抵抗溶接システム及び抵抗溶接方法
【課題】複数個のワークが積層されて形成された積層体に対して抵抗溶接を施す際、前記積層体の最外に位置するワークと、これに隣接するワークとの間にナゲットを十分に成長させる。
【解決手段】抵抗溶接システムを構成する溶接ガンは、積層体を挟持する第1溶接チップ及び第2溶接チップと、第1溶接チップとともに前記積層体の最外に配置されたワークに当接する補助電極を具備する。溶接タイマ30の作用下に第1溶接チップから第2溶接チップへの通電がなされた際、第1溶接チップから補助電極に流れる分岐電流が同時に発生する。分岐電流i2を停止させるための分流OFFタイマ32には、前記の通電がなされると同時に、溶接タイマ30から通電開始信号が発信される。
【解決手段】抵抗溶接システムを構成する溶接ガンは、積層体を挟持する第1溶接チップ及び第2溶接チップと、第1溶接チップとともに前記積層体の最外に配置されたワークに当接する補助電極を具備する。溶接タイマ30の作用下に第1溶接チップから第2溶接チップへの通電がなされた際、第1溶接チップから補助電極に流れる分岐電流が同時に発生する。分岐電流i2を停止させるための分流OFFタイマ32には、前記の通電がなされると同時に、溶接タイマ30から通電開始信号が発信される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のワークを積層して形成される積層体に対して抵抗溶接を行う抵抗溶接システム及び抵抗溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数個の金属板同士を接合する手法として、これら金属板を積層して積層体を形成し、該積層体を1組の溶接用電極で挟持・加圧した後、該1組の溶接用電極間に通電を行い、前記金属板同士の接触面近傍の部位を溶融する抵抗溶接が従来から知られている。溶融した部位は、凝固によってナゲットと呼称される固相となる。場合によっては、3枚以上の金属板同士を抵抗溶接によって接合することもある。
【0003】
ここで、金属板は互いに同一厚みであるとは限らず、寧ろ、互いに相違することが大半である。すなわち、複数個の金属板の中には、厚みが最も小さいワーク(以下、最薄ワークとも表記する)が含まれる。
【0004】
このような最薄ワークを積層体の最外に配置して抵抗溶接を行った場合、この最薄ワークと、該最薄ワークに隣接する別のワークとの間のナゲットが十分に成長しないことがある。この理由は、最薄ワークの厚みが最小であるために固有抵抗が最小となることに起因して十分なジュール熱が発生しなくなるためであると推察される。
【0005】
最薄ワーク近傍のナゲットを大きく成長させるべく、電流値を大きくすることによって最薄ワークのジュール熱を大きくすることが想起される。しかしながら、この場合、厚みが大きいワークに大電流が流れるようになり、このために該ワークが溶融して飛散する、いわゆるスパッタが惹起され易くなるという不具合を招く。
【0006】
これとは別に、通電時間を長くすることも考えられる。しかしながら、この場合においても、最薄ワークに十分なジュール熱を発生させることは容易ではない。また、溶接処理時間が長くなるので溶接効率が低下するという不具合を招いてしまう。
【0007】
この観点から、特許文献1において、複数枚の金属板を積層するとともに最薄ワークを最外に配置した積層体に対して抵抗溶接を施す際、積層体に対する加圧力を小さくして大電流を短時間通電する第一段階と、前記加圧力を第一段階に比して大きく設定するとともに、電流値及び通電時間のそれぞれを第一段階の電流値以下、長時間化して通電を行う第二段階との二段階とすることが提案されている。
【0008】
該特許文献1の記載によれば、余計な工程を付加することなく、また、スパッタを発生させることなく、必要サイズのナゲットを有するスポット溶接継手を容易に作製することができるようになる、とのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−262259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載された従来技術に比して制御を一層簡素にしながらも、接合強度をさらに向上することが今なお希求されている。
【0011】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、積層体中のワーク同士の接触面近傍にナゲットを十分に成長させることが可能であり、しかも、スパッタが発生する懸念を払拭し得る抵抗溶接システム及び抵抗溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明は、複数個のワークを積層することで形成した積層体に対して抵抗溶接を行うための抵抗溶接システムであって、
前記積層体を挟持する第1溶接チップ及び第2溶接チップと、
前記第1溶接チップとともに前記積層体の最外に位置するワークに当接し、且つ前記第1溶接チップとは逆の極性である補助電極と、
抵抗溶接を施すために前記積層体を挟持した前記第1溶接チップと前記第2溶接チップとの間で通電を行う際の通電時間を制御する溶接タイマと、
前記通電を行う際、前記第1溶接チップから前記補助電極に向かう分岐電流、又は、前記補助電極から前記第1溶接チップに向かう分岐電流が流れる時間を制御する分岐電流タイマと、
前記溶接タイマに通電開始信号を送るとともに、前記分岐電流タイマに分岐電流が流れる時間を入力する制御回路と、
を備え、
通電開始信号が送られた前記溶接タイマの作用下に前記第1溶接チップと前記第2溶接チップとの間の通電を開始すると同時に、前記分岐電流タイマに通電開始信号を送ることを特徴とする。
【0013】
すなわち、本発明においては、第1溶接チップ及び第2溶接チップで積層体を挟持するのみでなく、積層体の最外に位置するワークに対して補助電極を当接させて通電を行う。該補助電極とともに前記最外のワークに当接した第1溶接チップは、この補助電極とは逆の極性であるので、第1溶接チップから補助電極に向かう電流、又はその逆方向に流れる電流のいずれか一方が分岐して生じる。この分岐電流が最外のワークの内部を流れることにより、この最外のワークと、該最外のワークに隣接するワークとの接触面が十分に加熱される。
【0014】
このように分岐電流による加熱がなされることにより、前記接触面に十分な大きさのナゲットが成長する。これにより、接合強度に優れた接合部が得られる。
【0015】
しかも、この場合、ワーク同士の接触面を流れる電流値が、第1溶接チップ及び第2溶接チップのみで積層体を挟持して通電を行う通常の抵抗溶接に比して小さくなる。このため、前記接触面に形成されたナゲットが十分な大きさに成長する間にスパッタが起こる懸念が払拭される。
【0016】
以上のように、本発明によれば、積層体中の最外に配置されたワークと、該最外のワークに隣接するワークとの間にナゲットを十分に成長させることが可能となる。その上、スパッタが発生する懸念をも払拭し得る。
【0017】
しかも、本発明においては、溶接タイマの作用下に通電が開始されると同時に、この通電開始を認識させる通電開始信号が分岐電流タイマに送られる。従って、分岐電流タイマは、実際の通電(溶接)が開始されると略同時に、通電(溶接)が開始されたことを認識することができる。換言すれば、実際の通電(溶接)開始タイミングと、分岐電流タイマがそのことを認識するタイミングとが略同時であり、両タイミング間にはタイムラグが生じないか、生じたとしても無視できるほどの短時間である。
【0018】
分岐電流タイマは、この通電開始信号を受信すると同時に、経過時間を計測し始める。そして、該分岐電流タイマに予め設定された所定の時間が経過すると、該分岐電流タイマは、分岐電流を停止させる。上記したように、実際の通電(溶接)開始タイミングと、分岐電流タイマがそのことを認識するタイミングとが略同時であるので、分岐電流を停止させるべき時間に分岐電流を停止させることができる。
【0019】
すなわち、本発明によれば、分岐電流の停止タイミングを高精度に制御することができ、結局、最外のワークとそれに隣接するワークとの間のナゲットの成長度合いを高精度に制御することができる。
【0020】
分岐電流を停止させるためには、第1溶接チップと補助電極との電気経路を遮断すればよい。このためには、例えば、補助電極と電源との間に、これら補助電極と電源との間のみの電気経路を接続又は遮断するスイッチを設けるようにしてもよい。このスイッチをON(接続)状態からOFF(切断)状態に切り換えたり、又はその逆に切り換えたりすることによって、第1溶接チップと補助電極との電気経路を接続又は遮断することができる。
【0021】
又は、補助電極を変位させるための変位機構を設け、この変位機構の作用下に補助電極を最外のワークに対して当接又は離間させるようにしてもよい。当然に、補助電極が最外のワークに対して当接している間は第1溶接チップと補助電極との電気経路が接続され、一方、補助電極が最外のワークに対して離間している間は第1溶接チップと補助電極との電気経路が遮断される。
【0022】
補助電極は、第1溶接チップを変位する変位機構によって、該第1溶接チップと一体的に最外のワークに対して接近又は離間させる(変位させる)ようにしてもよいが、補助電極のみを変位させる変位機構を別個に設けることが好ましい。
【0023】
さらに、補助電極は、第1溶接チップを囲繞する円環形状であることが好ましい。この場合、分岐電流が最外のワーク内を放射状に万遍なく流れる。従って、最外のワークとこれに隣接するワークとの接触面がムラなく加熱され、ナゲットの形成が容易となるとともに、該ナゲットを十分に成長させることも容易となる。
【0024】
また、本発明は、複数個のワークを積層することで形成した積層体に対して抵抗溶接を行う抵抗溶接方法であって、
前記積層体を第1溶接用電極及び第2溶接用電極で挟持するとともに、前記積層体の最外に位置して前記第1溶接チップが当接したワークに対し、前記第1溶接用電極とは逆の極性である補助電極を当接させる工程と、
前記第1溶接用電極と第2溶接用電極の間に通電を行うことで前記積層体に対して抵抗溶接を施すとともに、前記第1溶接用電極から前記補助電極に向かう分岐電流、又は、前記補助電極から前記第1溶接用電極に向かう分岐電流を流す工程と、
前記第1溶接チップと前記補助電極とを電気的に絶縁して前記分岐電流を停止する一方、前記第1溶接用電極と第2溶接用電極の間の通電を継続する工程と、
前記第1溶接用電極と第2溶接用電極の間の通電を停止する工程と、
を有し、
前記第1溶接用電極と第2溶接用電極の間の通電開始から通電停止までの時間を溶接タイマによって制御し、且つ前記溶接タイマは、分岐電流タイマに対して通電開始信号を送り、
前記分岐電流タイマは、通電開始信号を受信してから時間の計測を開始し、予め設定された時間に到達したときに前記分岐電流を停止する制御を行うことを特徴とする。
【0025】
このようにして分岐電流の流れる時間を制御することにより、分岐電流を停止させるべき時間に分岐電流を停止させることができる。すなわち、分岐時間の停止タイミングを高精度に制御することができるので、最外のワークとこれに隣接するワークとの間のナゲットの成長度合いを高精度に制御することができる。
【0026】
分岐電流の停止は、例えば、これら補助電極と電源との間のみの電気経路を接続又は遮断するスイッチを設ければよい。又は、補助電極を最外のワークに対して離間させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、積層体を挟持する第1溶接チップ及び第2溶接チップの他、前記積層体の最外に配置されたワークに当接する補助電極を用い、抵抗溶接を行う際、この補助電極と、該補助電極とともに前記最外のワークに当接した前記第1溶接チップとの間に、前記最外のワークを経由する分岐電流を流すようにしている。この分岐電流により、該最外のワークとこれに隣接するワークとの接触面を十分に加熱し得るジュール熱が発生する。従って、この接触面に十分な大きさのナゲットを成長させることができ、その結果、十分な接合強度を確保することができる。
【0028】
しかも、本発明においては、溶接タイマの作用下に通電が開始されると同時に、この通電開始を認識させる通電開始信号を分岐電流タイマに送るようにしている。従って、分岐電流タイマは、実際の通電(溶接)が開始されると略同時に、通電(溶接)が開始されたことを認識することができる。すなわち、実際の通電(溶接)開始タイミングと、分岐電流タイマがそのことを認識するタイミングとの間にタイムラグが生じないか、生じたとしても無視できる程度の短時間である。このため、分岐時間の停止タイミングを高精度に制御することができる。従って、最外のワークとその直下のワークとの間のナゲットの成長度合いを高精度に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る抵抗溶接システムの要部拡大一部横断面斜視図である。
【図2】前記抵抗溶接システムの制御信号系統を模式的に示したブロック図である。
【図3】第1溶接チップ、第2溶接チップ及び補助電極の全てで、溶接対象である積層体を挟持した状態を示す縦断面模式図である。
【図4】通電を開始し、第1溶接チップから第2溶接チップに向かう電流と、第1溶接チップから補助電極に向かう分岐電流とを流した状態を示す縦断面模式図である。
【図5】図4の等価回路に電流及び分岐電流が如何なる経路で流れるかを示した模式的電流経路図である。
【図6】図4から通電を続行した状態を示す縦断面模式図である。
【図7】ON/OFFスイッチをOFF状態とし、且つ第1溶接チップから第2溶接チップへの通電を続行した状態を示す縦断面模式図である。
【図8】図7の等価回路に電流及び分岐電流が如何なる経路で流れるかを示した模式的電流経路図である。
【図9】通電(抵抗溶接)を終了した状態を示す縦断面模式図である。
【図10】図4とは逆に、第2溶接チップ及び電流分岐電極から第1溶接チップに向かう電流を流した状態を示す縦断面模式図である。
【図11】積層体の最上に位置する最薄ワークと、その直下のワークとに、第1溶接チップから補助電極に向かう電流が流れる状態を示す縦断面模式図である。
【図12】図3とは別の積層体を、第1溶接チップ、第2溶接チップ及び補助電極の全てで挟持して通電を開始した状態を示す縦断面模式図である。
【図13】図12に続き、ON/OFFスイッチをOFF状態とし、且つ第1溶接チップから第2溶接チップへの通電を続行した状態を示す縦断面模式図である。
【図14】図13に続き、第1溶接チップから第2溶接チップへの通電をさらに続行した状態を示す縦断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る抵抗溶接システムにつき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
図1は、本実施の形態に係る抵抗溶接システムの要部拡大一部横断面斜視図である。この抵抗溶接システムは、第1溶接チップ10、第2溶接チップ12及び補助電極14を具備する図示しない溶接ガンを有し、この場合、該溶接ガンは、例えば、6軸ロボット等の多関節ロボットのアーム部先端に配設される。多関節ロボットのアームに溶接ガンが配設された構成は公知であり、このため、この構成についての詳細な説明は省略する。
【0032】
溶接対象である積層体16につき若干説明すると、この場合、積層体16は、3枚の金属板18、20、22が下方からこの順序で積層されることによって構成される。この中の金属板18、20の厚みはD1(例えば、約1mm〜約2mm)に設定され、金属板22の厚みはD1に比して小寸法のD2(例えば、約0.5mm〜約0.7mm)に設定される。すなわち、金属板18、20の厚みは同一であり、金属板22はこれら金属板18、20に比して薄肉である。以下においては、金属板22を最薄ワークと呼称することもある。
【0033】
金属板18、20は、例えば、いわゆるハイテン鋼であるJAC590、JAC780又はJAC980(いずれも日本鉄鋼連盟規格に規定される高性能高張力鋼板)からなり、最薄ワーク22は、例えば、いわゆる軟鋼であるJAC270(日本鉄鋼連盟規格に規定される高性能絞り加工用鋼板)からなる。金属板18、20は同一金属種であってもよいし、異種金属種であってもよい。
【0034】
又は、金属板18、20、22の全てが軟鋼である組み合わせであってもよいし、金属板18のみがハイテン鋼、金属板20、22が軟鋼である組み合わせであってもよい。
【0035】
金属板18、20、22の材質は、上記した鋼材に特に限定されるものではないことは勿論であり、抵抗溶接が可能なものであれば如何なる材質であってもよい。
【0036】
長尺棒状に形成された第1溶接チップ10と第2溶接チップ12は、これら第1溶接チップ10及び第2溶接チップ12の間に溶接対象である積層体16を挟持し、且つ該積層体16に対して通電を行うものである。なお、本実施の形態においては、第1溶接チップ10から第2溶接チップ12に向かって電流が流れるものとする。
【0037】
前記溶接ガンがいわゆるX型のものである場合、第1溶接チップ10は、開閉自在なチャック対を構成する一方のチャック爪に設けられ、第2溶接チップ12は、前記チャック対の残余のチャック爪に設けられる。すなわち、チャック対が開動作又は閉動作することに伴い、第1溶接チップ10と第2溶接チップ12が互いに離間又は接近する。
【0038】
前記溶接ガンは、いわゆるC型のものであってもよい。この場合、第2溶接チップ12は固定アームの先端に配置され、一方、第1溶接チップ10は、例えば、ボールネジに連結される。ボールネジが回転付勢されることに伴い、第1溶接チップ10が第2溶接チップ12に対して接近又は離間する。
【0039】
補助電極14は、この場合、円環形状に形成され、第1溶接チップ10を囲繞する。第1溶接チップ10を支持する前記溶接ガンには、この補助電極14を積層体16に対して接近又は離間させるための変位機構、例えば、ボールネジ又はシリンダ等が設けられる。この変位機構により、補助電極14は、第1溶接チップ10とは別個に積層体16に対して接近又は離間することが可能である。
【0040】
本実施の形態では、電源24の正極に対して第1溶接チップ10が電気的に接続されるとともに、第2溶接チップ12及び補助電極14が前記電源24の負極に対して電気的に接続される。このことから諒解される通り、第1溶接チップ10と補助電極14はともに、積層体16を構成する最薄ワーク22に当接するものの、その極性は互いに逆である。
【0041】
そして、電源24の負極と補助電極14の間には、ON/OFFスイッチ26が介装される。すなわち、電源24の負極と補助電極14は、ON/OFFスイッチ26がON状態にあるときに電気的に接続され、一方、OFF状態にあるときに絶縁される。
【0042】
以上の構成において、第1溶接チップ10と補助電極14との離間距離Zが過度に大きい場合、第1溶接チップ10と補助電極14との間の抵抗が大きくなり、後述する分岐電流i2(図4参照)が流れることが困難となる。従って、離間距離Zは、第1溶接チップ10と補助電極14との間の抵抗が、分岐電流i2が適切な電流値で流れることが可能となる距離に設定される。
【0043】
要部がこのように構成される抵抗溶接システムの制御信号系統を、図2に模式的に示す。この図2に示すように、抵抗溶接システムは、RB(ロボット)コントローラ28と、溶接タイマ30と、分岐電流タイマとしての分流OFFタイマ32とをさらに有する。
【0044】
RBコントローラ28は、前記溶接ガン及び前記多関節ロボットの動作を制御する制御回路であり、後述するように、溶接タイマ30及び分流OFFタイマ32に指令信号を送る。なお、この指令信号は、RBコントローラ28自体から発信するようにしてもよいし、図示しない別の制御回路が発信したものをRBコントローラ28が一旦受信した後、該RBコントローラ28から再発信するようにしてもよい。
【0045】
溶接タイマ30は、第1溶接チップ10から第2溶接チップ12に向かって流れる電流の通電時間、換言すれば、溶接時間を制御するためのタイマである。この種のタイマは、抵抗溶接において広汎に採用されている周知のものであるので、その詳細な説明を省略する。
【0046】
分流OFFタイマ32は、分岐電流i2(図4参照)が流れる時間を制御するためのタイマである。すなわち、分流OFFタイマ32は、RBコントローラ28から予め指令を受けた所定の時間が経過したときに、前記ON/OFFスイッチ26(図1参照)をOFF状態とすることによって、分岐電流i2(図4参照)を停止させる。
【0047】
分流OFFタイマ32は、溶接タイマ30とは別個に設けるようにしてもよいし、溶接タイマ30の一作用として機能させるようにしてもよい。
【0048】
本実施の形態に係る抵抗溶接システムの要部は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき、抵抗溶接システムの動作との関係で説明する。
【0049】
はじめに、RBコントローラ28に対して分岐電流を流す時間を入力する。RBコントローラ28は、図2に示すように、「入力された時間が経過したら、ON/OFFスイッチ26をOFF状態とする」との指令信号を発する。
【0050】
積層体16に対して抵抗溶接を行う際、換言すれば、金属板18、20同士を接合するとともに金属板20、22同士を接合する際には、先ず、RBコントローラ28の作用下に、前記多関節ロボットが、第1溶接チップ10と第2溶接チップ12の間に積層体16が配置されるように前記溶接ガンを移動させる。その後、チャック爪同士が閉動作したり、又は変位機構が付勢されたりすることにより、第1溶接チップ10と第2溶接チップ12が相対的に接近し、その結果、互いの間に積層体16が挟持される。補助電極14は、この挟持と同時に、最薄ワーク22に当接する。以上により、図3に模式的な縦断面図として示す状態が形成される。
【0051】
なお、補助電極14の最薄ワーク22に対する当接は、該補助電極14が最薄ワーク22に接触する程度であってもよいし、最薄ワーク22を所定の加圧力で押圧する程度であってもよい。
【0052】
図3に示す状態が形成されたことを接触式センサ等によって認識したRBコントローラ28は、溶接タイマ30に対して「通電開始」の指令信号を発する。この指令信号を受けた溶接タイマ30により、第1溶接チップ10と第2溶接チップ12の間に電流が流れて通電が開始される。同時に、分流OFFタイマ32に対して通電開始信号が送られる(図2参照)。
【0053】
通電につき具体的に説明すると、第1溶接チップ10、第2溶接チップ12の各々が電源24の正極、負極に接続されているため、図4に示すように、第1溶接チップ10から第2溶接チップ12に向かう電流i1が流れる。そして、この電流i1に基づくジュール熱により、金属板18、20の間、及び金属板20、22の間がそれぞれ加熱される。なお、図4における参照符号40、42は、加熱領域を示す。
【0054】
ここで、最薄ワーク22には補助電極14も当接しており、この補助電極14の極性は負である。従って、第1溶接チップ10からは、上記した電流i1と同時に、補助電極14に向かう分岐電流i2が出発する。補助電極14が円環形状であるため、分岐電流i2は放射状に流れる。
【0055】
このように、本実施の形態においては、金属板18、20には流れず最薄ワーク22にのみ流れる分岐電流i2が発生する。図5は、この場合の等価回路における電流経路を示す。
【0056】
分岐電流i2が生じた結果、第1溶接チップ10及び第2溶接チップ12のみを使用する一般的な抵抗溶接に比して最薄ワーク22の内部を通過する電流値が大きくなる。従って、この場合、最薄ワーク22の内部に、前記加熱領域42とは別の加熱領域44が形成される。なお、分岐電流i2が放射状に流れるため、加熱領域44は金属板20、22の接触面を放射状に加熱する。加熱領域44は、時間の経過とともに拡大し、図6に示すように、加熱領域42と一体化する。
【0057】
金属板20、22の間の接触面は、このようにして一体化した加熱領域42、44の双方から熱が伝達された結果、十分に温度上昇して溶融し始める。その結果、金属板20、22の間にナゲット46が形成される。
【0058】
ここで、分岐電流i2の割合を大きくするほど加熱領域44を大きくすることが可能であるが、分岐電流i2の割合を過度に大きくした場合、電流i1の電流値が小さくなるので、加熱領域40、42が小さくなる。このため、ナゲット46の大きさが飽和する一方、ナゲット48が小さくなる傾向がある。従って、分岐電流i2の割合は、ナゲット48が十分に成長する程度の電流i1が流れるように設定することが好ましい。
【0059】
電流i1と分岐電流i2の割合は、例えば、上記したように第1溶接チップ10と補助電極14との離間距離Z(図1及び図3参照)を変更することで調節することが可能である。
【0060】
ナゲット46は、通電が継続される限り、時間の経過とともに成長する。従って、通電を所定の時間継続することにより、ナゲット46を十分に成長させることができる。なお、通電継続時間に対するナゲット46の成長の度合いは、テストピース等を用いた抵抗溶接試験で予め確認しておけばよい。
【0061】
この場合、金属板18、20に流れる電流i1の電流値は、一般的な抵抗溶接に比して小さい。このため、金属板20、22の間のナゲット46が大きく成長している間に金属板18、20の発熱量が過度に大きくなることが回避される。従って、スパッタが発生する懸念が払拭される。
【0062】
この間、電流i1によって金属板18、20の間にもナゲット48が形成される。分岐電流i2が継続して流れるようにすると、分岐電流i2を停止した場合に比して電流i1の全通電量が少なくなるので、加熱領域40、ひいてはナゲット48が若干小さくなる傾向がある。本実施の形態においては、ナゲット48をさらに成長させるべく、分岐電流i2を停止させる。
【0063】
すなわち、分流OFFタイマ32には、上記したように、溶接タイマ30の作用下に通電が開始されると同時に、この通電開始を認識させる通電開始信号が送られる。分流OFFタイマ32は、この通電開始信号を受信すると同時に、経過時間を計測し始める。そして、該分流OFFタイマ32に予め設定された所定の時間が経過すると、該分流OFFタイマ32は、図7に示すようにON/OFFスイッチ26をOFF状態とする。これにより電源24の負極と補助電極14が絶縁され、その結果、分岐電流i2が停止する。図8は、この際の等価回路における電流経路を示す。
【0064】
以上のように、本実施の形態では、通電を開始すると同時に溶接タイマ30から分流OFFタイマ32に通電開始信号を送るとともに、分流OFFタイマ32に、この通電開始信号を受信すると同時に経過時間の計測を開始させるようにしている。
【0065】
図2に破線で示すように、RBコントローラ28から分流OFFタイマ32に通電開始信号を送ることも想起される。しかしながら、この場合、RBコントローラ28は、溶接タイマ30が通電を開始した後にRBコントローラ28に向けて発した「通電を開始した」という信号を受信した後、分流OFFタイマ32に通電開始信号を送る必要がある。このRBコントローラ28と溶接タイマ30との間で信号を送受信する時間分、実際の通電開始(溶接開始)タイミングと、分流OFFタイマ32が通電開始信号を受信して通電(溶接)が開始されたことを認識するタイミングとの間にタイムラグが生じてしまう。この場合、分岐電流i2を停止させるべき時間に分岐電流i2を実際に停止させることが容易でなくなる。
【0066】
これに対し、本実施の形態によれば、RBコントローラ28と溶接タイマ30との間で通電開始信号と「通電を開始した」との信号を送受信する必要がない。上記したように、第1溶接チップ10から第2溶接チップ12への通電を開始すると同時に溶接タイマ30から分流OFFタイマ32に通電開始信号を送るとともに、分流OFFタイマ32に、この通電開始信号を受信すると同時に経過時間の計測を開始させるようにしているからである。
【0067】
従って、分流OFFタイマ32は、実際の通電(溶接)が開始されると略同時に、通電(溶接)が開始されたことを認識することができる。換言すれば、実際の通電(溶接)開始タイミングと、分流OFFタイマ32がそのことを認識するタイミングとが略同時であり、タイムラグが生じないか、生じたとしても無視できる程度の極短時間である。このため、分岐電流i2を停止させるべき時間に分岐電流i2を停止させることが容易となる。
【0068】
以上のようにして分岐電流i2が停止すると、最薄ワーク22には、第1溶接チップ10から第2溶接チップ12へ向かう電流i1のみが流れるようになる。その結果、図6に示す加熱領域44が消失する(図6参照)。
【0069】
その一方で、金属板18、20においては、通常の抵抗溶接時と同様の状態が形成される。すなわち、厚みが大きい金属板18、20ではジュール熱による発熱量が増加し、その結果、加熱領域40が広がるとともにその温度が一層上昇する。金属板18、20の接触面は、この温度上昇した加熱領域40に加熱され、これにより、該接触面近傍の温度が十分に上昇して溶融し、ナゲット48の成長が促進される。
【0070】
以降は、ナゲット48が十分に成長するまで、例えば、図9に示すように、ナゲット46と一体化するまで通電を継続すればよい。通電継続時間に対するナゲット48の成長の度合いも、テストピース等を用いた抵抗溶接試験で予め確認しておけばよい。
【0071】
ここで、金属板18、20の接触面は、金属板20、22同士の間にナゲット46を成長させる際に電流i1が通過することに伴って形成された加熱領域40によって予め加熱されている。このため、金属板18、20同士は、ナゲット48が成長する前になじみが向上している。従って、スパッタが発生し難い。
【0072】
以上のように、本実施の形態においては、金属板20、22の間のナゲット46を成長させる際、金属板18、20の間のナゲット48を成長させる際の双方でスパッタが発生することを回避することができる。
【0073】
溶接タイマ30に予め設定された所定時間(ナゲット48が十分成長し得る時間)が経過すると、通電が停止されるとともに、図9に示すように、第1溶接チップ10が最薄ワーク22から離間する。又は、第1溶接チップ10を最薄ワーク22から離間させることで第1溶接チップ10と第2溶接チップ12を電気的に絶縁し、これにより溶接を停止するようにしてもよい。
【0074】
このようにして通電(溶接)が停止されることに伴い、金属板18、20の発熱も終了する。時間の経過とともにナゲット48が冷却固化し、これにより金属板18、20が互いに接合される。
【0075】
以上のようにして、積層体16を構成する金属板18、20同士、金属板20、22同士が接合され、結局、接合品が得られるに至る。
【0076】
この接合品においては、金属板18、20同士の接合強度と同様に、金属板20、22同士の接合強度も優れる。上記したように最薄ワーク22に分岐電流i2が流されたことに伴って、金属板20、22の間のナゲット46が十分に成長しているからである。
【0077】
しかも、上記から諒解される通り、本実施の形態に係る抵抗溶接システムを構成するに際しては、補助電極14と、該補助電極14を変位させるための変位機構とを設ければよい。従って、補助電極14を設けることに伴って抵抗溶接システムの構成が複雑化することもない。
【0078】
なお、上記した実施の形態においては、ON/OFFスイッチ26をOFF状態とすることで分岐電流i2を停止させるようにしているが、これに代替し、分流OFFタイマ32に設定された所定時間が経過すると補助電極14を最薄ワーク22から離間させ、これにより分岐電流i2を停止させるようにしてもよい。この場合には、補助電極14を第1溶接チップ10とは別個に変位させるための変位機構を設けるようにすればよい。
【0079】
また、図10に示すように、金属板18に当接した第2溶接チップ12から、最薄ワーク22に当接した第1溶接チップ10に向かう電流を流すようにしてもよい。この場合にも、最薄ワーク22に当接した補助電極14の極性を第1溶接チップ10と逆にする。すなわち、第2溶接チップ12及び補助電極14を電源24の正極に電気的に接続する一方、第1溶接チップ10を電源24の負極に電気的に接続する。これにより、第2溶接チップ12から第1溶接チップ10に向かう電流i1と、補助電極14から第1溶接チップ10に向かう分岐電流i2とが発生する。
【0080】
いずれの場合においても、補助電極は、円環形状の補助電極14に特に限定されるものではない。例えば、第1溶接チップ10及び第2溶接チップ12と同様に長尺棒状のものであってもよい。この場合、補助電極は1本であっても複数本であってもよく、複数本を用いる場合は、これら複数本の補助電極を最薄ワーク22に対して同時に当接又は離間させるようにしてもよい。
【0081】
さらに、上記した各態様において、図11に示すように、分岐電流i2を、第1溶接チップ10が接触した最薄ワーク22のみならず、該最薄ワーク22の直下に位置する金属板20にも流れるようにしてもよい。
【0082】
この場合、最薄ワーク22と金属板20の間に抵抗発熱が生じ、その結果、ナゲット46が生成する。その一方で、金属板18、20の間には、第1溶接チップ10から補助電極14に向かう電流が流れないか、又は、流れたとしてもその電流量は極僅かである。従って、最薄ワーク22と金属板20の間に生成した前記ナゲット46が容易に成長する。
【0083】
又は、4枚以上の金属板で積層体を構成するようにしてもよいし、図12に示すように、2枚の金属板18、20のみで積層体16aを構成するようにしてもよい。以下、この場合につき説明する。
【0084】
積層体16aに対して抵抗溶接を行う際には、上記同様に、RBコントローラ28の作用下に、前記多関節ロボット、ひいては前記溶接ガンが移動して第1溶接チップ10と第2溶接チップ12で積層体16aが挟持される。さらに、補助電極14が金属板20に当接する。以上により、図12に示す状態が形成される。
【0085】
以降も上記と同様にして、RBコントローラ28の「通電開始」の指令信号を受けた溶接タイマ30により、第1溶接チップ10と第2溶接チップ12の間に電流i1が流れて通電が開始される。同時に、第1溶接チップ10から補助電極14に向かう分岐電流i2が放射状に流れる。さらに、分流OFFタイマ32に対して通電開始信号が送られ(図2参照)、この通電開始信号を受信した分流OFFタイマ32が経過時間を計測し始める。
【0086】
図12から諒解されるように、金属板18、20の間は電流i1に基づくジュール熱により加熱されて軟化し、これにより軟化部50が形成される。一方、電流i1及び分岐電流i2が流れる金属板20は、これら電流i1及び分岐電流i2に基づくジュール熱により加熱されて溶融し、これにより溶融部52が形成される。
【0087】
分流OFFタイマ32は、テストピースに対して抵抗溶接試験を行うことで求められた軟化部50が十分に軟化し得る時間が予め設定されている。従って、この設定された時間に到達すると、図13に示すように、分流OFFタイマ32の作用下にON/OFFスイッチ26がOFF状態とされる。これに伴い、分岐電流i2が停止される。
【0088】
以上のようにして分岐電流i2が停止すると、金属板18、20には、第1溶接チップ10から第2溶接チップ12へ向かう電流i1のみが流れるようになる。この電流i1は、分岐電流i2が停止されるまでの電流i1に比して大きい。
【0089】
従って、抵抗が大きい金属板18、20の接触面におけるジュール熱が、分岐電流i2が停止する前に比して大きくなる。その結果、図14に示すように、溶融部52が軟化部50側に大きく成長し、最終的に、この溶融部52からナゲットが形成される。
【0090】
上記したように、金属板18、20の接触面には軟化部50が予め形成されている。このため、金属板18、20の間が良好にシールされる。従って、分岐電流i2が停止されて電流i1の電流値が大きくなったときにおいても、金属板18、20の間からスパッタが飛散することが回避される。
【0091】
以上のように、2枚の金属板18、20に対して抵抗溶接を行う場合にも、スパッタが発生することを回避しながら、これら金属板18、20の接触面に大きなナゲットを成長させることができる。
【符号の説明】
【0092】
10、12…溶接チップ 14…補助電極
16、16a…積層体 18、20…金属板
22…最薄ワーク(金属板) 24…電源
26…ON/OFFスイッチ 28…RBコントローラ
30…溶接タイマ 32…分流OFFタイマ
40、42、44…加熱領域 46、48…ナゲット
50…軟化部 52…溶融部
i1…電流 i2…分岐電流
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のワークを積層して形成される積層体に対して抵抗溶接を行う抵抗溶接システム及び抵抗溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数個の金属板同士を接合する手法として、これら金属板を積層して積層体を形成し、該積層体を1組の溶接用電極で挟持・加圧した後、該1組の溶接用電極間に通電を行い、前記金属板同士の接触面近傍の部位を溶融する抵抗溶接が従来から知られている。溶融した部位は、凝固によってナゲットと呼称される固相となる。場合によっては、3枚以上の金属板同士を抵抗溶接によって接合することもある。
【0003】
ここで、金属板は互いに同一厚みであるとは限らず、寧ろ、互いに相違することが大半である。すなわち、複数個の金属板の中には、厚みが最も小さいワーク(以下、最薄ワークとも表記する)が含まれる。
【0004】
このような最薄ワークを積層体の最外に配置して抵抗溶接を行った場合、この最薄ワークと、該最薄ワークに隣接する別のワークとの間のナゲットが十分に成長しないことがある。この理由は、最薄ワークの厚みが最小であるために固有抵抗が最小となることに起因して十分なジュール熱が発生しなくなるためであると推察される。
【0005】
最薄ワーク近傍のナゲットを大きく成長させるべく、電流値を大きくすることによって最薄ワークのジュール熱を大きくすることが想起される。しかしながら、この場合、厚みが大きいワークに大電流が流れるようになり、このために該ワークが溶融して飛散する、いわゆるスパッタが惹起され易くなるという不具合を招く。
【0006】
これとは別に、通電時間を長くすることも考えられる。しかしながら、この場合においても、最薄ワークに十分なジュール熱を発生させることは容易ではない。また、溶接処理時間が長くなるので溶接効率が低下するという不具合を招いてしまう。
【0007】
この観点から、特許文献1において、複数枚の金属板を積層するとともに最薄ワークを最外に配置した積層体に対して抵抗溶接を施す際、積層体に対する加圧力を小さくして大電流を短時間通電する第一段階と、前記加圧力を第一段階に比して大きく設定するとともに、電流値及び通電時間のそれぞれを第一段階の電流値以下、長時間化して通電を行う第二段階との二段階とすることが提案されている。
【0008】
該特許文献1の記載によれば、余計な工程を付加することなく、また、スパッタを発生させることなく、必要サイズのナゲットを有するスポット溶接継手を容易に作製することができるようになる、とのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−262259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載された従来技術に比して制御を一層簡素にしながらも、接合強度をさらに向上することが今なお希求されている。
【0011】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、積層体中のワーク同士の接触面近傍にナゲットを十分に成長させることが可能であり、しかも、スパッタが発生する懸念を払拭し得る抵抗溶接システム及び抵抗溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明は、複数個のワークを積層することで形成した積層体に対して抵抗溶接を行うための抵抗溶接システムであって、
前記積層体を挟持する第1溶接チップ及び第2溶接チップと、
前記第1溶接チップとともに前記積層体の最外に位置するワークに当接し、且つ前記第1溶接チップとは逆の極性である補助電極と、
抵抗溶接を施すために前記積層体を挟持した前記第1溶接チップと前記第2溶接チップとの間で通電を行う際の通電時間を制御する溶接タイマと、
前記通電を行う際、前記第1溶接チップから前記補助電極に向かう分岐電流、又は、前記補助電極から前記第1溶接チップに向かう分岐電流が流れる時間を制御する分岐電流タイマと、
前記溶接タイマに通電開始信号を送るとともに、前記分岐電流タイマに分岐電流が流れる時間を入力する制御回路と、
を備え、
通電開始信号が送られた前記溶接タイマの作用下に前記第1溶接チップと前記第2溶接チップとの間の通電を開始すると同時に、前記分岐電流タイマに通電開始信号を送ることを特徴とする。
【0013】
すなわち、本発明においては、第1溶接チップ及び第2溶接チップで積層体を挟持するのみでなく、積層体の最外に位置するワークに対して補助電極を当接させて通電を行う。該補助電極とともに前記最外のワークに当接した第1溶接チップは、この補助電極とは逆の極性であるので、第1溶接チップから補助電極に向かう電流、又はその逆方向に流れる電流のいずれか一方が分岐して生じる。この分岐電流が最外のワークの内部を流れることにより、この最外のワークと、該最外のワークに隣接するワークとの接触面が十分に加熱される。
【0014】
このように分岐電流による加熱がなされることにより、前記接触面に十分な大きさのナゲットが成長する。これにより、接合強度に優れた接合部が得られる。
【0015】
しかも、この場合、ワーク同士の接触面を流れる電流値が、第1溶接チップ及び第2溶接チップのみで積層体を挟持して通電を行う通常の抵抗溶接に比して小さくなる。このため、前記接触面に形成されたナゲットが十分な大きさに成長する間にスパッタが起こる懸念が払拭される。
【0016】
以上のように、本発明によれば、積層体中の最外に配置されたワークと、該最外のワークに隣接するワークとの間にナゲットを十分に成長させることが可能となる。その上、スパッタが発生する懸念をも払拭し得る。
【0017】
しかも、本発明においては、溶接タイマの作用下に通電が開始されると同時に、この通電開始を認識させる通電開始信号が分岐電流タイマに送られる。従って、分岐電流タイマは、実際の通電(溶接)が開始されると略同時に、通電(溶接)が開始されたことを認識することができる。換言すれば、実際の通電(溶接)開始タイミングと、分岐電流タイマがそのことを認識するタイミングとが略同時であり、両タイミング間にはタイムラグが生じないか、生じたとしても無視できるほどの短時間である。
【0018】
分岐電流タイマは、この通電開始信号を受信すると同時に、経過時間を計測し始める。そして、該分岐電流タイマに予め設定された所定の時間が経過すると、該分岐電流タイマは、分岐電流を停止させる。上記したように、実際の通電(溶接)開始タイミングと、分岐電流タイマがそのことを認識するタイミングとが略同時であるので、分岐電流を停止させるべき時間に分岐電流を停止させることができる。
【0019】
すなわち、本発明によれば、分岐電流の停止タイミングを高精度に制御することができ、結局、最外のワークとそれに隣接するワークとの間のナゲットの成長度合いを高精度に制御することができる。
【0020】
分岐電流を停止させるためには、第1溶接チップと補助電極との電気経路を遮断すればよい。このためには、例えば、補助電極と電源との間に、これら補助電極と電源との間のみの電気経路を接続又は遮断するスイッチを設けるようにしてもよい。このスイッチをON(接続)状態からOFF(切断)状態に切り換えたり、又はその逆に切り換えたりすることによって、第1溶接チップと補助電極との電気経路を接続又は遮断することができる。
【0021】
又は、補助電極を変位させるための変位機構を設け、この変位機構の作用下に補助電極を最外のワークに対して当接又は離間させるようにしてもよい。当然に、補助電極が最外のワークに対して当接している間は第1溶接チップと補助電極との電気経路が接続され、一方、補助電極が最外のワークに対して離間している間は第1溶接チップと補助電極との電気経路が遮断される。
【0022】
補助電極は、第1溶接チップを変位する変位機構によって、該第1溶接チップと一体的に最外のワークに対して接近又は離間させる(変位させる)ようにしてもよいが、補助電極のみを変位させる変位機構を別個に設けることが好ましい。
【0023】
さらに、補助電極は、第1溶接チップを囲繞する円環形状であることが好ましい。この場合、分岐電流が最外のワーク内を放射状に万遍なく流れる。従って、最外のワークとこれに隣接するワークとの接触面がムラなく加熱され、ナゲットの形成が容易となるとともに、該ナゲットを十分に成長させることも容易となる。
【0024】
また、本発明は、複数個のワークを積層することで形成した積層体に対して抵抗溶接を行う抵抗溶接方法であって、
前記積層体を第1溶接用電極及び第2溶接用電極で挟持するとともに、前記積層体の最外に位置して前記第1溶接チップが当接したワークに対し、前記第1溶接用電極とは逆の極性である補助電極を当接させる工程と、
前記第1溶接用電極と第2溶接用電極の間に通電を行うことで前記積層体に対して抵抗溶接を施すとともに、前記第1溶接用電極から前記補助電極に向かう分岐電流、又は、前記補助電極から前記第1溶接用電極に向かう分岐電流を流す工程と、
前記第1溶接チップと前記補助電極とを電気的に絶縁して前記分岐電流を停止する一方、前記第1溶接用電極と第2溶接用電極の間の通電を継続する工程と、
前記第1溶接用電極と第2溶接用電極の間の通電を停止する工程と、
を有し、
前記第1溶接用電極と第2溶接用電極の間の通電開始から通電停止までの時間を溶接タイマによって制御し、且つ前記溶接タイマは、分岐電流タイマに対して通電開始信号を送り、
前記分岐電流タイマは、通電開始信号を受信してから時間の計測を開始し、予め設定された時間に到達したときに前記分岐電流を停止する制御を行うことを特徴とする。
【0025】
このようにして分岐電流の流れる時間を制御することにより、分岐電流を停止させるべき時間に分岐電流を停止させることができる。すなわち、分岐時間の停止タイミングを高精度に制御することができるので、最外のワークとこれに隣接するワークとの間のナゲットの成長度合いを高精度に制御することができる。
【0026】
分岐電流の停止は、例えば、これら補助電極と電源との間のみの電気経路を接続又は遮断するスイッチを設ければよい。又は、補助電極を最外のワークに対して離間させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、積層体を挟持する第1溶接チップ及び第2溶接チップの他、前記積層体の最外に配置されたワークに当接する補助電極を用い、抵抗溶接を行う際、この補助電極と、該補助電極とともに前記最外のワークに当接した前記第1溶接チップとの間に、前記最外のワークを経由する分岐電流を流すようにしている。この分岐電流により、該最外のワークとこれに隣接するワークとの接触面を十分に加熱し得るジュール熱が発生する。従って、この接触面に十分な大きさのナゲットを成長させることができ、その結果、十分な接合強度を確保することができる。
【0028】
しかも、本発明においては、溶接タイマの作用下に通電が開始されると同時に、この通電開始を認識させる通電開始信号を分岐電流タイマに送るようにしている。従って、分岐電流タイマは、実際の通電(溶接)が開始されると略同時に、通電(溶接)が開始されたことを認識することができる。すなわち、実際の通電(溶接)開始タイミングと、分岐電流タイマがそのことを認識するタイミングとの間にタイムラグが生じないか、生じたとしても無視できる程度の短時間である。このため、分岐時間の停止タイミングを高精度に制御することができる。従って、最外のワークとその直下のワークとの間のナゲットの成長度合いを高精度に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る抵抗溶接システムの要部拡大一部横断面斜視図である。
【図2】前記抵抗溶接システムの制御信号系統を模式的に示したブロック図である。
【図3】第1溶接チップ、第2溶接チップ及び補助電極の全てで、溶接対象である積層体を挟持した状態を示す縦断面模式図である。
【図4】通電を開始し、第1溶接チップから第2溶接チップに向かう電流と、第1溶接チップから補助電極に向かう分岐電流とを流した状態を示す縦断面模式図である。
【図5】図4の等価回路に電流及び分岐電流が如何なる経路で流れるかを示した模式的電流経路図である。
【図6】図4から通電を続行した状態を示す縦断面模式図である。
【図7】ON/OFFスイッチをOFF状態とし、且つ第1溶接チップから第2溶接チップへの通電を続行した状態を示す縦断面模式図である。
【図8】図7の等価回路に電流及び分岐電流が如何なる経路で流れるかを示した模式的電流経路図である。
【図9】通電(抵抗溶接)を終了した状態を示す縦断面模式図である。
【図10】図4とは逆に、第2溶接チップ及び電流分岐電極から第1溶接チップに向かう電流を流した状態を示す縦断面模式図である。
【図11】積層体の最上に位置する最薄ワークと、その直下のワークとに、第1溶接チップから補助電極に向かう電流が流れる状態を示す縦断面模式図である。
【図12】図3とは別の積層体を、第1溶接チップ、第2溶接チップ及び補助電極の全てで挟持して通電を開始した状態を示す縦断面模式図である。
【図13】図12に続き、ON/OFFスイッチをOFF状態とし、且つ第1溶接チップから第2溶接チップへの通電を続行した状態を示す縦断面模式図である。
【図14】図13に続き、第1溶接チップから第2溶接チップへの通電をさらに続行した状態を示す縦断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る抵抗溶接システムにつき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
図1は、本実施の形態に係る抵抗溶接システムの要部拡大一部横断面斜視図である。この抵抗溶接システムは、第1溶接チップ10、第2溶接チップ12及び補助電極14を具備する図示しない溶接ガンを有し、この場合、該溶接ガンは、例えば、6軸ロボット等の多関節ロボットのアーム部先端に配設される。多関節ロボットのアームに溶接ガンが配設された構成は公知であり、このため、この構成についての詳細な説明は省略する。
【0032】
溶接対象である積層体16につき若干説明すると、この場合、積層体16は、3枚の金属板18、20、22が下方からこの順序で積層されることによって構成される。この中の金属板18、20の厚みはD1(例えば、約1mm〜約2mm)に設定され、金属板22の厚みはD1に比して小寸法のD2(例えば、約0.5mm〜約0.7mm)に設定される。すなわち、金属板18、20の厚みは同一であり、金属板22はこれら金属板18、20に比して薄肉である。以下においては、金属板22を最薄ワークと呼称することもある。
【0033】
金属板18、20は、例えば、いわゆるハイテン鋼であるJAC590、JAC780又はJAC980(いずれも日本鉄鋼連盟規格に規定される高性能高張力鋼板)からなり、最薄ワーク22は、例えば、いわゆる軟鋼であるJAC270(日本鉄鋼連盟規格に規定される高性能絞り加工用鋼板)からなる。金属板18、20は同一金属種であってもよいし、異種金属種であってもよい。
【0034】
又は、金属板18、20、22の全てが軟鋼である組み合わせであってもよいし、金属板18のみがハイテン鋼、金属板20、22が軟鋼である組み合わせであってもよい。
【0035】
金属板18、20、22の材質は、上記した鋼材に特に限定されるものではないことは勿論であり、抵抗溶接が可能なものであれば如何なる材質であってもよい。
【0036】
長尺棒状に形成された第1溶接チップ10と第2溶接チップ12は、これら第1溶接チップ10及び第2溶接チップ12の間に溶接対象である積層体16を挟持し、且つ該積層体16に対して通電を行うものである。なお、本実施の形態においては、第1溶接チップ10から第2溶接チップ12に向かって電流が流れるものとする。
【0037】
前記溶接ガンがいわゆるX型のものである場合、第1溶接チップ10は、開閉自在なチャック対を構成する一方のチャック爪に設けられ、第2溶接チップ12は、前記チャック対の残余のチャック爪に設けられる。すなわち、チャック対が開動作又は閉動作することに伴い、第1溶接チップ10と第2溶接チップ12が互いに離間又は接近する。
【0038】
前記溶接ガンは、いわゆるC型のものであってもよい。この場合、第2溶接チップ12は固定アームの先端に配置され、一方、第1溶接チップ10は、例えば、ボールネジに連結される。ボールネジが回転付勢されることに伴い、第1溶接チップ10が第2溶接チップ12に対して接近又は離間する。
【0039】
補助電極14は、この場合、円環形状に形成され、第1溶接チップ10を囲繞する。第1溶接チップ10を支持する前記溶接ガンには、この補助電極14を積層体16に対して接近又は離間させるための変位機構、例えば、ボールネジ又はシリンダ等が設けられる。この変位機構により、補助電極14は、第1溶接チップ10とは別個に積層体16に対して接近又は離間することが可能である。
【0040】
本実施の形態では、電源24の正極に対して第1溶接チップ10が電気的に接続されるとともに、第2溶接チップ12及び補助電極14が前記電源24の負極に対して電気的に接続される。このことから諒解される通り、第1溶接チップ10と補助電極14はともに、積層体16を構成する最薄ワーク22に当接するものの、その極性は互いに逆である。
【0041】
そして、電源24の負極と補助電極14の間には、ON/OFFスイッチ26が介装される。すなわち、電源24の負極と補助電極14は、ON/OFFスイッチ26がON状態にあるときに電気的に接続され、一方、OFF状態にあるときに絶縁される。
【0042】
以上の構成において、第1溶接チップ10と補助電極14との離間距離Zが過度に大きい場合、第1溶接チップ10と補助電極14との間の抵抗が大きくなり、後述する分岐電流i2(図4参照)が流れることが困難となる。従って、離間距離Zは、第1溶接チップ10と補助電極14との間の抵抗が、分岐電流i2が適切な電流値で流れることが可能となる距離に設定される。
【0043】
要部がこのように構成される抵抗溶接システムの制御信号系統を、図2に模式的に示す。この図2に示すように、抵抗溶接システムは、RB(ロボット)コントローラ28と、溶接タイマ30と、分岐電流タイマとしての分流OFFタイマ32とをさらに有する。
【0044】
RBコントローラ28は、前記溶接ガン及び前記多関節ロボットの動作を制御する制御回路であり、後述するように、溶接タイマ30及び分流OFFタイマ32に指令信号を送る。なお、この指令信号は、RBコントローラ28自体から発信するようにしてもよいし、図示しない別の制御回路が発信したものをRBコントローラ28が一旦受信した後、該RBコントローラ28から再発信するようにしてもよい。
【0045】
溶接タイマ30は、第1溶接チップ10から第2溶接チップ12に向かって流れる電流の通電時間、換言すれば、溶接時間を制御するためのタイマである。この種のタイマは、抵抗溶接において広汎に採用されている周知のものであるので、その詳細な説明を省略する。
【0046】
分流OFFタイマ32は、分岐電流i2(図4参照)が流れる時間を制御するためのタイマである。すなわち、分流OFFタイマ32は、RBコントローラ28から予め指令を受けた所定の時間が経過したときに、前記ON/OFFスイッチ26(図1参照)をOFF状態とすることによって、分岐電流i2(図4参照)を停止させる。
【0047】
分流OFFタイマ32は、溶接タイマ30とは別個に設けるようにしてもよいし、溶接タイマ30の一作用として機能させるようにしてもよい。
【0048】
本実施の形態に係る抵抗溶接システムの要部は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき、抵抗溶接システムの動作との関係で説明する。
【0049】
はじめに、RBコントローラ28に対して分岐電流を流す時間を入力する。RBコントローラ28は、図2に示すように、「入力された時間が経過したら、ON/OFFスイッチ26をOFF状態とする」との指令信号を発する。
【0050】
積層体16に対して抵抗溶接を行う際、換言すれば、金属板18、20同士を接合するとともに金属板20、22同士を接合する際には、先ず、RBコントローラ28の作用下に、前記多関節ロボットが、第1溶接チップ10と第2溶接チップ12の間に積層体16が配置されるように前記溶接ガンを移動させる。その後、チャック爪同士が閉動作したり、又は変位機構が付勢されたりすることにより、第1溶接チップ10と第2溶接チップ12が相対的に接近し、その結果、互いの間に積層体16が挟持される。補助電極14は、この挟持と同時に、最薄ワーク22に当接する。以上により、図3に模式的な縦断面図として示す状態が形成される。
【0051】
なお、補助電極14の最薄ワーク22に対する当接は、該補助電極14が最薄ワーク22に接触する程度であってもよいし、最薄ワーク22を所定の加圧力で押圧する程度であってもよい。
【0052】
図3に示す状態が形成されたことを接触式センサ等によって認識したRBコントローラ28は、溶接タイマ30に対して「通電開始」の指令信号を発する。この指令信号を受けた溶接タイマ30により、第1溶接チップ10と第2溶接チップ12の間に電流が流れて通電が開始される。同時に、分流OFFタイマ32に対して通電開始信号が送られる(図2参照)。
【0053】
通電につき具体的に説明すると、第1溶接チップ10、第2溶接チップ12の各々が電源24の正極、負極に接続されているため、図4に示すように、第1溶接チップ10から第2溶接チップ12に向かう電流i1が流れる。そして、この電流i1に基づくジュール熱により、金属板18、20の間、及び金属板20、22の間がそれぞれ加熱される。なお、図4における参照符号40、42は、加熱領域を示す。
【0054】
ここで、最薄ワーク22には補助電極14も当接しており、この補助電極14の極性は負である。従って、第1溶接チップ10からは、上記した電流i1と同時に、補助電極14に向かう分岐電流i2が出発する。補助電極14が円環形状であるため、分岐電流i2は放射状に流れる。
【0055】
このように、本実施の形態においては、金属板18、20には流れず最薄ワーク22にのみ流れる分岐電流i2が発生する。図5は、この場合の等価回路における電流経路を示す。
【0056】
分岐電流i2が生じた結果、第1溶接チップ10及び第2溶接チップ12のみを使用する一般的な抵抗溶接に比して最薄ワーク22の内部を通過する電流値が大きくなる。従って、この場合、最薄ワーク22の内部に、前記加熱領域42とは別の加熱領域44が形成される。なお、分岐電流i2が放射状に流れるため、加熱領域44は金属板20、22の接触面を放射状に加熱する。加熱領域44は、時間の経過とともに拡大し、図6に示すように、加熱領域42と一体化する。
【0057】
金属板20、22の間の接触面は、このようにして一体化した加熱領域42、44の双方から熱が伝達された結果、十分に温度上昇して溶融し始める。その結果、金属板20、22の間にナゲット46が形成される。
【0058】
ここで、分岐電流i2の割合を大きくするほど加熱領域44を大きくすることが可能であるが、分岐電流i2の割合を過度に大きくした場合、電流i1の電流値が小さくなるので、加熱領域40、42が小さくなる。このため、ナゲット46の大きさが飽和する一方、ナゲット48が小さくなる傾向がある。従って、分岐電流i2の割合は、ナゲット48が十分に成長する程度の電流i1が流れるように設定することが好ましい。
【0059】
電流i1と分岐電流i2の割合は、例えば、上記したように第1溶接チップ10と補助電極14との離間距離Z(図1及び図3参照)を変更することで調節することが可能である。
【0060】
ナゲット46は、通電が継続される限り、時間の経過とともに成長する。従って、通電を所定の時間継続することにより、ナゲット46を十分に成長させることができる。なお、通電継続時間に対するナゲット46の成長の度合いは、テストピース等を用いた抵抗溶接試験で予め確認しておけばよい。
【0061】
この場合、金属板18、20に流れる電流i1の電流値は、一般的な抵抗溶接に比して小さい。このため、金属板20、22の間のナゲット46が大きく成長している間に金属板18、20の発熱量が過度に大きくなることが回避される。従って、スパッタが発生する懸念が払拭される。
【0062】
この間、電流i1によって金属板18、20の間にもナゲット48が形成される。分岐電流i2が継続して流れるようにすると、分岐電流i2を停止した場合に比して電流i1の全通電量が少なくなるので、加熱領域40、ひいてはナゲット48が若干小さくなる傾向がある。本実施の形態においては、ナゲット48をさらに成長させるべく、分岐電流i2を停止させる。
【0063】
すなわち、分流OFFタイマ32には、上記したように、溶接タイマ30の作用下に通電が開始されると同時に、この通電開始を認識させる通電開始信号が送られる。分流OFFタイマ32は、この通電開始信号を受信すると同時に、経過時間を計測し始める。そして、該分流OFFタイマ32に予め設定された所定の時間が経過すると、該分流OFFタイマ32は、図7に示すようにON/OFFスイッチ26をOFF状態とする。これにより電源24の負極と補助電極14が絶縁され、その結果、分岐電流i2が停止する。図8は、この際の等価回路における電流経路を示す。
【0064】
以上のように、本実施の形態では、通電を開始すると同時に溶接タイマ30から分流OFFタイマ32に通電開始信号を送るとともに、分流OFFタイマ32に、この通電開始信号を受信すると同時に経過時間の計測を開始させるようにしている。
【0065】
図2に破線で示すように、RBコントローラ28から分流OFFタイマ32に通電開始信号を送ることも想起される。しかしながら、この場合、RBコントローラ28は、溶接タイマ30が通電を開始した後にRBコントローラ28に向けて発した「通電を開始した」という信号を受信した後、分流OFFタイマ32に通電開始信号を送る必要がある。このRBコントローラ28と溶接タイマ30との間で信号を送受信する時間分、実際の通電開始(溶接開始)タイミングと、分流OFFタイマ32が通電開始信号を受信して通電(溶接)が開始されたことを認識するタイミングとの間にタイムラグが生じてしまう。この場合、分岐電流i2を停止させるべき時間に分岐電流i2を実際に停止させることが容易でなくなる。
【0066】
これに対し、本実施の形態によれば、RBコントローラ28と溶接タイマ30との間で通電開始信号と「通電を開始した」との信号を送受信する必要がない。上記したように、第1溶接チップ10から第2溶接チップ12への通電を開始すると同時に溶接タイマ30から分流OFFタイマ32に通電開始信号を送るとともに、分流OFFタイマ32に、この通電開始信号を受信すると同時に経過時間の計測を開始させるようにしているからである。
【0067】
従って、分流OFFタイマ32は、実際の通電(溶接)が開始されると略同時に、通電(溶接)が開始されたことを認識することができる。換言すれば、実際の通電(溶接)開始タイミングと、分流OFFタイマ32がそのことを認識するタイミングとが略同時であり、タイムラグが生じないか、生じたとしても無視できる程度の極短時間である。このため、分岐電流i2を停止させるべき時間に分岐電流i2を停止させることが容易となる。
【0068】
以上のようにして分岐電流i2が停止すると、最薄ワーク22には、第1溶接チップ10から第2溶接チップ12へ向かう電流i1のみが流れるようになる。その結果、図6に示す加熱領域44が消失する(図6参照)。
【0069】
その一方で、金属板18、20においては、通常の抵抗溶接時と同様の状態が形成される。すなわち、厚みが大きい金属板18、20ではジュール熱による発熱量が増加し、その結果、加熱領域40が広がるとともにその温度が一層上昇する。金属板18、20の接触面は、この温度上昇した加熱領域40に加熱され、これにより、該接触面近傍の温度が十分に上昇して溶融し、ナゲット48の成長が促進される。
【0070】
以降は、ナゲット48が十分に成長するまで、例えば、図9に示すように、ナゲット46と一体化するまで通電を継続すればよい。通電継続時間に対するナゲット48の成長の度合いも、テストピース等を用いた抵抗溶接試験で予め確認しておけばよい。
【0071】
ここで、金属板18、20の接触面は、金属板20、22同士の間にナゲット46を成長させる際に電流i1が通過することに伴って形成された加熱領域40によって予め加熱されている。このため、金属板18、20同士は、ナゲット48が成長する前になじみが向上している。従って、スパッタが発生し難い。
【0072】
以上のように、本実施の形態においては、金属板20、22の間のナゲット46を成長させる際、金属板18、20の間のナゲット48を成長させる際の双方でスパッタが発生することを回避することができる。
【0073】
溶接タイマ30に予め設定された所定時間(ナゲット48が十分成長し得る時間)が経過すると、通電が停止されるとともに、図9に示すように、第1溶接チップ10が最薄ワーク22から離間する。又は、第1溶接チップ10を最薄ワーク22から離間させることで第1溶接チップ10と第2溶接チップ12を電気的に絶縁し、これにより溶接を停止するようにしてもよい。
【0074】
このようにして通電(溶接)が停止されることに伴い、金属板18、20の発熱も終了する。時間の経過とともにナゲット48が冷却固化し、これにより金属板18、20が互いに接合される。
【0075】
以上のようにして、積層体16を構成する金属板18、20同士、金属板20、22同士が接合され、結局、接合品が得られるに至る。
【0076】
この接合品においては、金属板18、20同士の接合強度と同様に、金属板20、22同士の接合強度も優れる。上記したように最薄ワーク22に分岐電流i2が流されたことに伴って、金属板20、22の間のナゲット46が十分に成長しているからである。
【0077】
しかも、上記から諒解される通り、本実施の形態に係る抵抗溶接システムを構成するに際しては、補助電極14と、該補助電極14を変位させるための変位機構とを設ければよい。従って、補助電極14を設けることに伴って抵抗溶接システムの構成が複雑化することもない。
【0078】
なお、上記した実施の形態においては、ON/OFFスイッチ26をOFF状態とすることで分岐電流i2を停止させるようにしているが、これに代替し、分流OFFタイマ32に設定された所定時間が経過すると補助電極14を最薄ワーク22から離間させ、これにより分岐電流i2を停止させるようにしてもよい。この場合には、補助電極14を第1溶接チップ10とは別個に変位させるための変位機構を設けるようにすればよい。
【0079】
また、図10に示すように、金属板18に当接した第2溶接チップ12から、最薄ワーク22に当接した第1溶接チップ10に向かう電流を流すようにしてもよい。この場合にも、最薄ワーク22に当接した補助電極14の極性を第1溶接チップ10と逆にする。すなわち、第2溶接チップ12及び補助電極14を電源24の正極に電気的に接続する一方、第1溶接チップ10を電源24の負極に電気的に接続する。これにより、第2溶接チップ12から第1溶接チップ10に向かう電流i1と、補助電極14から第1溶接チップ10に向かう分岐電流i2とが発生する。
【0080】
いずれの場合においても、補助電極は、円環形状の補助電極14に特に限定されるものではない。例えば、第1溶接チップ10及び第2溶接チップ12と同様に長尺棒状のものであってもよい。この場合、補助電極は1本であっても複数本であってもよく、複数本を用いる場合は、これら複数本の補助電極を最薄ワーク22に対して同時に当接又は離間させるようにしてもよい。
【0081】
さらに、上記した各態様において、図11に示すように、分岐電流i2を、第1溶接チップ10が接触した最薄ワーク22のみならず、該最薄ワーク22の直下に位置する金属板20にも流れるようにしてもよい。
【0082】
この場合、最薄ワーク22と金属板20の間に抵抗発熱が生じ、その結果、ナゲット46が生成する。その一方で、金属板18、20の間には、第1溶接チップ10から補助電極14に向かう電流が流れないか、又は、流れたとしてもその電流量は極僅かである。従って、最薄ワーク22と金属板20の間に生成した前記ナゲット46が容易に成長する。
【0083】
又は、4枚以上の金属板で積層体を構成するようにしてもよいし、図12に示すように、2枚の金属板18、20のみで積層体16aを構成するようにしてもよい。以下、この場合につき説明する。
【0084】
積層体16aに対して抵抗溶接を行う際には、上記同様に、RBコントローラ28の作用下に、前記多関節ロボット、ひいては前記溶接ガンが移動して第1溶接チップ10と第2溶接チップ12で積層体16aが挟持される。さらに、補助電極14が金属板20に当接する。以上により、図12に示す状態が形成される。
【0085】
以降も上記と同様にして、RBコントローラ28の「通電開始」の指令信号を受けた溶接タイマ30により、第1溶接チップ10と第2溶接チップ12の間に電流i1が流れて通電が開始される。同時に、第1溶接チップ10から補助電極14に向かう分岐電流i2が放射状に流れる。さらに、分流OFFタイマ32に対して通電開始信号が送られ(図2参照)、この通電開始信号を受信した分流OFFタイマ32が経過時間を計測し始める。
【0086】
図12から諒解されるように、金属板18、20の間は電流i1に基づくジュール熱により加熱されて軟化し、これにより軟化部50が形成される。一方、電流i1及び分岐電流i2が流れる金属板20は、これら電流i1及び分岐電流i2に基づくジュール熱により加熱されて溶融し、これにより溶融部52が形成される。
【0087】
分流OFFタイマ32は、テストピースに対して抵抗溶接試験を行うことで求められた軟化部50が十分に軟化し得る時間が予め設定されている。従って、この設定された時間に到達すると、図13に示すように、分流OFFタイマ32の作用下にON/OFFスイッチ26がOFF状態とされる。これに伴い、分岐電流i2が停止される。
【0088】
以上のようにして分岐電流i2が停止すると、金属板18、20には、第1溶接チップ10から第2溶接チップ12へ向かう電流i1のみが流れるようになる。この電流i1は、分岐電流i2が停止されるまでの電流i1に比して大きい。
【0089】
従って、抵抗が大きい金属板18、20の接触面におけるジュール熱が、分岐電流i2が停止する前に比して大きくなる。その結果、図14に示すように、溶融部52が軟化部50側に大きく成長し、最終的に、この溶融部52からナゲットが形成される。
【0090】
上記したように、金属板18、20の接触面には軟化部50が予め形成されている。このため、金属板18、20の間が良好にシールされる。従って、分岐電流i2が停止されて電流i1の電流値が大きくなったときにおいても、金属板18、20の間からスパッタが飛散することが回避される。
【0091】
以上のように、2枚の金属板18、20に対して抵抗溶接を行う場合にも、スパッタが発生することを回避しながら、これら金属板18、20の接触面に大きなナゲットを成長させることができる。
【符号の説明】
【0092】
10、12…溶接チップ 14…補助電極
16、16a…積層体 18、20…金属板
22…最薄ワーク(金属板) 24…電源
26…ON/OFFスイッチ 28…RBコントローラ
30…溶接タイマ 32…分流OFFタイマ
40、42、44…加熱領域 46、48…ナゲット
50…軟化部 52…溶融部
i1…電流 i2…分岐電流
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のワークを積層することで形成した積層体に対して抵抗溶接を行うための抵抗溶接システムであって、
前記積層体を挟持する第1溶接チップ及び第2溶接チップと、
前記第1溶接チップとともに前記積層体の最外に位置するワークに当接し、且つ前記第1溶接チップとは逆の極性である補助電極と、
抵抗溶接を施すために前記積層体を挟持した前記第1溶接チップと前記第2溶接チップとの間で通電を行う際の通電時間を制御する溶接タイマと、
前記通電を行う際、前記第1溶接チップから前記補助電極に向かう分岐電流、又は、前記補助電極から前記第1溶接チップに向かう分岐電流が流れる時間を制御する分岐電流タイマと、
前記溶接タイマに通電開始信号を送るとともに、前記分岐電流タイマに分岐電流が流れる時間を入力する制御回路と、
を備え、
通電開始信号が送られた前記溶接タイマの作用下に前記第1溶接チップと前記第2溶接チップとの間の通電を開始すると同時に、前記分岐電流タイマに通電開始信号を送ることを特徴とする抵抗溶接システム。
【請求項2】
請求項1記載の抵抗溶接システムにおいて、前記補助電極と電源との間に、前記補助電極と電源との間の電気経路のみを接続又は停止するスイッチが設けられたことを特徴とする抵抗溶接システム。
【請求項3】
請求項1記載の抵抗溶接システムにおいて、前記補助電極のみを前記最外のワークに対して接近又は離間させる変位機構をさらに備えることを特徴とする抵抗溶接システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の抵抗溶接システムにおいて、前記補助電極が、前記第1溶接チップを囲繞する円環形状であることを特徴とする抵抗溶接システム。
【請求項5】
複数個のワークを積層することで形成した積層体に対して抵抗溶接を行う抵抗溶接方法であって、
前記積層体を第1溶接チップ及び第2溶接チップで挟持するとともに、前記積層体の最外に位置して前記第1溶接チップが当接したワークに対し、前記第1溶接チップとは逆の極性である補助電極を当接させる工程と、
前記第1溶接チップと第2溶接チップの間に通電を行うことで前記積層体に対して抵抗溶接を施すとともに、前記第1溶接チップから前記補助電極に向かう分岐電流、又は、前記補助電極から前記第1溶接チップに向かう分岐電流を流す工程と、
前記第1溶接チップと前記補助電極とを電気的に絶縁して前記分岐電流を停止する一方、前記第1溶接チップと第2溶接チップの間の通電を継続する工程と、
前記第1溶接チップと第2溶接チップの間の通電を停止する工程と、
を有し、
前記第1溶接チップと第2溶接チップの間の通電開始から通電停止までの時間を溶接タイマによって制御し、且つ前記溶接タイマは、分岐電流タイマに対して通電開始信号を送り、
前記分岐電流タイマは、通電開始信号を受信してから時間の計測を開始し、予め設定された時間に到達したときに前記分岐電流を停止する制御を行うことを特徴とする抵抗溶接方法。
【請求項6】
請求項5記載の抵抗溶接方法において、前記補助電極のみを前記最外のワークから離間させるか、又は、前記補助電極と電源との間の電気経路のみを切断することで前記分岐電流を停止することを特徴とする抵抗溶接方法。
【請求項1】
複数個のワークを積層することで形成した積層体に対して抵抗溶接を行うための抵抗溶接システムであって、
前記積層体を挟持する第1溶接チップ及び第2溶接チップと、
前記第1溶接チップとともに前記積層体の最外に位置するワークに当接し、且つ前記第1溶接チップとは逆の極性である補助電極と、
抵抗溶接を施すために前記積層体を挟持した前記第1溶接チップと前記第2溶接チップとの間で通電を行う際の通電時間を制御する溶接タイマと、
前記通電を行う際、前記第1溶接チップから前記補助電極に向かう分岐電流、又は、前記補助電極から前記第1溶接チップに向かう分岐電流が流れる時間を制御する分岐電流タイマと、
前記溶接タイマに通電開始信号を送るとともに、前記分岐電流タイマに分岐電流が流れる時間を入力する制御回路と、
を備え、
通電開始信号が送られた前記溶接タイマの作用下に前記第1溶接チップと前記第2溶接チップとの間の通電を開始すると同時に、前記分岐電流タイマに通電開始信号を送ることを特徴とする抵抗溶接システム。
【請求項2】
請求項1記載の抵抗溶接システムにおいて、前記補助電極と電源との間に、前記補助電極と電源との間の電気経路のみを接続又は停止するスイッチが設けられたことを特徴とする抵抗溶接システム。
【請求項3】
請求項1記載の抵抗溶接システムにおいて、前記補助電極のみを前記最外のワークに対して接近又は離間させる変位機構をさらに備えることを特徴とする抵抗溶接システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の抵抗溶接システムにおいて、前記補助電極が、前記第1溶接チップを囲繞する円環形状であることを特徴とする抵抗溶接システム。
【請求項5】
複数個のワークを積層することで形成した積層体に対して抵抗溶接を行う抵抗溶接方法であって、
前記積層体を第1溶接チップ及び第2溶接チップで挟持するとともに、前記積層体の最外に位置して前記第1溶接チップが当接したワークに対し、前記第1溶接チップとは逆の極性である補助電極を当接させる工程と、
前記第1溶接チップと第2溶接チップの間に通電を行うことで前記積層体に対して抵抗溶接を施すとともに、前記第1溶接チップから前記補助電極に向かう分岐電流、又は、前記補助電極から前記第1溶接チップに向かう分岐電流を流す工程と、
前記第1溶接チップと前記補助電極とを電気的に絶縁して前記分岐電流を停止する一方、前記第1溶接チップと第2溶接チップの間の通電を継続する工程と、
前記第1溶接チップと第2溶接チップの間の通電を停止する工程と、
を有し、
前記第1溶接チップと第2溶接チップの間の通電開始から通電停止までの時間を溶接タイマによって制御し、且つ前記溶接タイマは、分岐電流タイマに対して通電開始信号を送り、
前記分岐電流タイマは、通電開始信号を受信してから時間の計測を開始し、予め設定された時間に到達したときに前記分岐電流を停止する制御を行うことを特徴とする抵抗溶接方法。
【請求項6】
請求項5記載の抵抗溶接方法において、前記補助電極のみを前記最外のワークから離間させるか、又は、前記補助電極と電源との間の電気経路のみを切断することで前記分岐電流を停止することを特徴とする抵抗溶接方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−55896(P2012−55896A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198504(P2010−198504)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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