説明

折畳み式ボビン

【課題】構造が簡単であって分解が可能であるが、部品が散逸しないように構成されているボビンを提供する。
【解決手段】一対の鍔と、両鍔の中央を筒形状に結合する筒状部と、平板を丸めて筒状部を被覆する巻芯部とを有することを特徴とする。また、前記筒状部は、柔軟性のある素材から構成され、前記筒状部は、通気性を有する素材から構成され、前記鍔の中央に開口部を設けその内部に貫通管を配置することを特徴とする。さらに、前記巻芯の長さと前記筒状部の長さが略等しく、前記鍔と前記筒状部は互いに縫着され、前記巻芯部は、脱着自在に構成され、前記巻芯部は、被覆時に段差が生じない様に構成し、前記巻芯部並びに前記鍔部は、合成樹脂から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ、導線、素材シートまたは連続包装体などを巻きつけて収容するボビンに関し、特に使用後にコンパクトに収容可能で構造が簡単なボビンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テープ等を収容するボビンとしては紙製ボビン34が使用されている(図10)。紙製ボビン34は、相対する鍔部36の間に、同じく紙製の筒型形状の巻芯38が配置されて、巻芯38の端部に切込によって分けられた固定しろ40で、各鍔部36に接してホチキス42止めされて固定される。さらに、鍔部外側中央部には回転軸を貫通させるための開口部が設けられ、回転軸が貫通する際にテープの加重に開口部が耐えうるようにリング金具44が嵌めこまれている。この紙製ボビン34は、安価な素材で構成され、軽量であって、強度もあるため大いに利用されている。
【0003】
ところが、この紙製ボビン34はその利用方法が使い捨て方式であり、強度や安全性の点から再利用はされていない。また、強度も雨天等で濡れた際に低下する等の課題を抱えている。さらに、再利用されないため、廃棄する必要が生じるが、廃棄する場合は環境対策上分別回収をする必要がある。この紙製ボビン34を分別するにあたり、固定しろ毎に設けられているホチキス42を総て除去する必要性やリング金具を除去する必要性が生じており、特に大量に分解処分する作業は、極めて煩雑なものとなっていた。このために、ボビンに対して利用後にコンパクトとなることが要望され、さらにコンパクト化が容易であると言う要望があった。
【0004】
そのうえ、紙製ボビン34は紙製であるため、ダストである紙粉が大量に発生する。このため、製造時に空気中の清浄度が必要な工程では大きな課題となっていた。
【0005】
そこで、すでに利用後のボビンをコンパクトにする幾つかの提案がなされている(特許文献1、特許文献2)。
【0006】
特許文献1は、ボビンの巻芯部に相当する胴部の内部に気体が封入されている。ボビンとして利用する際は、ボビンの内部に気体を充填させ、利用後は気体を排出させることで収縮可能となるように構成することを特徴としている。このため、利用後に気体が排出されると胴部が収縮するため極めてコンパクトになる。
【0007】
一方、特許文献2は、2枚の鍔の間に平板を丸めて円筒状に組み立てた巻き芯を鍔3にその端を係合させるよう構成されている。ボビンを利用後は、係合を解除することで容易に鍔部と平板とに分けることができ、利用後にボビンをコンパクトにすることが可能である。
【0008】
【特許文献1】特開2004−10253号公報
【特許文献2】特開2005−104651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記文献では何れも課題を有していた。特許文献1では、利用後にボビンの形状をコンパクトにできる利点を有するものの、特許文献1には気体を封入し、排出するための構造を予め備える必要がある。このために、コンパクト化への限界や構造が複雑となる課題を有していた。
【0010】
一方、特許文献2では、組立式で簡易な構造が得られるものの係合部で巻芯と鍔部とを結合させているために、十分な強度を確保できず、また係合部は十分な平坦性の確保が困難である。さらに、分解時に部品ごとに分解するために部品の散逸の可能性があり、管理等が煩雑である。
【0011】
そこで、本発明の目的は、構造が簡単であって分解が可能であるが、部品が散逸しないように構成されているボビンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る折畳み式ボビンは、一対の鍔と、両鍔の中央を筒形状に結合する筒状部と、平板を丸めて筒状部を被覆する巻芯部とを有することを特徴とする。
【0013】
また、前記筒状部は、柔軟性のある素材から構成され、前記筒状部は、通気性を有する素材から構成され、前記鍔の中央に開口部を設けその内部に貫通管を配置することを特徴とする。
【0014】
さらに、前記巻芯の長さと前記筒状部の長さが略等しく、前記鍔と前記筒状部は互いに縫着され、前記巻芯部は、脱着自在に構成され、前記巻芯部は、被覆時に段差が生じない様に構成し、前記巻芯部並びに前記鍔部は、合成樹脂から構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る折畳み式ボビンは、一対の鍔と、両鍔の中央を筒形状に結合する筒状部と、平板を丸めて筒状部を被覆する巻芯部とを有することを特徴とすることで、簡単な構造であって、分解が容易であり、しかも分解時に構成品が散逸しないという効果を有する。
【0016】
また、前記筒状部は、柔軟性のある素材から構成されることで、分解時に容易に小さく潰すことが可能となる。
【0017】
前記筒状部は、通気性を有する素材から構成されるので、押し潰す際に筒状部内のガスを容易に排出でき、迅速に潰すことが可能となる。
【0018】
前記鍔の中央に開口部を設けその内部に貫通管を配置することを特徴とすることで、回転軸によるボビンへの負荷が軽減する効果を有する。
【0019】
さらに、前記巻芯の長さと前記筒状部の長さが略等しいために、巻芯で筒状部を被覆した際に、容易に巻芯を固定することが可能になる。
【0020】
前記鍔と前記筒状部は互いに縫着されるので、前記鍔と筒状部とが互いに散逸することを防止することができる。
【0021】
前記巻芯部は、脱着自在に構成されるので、ボビンの分解を容易にし、全体としてコンパクトにすることができる。
【0022】
前記巻芯部は、被覆時に段差が生じない様に構成することで、ボビンに収納する素材への負担を軽減することができる。
【0023】
前記巻芯部並びに前記鍔部は、合成樹脂から構成されることを特徴とするので粉塵の発生の防止が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、この発明の実施形態例を、図面を用いて説明する。図1乃至図5は本発明に係る実施例1の折畳み式ボビンの実施形態を示す図であり、図1は折畳み式ボビン1の斜視図、図2は平面図を示す。
【実施例1】
【0025】
この折畳み式ボビン1は、一対の鍔4と、両鍔4の中央を筒形状に結合する筒状部8と、平板を丸めて筒状部8(図1、2では被覆されて図示されない)を被覆する巻芯部2が設けられた構成になっている。
【0026】
図3は、この折畳み式ボビン1に用いられる巻芯部2の展開図である。本巻芯部2は矩形状であって、一端の裏側に面ファスナ12が縫着される。他端にも裏面に面ファスナ14が縫着される。この二つの面ファスナ12、14は同じく面ファスナが縫着される延長板16に結合して環状に接続することができる。又このように接続することで、巻芯部2の一端と、他端とが段差を有することなく接続することができる。ここで、巻芯部2は丸めることができる程度の柔軟性を有するものの一定の硬度を有する材料、好ましくは合成樹脂シートで構成されている。
【0027】
巻芯部2に、好適な合成樹脂材料としては、例えば、発泡ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ハイインパクトポリスチレン系樹脂などのポリスチレン系樹脂;塩化ビニリデン系樹脂などの塩素含有合成樹脂;ポリアクリレート系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂などのアクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;含フッ素樹脂;ポリカーボネート系樹脂;酢酸セルロース、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系などの共重合体;複数の合成樹脂フィルムを積層したシート;合成樹脂フィルムとアルミ箔とを積層したシートなどが挙げられる。
【0028】
図2に示す本発明に係る折畳み式ボビン1の平面図から、巻芯部2を取り除いた平面図を図4(a)に示す。巻芯部2の下には筒状に形成されて筒の両底部が鍔4に縫着されている筒状部8が設けられる。この筒状部8の幅は、巻芯部2と略同じ長さとなる様に設定される。
【0029】
ここで、筒状部8の幅を巻芯部2の幅より僅かに短くすると、両鍔4の間隔も巻芯部2の幅より僅かに短くなる。そこで、筒状部8上から巻芯部2で被覆すると巻芯部2の幅が僅かに長いため、一定の硬度を有する巻芯部2が両鍔4を互いに離れる方向へ押圧することになる。この押圧力によって発生する摩擦力により両鍔4が巻芯部2の幅の間隔を保持した状態で固定される。
【0030】
筒状部8は、巻芯部2と比較して硬度が低く折畳み自在で柔軟性のある素材が好ましい。また、折り畳み時に筒状部8内の空気が内部に残らぬように通気性の高い素材であるとより好ましい。また、長期の使用により折畳みによる疲労が発生しても破れぬような強度も有することが望ましい。
【0031】
筒状部8に適した素材は、メッシュターポリン、ターポリン、テント地、合成皮革、天然皮革、木綿、絹、麻、不織布等のシートである。
【0032】
本発明に係る折畳み式ボビン1は、筒状部8の内部に回転軸を貫通させるためのシャフト10が設けられる。
【0033】
シャフト10は、合成樹脂から形成されるパイプである。このシャフト10は、一端の鍔4に開口された開口部を貫通して他端の鍔4に開口された他端の開口部まで貫通し、両端から更に嵌め込まれるストッパ18によって固定される。
【0034】
ストッパ18はシャフト10の外周と同じ内径を有するパイプであってその端部に外周方向へ突設する外周つば20と内周方向へ突設する内周つば22が設けられる。
【0035】
ストッパ18の外周つば20は前記鍔の開口部より直径が大きく、この外周つば20によって鍔4にストッパ18が固定される。一方、ストッパ18の内周つば22はシャフト10より直径が短く、この内周つば22によってシャフト10がストッパ18に固定される(図1及び図4(c))。
【0036】
鍔4は、円形でありその中心にシャフト10を貫通させる開口部23が設けられる。この鍔4は、合成樹脂により作製することが好ましい。鍔3に好適な合成樹脂材料としては、例えば、発泡ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ハイインパクトポリスチレン系樹脂などのポリスチレン系樹脂;塩化ビニリデン系樹脂などの塩素含有合成樹脂;ポリアクリレート系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂などのアクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;含フッ素樹脂;ポリカーボネート系樹脂;酢酸セルロース、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系などの共重合体;複数の合成樹脂フィルムを積層したシート;合成樹脂フィルムとアルミ箔とを積層したシートなどが挙げられる。
【0037】
巻芯部2と延長板14との接続は面ファスナによってなされたが、面ファスナに限定されるものではなく、取り外し可能であれば、スナップ、マグネット、その他の接合具を利用することができる。
【実施例2】
【0038】
本発明の第2の実施例に係る折畳み式ボビンの平面図を第6図に示す。以下の実施例については、実施例1と異なる部分についてのみ示す。第2の実施例では、筒状部8としてメッシュターポリンに代わりターポリン24が鍔4と縫着している。
【0039】
ターポリン24は、通気性を有しないため、鍔4に設けた開口部23から内部気体である空気を排出する。
【実施例3】
【0040】
本発明の第3の実施例に係る折畳み式ボビンの平面図を第7図に示す。第3の実施例では、筒状部8としてメッシュターポリンに代わりターポリン26が鍔4と縫着しており、さらに通気孔28を複数個、ターポリン26の表面に開口させている。開口部28は、内部の気体である空気を十分放出すると共に、ターポリン26の強度を低下させない程度に開口される。
【実施例4】
【0041】
本発明の第4の実施例に係る折畳み式ボビンの側面図を第8図に示す。第4の実施例では、筒状部8を鍔4に縫着する祭縫い30を示す。筒状部8が固定するように一定以上の強度で縫着される。
【実施例5】
【0042】
本発明の第5の実施例に係る折畳み式ボビンの側面図を第9図に示す。第5の実施例では、筒状部8を鍔4に溶着32している。筒状部8が固定するように一定以上の強度で溶着される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、様々なテープ、導線、素材シートまたは連続包装体のボビンに適用することができ、構造が簡単であって分解が可能であるが、部品が散逸しないような構成のボビンとして活用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る折畳み式ボビン1の斜視図を示す。
【図2】本発明に係る折畳み式ボビン1の平面図を示す。
【図3】本発明に係る折畳み式ボビン1に用いられる巻芯部2の展開図を示す。
【図4】本発明に係る折畳み式ボビン1の平面図から巻芯部2を取り除いた平面図(a)、折畳み式ボビンを押し潰した際の平面図(b)、シャフトとストッパ(c)をそれぞれ示す。
【図5】本発明に係る折畳み式ボビン1の側面図を示す。
【図6】本発明に係る第2実施例の折畳み式ボビン1に用いられる巻芯部24の平面図を示す。
【図7】本発明に係る第3実施例の折畳み式ボビン1に用いられる巻芯部26の平面図を示す。
【図8】本発明に係る第4実施例の折畳み式ボビン1に用いられる巻芯部2の縫着部30の平面図を示す。
【図9】本発明に係る第5実施例の折畳み式ボビン1に用いられる巻芯部2の溶着部32の平面図を示す。
【図10】従来の紙製ボビンの斜視図を示す。
【符号の説明】
【0045】
1 折畳み式ボビン
2 巻芯部
4 鍔
8 筒状部
10 シャフト
12、14 面ファスナ
16 延長板
18 ストッパ
20 外周つば
22 内周つば
24、26 ターポリン
28 通気孔
30 祭縫い
32 溶着
34 紙製ボビン
36 鍔部
38 巻芯
40 固定しろ
42 ホチキス止め
44 リング金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の鍔と、両鍔の中央を筒形状に結合する筒状部と、平板を丸めて筒状部を被覆する巻芯部とを有する折畳み式ボビン。
【請求項2】
前記筒状部は、柔軟性のある素材から構成されることを特徴とする請求項1に記載の折畳み式ボビン。
【請求項3】
前記筒状部は、通気性を有する素材から構成されることを特徴とする請求項2に記載の折畳み式ボビン。
【請求項4】
前記鍔の中央に開口部を設けその内部に貫通管を配置することを特徴とする請求項1に記載の折畳み式ボビン。
【請求項5】
前記巻芯の長さと前記筒状部の長さが略等しいことを特徴とする請求項1に記載の折畳み式ボビン。
【請求項6】
前記鍔と前記筒状部は互いに縫着されることを特徴とする請求項1に記載の折畳み式ボビン。
【請求項7】
前記巻芯部は、可撓性素材から構成されることを特徴とする請求項1に記載の折畳み式ボビン。
【請求項8】
前記巻芯部は、脱着自在に構成されることを特徴とする請求項1に記載の折畳み式ボビン。
【請求項9】
前記巻芯部は、被覆時に段差が生じない様に構成することを特徴とする請求項1に記載の折畳み式ボビン。
【請求項10】
前記巻芯部並びに前記鍔部は、合成樹脂から構成されることを特徴とする請求項1に記載の折畳み式ボビン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−204198(P2007−204198A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23992(P2006−23992)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(390010537)株式会社ナショナルマリンプラスチック (5)
【Fターム(参考)】