説明

折戸の指詰め防止装置

【課題】耐久性、清掃の容易さ、美観に優れた折戸の指詰め防止装置を提供する。
【解決手段】左右戸板11,12を有する折戸に取り付けるための指詰め防止装置40である。次の(i)〜(iii)を有する。(i)左右戸板11,12と、左右羽根板21,22を回動自在に結合させる軸ピン25と、前記軸ピンを支える軸受とからなる蝶番。(ii)前記左右戸板11,12の隙間をふさぐ形状の遮蔽カバー43。(iii)前記蝶番と前記遮蔽カバー43を連結する連結棒41。前記連結棒41の頭部から前記折戸の外側に向かって2本の開脚バネ45,46が延びており、この開脚バネ45,46の先端が前記蝶番に設けられた突起に差し込まれて固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折戸(蝶番を継ぎ手にして折り畳めるようにした戸板)の指詰め防止装置に関する。すなわち、折戸を閉じるときに、継ぎ手部の隙間に指を詰めてケガをしないようにした一種の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記目的の安全装置は古くから提案されている。大きく分類すると、次のようである。
(1)戸板を閉じても戸板の端面同士が密着しないように、予め継ぎ手部の隙間を開けておくもの(下記特許文献1の図7参照)
(2)継ぎ手部の隙間を遮蔽シートでふさぐもの(下記特許文献2の図1〜4参照)
(3)継ぎ手部の隙間をクッション材でふさぐもの(下記特許文献1の図6、下記特許文献3、下記特許文献4参照)
【特許文献1】特開平11−159254号
【特許文献2】実用新案登録第3004795号
【特許文献3】実開昭57−42081号
【特許文献4】実開昭52−94755号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術は、いずれも所期の目的を達することができるが、あえて欠点を指摘すると、上記(1)は戸板端面の形成に時間と手間を要する。(2)と(3)は、遮蔽シートやクッション材に耐久性が不足しがちで、長期間の使用に耐えられないおそれがあり、また、汚れを落とすための清掃が難しい。
【0004】
本発明は、耐久性、清掃の容易さ、美観に優れた折戸の指詰め防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、左右戸板を有する折戸に取り付けるための指詰め防止装置であって、(i)左右羽根板と、前記左右羽根板を回動自在に結合させる軸ピンと、前記軸ピンを支える軸受とからなる蝶番と、
(ii)左右戸板の隙間をふさぐ形状の遮蔽カバーと、
(iii)前記蝶番と前記遮蔽カバーを連結する連結棒と
からなることを特徴とする。
【0006】
本発明はまた、そのような指詰め防止装置を備えたことを特徴とする折戸である。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、遮蔽カバーが継ぎ手部の隙間をふさぐので、人が継ぎ手部の隙間に指を挟むおそれはない。しかも、遮蔽カバーは比較的に頑強な素材で作成することができるので、耐久性があり、清掃も容易に行うことができる。さらに遮蔽カバーは筋状・一直線に継ぎ手部の隙間をふさぐので、従来例に比べて美観に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
好ましくは、前記連結棒の頭部から前記折戸の外側に向かって2本の開脚バネを延ばし、この開脚バネの先端を前記蝶番に設けられた突起に差し込んで固定する。開脚バネは開脚角度を調節できるので、連結棒が安定的に支持される。
【0009】
さらに好ましいのは、前記遮蔽カバーが左右戸板の隙間を移動する延長部を設けることである。延長部は戸板の高さの相当部分(蝶番及び連結棒付近を除く遮蔽カバーの大部分の長さ)を占めるものとすることができる。この延長部を設けることで、開閉時に左右戸板の隙間の間で遮蔽カバーの動きを制限し、安定したものとすることができる。
【0010】
さらに、本発明の指詰め防止装置には、折戸閉鎖位置への移動強制装置をさらに設けることができる。また、羽根板の蛇行調整装置をさらに設けてもよい。この2装置は、折戸用蝶番に通常設けられているものである。
【実施例1】
【0011】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施例である指詰め防止装置を備えた戸板11,12を有する折戸10の外観である。
【0013】
図2は、この装置において使用する蝶番20の一部破断斜視図であり、図3は正面図である。折戸10を連結構成する左右戸板11,12の内側にこの蝶番20が取り付けられる。
【0014】
この蝶番20は、戸板に取り付けるための左右羽根板21,22を有し、各羽根板21,22には半円形の凹部23,24が設けられている。凹部23,24は戸板に彫り込んだ半円形の取付孔13,14に埋設される。
【0015】
各羽根板21,22は、ネジ(図示せず)で戸板11,12に固定され、軸ピン25、軸受26を中心にして回動可能である。軸受26は、羽根板の切起し片31,33により支持されている。切起し片31と33の間には樹脂製ブッシュ32がはめ込まれている。軸ピン25の上下において、羽根板凹部23,24が切り取られて、空間34,35が設けられている。符号36はギボシである。
【0016】
この実施例の蝶番は、閉鎖位置への移動強制装置及び羽根板の蛇行調整装置が取り付けられている。これらの装置自体は公知のもの(例えば、特開平7−269218号、特開2008−38459参照)と同様であり、本願発明と直接の関係はないので、簡略な説明に留める。
【0017】
閉鎖位置移動強制装置は、図2〜4に示すように、軸ピン25の中央部分で軸ピン25と同軸的に配置され且つ一方の羽根板21と共に回動するカム27と、他方の羽根板22に保持されてこのカム27に向かってバネ28により常時押圧されているスライダー29とからなる。カム27は、周面の一部に大径となったデットポイント27aを備え、折戸を図5(d)の折り畳み姿勢となった開き位置から図5(a)の閉鎖位置まで回動する過程において、スライダー29の先端接触部がカム27のデットポイント27aを乗り越えると、折り戸の左右の戸板をバネ28の力により図5(a)の閉鎖位置に強制的に移動させる。
【0018】
蛇行調整装置は、図2〜4に示すように、カム27に、他方の羽根板22の方向に向かって移動調整可能な調整ビス30を組み込み、この調整ビス30の先端を他方の羽根板22の端縁部分に当接させてなる。調整ビス30は、先端にドライバー等の回動工具が係合する係合溝を備えており、この調整ビス30を前進又は後退させることにより折戸閉鎖位置における左右戸板11,12の直線性、即ち蛇行を調整することができる。
【0019】
本発明の主要な特徴は、遮蔽カバー43を有する指詰め防止装置40であり、軸ピン25に隣接する空間35を利用して折戸10の隙間に取り付けられている。以下この装置について説明する。
【0020】
遮蔽カバー43は、図1に示すように、横断面が皿状又は円弧状であり、横断面両端は丸みを付けている。遮蔽カバー43を裏面から見れば、図2に示すように、蝶番20の位置を除いて、中空四角柱状の固定部43a及びその固定部から起立する延長部44を有する。延長部44は戸板の高さの相当部分(蝶番20及び連結棒41付近を除く遮蔽カバー43の大部分の長さ)を占めている。
【0021】
遮蔽カバー43が折戸10から突出しないように、左右戸板11,12には一段低くなった切り込み15,16が設けられている。そのため、折戸10が閉鎖されている図4の状態において、遮蔽カバー43は折戸10とほぼ同じ高さにある。遮蔽カバー43の左右両末端は切り込み15,16の斜面と接触する。
【0022】
遮蔽カバー43は、図1に示すように、折戸10の全長にわたって継ぎ手部の隙間17に取り付けられている。しかし、通常、人が手を触れることがない最下部や最上部では省略することも可能である。
【0023】
遮蔽カバー43は、例えば図2〜図4に示すように、蝶番20に対して連結棒41により連結されている。
【0024】
連結棒41の脚部41aは、遮蔽カバー43に対して、固定部43aに挿入固定される。
【0025】
連結棒41の頭部41bは、蝶番20に対して、2本の開脚バネ45,46により固定される。2本の開脚バネ45,46は、連結棒の頭部から戸板外側に向けて延びており、開脚バネ45,46の先端が凹部23,24に設けられた突起47,48に差し込まれて固定されている。図5に示すように、戸板11,12の開閉に伴って、開脚バネ45,46の形成する角度は、約25°から約65°まで変化する。
【0026】
図5に基づき、指詰め防止装置の動きを見るが、図面を見やすくするために、閉鎖位置強制用のバネ28は描いていない。図5(a)は折戸の閉鎖状態である。この状態から取っ手(図示省略)を持って戸板11,12を開くとバネ28の付勢力に打ち勝って(b)(c)(d)の状態を経て、(e)で完全に開く。(c)の状態のとき、遮蔽カバー43の左右末端と戸板11,12端面角部が一番近接するので、このときに衝突しないように双方の長さ設定を行う必要がある。
【0027】
上記一連の動きのなかで、戸板の隙間17を連結棒41が動くだけでなく、遮蔽カバー43に取り付けた延長部44も同時に動く。この延長部44を設けることで、開閉時に左右戸板の隙間の間で遮蔽カバー43の動きを制限し、安定したものとすることができる。
【0028】
本発明によれば、遮蔽カバー43が継ぎ手部の隙間をふさぐので、図4(a)のときはもちろん、(b)〜(e)のときにも、人が継ぎ手部の隙間に指を挟むおそれはない。しかも、遮蔽カバー43は比較的に頑強な素材で作成することができるので、耐久性があり、清掃も容易に行うことができる。さらに遮蔽カバーは筋状に継ぎ手部の隙間をふさぐので、従来例に比べて美観に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例である指詰め防止装置を備えた戸板の外観である。
【図2】本発明の一実施例である指詰め防止装置において使用する蝶番の一部は段斜視図である。
【図3】本発明の一実施例である指詰め防止装置において使用する蝶番の正面図である。
【図4】本発明の一実施例である指詰め防止装置において使用する蝶番の横断面図である。
【図5】(a)〜(e)は、本発明の一実施例である指詰め防止装置の動きを説明するための横断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 折戸
11,12 左右戸板
13,14 取付孔
17 隙間
20 蝶番
21,22 左右羽根板
23,24 左右羽根板の凹部
25 軸ピン
26 軸受
27 カム
27a デットポイント
28 バネ
29 スライダー
30 調整ビス
31 起立片
32 樹脂製ブッシュ
33 ギボシ
34,35 空間
40 指詰め防止装置
41 連結棒
41a 連結棒脚部
41b 連結棒頭部
43 遮蔽カバー
43a 遮蔽カバー固定部
44 延長部
45,46 開脚バネ
47,48 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右戸板(11,12)を有する折戸(10)に取り付けるための指詰め防止装置(40)であって、
(i)前記左右羽根板(11,12)と、前記左右羽根板を回動自在に結合させる軸ピン(25)と、前記軸ピンを支える軸受(26)とからなる蝶番(20)と、
(ii)前記左右戸板(11,12)の隙間(17)をふさぐ形状の遮蔽カバー(43)と、
(iii)前記蝶番(20)と前記遮蔽カバー(43)を連結する連結棒(41)と
を有することを特徴とする折戸の指詰め防止装置。
【請求項2】
前記連結棒(41)の頭部(41b)から前記折戸(10)の外側に向かって2本の開脚バネ(45,46)が延びており、この開脚バネ(45,46)の先端が前記蝶番(20)に設けられた突起(47,48)に差し込まれて固定されている請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記遮蔽カバー(43)が左右戸板(11,12)の隙間(17)を移動する延長部(44)を有する請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
折戸閉鎖位置への移動強制装置をさらに有する請求項1ないし3の何れかに記載の装置。
【請求項5】
前記羽根板の蛇行調整装置をさらに有する請求項1ないし4の何れかに記載の装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の指詰め防止装置を取り付けた左右戸板(11,12)からなる折戸(10)。
【請求項7】
前記左右戸板(11,12)の遮蔽カバー(43)取付位置に切り込み(15,16)が設けられている請求項6記載の折戸(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−293304(P2009−293304A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148973(P2008−148973)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000196314)株式会社ニシムラ (13)
【Fターム(参考)】