説明

押下ヘッドおよび押下ヘッド付きポンプ

【課題】本体部に小さい押下力を付与しただけで噴出口から液体を噴出させることができる。
【解決手段】上方付勢状態で押込み可能にステム2を起立したポンプに装着される押下ヘッド1であって、弁部材5の外周面と弁室Aの内周面との間に設けられた噴出口12に至る流路は、弁部材5の外周面および弁室Aの内周面にそれぞれ、周方向に間隔をあけて複数形成された前後方向に延びる溝部5a、16aにより構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上方付勢状態で押込み可能にステムを起立したポンプに装着する押下ヘッドおよび押下ヘッド付きポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の押下ヘッドとして、例えば下記特許文献1に示されるような、天板部の下面に垂設されてステムの上端部に嵌着された装着筒、および天板部の上面に立設されてステムの内部に連通された摺動筒を備える装着筒部材と、前記摺動筒に上下方向に摺動可能に嵌合されるとともに、内部に、ステムの内部に連通され、かつ前方に向けて開口した噴出口を介して外部に連通可能な弁室が形成された本体部と、前記弁室に噴出口に対して前後方向にスライド可能に設けられ、この噴出口を開閉させるとともに、弁室の内周面との間に、噴出口に至る流路を画成する棒状の弁部材と、弁部材に連結され、本体部を装着筒部材に対して弁部材とともに上下方向に移動させたときに、この弁部材を前後方向にスライドさせるスライド機構とが備えられ、本体部を装着筒部材に対して押し下げることにより、まず、弁部材を後方にスライドさせ噴出口を開口させて、弁室に内在している液体を噴出させ、さらに強く本体部を押し下げることによって、ステムを押し込み、容器体内の液体をステムから弁室内に流入させることにより、同様に噴出口から噴出させる構成が知られている。そして、本体部の押し下げを解除したときに、ステムをその付勢力により上方に復元移動させるとともに、弁部材をやはり付勢力により前方にスライドさせてその前端部で噴出口を閉塞させる構成が知られている。
【特許文献1】特開2002−326044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年では、本体部に小さい押下力を付与しただけで噴出口から液体を噴出することができる押下ヘッドが要望されている。特に、この押下ヘッドが装着されたポンプの取り扱い性を向上させるために、噴出口の、本体部の周壁部からの突出長さを長くすると、本体部に大きな押下力を付与して噴出口を完全に開口させなければ、噴出口から液体を噴出させることができず、しかも、このように噴出口が開口したときには、弁室内の液体は高圧になっているため強い勢いで噴出するおそれがある。
【0004】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、本体部に小さい押下力を付与しただけで噴出口から液体を噴出させることができる押下ヘッドおよび押下ヘッド付きポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の押下ヘッドは、上方付勢状態で押込み可能にステムを起立したポンプに装着される押下ヘッドであって、
天板部の下面に垂設されてステムの上端部に嵌着された装着筒、および天板部の上面に立設されてステムの内部に連通された摺動筒を備える装着筒部材と、前記摺動筒に上下方向に摺動可能に嵌合されるとともに、内部に、ステムの内部に連通され、かつ前方に向けて開口した噴出口を介して外部に連通可能な弁室が形成された本体部と、前記弁室に噴出口に対して前後方向にスライド可能に設けられ、この噴出口を開閉させるとともに、弁室の内周面との間に、噴出口に至る流路を画成する棒状の弁部材と、弁部材に連結され、本体部を装着筒部材に対して弁部材とともに上下方向に移動させたときに、この弁部材を前後方向にスライドさせるスライド機構とが備えられ、前記流路は、弁部材の外周面および弁室の内周面にそれぞれ、周方向に間隔をあけて複数形成された前後方向に延びる溝部により構成されていることを特徴とする。
この発明では、前記流路が、弁部材の外周面および弁室の内周面にそれぞれ、周方向に間隔をあけて複数形成された前後方向に延びる溝部により構成されているので、噴出口に至る液体の流路断面積を大きく確保することが可能になり、この流路内における液体の流動抵抗を低減させることができる。
これにより、この押下ヘッドが装着されたポンプの取り扱い性をさらに向上させるのに、噴出口の、本体部の周壁部からの突出長さを長くしても、噴出口を開口させるのに要する本体部への押下力が大きくなるのを防ぐことができる。
【0006】
ここで、前記溝部に加え、弁部材の外周面と弁室の内周面との間に隙間を設けて、これらの溝部および隙間により前記流路を構成させるようにしてもよい。
この場合、前記の作用効果が一層確実に奏効されることになる。
【0007】
ここで、弁部材のうち、前記噴出口を開閉させる前端部は、前記スライド機構が連結された部分を形成する材質よりも軟質の材料により形成されてもよい。
この場合、弁部材の前端部を弾性変形させて噴出口、および弁室内におけるその開口周縁部に密接させた状態で噴出口を閉塞することが可能になり、この閉塞した状態で弁室内の液体が漏れるのを抑制することができる。
【0008】
また、前記弁室には、弁部材が前後方向に進退移動する際、この弁部材の中心軸線方向中央部を、外周面側から径方向で挟み込むように支持する支持部材が設けられてもよい。
この場合、弁部材を前後方向にスライドさせるときに、噴出口に対する弁部材の径方向位置を安定させることが可能になり、噴出口を開口した際、噴出口からの液体の噴出量を安定させることができるとともに、噴出口を閉塞した状態で弁室内の液体が漏れるのを確実に抑えることができる。
【0009】
さらに、前記本体部は、頂板部、およびこの頂板部の外周縁から略垂下してなる周壁部を有する被押下部と、前端部に前記噴出口が形成された筒状のノズルとを備え、被押下部とノズルとの間には、被押下部の周壁部から前方に向けて突出するようにガイド筒部が設けられ、このガイド筒部およびノズルの内部に、前記弁室が形成されてもよい。
この場合、噴出口の、本体部の周壁部からの突出長さを長くした押下ヘッドを容易かつ確実に実現することが可能になるとともに、弁室の容量を大きく確保することも可能になり、本体部への押下力によって弁室に内在している液体が高圧になるのを抑え、強い勢いで噴出するのを防ぐことができ、その取り扱い性をさらに向上させることができる。また、例えば、ノズルの形状は現行通り変更しないで、ガイド筒部を前記のように設けるだけで噴出口の突出長さを長くすることも可能になるので、このような押下ヘッドを低コストで実現することができる。
【0010】
また、本発明の押下ヘッド付きポンプは、上方付勢状態で押込み可能にステムを起立したポンプに押下ヘッドが装着され、内部に液体が充填される容器体の口部に取り付けられる押下ヘッド付きポンプであって、ステムの上端部に本発明の押下ヘッドの装着筒部材が嵌着され、この装着筒部材は、ステムを保持する保持部材に対して上方に付勢されていることを特徴とする。
この発明では、前記の作用効果が奏効されることに加え、装着筒部材が保持部材に対して上方に付勢されているので、本体部の押下を解除した際、ステムには、ステム自体の上方付勢力のみならず、このステムの上端部に嵌着された装着筒部材に作用する上方付勢力をも作用することになり、即座にステムを上方に移動させて、弁室内を負圧にすることが可能になり、噴出口から出かかっていた液体を弁室内に吸引して液だれが発生するのを確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る押下ヘッドおよび押下ヘッド付きポンプによれば、本体部に小さい押下力を付与しただけで噴出口から液体を噴出させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。この実施形態に係る押下ヘッド1は、上方付勢状態で押込み可能にステム2を起立したポンプに装着されるものであって、天板部8の下面に垂設されてステム2の上端部に嵌着された装着筒7、および天板部8の上面に立設されてステム2の内部に連通された摺動筒9を備える装着筒部材3と、摺動筒9に上下方向に摺動可能に嵌合されるとともに、内部に、ステム2の内部に連通され、かつ前方に向けて開口した噴出口12を介して外部に連通可能な弁室Aが形成された本体部4と、弁室Aに噴出口12に対して前後方向にスライド可能に設けられ、この噴出口12を開閉させるとともに、弁室Aの内周面との間に、噴出口12に至る流路を画成する棒状の弁部材5と、弁部材5に連結され、本体部4を装着筒部材3に対して弁部材5とともに上下方向に移動させたときに、この弁部材5を前後方向にスライドさせるスライド機構6とが備えられている。
【0013】
装着筒部材3において、装着筒7および摺動筒9はそれぞれ、天板部8の径方向中央部に形成された貫通孔8aの開口周縁部に同軸上に配置され、摺動筒9は貫通孔8aを介してステム2の内部と連通している。また、天板部8の外周縁部には案内筒10が垂設されており、装着筒7の外周面と案内筒10の内周面との間にはこれらの径方向に隙間が設けられている。
【0014】
本体部4は、頂板部13b、およびこの頂板部13bの外周縁から略垂下してなる周壁部13aを有する被押下部13と、前端部に噴出口12が形成された筒状のノズル16とを備えている。そして、周壁部13aの下部内周面は、装着筒部材3の案内筒10の外周面に上下摺動可能に嵌合している。
【0015】
ここで、被押下部13の内側における頂板部13b側の上部には、周壁部13aのうち、ノズル16の前端部が径方向外方に突出した状態で設けられる前側壁から後方に向けて延在し、かつこの前側壁を開口させるように有底筒状の横筒14が設けられている。この横筒14の側壁14bのうち上方に位置する部分は、頂板部13bのうち周壁部13aの前側壁に連なる部分により構成されている。また、横筒14の底壁14aは、周壁部13aにおいて前側壁に対向する後側壁の内周面から径方向内方に隙間Bを設けるようにして位置されている。
そして、筒状のノズル16は、噴出口12を有する前端部が周壁部13aの前側壁の外周面から径方向外方(前方)に突出して位置され、噴出口12が前方に向けて開口するように、横筒14の前端開口部に嵌合されている。
【0016】
また、横筒14の側壁14bにおいて、摺動筒9の上端開口部と対向する部分には、横筒14の内部に連通したシリンダ11が垂設されており、このシリンダ11が、摺動筒9に上下摺動可能に嵌合されている。
さらに、横筒14の側壁14bの内周面において底壁14aに連なる後端部に、弁部材5の後述する摺動部分が摺動可能に支持されるシリンダ筒18が嵌着されている。
以上より、本体部4の内部に形成された弁室Aは、それぞれが同軸上に配置された横筒14、ノズル16、およびシリンダ筒18の各内部によって構成されている。また、この弁室Aは、シリンダ11および摺動筒9の各内部を介してステム2の内部と連通している。
【0017】
弁部材5は、棒状とされ、横筒14、ノズル16、およびシリンダ筒18と略同軸上に配置され、この弁部材5の後端部が、横筒14の底壁14aに形成された貫通孔15から前記隙間Bに突出した状態で、弁室Aに設けられている。なお、弁部材5の前記隙間Bに突出した部分には凹溝23がその全周にわたって形成されている。
【0018】
弁部材5の外周面には、その中心軸線方向中央部から後方に向けて漸次拡径するように延在したスカート状部20が設けられ、さらにこのスカート状部20の後端縁には、径方向外方に前方に向けて折り返された逆スカート状部21が連設されている。そして、この逆スカート状部21がシリンダ筒18の内周面に摺動可能に嵌合されている。また、弁部材5は、その外周面におけるスカート状部20の連結部分と、横筒14の底壁14aとの間に介在された第1コイルスプリング22により、前方に付勢されており、この弁部材5の前端部5bを噴出口12、および弁室Aにおけるその開口周縁部に密接させて閉塞できるようになっている。
【0019】
スライド機構6は、それぞれが平面視矩形状とされた2枚の平板24、25が、側面視L字状となるように連結されるとともに、この連結部分に2枚の平板24、25それぞれの表面に沿った方向に平行に延びるピン部材28が設けられた概略構成とされている。
【0020】
そして、一方の平板24の表面において、前記連結部分と反対側の端部には、この端面に開口し、かつその厚さ方向に貫通する第1切り欠き部26が形成されており、この第1切り欠き部26に、弁部材5の前記凹溝23が嵌合されている。
また、他方の平板25の表面において、前記連結部分と反対側の端部には、この端面に開口し、かつその厚さ方向に貫通して、その内側に装着筒部材3の摺動筒9が配置される第2切り欠き部27が形成されている。
【0021】
さらに、ピン部材28の両端部は、本体部4の内側に設けられた軸受29に回転自在に支持されている。この軸受29は、周壁部13aの内周面において横筒14の直下に位置する部分に嵌着させた取付板30の下面のうち、前記隙間Bの直下に位置する部分に一対の板状体が垂設され、それぞれの板状体に、上下方向に延在し各板状体の下端面に開口する長穴29aが形成された構成とされている。そして、この軸受29の各長穴29aにそれぞれピン部材28の両端部が挿入されることにより、スライド機構6がピン部材28回りに回転できるようになっている。
【0022】
なお、取付板30には、シリンダ11を嵌着させる嵌合孔30aと、スライド機構6の一方の平板24をピン部材28回りに前後方向に揺動可能に挿通させる窓孔30bとが形成されている。また、取付板30の外周縁部には径方向に開口する切欠部33が形成されており、この切欠部33を本体部4の周壁部13aの内周面に突設した係止リブ34に係合させることによって、この取付板30の周壁部13aに対する回動を防ぐようになっている。
【0023】
ここで、装着筒部材3に対して本体部4を押し下げるのに要する押下力が、ステム2自体の上方付勢力よりも小さくされている。このような構成を実現するための手段として、例えば、ステム2を上方付勢させるための弾性部材のばね定数よりも、弁部材5を前方に付勢する第1コイルスプリング22のばね定数を小さくしたり、あるいは、摺動筒9とシリンダ11との摩擦力や、スライド機構6の揺動時の摩擦力等を適宜選択することができる。
【0024】
そして、本実施形態では、弁部材5の外周面において、スカート状部20が連設されている中心軸線方向中央部よりも前方に位置する部分で、かつ噴出口12を開閉させる前端部5bよりも後方に位置する部分と、この部分に対向する弁室Aの内周面との間に、その略全域にわたって略同等の隙間が設けられた状態で、これらの弁部材5の外周面および弁室Aの内周面にそれぞれ、前後方向に延びる溝部5a、16aが周方向に間隔をあけて複数形成されている。つまり、弁室Aにおいて、噴出口12に至る流路は、弁部材5の外周面と弁室Aの内周面との間に設けられた隙間、および前記溝部5a、16aにより構成されている。なお、弁部材5に形成された溝部5a、および弁室Aに形成された溝部16aはそれぞれ、略同形同大とされるとともに、同様のピッチ間隔で配置されている。
【0025】
ここで、弁部材5の前端部5bは、本実施形態では、この前端に向かうに従い漸次縮径された先細り形状とされた部分において、噴出口12の内径と略同じ外径とされた部分から前方側に位置する部分のことをいう。そして、このような弁部材5に形成された溝部5aの前端は、前記先細り形状とされた外周面を前方に向けて開口している。
なお、本実施形態では、溝部16aが形成されている弁室Aの内周面は、ノズル16の内周面とされている。
【0026】
以上のように構成された押下ヘッド1は、上方付勢状態で押込み可能にステム2を起立したポンプに装着されて、内部に液体が充填された容器体の口部に取り付けられる押下ヘッド付きポンプとされる。
【0027】
この押下ヘッド付きポンプにおいて、本体部4の周壁部13aの下端部は、ステム2を保持する保持部材40に立設された支持筒部41に上下摺動可能に嵌合されており、押下ヘッド1の装着筒部材3は、保持部材40に対して上方に付勢された状態でステム2の上端部に嵌着されている。具体的には、装着筒部材3の天板部8の下面において、案内筒10と装着筒7との間に位置する部分と、支持筒部41が立設された保持天板部42との間に第2コイルスプリング43が介在されている。
【0028】
また、本実施形態では、本体部4の周壁部13aの下端部と支持筒部41との間には、支持筒部41に対する本体部4の抜け止め手段44が設けられている。図示の例では、支持筒部41の内周面における上端部に、径方向内方に突出する第1環状凸部41aが設けられ、周壁部13aの外周面における下端部に、径方向外方に突出する第2環状凸部13cが設けられ、第2環状凸部13cが第1環状凸部41aよりも下方に位置されるように、周壁部13aの下端部外周面が支持筒部41の上端部内周面に上下摺動可能に嵌合することによって、本体部4の移動が第1、第2環状凸部41a、13cの係合により規制されるようになっている。
【0029】
次に、以上のように構成された押下ヘッド付きポンプの作用について説明する。
前記のように前方に付勢された弁部材5が、一方の平板24の端部を前方に付勢した状態から、本体部4の頂板部13bを下方に押圧し、シリンダ11を摺動筒9の外周面上を下方に摺動させながらこの本体部4を押し下げることにより、一方の平板24が後方に移動するようにスライド機構6をピン部材28回りに回動させることによって、弁部材5を第1コイルスプリング22の付勢力に抗して後方にスライドさせ、噴出口12を開口させる。
以上の過程において、前記のように、ステム2の上方付勢力の方が、装着筒部材3に対して本体部4を押し下げるのに要する押下力よりも大きいので、ステム2は下方に移動せず、本体部4のみが装着筒部材3に対して下方に移動する。
【0030】
さらに、本体部4の頂板部13bを下方に押圧することにより、シリンダ11の下端が装着筒部材3の天板部8の上面に接触し、この押下力が装着筒部材3を介してステム2に伝わることにより、装着筒部材3と保持天板部42との間に介在された第2コイルスプリング43を圧縮しながらステム2が下方に移動し、容器体内の液体がステム2内に流入した後に、この流体が摺動筒9を介して弁室A内に流入することによって、噴出口12から液体が外部に噴出される。
【0031】
次に、本体部4の頂板部13bに対する前記押圧を解除すると、ステム2の上方付勢力、および装着筒部材3と保持部材40との間に介在されている第2コイルスプリング43の上方付勢力により、装着筒部材3およびステム2が保持部材40に対して上方に移動する。この際、噴出口12は開口した状態に維持される。これにより、弁室A内は負圧になり、噴出口12から出かかっていた液体が弁室A内に吸引され、液だれの発生が抑えられる。その後、第1コイルスプリング22の前方付勢力により、一方の平板24が前方に移動するようにスライド機構6をピン部材28回りに回動させ、かつ弁部材5を前方に移動させることよって、この弁部材5の前端部5bが噴出口12を閉塞する。
【0032】
以上説明したように本実施形態に係る押下ヘッド1によれば、弁室Aにおいて、噴出口12に至る流路は、弁部材5の外周面と弁室Aの内周面との間に設けられた隙間、およびこれらの弁部材5の外周面および弁室Aの内周面にそれぞれ形成された溝部5a、16aにより構成されているので、噴出口12に至る液体の流路断面積を大きく確保することが可能になり、この流路内における液体の流動抵抗を低減させることができる。
これにより、この押下ヘッド1が装着されたポンプの取り扱い性をさらに向上させるのに、噴出口12の、本体部4の周壁部13aからの突出長さを長くしても、噴出口12を開口させるのに要する本体部4への押下力が大きくなるのを防ぐことができる。
【0033】
また、本実施形態では、装着筒部材3と保持天板部42との間に介在された第2コイルスプリング43により、装着筒部材3が保持部材40に対して上方に付勢されているので、本体部4の押下を解除したときに、ステム2には、ステム2自体の上方付勢力のみならず、装着筒部材3に作用している上方付勢力をも作用することになり、即座にステム2を上方に移動させて、弁室A内を負圧にすることが可能になり、噴出口12から出かかっていた液体を弁室A内に吸引して液だれが発生するのを確実に防ぐことができる。
【0034】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、図2に示されるように、弁部材5のうち、前端部5b側の部分を、スライド機構6が連結された部分を形成する材質(例えばポリエチレン等)よりも軟質の材料(例えばゴムやエラストマー等)により形成してもよい。
この場合、弁部材5の前端部5bを弾性変形させて噴出口12、および弁室Aにおけるその開口周縁部に密接させた状態で噴出口12を閉塞することが可能になり、噴出口12を閉塞した状態で、弁室A内の液体が漏れるのを抑制することができる。
【0035】
また、弁室Aには、弁部材5が前後方向に進退移動する際、この弁部材5の中心軸線方向中央部を、外周面側から径方向で挟み込むように支持する支持部材51を設けてもよい。
この場合、弁部材5を前後方向にスライドさせるときに、噴出口12に対する弁部材5の径方向位置を安定させることが可能となる。
【0036】
さらに、本体部4において、被押下部13とノズル16との間に、被押下部13の周壁部13aから前方に向けて突出したガイド筒部52を設け、このガイド筒部52およびノズル16の内部に、弁室Aが形成されるようにしてもよい。
この場合、噴出口12の、本体部4の周壁部13aからの突出長さを長くした押下ヘッド1を容易かつ確実に実現することが可能になるとともに、弁室Aの容量を大きく確保することも可能になり、本体部4への押下力によって弁室Aに内在している液体が高圧になるのを抑え、強い勢いで噴出するのを防ぐことができ、その取り扱い性をさらに向上させることができる。また、例えば、ノズル16の形状は現行通り変更しないで、ガイド筒部52を前記のように設けるだけで噴出口12の突出長さを長くすることも可能になるので、このような押下ヘッドを低コストで実現することができる。
【0037】
さらにまた、前記実施形態では、前記流路が、溝部5a、16a、および弁部材5の外周面と弁室Aの内周面との間に設けた隙間により構成された押下ヘッド1を示したが、これに代えて、前記流路を溝部5a、16aのみにより構成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本体部に小さい押下力を付与しただけで噴出口から液体を噴出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る一実施形態として示した押下ヘッドを示す概略側面断面図である。
【図2】本発明に係る他の実施形態として示した押下ヘッドの一部を示す概略側面断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 押下ヘッド
2 ステム
3 装着筒部材
4 本体部
5 弁部材
5a、16a 溝部
5b 弁部材の前端部
6 スライド機構
7 装着筒
8 天板部
9 摺動筒
12 噴出口
13 被押下部
13a 周壁部
13b 頂板部
16 ノズル
40 保持部材
51 支持部材
52 ガイド筒部
A 弁室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方付勢状態で押込み可能にステムを起立したポンプに装着される押下ヘッドであって、
天板部の下面に垂設されてステムの上端部に嵌着された装着筒、および天板部の上面に立設されてステムの内部に連通された摺動筒を備える装着筒部材と、
前記摺動筒に上下方向に摺動可能に嵌合されるとともに、内部に、ステムの内部に連通され、かつ前方に向けて開口した噴出口を介して外部に連通可能な弁室が形成された本体部と、
前記弁室に噴出口に対して前後方向にスライド可能に設けられ、この噴出口を開閉させるとともに、弁室の内周面との間に、噴出口に至る流路を画成する棒状の弁部材と、
弁部材に連結され、本体部を装着筒部材に対して弁部材とともに上下方向に移動させたときに、この弁部材を前後方向にスライドさせるスライド機構とが備えられ、
前記流路は、弁部材の外周面および弁室の内周面にそれぞれ、周方向に間隔をあけて複数形成された前後方向に延びる溝部により構成されていることを特徴とする押下ヘッド。
【請求項2】
請求項1記載の押下ヘッドにおいて、
前記流路は、前記溝部、および弁部材の外周面と弁室の内周面との間に設けた隙間により構成されていることを特徴とする押下ヘッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載の押下ヘッドにおいて、
弁部材のうち、前記噴出口を開閉させる前端部は、前記スライド機構が連結された部分を形成する材質よりも軟質の材料により形成されていることを特徴とする押下ヘッド。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の押下ヘッドにおいて、
前記弁室には、弁部材が前後方向に進退移動する際、この弁部材の中心軸線方向中央部を、外周面側から径方向で挟み込むように支持する支持部材が設けられていることを特徴とする押下ヘッド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の押下ヘッドにおいて、
前記本体部は、頂板部、およびこの頂板部の外周縁から略垂下してなる周壁部を有する被押下部と、前端部に前記噴出口が形成された筒状のノズルとを備え、
被押下部とノズルとの間には、被押下部の周壁部から前方に向けて突出するようにガイド筒部が設けられ、
このガイド筒部およびノズルの内部に、前記弁室が形成されていることを特徴とする押下ヘッド。
【請求項6】
上方付勢状態で押込み可能にステムを起立したポンプに押下ヘッドが装着され、内部に液体が充填される容器体の口部に取り付けられる押下ヘッド付きポンプであって、
ステムの上端部に請求項1から5のいずれかに記載の押下ヘッドの装着筒部材が嵌着され、この装着筒部材は、ステムを保持する保持部材に対して上方に付勢されていることを特徴とする押下ヘッド付きポンプ。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−253103(P2007−253103A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83016(P2006−83016)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】