説明

折畳み式足場

【課題】左右に長い足場板であっても谷折りに折畳んで高さをコンパクトに納めることのできる折畳み式足場を提供する。
【解決手段】主脚10と、主脚に昇降自在に組付けられたスライダ60と、一端側がスライダに回動自在に支持された左右一対の板部材30からなる足場板30aと、一端側が主脚の下部に回動自在に支持され、他端側が板部材に回動自在に支持されて、スライダの上昇に応じて足場板を展開し、スライダの下降に応じて足場板を谷折りに折畳む第一アーム40と、板部材に回動自在に支持された補助脚20と、一端側がスライダに回動自在に支持され、他端側が補助脚に回動自在に支持されて、補助脚を、スライダの上昇に応じて展開状態の足場板の支えとなる立設状態とし、スライダの下降に応じて折畳み状態の足場板に沿わした収納状態とする第二アーム50と、足場板を展開状態及び折畳み状態でロックするロック機構70とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折畳み式足場に関するものであり、詳しくは、不使用時には足場板をコンパクトに折畳むことができる折畳み式足場に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内装工事や低所の外装工事等の作業現場にでは、手軽に移動させることができる足場が用いられており、この足場として、不使用時には足場をコンパクトに折畳めるようにした折畳み式足場がある。例えば、特許文献1に記載の折畳み式足場等である。
【0003】
ここで、特許文献1に記載された折畳み式足場は、足場板が、蝶番によって展開・折畳み可能に連結された左右一対の板部材からなるものであり、足場板を中央部分にて谷折りに折畳んでコンパクトに納めることができるものである。また、この折畳み式足場では、展開状態の足場板の四隅に脚が設けられており、左右の板部材の夫々は、左右の脚の上端に回動自在に支持されている。そして、足場板を中央部分にて谷折りに折畳んだ状態では、左右の脚の間に互いに折畳み状態となった足場板が収納される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の折畳み式足場では、脚の上端に板部材が回動自在に支持され、折畳み状態では左右の脚の間に板部材が収納されるものであるため、一つ一つの板部材を脚の長さよりも長くすることができず、左右に長い足場板に採用することができない。
【0005】
ところで、四隅に脚が設けられた足場板において、中央部分を山折りに折畳む方式とすることで、左右に長い足場板であっても折畳み可能とすることはできる。しかしながら、足場板を山折りに折畳むこととすると、折畳んだ状態では、全体の高さが、脚の長さに、山折りに折畳んだ足場板の長さ(足場板を構成する板部材の長さ)を加わえた寸法となってしまい、高さをコンパクトに納めることができなくなってしまう。
【0006】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、左右に長い足場板であっても谷折りに折畳んで高さをコンパクトに納めることのできる折畳み式足場の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の採った主要な手段は、
「前後一対の主脚と、
該主脚に昇降自在に組付けられたスライダと、
夫々前記主脚の左右に配置されると共に一端側が前記スライダに回動自在に支持された左右一対の板部材からなる足場板と、
一端側が前記主脚の下部に回動自在に支持され、他端側が前記板部材に回動自在に支持されて、前記スライダの上昇に応じて前記足場板を展開し、前記スライダの下降に応じて前記足場板を谷折りに折畳む第一アームと、
前記板部材に回動自在に支持された補助脚と、
一端側が前記スライダに回動自在に支持され、他端側が前記補助脚に回動自在に支持されて、前記補助脚を、前記スライダの上昇に応じて展開状態の足場板の支えとなる立設状態とし、前記スライダの下降に応じて折畳み状態の足場板に沿わした収納状態とする第二アームと、
前記足場板を展開状態及び折畳み状態の夫々の状態でロックするロック機構と
を備えることを特徴とする折畳み式足場」
である。
【0008】
上記構成の折畳み式足場では、足場板が谷折りに折畳まれるのであるが、足場板を構成する各板部材の端部が、主脚に対して昇降するスライダに軸支されており、このスライダ部分にて谷折りに折畳まれることから、足場板が折畳まれると、各板部材の端部の位置がスライダの下降に伴って下がる。よって、足場板を折畳んだ状態において高さをコンパクトに納めることができる。
【0009】
また、足場板を構成する板部材については、その長さが主脚の長さに束縛されず、主脚よりも長い板部材を採用することができる。よって、主脚の長さに関わらず、各板部材の長さを長くした左右に長い足場板を自由に設定することができる。
【0010】
ところで、構成の折畳み式足場では、展開状態の足場板が、谷折りの折畳み部分にて主脚によって支えられている。よって、この谷折りの折畳み部分に作業者が乗ったとしても、谷折りの折畳み部分が撓み難く、足場としての高い安定性を確保することができる。
【0011】
また、足場板を構成する夫々の板部材には、補助脚が設けられており、この補助脚は、足場板を展開状態とすると足場板の支えとなる立設状態となるものである。よって、作業者が足場板の端に乗ったとしても、折畳み式足場が倒れることがなく、この点からも、足場としての高い安定性を確保することができる。
【0012】
上述した手段において、
「前記一対の主脚間には、展開状態の足場板と面一となる主脚上部バーが横架されている
ことを特徴とする折畳み式足場」
とするのが好適である。
【0013】
谷折りに折畳み可能とした足場板では、展開状態の足場板において、作業者が谷折りに折畳まれる部分に乗ると、足場板を折畳む方向の力が加わり、展開状態の足場板にガタツキがあると不安定となる。また、折畳み式足場では、展開状態の足場板が使用中に折畳まれないように、展開した状態でロック機構によってロックがなされるのであるが、作業者が谷折りに折畳まれる部分に乗った状態でロックが何らかの原因で外れると、作業者の体重によって展開状態の足場板が折畳まれてしまう。
【0014】
これに対して、上記構成の折畳み式足場では、左右一対の主脚間に主脚上部バーが横架されており、足場板を構成する左右一対の板部材は、主脚上部バーを挟んで左右に展開されたものとなる。また、主脚上部バーは、展開状態の足場板と面一となるものである。
【0015】
よって、上記構成の折畳み足場では、展開状態の足場板において、作業者が谷折りに折畳まれる部分に乗ると主脚上部バーに足がかかることとなり、作業者の体重の全部が板部材に加わることがなく、展開状態の足場板にガタツキがあったとしても不安定となることがない。また、展開状態の足場板のロックが何らかの原因で外れたとしても、作業者は主脚上部バーに乗っていることから、展開状態の足場板が直ちに折畳まれてしまうことがない。
【0016】
上述した手段において、
「前記第一アームは、前記板部材に、該板部材の重心よりも外側の部位に軸支されている
ことを特徴とする折畳み式足場」
とするのが好適である。
【0017】
ここで、「板部材の重心よりも外側の部位」とは、谷折りに折畳まれる足場板において、谷折りとなる中央部側を内側とし、その内側ではない側、すなわち足場板の端部側の部位を示すものである。
【0018】
谷折りに折畳まれる足場板では、折畳む際に板部材を持上げる力が必要となる。
【0019】
そこで、上記構成の折畳み式足場では、第一アームによる板部材の軸支部位を板部材の重心よりも外側の部位とする。これにより、足場板を折畳む際に板部材を小さな力で持上げることができ、足場板を折畳む際の労力を軽減することができる。
【0020】
なお、足場板を折畳む際に板部材を小さな力で持上げられるようにすると、足場板を展開する際には、板部材に大きな力を加えて板部材を押下げなければならなくなるのであるが、物を持上げる作業に比して、物を押下げる作業は力を入れ易い作業である。よって、足場板を展開する際に板部材に大きな力を加えなければならなくなったとしても、労力が大幅に増大することはない。
【発明の効果】
【0021】
上述した通り、本発明によれば、左右に長い足場板であっても谷折りに折畳んで高さをコンパクトに納めることのできる折畳み式足場の提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る折畳み式足場の一例を示す図であり、足場板を展開した状態を示す斜視図である。
【図2】足場板を折畳む途中の状態を示す斜視図である。
【図3】足場板を折畳んだ状態を示す斜視図である。
【図4】足場板を展開した状態を示す正面図である。
【図5】足場板を折畳む途中の状態を示す正面図である。
【図6】足場板を折畳んだ状態を示す正面図である。
【図7】スライダ部分の要部拡大斜視図である。
【図8】スライダ部分の要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る折畳み式足場の実施形態としての一例を、以下、図面に従って詳細に説明する。
【0024】
図1〜図6に、本発明に係る折畳み式足場1の一例を示す。なお、図1及び図4に示す状態は、足場板30aを展開した状態であり、図2及び図5に示す状態は、足場板30aを折畳む途中の状態であり、図3及び図6に示す状態は、足場板30aを折畳んだ状態である。また、本書では、方向として、図1に示すように、矢印X方向を左右方向、矢印Y方向を前後方向、矢印Z方向を上下方向として説明する。
【0025】
折畳み式足場1は、中央部分で谷折りに折畳まれる足場板30aと、展開状態の足場板30aを左右方向の中央部分で支える前後一対の主脚10と、展開状態の足場板30aを四隅で支える補助脚20とを備えている。
【0026】
ここで、主脚10は、互いに上下方向にスライド自在に挿嵌された第一主脚部材11及び第二主脚部材12によって構成されており、第一主脚部材11及び第二主脚部材12を互いにスライドさせることで主脚10全体の長さを調節できるようにしてある。また、補助脚20も、主脚10と同様に、互いに上下方向にスライド自在に挿嵌された第一補助脚部材21及び第二補助脚部材22によって構成されており、第一補助脚部材21及び第二補助脚部材22を互いにスライドさせることで補助脚20全体の長さを調節できるようにしてある。このように、本例の折畳み式足場1では、主脚10全体の長さ及び補助脚20全体の長さを調節できるので、作業現場に応じて足場板30aの高さを簡単に変更することができる。
【0027】
主脚10及び補助脚20の夫々には、キャスターが取付けられており、足場板30aを展開した状態でも、足場板30aを折畳んだ状態でも、この折畳み式足場1を容易に移動させることができるようにしてある。ここで、主脚10については、左右方向に突設するベースステー16を有しており、このベースステー16の左右両端にキャスターが取付けられている。そして、ベースステー16は、中央部分が凹んだ形状となっており、この凹んだ部分に、第一主脚部材11及び第二主脚部材12が立設されている。
【0028】
また、前後一対の主脚10の間には、下部に主脚下部バー13、上部に主脚上部バー14、及び。下部左右の夫々に主脚側方バー15が横架されており、前後一対の主脚10が堅固な一体構造となっている。さらに、左右夫々の前後一対の補助脚20の間には、上下の夫々に補助脚バー23が横架されており、前後一対の補助脚20が堅固な一体構造となっている。
【0029】
足場板30aは、主脚上部バー14を挟んで主脚10の左右に設けられた左右一対の板部材30から構成されており、各板部材30は、骨組みを構成するフレーム31、及び、フレーム31に張設されたエクスパンドメタル等の張設材32によって形成されている。ここで、足場板30aを展開した状態で左右の板部材30間に位置する主脚上部バー14は、展開状態の足場板30aと面一となるものであり、足場板30aの中央部分に乗った作業者は、この主脚上部バー14に足をかけることになる。
【0030】
主脚10、より具体的に第二主脚部材12には、昇降自在にスライダ60が組付けられている。そして、このスライダ60には、左右の夫々に延出する延出片61が設けられており、この延出片61に、板部材30の主脚10側の端部が回動自在に支持されている。また、主脚10の下部には、左右に突出する突片17が設けられており、この突片17に第一アーム40の一端側が回動自在に支持され、第一アーム40の他端側が板部材30のフレーム31に回動自在に支持されている。このような構造により、スライダ60の上昇に応じて左右一対の板部材30からなる足場板30aが展開され、スライダ60の下降に応じて足場板30aがスライダ60部分にて谷折りに折畳まれる。
【0031】
ここで、スライダ60が昇降自在に組付けられた主脚10、より具体的に第二主脚部12は、第一主脚部材11を介して、上述したように、ベースステー16の凹んだ部分に立設されている。よって、中央部分を凹ませないストレート状のベースステーに立設した場合に比して、第二主脚部材12の全体長を長く設定することができ、スライダ60の昇降ストロークを大きく設定することができる。
【0032】
また、図5に示すように、第一アーム40は、板部材30に、この板部材30の重心Gよりも外側の部位に軸支されている。よって、展開状態の足場板30aを折畳むべく板部材30を持上げようとした際には、板部材30を小さな力で持上げるとができる。
【0033】
足場板30aを構成する左右夫々の板部材30には、その裏面側に補助脚20が回動自在に支持されている。また、スライダ60には、左右の夫々に垂下片62が設けられており、この垂下片62に第二アーム50の一端側が回動自在に支持され、第二アーム50の他端側が補助脚20に回動自在に支持されている。このような構造により、補助脚20は、スライダ60を上昇させて足場板30aを展開状態とすると、足場板30aの四隅を支える立設状態となる一方で、スライダ60を下降させて足場板30aを折畳み状態とすると、折畳まれた足場板30aに沿った収納状態となる。
【0034】
ところで、この折畳み式足場1は、図4及び図6に示すように、足場板30aを展開状態及び折畳み状態の夫々の状態でロックするロック機構70を備えている。次に、このロック機構70の詳細を説明する。
【0035】
図5に示すように、スライダ60が昇降自在に組付けられた主脚10の第二主脚部材12の上部及び下部の夫々には、ロックプレート71が設けられている。そして、図7及び図8に示すように、スライダ60には、ピン装置64が組付けられている。ここで、ピン装置64は、進退自在であると共に前進方向に付勢されたピン(図示省略)を内蔵し、ノブ65を引っ張ることによってピンを後退させることができる周知のピン装置64であり、ロックプレート71に穿設されたピン孔72にピンを挿入することで、主脚10に対してスライダ60を昇降不能に固定し、もって、足場板30aを展開状態または折畳み状態にロックするものである。
【0036】
なお、本例の折畳み式足場1では、スライダ60を上昇させるとピン装置64の前進状態のピンが上側のロックプレート71に当接してスライダ60のそれ以上の上昇が規制され、スライダ60を下降させるとピン装置64の前進状態のピンが下側のロックプレート71に当接してスライダ60のそれ以上の下降が規制される構造となっている。このような構造によって、板部材30を単に押下げただけでは足場板30aが自動的に展開完了の状態とならず、板部材30を単に持上げただけでは足場板30aが自動的に折畳み完了の状態とならないようにしてある。
【0037】
具体的に、本例では、足場板30aを展開完了の状態とするには、ピン装置64のノブ65を引いてピンを後退させた上でハンドル63を持ってスライダ60を引上げて、ピン装置64のピンが上側のロックプレート71のピン孔72に挿入可能な位置まで上昇させなければならず、足場板30aを折畳み完了の状態とするには、ピン装置64のノブ65を引いてピンを後退させた上でハンドル63を持ってスライダ60を押下げて、ピン装置64のピンが下側のロックプレート71のピン孔72に挿入可能な位置まで下降させなければならないようにしてある。
【0038】
このようなロック機構70を採用すると、作業者によって意図的な操作を行わなければ足場板30aの展開作業及び折畳み作業を完了させることができないことから、作業者にとって、足場板30aの展開作業及び折畳み作業が完了したか否かを確実に確認することができる。
【0039】
また、本例の折畳み式足場1では、前後一対の主脚10の夫々にスライダ60及びロック機構70が設けられている。このため、本例の折畳み式足場1は、一方の主脚10側の作業者と他方の主脚10側の作業者との二人の作業者による堅実な操作を行わなければ、足場板30aの展開作業及び折畳み作業を行うことができないものとなっている。
【符号の説明】
【0040】
1 折畳み式足場
10 主脚
11 第一主脚部材
12 第二主脚部材
13 主脚下部バー
14 主脚上部バー
15 主脚側方バー
16 ベースステー
17 突片
20 補助脚
21 第一補助脚部材
22 第二補助脚部材
30a 足場板
30 板部材
31 フレーム
32 張設材
40 第一アーム
50 第二アーム
60 スライダ
61 延出片
62 垂下片
63 ハンドル
64 ピン装置
65 ノブ
70 ロック機構
71 ロックプレート
72 ピン孔
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】特開平11−256812号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後一対の主脚と、
該主脚に昇降自在に組付けられたスライダと、
夫々前記主脚の左右に配置されると共に一端側が前記スライダに回動自在に支持された左右一対の板部材からなる足場板と、
一端側が前記主脚の下部に回動自在に支持され、他端側が前記板部材に回動自在に支持されて、前記スライダの上昇に応じて前記足場板を展開し、前記スライダの下降に応じて前記足場板を谷折りに折畳む第一アームと、
前記板部材に回動自在に支持された補助脚と、
一端側が前記スライダに回動自在に支持され、他端側が前記補助脚に回動自在に支持されて、前記補助脚を、前記スライダの上昇に応じて展開状態の足場板の支えとなる立設状態とし、前記スライダの下降に応じて折畳み状態の足場板に沿わした収納状態とする第二アームと、
前記足場板を展開状態及び折畳み状態の夫々の状態でロックするロック機構と
を備えることを特徴とする折畳み式足場。
【請求項2】
前記一対の主脚間には、展開状態の足場板と面一となる主脚上部バーが横架されている
ことを特徴とする請求項1に記載の折畳み式足場。
【請求項3】
前記第一アームは、前記板部材に、該板部材の重心よりも外側の部位に軸支されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の折畳み式足場。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−2177(P2013−2177A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135598(P2011−135598)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(306035122)信和株式会社 (35)
【Fターム(参考)】