説明

抗TSG101抗体およびウイルス感染の処置のためのその使用

本発明は、TSG101のC末端領域に結合する抗体を提供する。本発明はまた、HIVおよびエボラウイルス感染を含む、ウイルス感染の処置のためにTSG101抗体を使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第199条(e)の下、2006年11月15日に出願された米国仮特許出願第60/858,922号(その全体を本明細書に参照により組み入れる)の利益を主張する。本出願は、2007年11月13日に出願された米国特許出願第11/939,122号(これもまた本明細書に参照により組み入れる)に関連する。米国特許出願第11/939,122号は、とりわけ、そこでエスコートタンパク質といわれる、ウイルス出芽に関係付けられるタンパク質のファミリーに対する抗体の調製および使用に関する。TSG101はそのファミリーの1つのメンバーである。それは単独で重要性を有する。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、TSG101タンパク質に結合し、そしてウイルス産生を阻害するかまたは低下させる抗体に関する。本発明はまた、HIV感染を含むウイルス感染の処置のためにTSG101抗体を使用する方法に関する。本発明はさらに、TSG101抗体を使用してウイルス感染細胞を検出する方法に関する。
【0003】
技術の背景
病原体および宿主細胞の相互作用は、AIDSのようなウイルス性疾患の病因における重要な役割を担う。典型的なウイルス感染のために、ウイルスは、細胞表面受容体を介して宿主細胞に結合し、宿主細胞膜と融合し、細胞膜を横切って移行し、ウイルス粒子を脱コート(uncoat)し、宿主タンパク質合成機構を使用してウイルスタンパク質を合成およびアセンブルし、そして宿主搬出機構を介して宿主細胞から放出されなければならない。ウイルスと宿主細胞との間の相互作用は、ウイルスの排除から寄生性または致死性感染までの範囲の、ウイルス病因の結果を決定する。例えば、HIVは、種々のストラテジーを用いて、ヒト細胞に生産的に感染する。レトロウイルス、その生活環は、宿主細胞に結合し(主な標的はCD4+Tヘルパー細胞である)そして特異的受容体を介して侵入を獲得することによって開始する。細胞において、RNAゲノムはその相補DNAに「逆」転写され、次いで宿主ゲノム中のその組み込みのために核へシャトルされる。この組み込まれた「プロウイルス」は、次いで新たなウイルスRNAおよびタンパク質の産生を指図し、これらは自己アセンブルし、次いで形質膜中でエンベロープ化された、成熟しそして感染性のウイルス粒子として細胞から「出芽」する。全てのウイルスと同様に、HIVは、出芽プロセスを駆動する膜分裂事象を触媒できない寄生体である。その代わりに、新生ウイルスは細胞の膜ソーティング機構をリクルートして、この感染の最終段階を完了する。そのような宿主およびウイルスの相互作用は、欠陥細胞表面受容体(CCR5)を保有し、HIV感染に完全に耐性である個体において十分に実証されており、ウイルス病理における宿主遺伝子および遺伝子経路の重要な役割が解明されている。
【0004】
腫瘍感受性遺伝子101(TSG101、Li, et al., 1996, Cell 85, 319-29)は、細胞増殖(Zhong, et al., 1998, Cancer Res. 58, 2699-702; Oh, et al., 2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99, 5430-5; Krempler, et al., 2002, J. Biol. Chem. 277, 43216-23; Wagner, et al., 2003, MoI. Cell Biol. 23, 150-62; Li, et al., 1996, Cell 85, 319-29)、細胞タンパク質輸送(Babst, et al., 2000, Traffic 1, 248-58; Bishop, et al., 2002, J. Cell Biol. 157, 91-101)、およびp53の分解(Li, et al., 2001, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98, 1619-24; Ruland, et al., 2001, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98, 1859-64; Moyret-Lalle, et al., 2001, Cancer Res. 61, 486-8)において重要な役割を担っている。TSG101はまた、この最終段階における鍵となる役割を担うものであると広く認識されており、細胞性TSG101の阻害はHIVの出芽プロセスをブロックする。他の細胞因子と協力して作用して、TSG101はこのようにHIVウイルスの出芽または伝播において重要な役割を担う。ウイルスのアセンブリおよび出芽を統制することが以前に示されているHIV Gagタンパク質は、TSG101に高親和性で結合し、そして、Gag/TSG101相互作用の破壊はHIVウイルス出芽を防止し、そしてHIVウイルスの伝播を有意に制限するので、このGag/TSG101相互作用は効率的なHIVウイルスのアセンブリおよび出芽に必須である。
【0005】
エンベロープウイルスアセンブリのアセンブリにおける最終工程は、細胞膜からの出芽粒子の分離を必要とする。この機能のために必要とされるGag中の3つの異なる機能性ドメイン、20、すなわちHIV−1中のPTAP(Gottlinger, et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 3195-9; Huang, et al., 1995, J. Virol. 69, 6810-8);RSV(Parent, et al., 1995, J. Virol. 69, 5455-60)、MuLV(Yuan, et al., 1999, Embo. J. 18, 4700-10)、およびM−PMV(Yasuda, et al., 1998, J. Virol. 72, 4095-103)中のPPPY;ならびにEIAV中のYXXL(Puffer, et al., 1997, J. Virol. 71, 6541-6)が、様々なレトロウイルスにおいて同定されており、そして後期、またはLドメインと名付けられている(Wills, et al., 1991, Aids 5, 639-54)。HIV−1において、LドメインはPTAPモチーフを含み、そして効率的なHIV−1放出に必要とされる(例えば、Wills, et al., 1994, J. Virol. 68, 6605-6618; Gottlinger, et al., 1991, Proc. Natl. Acad Sci. USA 88, 3195-3199; Huang, et al., 1995, J. Virol. 69, 6810-6818参照)。HIV−1 p6のLドメイン、特にPTAPモチーフは、細胞タンパク質TSG101に結合し、そしてそれをウイルスアセンブリの部位にリクルートして、ウイルス出芽を促進する(VerPlank, et al., 2001, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98:7724-7729; Garrus, et al., 2001, Cell 107:55-65; Martin-Serrano, et al., 2001, Nature Medicine 7:1313-19; Pornillos, et al., 2002, EMBO J. 21 :2397-2406; Demirov, et al., 2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:955-960; PCT公開WO02/072790; 米国特許出願公開US2002/0177207)。TSG101のUEVドメインは、PTAPモチーフおよびモノユビキチンに結合し(Pornillos, et al., 2002, Embo J. 21, 2397-406; Pornillos, et al., 2002, Nat. Struct. Biol. 9, 812-7)、これはHIV−1出芽にも関係付けられている(Patnaik, et al., 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97, 13069-74; Schubert, et al., 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97, 13057-62; Strack, et al., 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97, 13063-8)。細胞性TSG101の枯渇(Garrus, et al., 2001, Cell 107:55-65)またはTSG101の切断形態の過剰発現は、HIV−1放出を阻害する(Demirov, et al., 2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:955-960)。特定の状況下で、TSG101はHIV−1 Lドメインの代わりをして、ウイルス放出を促進しさえし得る(Martin-Serrano, et. al., 2001, Nature Medicine 7:1313-19)。
【0006】
酵母において、TSG101オルソログであるVps23が、Vps28およびVps37と相互作用し、そしてESCRT−Iと名付けられるタンパク質複合体(これは多胞体経路中へのエンドソームタンパク質ソーティングのために重要である)を形成することが示されている(Katzmann, et al., 2001, Cell 106, 145-55)。この細胞内多胞体形成は形質膜におけるHIV−1放出に類似すると仮定されている(Garrus, et al., 2001, Cell 107:55-65; Patnaik, et al., 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97, 13069-74)。哺乳動物細胞において、TSG101はVsp28と相互作用して、ESCRT−I様複合体を形成するが(Babst, et al., 2000, Traffic 1, 248-58; Bishop, et al., 2002, J. Cell Biol. 157, 91-101; Bishop, et al., 2001, J. Biol. Chem. 276, 11735-42)、Vsp37の哺乳動物ホモログは同定されていない。
【0007】
最近の研究(Blower, et al., 2003, AIDS Rev. 5:113-25; Valdiserri, et al., 2003, Nat. Med. 9:881-6)は、世界中で四千二百万人ほど多くの人々がHIVに感染していると見積もっている。この疾患は三百万人より多くの人々を死滅させている。高度に強力でありそして標的化された併用療法の出現が工業化国におけるAIDSの進行を遅らせたが、AIDSパンデミックが途上国、特にアフリカにおいて「ヒト発生カタストロフ」を引き起こしており、ここで二千百万人より多くのアフリカ人が感染している。南アフリカ単独で、死亡者数は2015年までに一千万人に上ると見積もられている。関連する統計は、アジア太平洋地域(国際連合の見積もりによれば、七百万より多いHIV感染個体を有する)における同様の危機の前兆となっている。AIDSパンデミックからの影響は、膨張する数の最近感染した患者を処置するための資力を欠く診療所を相当に越えて広がっている(南アフリカにおける成人人口のほぼ20%が感染している)。HIV感染しておりそして重病のAIDS患者の処置は、アフリカおよびその他の途上国の既に過剰に負担を負った医療システムを圧迫している。さらに悪いことに、薬剤耐性HIV株が新たに感染した個体において漸増的に単離されているので、HIVのための現在の処置は、ウイルス負荷の低下におけるその最初の成功にもかかわらず、その効力を失い始めている。HIV疾患の治療管理をさらに悪化させているのは、現在の抗レトロウイルスレジメンの毒性であり、その規模は処置を開始しそして維持する医師の決断を困難にしている。HIV疾患の処置のための新たな治療パラダイム(特に耐性の発達を遅らせることを約束する作用機構についてのもの)を同定することは、実際、製薬産業のための世界的な問題である。
【0008】
多くのウイルスはまた高度に変異可能である。そのようなウイルスを直接的に標的化することに頼る方法および組成物は、通常、そのようなウイルスによる感染の処置において十分ではない。例えば、HIV−1はそのような高度に変異可能なウイルスであり、HIV−1感染の過程の間に、感染個体において生成した抗体は、中和逃避変異体の迅速な出現に部分的に起因して、永久的な保護効果を提供しない(Thali, et al., 1992, J. Acquired Immune Deficiency Syndromes 5:591-599)。HIV感染個体の処置のための現在の治療は、HIV感染の2つの異なる段階であるウイルスゲノムの複製およびウイルスタンパク質の成熟に関与するウイルス酵素に主に集中している。ウイルスは頻繁に変異するので、薬物の最初の治療効果にもかかわらず、抗ウイルス阻害剤に耐性の株が迅速に発達する。1つの最近の研究において、薬剤耐性HIV株に新たに感染した個体の割合は5年の期間にわたって6倍増加した(Little, et al., 2002, N. Engl. J. Med. 347:385-94)。さらに、逆転写酵素およびプロテアーゼの両方の阻害剤を用いてHIVを攻撃する治療の現在の標準である併用療法は、多剤耐性HIV株の発達を導いている。新たなHIVに基づく標的に対する抗レトロウイルス薬物は、かなり価値があるが、この漸増的に重要な問題に取り組んでいない。例えば、抗HIV医療装備への最新の追加であるFuzeon(登録商標)(エンフビルチド)に耐性のHIV株が既に患者から単離されている。従って、その抗ウイルス効力および新規の作用機構にもかかわらず、薬剤耐性は、Fuzeon(登録商標)のようなウイルス融合阻害剤の治療潜在性を損なっているようである。それゆえ、HIV感染のようなウイルス感染と戦うために新規の治療的および予防的方策を開発することの必要性が存在する。
【0009】
本明細書における参考文献の考察または引用はそのような参考文献が本発明の先行技術であると認めるものとは解釈されない。
【0010】
発明の概要
本発明は、ヒトTSG101の末端領域に結合する抗体およびウイルス感染を処置するために抗体を使用する方法を提供する。本発明はまた、抗TSG101抗体を使用するウイルス感染を処置するための方法および組成物を提供する。
【0011】
1つの態様において、本発明は、配列番号3からなるTSG101 C末端領域に結合するモノクローナル抗体を提供する。1つの実施態様において、抗体は、配列番号19、22、25または28に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含むモノクローナル抗体である。
【0012】
別の実施態様において、モノクローナル抗体は、抗体D1および3G1である。
【0013】
別の実施態様において、抗体は、配列番号30〜41からなる群より選択されるアミノ酸を含むヒト化抗体である。
【0014】
好ましい実施態様において、ヒト化抗体は、配列番号31〜35に記載のアミノ酸配列または配列番号36〜41に記載のアミノ酸配列のいずれかを含む。
【0015】
本発明の別の態様は、対象におけるエンベロープウイルス感染を処置するための方法に関する。方法は、対象中に本発明の抗TSG101抗体の有効量を投与することを含む。
【0016】
1つの実施態様において、エンベロープウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス、マールブルグウイルス、またはエボラウイルスである。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、ヒト免疫不全ウイルス、マールブルグウイルス、およびエボラウイルス感染を処置するための医薬組成物に関する。組成物は、本発明の抗TSG101抗体の有効量;および薬学的に許容される担体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、ヒトTSG101タンパク質の390アミノ酸配列を示す(配列番号1)。(GenBankアクセッション番号U82130.1/GI:1772663)。
【図2】図2は、MLVウイルス産生に対する抗TSG101抗体の効果を示す。左上パネル:抗体の処理なしのPhoenixヘルパー細胞(ポジティブコントロール)はレトロウイルスの効率的な産生、およびN2A標的細胞の感染を示した;左中パネル:ウサギIgGは効果を有しなかった;左下パネル:N末端TSG101に対するウサギ抗体は20%未満の阻害の効果を有した;右上パネル:C末端TSG101に対するウサギ抗体はレトロウイルスの産生、およびN2A標的細胞の感染を有意に阻害した(50 70%阻害);右中パネル:抗C末端および抗N末端抗体の混合物は抗C末端抗体単独と同様の結果を与えた;右下パネル:ウイルスによって感染されていないN2a細胞は最小バックグラウンド染色のみを示した。
【図3A】図3A〜Eは、GFP−TSG101がウイルス放出の間に細胞表面に局在化することを示す。GFP−TSG101のトランスフェクションの24時間後の活発なウイルス放出を有するPhoenixヘルパー細胞の生共焦点画像。図3Aは4つの細胞の明視野画像を示す;図3B〜Eは異なる切片における同じ視野の生共焦点蛍光画像である;白矢印はGFP−TSG101の細胞表面局在化を示す。
【図3B】図3A〜Eは、GFP−TSG101がウイルス放出の間に細胞表面に局在化することを示す。GFP−TSG101のトランスフェクションの24時間後の活発なウイルス放出を有するPhoenixヘルパー細胞の生共焦点画像。図3Aは4つの細胞の明視野画像を示す;図3B〜Eは異なる切片における同じ視野の生共焦点蛍光画像である;白矢印はGFP−TSG101の細胞表面局在化を示す。
【図3C】図3A〜Eは、GFP−TSG101がウイルス放出の間に細胞表面に局在化することを示す。GFP−TSG101のトランスフェクションの24時間後の活発なウイルス放出を有するPhoenixヘルパー細胞の生共焦点画像。図3Aは4つの細胞の明視野画像を示す;図3B〜Eは異なる切片における同じ視野の生共焦点蛍光画像である;白矢印はGFP−TSG101の細胞表面局在化を示す。
【図3D】図3A〜Eは、GFP−TSG101がウイルス放出の間に細胞表面に局在化することを示す。GFP−TSG101のトランスフェクションの24時間後の活発なウイルス放出を有するPhoenixヘルパー細胞の生共焦点画像。図3Aは4つの細胞の明視野画像を示す;図3B〜Eは異なる切片における同じ視野の生共焦点蛍光画像である;白矢印はGFP−TSG101の細胞表面局在化を示す。
【図3E】図3A〜Eは、GFP−TSG101がウイルス放出の間に細胞表面に局在化することを示す。GFP−TSG101のトランスフェクションの24時間後の活発なウイルス放出を有するPhoenixヘルパー細胞の生共焦点画像。図3Aは4つの細胞の明視野画像を示す;図3B〜Eは異なる切片における同じ視野の生共焦点蛍光画像である;白矢印はGFP−TSG101の細胞表面局在化を示す。
【図4】図4は、HIV出芽の間のTSG101の細胞表面局在化を示す。H9ΔBgl細胞(CD4+ヒトTリンパ球、HIVウイルス組み込みを保有する)は欠陥エンベロープタンパク質を有するHVIビリオンを活発に産生および放出した(HIVウイルスのこの非感染性形態は他の細胞に感染せず、従って特異的にウイルス放出の研究を可能にする)。HIVを保有しない親H9細胞をコントロールとして使用した。H9ΔBgl細胞およびH9細胞の両方を2%パラホルムアルデヒドで10分間室温で固定した(この表面固定は細胞を透過性にしない)。抗TSG101抗体を両方の細胞株とともに20分間インキュベートし、そして蛍光標識2次抗体を用いて検出した。上パネル:蛍光画像;下パネル:明視野画像。
【図5】図5は、HIV出芽の間のTSG101の細胞表面局在化のFACSプロファイルを示す。H9ΔBgl細胞およびH9細胞の両方を2%パラホルムアルデヒドで10分間室温で固定した(この表面固定は細胞を透過性にしない)。抗TSG101抗体を両方の細胞株とともに20分間インキュベートし、そして蛍光標識2次抗体を用いて検出した。免疫染色した細胞をFACSを介して分析した。上パネル:H9ΔBgl細胞、表面TSG101について85%の細胞がポジティブに染色された;下パネル:H9コントロール細胞、表面TSG101について0.1%未満の細胞がポジティブに染色された。
【図6】図6は、抗TSG101抗体によるHIV−1産生の阻害を示す。レーン1および5、モックトランスフェクション;レーン2および6、pNL4−3およびコントロール抗体(ウサギIgG);レーン3および7、pNL4−3および抗TSG101抗体「B」;レーン4および8、pNL4−3および抗TSG101抗体「E」。
【図7】図7は、H9ΔBgl細胞からのHIV放出の抗体阻害を示す。HIV産生H9ΔBgl細胞を様々な濃度の抗TSG101抗体「E」とともにインキュベートし、48時間後に、ウイルス上清を採集し、そしてHIV p24 ELISAキットによってアッセイした。3つの独立した実験(各々3連)の平均を示した。ウイルス放出の有意な抗体阻害(*P<0.05)が80μg/mlで観察された。
【図8】図8は、HIV感染性の抗体阻害を示す。HIV産生Jurkat細胞(野生型HIV−1に感染)を40μg/mlの抗TSG101抗体「E」とともにインキュベートした。
【図9A】図9A〜Bは、培養上清中へのエボラGPおよびVP40の放出を示す。図9Aは、示すプラスミドで293T細胞をトランスフェクトし、上清から浮遊物を澄明化し、そして粒子物質を超遠心分離によって20%スクロースを通してペレット化したことを示す。イムノブロッティング(IB)によって個々のタンパク質を細胞溶解物中および上清からの粒子物質中に検出した。図9Bは、エボラVP40単独またはGP+VP40でトランスフェクトした細胞からの上清を抗GP mAbを用いて免疫沈降し、そしてイムノブロッティングによって分析したことを示す。下パネルは全細胞溶解物におけるVPの発現を示す。IgH:免疫沈降のために使用した抗体からの免疫グロブリン重鎖。
【図9B】図9A〜Bは、培養上清中へのエボラGPおよびVP40の放出を示す。図9Aは、示すプラスミドで293T細胞をトランスフェクトし、上清から浮遊物を澄明化し、そして粒子物質を超遠心分離によって20%スクロースを通してペレット化したことを示す。イムノブロッティング(IB)によって個々のタンパク質を細胞溶解物中および上清からの粒子物質中に検出した。図9Bは、エボラVP40単独またはGP+VP40でトランスフェクトした細胞からの上清を抗GP mAbを用いて免疫沈降し、そしてイムノブロッティングによって分析したことを示す。下パネルは全細胞溶解物におけるVPの発現を示す。IgH:免疫沈降のために使用した抗体からの免疫グロブリン重鎖。
【図10A】図10A〜Bは、EBOV GPおよびVP40によって生成されるウイルス様粒子の電子顕微鏡分析を示す。エボラGP+VP40でトランスフェクトした293T細胞の上清の超遠心分離によって得られた粒子を超微細構造を明らかにするために酢酸ウラニルでネガティブに染色するか(図10A)、または抗Ebo−GP mAb、続いて免疫金ウサギ抗マウスAbで染色し(図10B)、そして電子顕微鏡観察によって分析した。
【図10B】図10A〜Bは、EBOV GPおよびVP40によって生成されるウイルス様粒子の電子顕微鏡分析を示す。エボラGP+VP40でトランスフェクトした293T細胞の上清の超遠心分離によって得られた粒子を超微細構造を明らかにするために酢酸ウラニルでネガティブに染色するか(図10A)、または抗Ebo−GP mAb、続いて免疫金ウサギ抗マウスAbで染色し(図10B)、そして電子顕微鏡観察によって分析した。
【図11】図11は、293T細胞におけるVP40およびTSG101の会合を示す。細胞を、VP40とともにMycタグ化TSG101全長(FL)または示す切断型でトランスフェクトした。48時間後に、細胞を溶解し、そして抗Mycを用いる免疫沈降に供した。
【図12】図12は、エボラVP40とTSG101 UEVドメインとの間の会合のファーウエスタン分析を示す。
【図13】図13は、TSG101とのエボラVP40の相互作用のSPR分析を示す。
【図14A】図14A〜Bは、エボラVLPおよび不活化エボラウイルスとのTSG101の会合を示す。図14において、示すプラスミドで293細胞をトランスフェクトし、上清を抗GP mAbを用いて免疫沈降し、そして右に示す抗体を用いるイムノブロッティングによって分析した。下の3つのパネルは全細胞溶解物におけるトランスフェクトしたタンパク質の発現を示す。図14Bにおいて、5μgの不活化エボラウイルス(iEBOV)をSDS−PAGEおよびウサギ抗TSG101抗体を用いるウエスタンブロット分析に供した。分子量マーカーおよびTSG101の位置を示す。
【図14B】図14A〜Bは、エボラVLPおよび不活化エボラウイルスとのTSG101の会合を示す。図14において、示すプラスミドで293細胞をトランスフェクトし、上清を抗GP mAbを用いて免疫沈降し、そして右に示す抗体を用いるイムノブロッティングによって分析した。下の3つのパネルは全細胞溶解物におけるトランスフェクトしたタンパク質の発現を示す。図14Bにおいて、5μgの不活化エボラウイルス(iEBOV)をSDS−PAGEおよびウサギ抗TSG101抗体を用いるウエスタンブロット分析に供した。分子量マーカーおよびTSG101の位置を示す。
【図15】図15は、抗TSG101抗体によるHeLa細胞におけるエボラウイルス放出の阻害の結果を示す。
【図16】図16は、腹水からの精製IgGの形態のモノクローナル抗体プールPE−8の抗HIV活性を示すグラフである。
【図17】図17は、ハイブリドーマ上清の形態のモノクローナル抗体プールPE−8の代表的なサブクローンの抗HIV活性を示すグラフである。
【図18】図18は、腹水からの精製IgGの形態のモノクローナル抗体プールPE−8のサブクローンの1つの抗HIV活性を示すグラフである。
【図19】図19は、TSG101ドミナントネガティブ変異体による薬剤耐性HIV株の阻害を示すグラフである。
【図20】図20は、モノクローナル抗体プールPE−8による薬剤耐性HIV株pL−10Rの阻害を示すグラフである。
【図21】図21は、モノクローナル抗体プールPE−8による薬剤耐性HIV株p1617−1の阻害を示すグラフである。
【図22A】図22Aおよび22Bは、それぞれ感染後3日目および7日目の末梢血単核細胞におけるHIV産生の阻害を示すグラフである。
【図22B】図22Aおよび22Bは、それぞれ感染後3日目および7日目の末梢血単核細胞におけるHIV産生の阻害を示すグラフである。
【図23】図23は、クローンD1重鎖の可変領域とマウスIgG重鎖の可変領域との間のアラインメントである。
【図24】図24は、クローンD1軽鎖の可変領域とマウスIgG軽鎖の可変領域との間のアラインメントである。
【図25】図25は、クローン3G1重鎖の可変領域とマウスIgG重鎖の可変領域との間のアラインメントである。
【図26】図26は、クローン3G1軽鎖の可変領域とマウスIgG軽鎖の可変領域との間のアラインメントである。
【図27】図27は、抗TSG101 mabがEBOVチャレンジに対してマウスを保護することを示すグラフである。
【図28】図28は、当該分野における他の研究者による研究によってTSG101の独立したまたは関与するいくつかの側面として同定されたウイルスの部分的列挙である。
【図29】図29は、本発明によるヒト抗TSG101抗体の調製の模式図である。
【図30】図30は、免疫蛍光によって検出される感染細胞へのファージ候補の結合をグラフで反映する。
【図31】図31は、様々なウイルスに感染した様々な細胞型への、同じTSG101抗体による結合をグラフで反映する。
【図32】図32は、染色による、RSV感染細胞へのTSG101抗体の結合、およびコントロールへの結合の非存在を実証する。
【図33】図33は、ADCCを介して感染細胞を死滅させる本発明のTSG101抗体の能力を、棒グラフ形式で反映する。
【図34】図34は、ウイルス感染細胞を死滅させ、それによって生得的宿主防御機構とは独立してウイルス感染を直接的に阻害する本発明のTSG101抗体の能力を、棒グラフ形式で反映する。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明は、TSG101タンパク質に結合して、ウイルス産生を阻害するかまたは低下させる抗体を使用する方法を提供する。本発明はまた、ウイルス感染を処置するためにTSG101抗体を使用する方法を提供する。本発明はまた、感染細胞の表面上のTSG101を標的化することによって(例えば、そのような感染細胞に治療剤および/または診断剤を送達することによって)ウイルス感染を処置するための方法および組成物を提供する。
【0020】
治療薬の合理的設計は、HIV病因の改善された理解を必要とする。最近の研究は、宿主タンパク質TSG101が、HIVおよびエボラウイルスのような種々のウイルスの病因における重要な役割を担うことを示している。特に、TSG101は、それによってウイルス粒子が感染細胞から逃避、または出芽するプロセスに関与しており、それゆえ抗ウイルス薬物を見出すための新規の標的を表している。感染細胞からのエンベロープRNAウイルスのアセンブリおよび放出の基礎をなすのは、ウイルスタンパク質と宿主タンパク質との間の緊密な協調である(Perez, et al., 2001, Immunity 15(5): 687-90; Freed, 2002, J. Virol. 76(10): 4679-87; Pornillos, et al., 2002, Trends Cell Biol. 12(12): 569-79)。感染の最終段階を支配するタンパク質:タンパク質およびタンパク質:膜相互作用の多くは未だ同定されていないが、細胞性TSG101タンパク質は重要な役割を担うものとして現れた(Garrus, et al., 2001, Cell 107:55-65; Carter 2002; Pornillos, et al., 2002, Trends Cell Biol. 12 (12): 569-79; Pornillos, et al., 2002, Nat. Struct. Biol. 9, 812-7)。遺伝的、生化学的および顕微鏡的分析は、TSG101が、レトロウイルス、ラブドウイルスおよびフィロウイルスファミリーのメンバーを含む複数のエンベロープRNAウイルスと相互作用することを示した。
【0021】
それらのかなりの進化上の分岐にもかかわらず、多くのエンベロープRNAウイルスは、感染の最終段階を完了するために同様のストラテジーを用いる(Martin-Serrano, et. al., 2001, Nature Medicine 7:1313-19; Freed, 2002, J. Virol. 76(10): 4679-87)。ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、エボラウイルス(EBOV)、マールブルグウイルス(MARV)およびその他に特に重要なのは、ウイルス粒子のアセンブリおよび出芽を駆動するために細胞経路を特有に充当する配列モチーフである、後期またはLドメインである。Lドメイン活性を有する以下の3つの配列モチーフが特徴付けされている:PPxY、YxxLおよびPTAP(ここで、「x」は任意のアミノ酸を示す)。HIV−1出芽は、p6Gagタンパク質のアミノ酸末端に見出されるPTAPモチーフを必要とする。VSVによって代表されるラブドウイルスは、マトリックス(M)タンパク質内のPPxYモチーフを利用する。複数のウイルスファミリーのLドメインは、エンドソーム膜ソーティングに重要な細胞タンパク質であるTSG101をリクルートする(VerPlank, et al., 2001, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98:7724-7729; Pornillos, et al., 2002, Nat. Struct. Biol. 9, 812-7)。哺乳動物細胞におけるランダムノックアウトスクリーンによって最初に同定されたTSG101は、膜輸送、細胞周期制御、微小管アセンブリおよびタンパク質分解に関与する43KDaの多機能タンパク質である(Li, et al., 1996, Cell 85, 319-29; Bishop, et al., 2001, J. Biol. Chem. 276: 11735-42; Katzmann, et al., 2001, Cell 106, 145-55; Li, et al., 2001, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98, 1619-24)。TSG101のC末端は、コイルドコイルドメインおよびその細胞レベルを自己調節するドメインを有し;一方、TSG101アミノ末端(これは、WWおよびSH3ドメインと構造的および機能的に類似する結合ポケットを介して複数のウイルスLドメインと相互作用する)は、ユビキチン結合(UBC)E2酵素に対する有意な相同性を有する(Pornillos, et al., 2002, Nat. Struct. Biol. 9, 812-7)。TSG101のUBC様ドメインは、タンパク質代謝回転およびソーティングの調節において中心的な76アミノ酸タンパク質であるユビキチンに強く結合するが、これは標的タンパク質のユビキチン化に関与する触媒システイン残基を欠いている(Hicke, 2001, Cell 106, 527-30)。
【0022】
真核細胞において、TSG101は、Vsp28およびVsp37も含む約350kDaの細胞質複合体であるESCRTI(輸送に必要とされるエンドソームソーティング複合体)の構成要素である(Katzmann, et al., 2001, Cell 106, 145-55; Bishop, et al., 2002, J. Cell Biol. 157, 91-101)。これら3つのタンパク質の間の相互作用、および膜輸送におけるそのそれぞれの役割は現在研究中である。TSG101の酵母ホモログであるVsp23は、タンパク質ソーティング欠陥のその機能的相補によって同定された(Babst, et al., 2000, Traffic 1, 248-58)。TSG101レベルの低下した線維芽細胞および酵母Vsp23ヌル20変異体の両方は、エンドソーム/MVB経路における欠陥を示す。例えば、リソソーム分解のためにMVBシステムに通常は入る受容体は、代わりに表面にリサイクルされ、細胞シグナリングにおける深刻な妨害を導く。その最近の実験的分析に基づいて、Katzmann, et al.は、TSG101 Nps23が初期エンドソームの表面のユビキチン化タンパク質に結合し、そしてMVB小胞中へのその侵入を促進することを示唆した(Katzmann, et al., 2001, Cell 106, 145-55)。
【0023】
TSG101に加えて、WWドメインを有する細胞タンパク質が、エンベロープRNAウイルスのLドメイン配列モチーフと相互作用することが示されている(Harty, et al., 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97, 13871-6; Kikonyogo, et al., 2001, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98, 11199-204)。例えば、ファーウエスタン結合アッセイは、EBOVのVP40 Lドメインとの、哺乳動物ユビキチンリガーゼ、Nedd4、およびその酵母ホモログRsp5のWWドメインとの特異的相互作用を実証した(Harty, et al., 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97, 13871-6; Kikonyogo, et al., 2001, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98, 11199-204)。実際、データは今までのところウイルス出芽におけるユビキチンについての重要な役割を示している(Patnaik, et al., 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97, 13069-74; Carter, 2002, Trends Microbiol. 10, 203-5; Myers, et al., 2002, J. Virol. 76, 11226-35)。Nedd4とTSG101との間には構成的相互作用も存在し得る。HIV−1が、エンドソーム/MVB経路とは全く無関係な方法で、感染細胞から逃避するために、Nedd4およびTSG101を利用し得ることが示唆されている。それにもかかわらず、TSG101は、ウイルス放出を駆動するためにウイルスによって充当される鍵となる宿主因子として広くみなされている。提唱されるTSG101/MVBの関連は、部分的には、MVB形成の生物物理学的プロセスに基づいており、これは細胞質から管腔に向けてのエンドソーム脂質二重層の陥入を含むことが知られている(Patnaik, et al., 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97, 13069-74; Jasenosky, et al., 2001, J. Virol. 75, 5205-14)。エンベロープRNAウイルスは同様な形態的パラメーターに直面する:膜の内側リーフレット上でのウイルスアセンブリの後に、二重層は、再び細胞質から、細胞外環境に向けて外転させなければならない。そうでなければ熱力学的に安定な二重層を分割するいかなる触媒能力もなしで、ウイルスは補助のためにエンドソーム膜因子を見かけ上リクルートする。TSG101:Lドメイン相互作用は、従って、膜分裂および出芽を駆動するエンドソーム機構と新生ビリオンとの間の重要な関連を提供する。上記で考察するように、ESCRT−1の構成物であるTSG101は、MVB経路中の包含のためにユビキチン化タンパク質をソートする。しかし、このソーティングは、HIVおよび関連するエンベロープRNAウイルスに感染した細胞において破壊され得る。すなわち、ユビキチン化タンパク質をMVB経路中に向けるのではなく、TSG101およびそのエンドソーム対応物は形質膜およびその会合するウイルス粒子を外転させるように指図し、形質膜からつまみ出されるエンベロープ化小胞を形成し得る。
【0024】
ビリオンのアセンブリおよび放出を駆動する分子的決定因子はなお活発な研究の領域であるが、いくつかの一般的な結論が現れている。まず、ビリオン成熟の間のTS101の形質膜へのリクルートが絶対的に必要とされる。中心的なTSG101の役割を支持するデータは以下を認めさせる:(i)TSG101 UBCドメインの過剰発現はHIV−1 Gag発現細胞におけるVLP形成をトランスドミナントに破壊する(Demirov, et al., 2002, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99, 955-960);(ii)RNA干渉を介するTSG101発現の除去はHIV−1出芽を損なう(Garrus, et al., 2001 , Cell 107, 55-65)および(iii)これらの場合の両方において、電子顕微鏡分析は、Lドメイン欠陥ウイルスを発現する細胞において見出されるものに構造的に類似する、膜柄(membranous stalk)を介して形質膜に繋ぎ留められたウイルス粒子を実証した。Martin-Serrano, et al.によって示されるように、フィロウイルスVP40またはHIV−1 p6GagとのTSG101の結合を排除するLドメイン点変異は、ヒト細胞からのウイルス粒子放出を顕著に低下させ、これはTSG101が脂質二重層においてウイルスタンパク質と共存できないことと一致する効果である(Martin-Serrano, et. al., 2001, Nature Medicine 7, 1313-19)。関連する実験は、EBOV Lドメインが、VLP放出に対する認識可能な効果なしに、p6Gag Lドメインの代わりをできることを実証し、このことはエンベロープRNAウイルス出芽機構の保存された性質を強調する。重要なことに、一旦TSG101がHIV−1 Gagとの融合に指向されると、HIV−1 Lドメインは不要である。それゆえ、Lドメインの主な責任は形質膜にTSG101をリクルートすることである。TSG101とウイルスLドメインとの間のこの相互作用は、HIV、EBOVおよびMARV感染の予防および処置のための新規の標的を表す(Luban, 2001, Nat. Med. 7, 1278-80; Senior, 2001, Drug Discov. Today 6, 1184-1186)。
【0025】
本発明者らは、ウイルス感染を阻害するかまたは低下させるために抗TSG101抗体を使用できることを見出した。
【0026】
抗TSG101抗体
本発明は、ウイルス感染を阻害するかまたは低下させるためのTSG101タンパク質に特異的に結合する結合部位を含む抗体の使用を包含する。それゆえ、そのような抗TSG101抗体は、広スペクトル抗ウイルス剤として使用され得る。本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子を指す。1つの実施態様において、抗体はTSG101タンパク質のC末端領域に結合する。好ましい実施態様において、抗体はアミノ酸領域QLRALMQKARKTAGLSDLY(配列番号3)中に含まれるエピトープに結合する。別の好ましい実施態様において、抗体は配列番号19、22、25または28に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含むモノクローナル抗体である。より好ましい実施態様において、モノクローナル抗体は抗体D1および3G1である。別の好ましい実施態様において、抗体は配列番号30〜41からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むヒト化抗体である。より好ましい実施態様において、ヒト化抗体は配列番号31〜35に記載のアミノ酸配列または配列番号36〜41に記載のアミノ酸配列のいずれかを含む。
【0027】
別の実施態様において、抗体はTSG101タンパク質のN末端領域に結合する。好ましい実施態様において、抗体はアミノ酸領域VRETVNVITLYKDLKPVL(配列番号2)中に含まれるエピトープに結合する。
【0028】
本明細書において使用する「エピトープ」は、抗原決定基、すなわち宿主において免疫応答を誘発するかまたは抗体によって結合される分子の領域を指す。この領域は、その必要はないが、連続したアミノ酸を含み得る。用語エピトープは当該分野において「抗原決定基」としても知られている。エピトープは、宿主の免疫系に特有な空間的立体構造で3個ほど少しのアミノ酸を含み得る。一般に、エピトープは少なくとも5個のそのようなアミノ酸からなり、より通常は少なくとも8〜10個のそのようなアミノ酸からなる。そのようなアミノ酸の空間的立体構造を決定するための方法は当該分野において公知である。
【0029】
本発明はまた、TSG101タンパク質に特異的に結合する結合部位を含む抗体フラグメントの使用を想定する。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性なフラグメントの例は、ペプシンまたはパパインのような酵素で抗体を処理することによって生成させることができるF(ab)およびF(ab’)2フラグメントを含む。抗体の免疫学的に活性なフラグメントを生成および発現させる方法の例は米国特許第5,648,237号(その全体を本明細書に参照により組み入れる)中に見出され得る。
【0030】
免疫グロブリン分子は、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域を含む遺伝子によってコードされる。軽鎖はκまたはλのいずれかとして分類される。軽鎖は、軽鎖可変ドメイン(V)および軽鎖定常ドメイン(C)を含む。重鎖はγ、μ、α、δ、またはεとして分類され、これは次にそれぞれ免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを規定する。重鎖は重鎖可変ドメイン(V)、重鎖定常ドメイン1(CH1)、ヒンジドメイン、重鎖定常ドメイン2(CH2)、および重鎖定常ドメイン3(CH3)を含む。IgG重鎖はその配列多様性に基づいてさらに細分類され、そしてサブクラスはIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4と命名される。
【0031】
抗体を軽鎖ドメインおよび重鎖ドメインの2つの対にさらに分解することができる。対のVおよびVドメインは各々、抗体−抗原認識ドメインを構成する、一連の7個のサブドメイン:フレームワーク領域1(FR1)、相補性決定領域1(CDR1)、フレームワーク領域2(FR2)、相補性決定領域2(CDR2)、フレームワーク領域3(FR3)、相補性決定領域3(CDR3)、フレームワーク領域4(FR4)を含む。
【0032】
キメラ抗体は、適切な抗原特異性のモノクローナル抗体からの遺伝子を、適切な生物活性の第2のヒト抗体からの遺伝子と一緒にスプライスすることによって作製され得る。より特定すると、キメラ抗体は、抗体の可変領域をコードする遺伝子を第2の抗体分子からの定常領域遺伝子と一緒にスプライスすることによって作製され得る。この方法は、相補性決定領域がマウスであり、そしてフレームワーク領域がヒトであり、それにより抗体で処置されるヒト患者における免疫応答の可能性を減少させる、ヒト化モノクローナル抗体の生成において使用される(米国特許第4,816,567号、同第4,816,397号、同第5,693,762号;同第5,585,089号;同第5,565,332号および同第5,821,337号(その全体を本明細書に参照により組み入れる))。
【0033】
本発明における使用のために適切な抗体は天然供給源から得られ得るか、またはハイブリドーマ、組換えもしくは化学合成方法(遺伝子工学技術による定常領域機能の改変を含む)によって産生され得る(米国特許第5,624,821号)。本発明の抗体は任意のアイソタイプのものであり得るが、好ましくはヒトIgG1である。
【0034】
抗体は、例えばインタクトな免疫グロブリンとして存在するか、またはパパインもしくはペプシンのような種々のペプチダーゼでの消化によって産生されるいくつかの十分に特徴付けられたフラグメントに切断され得る。ペプシンはヒンジ領域中のジスルフィド結合の下で抗体を消化して、ジスルフィド結合によってVH−CH1に連結された軽鎖から構成されるFabのダイマーである抗体のF(ab’)2フラグメントを産生する。F(ab)’2はヒンジ領域中のジスルフィド結合を切断するように穏和な条件下で還元され得、それによりF(ab)’2ダイマーはFab’モノマーに変換される。Fab’モノマーは本質的にヒンジ領域の一部を有するFabである。エピトープ、抗体および抗体フラグメントの詳細な説明についてはPaul, ed., 1993, Fundamental Immunology, Third Edition (New York: Raven Press)を参照のこと。当業者は、そのようなFab’フラグメントが化学的にかまたは組換えDNA技術を使用してかのいずれかで新規に合成され得ることを認識する。従って、本明細書において使用する用語抗体フラグメントは、全体の抗体の修飾によって産生される抗体フラグメントまたは新規に合成されたものを含む。
【0035】
本明細書において使用する抗体はまた単鎖抗体(scFv)であり得、これは重鎖の可変領域にポリペプチドリンカーを介して融合された軽鎖の可変領域からなる融合ポリペプチドを一般に含む。
【0036】
本発明はまた、ウイルス感染を阻害するかまたは低下させるための抗TSG101抗体のポリクローナル集団の使用を包含する。本明細書において使用する本発明の抗TSG101抗体のポリクローナル集団は、各々が異なる結合特異性を有する複数の異なる抗TSG101抗体を含む抗TSG101抗体の集団を指す。1つの実施態様において、抗TSG101抗体の集団は、TSG101タンパク質のC末端領域に結合する抗体を含む。好ましい実施態様において、抗TSG101抗体の集団は、アミノ酸領域QLRALMQKARKTAGLSDLY(配列番号3)中に含まれる1つ以上のエピトープに結合する抗体を含む。別の実施態様において、抗TSG101抗体の集団は、TSG101タンパク質のN末端領域に結合する抗体を含む。特定の実施態様において、抗TSG101抗体の集団は、アミノ酸領域VRETVNVITLYKDLKPVL(配列番号2)中に含まれる1つ以上のエピトープに結合する抗体を含む。
【0037】
好ましくは、ポリクローナル集団の複数の抗TSG101抗体は、TSG101タンパク質の異なるエピトープに対する特異性を含む。好ましい実施態様において、ポリクローナル集団中の抗TSG101抗体の少なくとも90%、75%、50%、20%、10%、5%、または1%が所望のエピトープを標的化する。他の好ましい実施態様において、ポリクローナル集団中の任意の単一の抗TSG101抗体の割合は、集団の90%、50%、または10%を越えない。ポリクローナル集団は、異なる特異性を有する少なくとも2個の異なる抗TSG101抗体を含む。より好ましくは、ポリクローナル集団は、少なくとも10個の異なる抗TSG101抗体を含む。より好ましくは、ポリクローナル集団は、異なる特異性を有する少なくとも100個の異なる抗TSG101抗体を含む。
【0038】
抗TSG101抗体の産生
TSG101タンパク質またはそのフラグメントを、TSG101タンパク質に結合する抗体を惹起するために使用することができる。そのような抗体は、限定するものではないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単鎖、Fabフラグメント、およびFab発現ライブラリーを含む。好ましい実施態様において、抗C末端TSG101抗体はTSG101タンパク質の適切なC末端フラグメントを使用して惹起される。そのような抗体はウイルス産生の阻害において有用である。
【0039】
モノクローナル抗TSG101抗体の産生
免疫原としてのTSG101タンパク質またはそのフラグメントで適切な対象を免疫化することによって抗体を調製することができる。免疫化された対象における抗体力価を、固定化されたポリペプチドを使用する酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)のような標準的な技術によって経時的にモニターすることができる。所望であれば、抗体分子を哺乳動物から(例えば血液から)単離し、そしてプロテインAクロマトグラフィーのような周知の技術によってさらに精製して、IgG画分を得ることができる。1つの実施態様において、ポリクローナル抗N末端TSG101抗体(抗TSG101抗体「C」ともいう)をヒトTSG101タンパク質のN末端フラグメント:VRETVNVITLYKDLKPVL(配列番号2)を使用して惹起する。別の実施態様において、ポリクローナル抗C末端TSG101抗体(抗TSG101抗体「E」ともいう)をヒトTSG101タンパク質のC末端フラグメント:QLRALMQKARKTAGLSDLY(配列番号3)を使用して惹起する。さらに別の実施態様において、モノクローナル抗C末端TSG101抗体(例えばプールPE−8、mab D1、およびmab 3G1)をヒトTSG101タンパク質のC末端フラグメント(配列番号3)を使用して惹起する。
【0040】
免疫化後の適切な時点で、例えば特異的抗体力価が最高のときに、抗体産生細胞を対象から得、そしてKohler and Milstein(1975, Nature 256:495-497)によって最初に記載されたハイブリドーマ技術、Kozbor, et al.(1983, Immunol. Today 4:72)によるヒトB細胞ハイブリドーマ技術、Cole, et al.(1985, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)によるEBVハイブリドーマ技術、またはトリオーマ(trioma)技術のような標準的な技術によってモノクローナル抗体を調製するために使用することができる。ハイブリドーマを産生するための技術は周知である(Current Protocols in Immunology, 1994, John Wiley & Sons, Inc., New York, NY参照)。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、例えば標準的なELISAアッセイを使用して、目的のポリペプチドに結合する抗体についてハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることによって検出される。
【0041】
モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体の集団から得られる。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、微量に存在し得る可能な天然に生じる変異を除いて同一である。従って、修飾語「モノクローナル」は、抗体の特徴が別個の抗体の混合物ではないことを示す。例えば、モノクローナル抗体はKohler, et al., 1975, Nature, 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ方法を使用して作製され得るか、または組換えDNA方法によって作製され得る(米国特許第4,816,567号)。本明細書において使用する用語「モノクローナル抗体」はまた、抗体が免疫グロブリンであることを示す。
【0042】
モノクローナル抗体を生成するハイブリドーマ方法において、マウスまたはその他の適切な宿主動物(例えばハムスター)を本明細書において上記するように免疫化して、免疫化のために使用されたタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するかまたは産生することができるリンパ球を誘起する(例えば米国特許第5,914,112号(その全体を本明細書に参照により組み入れる)参照)。
【0043】
あるいは、リンパ球をインビトロで免疫化し得る。次いで、ポリエチレングリコールのような適切な融合剤を使用してリンパ球をミエローマ細胞と融合して、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59-103 (Academic Press, 1986))。このようにして調製したハイブリドーマ細胞を、好ましくは、非融合親ミエローマ細胞の増殖または生存を阻害する1つ以上の物質を含む適切な培養培地中に播種しそして増殖させる。例えば、親ミエローマ細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠いている場合、ハイブリドーマのための培養培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含み(HAT培地)、これらの物質はHGPRT欠損細胞の増殖を防止する。
【0044】
好ましいメラノーマ細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの産生を支持し、そしてHAT培地のような培地に感受性のものである。これらの中で、好ましいミエローマ細胞株は、Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, Calif USAから入手可能なMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍、ならびにAmerican Type Culture Collection, Rockville, Md. USAから入手可能なSP−2細胞に由来するもののようなマウスミエローマ株である。
【0045】
ヒトミエローマおよびマウス−ヒトへテロミエローマ細胞株もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために記載されている(Kozbor, 1984, J. Immunol., 133:3001; Brodeur, et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。その中でハイブリドーマ細胞が増殖している培養培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性を、免疫沈降によって、またはラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)のようなインビトロ結合アッセイによって決定する。モノクローナル抗体の結合親和性を、例えばMunson, et al., 1980, Anal. Biochem., 107, 220のスキャッチャード分析によって決定することができる。
【0046】
所望の特異性、親和性、および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を同定した後、クローンを限界希釈手順によってサブクローニングし、そして標準的な方法によって増殖させ得る(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59-103, Academic Press, 1986)。この目的のために適切な培養培地は、例えば、D−MEMまたはRPMI−1640培地を含む。さらに、ハイブリドーマ細胞をインビボで腹水腫瘍として動物中で増殖させ得る。サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体を、例えばプロテインA−Sepharose、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティクロマトグラフィのような従来の免疫グロブリン精製手順によって培養培地、腹水液、または血清から適切に分離する。
【0047】
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを調製する代わりに、TSG101タンパク質またはそのフラグメントに対するモノクローナル抗体を、TSG101タンパク質またはフラグメントを用いて組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば抗体ファージディスプレイライブラリー)をスクリーニングすることによって同定および単離することができる。ファージディスプレイライブラリーを生成およびスクリーニングするためのキットは市販されている(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System, Catalog No. 27-9400-01;およびStratagene antigen SurfZAP(商標)Phage Display Kit, Catalog No. 240612)。さらに、抗体ディスプレイライブラリーの生成およびスクリーニングにおける使用のために特に使いやすい方法および試薬の例は、例えば以下に見出すことができる:米国特許第5,223,409号および同第5,514,548号;PCT公開WO92/18619;PCT公開WO91/17271;PCT公開WO92/20791;PCT公開WO92/15679;PCT公開WO93/01288;PCT公開WO92/01047;PCT公開WO92/09690;PCT公開WO90/02809;Fuchs, et al., 1991, Bio/Technology 9:1370-1372; Hay, et al., 1992, Hum. Antibod. Hybridomas 3, 81-85;Huse, et al., 1989, Science 246, 1275-1281;Griffiths, et al., 1993, EMBO J. 12, 725-734。
【0048】
本特許出願の譲受人である、Gaithersburg, Marylandのファンクショナル・ジェネティクス・インコーポレーテッドは、ウイルス感染細胞上のTSG101を選択的に標的化する抗体のパネルを誘導した。簡潔にまとめると、ナイーブscFvライブラリーを匿名ヒトドナーから単離し、そしてこれを使用して、標準的なファージライブラリーを生成した。TSG101免疫反応性を、精製全長TSG101、またはTSG101の様々な領域を網羅するポリペプチドを固定化し、次いでインサイチュでELISAベースの形式を使用して固定化TSG101に結合するファージを単離することによって決定した。
【0049】
図29に示すように、複数回のスクリーニングの後に、得られたファージベースのscFv候補を、ウイルス感染細胞の表面上に特有に露出したTSG101に結合するその能力についてスクリーニングした。これらの研究は、感染細胞へのファージ結合の客観的分析を提供するために標識細胞のフローサイトメトリー評価を利用した。2つの異なるウイルス型(HIVおよびインフルエンザ)を、感染細胞の表面上のTSG101に結合するファージを評価するために使用した。非感染細胞はネガティブコントロールを提供した。これらのアッセイは、ウイルス感染細胞に結合する能力を示す、ファージ中にコードされる、scFvを同定した。図30。
【0050】
ウイルス感染細胞の表面を選択的に認識するscFv候補をコードするファージを改変して、scFvを全長IgG1抗体に加工した。次いで、得られた抗体を上記で示すのと同じ規準を使用してスクリーニングした。CB8ファージ由来の抗体は特定の例を提供する。
【0051】
特異性のさらなる指標として、得られた抗体またはファージ候補の全てを、TSG101の異なる領域へのその結合について評価した(上記で詳述するELISA技術を使用して)。CB8を含む候補の大部分はTSG101のC末端領域を認識し、一方、少なくとも1つの候補はUEV領域中のエピトープを認識した。
【0052】
CB8抗体はウイルス感染細胞の表面を認識することができた。例えば、CB8抗体は、インフルエンザウイルスに感染されていたヒトHep2細胞を選択的に認識した。同様に、この抗体は、様々なウイルスによって感染された細胞のその認識において広スペクトルであった。なぜなら、同じ抗体がHIVに感染されていたヒトMT4 Tリンパ細胞を認識したからである。図31。同様に、この抗体は、インフルエンザに感染したイヌMDCK細胞およびエボラウイルスに感染されていた霊長類Vero細胞を含む、ウイルスに感染されていた非ヒト細胞モデルを選択的に認識した。
【0053】
ファンクショナル・ジェネティクス・インコーポレーテッドは、それらの名称にコード化された、上記の抗体C、D1、E、3G1およびCB8の純粋ストックを維持している。これらの抗体の寄託物は、寄託物 、 、 、 および としてブダペスト条約条件下でのATCCでの維持のために2007年11月15日から調製されている。これらの寄託物の入手可能性が確認できる時まで、これらの抗体は、係属中の特許出願の主題である抗体を含む生物材料のためのブダペスト条約に記載の条件下でファンクショナル・ジェネティクス・インコーポレーテッドから入手可能である。
【0054】
さらに、適切な抗原特異性のマウス抗体分子からの遺伝子を、適切な生物活性のヒト抗体分子からの遺伝子と一緒にスプライスすることによる「キメラ抗体」の産生のために開発された技術(Morrison, et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci., 81, 6851-6855; Neuberger, et al., 1984, Nature 312, 604-608; Takeda, et al., 1985, Nature, 314, 452-454)を使用することができる。キメラ抗体は、マウスmAb由来の可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有するもののような、異なる部分が異なる動物種に由来する分子である(例えばCabilly, et al., 米国特許第4,816,567号;およびBoss, et al., 米国特許第4,816,397号(その全体を本明細書に参照により組み入れる)参照)。
【0055】
ヒト化抗体は、非ヒト種からの1つ以上の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域を有する非ヒト種からの抗体分子である(例えば米国特許第5,585,089号(その全体を本明細書に参照により組み入れる)参照)。そのようなキメラおよびヒト化モノクローナル抗体を、例えば以下に記載の方法を使用して当該分野において公知の組換えDNA技術によって産生することができる:PCT公開WO87/02671;欧州特許出願第184,187号;欧州特許出願第171,496号;欧州特許出願第173,494号;PCT公開WO86/01533;米国特許第4,816,567号および同第5,225,539号;欧州特許出願第125,023号;Better, et al., 1988, Science 240:1041-1043;Liu, et al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:3439-3443;Liu, et al., 1987, J. Immunol. 139:3521-3526;Sun, et al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:214-218;Nishimura, et al., 1987, Cane. Res. 47:999-1005;Wood, et al., 1985, Nature 314, 446-449;Shaw, et al., 1988, J. Natl. Cancer Inst. 80, 1553-1559;Morrison 1985, Science 229:1202-1207;Oi, et al., 1986, Bio/Techniques 4, 214;Jones, et al., 1986, Nature 321, 552-525; Verhoeyan, et al., 1988, Science 239, 1534;およびBeidler, et al., 1988, J. Immunol. 141, 4053-4060。
【0056】
相補性決定領域(CDR)グラフティングは抗体をヒト化する別の方法である。それは、完全な抗原特異性および結合親和性をヒトフレームワークに移すためにマウス抗体を作り変えることを含む(Winter, et al.米国特許第5,225,539号)。CDRグラフト抗体は、種々の抗原に対して首尾よく構築されている。例えば、Queen, et al., 1989 (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86, 10029)に記載のIL−2受容体に対する抗体; Riechmann, et al. (1988, Nature, 332, 323に記載の細胞表面受容体CAMPATHに対する抗体; Cole, et al. (1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 2869)におけるB型肝炎に対する抗体;およびTempest, et al. (1991, Bio-Technology 9, 267)におけるウイルス抗原−RSウイルスに対する抗体。マウスモノクローナル抗体のCDRがヒト抗体にグラフトされるCDRグラフト抗体が生成される。おそらくフレームワーク残基はCDR立体構造を維持するために必要であり、そしていくつかのフレームワーク残基は抗原結合部位の一部であると実証されているので、グラフティングの後に、大部分の抗体は、親和性を維持するためにフレームワーク領域におけるさらなるアミノ酸変化から利益を受ける。しかし、いかなる抗原性部位も導入しないようにフレームワーク領域を保存するためには、配列を確立された生殖系列配列と比較し、続いてコンピューターモデリングを行う。
【0057】
CB8のような完全ヒト抗体は、ヒト患者の治療的処置のために特に所望される。そのような抗体は、内在性免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子を発現できないが、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを使用して産生され得る。トランスジェニックマウスを通常の方法でTSG101タンパク質で免疫化する。
【0058】
TSG101タンパク質に対するモノクローナル抗体を、従来のハイブリドーマ技術を使用して得ることができる。トランスジェニックマウスによって保有されるヒト免疫グロブリントランスジーンは、B細胞分化の間に再編成し、その後クラススイッチおよび体細胞変異を経る。従って、そのような技術を使用して、治療的に有用なIgG、IgAおよびIgE抗体を産生することが可能である。ヒト抗体を産生するためのこの技術の大要については、Lonberg and Huszar (1995, Int. Rev. Immunol. 13, 65-93)を参照のこと。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのこの技術の詳細な考察およびそのような抗体を産生するためのプロトコルについては、例えば米国特許第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,569,825号;同第5,661,016号;および同第5,545,806号を参照のこと。さらに、Abgenix, Inc.(Freemont, CA、例えば米国特許第5,985,615号参照)およびMedarex, Inc.(Princeton, NJのような会社を、上記のものと同様の技術を使用してTSG101タンパク質またはそのフラグメントに対するヒト抗体を提供するために従事させ得る。
【0059】
選択されたエピトープを認識しそしてそれに結合する完全ヒト抗体を、「ガイド選択」といわれる技術を使用して生成することができる。このアプローチにおいて、選択された非ヒトモノクローナル抗体(例えばマウス抗体)を、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を案内するために使用する(Jespers, et al., 1994, Biotechnology 12, 899-903)。
【0060】
免疫原としての使用のためにアフィニティクロマトグラフィーまたは免疫沈降のような標準的な技術によって病原体のさらなる抗原を単離するために既存の抗TSG101抗体を使用することができる。さらに、TSG101タンパク質の存在量および発現のパターンを評価するために、そのような抗体を使用して、タンパク質を検出することができる(例えば細胞溶解物または細胞上清中)。抗体を検出可能な物質に結合させることによって検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例は、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、および放射性物質を含む。適切な酵素の例は西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含み;適切な補欠分子族複合体の例はストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含み;適切な蛍光物質の例はウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンを含み;発光物質の例はルミノールを含み;生物発光物質の例はルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンを含み、そして適切な放射性物質の例は125I、131I、35Sまたは3Hを含む。
【0061】
ポリクローナル抗TSG101抗体の産生
抗TSG101抗体を、限定するものではないが、マウス、ウサギ、およびウマのような適切な動物の免疫化によって産生することができる。
【0062】
適切な対象(例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたはその他の哺乳動物)を免疫化することによって抗体を調製するためにTSG101タンパク質またはそのフラグメントを含む免疫原性調製物を使用する。適切な免疫原性調製物は、例えば組換え発現されたかまたは化学合成されたTSG101ペプチドまたはポリペプチドを含み得る。調製物はさらにフロイント完全または不完全アジュバントのようなアジュバント、または同様な免疫刺激剤を含み得る。
【0063】
免疫原としての使用のために適切なTSG101タンパク質のフラグメントは、8アミノ酸、より好ましくは10アミノ酸、さらにより好ましくは15アミノ酸長であるTSG101タンパク質の部分を少なくとも含む。
【0064】
本発明はまた、免疫原としての使用のためのキメラまたは融合TSG101ポリペプチドを提供する。本明細書において使用する「キメラ」または「融合」TSG101ポリペプチドは、異種ポリペプチドに作動可能に連結されたTSG101ポリペプチドの全部または一部を含む。融合TSG101ポリペプチド内で、用語「作動可能に連結」は、TSG101ポリペプチドおよび異種ポリペプチドが互いにインフレームで融合されることを示すことが意図される。異種ポリペプチドをTSG101ポリペプチドのN末端またはC末端に融合することができる。
【0065】
1つの有用な融合TSG101ポリペプチドは、TSG101ポリペプチドがGST配列のC末端に融合されているGST融合TSG101ポリペプチドである。そのような融合TSG101ポリペプチドは、組換えTSG101ポリペプチドの精製を容易にし得る。
【0066】
別の実施態様において、融合TSG101ポリペプチドは、高親和性抗体を産生するために、TSG101ポリペプチドが分泌され、そして高均質に精製され得るように、そのN末端に異種シグナル配列を含む。例えば免疫原のネイティブなシグナル配列を除去し、そして別のタンパク質からのシグナル配列に置換することができる。例えば、バキュロウイルスエンベロープタンパク質のgp67分泌配列を異種シグナル配列として使用することができる(Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, et al., eds., John Wiley & Sons, 1992)。真核生物異種シグナル配列のその他の例は、メリチンおよびヒト胎盤アルカリホスファターゼの分泌配列を含む(Stratagene; La Jolla, California)。さらに別の例において、有用な原核生物異種シグナル配列は、phoA分泌シグナルおよびプロテインA分泌シグナルを含む(Pharmacia Biotech; Piscataway, New Jersey)。
【0067】
さらに別の実施態様において、融合TSG101ポリペプチドは、TSG101ポリペプチドの全部または一部が免疫グロブリンタンパク質ファミリーのメンバー由来の配列に融合されている免疫グロブリン融合タンパク質である。免疫グロブリン融合タンパク質を、対象においてTSG101ポリペプチドに対する抗体を産生するための免疫原として使用することができる。
【0068】
キメラおよび融合TSG101ポリペプチドを標準的な組換えDNA技術によって産生することができる。1つの実施態様において、融合遺伝子を、自動DNA合成機を含む従来の技術によって合成することができる。あるいは、その後アニールされ、そして再増幅されて、キメラ遺伝子配列を生成し得る2つの連続した遺伝子フラグメントの間に相補的オーバーハングを生じさせるアンカープライマーを使用して遺伝子フラグメントのPCR増幅を行うことができる(例えばAusubel, et al.(上記))。さらに、融合ドメイン(例えばGSTポリペプチド)を既にコードしている多くの発現ベクターが市販されている。融合ドメインがポリペプチドにインフレームで連結されるように、免疫原をコードする核酸をそのような発現ベクター中にクローニングすることができる。
【0069】
次いで、TSG101免疫原性調製物を使用して、適切な動物を免疫化する。好ましくは、動物は、ヒト抗体を分泌することができる特殊化されたトランスジェニック動物である。非限定的な例は、特定の病原体に対する抗体のポリクローナル集団を産生するために使用することができるトランスジェニックマウス系統を含む(Fishwild, et al., 1996, Nature Biotechnology 14, 845-851; Mendez, et al., 1997, Nature Genetics 15, 146-156)。本発明の1つの実施態様において、再編成されていないヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスを標的免疫原で免疫化する。免疫原性調製物に対する活発な免疫応答がマウスにおいて誘起された後、マウスの血液を採集し、そしてヒトIgG分子の精製調製物を血漿または血清から産生することができる。ヒトIgG分子の精製調製物を得るために、限定するものではないが、適切なカラムマトリックスに結合された抗ヒトIgG分子を使用するアフィニティカラムクロマトグラフィーを含む当該分野において公知の任意の方法を使用することができる。抗ヒトIgG抗体を、当該分野において公知の任意の供給源から、例えばDako CorporationおよびICNのような商業的供給源から得ることができる。産生されるIgG分子の調製物は、異なる程度の親和性で免疫原(単数または複数)に結合するIgG分子のポリクローナル集団を含む。好ましくは、調製物の実質的な画分は免疫原(単数または複数)に特異的なIgG分子である。IgG分子のポリクローナル調製物を記載するが、免疫グロブリン分子の任意の型または異なる型の任意の組み合わせを含むポリクローナル調製物もまた本発明の範囲内であると想定および意図されることが理解される。
【0070】
TSG101タンパク質に対する抗体の集団をファージディスプレイライブラリーから産生することができる。ポリクローナル抗体を、TSG101タンパク質またはそのフラグメントとの特異性の十分に大きくそして多様な集団を有するファージディスプレイライブラリーのアフィニティスクリーニングによって得ることができる。抗体ディスプレイライブラリーの生成およびスクリーニングにおける使用のために特に使いやすい方法および試薬の例を、例えば以下に見出すことができる:米国特許第5,223,409号および同第5,514,548号;PCT公開WO92/18619;PCT公開WO91/17271;PCT公開WO92/20791;PCT公開WO92/15679;PCT公開WO93/01288;PCT公開WO92/01047;PCT公開WO92/09690;PCT公開WO90/02809;Fuchs, et al., 1991, Biotechnology 9, 1370-1372;Hay, et al., 1992, Hum. Antibod. Hybridomas 3, 81-85;Huse, et al., 1989, Science 246, 1275-1281;Griffiths, et al., 1993, EMBO J. 12, 725-734。ファージディスプレイライブラリーは特異性の非常に大きな集団からの所望の抗体(単数または複数)の選択を可能にする。ファージディスプレイライブラリーのさらなる利点は、選択された抗体をコードする核酸を簡便に得ることができ、それにより発現ベクターのその後の構築が容易になることである。
【0071】
その他の好ましい実施態様において、米国特許第6,057,098号(その全体を本明細書に参照により組み入れる)に記載されるように、TSG101タンパク質またはそのフラグメントに対する抗体の集団を、個々のメンバーのクローン単離なしに、選択されたディスプレイされた抗体の全体のコレクションを使用する方法によって産生する。ポリクローナル抗体は、例えば複数のエピトープを有する抗原性分子との、特異性の十分に大きなレパートリーを有するファージディスプレイライブラリーの、好ましくは複数の抗体をディスプレイするディスプレイされたライブラリーメンバーの富化の後の、アフィニティスクリーニングによって得られる。選択されたディスプレイ抗体をコードする核酸を、適切なPCRプライマーを使用して切り出しそして増幅する。全長核酸が単離されるように、ゲル電気泳動によって核酸を精製することができる。次いで、異なるインサートを有する発現ベクターの集団が得られるように、核酸の各々を適切な発現ベクター中に挿入する。次いで、発現ベクターの集団を適切な宿主中で発現させる。
【0072】
ウイルス産生を阻害する抗TSG101抗体の同定
本発明は、ウイルス出芽を阻害するかまたは低下させるために使用できる抗TSG101抗体を同定するための方法を提供する。1つの実施態様において、本発明は、レトロウイルス感染アッセイを使用するウイルス感染に対する抗TSG101抗体の効果を決定するための方法を提供する。長末端反復配列(LTR)プロモーターから発現されるE.coli lacZ遺伝子を含むマウス白血病ウイルス(MLV)由来のベクター(pBMN−Z−INeo)を、293細胞由来のアンホトロピックマウス白血病レトロウイルスパケージング細胞株(Phoenix A、ATCC)中にトランスフェクトする。Phoenix Aヘルパー細胞によって産生されるレトロウイルスを採集し、そしてマウスN2A細胞(ATCC)に感染させるために使用する。MLVベクターのトランスフェクションの24時間後に抗TSG101抗体を293ヘルパー細胞に添加する。ウイルス産生に対するTSG101抗体の有効性を、標的細胞(N2A)に感染するウイルス上清の効率によって決定する。次いで、N2A細胞の感染を、(3−ガラクトシダーゼ活性の細胞染色によって決定する(ポジティブ細胞は青色に染色される、図2において濃い点として示される)。
【0073】
典型的には、Phoenix A細胞をポリ−D−リジンコート6ウェルプレート上にトランスフェクションの前日に播種する。次いで、4μgのpBMN−Z−I−Neoを、12μlのLipofectamine 2000(Invitrogen)の存在下で各々のウェル中にトランスフェクトする。トランスフェクションの24時間後に、培地を、トリコスタチンA(3μM)および5または10μgの適正な抗TSG101抗体を含む1ml/ウェルの新鮮な培地に交換する。24〜48時間後に、ウイルス上清を採集し、0.2μmフィルターを用いてろ過し、そして1mlのウイルス上清をポリブレン(10μg/ml)を含む新鮮な培地1mlと混合し、次いでこれを使用してN2a細胞の1つのウェルに感染させる。感染の48時間後に、N2a細胞を固定し、そして13-Gal染色キット(Invitrogen)に記載のようにX−Galで染色する。結果をデジタル画像によって示す。好ましくは、ウイルス産生を少なくとも10%、20%、50%、70%または90%低下させる抗TSG101抗体が同定される。
【0074】
下記の例示的な実験において、2つの抗TSG101抗体「C」および「E」をウイルス感染に対するその効果について試験する。ウサギIgGを非特異的抗体コントロールとして使用する。10回より多い独立した実験を行い、そして代表的な結果を図2に示す。抗体の処理なしのPhoenixヘルパー細胞(ポジティブコントロール)は効率的なレトロウイルスの産生、およびN2A標的細胞の感染を示し(左上パネル);ウサギIgGは効果を有しなかった(左中パネル)。抗TSG101抗体「C」はウイルス産生を約20〜60%低下させた(左下パネル)。抗TSG101抗体「E」はウイルス産生を約50〜70%低下させた(右上パネル)。抗C末端および抗N末端抗体の混合物は抗C末端抗体単独と同様の結果を与えた(右中パネル)。ウイルスによって感染されていないN2a細胞は最小バックグラウンド染色のみを示した(右下パネル)。
【0075】
別の実施態様において、ウイルス出芽を阻害するかまたは低下させるために使用できる抗TSG101抗体を、例えばHIVでトランスフェクトされたヒトCD4+ヒトT細胞株H9(H9ΔBglと命名)における、細胞表面TSG101へのその結合に基づいて同定する。H9ΔBgl細胞は、エンベロープ欠陥HIV構築物(HIVゲノムのBglIIフラグメントの欠失)でトランスフェクトされたヒトCD4+Tリンパ球である。安定にトランスフェクトされたH9ΔBgl細胞は、欠陥HIVエンベロープに起因して非感染性形態のHIVを産生し、従って培養物中の他のH9ΔBgl細胞に感染できない。1つの実施態様において、非トランスフェクトH9細胞をコントロールとして使用する。H9ΔBglには結合するが、非トランスフェクトH9細胞には結合しない抗TSG101抗体を、ウイルス出芽を阻害するかまたは低下させるために使用できる抗体として同定する。
【0076】
好ましい実施態様において、HIV産生細胞(例えばH9ΔBgl)およびコントロールH9細胞における細胞表面TSG101への抗TSG101抗体の結合を、蛍光標示式細胞分取器(FACS)によって同定する。1つの実施態様において、H9ΔBgl細胞およびH9細胞の両方を固定し、抗TSG101抗体とともにインキュベートし、次いで蛍光標識2次抗体で染色する。次いで、免疫染色した細胞をFACSによって分析する。
【0077】
別の実施態様において、HIV−1ウイルス産生アッセイを使用して、レトロウイルス産生に対するTSG101の阻害効果をさらに検討する。HIV−1ベクターpNL4−3を293T細胞中にトランスフェクトする。トランスフェクションの24時間後に、抗TSG101抗体および、場合により、非特異的コントロール抗体をそれぞれ細胞培養物中に添加する。さらなる24時間のインキュベーションの後、細胞溶解物を抽出し、細胞培養上清を採集し、そして、例えばスクロース勾配によって、HIV−1ビリオンを精製する。細胞溶解物および精製ビリオンの両方を、例えば抗p55および/または抗p24抗体のような抗HIV−1抗体を使用するウエスタンブロットによって分析する。HIV−1ビリオン放出の有意な阻害(例えばウエスタンブロットの濃度トレースによる40%、50%、60%、70%、または80%より多い阻害)を示す抗TSG101抗体を同定することができる。
【0078】
さらに別の実施態様において、HIV放出に対する抗TSG101抗体の効果を、H9ΔBgl細胞に基づくHIV放出アッセイを使用して評価する。H9ΔBgl細胞からのHIV放出を、細胞培養上清のHIV p24 ELISAによって直接的に測定することができる。1つの実施態様において、複数の異なる濃度の抗TSG101抗体をそれぞれH9ΔBgl細胞とともにインキュベートする。1つの実施態様において、コントロール抗体(例えば同じ濃度のウサギIgG)もまたそれぞれH9ΔBgl細胞とともにインキュベートする。抗体添加の48時間後に、培養上清をHIV p24 ELISAのために採集する。次いで、ウイルス放出の阻害についての抗TSG101抗体の効果を、抗TSG101抗体のデータを対応するコントロール抗体のデータと比較することによって決定する。
【0079】
さらに別の実施態様において、ウイルス放出後のHIV感染性に対する抗TSG101抗体の効果を決定する。1つの実施態様において、Jurkat細胞からのHIV上清を使用して、抗TSG101抗体の存在下でMAGI細胞に感染させる。ウサギIgGをコントロールとして使用することができる。HIV感染性に対する抗TSG101抗体の効果をコントロールと比較することによって決定する。
【0080】
ウイルス感染の処置のための抗TSG101抗体の使用
TSG101抗体はウイルス産生の阻害において有効である。それゆえ、本発明は、TSG101抗体(例えば抗C末端TSG101抗体)を使用する、ウイルス感染(HIV感染を含む)を処置する方法を提供する。
【0081】
ウイルス感染
本発明の抗TSG101抗体の使用によって処置または予防され得る疾患または障害は、限定するものではないが、以下によって引き起こされるものを含む:レトロウイルス、ラブドウイルス、またはフィロウイルス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、水痘、アデノウイルス、単純ヘルペスI型(HSV−I)、単純ヘルペスII型(HSV−II)、牛疫、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、RSウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス、サイトメガロウイルス、エキノウイルス(echinovirus)、アルボウイルス、ハンタウイルス、コクサッキーウイルス、おたふく風邪ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV−I)、およびヒト免疫不全ウイルスII型(HIV−II)、任意のピコルナウイルス科、エンテロウイルス、カリシウイルス科、任意のノーウォーク群のウイルス、トガウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、例えばデングウイルス、コロナウイルス、狂犬病ウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルス、パラインフルエンザウイルス、オルトミクソウイルス、ブニヤウイルス、アレナウイルス、レオウイルス、ロタウイルス、オルビウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルスI型、ヒトT細胞白血病ウイルスII型、サル免疫不全ウイルス、レンチウイルス、ポリオーマウイルス、パルボウイルス、エプスタイン・バーウイルス、ヒトヘルペスウイルス−6、オナガザルヘルペスウイルス1(Bウイルス)、およびポックスウイルス。
【0082】
本発明の抗TSG101抗体の使用によって処置または予防され得るさらなる疾患または障害は、限定するものではないが、以下によって引き起こされるものを含む:インフルエンザウイルス、ヒトRSウイルス、仮性狂犬病ウイルス、仮性狂犬病ウイルスII、ブタロタウイルス、ブタパルボウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス、ニューカッスル病ウイルスh、ブタインフルエンザウイルス、ブタインフルエンザウイルス、口蹄疫ウイルス、ブタコレラウイルス、ブタインフルエンザウイルス、アフリカブタ熱ウイルス、ウシ感染性鼻気管炎ウイルス、感染性喉頭気管炎ウイルス、ラクロスウイルス、新生仔ウシ下痢ウイルス、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス、プンタトロウイルス(punta toro virus)、マウス白血病ウイルス、マウス乳癌ウイルス、ウマインフルエンザウイルスまたはウマヘルペスウイルス、ウシRSウイルスまたはウシパラインフルエンザウイルス。
【0083】
ウイルス放出を阻害するために抗TSG101抗体を使用する方法
1つの実施態様において、本発明は、感染哺乳動物細胞からのウイルス出芽(例えばHIV−1出芽)の阻害または低下において抗TSG101抗体、好ましくは抗C末端TSG101抗体を使用する方法を提供する。本発明の方法において、1つ以上の抗TSG101抗体を感染細胞と接触させる。抗TSG101抗体は感染細胞の表面上のTSG101タンパク質に結合する。抗TSG101抗体の結合は細胞からのウイルス粒子の放出、または出芽、を阻害するかまたは低下させる。
【0084】
別の実施態様において、本発明はまた、従って、哺乳動物(例えばヒト)におけるエンベロープウイルス(例えばHIV−1)による感染を処置するために抗TSG101抗体、好ましくは抗C末端TSG101抗体を使用する方法を提供する。本発明の方法において、1つ以上の抗TSG101抗体を、ウイルスによって感染された哺乳動物(例えばヒト)に投与することができる。投与後、抗TSG101抗体は感染細胞の表面上のTSG101タンパク質に結合し、そして感染細胞からのウイルス出芽を阻害する。
【0085】
本発明のさらに別の実施態様において、抗TSG101抗体、好ましくは抗C末端TSG101抗体を、1つ以上の他の治療抗ウイルス剤と共同して使用する。そのような併用療法において、抗TSG101抗体を、治療薬の投与前に、それと同時に、またはその後に投与することができる。抗TSG101抗体および治療薬の投与の間の時間間隔を、当業者によく知られているルーチン実験によって決定することができる。
【0086】
さらに別の実施態様において、本発明は、抗TSG101抗体が結合した感染細胞の溶解を媒介できるアイソタイプに属する抗TSG101抗体、例えば抗C末端TSG101抗体を使用するウイルス感染の処置のための方法を提供する。好ましい実施態様において、抗TSG101抗体は、増殖因子受容体に結合し、そして血清補体を活性化する、および/またはエフェクター細胞(例えばマクロファージ)を活性化することによって抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介するアイソタイプに属する。別の好ましい実施態様において、アイソタイプはIgG1、IgG2a、IgG3またはIgMである。
【0087】
これに関して、抗体ベースの薬物の活性のさらなる指標として、抗体候補をウイルス感染細胞を選択的に死滅させるその能力についてスクリーニングした。このために、標的細胞を生体色素で標識した。次いで、これらの細胞をウイルスに感染させ、そしてエフェクター細胞として正常ドナー由来のNK細胞を使用するADCCアッセイに供した。これらの研究は、CB8抗体によるウイルス感染細胞の強くそして選択的な死滅を実証する。図33。感染細胞の少なくとも70%がCB8抗体の125ng/mLの抗体濃度で、そして比較的低いエフェクター:標的比(3:1)で死滅させられ得るという事実によって証明されるように、これらの抗体は非常に強力である。ウイルス感染細胞のこの顕著な選択的死滅は、複数の異なる標的細胞型(Hep2、MT4、MDCK)、複数の異なるドナー(NK細胞の)および複数の異なるウイルス(HIV、インフルエンザ)を用いて再現された。
【0088】
その他のTSG101抗体を使用して、本発明者らは、TSG101の抗体標的化が、生得的宿主防御機構(ADCCまたはCDC)とは独立してウイルス感染を直接的に阻害できることを実証した。この知見は、ウイルス後期ドメインタンパク質とのTSG101の相互作用が多くの様々なウイルスの増殖に必須であるという証拠と一致する(図34参照)。これらの結果は、上記で列挙する抗体候補の多くまたは全てが、重要な相互作用をブロックすることによってウイルス感染を直接的に阻害する能力を有し得ると予測することに本発明者らを導く。
【0089】
抗TSG101抗体の投与量を、当業者によく知られたルーチン実験によって決定することができる。抗TSG101抗体の投与の効果または利益を、当該分野において公知の任意の方法によって評価することができる。化合物を、単独で、または上記で示す任意のウイルスのための治療の現在の標準との組み合わせで使用することができる。一般に、その他の投与様式は意図されるが、IVもしくはIM注射、または徐放性IV投与が好ましい経路である。投与量は哺乳動物毎およびウイルス毎に変動する。当業者は、本明細書における標的および化合物の同定が与えられると、特定の哺乳動物、特定のウイルスおよび特定の投与様式のための特定の投与量を同定するための、簡便なプロトコルを十分に備えている。
【0090】
治療剤および/または診断剤を送達するために抗TSG101抗体を使用する方法
本発明は、ウイルス感染細胞に治療剤および/または診断剤を送達するために抗TSG101抗体を使用するための方法および組成物を提供する。
【0091】
感染細胞を、抗TSG101抗体−薬物コンジュゲートを使用して標的化し、そして死滅させることができる。例えば、抗TSG101抗体を、細胞毒(例えば細胞分裂抑制性または殺細胞性薬剤)、または放射性金属イオンのような治療部分にコンジュゲートし得る。抗体−薬物コンジュゲートを当該分野において公知の方法によって調製することができる(例えばImmunoconjugates, Vogel, ed. 1987; Targeted Drugs, Goldberg, ed. 1983; Antibody Mediated Delivery Systems, Rodwell, ed. 1988参照)。限定するものではないが、パクリタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンならびにそのアナログまたはホモログのような治療薬を、本発明の抗TSG101抗体にコンジュゲートすることができる。本発明の抗TSG101抗体にコンジュゲートすることができるその他の治療剤は、限定するものではないが、代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン;アルキル化剤、例えばメクロレタミン、チオエパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびcis−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)、シスプラチン;アントラサイクリン、例えばダウノルビシン(ダウノマイシン)およびドキソルビシン;抗生物質、例えばダクチノマイシン(アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC);および抗有糸分裂剤、例えばビンクリスチンおよびビンブラスチンを含む。本発明の抗TSG101抗体にコンジュゲートすることができる治療剤は、所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドであってもよい。そのようなタンパク質は、例えばアブリン、リシンA、緑膿菌外毒素、またはジフテリア毒素のような毒素を含み得る。
【0092】
薬物分子をリンカーを介して抗TSG101抗体に連結することができる。任意の適切なリンカーを、そのようなコンジュゲートの調製のために使用することができる。いくつかの実施態様において、リンカーは、薬物分子が、標的部位において非修飾形態でコンジュゲートから遊離することを可能にするリンカーであり得る。
【0093】
例えば所定の処置レジメンの効力を決定するために、例えば臨床試験手順の一部としてウイルス感染の進行をモニターするために、抗体を診断的に使用することもできる。抗体を検出可能な物質に結合させることによって検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例は、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、種々の陽電子射出断層撮影を使用する陽電子射出金属、および非放射性常磁性金属イオンを含む。本発明による診断薬としての使用のために抗体にコンジュゲートされ得る金属イオンについては一般に米国特許第4,741,900号を参照のこと。適切な酵素の例は西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含み;適切な補欠分子族複合体の例はストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含み;適切な蛍光物質の例は蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンを含み;発光物質の例はルミノールを含み;生物発光物質の例はルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンを含み、そして適切な放射性物質の例は125I、131I、111In、177Lu、90Yまたは99Tcを含む。
【0094】
治療部分を抗体にコンジュゲートするための技術は周知である。例えばArnon, et al., "Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy", in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld, et al. (eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985);Hellstrom, et al., "Antibodies For Drug Delivery", in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson, et al. (eds.), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987);Thorpe, "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review", in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, Pinchera, et al. (eds.), pp. 475-506 (1985);"Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy", in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin, et al. (eds.), pp. 303-16 (Academic Press 1985)、およびThorpe, et al., "The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates", Immunol. Rev., 62,119-58 (1982)(その各々を本明細書に参照により組み入れる)を参照のこと。
【0095】
あるいは、Segal、米国特許第4,676,980号(本明細書に参照により組み入れる)によって記載されるように抗体を第2の抗体にコンジュゲートして、抗体ヘテロコンジュゲートを形成することができる。
【0096】
ウイルス感染細胞の検出
TSG101タンパク質(例えばTSG101タンパク質のN末端領域またはC末端領域)に対する抗体または標識抗体を、例えば細胞表面上のTSG101タンパク質の存在を検出することによって、ウイルス感染の診断薬および予後診断薬(prognostic)としても使用し得る。そのような診断方法を、TSG101遺伝子発現のレベルの異常、またはTSG101タンパク質の構造および/または時間、組織、細胞、もしくは細胞内局在化の異常を検出するためにも使用し得る。
【0097】
分析しようとする組織または細胞型は、ウイルスによって感染されていることが知られているかまたはその疑いがあるものを含み得る。本明細書において用いられるタンパク質単離方法は、例えば、Harlow and Lane(Harlow, E. and Lane, D., 1988, "Antibodies: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)(その全体を本明細書に参照により組み入れる)に記載されるようなものであり得る。単離される細胞は細胞培養物または患者に由来し得る。培養物から取られた細胞の分析は、細胞ベースの遺伝子治療技術の一部として使用しようとする細胞の評価において、あるいはTSG101遺伝子の発現に対する化合物の効果を試験するために、必要な工程であり得る。
【0098】
TSG101フラグメントまたはその保存変異体もしくはペプチドフラグメントの検出のための好ましい診断方法は、例えば、TSG101フラグメントまたは保存変異体もしくはペプチドフラグメントが抗TSG101フラグメント特異的抗体とのその相互作用によって検出されるイムノアッセイを含み得る。
【0099】
例えば、本発明において有用な上記のもののような抗体、または抗体のフラグメントを、その表面上のTSG101フラグメントまたはその保存変異体もしくはペプチドフラグメントの存在によって感染細胞を定量的または定性的に検出するために使用し得る。これは、例えば、光学顕微鏡、フローサイトメトリー、または蛍光定量検出と結び付けられた蛍光標識抗体を用いる免疫蛍光技術(この節、下記参照)によって達成され得る。そのような技術は、ウイルス出芽プロセスの間にTSG101フラグメントが細胞表面にリクルートされるウイルス感染において特に有用である。
【0100】
本発明において有用な抗体(またはそのフラグメント)を、さらに、TSG101フラグメントまたはその保存変異体もしくはペプチドフラグメントのインサイチュ検出のために、免疫蛍光または免疫電子顕微鏡観察におけるように、組織学的に用い得る。インサイチュ検出を、患者から組織学的検体を取り出し、そしてそれに本発明の標識抗体を適用することによって達成し得る。抗体(またはフラグメント)は好ましくは生物試料上に標識抗体(またはフラグメント)を重層することによって適用される。そのような手順の使用を通して、TSG101フラグメントまたは保存変異体もしくはペプチドフラグメントの存在のみならず、検討される組織におけるその分布も決定することが可能である。本発明を使用して、当業者は、そのようなインサイチュ検出を達成するために、任意の広範な組織学的方法(例えば染色手順)を改変できることを容易に理解する。
【0101】
TSG101フラグメントまたはその保存変異体もしくはペプチドフラグメントのためのイムノアッセイは、典型的には、TSG101フラグメントまたはその保存変異体もしくはペプチドフラグメントを同定できる検出可能に標識された抗体の存在下で、試料(例えば生物学的液体、組織抽出物、新鮮に収集された細胞、または細胞培養物中でインキュベートされた細胞の溶解物)をインキュベートすること、および当該分野において周知のいくつかの技術のいずれかによって結合した抗体を検出することを含む。
【0102】
生物試料を、固相支持体または担体(例えばニトロセルロース)、または細胞、細胞粒子もしくは可溶性タンパク質を固定化できるその他の固体支持体と接触させそしてその上に固定化し得る。次いで、支持体を適切な緩衝液で洗浄し、続いて検出可能に標識されたTSG101タンパク質特異的抗体で処理し得る。次いで、固相支持体を2回目に緩衝液で洗浄して、非結合抗体を除去し得る。次いで、固体支持体上の結合した標識の量を従来の手段によって検出し得る。
【0103】
「固相支持体または担体」によって、抗原または抗体に結合できる任意の支持体が意図される。周知の支持体または担体は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、ハンレイ岩、および磁鉄鉱を含む。担体の性質は、本発明の目的のためには、ある程度可溶性であるかまたは不溶性であるかのいずれかであり得る。支持体材料は、結合される分子が抗原または抗体に結合できる限り、実質的に任意の可能な構造的立体配置を有し得る。従って、支持体の立体配置は、球状(ビーズにおけるように)または円柱状(試験容器の内側表面、または棒の外部表面におけるように)であり得る。あるいは、表面はシート、試験ストリップなどのように平らであり得る。好ましい支持体はポリスチレンビーズを含む。当業者は、抗体または抗原を結合するための多くのその他の適切な担体を知っているか、またはルーチン実験の使用によってそれを確認することができる。
【0104】
抗TSG101フラグメント抗体の所定のロットの結合活性を、周知の方法に従って決定し得る。当業者は、ルーチン実験を用いることによって各々の決定のための作動可能でありそして最適なアッセイ条件を決定することができる。
【0105】
TSG101遺伝子ペプチド特異的抗体が検出可能に標識され得る方法の1つは、酵素へのその連結およびエンザイムイムノアッセイ(EIA)における使用による(Voller, A., "The Enzyme Linked Immunosorbent Assay (ELISA)", 1978, DiagnosticHorizons 2:1-7, Microbiological Associates Quarterly Publication, Walkersville, MD); Voller, A., et al., 1978, J. Clin. Pathol. 31 :507-520; Butler, J.E., 1981, Meth. Enzymol. 73:482-523; Maggio, E. (ed.), 1980, Enzyme Immunoassay, CRC Press, Boca Raton, FL,; Ishikawa, E., et al., (eds.), 1981, Enzyme Immunoassay, Kgaku Shoin, Tokyo)。抗体に結合された酵素は適切な基質、好ましくは発色基質と、例えば分光光度的、蛍光定量的または視覚的手段によって検出できる化学部分を産生するような様式で、反応する。抗体を検出可能に標識するために使用できる酵素は、限定するものではないが、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、δ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼを含む。検出は、酵素のための発色基質を用いる比色法によって達成され得る。検出は、同様に調製された標準と比較しての基質の酵素反応の程度の視覚的比較によっても達成され得る。
【0106】
検出はまた、任意の種々のその他のイムノアッセイを使用して達成され得る。例えば、抗体または抗体フラグメントを放射能標識することによって、ラジオイムノアッセイ(RIA)の使用を通してTSG101ペプチドを検出することが可能である(例えばWeintraub, B., Principles of Radioimmunoassays, Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques, The Endocrine Society, March, 1986(本明細書に参照により組み入れる)参照)。ガンマカウンターもしくはシンチレーションカウンターの使用のような手段によって、またはオートラジオグラフィーによって放射性同位元素を検出することができる。
【0107】
抗体を蛍光化合物で標識することも可能である。蛍光標識抗体が適正な波長の光に曝露されると、次いで、その存在は蛍光に起因して検出され得る。最も一般的に使用されている蛍光標識化合物の中には、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フトアルデヒド(o-phthaldehyde)およびフルオレサミンがある。
【0108】
抗体を、152Euまたはランタニド系列のその他のもののような蛍光発生金属を使用して検出可能に標識することもできる。これらの金属を、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレート基を使用して抗体に結合させることができる。
【0109】
抗体を、それを化学発光化合物に結合することによって検出可能に標識することもできる。次いで、化学発光タグ化抗体の存在を、化学反応の過程の間に生じる発光の存在を検出することによって決定する。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、テロマチックアクリジニウムエステル(theromatic acridinium ester)、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。
【0110】
同様に、生物発光化合物を使用して、本発明の抗体を標識し得る。生物発光は、触媒タンパク質が化学発光反応の効率を増加させる、生物系において見出される化学発光の型である。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することによって決定される。標識の目的のために重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンである。
【0111】
インビトロでのウイルス感染細胞の枯渇
本発明は、インビトロ(またはエキソビボ)で非感染組織および/または細胞からウイルス感染細胞を枯渇させる方法を提供する。例えば、非感染細胞からのウイルス感染細胞のインビトロでの枯渇のために哺乳動物から得られる組織は、血液または血清またはその他の体液であり得る。特に、本発明は、ウイルス感染細胞を死滅させるかまたは非感染細胞からそれらを分離することによってウイルス感染細胞を枯渇させる方法を提供する。1つの実施態様において、抗TSG101抗体を、哺乳動物(例えばヒト)から得られる組織および/または細胞とインビトロで合わせる(例えばインキュベートする)。
【0112】
1つの実施態様において、固体マトリックスに結合したTSG101抗体(例えばTSG101タンパク質のN末端またはC末端領域に結合する抗体)を含むカラムを使用して、生物試料(例えば血液または血清またはその他の体液)からウイルス感染細胞を除去する。
【0113】
組織からのウイルス感染細胞のインビトロでの枯渇において使用される抗TSG101抗体を、ウイルス放出を阻害するために抗TSG101抗体を使用する方法の節において開示する、検出可能な標識(例えば、種々の酵素、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、および放射性物質)または治療剤(例えば細胞分裂抑制性または殺細胞性薬剤)にコンジュゲートすることができる。
【0114】
検出可能な物質にコンジュゲートされた抗TSG101抗体を、当業者に公知の方法によって非感染細胞からウイルス感染細胞をソートするために利用することができる。1つの実施態様において、蛍光標示式細胞分取器(FACS)を使用してウイルス感染細胞をソートする。蛍光標示式細胞分取器(FACS)は、粒子の蛍光特性に基づいて粒子(細胞を含む)を分離するための周知の方法である(Kamarch, 1987, Methods Enzymol., 151 :150-165)。個々の粒子における蛍光部分のレーザー励起は小さな電荷を生じ、混合物からのポジティブおよびネガティブ粒子の電磁気的分離を可能にする。
【0115】
1つの実施態様において、哺乳動物(例えばヒト)から得られる細胞(例えば血液細胞)を、標識抗体を細胞に結合させるために十分な時間、蛍光標識TSG101特異的抗体とともにインキュベートする。別の実施態様において、そのような細胞をTSG101特異的抗体とともにインキュベートし、細胞を洗浄し、そして細胞を、TSG101特異的抗体を認識する第2の標識抗体とともにインキュベートする。これらの実施態様に従って、細胞を洗浄し、そしてセルソーターを通して処理し、両方の抗体に結合しないハイブリッド細胞から分離しようとする両方の抗体に結合する細胞の分離を可能にする。FACSソートされた粒子を、分離を容易にするために、96ウェルまたは384ウェルプレートの個々のウェル中に直接的に入れてもよい。
【0116】
別の実施態様において、非感染細胞からウイルス感染細胞を分離するために磁気ビーズを使用することができる。磁気ビーズ(直径0.5〜100nm)に結合するその能力に基づいて粒子を分離するための方法である磁気細胞分離(MACS)技術を使用してウイルス感染細胞をソートし得る(Dynal, 1995)。TSG101を免疫特異的に認識する抗体の共有結合的付加を含む、種々の有用な改変を磁性ミクロスフェアに対して行うことができる。次いで、磁場をかけて、選択されるビーズを物理的に操作する。次いで、ビーズを細胞と混合して、結合させる。次いで、細胞を磁場を通して通過させて、ウイルス感染細胞を分離する。
【0117】
抗TSG101抗体の用量
用量はルーチン試験の実施に際して医師によって決定され得る。ヒトへの投与の前に、好ましくは効力が動物モデルにおいて示される。当該分野において公知の感染性疾患のための任意の動物モデルを使用することができる。
【0118】
一般に、抗体について、好ましい投与量は0.1mg/kg〜100mg/kg体重(一般に10mg/kg〜20mg/kg)である。抗体を脳において作用させようとする場合、50mg/kg〜100mg/kgの投与量が通常適切である。一般に、部分的ヒト抗体および完全ヒト抗体はその他の抗体よりも長いヒト体内での半減期を有する。従って、より低い投与量およびより少ない頻度の投与がしばしば可能である。脂質化のような修飾を、抗体を安定化するために、そして取り込みおよび組織浸透(例えば脳中への)を増強するために使用することができる。抗体の脂質化のための方法は、Cruikshank, et al., 1997, J. Acquired Immune Deficiency Syndromes and Human Retrovirology 14:193によって記載されている。
【0119】
本明細書において定義する抗TSG101抗体の治療有効量(すなわち有効投与量)は約0.001〜30mg/kg体重、好ましくは約0.01〜25mg/kg体重、より好ましくは約0.1〜20mg/kg体重、さらにより好ましくは約1〜10mg/kg、2〜9mg/kg、3〜8mg/kg、4〜7mg/kg、または5〜6mg/kg体重の範囲である。
【0120】
限定するものではないが、疾患または障害の重篤度、以前の処置、対象の一般健康および/または年齢、および存在するその他の疾患を含む、特定の因子が対象を有効に処置するために必要とされる投与量に影響を及ぼし得ることを当業者は理解する。さらに、治療有効量の抗TSG101抗体での対象の処置は、単一の処置を含み得るかまたは、好ましくは、一連の処置を含み得る。好ましい例において、対象は、約0.1〜20mg/kg体重の範囲の抗TSG101抗体で、約1〜10週間、好ましくは2〜8週間、より好ましくは約3〜7週間、さらにより好ましくは約4、5または6週間、1週間に一回処置される。処置のために使用される抗TSG101抗体の有効投与量が特定の処置の過程にわたって増加または減少し得ることも理解される。投与量の変化は、本明細書に記載のような診断アッセイの結果から生じ得そして明らかとなり得る。
【0121】
抗TSG101抗体薬剤の適切な用量が医師、獣医、または研究者の当業者の認識の範囲内のいくつかの因子に依存することが理解される。抗TSG101抗体の用量は、例えば対象の同一性、大きさおよび状態または処理される試料に依存して、さらににそれによって組成物を投与しようとする経路(適用可能な場合)、および抗TSG101抗体が感染病原体に対して有することを開業医が所望する効果に依存して変動する。
【0122】
医薬処方物および投与
本発明の抗TSG101抗体を、投与に適切な医薬組成物中に組み入れることができる。そのような組成物は、典型的には、抗TSG101抗体および薬学的に許容される担体を含む。本明細書において使用する用語「薬学的に許容される担体」は、薬学的投与に適合性の任意のそして全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含むことが意図される。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は当該分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が抗TSG101抗体と非適合性でない限り、組成物におけるその使用が意図される。補充の抗TSG101抗体を組成物中に組み入れることもできる。
【0123】
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路と適合性であるように処方される。好ましい投与経路は皮下および静脈内を含む。投与経路のその他の例は、非経口、皮内、経皮(局所)、および経粘膜を含む。非経口、皮内、または皮下適用のために使用される溶液または懸濁物は以下の成分を含み得る:無菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶媒;抗細菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝液、例えば酢酸、クエン酸またはリン酸、および浸透圧の調整のための薬物、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHを、塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩基を用いて調整することができる。非経口調製物をガラスまたはプラスチックから作製されたアンプル、使い捨てシリンジまたは多用量バイアル中に封入することができる。
【0124】
注射用途に適切な医薬組成物は無菌水溶液(水溶性の場合)または分散物、および無菌注射用溶液または分散物の即席調製のための無菌粉末を含む。静脈内投与については、適切な担体は生理食塩水、静菌性水、Cremophor EL(商標)(BASF; Parsippany, NJ)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。全ての場合に、組成物は無菌でなければならず、そして粘度が低くそして抗TSG101抗体が注射可能である程度に流動性であるべきである。それは製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、そして細菌および真菌のような微生物の混入作用に対して保存されなければならない。
【0125】
担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。適正な流動性を、例えばレシチンのようなコーティングの使用によって、分散物の場合、必要とされる粒子サイズの維持によって、そして界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止を、種々の抗細菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物中に含めることが好ましい。注射用組成物の延長された吸収は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤(例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含めることによってもたらされ得る。
【0126】
無菌注射用溶液を、必要とされる量の抗TSG101抗体(例えば1つ以上の抗TSG101抗体)を適切な溶媒中に上記で列挙する成分の1つまたは組み合わせとともに組み入れ、必要に応じて、続いて滅菌ろ過することによって調製することができる。一般に、分散物は、抗TSG101抗体を、基礎分散媒および上記で列挙するものからの必要とされるその他の成分を含む無菌ビヒクル中に組み入れることによって調製される。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これは有効成分+以前に滅菌ろ過されたその溶液からの任意のさらなる所望の成分の粉末を生じる。
【0127】
1つの実施態様において、抗TSG101抗体は、化合物を身体からの迅速な排除に対して保護する担体とともに調製される(例えば徐放性処方物(移植片およびマイクロカプセル化送達システムを含む))。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のような生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような処方物の調製のための方法は当業者に明らかである。材料をAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に得ることもできる。リポソーム懸濁物(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する感染細胞に標的化されたリポソームを含む)を薬学的に許容される担体として使用することもできる。これらを、例えば米国特許第4,522,811号(その全体を本明細書に参照により組み入れる)に記載のような当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0128】
投与の容易さおよび投与量の均一性のために非経口組成物を投与単位形態で処方することが有利である。本明細書において使用する投与単位形態は、処置しようとする対象のための単位投与量として適した物理的に別個の単位を指し;各々の単位は必要とされる薬学的担体と共同で所望の治療効果を生じるように算出された抗TSG101抗体の事前に決定された量を含む。本発明の投与単位形態のための仕様は、抗TSG101抗体の特有の特徴および達成しようとする特定の治療効果、ならびに個体の処置のためのそのような抗TSG101抗体の配合の技術分野において固有の制限に左右されそして直接的に依存する。
【0129】
医薬組成物をキット、容器、パック、またはディスペンサー中に、投与のための説明書と一緒に含めることができる。
【0130】
ウイルス感染の処置および予防のためのTSG101ワクチンおよびDNAワクチン
本発明は、抗TSG101抗体を生成するためのワクチンとして使用することができるTSG101タンパク質のフラグメントを提供する。TSG101タンパク質フラグメントまたはポリペプチドを当該分野において公知の標準的な方法によって調製することができる。1つの実施態様において、本発明は、TSG101タンパク質のUEVドメインを含まないTSG101タンパク質のフラグメントを提供する。特定の実施態様において、本発明は、UEVドメインを含まないヒトTSG101タンパク質、またはそのマウスホモログのフラグメントを提供する。好ましい実施態様において、本発明は、TSG101タンパク質のC末端領域を含むフラグメントを提供する。別の実施態様において、本発明は、TSG101タンパク質のコイルドコイルドメインを含むTSG101タンパク質のフラグメントを提供する。さらに別の実施態様において、本発明は、配列番号3に記載のTSG101タンパク質のC末端ドメインを含むTSG101タンパク質のフラグメントを提供する。本発明はまた、TSG101タンパク質のそのようなフラグメントに少なくとも30%、50%、70%、90%、または95%相同な任意の配列を提供する。本発明のいくつかの実施態様において、TSG101タンパク質フラグメントまたはポリペプチドは、少なくとも5、10、20、50、100アミノ酸長である。
【0131】
本発明はまた、上記の任意のTSG101フラグメントと機能的に等価なTSG101タンパク質のフラグメントを提供する。そのような等価なTSG101フラグメントは、サイレントな変化を生じ、従って機能的に等価なTSG101タンパク質フラグメントを産生する、TSG101タンパク質をコードするTSG101タンパク質遺伝子配列によってコードされるアミノ酸配列内のアミノ酸残基の欠失、付加または置換を含み得る。アミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、可溶性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の類似性に基づいてなされ得る。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンを含み;極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンを含み;正に荷電した(塩基性の)アミノ酸は、アルギニン、リジン、およびヒスチジンを含み;そして負に荷電した(酸性の)アミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。本明細書において利用する「機能的に等価」は、内在性TSG101タンパク質フラグメントと実質的に同様なインビボ活性を示すことができるタンパク質フラグメントを指す。
【0132】
本発明のTSG101ペプチドフラグメントは、当該分野において周知の技術を使用する組換えDNA技術によって産生され得る。従って、TSG101ポリペプチドまたはペプチドをコードするTSG101遺伝子配列を含む核酸を発現させることによる本発明のTSG101ポリペプチドおよびペプチドを調製するための方法。当業者に周知の方法を使用して、TSG101ポリペプチドコード配列および適切な転写および翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法は、例えばインビトロ組換えDNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝的組換えを含む。例えばSambrook, et al., 1989(上記)、およびAusubel, et al., 1989(上記)に記載の技術を参照のこと。あるいは、TSG101ポリペプチド配列をコードできるRNAを、例えば合成機を使用して、化学合成し得る。例えば"Oligonucleotide Synthesis", 1984, Gait, M.J. ed., IRL Press, Oxford(その全体を本明細書に参照により組み入れる)に記載の技術を参照のこと。
【0133】
TSG101ペプチドを適切な担体および/またはアジュバント、例えばフロイント完全または不完全アジュバント、または同様な免疫刺激剤との組み合わせで使用することができる。1つ以上の非代謝可能鉱油または代謝可能油と組み合わせた1つ以上の界面活性剤を含む油/界面活性剤ベースのアジュバント、例えばIncomplete Seppic Adjuvant(Seppic, Paris, France)を使用し得る。Incomplete Seppic Adjuvantは抗体産生についてフロイント不完全アジュバントに匹敵する効果を有するが、より低い炎症応答を誘導する。
【0134】
本発明はまた、DNAまたはRNAワクチンとしての使用のためのTSG101遺伝子の部分を提供する。TSG101遺伝子フラグメントを、上記の任意の本発明のTSG101タンパク質フラグメントを産生するために使用することもできる。好ましい実施態様において、本発明は、TSG101タンパク質のUEVドメインを含まないフラグメントをコードするヌクレオチド領域を含むTSG101遺伝子のフラグメントを提供する。特定の実施態様において、TSG101遺伝子のフラグメントはヒトTSG101遺伝子、またはそのマウスホモログのフラグメントである。本発明はまた、TSG101遺伝子のそのようなフラグメントに少なくとも30%、50%、70%、90%、または95%相同な任意の配列を提供する。本発明のいくつかの実施態様において、TSG101遺伝子のフラグメントは、少なくとも20、25、40、60、80、100、500、1000塩基長である。そのような配列はTSG101ペプチドの産生のために有用であり得る。
【0135】
本発明はまた、(a)任意の前記のTSG101コード配列および/またはその相補物(すなわちアンチセンス)を含むDNAベクター;(b)コード配列の発現を指図する調節エレメントに作動可能に結合された任意の前記のTSG101コード配列を含むDNA発現ベクター;および(c)本発明のTSG101タンパク質フラグメントの産生における使用のための宿主細胞においてコード配列の発現を指図する調節エレメントに作動可能に結合された任意の前記のTSG101コード配列を含む遺伝子操作宿主細胞を提供する。本明細書において使用する調節エレメントは、限定するものではないが、誘導性および非誘導性プロモーター、エンハンサー、オペレーター、および発現を駆動および調節する当業者に公知のその他のエレメントを含む。そのような調節エレメントは、限定するものではないが、サイトメガロウイルスhCMV前初期遺伝子、SV40アデノウイルスの初期または後期プロモーター、lac系、trp系、TAC系、TRC系、ファージAの主要オペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3−ホスホグリセンリン酸キナーゼのプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター、および酵母a接合因子のプロモーターを含む。
【0136】
別の実施態様において、本発明は、裸のDNAまたはRNAワクチンおよびその使用を提供する。上記の本発明のTSG101 DNAフラグメントを、本発明の抗TSG101抗体を誘起することによってウイルス性疾患を阻害するためのワクチンとして投与することができる。例えば転写ベクター(例えばpGEMファミリーのプラスミドベクター)中に、またはウイルス(例えばワクシニア)の転写プロモーターの制御下にDNAをサブクローニングすることによってDNAをRNAに変換することができ、そしてRNAを裸のRNAワクチンとして使用する。裸のDNAまたはRNAワクチンを、単独で、またはウイルスに指向した1つ以上のDNAまたはRNAワクチンとの組み合わせで注射することができる。
【0137】
本発明の裸のDNAまたはRNAワクチンを、例えば筋肉内で投与することができ、あるいは点鼻薬として使用することができる。DNAまたはRNAフラグメントまたはその部分を、裸のDNAまたはRNAとして、リポソーム中に被包されたDNAまたはRNAとして、ウイルスエンベロープ受容体タンパク質を含むプロテオリポソーム中に捕捉されたDNAまたはRNAとして注射することができる(Nicolau, C. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 1983, 80, 1068; Kanoda, Y., et al. Science 1989, 243, 375; Mannino, R. J., et al. Biotechniques 1988, 6, 682)。あるいは、DNAを担体とともに注射することができる。担体は、タンパク質、例えばサイトカイン、例えばインターロイキン2、またはポリリジン−糖タンパク質担体(Wu, G. Y. and Wu, C. H., J. Biol. Chem. 1988, 263, 14621)、または非複製ベクター、例えばラウス肉腫ウイルスまたはサイトメガロウイルスプロモーターを含む発現ベクターであり得る。そのような担体タンパク質およびベクターおよびそれを使用するための方法は当業者に公知である(例えばAcsadi, G., et al. Nature 1991, 352, 815-818参照)。さらに、DNAまたはRNAを小さな金ビーズ上にコートし、そしてビーズを、例えば遺伝子銃を用いて、皮膚中に導入することができる(Cohen, J. Science 1993, 259, 1691-1692; Ulmer, J. B., et al. Science 1993, 259, 1745-1749)。
【0138】
本発明はまた、遺伝子治療によって動物におけるウイルス感染(例えばHIV感染)を処置するための方法を提供する。TSG101抗体を産生するようにTSG101タンパク質のフラグメントをコードする核酸をインビボで細胞中に導入するために種々の遺伝子治療アプローチを使用し得る。
【0139】
当該分野において利用可能な任意の遺伝子治療のための方法を本発明に従って使用することができる。例示的な方法を以下に記載する。遺伝子治療の方法の一般的な概説については、Goldspiel, et al., 1993, Clinical Pharmacy 12, 488-505;Wu and Wu, 1991, Biotherapy 3, 87-95;Tolstoshev, 1993, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32, 573-596; Mulligan, 1993, Science 260, 926-932;およびMorgan and Anderson, 1993, Ann. Rev. Biochem. 62, 191-217; May, 1993, TIBTECH 11, 155-215を参照のこと。使用することができる組換えDNA技術の当該分野において一般的に公知の方法は、Ausubel, et al. (eds.), 1993, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York;およびKriegler, 1990, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, New Yorkに記載されている。
【0140】
好ましい態様において、治療薬は、適切な宿主においてTSG101またはそのフラグメントもしくはキメラタンパク質を発現する発現ベクターの部分であるTSG101核酸を含む。特に、そのような核酸は、TSG101コード領域に作動可能に連結されたプロモーターを有し、前記プロモーターは誘導性または構成性および、場合により、組織特異的である。別の特定の実施態様において、TSG101コード配列および任意のその他の所望の配列に、ゲノム中の所望の部位における相同組換えを促進する領域が隣接し、従ってTSG101核酸の染色体内発現を提供する核酸分子を使用する(例えばKoller and Smithies, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86, 8932-8935; Zijlstra, et al., 1989, Nature 342, 435-438参照)。
【0141】
患者中への核酸の送達は直接的(この場合、患者は核酸または核酸保有ベクターに直接的に曝露される)または間接的(この場合、細胞をまずインビトロで核酸で形質転換し、次いで患者中に移植する)のいずれかであり得る。これら2つのアプローチは、それぞれインビボまたはエキソビボ遺伝子治療として知られている。
【0142】
特定の実施態様において、核酸をインビボで直接的に投与し、ここでそれは発現されて、コードされるタンパク質を産生する。これを、当該分野において公知の多数の方法のいずれかによって、例えばそれを適切な核酸発現ベクターの部分として構築し、そしてそれが細胞内になるようにそれを投与することによって、例えば欠陥または弱毒化レトロウイルスまたはその他のウイルスベクターを使用する感染によって(米国特許第4,980,286号参照)、または裸のDNAの直接的な注射によって、または微粒子銃(例えば遺伝子銃;Biolistic, Dupont)、または脂質、または細胞表面受容体もしくはトランスフェクト薬剤でのコーティング、リポソーム中の被包、微粒子、またはマイクロカプセルの使用によって、または核に侵入することが知られているペプチドと連結してそれを投与することによって、受容体媒介エンドサイトーシスに供されるリガンドと連結してそれを投与することによって(例えばWu and Wu, 1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432参照)(これは、受容体を特異的に発現する細胞型を標的するために使用することができる)などで達成することができる。別の実施態様において、リガンドがエンドソームを破壊するために融合性ウイルスペプチドを含み、核酸がリソソーム分解を回避することを可能にする核酸−リガンド複合体を形成することができる。さらに別の実施態様において、特定の受容体を標的化することによって、細胞特異的取り込みおよび発現のために、核酸をインビボで標的化することができる(例えばPCT公開WO92/06180、1992年4月16日付け(Wu, et al.);WO92/22635、1992年12月23日付け(Wilson, et al.);WO92/20316、1992年11月26日付け(Findeis, et al.);WO93/14188、1993年7月22日付け(Clarke, et al.)、WO93/20221、1993年10月14日付け(Young)参照)。あるいは、核酸を、細胞内に導入し、そして、相同組換えによって、発現のために宿主細胞DNA内に組み入れることができる(Koller and Smithies, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86, 8932-8935; Zijlstra, et al., 1989, Nature 342, 435-438)。
【0143】
特定の実施態様において、TSG101核酸を含むウイルスベクターを使用する。例えば、レトロウイルスベクターを使用することができる(Miller, et al., 1993, Meth. Enzymol. 217:581-599参照)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムのパッケージングおよび宿主細胞DNA中への組み込みに必要ではないレトロウイルス配列を欠失するように改変されている。遺伝子治療において使用しようとするTSG101核酸をベクター中にクローニングする。これは遺伝子の患者中への送達を容易にする。レトロウイルスベクターについてのさらなる詳細はBoesen, et al., 1994, Biotherapy 6, 291-302中に見出すことができ、これは幹細胞を化学療法に対してより耐性にするために造血幹細胞にmdrl遺伝子を送達するためのレトロウイルスベクターの使用を記載している。遺伝子治療におけるレトロウイルスの使用を示すその他の参考文献は以下のとおりである:Clowes, et al., 1994, J. Clin. Invest. 93, 644-651; Kiem, et al., 1994, Blood 83, 1467-1473; Salmons and Gunzberg, 1993, Human Gene Therapy 4, 129-141; およびGrossman and Wilson, 1993, Curr. Opin. Genet. and Devel. 3, 110-114。
【0144】
アデノウイルスは、遺伝子治療において使用することができるその他のウイルスベクターである。アデノウイルスは、呼吸上皮に遺伝子を送達するための特に魅力的なビヒクルである。アデノウイルスは天然に呼吸上皮に感染し、そこでそれは軽度の疾患を引き起こす。アデノウイルスベースの送達システムのその他の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、および筋肉である。アデノウイルスは、非分裂細胞に感染できる利点を有する。Kozarsky and Wilson (1993, Current Opinion in Genetics and Development 3, 499-503)は、アデノウイルスベースの遺伝子治療の概説を提示する。Bout, et al. (1994, Human Gene Therapy 5, 3-10)は、アカゲザルの呼吸上皮に遺伝子を移入するためのアデノウイルスベクターの使用を実証する。遺伝子治療におけるアデノウイルスの使用のその他の例はRosenfeld, et al., 1991, Science 252, 431-434; Rosenfeld, et al., 1992, Cell 68, 143-155; およびMastrangeli, et al., 1993, J. Clin. Invest. 91, 225-234に見出すことができる。
【0145】
アデノ随伴ウイルス(AAV)もまた遺伝子治療における使用のために提唱されている(Walsh, et al., 1993, Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 204, 289-300)。
【0146】
遺伝子治療への別のアプローチは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、またはウイルス感染のような方法によって組織培養物中の細胞に遺伝子を移入することを含む。通常、移入の方法は、選択マーカーの細胞への移入を含む。次いで、細胞を選択下に置いて、移入された遺伝子を取り込み、そしてそれを発現している細胞を単離する。次いで、それらの細胞を患者に送達する。
【0147】
この実施態様において、生じる組換え細胞のインビボでの投与の前に核酸を細胞中に導入する。そのような導入を、限定するものではないが、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含むウイルスまたはバクテリオファージベクターでの感染、細胞融合、染色体媒介遺伝子移入、微小核細胞媒介遺伝子移入、スフェロプラスト融合などを含む当該分野において公知の任意の方法によって行うことができる。細胞中への外来遺伝子の導入のために多数の技術が当該分野において知られており(例えばLoeffler and Behr, 1993, Meth. Enzymol. 217, 599-618; Cohen, et al., 1993, Meth. Enzymol. 217, 618-644; Cline, 1985, Pharmac.Ther. 29, 69-92参照)、そして、レシピエント細胞の必要な発達および生理機能が破壊されないという条件で、本発明に従って使用され得る。核酸が細胞によって発現可能であり、好ましくは遺伝性でありそしてその細胞子孫によって発現可能であるように、技術は、細胞への核酸の安定な移入を提供すべきである。
【0148】
生じる組換え細胞を、当該分野において公知の種々の方法によって患者に送達することができる。好ましい実施態様において、上皮細胞を注射する(例えば皮下で)。別の実施態様において、組換え皮膚細胞を、皮膚移植片として患者に適用し得る。組換え血液細胞(例えば造血幹または前駆細胞)を好ましくは静脈内で投与する。使用に想定される細胞の量は、所望の効果、患者の状態などに依存し、そして当業者によって決定され得る。
【0149】
その中に核酸を遺伝子治療の目的のために導入することができる細胞は、任意の所望される利用可能な細胞型を包含しそして、限定するものではないが、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋細胞、肝細胞;血液細胞、例えばTリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球;種々の幹または前駆細胞、特に造血幹または前駆細胞(例えば骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝などから得られるような)を含む。
【0150】
好ましい実施態様において、遺伝子治療のために使用される細胞は患者にとって自己である。
【0151】
組換え細胞が遺伝子治療において使用される実施態様において、TSG101核酸を、それが細胞またはその子孫によって発現可能であるように、細胞中に導入し、次いで組換え細胞を治療効果のためにインビボで投与する。特定の実施態様において、幹または前駆細胞を使用する。単離しそしてインビトロで維持することができる任意の幹および/または前駆細胞を潜在的に本発明のこの実施態様に従って使用することができる。そのような幹細胞は、限定するものではないが、造血幹細胞(HSC)、皮膚および腸の内壁のような上皮組織の幹細胞、胚性心筋細胞、肝幹細胞(PCT公開WO94/08598)、および神経幹細胞(Stemple and Anderson, 1992, Cell 71, 973-985)を含む。
【0152】
上皮幹細胞(ESC)またはケラチノサイトを、公知の手順によって皮膚および腸の内壁のような組織から得ることができる(Rheinwald, 1980, Meth. Cell Bio. 21A:229)。皮膚のような重層上皮組織において、基底層に最も近い層である胚層内の幹細胞の有糸分裂によって再生が生じる。腸の内壁内の幹細胞はこの組織の迅速な再生速度を提供する。患者またはドナーの皮膚または腸の内壁から得られるESCまたはケラチノサイトを組織培養物中で増殖させることができる(Rheinwald, 1980, Meth. Cell Bio. 21A, 229; Pittelkow and Scott, 1986, Mayo Clinic Proc. 61, 771)。ESCがドナーによって提供される場合、宿主対移植片反応の抑制のための方法(例えば中程度の免疫抑制を促進するための照射、薬物または抗体の投与)を使用することもできる。
【0153】
造血幹細胞(HSC)に関して、HSCの単離、増殖、およびインビトロでの維持を提供する任意の技術を、本発明のこの実施態様において使用することができる。それによってこれが達成され得る技術は、(a)将来の宿主、またはドナーから単離される骨髄細胞からのHSC培養物の単離および樹立、または(b)以前に樹立された長期HSC培養物(同種間または異種間であり得る)の使用を含む。非自己HSCは、好ましくは将来の宿主/患者の移植免疫反応を抑制する方法と協同して使用される。本発明の特定の実施態様において、針穿刺吸引によって後腸骨稜からヒト骨髄細胞を得ることができる(例えばKodo, et al., 1984, J. Clin. Invest. 73, 1377-1384参照)。本発明の好ましい実施態様において、HSCを高度に富化させるか、または実質的に純粋な形態にすることができる。この富化を、長期培養の前、間、または後に達成することができ、そして当該分野において公知の任意の技術によって行うことができる。骨髄細胞の長期培養物を、例えば改変Dexter細胞培養技術(Dexter, et al., 1977, J. Cell Physiol. 91, 335)またはWitlock-Witte培養技術(Witlock and Witte, 1982, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79, 3608-3612)を使用することによって樹立および維持することができる。
【0154】
特定の実施態様において、遺伝子治療の目的のために導入しようとする核酸はコード領域に作動可能に連結された誘導性プロモーターを含み、その結果、核酸の発現は適切な転写の誘導物質の存在または非存在を制御することによって制御可能である。
【0155】
本発明のTSG101フラグメントまたはその機能的誘導体をコードする核酸を送達するための使用に適応し得る更なる方法を以下に記載する。
【0156】
多くのウイルスおよびウイルス関連疾患の処置へのTSG101抗体の広い適用可能性
TSG101抗体を使用して、本発明者らは、TSG101の抗体標的化が、生得的宿主防御機構(ADCCまたはCDC)とは独立してウイルス感染を直接的に阻害できることを実証した。この知見は、ウイルス後期ドメインタンパク質とのTSG101の相互作用が多くの様々なウイルスの増殖のために必須であるという証拠と一致する。これらの結果は、本発明のTSG101抗体候補の多くまたは全てが、重要な相互作用をブロックすることによってウイルス感染を直接的に阻害する能力を有し得るという結論に本発明者らを導く。
【0157】
多くの様々なウイルス感染におけるTSG101の既知の関与に基づいて、本明細書において報告する活性は、複数の様々なウイルスによって引き起こされる感染および疾患に関係すると理解される。これらのウイルスの部分的な列挙は図XX中に見出され得、そして実質的に全ての既知のウイルスのグループ分けを含む。
【0158】
ウイルスグループ分け:
・グループI:ウイルスは二本鎖DNAを有し、そしてヘルペスウイルス科(例、HSV1(口腔ヘルペス)、HSV2(性器ヘルペス)、VZV(水痘)、EBV(エプスタイン・バーウイルス)、CMV(サイトメガロウイルス)など)、ポックスウイルス科(天然痘)および多くの尾部付きバクテリオファージのようなウイルス科を含む。ミミウイルスもまたこのグループに入れられた。
・グループII:ウイルスは一本鎖DNAを有し、そしてパルボウイルス科および重要なバクテリオファージM13のようなウイルス科を含む。
【0159】
【表1】

【0160】
RNAウイルス
・グループIII:ウイルスは二本鎖RNAゲノムを有する、例えばロタウイルス。これらのゲノムは常にセグメント化されている。
・グループIV:ウイルスは(+)センス一本鎖RNAゲノムを有する。ピコナウイルス(A型肝炎ウイルス、エンテロウイルス、ライノウイルス、ポリオウイルス、および口蹄疫ウイルスのような周知のウイルスを含むウイルスの科である)、SARSウイルス、C型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、および風疹ウイルスを含む多くの周知のウイルスがこのグループ中に見出される。
・グループV:ウイルスは(−)センス一本鎖RNAゲノムを有する。致命的なエボラおよびマールブルグウイルスは、インフルエンザウイルス、麻疹、おたふく風邪および狂犬病とともに、このグループの周知のメンバーである。
【0161】
【表2】

【0162】
逆転写ウイルス
・グループVI:ウイルスは一本鎖RNAゲノムを有し、そして逆転写酵素を使用して複製する。レトロウイルスはこのグループ中に含まれ、HIVはそのメンバーである。
・グループVII:ウイルスは二本鎖DNAゲノムを有し、そして逆転写酵素を使用して複製する。B型肝炎ウイルスをこのグループ中に見出すことができる。
【0163】
本発明者らは、TSG101の多くが、多くの様々なウイルスの増殖のために必要であり、そして哺乳動物または真核生物種の間で高度に保存されていることを見出した。その結果、これらの化合物はヒトまたは獣医学ウイルス性疾患のための適用を有し得る。これらのウイルス性疾患は、限定するものではないが、PRRSウイルス、ブタまたはウシサーコウイルス、ブタまたはウシコロナウイルス、ブタまたはウシRSV、ブタ、ウシまたはトリインフルエンザ、EIAV、ブルータング、または口蹄疫(FMD)ウイルスを含み得る。
【0164】
いくつかのウイルスはより慢性的な疾患の原因であり、そして罹患率および死亡率はウイルスの存在に関連する。これらの疾患は肝細胞癌(HBVまたはHCVのいずれかに関連する)、慢性疲労症候群(EBVに関連する)、およびウイルス感染に関連するその他の疾患を含む。
【0165】
上記の化合物を、単一ウイルス病原体(例えばHIVまたはHBV)またはその組み合わせ(HIVおよびHBV)の処置または防止(予防)のために使用することができる。同様に、これらの個々のまたは広スペクトルの適用は上記で詳述する任意のまたは全てのウイルスグループを伴い得る。
【0166】
別の方法は、1つ以上のウイルスに関連する特定の適応症のための化合物の使用であり得る。例えば、これらの抗体を、上記で同定するグループからの1つ以上の病原体によって引き起こされ得る呼吸器ウイルス感染の予防または処置のために使用できる。図32に示すように、本発明の抗TSG101抗体はRSV感染細胞に結合する。RSV治療を必要とする個体へのこの薬剤の投与は同時に日和見性インフルエンザに対する予防を提供する(ウイルス病原体の典型的な組み合わせ)。同様に、これらの化合物は、1つ以上の血液由来の病原体(例えばHIVおよび/またはHBVおよびHCV)に対する適用を有し得る。
【0167】
化合物は、急性または慢性ウイルスの予防、処置または維持のための適用を有し得る。急性適用は、ウイルス感染(その例はインフルエンザ、ロタウイルスまたはフィロウイルス感染を含む)の短期の予防または処置を含む。慢性適用は、再発性大流行(性器ヘルペスについて観察されるような)または稀な大流行(帯状疱疹の間の帯状疱疹感染に関連するもののような)を含み得る。同様に、処置は、慢性ウイルス感染のために(例えばHIV、HBVまたはHCV処置のために)、低レベルのウイルス負荷を維持するように長期にわたることが意図され得る。
【0168】
実施例
実施例1:抗TSG101ポリクローナル抗体の調製および使用
ウイルス感染に対する抗TSG101抗体の効果を決定するために、レトロウイルス感染アッセイを開発した。長末端反復配列(LTR)プロモーターから発現されるE.coli lacZ遺伝子を含むマウス白血病ウイルス(MLV)由来のベクター(pBMN−Z−I−Neo)を、293細胞由来のアンホトロピックマウス白血病レトロウイルスパケージング細胞株(Phoenix A、ATCC)中にトランスフェクトした。Phoenix Aヘルパー細胞によって産生されるレトロウイルスを採集し、そしてマウスN2A細胞(ATCC)に感染させるために使用した。MLVベクターのトランスフェクションの24時間後に抗TSG101抗体を293ヘルパー細胞に添加した。ウイルス産生に対するTSG101抗体の有効性を、標的細胞(N2A)に感染するウイルス上清の効率によって決定した。次いで、N2A細胞の感染を、P−ガラクトシダーゼ活性の細胞染色によって決定した(ポジティブ細胞は青色に染色された、図2において濃い点として示される)。
【0169】
典型的には、Phoenix A細胞をポリ−D−リジンコート6ウェルプレート上にトランスフェクションの前日に播種した。次いで、4μgのpBMN−Z−I−Neoを、12μlのLipofectamine 2000(Invitrogen)の存在下で各々のウェル中にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に、培地を、トリコスタチンA(3μM)および5または10μgの適正な抗TSG101抗体を含む1ml/ウェルの新鮮な培地に交換した。24〜48時間後に、ウイルス上清を採集し、0.2μmフィルターを用いてろ過し、そして1mlのウイルス上清をポリブレン(10μg/ml)を含む新鮮な培地1mlと混合し、次いでこれを使用してN2a細胞の1つのウェルに感染させた。感染の48時間後に、N2a細胞を固定し、そして13-Gal染色キット(Invitrogen)に記載のようにX−Galで染色した。結果をデジタル画像によって示した。
【0170】
下記の実験において、2つの抗TSG101抗体(N末端TSG101タンパク質に対するウサギ抗体、およびC末端TSG101タンパク質に対するウサギ抗体)を、ウイルス感染に対するその効果について試験した。抗N末端TSG101抗体をヒトTSG101タンパク質のN末端フラグメント:VRETVNVITLYKDLKPVL(配列番号2)を使用して惹起した。抗C末端TSG101抗体をヒトTSG101タンパク質のC末端フラグメント:QLRALMQKARKTAGLSDLY(配列番号3)を使用して惹起した。ウサギIgGを非特異的抗体コントロールとして使用した。10回より多い独立した実験を行い、そして代表的な結果を図2に示す。抗体の処理なしのPhoenixヘルパー細胞(ポジティブコントロール)は効率的なレトロウイルスの産生、およびN2A標的細胞の感染を示し(左上パネル);ウサギIgGは効果を有しなかった(左中パネル)。N末端TSG101に対するウサギ抗体は約20〜60%の阻害を示した(左下パネル)。しかし、C末端TSG101に対するウサギ抗体はレトロウイルスの産生、およびN2A標的細胞の感染を有意に阻害した(50〜70%阻害、右上パネル)。抗C末端および抗N末端抗体の混合物は抗C末端抗体単独と同様の結果を与えた(右中パネル)。ウイルスによって感染されていないN2a細胞は最小バックグラウンド染色のみを示した(右下パネル)。同様の結果はHIVウイルス感染アッセイにおいても得られた。
【0171】
実施例2:ウイルス出芽の間に細胞表面上に局在化されるTSG101
この実施例は、TSG101のドメインがHIV放出の間に細胞表面上に露出され、そして抗TSG101抗体がHIVの放出および感染を阻害したことを示す。
【0172】
ウイルス放出の間のTSG101の局在化
TSG101が形質膜におけるウイルス放出に能動的に関与することを実証するために、GFP−TSG101融合タンパク質の発現ベクターを構築し、そしてM−MuLVウイルスを活発に産生するPhoenix細胞(Stanford universityのNolan et alによって開発されたレトロウイルスヘルパー細胞株)中にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に、GFP−TSG101融合タンパク質の輸送を共焦点顕微鏡(Ultraview, Perkin-Elmer)下で観察した。図3A〜Eは細胞質から細胞表面上へのGFP−TSG101タンパク質の移行、およびその後のウイルス産生細胞からの「出芽」の画像の経時変化を示す。
【0173】
HIV出芽の間のTSG101の細胞表面局在化
TSG101がHIVの出芽にも能動的に関与しているかどうかを決定するために、抗TSG101抗体を使用して、HIVでトランスフェクトされたヒトCD4+ヒトT細胞株H9(H9ΔBglと命名)における細胞表面TSG101を直接的に検出し、そして非トランスフェクトH9細胞をコントロールとして使用した。2つのウサギ抗TSG101ポリクローナル抗体(N末端に対するもの(抗TSG101「C」と命名)およびC末端TSG101に対するもの(抗TSG101「E」と命名))をこの研究のために使用した。両方の抗体は十分に特徴付けられている(Li, et al., 2001, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98(4): 1619-24)。両方の抗体は、HIV産生H9ΔBgl細胞においてのみTSG101の細胞表面局在化を特異的に検出し、そしてコントロールH9細胞においては細胞表面TSG101は検出されなかった(図4)。興味深いことに、抗TSG101抗体は抗HIV抗体を用いて観察されるような「キャッピング」様出芽構造を検出した(Lee, et al.,1999, J. Virol. 73, 5654-62)。
【0174】
HIV出芽の間のTSG101の細胞表面局在化のFACSプロファイル
次いで、HIV産生細胞(H9ΔBgl)およびコントロールH9細胞におけるTSG101の細胞表面局在化を蛍光標示式細胞分取器(FACS)によって検討した。H9ΔBglおよびH9両方の細胞を固定し、抗TSG101抗体で染色し、そして蛍光標識2次抗体を用いて検出した。免疫染色した細胞をFACS上で分析した。6回より多い独立した実験は、約70〜85%のH9ΔBgl細胞が表面TSG101についてポジティブに染色され、一方、約0.1%未満のH9コントロール細胞が表面TSG101についてポジティブに染色されたことを示した(図5)。これらの結果を共焦点顕微鏡下でのH9ΔBgl細胞およびH9コントロール細胞両方の直接的検討によってさらに確認した。H9コントロール細胞の小集団(01%未満)は、共焦点顕微鏡分析後の免疫染色手順に関連する弱いバックグラウンド蛍光シグナルから生じた。H9ΔBgl細胞のポジティブ集団は明るい蛍光を示した。
【0175】
トランスフェクト293細胞におけるHIV産生の抗TSG101ポリクローナル抗体阻害
HIVウイルス産生アッセイを使用して、レトロウイルス産生に対するTSG101の阻害効果をさらに検討した。HIV−1ベクターpNL4−3を293T細胞中にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に、2つの抗TSG101抗体(10μg/ml)、抗TSG101抗体「E」および抗TSG101抗体「B」、ならびに非特異的コントロール抗体(10μg/ml)をそれぞれ細胞培養物中に添加した。抗TSG101抗体「B」はマウスTSG101 N末端フラグメントに対して惹起され、そしてヒトTSG101タンパク質に弱く結合する。抗TSG101抗体「B」をコントロールとして使用した。さらなる24時間のインキュベーションの後、細胞溶解物を抽出し、細胞培養上清を採集し、そしてHIV−1ビリオンをスクロース勾配によって精製した。細胞溶解物および精製ビリオンの両方を、2つの抗HIV−1抗体(抗p55および抗p24)を使用するウエスタンブロットによって分析した。図6に示すように、抗TSG101抗体「E」処理はHIV−1ビリオン放出の有意な阻害を示し(ウエスタンブロットの濃度トレースによる70%より多い阻害、レーン8)、一方、抗TSG101抗体「B」(レーン7)およびコントロール抗体(レーン6)はHIV−1放出の有意な阻害を示さなかった。
【0176】
ヒトCD4+Tリンパ球(H90Bgl細胞)からのHIV放出の抗体阻害
HIV放出に対する抗体の効果を特異的に検討するために、H9ΔBgl細胞に基づくHIV放出アッセイを開発した。H9ΔBgl細胞は、エンベロープ欠陥HIV構築物(HIVゲノムのBglIIフラグメントの欠失)でトランスフェクトされたヒトCD4+Tリンパ球である。安定にトランスフェクトされたH9ΔBgl細胞は非感染性形態のHIVを産生し(欠陥HIVエンベロープに起因する、従って培養物中の他のH9ΔBgl細胞に感染できない)、H9ΔBgl細胞からのHIV放出を、細胞培養上清のHIV p24 ELISAによって直接的に測定することができる。いくつかの濃度の抗TSG101抗体「E」およびコントロール抗体(同じ濃度のウサギIgG)を使用して、H9ΔBgl細胞とともにインキュベートした。抗体添加の48時間後に、培養上清をHIV p24 ELISAのために採集した。
【0177】
ウイルス放出の有意な抗体阻害が80μg/mlで観察された(図7)。
【0178】
ポリクローナル抗TSG101抗体によるHIV感染性の阻害
抗TSG101抗体が、ウイルス放出後のHIV感染性に対するさらなる効果を有するかどうかを決定するために、Jurkat細胞からのHIV上清を使用して、抗TSG101抗体「E」およびコントロールとしてのウサギIgG(40μg/ml)の存在下でMAGI細胞に感染させた。抗TSG101抗体はHIV感染性の有意な阻害を示し(図8)、このことは、TSG101がウイルス放出後のHIVの成熟および/または標的細胞の感染における役割を有することを示唆する。
【0179】
実施例3:HIV感染に対する抗TSG101モノクローナル抗体の効果
抗TSG101モノクローナル抗体(mab)の産生
TSG101のC末端における19個のアミノ酸からなるペプチド(qlralmqkarktaglsdly、配列番号3)を合成し、キーホールリンペットヘモシアニン(KHL)とコンジュゲートし、そして5匹のマウスを免疫化するために使用した。各々のマウスからの血清試料をBSAコンジュゲートC末端TSG101ペプチドに対するELISAによって試験した。最高の抗体力価を有するマウスを屠殺し、そして脾臓をミエローマ細胞と融合して、ハイブリドーマプールを作製した。PE−8は、免疫化ペプチド(配列番号3)を認識するmabを産生する2つのハイブリドーマを含むハイブリドーマプールの1つである。プールPE−8を抗体プールPE−8ともいう。
【0180】
抗TSG101 mabは野生型および薬剤耐性HIVを阻害する
簡潔に記載すると、野生型および薬剤耐性HIV発現ベクターをHEK293細胞中にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に、トランスフェクトした細胞を様々な濃度の抗TSG101抗体およびコントロール抗体で処理した。抗体処理の後の24〜48時間のインキュベーションの後に、細胞培養上清を採集し、そして指示細胞株(MAGI細胞)に感染させるために使用した。MAGI細胞を感染の24〜48時間後に溶解し、そしてルシフェラーゼ活性についてアッセイした。HIV感染性の阻害をルシフェラーゼ活性の低下によって決定した。コントロール抗体は、N 19(これはTSG101のN末端に対するmAbである);ならびにF−1、F−15およびF−19(これらは全長TSG101に対して惹起されたmAbである)であった。
【0181】
図16に示すように、抗体プールPE−8(これは、TSG101タンパク質のC末端における19個のアミノ酸残基を標的化し、そして腹水からの精製IgGの形態である)は、MAGI細胞における野生型HIV株NL4−3の感染性を阻害する。対照的に、モノクローナル抗体N−19およびF−1(これらの両方はTSG101タンパク質のその他の領域に対する)は、HIV感染性に対する阻害効果を示さなかった。
【0182】
PE−8 mabプールのサブクローンを単離した。上清を各々のハイブリドーマクローンから収集し、そしてその抗HIV活性について試験した。図17に示すように、サブクローンは、高阻害群(例えばH88およびG12)または低阻害群(例えばH10およびF8)のいずれかに入るようであり、これはPE−8プールが2個のみのmabを含むという事実と相関する。代表的な実験において、サブクローンH88によって産生されるmabを腹水からの精製IgGの形態で単離し、そして抗HIV活性について試験した。図18に示すように、H88 IgGは50%より多くHIV感染を阻害した。
【0183】
本出願の背景の節においてより詳細に記載するように、AIDSのための現在の処置は、HIVの逆転写酵素(RT)およびプロテアーゼの阻害剤を利用する。しかし、AIDS患者におけるウイルス負荷の低下におけるその最初の成功にもかかわらず、新たに感染した個体における薬剤耐性HIV株の出現に起因して、処置は効力を失い始める。
【0184】
TSG101が薬剤耐性HIVの感染プロセスに能動的に関与するかどうかを決定するために、TSG101のドミナントネガティブ変異体を生成した。簡潔に記載すると、TSG101アミノ酸残基1〜312(配列番号42)を、CMVプロモーターおよびポリAシグナルを含む発現ベクター(pLL1)中にサブクローニングすることによって、TSG101ドミナントネガティブ変異体発現ベクターを生成した。
【0185】
次いで、TSG101ドミナントネガティブ発現ベクターまたはコントロールベクターを、野生型または薬剤耐性HIVのための発現ベクターとともに、HEK293細胞中にコトランスフェクトした。培養上清をトランスフェクションの24〜48時間後に採集し、そして指示細胞株(MAGI細胞)に感染させるために使用した。MAGI細胞を感染の24〜28時間後に溶解し、そしてルシフェラーゼ活性についてアッセイした。HIV感染性の阻害をルシフェラーゼ活性の低下によって決定した。
【0186】
図19に示すように、TSG101のドミナントネガティブ変異体は、RT阻害剤耐性HIV株pL10Rおよびプロテアーゼ阻害剤耐性HIV株p1617−1の感染性を完全に阻害した。従って、TSG101は薬剤耐性HIV株の感染性において必須の役割を担っているようである。
【0187】
図20および21において実証されるように、抗TSG101 mabプールPE−8もまた、薬剤耐性HIV株pL10Rおよびp1617−1の感染性に対する有意な阻害を示した。対照的に、コントロールmab F−15およびF−19(これらの両方は全長TSG101に対して惹起された)は、薬剤耐性HIV株の感染性に対する阻害を示さなかった。これらの結果は、抗TSG101 mabがAIDSのための、特に薬剤耐性HIV株に感染した患者のための、新たな処置を提供し得ることを示唆する。抗TSG101抗体処置はウイルスタンパク質ではなく宿主タンパク質を標的化するので、TSG101関連経路がウイルス感染に関与している限り、それは全てのHIV変異体による感染の阻害において有効である。さらに、処置はウイルスに対して直接的な選択圧をかけないので、それは耐性の発達を遅らせる。
【0188】
抗TSG101 mabはヒト末梢血単核細胞(PBMC)におけるHIV産生を阻害する。
【0189】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)のHIV感染の抗体阻害
HIV感染の抗TSG101抗体阻害の有効性を決定するために、ヒトPBMCベースのHIV感染アッセイ(Pilgrim, et al., J. Infect Dis. 176:924-32, 1997およびZhou, et al., Virol. 71 :2512-7, 1997)を使用した。白血球を、HIV血清陰性ドナーの白血球搬出によって得、そしてPBMCをFicoll-Hypaque勾配遠心分離によって単離した。HIV−1感染の前に、PBMCを1ml当たり10μgのフィトヘマグルチニン(PHA)(PHA-P;Difco Laboratories, Detroit, Michigan)を含むインターロイキン2(IL−2)細胞培養培地中でのインキュベーションによって活性化した。IL−2培養培地は、1ml当たり100Uのペニシリン、100μgのストレプトマイシン、2mMのL−グルタミン、10%の熱不活化ウシ胎仔血清、および20Uの組換えIL−2(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, Indiana)を含むRPMI1640培地である。PHAとの一晩のインキュベーションの後、細胞を洗浄し、そして3〜5日IL−2との培養を継続した。全ての細胞培養物を5%CO2インキュベーター中37℃で維持した。
【0190】
HIV−1単離物をNational Institutes of Health (NIH) AIDS Research and Reference Reagent Program, Division of AIDS, National Institute of Allergy and Infectious Diseases, NIHから得(野生型HIV株pNL4−3、および薬剤耐性株pL10−Rおよびp1617−1を含む)、そしてPHAおよびIL−2刺激PBMC上での2または3サイクルの増殖によって拡大した。最終ウイルスストックを産生するために、PBMCを非希釈ウイルスに2時間10/mlの細胞濃度で曝露し、そしてIL−2培養培地を添加して、細胞濃度を10/mlにした。IL−2培養培地を2日毎に交換し、そして上清をHIV p24発現のピークの間に、通常、感染の5〜10日後に採集した。ウイルスストックを1000×gでの遠心分離および0.45μmフィルターを通したろ過によって無細胞にした。ウイルスのアリコートを液体窒素の気相中に貯蔵した。HIVウイルス50%組織培養感染用量(TCID50)を、以前に記載されるようにPHAおよびIL−2刺激PBMCを使用する高感度14日エンドポイント力価アッセイによって決定した(Mascola, et al., J. Infect Dis. 173:340-8 1996)。
【0191】
PHAおよびIL−2刺激PBMCのHIV−1感染を、96ウェル丸底培養プレート中で、40μlのウイルスストックを20μlのPBMC(1.5×10細胞)と合わせることによって行った。感染多重度(MOI)を個々の実験について最適化した。抗TSG101抗体阻害アッセイを96ウェルプレート形式で行った。このアッセイにおいて、500〜1,000 TCID50のHIV−1を各々のウェルに添加し、約0.01のMOIを得た。PBMCを抗体およびウイルスとともに24時間〜15日間インキュベートする。このアッセイは、数回のウイルス複製を可能にし、それゆえ、ウイルス増殖キネティクス(細胞外HIV p24産生として測定)を2〜15日目の培養上清の連続的な採集によってモニターする。HIV p24を市販のELISAキット(Perkin Elmer)を用いて測定する。HIV感染の抗体阻害を、Kimpton, et al.およびWei, et al. (Kimpton, et al., J. Viol 66, 2232, 1992; Wei, et al., Antimicro Agents Chemother, 46, 1896, 2002)によって記載されるようなMAGIアッセイを使用して、細胞培養上清における感染性HIV粒子の産生の有意な阻害によって決定した。抗体インキュベーションの複数の時点および持続時間をヒトPBMCのHIV感染の最適阻害について検討する。
【0192】
図22および23に示すように、抗TSG101 mabプールPE−8(図中C8Pとして示す)はそれぞれ3日および7日のインキュベーションの後にヒトPBMCにおけるHIV産生を有意に阻害する。
【0193】
実施例4:抗TSG101 mab遺伝子の分子クローニング
PE−8抗体プール(2個のmabを含む)中のmabをコードする遺伝子をクローニングした。簡潔に記載すると、mab遺伝子の可変領域を、ハイブリドーマ細胞からの全RNAを用いるRT−PCRによって、両方の鎖の可変領域の近くの定常ドメインおよびmabリーダー配列から設計した縮重プライマーを使用して増幅した。PE−8プールの重鎖の可変ドメインを、フォワードプライマー(5’−actagtcgacatgtacttgggactgagctgtgtat−3’(配列番号4))およびリバースプライマー(5’−cccaagcttccagggrccarkggataracigrtgg−3’(配列番号5))を用いて増幅し;一方、軽鎖の可変ドメインを、フォワードプライマー(2つの縮重プライマー5’−actagtcgacatggtrtccwcasctcagttccttg−3’(配列番号6)および5’−actagtcgacatgakgthcycigctcagytyctirg−3’(配列番号7)の混合物)ならびにリバースプライマー(5’−cccaagcttactggatggtgggaagatgga−3’(配列番号8))を用いて増幅した。mab 3Glの重鎖の可変ドメインを、フォワードプライマー(3つの縮重プライマー5’−actagtcgacatgatggtgttaagtcttctgtacct−3’(配列番号9)、5’−actagtcgacatgaaatgcagctggrtyatsttctt−3’(配列番号10)、および5’−actagtcgacatggrcagrcttacwtyytcattcct−3’(配列番号 11)の混合物)ならびにリバースプライマー、5’−cccaagcttccagggrccarkggataracigrtgg−3’(配列番号12)を用いて増幅し、一方、軽鎖の可変ドメインを、フォワードプライマー(4つの縮重プライマー5’−actagtcgacatgaagttgcctgttaggctgttggtgct−3’(配列番号13)、5’−actagtcgacatggatttwcargtgcagattwtcagctt−3’(配列番号14)、5’−actagtcgacatggtyctyatvtccttgctgttctgg−3’(配列番号15)および5’−actagtcgacatggtyctyatvttrctgctgctatgg 3’(配列番号16)の混合物)ならびにリバースプライマー、5’−cccaagcttactggatggtgggaagatgga−3’(配列番号17)を用いて増幅した。450bpのPCR産物をアガロースゲルから精製し、そして配列決定確認のためにTAクローニングベクター中に連結した。
【0194】
上記の方法を使用して、プールPE−8のクローンD1(ドミナントクローン)およびクローン3G1の重鎖および軽鎖cDNA配列を決定した。増幅されたcDNA配列および可変領域の核酸およびアミノ酸配列を表1中にまとめる。
【0195】
【表3】

【0196】
図23〜26はクローニングした重鎖および軽鎖配列のマウスIgG重鎖および軽鎖配列に対する配列アラインメントを示す。mabの相補性決定領域(CDR)を表2中に列挙する。
【0197】
【表4】

【0198】
実施例5:抗TSG101抗体はエボラウイルスの放出を阻害する
この実施例は、TSG101がEBOV VP40と相互作用すること、TSG101がEBOV VLP中に組み入れられること、および抗TSG101抗体がEBOVウイルス様粒子(VLP)の放出を阻害することを示す。
【0199】
フィロウイルス科のそれのみのメンバーであるEBOVおよびMARVは、7つの遺伝子を含む(−)鎖非セグメント化19Kb RNAゲノムを有する:核タンパク質(NP)、ウイルスタンパク質VP35、VP40、糖タンパク質(GP)、VP30、VP24、およびRNAポリメラーゼ(L)(MARVにおいて7つのタンパク質を、そしてEBOVにおいて8つのタンパク質をコードする)。最近の研究は、326アミノ酸のマトリックス(M)タンパク質であるVP40の細胞局在化および役割においけるいくらかの洞察を提供している(Jasenosky, et al., 2001, J. Virol. 75 (11): 5205-14; Kolesnikova, et al., 2002, J. Virol 76 (4): 1825-38)。EBOVまたはMARVのいずれかに感染した細胞において、VP40の大部分は、疎水性相互作用を介して形質膜の細胞質面と末梢性に会合している。重要なことに、トランスフェクトした細胞におけるEBOVおよびMARV VP40の発現は、オーセンティックなウイルスに類似したいくつかの形態的特性を有する非感染性粒子であるウイルス様粒子(VLP)の産生に必要とされる。感染細胞からのそれ自体の放出を指図するVP40の能力は、その他のエンベロープRNAウイルスに共通のプロリンリッチ配列モチーフにマッピングされた(Harty, et al., 2000, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97, 13871-6)。
【0200】
エボラのアセンブリおよび放出のための代用モデルとしてのウイルス様粒子の生成
いくつかのウイルス様粒子をウイルスマトリックスタンパク質の単なる発現によって生成することができる(Johnson, et al., 2000, Curr. Opin. Struct. Biol. 10, 229-235)。EBOVおよびMARVのマトリックスタンパク質(VP40)は、形質膜およびウイルス封入体の両方に局在化することが示されており(Kolesnikova, et al., 2002, J. Virol. 76, 1825-38; Martin-Serrano, et al., 2001, Nature Medicine 7, 1313-19)、このことはVP40が成熟ビリオンのアセンブリおよび放出を駆動し得ることを示唆する。しかし、VP40単独の発現によって効率的にVLPを生成する試みは大部分が実りがなく、無定形VP40含有物質の非効率的な放出を特徴とした(Bavari, et al., 2002, J. Exp. Med. 195, 593-602)。レトロウイルスにおいて、アセンブリ複合体のラフト局在化はN末端アシル化Gagタンパク質の会合によって調節され(Campbell, et al., 2001, J. Clin. Virol. 22, 217-227)、一方、VP40のようなフィロウイルスタンパク質のラフト標的化は主にウイルス糖タンパク質(GP)によって調節されるようである(Bavari, et al., 2002, J. Exp. Med. 195, 593-602)。それゆえ、フィロウイルスVLPの生成はGPおよびVP40両方の同時発現を必要とし得ると仮定された。GPおよびVP40が培養上清中に放出されるかどうかをまず検討した。GPまたはVP40のいずれかを単独で発現する細胞において、両方のタンパク質を細胞および上清の両方において検出することができた(図9A)。しかし、両方のタンパク質の同時発現は、細胞からの放出の実質的な増加を生じた(図9A)。放出されたGPおよびVP40が粒子中で会合しているのであれば、VP40は抗GP mAbを用いて免疫共沈降されるに違いないと考えられた。図9Bに示すように、VP40は、EBOVのGPおよびVP40の両方でトランスフェクトした細胞の上清からの抗GP免疫沈降物において容易に検出された。VP40はVP40単独を発現する細胞の上清からは沈降されず、このことは免疫共沈降(co-IP)が特異的であることを示す。
【0201】
EBOV GPおよびVP40によって形成される粒子はエボラウイルスの形態的特徴を示す
免疫共沈降(co-IP)実験は、上清中に放出されたGPおよびVP40が何らかの形態で互いに会合していることを実証した。これらの複合体がウイルス様粒子(VLP)を表すかどうかを決定するために、培養上清からの粒子物質をスクロース勾配超遠心分離によって精製し(Bavari, et al., 2002, J. Exp. Med. 195, 593-602)、そして電子顕微鏡を使用して分析した。興味深いことに、GPおよびVP40でコトランスフェクトした細胞の上清から得た粒子の大部分はフィロウイルスに著しく類似した線維状形態を示した(図10Aおよび10B)(Geisbert, et al.,1995, Virus Res. 39, 129-150; Murphy, et al.,1978, Ebola and Marburg virus morphology and taxonomy, 1 edn (Amsterdam, Elsvier))。対照的に、単一トランスフェクト細胞から得た物質は、細胞死の間に放出されたと思われる、少量の膜断片のみを含んでいた。VLPは50〜70nmの直径を有しそして1〜2μm長である(図10)。これは、インビトロ感染後の細胞培養上清において見出されるエボラビリオンの長さの範囲に類似する(Geisbert, et al.,1995, Virus Res. 39, 129-150)。VLPのより小さな直径(EBOVについての80nmと比較して)はリボ核タンパク質複合体の欠如に起因し得る。これらの粒子の中の、分枝状、桿状、U形および6形形態のようなフィロウイルスについて記載されている形態の全ての型(Feldmann, et al.,1996, Adv. Virus Res. 47, 1-52; Geisbert, et al.,1995, Virus Res. 39, 129-150)が観察された(図10)。さらに、VLPは、EBOVに特徴的な5〜10nmの表面突起または「スパイク」でコートされていた(図10)(Feldmann, et al.,1996, Adv. Virus Res. 47, 1-52; Geisbert, et al.,1995, Virus Res. 39, 129-150)。抗エボラGP抗体でのVLPの免疫金染色は、エボラ糖タンパク質としての、粒子の表面上のスパイクの同一性を実証した(図10B)。マールブルグウイルスについてのVLPもまた同様に生成された。
【0202】
まとめると、生物封じ込め研究室の制限なしに行うことができるエボラウイルスのアセンブリおよび放出のための代理アッセイが確立された。このアッセイを、エボラウイルス出芽を阻害し得る薬剤の初期スクリーニングのために使用することができる。
【0203】
エボラウイルス生活環におけるTSG101の役割に関する研究
本発明者らは、EBOVのアセンブリおよび放出における、VP40の後期ドメインとの、液胞タンパク質ソーティング(vps)タンパク質TSG101の相互作用の関与を検討するために、一連の生化学的研究を行った。MycエピトープでC末端タグ化したTSG101切断型の1組をこれらの研究のために使用した。293T細胞を、EBOV VP40とともに全長TSG101および140、250および300位で切断した変異体でトランスフェクトした。細胞を48時間後に溶解し、そして抗Myc抗体を用いる免疫沈降に供した。図11に示すように、VP40は、1〜140切断変異体以外の全てのTSG101タンパク質とともに共沈された。この変異体との会合の欠如は、残基141〜145がHIV Gag由来PTAPペプチドと重要な接触をすることを示す構造データと一致する(Pornillos, et al., 2002, Nat. Struct. Biol. 9, 812-7)。興味深いことに、TSG101の1〜300変異体とのVP40の会合は、全長または1〜250変異体よりも有意に強かった(図11)。全長TSG101のより低い会合は、TSG101のUEVドメインとの分子間または分子内会合を形成し得るこの分子のC末端領域におけるPTAPモチーフの存在に起因し得る。アミノ酸250〜300の欠失から生じる相互作用の劇的な低下は、この領域中の残基がウイルスマトリックスタンパク質への結合に寄与し得ることを示唆する。
【0204】
TSG101およびVP40が直接的にそしてPTAPモチーフを介して会合することを確認するために、ファーウエスタン分析を行った。エボラVP40(1〜326)および切断型(31〜326)エボラVP40タンパク質ならびにTSG101のHAタグ化UEVドメインを細菌中で産生した。これらのタンパク質を4〜20%勾配ゲル上で電気泳動し、そしてニトロセルロース膜上にエレクトロブロットした。ブロッキング後、ブロットを精製TSG101タンパク質(UEV)とともにインキュベートし、洗浄し、そしてタンパク質タンパク質相互作用を、抗TSG101抗体および二次抗体としてのHRP標識ヤギ抗ウサギを使用する高感度化学発光によって検出した。図12に示すように、TSG101は全長エボラVP40と相互作用するが、切断型エボラVP40とは相互作用せず、VP40のN末端におけるPTAPモチーフがVP40 TSG101(UEV)相互作用において重要な役割を担うことが確認された。エボラVP40抗体を用いて展開された同一のウエスタンブロットは、全長および切断型両方のVP40を検出することができ、このことはブロット上の両方のタンパク質の存在を示す。
【0205】
エボラVP40 TSG101相互作用の表面プラズモン共鳴バイオセンサー(SPR)分析
TSG101と相互作用するエボラVP40の定量分析をSPR測定を使用して行った。エボラVP40のN末端からの11個のアミノ酸残基を含むビオチン化ペプチド(Bio − ILPTAPPEYME、配列番号43)をストレプトアビジンチップ上に固定化した。UEVドメインのみを含む精製TSG101タンパク質を段階的に様々な濃度(1、2、5、20μM)で注射した。図13に見られるように、ペプチドとタンパク質との間の中程度の親和性の相互作用を検出することができた。SPRデータに基づいて、本発明者らはこの相互作用について約2μMのKd値を算出した。
【0206】
エボラVLPおよびビリオン中のTSG101の組み入れ
TSG101がEBOV VLP中に組み入れられるかどうかを決定するために、293T細胞において、TSG101(1〜312、配列番号42)をGPまたはGP+VP40と一緒に発現させた。抗GP抗体を使用して、VLPを上清から免疫沈降させた。TSG101(1〜312)の発現はVLP放出の顕著な増加を生じ、このことはVLP出芽におけるTS101についてのポジティブな役割を示唆する(図14A、レーン4)。さらに、TSG101(1〜312)は、GPおよびVP40とともに発現させた場合に、培養上清から抗GP抗体を用いて免疫共沈降された(図14A、レーン4)。VP40の非存在下で発現させた場合に、TSG101はGPと会合しては見出されず(図14A、レーン3)、このことはGPとのその会合がVLPの形成に依存することを示唆する。同様の結果はまた、全長TSG101を用いて得られた。これらのデータは、TSG101がVLP中に組み入れられることを強く示唆し、そしてTSG101がウイルスのアセンブリおよび/または出芽において役割を担うという仮説を支持する。この知見をさらに確証するために、本発明者らはまた、不活化、バンド精製EBOV(iEBOV)をTSG101の存在について分析した。5μgのiEBOVをTSG101の存在についてイムノブロッティングによって分析した。図6Bに示すように、本発明者らは容易に検出可能なレベルのTSG101をiEBOV中に見出し、エボラウイルス中のTSG101の組み入れが明らかに実証された。
【0207】
エボラウイルス放出に対するポリクローナル抗TSG101抗体の効果
生化学およびVLP放出データは、TSG101がエボラウイルスの放出のために重要であることを示唆する。それゆえ、ポリクローナル抗TSG101抗体「C」および「E」(HIVに対する阻害効果を示す、実施例1および2参照)を、エボラZaire−95ウイルスに感染したHeLa細胞におけるウイルス産生に関して試験した。HeLa細胞の単層をウイルスとともに1のMOIで50分間インキュベートし、洗浄し、そして抗TSG101抗体またはコントロールウサギ抗マウス抗体を含む培地を5μg/mlで添加した。24時間後に、上清を収集し、そして放出されたウイルスを以前に記載されるようにプラークアッセイによって計数した(Bavari, et al., 2002, J. Exp. Med. 195, 593-602)。図15に示すように、これらの抗体はビリオンのHeLa細胞上清中への放出を部分的に阻害した。
【0208】
抗TSG101 mabはEBOVチャレンジに対してマウスを保護する
抗TSG101 mabを、マウスにおけるその抗EBOV活性についても試験した。簡潔に記載すると、10匹の群のBalb/cマウスに、精製IgGの形態の抗TSG101 mabプールPE−8(表3および図27においてmab C8として示す)4mg、コントロールmab 4mg、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)のいずれかを腹腔内注射した。注射の1時間後に、マウスにEBOVを100pfu/マウスの用量でチャレンジした。表3および図27に示すように、抗TSG101 mabの注射はEBOVチャレンジマウスの生存率を有意に増加させた。
【0209】
【表5】

【0210】
本明細書において引用する全ての参考文献の全体を本明細書に参照により全ての目的のために、各々の個々の刊行物または特許または特許出願が具体的かつ個別にその全体を参照により全ての目的のために組み入れると示すのと同程度に組み入れる。
【0211】
当業者に明らかなように、本発明の多くの改変および変形がその精神および範囲から逸脱することなくなされ得る。本明細書に記載される特定の実施態様は例のみとして与えられ、そして本発明は特許請求の範囲が与えられる等価物の全範囲とともに添付の特許請求の範囲の関係によってのみ制限される。
【0212】
配列番号同定によって本明細書に記載される配列
【化1】






















【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象に有効量の抗TSG101抗体を提供することを含む、哺乳動物対象におけるウイルス感染を阻害するための方法であって、前記抗体は前記ウイルスに感染し得る前記対象の細胞上に存在するTSG101に結合する、方法。
【請求項2】
抗TSG101抗体がモノクローナル抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
モノクローナル抗体が抗体C、D1、E、SG1およびCB8からなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
モノクローナル抗体がTSG101のC末端領域中のエピトープに結合する、請求項2記載の方法。
【請求項5】
抗TSG101抗体がヒト化抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
ヒト化抗体が配列番号30〜41からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ヒト化抗体が配列番号30〜35に記載のアミノ酸配列を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
ヒト化抗体が配列番号36〜41に記載のアミノ酸配列を含む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルスがヒト免疫不全ウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルス、脳炎ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、ラッサ熱ウイルス、肝炎ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、痘瘡ウイルス、ヘルペスウイルスまたはフニンウイルスである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記哺乳動物が非ヒトであり、そして前記ウイルスが仮性狂犬病ウイルス、仮性狂犬病ウイルスII、ブタロタウイルス、ブタパルボウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス、ニューカッスル病ウイルスh、ブタインフルエンザウイルス、ブタインフルエンザウイルス、口蹄疫ウイルス、ブタコレラウイルス、ブタインフルエンザウイルス、アフリカブタ熱ウイルス、ウシ感染性鼻気管炎ウイルス、感染性喉頭気管炎ウイルス、ラクロスウイルス、新生仔ウシ下痢ウイルス、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス、プンタトロウイルス、マウス白血病ウイルス、マウス乳癌ウイルス、ウマインフルエンザウイルスまたはウマヘルペスウイルス、ウシRSウイルス、ウシパラインフルエンザウイルス、PRRSウイルス、ブタまたはウシサーコウイルス、ブタまたはウシコロナウイルス、ブタまたはウシRSV、ブタ、ウシまたはトリインフルエンザ、EIAV、またはブルータングである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記抗体を前記哺乳動物に投与することによって前記抗TSG101抗体が前記哺乳動物に提供される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
TSG101のエピトープに結合する抗体の調製を含む前記ヒトにおける免疫応答を誘導するTSG101免疫原の前記哺乳動物への接種によって、前記抗TSG101抗体が前記哺乳動物に提供される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるTSG101 C末端領域に結合する、抗TSG101モノクローナル抗体。
【請求項14】
前記モノクローナル抗体が配列番号19、22、25または28に記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、請求項13記載の抗TSG101モノクローナル抗体。
【請求項15】
抗体C、D1、E、3G1およびCB8からなる群より選択される、TSG101に結合するモノクローナル抗体。
【請求項16】
前記抗体が配列番号30〜41からなる群より選択されるアミノ酸を含むヒト化抗体である、請求項14記載のモノクローナル抗体。
【請求項17】
1)有効量の抗TSG101抗体;および
2)薬学的に許容される担体、
を含む、哺乳動物におけるウイルス感染を阻害するための医薬組成物であって、前記抗TSG101抗体が配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるTSG101 C末端領域内のエピトープに結合する、医薬組成物。
【請求項18】
1)有効量の抗TSG101抗体;および
2)薬学的に許容される担体、
を含む、哺乳動物におけるウイルス感染を阻害するための医薬組成物であって、前記抗TSG101抗体が抗体C、D1、E、3G1およびCB8からなる群より選択される、医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公表番号】特表2010−510235(P2010−510235A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537363(P2009−537363)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/084808
【国際公開番号】WO2008/064072
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(509133377)ファンクショナル・ジェネティクス・インコーポレーテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】FUNCTIONAL GENETICS,INC.
【Fターム(参考)】