菌剤を滅菌処理した標準寒天培地で混釈し、これを冷却させ、寒天を固めたものを固体培地とした。一方、黄色ブドウ球菌を滅菌水に懸濁し、10CFU/mlの濃度の菌懸濁液を調製した。この菌懸濁液を、固体培地に無菌操作的に白金耳にて画線接種し、37℃に設定した培養器の中で、24時間培養を行った。培養後、培地に生育したコロニーが5個以下である固体培地の中で、最も薬剤濃度の低いものを最小発育濃度とした。
評価基準は、◎:500ppm未満、○:500ppm以上1000ppm未満、△:1000ppm以上2000ppm未満、×:2000ppm以上、とした。
【0029】
試験結果を表1に示す。実施例1−1では、いずれの試験においても優れた結果を得ることができた。
【0030】
(実施例1−2)
蒸留水に硫酸銅を混合して0.1Mの硫酸銅水溶液を調製した。
一方、蒸留水にビステトラゾールジアンモニウムを混合し、水酸化ナトリウムでpHを11に調整して、0.2Mのビステトラゾール水溶液を調製した。
このようにして得られたビステトラゾール水溶液を硫酸銅水溶液に混合し(銅イオンとビステトラゾールのモル比1:1)、さらに銅イオン担持量が2重量%となるようにA型ゼオライト粉末(平均粒子径75μm)を混合して、3時間攪拌した。次いで、この分散液をろ過し、水で洗浄した後、50℃雰囲気下で24時間乾燥させ、粉砕することにより粉状の抗菌剤1−Bを得た。
抗菌剤1−Bにつき、実施例1−1と同様の方法で各種試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0031】
(比較例1−1)
蒸留水に硝酸銀を混合して0.1Mの硝酸銀水溶液を調製した。
得られた硝酸銀水溶液に、銀イオン担持量が2重量%となるようにA型ゼオライト粉末(平均粒子径75μm)を混合して、3時間攪拌・分散した。次いで、この分散液をろ過し、水で洗浄した後、120℃雰囲気下で6時間乾燥させ、粉砕することにより粉状の抗菌剤1−Cを得た。
抗菌剤1−Cにつき、実施例1−1と同様の方法で各種試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0032】
(比較例1−2)
ビステトラゾールジアンモニウムに替えて1H−イミダゾールを使用した以外は、実施例1−1の方法に従い粉状の抗菌剤1−Dを得、各種試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0033】
(比較例1−3)
ビステトラゾールジアンモニウムに替えて5−フェニル−1H−テトラゾールを使用した以外は、実施例1−1の方法に従い粉状の抗菌剤1−Eを得、各種試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0034】
(比較例1−4)
ビステトラゾールジアンモニウムに替えて5−メチル−1H−テトラゾールを使用した以外は、実施例1−1の方法に従い粉状の抗菌剤1−Fを得、各種試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
[II]試験例2
【0037】
(実施例2−1)
蒸留水に硝酸銀を混合して0.1Mの硝酸銀水溶液を調製した。この硝酸銀水溶液に対し、A型ゼオライト粉末(平均粒子径75μm)を混合・分散して3時間攪拌し、次いでこの分散液をろ過し、水で洗浄した後、120℃雰囲気下で6時間乾燥させ、粉砕することにより複合粉末(銀イオン担持量2重量%)を得た。
一方、蒸留水にビステトラゾールジアンモニウムを混合し、水酸化ナトリウムでpHを11に調整して、0.2Mのビステトラゾール水溶液を調製した。
このビステトラゾール水溶液10gに対し、上記複合粉末10gを混合・分散することにより、液状(スラリー状)の抗菌剤2−Aを得た。
以上の方法で得られた抗菌剤につき、以下の各試験を行った。
【0038】
(1)スラリーの外観変化
抗菌剤を容器に密封・遮光し、50℃雰囲気下で50日間貯蔵した後の外観を目視にて確認した。この試験では、変色が認められないものを「◎」、著しい変色が認められるものを「×」とする4段階(◎>○>△>×)で評価を行った。
【0039】
(2)貯蔵安定性
アクリル樹脂エマルション200重量部に対し、白色顔料(二酸化チタン)130重量部、体質顔料(重質炭酸カルシウム)100重量部、分散剤5重量部、増粘剤5重量部、消泡剤2重量部、及び上記抗菌剤2−A10重量部を常法により均一に混合して水性塗料を作製した。
この水性塗料を、すきま150μmのフィルムアプリケータで白紙上に塗付し、遮光条件下、標準状態(温度23℃・相対湿度50%)で48時間乾燥して塗紙を得、塗紙の色を分光光度計により測定してL*1、a*1、b*1を算出した。
次に、水性塗料を容器に密封・遮光し、所定の温度(5℃、23℃、50℃)で50日間貯蔵した後、同様の方法で塗紙を作成して分光光度計による測定を行い、L*2、a*2、b*2を算出した。
以上の方法で得られた値より、貯蔵前後の色差(△E)を次式に従って算出した。評価基準は、◎:色差0.5未満、○:色差0.5以上1.0未満、△:色差1.0以上2.0未満、×:色差2.0以上、とした。
△E={(L*2−L*1+(a*2−a*1+(b*2−b*10.5
【0040】
(3)耐水性試験
予めシーラーが塗装されたスレート板に対し、上記(2)で作製した塗料を塗付量0.3kg/mでスプレー塗装した後、遮光条件下、標準状態で14日間乾燥させたものを試験体とした。この試験体の色を分光光度計により測定してL*1、a*1、b*1を算出した。
次に、試験体を23℃の水に6時間浸漬した後、再度分光光度計により測定を行い、L*2、a*2、b*2を算出した。
以上の方法で得られた値より、水浸漬前後の色差を算出し、上記(2)と同様の評価基準により評価を行った。
【0041】
(4)耐光性試験
予めシーラーが塗装されたスレート板に対し、上記(2)で作製した塗料を塗付量0.3kg/mでスプレー塗装した後、遮光条件下、標準状態で14日間乾燥させたものを試験体とした。この試験体の色を分光光度計により測定してL*1、a*1、b*1を算出した。
次に、この試験体表面に、22W蛍光灯を距離15cmで50日間照射した後、再度分光光度計により測定を行い、L*2、a*2、b*2を算出した。
以上の方法で得られた値より、照射前後の色差を算出し、上記(2)と同様の評価基準により評価を行った。
【0042】
(5)抗菌性試験
抗菌性については、固体培地法による最小発育阻止濃度の評価を行った。
薬剤濃度が4000μg/mlから250μg/mlになるように、2倍希釈系列希釈液を作製し、抗菌剤を滅菌処理した標準寒天培地で混釈し、これを冷却させ、寒天を固めたものを固体培地とした。一方、黄色ブドウ球菌を滅菌水に懸濁し、10CFU/mlの濃度の菌懸濁液を調製した。この菌懸濁液を、固体培地に無菌操作的に白金耳にて画線接種し、37℃に設定した培養器の中で、24時間培養を行った。培養後、培地に生育したコロニーが5個以下である固体培地の中で、最も薬剤濃度の低いものを最小発育濃度とした。
評価基準は、◎:1000ppm未満、○:1000ppm以上2000ppm未満、△:2000ppm以上4000ppm未満、×:4000ppm以上、とした。
【0043】
試験結果を表2に示す。実施例2−1では、いずれの試験においても優れた結果を得ることができた。
【0044】
(実施例2−2)
蒸留水に硫酸銅を混合して0.1Mの硫酸銅水溶液を調製した。この硫酸銅水溶液に、A型ゼオライト粉末(平均粒子径75μm)を混合・分散して3時間攪拌し、次いでこの分散液をろ過し、水で洗浄した後、120℃雰囲気下で6時間乾燥させ、粉砕することにより複合粉末(銅イオン担持量2重量%)を得た。
一方、蒸留水にビステトラゾールジアンモニウムを混合し、水酸化ナトリウムでpHを11に調整して、0.2Mのビステトラゾール水溶液を調製した。
このビステトラゾール水溶液10gに対し、上記複合粉末10gを混合・分散することにより、液状(スラリー状)の抗菌剤2−Bを得た。
抗菌剤2−Aに替えて抗菌剤2−Bを用い、実施例2−1と同様の方法で各種試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0045】
(比較例2−1)
蒸留水に硝酸銀を混合して0.1Mの硝酸銀水溶液を調製した。
得られた硝酸銀水溶液に、A型ゼオライト粉末(平均粒子径75μm)を混合・分散して、3時間攪拌した。次いで、この分散液をろ過し、水で洗浄した後、120℃雰囲気下で6時間乾燥させ、粉砕することにより複合粉末(銀イオン担持量2重量%)を得た。
この複合粉末10gを蒸留水10gに混合・分散することにより、抗菌剤2−Cを得た。
抗菌剤2−Aに替えて抗菌剤2−Cを用い、実施例2−1と同様の方法で各種試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0046】
(比較例2−2)
ビステトラゾールジアンモニウムに替えて1H−イミダゾールを使用した以外は、実施例2−1の方法に従い抗菌剤2−Dを得、各種試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0047】
(比較例2−3)
ビステトラゾールジアンモニウムに替えて5−フェニル−1H−テトラゾールを使用した以外は、実施例2−1の方法に従い抗菌剤2−Eを得、各種試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0048】
(比較例2−4)
ビステトラゾールジアンモニウムに替えて5−メチル−1H−テトラゾールを使用した以外は、実施例2−1の方法に従い抗菌剤2−Fを得、各種試験を行った。試験結果を表2に示す。
【0049】
【表2】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性金属イオン(a)、当該抗菌性金属イオンの担体となり得る無機化合物(b)、及び含窒素環状化合物のビス体(c)を含むことを特徴とする抗菌剤。
【請求項2】
抗菌性金属イオン(a)と含窒素環状化合物のビス体(c)との反応生成物が、当該抗菌性金属イオンの担体となり得る無機化合物(b)に担持されてなることを特徴とする抗菌剤。
【請求項3】
抗菌性金属イオン(a)、当該抗菌性金属イオンの担体となり得る無機化合物(b)、含窒素環状化合物のビス体(c)、及び媒体(d)を含むことを特徴とする抗菌剤。
【請求項4】
前記抗菌性金属イオン(a)が銀イオンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の抗菌剤。


【公開番号】特開2008−88169(P2008−88169A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232650(P2007−232650)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】