説明

抗菌性物質を含有しないハーブ入り幼齢子豚用配合飼料

【課題】抗菌性飼料添加物を含有しなくともそれ以上の発育性能を有し、かつ下痢の発生率も少ない幼齢家畜用配合飼料の提供。
【解決手段】飼料中の乳糖を20重量%以上含有させると共に、粗たん白質の含量を20重量%以下に抑え、マリアアザミ、アニス、ガーリック、コロハのいずれか1種以上、あるいは該ハーブと有機酸を添加し、尚且つ子豚の発育に必要な量のアミノ酸を含有する栄養設計を特長とするほ乳期子豚育成用配合飼料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性飼料添加物を添加しなくとも、添加した配合飼料と同等の発育性能を有するハーブ入り幼齢子豚用配合飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人の薬剤耐性菌出現の観点から畜産用飼料に使用する薬剤、抗菌性剤の品目規制が進んでおり、欧州では家畜の成長促進を目的とする抗菌剤の飼料添加が2006年1月より全面禁止された経緯がある。
わが国では畜産物に残留の無い使用量を確認した上で法令での添加量を規制する事により畜産物の安全性を維持しているが、一方で最終消費者のニーズとして、生産農場で抗菌性剤を一切使用しないで生産された畜産物を求める消費動向もあり、農場の衛生管理を徹底する上で、抗菌性飼料添加物を使用せずに生産された豚肉なども市場に流通している。
ここでいう、抗菌性飼料添加物とは、クエン酸モランテル、デストマイシンA、亜鉛バシトラシン、アビラマイシンなどのことである。
【0003】
しかしながら、養豚生産の場合、この抗菌性剤無添加飼料の使用現場において最も問題となるのは、離乳直後の幼齢子豚の生産現場であり、高い衛生環境を維持している農場でも抗菌製剤を無添加で飼育することによる発育停滞や下痢の発生などの問題を回避できない場合も少なくない現状である。
そもそも出生直後から生後70日齢頃までの幼齢子豚は、他の幼齢動物と同じく疾病への抵抗力が乏しい。
また抗菌性飼料添加剤は成長促進の効果もある為、無添加にした場合、特にこの幼齢段階での子豚の発育成績が通常の添加飼料に比べ低くなる問題も含む。
さらに、合成抗菌剤や抗生物質薬剤を連続的に使用すると薬剤耐性菌が出現し、その感染症抑制効果が著しく低下するという問題もある。
【0004】
これらを解決する手段としては、抗菌性飼料添加物を含有しなくとも同程度の発育性能を有し、かつ下痢の発生率も少ない幼齢家畜用配合飼料が必要となる。
【0005】
抗菌性飼料添加物を添加しない家畜用配合飼料としては、抗菌性飼料添加物の代わりに天然成分であるクマザサの抽出成分を家畜の飼料に配合する方法(特許文献1)が、提案されている。
この発明は、クマザサの抽出成分が有する菌類やウィルスに対する繁殖抑制効果を利用したもので、ペットや家畜用の飼料に、クマザサ成分を含む添加剤を30重量%以下添加することを特徴とするものである。
【0006】
しかしながら、クマザサは天然物とはいえ独特の風味を有し、特に子豚は嗜好性の感受性が強いことから、飼料の食いつきが悪くなったり、発育に応じた摂取量の増加が見られないなどの問題がある。
【特許文献1】特開2005−151928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、飼料添加のいかなる抗菌性物質を使用せず、飼料の配合で幼齢段階での子豚の発育成績を向上させる幼齢子豚用飼料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、この抗菌性物質に成り代わる抗菌性剤無添加飼料の研究の結果、栄養レベルによっても性能の異なる点を見出した。
上述したように、抗菌性剤無添加の幼齢子豚用配合飼料の場合、最大の問題は下痢の発生であり、すなわち離乳してから給与する飼料が抗菌性剤無添加の場合にこの時点で下痢発生を伴った発育停滞を生じるケースがしばしば見られる。この問題を解決する為に、飼料中の乳糖含量と粗たん白質含量の組合せ研究から、栄養レベルでかつ抗菌性剤無添加の配合飼料を給与した場合に、下痢の発生が少なく、発育停滞も少ないが、このような飼料に特定のハーブを配合すると給与した子豚の発育が向上し、有機酸をハーブと同時に配合することにより著しい発育向上が見られることを発見し、本発明に至ったものである。
【0009】
本発明では、飼料中の乳糖と粗たん白質の含量を調整し、さらに特定のハーブ、あるいは該ハーブと有機酸を同時に添加することにより、幼齢段階での子豚の発育成績が向上する家畜用飼料を得ることができる。
すなわち、本発明は、飼料中の乳糖を20重量%以上含有させると共に、粗たん白質の含量を20重量%以下に抑え、さらに特定のハーブ、あるいは該ハーブと有機酸を同時に添加し、且つ子豚の発育に必要な量のアミノ酸を含有する栄養設計を特長とするほ乳期子豚用配合飼料に関するものであり、以下の態様を含むものである。
(1)乳糖を20重量%以上含有し、かつ、粗たん白質の含量が20重量%以下であり、さらにマリアアザミ、アニス、ガーリック、コロハのいずれか1種以上を配合した幼齢子豚用配合飼料。
(2)さらに有機酸を配合した(1)の幼齢子豚用配合飼料。
(3)さらに子豚の発育に必要なアミノ酸を含む(1)または(2)の幼齢子豚用配合飼料。

【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
飼料中の乳糖を20重量%以上含有させるためには、飼料に乳糖を配合するか、乳糖を含有する飼料原料の配合量を増加させればよい。乳糖を含有する飼料原料として、乳糖、脱脂粉乳、ホエイパウダー、濃縮ホエーたん白等が例示できる。
【0011】
一方、飼料中の粗たん白質の含量を20重量%以下とするには、大豆たん白などの粗たん白質を含む飼料原料の配合割合を極力少なくする必要がある。粗たん白質を含む飼料原料としては魚粉、脱脂粉乳、大豆たん白等が例示でき、これらの原料を配合して使用する場合はそれぞれの粗たん白質の総量が、飼料全量に対し20重量%以下になるようその配合量を調整する必要がある。
【0012】
飼料中に配合するハーブとしては、マリアアザミ、アニス、ガーリック、コロハが子豚の発育向上に効果を有することが判った。これらのいずれか一種以上を配合することによって、子豚の発育が向上するが、4種を混合して使用することがより望ましい。
これらのハーブは、その葉、茎、種子、花、根の何れも使用することができるが、市販の乾燥粉末品を使用することが簡便である。
ハーブの配合量は、風乾物換算で飼料全量に対し0.001〜1.000重量%程度が望ましい。
【0013】
飼料中にハーブと共に配合する有機酸としては、ギ酸、クエン酸、乳酸が例示でき、特にギ酸が好ましい。また、有機酸の配合量は、飼料全量に対し0.001〜1.000重量%程度が望ましい。
【0014】
さらに、幼齢段階での家畜の発育成績を低下させないためには幼家畜の発育に必要なアミノ酸量は確保する必要がある。飼料に配合されるアミノ酸としては、リジン、メチオニン、トレオニン等が例示される。アミノ酸レベルは飼料中のリジンの含量として1.000〜1.800重量%にすることが望ましい。
【実証例】
【0015】
離乳後の子豚を1区当たり8頭用意し、抗菌剤を添加した飼料(対照区I)、抗菌剤を添加せず、粗たん白質を20重量%含有しない飼料(試験区I)、抗菌剤を添加せず粗たん白質を20重量%含有せず、4種のハーブを含有する飼料(試験区II)、抗菌剤を添加せず粗たん白質を20重量%含有せず、有機酸を含有する飼料(試験区III)、抗菌剤を添加せず粗たん白質を20重量%含有せず、4種のハーブと有機酸を含有する飼料(試験区IV)、の5種の飼料を調製し、2週間、給与した。
各飼料の配合割合を表1に示す。
【0016】
【表1】

【0017】
このような試験を5反復実施し、試験前後の体重の変化、試験中における下痢発生率、などを調査した。その結果を表2に示す。
【0018】
【表2】

【0019】
表2に示されるように、試験区Iの子豚は、対照区と比べ下痢軟便発生率は若干高いものの、粗たん白質の含量を減らしことにより増体量と飼料要求率は対照区とほぼ同等となった。試験区IIでは、ハーブを添加したことにより、下痢軟便の発生率を低下させることができ、増体量は向上し飼料要求率は改善された。試験区IIIでは、ハーブに代え有機酸を添加したことにより、さらに下痢軟便の発生率を低下させることができ、増体量はさらに向上した。試験区IVでは、ハーブと有機酸とを組み合わせて添加したところ、下痢軟便の発生率を著しく低下させることができ、増体量も対照区と比べ10%以上向上させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の配合飼料によれば、合成抗菌剤や抗生物質を配合しないので、消費者に対し安全な食肉を提供することができ、さらに、子豚の下痢の発生率が抑えられ、飼料摂取量が多くなるので、効率的に家畜を育成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳糖を20重量%以上含有し、かつ、粗たん白質の含量が20重量%以下であり、さらにマリアアザミ、アニス、ガーリック、コロハのいずれか1種以上を配合した幼齢子豚用配合飼料。
【請求項2】
さらに有機酸を配合した請求項1記載の幼齢子豚用配合飼料。
【請求項3】
さらに子豚の発育に必要なアミノ酸を含む請求項1または2記載の幼齢子豚用配合飼料。