説明

押下ヘッド

【課題】押下ヘッドの押し下げ時のがたつきを抑制して操作性を向上させることができる押下ヘッドを提供することを目的とする。
【解決手段】ノズル5と、弁室65が形成されたヘッド本体6と、ノズル5内に挿入されてノズル5を開閉する弁体7と、弁体7を弁体軸L2方向の一方側に移動させる移動機構8と、を備える押下ヘッド1であって、ヘッド本体6は、弁室65に連通されていると共にステム42に嵌合される嵌合筒部63を備え、移動機構8は、ヘッド本体6の上部に上下動可能に装着されたカバー部材80と、上端部がカバー部材80の天壁部10の下面に当接されて下端部が弁体7に係合されていると共にヘッド本体6に揺動可能に取り付けられた梃部材82と、を備え、カバー部材80の押下動作に伴いカバー部材80が梃部材82の上端部を押し下げることで梃部材82が揺動して梃部材82の下端部が弁体軸L2方向の一方側に向かって移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上方付勢状態で押込み可能に起立したステムを有する吐出器に装着される押下ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の押下ヘッドとして、従来、例えば下記特許文献1に示されているように、ノズルと、そのノズルを介して外部に連通可能な弁室が形成されたヘッド本体と、弁室内からノズル内に挿入されてノズルを開閉する弁部材と、弁部材を移動させてノズルを開放させる移動機構と、を備えた構成が知られている。
上記したヘッド本体には、弁室に連通されるシリンダが垂設されており、このシリンダとステムの上端との間には装着筒部材が介装されている。装着筒部材は、ヘッド本体の本体周壁の内側に配設されており、その概略構成としては、ステムの軸線に対して略垂直に配設された円環状の頂板と、頂板の下面に垂設されてステムの外側に嵌合される装着筒と、円環状の頂板の内縁から立設されて上記シリンダの内側に摺動可能に嵌合された摺動筒と、を備えている。
一方、上記した移動機構には、ヘッド本体に揺動可能に取り付けられた梃部材が備えられている。この梃部材は、下端部が装着筒部材の頂板の上面に当接され、上端部が弁部材の後端部に掛合されている。なお、弁部材はコイルスプリングによってノズル先端側(前方)に向けて付勢されており、ノズル孔が弁部材の先端部によって閉塞されている。
【0003】
上記した構成からなる従来の押下ヘッドによれば、ヘッド本体の上端面を押圧してヘッド本体を押し下げると、シリンダが摺動筒に沿って下向きに摺動すると共に梃部材がヘッド本体と共に下方に移動する。このとき、梃部材の下端部が頂板に当接しているため梃部材が揺動して梃部材の上端部が後方側に傾動する。これにより、梃部材の上端部に掛合された弁部材が後方に移動し、弁部材の先端部がノズル孔から離間してノズルが開放される。続いて、さらにヘッド本体を押し下げると、ヘッド本体の摺動筒等が装着筒部材の頂板を押圧し、装着筒部材と共にステムが押し込まれる。これにより、吐出器によって内容物が供給され、この内容物はステムの上端から装着筒部材内を通って弁室に流入してノズル先端のノズル孔から吐出される。
【特許文献1】特開2002−326044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した押下ヘッドにおいては、手の平などで押し下げやすくするために押圧面(ヘッド本体の上端面)を大型化する要望がある。
しかしながら、上記した従来の押下ヘッドでは、ヘッド本体とステムとの間に装着筒部材が介装されているため、ヘッド本体の上端面を大型化すると、ヘッド本体を押し下げてステムを押し込むときにヘッド本体ががたつき、操作性が低下するという傾向が大きくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、押し下げ時のがたつきを抑制して操作性を向上させることができる押下ヘッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る押下ヘッドは、ノズルと、該ノズルを介して外部に連通可能な弁室が形成されたヘッド本体と、前記ノズル内に挿入されて該ノズルを開閉する弁体と、該弁体を弁体軸方向の一方側に移動させて前記ノズルを開放させる移動機構と、を備え、上方付勢状態で押込み可能に起立したステムを有する吐出器に装着される押下ヘッドであって、前記ヘッド本体は、前記弁室に連通されていると共に前記ステムに嵌合される嵌合筒部を備えており、前記移動機構は、前記ヘッド本体の上部に上下動可能に装着されたカバー部材と、上端部が前記カバー部材の天壁部の下面に当接されて下端部が前記弁体に係合されていると共に前記ヘッド本体に揺動可能に取り付けられた梃部材と、を備え、前記カバー部材の押下動作に伴い前記カバー部材が前記梃部材の上端部を押し下げることで前記梃部材が揺動して前記梃部材の下端部が前記弁体軸方向の一方側に向かって移動することを特徴としている。
【0007】
このような特徴により、カバー部材の上端面を押圧してカバー部材を押し下げると、カバー部材の天壁部によって梃部材の上端部が下向きに押圧されて梃部材が揺動する。これにより、梃部材の下端部が弁体軸方向の一方側に移動し、梃部材の下端部に係合された弁体が弁体軸方向の一方側に引っ張られてノズルが開放される。続いて、カバー部材を更に押し下げると、カバー部材によってヘッド本体が下向きに押圧され、ヘッド本体と共にステムが押し込まれる。これにより、吐出器によって内容物が供給され、この内容物はステムの上端から嵌合筒部内を通って弁室に流入し、開放されたノズルから吐出される。このとき、ヘッド本体の嵌合筒部がステムに嵌合され、ヘッド本体とステムとが直接連結されているので、ヘッド本体ががたつきにくい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る押下ヘッドによれば、ヘッド本体を下降させてステムを押し込む際のヘッド本体のがたつきを抑制することができ、押し下げ時の操作性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る押下ヘッドの実施の形態について、図面に基いて説明する。
図1は吐出器2に装着された押下ヘッド1の押し下げ前の状態を表した縦断面図であり、図1は吐出器2に装着された押下ヘッド1の押し下げ時の状態を表した縦断面図である。
なお、本実施の形態では、吐出器2からみて押下ヘッド1側(図1における上側)を上方とし、その反対側(図1における下側)を下方とする。また、後述するノズル5の先端側(図1における左側)を前方とし、その反対側(図1における右側)を後方とする。また、上下方向に延在する図1に示す符号L1は、後述するステム42の中心軸線を示しており、以下、「縦軸L1」と記す。また、前後方向に延在する図1に示す符号L2は、後述するノズル5や弁体7の中心軸線を示しており、以下、「横軸L2」と記す。
【0010】
まず、吐出器2の概略構成について説明する。
【0011】
図1に示すように、吐出器2は、内容物を収容した図示せぬボトルの口部に装着されるポンプ式の吐出器であり、その概略構成としては、口部に装着される装着キャップ3と、装着キャップに取り付けられたポンプ4と、を備えている。
【0012】
装着キャップ3は、ボトル口部に螺着されるキャップ体であり、天壁部30と雌ねじ筒部31とガイド筒部32とフランジ部33と外筒部34とポンプ取付部35とを備えている。天壁部30は、縦軸L1に対して略垂直に配設された円環状の板部であり、天壁部30の下面には、ボトル口部の上端面をシールする円環状のパッキン36が配設されている。雌ねじ筒部31は、天壁部30の外縁から垂下された筒部であり、内周面に雌ねじが形成されてボトル口部に螺着されている。ガイド筒部32は、天壁部30の上面に立設された筒部である。フランジ部33は、ガイド筒部32の下端部から径方向外側に突出した板部であり、ガイド筒部32の外周面の全周に亘って形成されている。外筒部34は、フランジ部33の外縁から垂下された筒部であり、内径が雌ねじ筒部31の外径よりも大きく、雌ねじ筒部31の径方向外側に周設されている。ポンプ取付部35は、上端が閉塞された二重筒構造の筒部であり、天壁部30の内縁から立設されている。上記した雌ねじ筒部31と外筒部34、及び、ガイド筒部32とポンプ取付部35は、それぞれ縦軸L1を共通軸にして同軸上に配設されている。
【0013】
ポンプ4は、シリンダ40とピストン部材41とステム42と図示せぬコイルスプリングと図示せぬ弁部材等とを備える公知のポンプ機構であり、種々のポンプ機構を用いることができる。シリンダ40は、縦軸L1に沿って延在した筒部材であり、シリンダ40の上端部は、上記したポンプ取付部35の外筒35aと内筒35bの間にアンダーカット嵌入されている。これにより、シリンダ40は、ポンプ取付部35に支持され、上記した雌ねじ筒部31の下端から下向きに突出されている。ピストン部材41は、シリンダ40の内側に配設された筒部材であり、シリンダ40の内周面に沿って上下方向に摺動可能な部材である。このピストン部材41の上端部は、ポンプ取付部35の内筒35bの内側に挿入されている。ステム42は、縦軸L1に沿って延在した筒部材である。このステム42の下端部は、ポンプ取付部35の内筒35bの内側に挿入されてピストン部材41の上端部の外側に嵌合されており、ステム42は、ポンプ取付部35の内筒35bの上端から上向きに突出されている。
【0014】
次に、上記した押下ヘッド1の構成について説明する。
【0015】
図1に示すように、押下ヘッド1は、上記したポンプ4に装着された上下方向に移動可能なヘッド部材であり、その概略構成としては、上記したステム42に装着されるヘッド本体6と、ヘッド本体6に取り付けられたノズル5と、ノズル5を開閉する弁体7と、弁体7を横軸L2に沿って後方側に移動させてノズル5を開放させる移動機構8と、を備えている。
【0016】
ヘッド本体6は、縦軸L1に対して略垂直に配設された天壁部60と、天壁部60の外周縁から垂下された下側周壁部61と、下側周壁部61の内側に配設された横筒部62と、横筒部62の下面から垂下された嵌合筒部63と、天壁部60の外周縁から立設された上側周壁部64と、を備えている。
【0017】
天壁部60の後側部分には、後述する梃部材82の第二アーム部16が挿通される開口60aが形成されている。
下側周壁部61は、縦軸L1に沿って延在する筒部である。この下側周壁部61の外径は、上記した装着キャップ3のガイド筒部32の内径よりも小径であり、下側周壁部61の下端部がガイド筒部32の上端部の内側に挿入されている。また、下側周壁部61の下端面は、装着キャップ3の天壁部30の上面から離間されており、下側周壁部61の下端面と装着キャップ3の天壁部30の上面との間にはヘッド本体6の押下ストローク以上の隙間があけられている。
【0018】
横筒部62は、横軸L2に沿って前後方向に延在する筒部であり、横筒部62の内部には、弁室65が形成されている。横筒部62は上記した天壁部60の下面に付設されており、横筒部62の上壁は天壁部60によって構成されている。また、横筒部62は、ヘッド本体6の天壁部60の左右方向の中央位置に配設されており、横筒部62の側面とヘッド本体6の下側周壁部61の内周面との間には隙間があけられている。横筒部62の前端は、下側周壁部61を貫通して下側周壁部61の外側に向けて開放されており、弁室65は、ノズル5を介して外部に連通可能になっている。一方、横筒部62の後端は、下側周壁部61の内周面との間に隙間をあけて配設された後端壁部62aにより閉塞されている。この後端壁部62aの中央部分には、弁体7の後端部72を挿通させるための開口62bが形成されている。また、後端壁部62aの前方側(横筒部62の内部側)の面には、弁室65(横筒部62内)に配置され、横軸L2方向(前後方向)に延在する筒状の弁ガイド部62cが突設されている。
【0019】
嵌合筒部63は、下側周壁部61の内側に配設されていると共に縦軸L1を共通軸にして下側周壁部61と同軸上に配設されている。また、嵌合筒部63の内側は、横筒部62の下壁部に形成された連通孔62dを介して弁室65に連通されている。この嵌合筒部63の内側には、上記したステム42の上端部が圧入嵌合されており、ステム42の内側は弁室65に連通されている。
上側周壁部64は、縦軸L1に沿って延在する筒部である。上側周壁部64の外径は、下側周壁部61の外径と同径であり、上側周壁部64の外周面は下側周壁部61の外周面と面一に形成されている。
【0020】
ノズル5は、横軸L2に沿って延在する筒状部材である。ノズル5の後端部は、ヘッド本体6の横筒部62の内側(弁室65)にアンダーカット嵌合されており、ノズル5は、ヘッド本体6から前方側に向けて突出されている。また、ノズル5の後端は、弁室65に向けて開放されており、ノズル5の内側は弁室65に連通されている。一方、ノズル5の先端部(前端部)は、前方側に向かうに従い漸次縮径されたテーパー形状を成しており、ノズル5の先端面には、内容物を吐出するノズル孔50が形成されている。また、ノズル5の内周面には横軸L2方向に延在する複数の凸リブ51がノズル周方向に間隔をあけて複数配設されており、隣り合う凸リブ51間の隙間が内容物を流通させる流通路となっている。
【0021】
弁体7は、横軸L2を共通軸にして横筒部62(弁室65)及びノズル5と同軸上に配設された棒状の部材であり、横筒部62内(弁室65)からノズル5内に挿入され、横軸L2方向(前後方向)に移動自在に配置されている。詳しく説明すると、弁体7は、ノズル5内に収容された円柱形状の棒部70と、棒部70の前端に連設された先端部71と、棒部70の後端に連設された円柱形状の後端部72と、棒部70の後端部の外周面に周設されたスカート部73と、が備えられている。
【0022】
先端部71は、前方(先端)に向うに従い漸次縮径された円錐台形状を成しており、ノズル5のノズル孔50の内側に着脱自在に嵌め込まれている。スカート部73は、後方に向うに従い漸次拡径されたテーパー形状の筒部である。このスカート部73は、棒部70の後端部の外周面から後方に向かって延在しており、横筒部62の弁ガイド部62cの内側に収容されている。スカート部73の後端部には、その径方向外側に折り返した折り返し部73aが全周に亘って形成されており、この折り返し部73aは、弁ガイド部62cの内周面に摺接されている。後端部72は、棒部70よりも小径の円柱形状を成しており、横筒部62の後端壁部62aの開口62bに挿通されている。この後端部72の前方部分は、スカート部73の内周面との間に隙間をあけてスカート部73の内側に配設されている。一方、上記開口62bから横筒部62の外に突出された後端部72の後方部分には、その径方向内側に凹んだ凹溝状の掛合部72aが形成されている。
上記した構成からなる弁体7は、上記したスカート部73の折り返し部73aが弁ガイド部62cに案内されるとともに、上記した棒部70がノズル5の凸リブ51に案内されることで、横軸L2方向に沿って往復移動可能になっている。
【0023】
移動機構8は、ヘッド本体6の上部に上下動可能に装着されたカバー部材80と、ヘッド本体6の天壁部60上に配設された軸受け部材81と、軸受け部材81を介してヘッド本体6に取り付けられた梃部材82と、弁体7を前方側に付勢する付勢部材83と、を備えている。
【0024】
カバー部材80は、縦軸L1に対して略垂直に配設された天壁部10と、天壁部10の外縁から垂下された外周壁部11と、天壁部10の下面から垂下されていると共に外周壁部11の内側に配設された内周壁部12と、を備えている。天壁部10は、ヘッド本体6の上方に配設された平板状の板部であり、天壁部10の下面とヘッド本体6(上側周壁部64)の上端面との間には、カバー部材80の押下ストローク以上の隙間があけられている。外周壁部11は、縦軸L1に沿って延在する筒状の壁部であり、外周壁部11の前方部分には、ノズル5を通すための切り欠き部11aが形成されている。この切り欠き部11aの上端面とノズル5の上面との間には、カバー部材80の押下ストローク以上の隙間があけられている。内周壁部12は、縦軸L1に沿って延在すると共にヘッド本体6(上側周壁部64)の外側に緩挿された略筒状の壁部であり、ノズル5を通すために前方部分が開かれた平面視C字形状を成している。
【0025】
軸受け部材81は、ヘッド本体6の天壁部60の上面に載置された板部13と、板部13の後側部分の上面に立設されていると共に左右方向に間隔をあけて対向配設された一対の立上り部14と、を備えている。板部13は、縦軸L1に対して略垂直に配設された板部であり、ヘッド本体6の上側周壁部64の内側にアンダーカット嵌合されている。この板部13には、左右一対の立上り部14間の部分に、後述する梃部材82の第二アーム部16を通すための開口13aが形成されている。一方、左右一対の立上り部14の各対向面には、梃部材82を軸支するための軸受け部14aが形成されている。この軸受け部14aは、立上り部14の上端から下方に延びた溝部と、下端部が左右方向に貫通する軸孔と、を備えており、前記溝部から挿入された後述する回転軸17が前記軸孔に嵌め込まれるように構成されている。
【0026】
梃部材82は、左右方向からみて「く」字状に形成されていると共に横軸L2を含む仮想鉛直面に沿って揺動可能な揺動部材であり、上端部がカバー部材80の天壁部10の下面に当接され、下端部が横筒部62の外方に突出した弁体7の後端部72に係合されている。詳しく説明すると、梃部材82は、平面視コ字形状の第一アーム部15と、第一アーム部15に対して角度をつけて連結された板状の第二アーム部16と、第一アーム部15と第二アーム部16との連結部分の左右両側の側面にそれぞれ突設されたピン状の回転軸17と、を備えている。なお、第一アーム部15は、平面視コ字形状以外の形状でもよく、例えば平板状に形成されていてもよい。
【0027】
第一アーム部15は、ヘッド本体6の天壁部60の上方に配設されており、その先端部(上端部)がカバー部材80の天壁部10の下面に当接されている。第二アーム部16は、軸受け部材81の板部13の開口13a及びヘッド本体6の天壁部60の開口60aに挿通されて天壁部60の下方に突出され、横筒部62の後端壁部62aとヘッド本体6の下側周壁部61との間の隙間に配置されている。第二アーム部16の下端部には、凹状に切り欠いた掛合部16aが形成されており、この掛合部16aは、弁体7の後端部72に形成された掛合部72aに掛合されている。また、回転軸17は、軸受け部材81の立上り部14の軸受け部14aの内側に回転可能に嵌め込まれて軸支されている。
【0028】
付勢部材83は、弁体7の棒部70の後端面と横筒部62の後端壁部62aとの間に介装されたコイルスプリングであり、横筒部62内(弁室65)に収容され、横軸L2を共通軸にして弁体7と同軸上に配設されている。この付勢部材83は、弁体7のスカート部73の内側に挿入されていると共に弁体7の後端部72の外側に配置されている。なお、この付勢部材83は、上記した吐出器2(ポンプ4)の図示せぬコイルスプリングよりも付勢力(復元力)が弱いものを用いることが好ましい。つまり、移動機構8の付勢部材83は、ポンプ4の図示せぬコイルスプリングによりもばね定数が小さいものを用いることが好ましい。
【0029】
次に、上記した構成からなる押下ヘッド1の作用について説明する。
【0030】
まず、図2に示すように、カバー部材80の上端面を指等で押圧してカバー部材80を押し下げ、カバー部材80をヘッド本体6に対して相対的に下降させる。このとき、ヘッド本体6及び軸受け部材81は動かず、カバー部材80とともに梃部材82が下方に移動するため、カバー部材80の天壁部10によって梃部材82の上端部が下向きに押圧されて梃部材82が揺動する。詳しく説明すると、梃部材82の第一アーム部15の上端がカバー部材80の天壁部10の下面に当接した状態で梃部材82の回転軸17が下降するため、梃部材82は、第一アーム部15を下降させると共に第二アーム部16を後方側に移動させる方向に回転軸17周りに揺動する。このとき、第二アーム部16の掛合部16aが弁体7の掛合部72aに掛合されているため、梃部材82が揺動することにより弁体7の後端部72が後方に引っ張られ、弁体7は後方に移動する。これにより、ノズル5のノズル孔50から弁体7の先端部71が離間してノズル孔50が開放される。
【0031】
なお、カバー部材80が押し下げられたとき、カバー部材80の内周壁部12がヘッド本体6の上側周壁部64の外周面に沿って移動するため、カバー部材80は、縦軸L1方向に沿って下降する。このとき、内周壁部12は、前方部分が開かれた平面視C字形状を成しているため、カバー部材80を押し下げたときに内周壁部12がノズル5に係止されることがなく、カバー部材80をヘッド本体6に対して相対的に押し下げることが可能である。
また、弁体7が後方に引っ張られたとき、弁体7のスカート部73の折り返し部73aが横筒部62内の弁ガイド部62cの内周面上を摺動するとともに、弁体7の棒部70がノズル5の内周面の凸リブ51上を摺動する。このため、弁体7は、横軸L2に沿って後方へ移動する。
【0032】
続いて、カバー部材80を更に押し下げていくと、カバー部材80の天壁部10がヘッド本体6(上側周壁部64)の上端面に当接すること、及び/又は、梃部材82の第二アーム部16の下端がヘッド本体6の下側周壁部61の内周面に当接することなどにより、梃部材82の揺動が規制される。これにより、ヘッド本体6は、カバー部材80の天壁部10によって下向きに押圧されること、及び/又は、梃部材82を介して押し下げられることにより、カバー部材80と共に押し下げられ、装着キャップ3に対して相対的に下降する。このとき、ヘッド本体6の下側周壁部61が装着キャップ3のガイド筒部32の内周面に沿って移動するため、ヘッド本体6は、縦軸L1方向に沿って下降する。また、ヘッド本体6は、下側周壁部61の下端が装着キャップ3の天壁部30の上面に当接するところ、及び/又は、嵌合筒部63の下端が装着キャップ3のポンプ取付部35(内筒35b)の上端に当接するところまで、ヘッド本体6を押し下げることが可能である。
【0033】
上述したようにヘッド本体6が下降すると、ヘッド本体6の嵌合筒部63に嵌合されたステム42がヘッド本体6と共に下降してポンプ4のシリンダ40内に押し込まれると共に、ステム42に嵌合されたピストン部材41も共にシリンダ40内に押し込まれる。これにより、図示せぬボトル内に収容された内容物がポンプ4によって弁室65に供給され、ノズル5のノズル孔50から吐出される。詳しく説明すると、押し下げられたピストン部材41が上方に復帰する際に、図示せぬボトル内の内容物は、シリンダ40内に流入する。このシリンダ40内の内容物は、ステム42及びピストン部材41の押し下げにより、ピストン部材41内を通ってステム42内に流入し、さらに、ステム42の上端から横筒部62の連通孔62dを通って弁室65に流入し、ノズル5の内側の凸リブ51間を通ってノズル孔50から外部に吐出される。
【0034】
また、上述したようにヘッド本体6が押し下げられる際、ヘッド本体6の嵌合筒部63がステム42に嵌合され、ヘッド本体6とステム42とが直接連結されているので、ヘッド本体6ががたつきにくい。
【0035】
次に、カバー部材80の上端面を押圧していた指等を離し、カバー部材80の押し下げを解除すると、ポンプ4の図示せぬコイルスプリングによりピストン部材41が上方に付勢されて上昇するとともに、弁室65内の付勢部材83により弁体7が前方に付勢されて前方に移動する。
【0036】
前記押し下げの解除によってピストン部材41が上昇すると、ピストン部材41と嵌合しているステム42が上昇する。これにより、ステム42と嵌合した嵌合筒部63を有するヘッド本体6が押し上げられ、ヘッド本体6が装着キャップ3に対して相対的に上方に移動する。
【0037】
また、弁体7が前方に移動すると、弁体7の先端部71がノズル5のノズル孔50内に嵌め込まれ、ノズル孔50が閉塞される。また、梃部材82の第二アーム部16の掛合部16aが弁体7の掛合部72aに掛止されているため、弁体7が前方に移動すると、梃部材82が、第二アーム部16の下端部を前方に移動させる方向に揺動する。これにより、第一アーム部15が上向きに回動し、この第一アーム部15の先端部によってカバー部材80の天壁部10が上向きに押圧され、カバー部材80が押し上げられる。
以上により、押下ヘッド1は元の位置に戻る。
【0038】
上記した構成からなる押下ヘッド1によれば、ヘッド本体6とステム42とが直接連結されており、ヘッド本体6を下降させてステム42をシリンダ40内に押し込む際のヘッド本体6のがたつきが抑制されるので、押下ヘッド1の押し下げ時の操作性を向上させることができる。
【0039】
以上、本発明に係る押下ヘッドの実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、図示せぬボトル内の内容物をそのまま吐出するポンプ4に装着される押下ヘッド4について説明しているが、本発明に係る押下ヘッドは、図示せぬボトル内の内容物にエアを混合して発泡させて泡状の内容物を吐出する吐出器(フォーマーポンプ等)やエアゾール容器などに装着させることも可能である。
【0040】
また、上記した実施の形態では、ノズル5が前方(縦軸L1に対して直交する方向)に向けられているが、本発明は、ノズル5の向きは適宜変更可能であり、例えば、ノズル5が斜め上方に向けられていてもよい。
【0041】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための吐出器に装着された押下ヘッドの押し下げ前の状態を表す縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するための吐出器に装着された押下ヘッドの押し下げ時の状態を表す縦断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 押下ヘッド
2 吐出器
5 ノズル
6 ヘッド本体
7 弁体
8 移動機構
10 天壁部
42 ステム
65 弁室
63 嵌合筒部
80 カバー部材
82 梃部材
L2 横軸(弁体軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルと、該ノズルを介して外部に連通可能な弁室が形成されたヘッド本体と、前記ノズル内に挿入されて該ノズルを開閉する弁体と、該弁体を弁体軸方向の一方側に移動させて前記ノズルを開放させる移動機構と、を備え、上方付勢状態で押込み可能に起立したステムを有する吐出器に装着される押下ヘッドであって、
前記ヘッド本体は、前記弁室に連通されていると共に前記ステムに嵌合される嵌合筒部を備えており、
前記移動機構は、前記ヘッド本体の上部に上下動可能に装着されたカバー部材と、上端部が前記カバー部材の天壁部の下面に当接されて下端部が前記弁体に係合されていると共に前記ヘッド本体に揺動可能に取り付けられた梃部材と、を備え、前記カバー部材の押下動作に伴い前記カバー部材が前記梃部材の上端部を押し下げることで前記梃部材が揺動して前記梃部材の下端部が前記弁体軸方向の一方側に向かって移動することを特徴とする押下ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−104942(P2010−104942A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281149(P2008−281149)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】