説明

抗菌防汚室

【課題】 病室、手術室、老人介護室、抗シックハウス室、文化財保護室等における抗菌防汚性の実現。
【解決手段】 壁面および天井面に超撥水抗菌防汚材料をコーティングし、カビや菌の増殖を促進する水成分の付着を防ぎ、たとえ付着しても光触媒によって滅菌・分解するといの長所を活かし、床面に抗菌防汚コーティングすることにより、抗菌防汚室を実現し、病室、手術室、老人介護室、抗シックハウス室、文化財保護室等の広範な応用を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌防汚性が必要とされる病室、手術室、老人介護室、抗シックハウス室、文化財保護室等にかかわるものである。
【背景技術】
【0002】
光触媒を用いた防汚材料については、光触媒性酸化チタンを焼き付けたタイルやガラスが商品化され、良好な防汚性が報告されている。下記特許文献1には、この光触媒性酸化チタンを超撥水材料中に分散させることにより、通常予想される光触媒性酸化チタン添加量よりもはるかに少量の添加量で、超撥水性と防汚性が両立できることが報告されている。下記特許文献2では、特許文献1における光触媒性二酸化チタンを可視光応答型窒素ドープ酸化チタン光触媒とすることにより、超撥水抗菌防汚材料の室内分野への拡大を試みている。
特許文献1,2で開示された発明は、撥水性と防汚性の著しい相乗効果により、カビや菌の増殖を促進する水成分の壁面への付着を防ぎ、たとえ付着しても光触媒によって滅菌・分解するという画期的なものといえるが、実際の病室や居室に適用するにあたっては、以下の問題点があった。超撥水抗菌防汚材料を壁面あるいは天井に適用するのは問題ないが、床面に適用する場合には、滑りやすく老人や病人はもとより健常者であっても横転する可能性がある。なぜならば、超撥水性は、これらの材料の表面エネルギーが低いことに起因しており、水以外のあらゆる材料に対してしても密着力が小さく、このため滑りやすく床面に使用することは安全上の観点から問題があった。
また、光触媒反応による滅菌・汚れ分解反応は、光触媒と菌や汚れと接する場所においてのみ起こるため、室内に浮遊し落下する菌や汚れには効果がない、という問題点があった。さらに、超撥水材料に多量の光触媒を添加すれば、光触媒が有する親水性がPTFEに起因する撥水性を損なうばかりでなくバインダを分解するため、多量の光触媒を含む撥水性抗菌防汚材料を実現することは実用的ではない。
【特許文献1】公開特許公報平11−256134
【特許文献2】公開特許公報2007−51263
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、カビや菌の増殖を促進する水成分の壁面への付着を防ぎ、たとえ付着しても光触媒によって滅菌・分解するとい超撥水抗菌防汚材料の長所を活かし、欠点である低付着力を補う抗菌防汚室を実現し、病室、手術室、老人介護室、抗シックハウス室、文化財保護室等の広範な応用を可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明を概説すれば、本発明は、壁および天井の表面に、撥水性の69重量%以上89重量%以下のPTFE(ポリテトラフロロエチレン)粒子を、バインダである13重量%以上23重量%以下のフッカビニリデン中に、分散させ、さらに光触媒微粒子を0.05重量%以上17重量%以下添加して抗菌・汚れ防止性を付与し、かつフッ素オイル(パーフルオロエーテル)を0.5重量%以上3重量%以下添加し耐浸水性を付与した、水に対する接触角が140度以上である超撥水抗菌防汚材料をコーティングし、床面に、光触媒微粒子を20重量%以上含む抗菌防汚材料でコーティングした、抗菌・防汚室を実現するものである。
壁面および天井の超撥水抗菌防汚性と床面の高密着力抗菌防汚性の相乗効果により、実用的な抗菌・防汚室を可能とした。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、超撥水抗菌防汚材料をコーティングした壁面および天井には、カビや菌の発生を促進する水分の付着を防ぐことができる。もし、強い密着力を有するカビや菌が壁面や天井に付着しても添加した光触媒の作用によりこれらの菌や汚れを分解できる。
壁面や天井に付着に接することなく重力の作用によって、カビや菌が、光触媒の添加量を増加させた抗菌防汚材料でコーティングした床面へと落下した場合には、カビや菌は床面に多く含まれる光触媒の作用により滅菌・分解できる。床面は表面エネルギーが高く密着力が大きいところから、人が床面を歩行するとき転倒する可能性は少ない。このようにして超撥水抗菌防汚性の壁面・天井と高密着性抗菌防汚性の床面との相乗作用により、室内においてカビの発生や菌の増殖が大幅に抑制され、かつ人が転倒しにくい抗菌防汚室が実現できる。
【0006】
例えば、マンションに本発明の抗菌防汚室を適用した場合、壁面の結露やカビの発生が抑制されるのみでなく、料理作成、喫煙、外気からの混入によって発生した汚れ成分が、分解され、室内の空気が清浄化され、単に快適であるばかりでなく、アレルギー性疾患のある人にとっては、アレルギー症状を低減させることができる。
【0007】
病院の病室、手術室、集中治療室あるいは病気に対する抵抗力や免疫機能の弱い老人が居住する老人ホームなどに本発明の抗菌防汚室を適用した場合、抗菌防汚作用により消毒が不要となるだけでなく、居住者が転倒する可能性も低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
壁面および天井にコーティングされる超撥水抗菌防汚材料において、PTFE粒子の添加量が69重量%未満の場合、撥水性が十分でなく、89%を上回る場合では、PTFE粒子が脱落するおそれがある。したがって、PTFE粒子の添加量は、のぞましくは80重量%である。残部となる20%は、請求項1で示される範囲内の添加量のバインダ、フッ素オイル(パーフルオロエーテル)、光触媒で構成される。床面は、請求項1で示される範囲内の添加量の光触媒を含む抗菌防汚材料を用いる。
【実施例】
【0009】
PTFE樹脂粉末80重量%、フッ化ビニリデン樹脂17.5重量%、フッ化オイル(パーフルオロポリエーテル)1.5重量%、可視光応答型窒素ドープ酸化チタン光触媒性粒子を1.0重量%より構成される超撥水抗菌防汚材料の水に対する接触角を測定したところ、接触角153度であり、超撥水性を確認した。この材料を東京都武蔵野市地区内の床面積77平方メートルの集合住宅の1つの部屋の壁面にコーティングした。壁面には外部空気導入孔が設置されている。この部屋の床面を、可視光応答型窒素ドープ酸化チタン光触媒性粒子を35重量%含む抗菌防汚ワックスでコーティングした。この集合住宅のもう1つの部屋の壁面は、PTFE樹脂粉末80重量%、フッ化ビニリデン樹脂18.5重量%、フッ化オイル(パーフルオロポリエーテル)1.5重量%より構成される超撥水材料をコーティングした。この材料の水に対する接触角は154度であった。またこの部屋の床面は可視光応答型窒素ドープ酸化チタン光触媒性粒子を含まないワックスでコーティングした。この部屋の壁面にも外部空気導入孔が設置されている。15ヶ月経過後、壁面にも床面にも可視光応答型窒素ドープ酸化チタン光触媒性粒子存在しない部屋では、外部空気導入孔周辺部が付着した汚れのため色がくすんできたのが認められた。しかし、壁面にも床面にも可視光応答型窒素ドープ酸化チタン光触媒性粒子が存在する部屋では、外部空気導入孔周辺部になんらのくすみは認められず、防汚性が確認された。
壁面に用いられた超撥水抗菌防汚材料の抗菌性は、大腸菌IFO3000株に対し、8μWのホワイトライトを48時間照射することにより行なった。この条件下では、大腸菌の数は、1/20以下に減少した。床面に用いられた抗菌防汚ワックスを同様な条件で評価したところ、大腸菌の数は、の抗菌性は、1/100以下に減少した。
このように、本発明の抗菌防汚室の抗菌防汚機能が確認され、病室、手術室、老人介護室、抗シックハウス室、文化財保護室等の広範な応用が可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁および天井の表面に、撥水性の69重量%以上89重量%以下のPTFE(ポリテトラフロロエチレン)粒子を、バインダである13重量%以上23重量%以下のフッカビニリデン中に、分散させ、さらに光触媒微粒子を0.05重量%以上17重量%以下添加して抗菌・汚れ防止性を付与し、かつフッ素オイル(パーフルオロエーテル)を0.5重量%以上3重量%以下添加し耐浸水性を付与した、水に対する接触角が140度以上である超撥水抗菌防汚材料をコーティングし、床面に、光触媒光触媒微粒子を20重量%以上含む抗菌防汚材料でコーティングした、抗菌・防汚室
【請求項2】
上記請求項1において超撥水抗菌防汚材に含まれる光触媒が、可視光応答型光触媒微粒子である抗菌・防汚室。
【請求項3】
上記請求項1において抗菌防汚材料に含まれる光触媒が、可視光応答型光触媒微粒子である抗菌・防汚室。

【公開番号】特開2008−231387(P2008−231387A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105300(P2007−105300)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(599038581)
【Fターム(参考)】