説明

折り返しダイポールアンテナ

【課題】従来のアンテナ装置では、折り曲げにより導体長手方向のサイズは減少するが、略対称な対向素子が必要なため導体長手方向と垂直な向きのサイズが大きくなる。さらに素子形状により指向性が標準的なダイポールアンテナから大きく変化してしまうため、素子形状の設計が難しいという課題があった。
【解決手段】本発明の折り返しダイポールアンテナは、長さが波長λの1/2未満で互いに平行に配置された2本の平行線路部と垂直で、給電部が無い平行線路部から給電部が接続された平行線路部方向に両端接続部を延長した2本の延長部を備える。延長部を給電点側にしか持たないため、導体長手方向のサイズ減少を、導体長手方向と垂直な向きのアンテナサイズを小さく保ったまま実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイポールアンテナ、特に小型の折り返しダイポールアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機やポータブルテレビなどのポータブル無線送受信機の普及が拡大している。これらのポータブル機器において、電波を送受信するアンテナはデザイン性、可搬性を高めるため小型化することが望まれている。
【0003】
特許文献1にはダイポールアンテナへ対向素子を追加することにより、電波の放射指向性を変更する技術が開示されている。特許文献1の図1には、筐体1に給電手段3が接続され、給電手段3から給電された時に駆動電流ベクトルを発生するダイポールアンテナ2と、ダイポールアンテナ2と同一平面に属し、かつ4分の1波長以下の距離にダイポールアンテナ30と略対称に配置された導体からなる対向素子5とを備える。
ダイポールアンテナ2には給電手段3から給電されることによって駆動電流ベクトルVが生じ、対向素子5には当該駆動電流ベクトルVによって誘導された逆相の誘導電流ベクトルViが生じる。これらの駆動電流ベクトルV及び誘導電流ベクトルViによって生じる電磁界の放射パターンを筐体1のx軸方向から見ると、図1(c)に示すようにy軸を挟んでほぼ対称な中央狭窄形になる。これは、両電流ベクトルVおよびViが互いに逆相であるために、合成された放射パターンはy軸方向原点付近で相殺されるからである。
【0004】
特許文献1に開示された発明によれば、ダイポールアンテナ2と対向素子5とを近接させてコンパクトに内蔵型アンテナ装置を構成し、不要な方向に放射指向性を形成しないようにすることができる。それにより、使用時に使用者側へ向く方向への電波放射を回避でき、使用者の影響による放射効率の低下や、入力インピーダンスの変動による不整合損失を防ぐことができる。
【0005】
アンテナ素子形状の実施の一例が特許文献1の図6(e)である。ダイポールアンテナ2の両端を折り曲げ、対向素子5をダイポールアンテナ2と略対称に設置する。そして、ダイポールアンテナ2と対向素子5の折り曲げ箇所を2本の接続部7、8にて接続する。このような構成によりアンテナのインピーダンスを制御し、インピーダンス整合を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−201049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来のアンテナ装置では、折り曲げにより導体長手方向のサイズは減少するが、略対称な対向素子が必要なため導体長手方向と垂直な向きのサイズが大きくなる。さらに素子形状により指向性が大きく変化し、標準的なダイポールアンテナの指向性からずれてしまうため、指向性の調整が困難という課題があった。
【0008】
そこで本発明は、上記課題を解決すべく、折り返しダイポールアンテナにおいて導体長手方向のサイズ減少を、導体長手方向と垂直な向きのアンテナサイズを小さく保ったまま、さらに放射指向性を標準ダイポールアンテナと同一として実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の折り返しダイポールアンテナは、λの波長を有する電波を送受信するアンテナにおいて、長さがλの1/2未満で、互いに平行に配置された2本の平行線路部と、前記2本の平行線路部のいずれか1本に接続され電力を供給する給電部と、前記2本の平行線路部のそれぞれの両端を接続する2本の両端接続部と、前記平行線路部と垂直で、前記給電部が無い前記平行線路部から前記給電部が接続された前記平行線路部方向に前記両端接続部を延長した2本の延長部とを備えることを特徴とする。
【0010】
延長部を給電点側にしか持たないため、導体長手方向のサイズ減少を、導体長手方向と垂直な向きのアンテナサイズを小さく保ったまま実現できる。さらに2本の平行線路部に流れる電流ベクトルは互いに同位相のため、放射指向性を標準ダイポールアンテナと同一とすることができる。
【0011】
さらに上記の発明において、前記平行線路部が曲がりくねった形状を有するミアンダ形状であることを特徴とするものであってもよい。
【0012】
この場合は延長部にミアンダ線路部の線路長を足したアンテナ実効長を有するため、導体長手方向の更なるサイズ減少を実現することができる。
【0013】
さらに上記の発明において、前記延長部が曲がりくねった形状を有するミアンダ形状であることを特徴とするものであってもよい。
【0014】
この場合は延長部のサイズ減少を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明のアンテナによれば、延長部を給電点側にしか持たないため、導体長手方向のサイズ減少を、導体長手方向と垂直な向きのアンテナサイズを小さく保ったまま実現できる。さらに2本の平行線路部に流れる電流ベクトルは互いに同位相のため、放射指向性を標準ダイポールアンテナと同一とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1における折り返しダイポールアンテナの構成を示す図
【図2】実施の形態1におけるダイポールアンテナの構成および動作を示す図
【図3】実施の形態1における折り返しダイポールアンテナの構成および動作を示す図
【図4】実施の形態1における折り返しダイポールアンテナのシミュレーション結果を示す図
【図5】実施の形態1における折り返しダイポールアンテナの実測およびシミュレーション結果を示す図
【図6】実施の形態1における折り返しダイポールアンテナのその他の構成を示す図
【図7】実施の形態1における折り返しダイポールアンテナのその他の構成を示す図
【図8】実施の形態2における折り返しダイポールアンテナの構成を示す図
【図9】実施の形態2における折り返しダイポールアンテナの動作を示す図
【図10】実施の形態3における折り返しダイポールアンテナの構成を示す図
【図11】実施の形態3における折り返しダイポールアンテナの動作を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1の折り返しダイポールアンテナは平行線路部と垂直に設けられた延長部によりアンテナ実効長を伸ばすことが可能であり、平行線路部の長さが1/2波長未満しか取れない限られたスペース内においても、より高利得な特性を有するアンテナを実現することができる。
【0018】
図1は実施の形態1における折り返しダイポールアンテナ100の構成を示す構成図である。本実施の形態の折り返しダイポールアンテナ100は波長λを有する電波を送受信し、平行に配置された長さL1(L1は波長λの1/2未満)の第1の平行線路部110および第2の平行線路部120と、第1の平行線路部110に接続され電波の電力を供給する給電部130と、第1の平行線路部110と第2の平行線路部120との両端を接続する両端接続部140とを有する。以上までは通常の折り返しダイポールアンテナと同じ構成である。
【0019】
本実施の形態では上記構成に加えて延長部150を有する。延長部150は第1の平行線路部110と垂直で、第2の平行線路部120から第1の平行線路部110に向かう方向に両端接続部140を延長した素子であり、この延長部150によりアンテナ実効長を伸ばし、省スペースで高利得なアンテナを実現することができる。
【0020】
上記のように構成された本発明の折り返しダイポールアンテナ100の動作について、図面を参照しながら説明する。まず、図2に一般的に用いられる標準ダイポールアンテナ200の構成と電流分布(図2(a))と放射指向性(図2(b))とを示す。波長λを有する電波を送受信し、長さLが波長λの約1/2の線路部210と、線路部210に接続され電波の電力を供給する給電部220とを有する。
【0021】
このダイポールアンテナ200は周波数f=c/(2×L)(Hz)(c=光速、L≒λ/2)で共振し、図2(a)のように電流分布Iは給電部220で最大となり、線路部210の両端でゼロとなる。また、電流ベクトルVIは線路部210に沿って平行となり、その向きと大きさは時間と共に変化する。
【0022】
この線路部210に流れる電流によって電界エネルギーが放射される。このときの放射指向性を示したものが図2(b)である。ただし、この放射指向性は大地から無限に離れた自由空間でのものである。水平面内(xy平面、xz平面)では、線路部210の延長方向には電波は放射せず、線路部210の垂直方向が最大となる8の字状の放射パターンとなる。また、垂直面内(yz平面)では、給電部220を中心とした円周状の放射パターンとなり無指向性となる。
【0023】
次に、図3を参照して本実施の形態の折り返しダイポールアンテナ100の電流分布(図3(a))と放射指向性(図3(b))とを説明する。ここで、所望の送受信周波数f0(=c/λ)(c=光速)において、第1の平行線路部110および第2の平行線路部120の長さL1は波長λの1/2未満(例えばλ/3程度)であり、L3は延長部150の長さ、L2はL1+L3×2で求められる長さでありλ/2とほぼ等しい。折り返しダイポールアンテナ100は周波数f1=c/(2×L1)(Hz)(c=光速、L1=λ/2未満)で共振する。この共振は標準的な折り返しダイポールアンテナの動作と同じである。これに加えて折り返しダイポールアンテナ100は、第1の平行線路部110および第2の平行線路部120の長さL1に延長部150の長さL3を足したアンテナ実効長を有するため、周波数f2=c/(2×L2)≒f0(Hz)(c=光速、L2=L1+L3×2)でも共振する。このように、所望の周波数f0で共振するため、平行線路部長さL1がλ/2未満しか確保できない省スペースにおいても、所望の周波数f0にて高いアンテナ利得を実現することができる。
【0024】
第1の平行線路部110に流れる第1の電流ベクトルVI1はダイポールアンテナ200と同様に第1の平行線路部110に沿って平行であり、その向きと大きさは時間と共に変化する。一方、第2の平行線路部120に流れる第2の電流ベクトルVI2は第1の電流ベクトルVI1と同位相となる。このように第1の平行線路部110および第2の平行線路部120に流れる2つの電流ベクトルが同位相となるため、放射指向性は標準的なダイポールアンテナ200(図2(b))と同じで図3(b)に示すように、水平面内(xy平面、xz平面)では、第1の平行線路部110の延長方向には電波は放射せず、第1の平行線路部110の垂直方向が最大となる8の字状の放射パターンとなる。また、垂直面内(yz平面)では、給電部130を中心とした円周状の放射パターンとなり無指向性となる。
【0025】
これら動作の確認のために、電磁界シミュレーションによる電流分布および放射指向性の確認を行ったので図4にその結果を示す。検討の際の各種条件は、所望周波数f0=600MHz(λ=c/f0=500mm)、平行線路部長さL1=180mm、延長部150長さ0〜30mmである。このように平行線路部長さL1=180mmはλ/2=250mmと比較して小さくなっている。
【0026】
図4(a)のように電流分布は給電部130で最大となり、第1の平行線路部110および第2の平行線路部120の両端でゼロとなる。また、第1の平行線路部110および第2の平行線路部120の電流ベクトルは同位相であり図3の説明と同じである。一方、放射指向性は水平面内(xy平面、xz平面)では、第1の平行線路部110の延長方向には放射せず、第1の平行線路部110の垂直方向が最大となる8の字状の放射パターンとなり、垂直面内(yz平面)では、給電部130を中心とした円状の放射パターンとなり無指向性となる。このように、放射指向性も図3の説明と同じであることが確認された。
【0027】
次に延長部150の長さに対する折り返しダイポールアンテナ100のアンテナ利得の変化をシミュレーション、および電波暗室内での実機実験により検討した。図5(a)は延長部150の長さが0mmの時のアンテナ利得を0dBとして、延長部150の長さによる利得の変化量を示したものである。実測結果、シミュレーション結果ともに延長部150が長いほどアンテナ利得が良化しており、長さ30mmで実測結果5dB、シミュレーション結果4dBの利得改善効果があり、平行線路部長さL1がλ/2よりも小さい場合においてもアンテナの高利得化が可能であることがわかる。
また、図5(b)に実測の放射指向性を示す。水平面内(xy平面)では、第1の平行線路部110の延長方向には放射せず、第1の平行線路部110の垂直方向が最大となる8の字状の放射パターンとなった。一方、垂直面内(yz平面)では、給電部130を中心とした円状の放射パターンとなり無指向性となった。なお、xy平面(水平偏波)の指向性のピーク値がyz平面(垂直偏波)の指向性のピーク値よりも大きくなっているのは実測の際に垂直偏波にマイナスの補正をかけている為である。このように、実測によるアンテナ利得の変化、および放射指向性はシミュレーション結果とほぼ一致した。
【0028】
以上のように本発明の実施の形態1によれば、折り返しダイポールアンテナは延長部150により、平行線路部長さ方向のサイズが減少した際にも高利得を実現することができる。また、延長部150は給電部130側にしか存在しないため、平行線路と垂直方向のサイズも小さくできる。さらに、2本の平行線路部には同位相の電流が流れるため、通常のダイポールアンテナと放射指向性は同じとなり、アンテナ形状により指向性が大きく変化することは無い。
【0029】
なお、本実施の形態において図6のように各構成素子の線幅を太くしても良い。図6(a)は延長部150の線幅を太くした場合、図6(b)は第1の平行線路部110および第2の平行線路部120の線幅を太くした場合、図6(c)は両端接続部140の線幅を太くした場合、図6(d)は第1の平行線路部110、第2の平行線路部120、両端接続部140、および延長部150の線幅を太くした場合の構成図である。
これらの構成によりアンテナの容量成分が増加し、共振の鋭さを示すQ値(Quality Factor)が小さくなるため、共振周波数がブロードとなりアンテナの帯域を広げることが可能となる。また、線幅を太くする構成素子の組み合わせは任意である。
【0030】
さらに、本実施の形態において図7のように第1の平行線路部110と第2の平行線路部120との素子幅を異なる値としても良い。図7(a)は第1の平行線路部110の線幅を太くした場合、図7(b)は第2の平行線路部120の線幅を太くした場合の構成図である。
【0031】
これらの構成によりアンテナ特性インピーダンスが変化するため、アンテナ素子形状にて最適なインピーダンス値に調整し、インピーダンス不整合による損失を防止することが可能となる。
【0032】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2の折り返しダイポールアンテナは、平行線路部をミアンダ形状とすることによりアンテナ実効長を伸ばし、よりアンテナを小型化することが可能となる。図8は実施の形態2における折り返しダイポールアンテナ300の構成を示す構成図である。本実施の形態の折り返しダイポールアンテナ300は波長λを有する電波を送受信し、横幅L4が波長λの1/2未満(例えばλ/4程度)で曲がりくねったミアンダ形状を有する第1のミアンダ線路部310、および第2のミアンダ線路部320と、第1のミアンダ線路部310に接続され電波の電力を供給する給電部330と、第1のミアンダ線路部310と第2のミアンダ線路部320の両端を接続する両端接続部340と、第1のミアンダ線路部310の長手方向と垂直で、第2のミアンダ線路部320から第1のミアンダ線路部310に向かう方向に両端接続部340を延長した延長部350とを有する。ミアンダ形状および延長部350によりアンテナ実効長を延ばし、省スペースで高利得なアンテナを実現することができる。
【0033】
上記のように構成された本発明の折り返しダイポールアンテナ300の動作について、図面を参照しながら説明する。図9に本実施の形態の折り返しダイポールアンテナ300の電流分布(図9(a))と放射指向性(図9(b))とを示す。ここで、所望の送受信周波数f0(=c/λ)(c=光速)において、第1のミアンダ線路部310および第2のミアンダ線路部320の横幅L4およびそれらの線路長L5は波長λの1/2未満であり、L6は延長部350の長さ、L7はL5+L6×2で求められる長さでありλ/2とほぼ等しい。
【0034】
折り返しダイポールアンテナ300は周波数f3=c/(2×L5)(Hz)(c=光速、L5=λ/2未満)で共振する。これに加えて折り返しダイポールアンテナ300は、第1のミアンダ線路部310および第2のミアンダ線路部320の線路長L5に延長部350の長さL6を足したアンテナ実効長を有するため、周波数f4=c/(2×L7)≒f0(Hz)(c=光速、L7=L5+L6×2)でも共振する。このように、所望の周波数f0に近い周波数で共振するため、ミアンダ線路部の横幅L4がλ/2未満しか確保できない省スペースにおいても、所望の周波数f0にて高いアンテナ利得を実現することができる。
【0035】
第1のミアンダ線路部310に流れる第3の電流ベクトルVI3はダイポールアンテナ200と同様に第1のミアンダ線路部310の長手方向に沿って平行であり、その向きと大きさは時間と共に変化する。一方、第2のミアンダ線路部320に流れる第4の電流ベクトルVI4は第3の電流ベクトルVI3と同位相となる。このように第1のミアンダ線路部310および第2のミアンダ線路部320に流れる2つの電流ベクトルが同位相となるため、放射指向性は標準的なダイポールアンテナ200(図2(b))と同じで図9(b)に示すように、水平面内(xy平面、xz平面)では、第1のミアンダ線路部310の長手延長方向には電波は放射せず、第1のミアンダ線路部310の長手方向と垂直な向きが最大となる8の字状の放射パターンとなる。また、垂直面内(yz平面)では、給電部330を中心とした円周状の放射パターンとなり無指向性となる。
【0036】
なお、本実施の形態において実施の形態1と同様に各構成素子の線幅を太くしても良い。これによりアンテナの容量成分が増加し、共振の鋭さを示すQ値が小さくなるため、共振周波数がブロードとなりアンテナの帯域を広げることが可能となる。また、線幅を太くする構成素子の組み合わせは任意である。さらに、本実施の形態において実施の形態1と同様に第1のミアンダ線路部310と第2のミアンダ線路部320との素子幅を異なる値としても良い。これによりアンテナ特性インピーダンスが変化するため、アンテナ素子形状にて最適なインピーダンス値に調整し、インピーダンス不整合による損失を防止することが可能となる。
【0037】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3の折り返しダイポールアンテナは、延長部をミアンダ形状とすることによりアンテナ実効長を伸ばし、アンテナを小型化することが可能となる。図10は実施の形態3における折り返しダイポールアンテナ400の構成を示す構成図である。本実施の形態の折り返しダイポールアンテナ400は波長λを有する電波を送受信し、長さL8が波長λの1/2未満(例えばλ/3程度)で互いに平行な第1の平行線路部410、および第2の平行線路部420と、第1の平行線路部410に接続され電波の電力を供給する給電部430と、第1の平行線路部410と第2の平行線路部420の両端を接続する両端接続部440と、第1の平行線路部410の長手方向と垂直で、第2の平行線路部420から第1の平行線路部410に向かう方向に両端接続部440を曲がりくねったミアンダ形状にて延長するミアンダ延長部450とを有する。ミアンダ延長部450によりアンテナ実効長を延ばし、省スペースで高利得なアンテナを実現することができる。
【0038】
上記のように構成された本発明の折り返しダイポールアンテナ400の動作について、図面を参照しながら説明する。図11に本実施の形態の折り返しダイポールアンテナ400の電流分布(図11(a))と放射指向性(図11(b))とを示す。ここで、所望の送受信周波数f0(=c/λ)(c=光速)において、第1の平行線路部410および第2の平行線路部420の線路長L8は波長λの1/2未満であり、L9はミアンダ延長部450の長さ、L10はL8+L9×2で求められる長さでありλ/2とほぼ等しい。折り返しダイポールアンテナ400は周波数f5=c/(2×L8)(Hz)(c=光速、L8=λ/2未満)で共振する。これに加えて折り返しダイポールアンテナ400は、第1の平行線路部410および第2の平行線路部420の線路長L8にミアンダ延長部450の長さL9を足したアンテナ実効長を有するため、周波数f6=c/(2×L10)≒f0(Hz)(c=光速、L10=L8+L9×2)でも共振する。このように、所望の周波数f0に近い周波数で共振するため、平行線路部の線路長L8がλ/2未満しか確保できない省スペースにおいても、所望の周波数f0にて高いアンテナ利得を実現することができる。
【0039】
第1の平行線路部410に流れる第5の電流ベクトルVI5はダイポールアンテナ200と同様に第1の平行線路部410の長手方向に沿って平行であり、その向きと大きさは時間と共に変化する。一方、第2の平行線路部420に流れる第6の電流ベクトルVI6は第5の電流ベクトルVI5と同位相となる。このように第1の平行線路部410および第2の平行線路部420に流れる2つの電流ベクトルが同位相となるため、放射指向性は標準的なダイポールアンテナ200(図2(b))と同じで図11(b)に示すように、水平面内(xy平面、xz平面)では、第1の平行線路部410の長手延長方向には電波は放射せず、第1の平行線路部410の長手方向と垂直な向きが最大となる8の字状の放射パターンとなる。また、垂直面内(yz平面)では、給電部430を中心とした円周状の放射パターンとなり無指向性となる。
【0040】
なお、本実施の形態において実施の形態1と同様に各構成素子の線幅を太くしても良い。これによりアンテナの容量成分が増加し、共振の鋭さを示すQ値が小さくなるため、共振周波数がブロードとなりアンテナの帯域を広げることが可能となる。また、線幅を太くする構成素子の組み合わせは任意である。
【0041】
また、本実施の形態において実施の形態1と同様に第1の平行線路部410と第2の平行線路部420との素子幅を異なる値としても良い。これによりアンテナ特性インピーダンスが変化するため、アンテナ素子形状にて最適なインピーダンス値に調整し、インピーダンス不整合による損失を防止することが可能となる。さらに、本実施の形態において実施の形態2と同様に2本の平行線路部を曲がりくねったミアンダ形状としても良い。これにより延長部の小型化に加えて平行線路部の小型化も可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、標準的なダイポールアンテナと同様の放射指向性を有する折り返しダイポールアンテナにおいてその小型化が可能となるため、持ち運び可能なポータブル無線送受信機に用いるアンテナにおいて有用である。
【符号の説明】
【0043】
130、220、330、430 給電部
200 ダイポールアンテナ
100、300、400 折り返しダイポールアンテナ
110、410 第1の平行線路部
120、420 第2の平行線路部
140、340、440 両端接続部
150、350 延長部
210 線路部
310 第1のミアンダ線路部
320 第2のミアンダ線路部
450 ミアンダ延長部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
λの波長を有する電波を送受信するアンテナにおいて、
長さがλの1/2未満で、互いに平行に配置された2本の平行線路部と、
前記2本の平行線路部のいずれか1本に接続され電力を供給する給電部と、
前記2本の平行線路部のそれぞれの両端を接続する2本の両端接続部と、
前記平行線路部と垂直で、前記給電部が無い前記平行線路部から前記給電部が接続された前記平行線路部方向に前記両端接続部を延長した2本の延長部と、
を備えることを特徴とする折り返しダイポールアンテナ。
【請求項2】
前記平行線路部、前記両端接続部、および前記延長部の線幅を太くすることにより、広帯域化を実現する請求項1に記載の折り返しダイポールアンテナ。
【請求項3】
前記2本の平行線路部の線幅を互いに異なる値にすることにより、インピーダンス制御を実現する請求項1に記載の折り返しダイポールアンテナ。
【請求項4】
前記2本の平行線路部をミアンダ形状にすることによりアンテナ実効長を延ばすことが可能な請求項1に記載の折り返しダイポールアンテナ。
【請求項5】
前記平行線路部、前記両端接続部、および前記延長部の線幅を太くすることにより、広帯域化を実現する請求項4に記載の折り返しダイポールアンテナ。
【請求項6】
前記2本のミアンダ形状を有する平行線路部の線幅を互いに異なる値にすることにより、インピーダンス制御を実現する請求項4に記載の折り返しダイポールアンテナ。
【請求項7】
前記2本の延長部をミアンダ形状にすることによりアンテナ実効長を延ばすことが可能な請求項1または請求項4に記載の折り返しダイポールアンテナ。
【請求項8】
前記平行線路部、前記両端接続部、および前記延長部の線幅を太くすることにより、広帯域化を実現する請求項7に記載の折り返しダイポールアンテナ。
【請求項9】
前記2本の平行線路部の線幅を互いに異なる値にすることにより、インピーダンス制御を実現する請求項7に記載の折り返しダイポールアンテナ。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図9】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−102257(P2013−102257A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55712(P2010−55712)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)