説明

押釦スイッチ用部材およびその製造方法

【課題】 光が漏れにくい押釦スイッチ用部材を提供すること。
【解決手段】
押圧するためのキートップ5と、キートップ5の裏面側に設けられるシート部材6と、キートップ5とシート部材6との間に設けられ、シート部材6の裏面側からその表面側への光を遮光する第1の遮光層8と、を有し、シート部材6は、少なくとも第1の遮光層8と重なる領域に第2の遮光層11を有する押釦スイッチ用部材2としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押釦スイッチ用部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話および携帯情報端末装置(PDA)等の電子機器の操作部に押釦スイッチが用いられている。押釦スイッチにおいては、各押釦に割り当てられた機能を表示するために、ユーザが押圧するキートップに文字あるいは図形等が付されている場合がある。また、付された文字等を視覚的に際立つようにするために、文字や図形等を抜き文字として、その周囲に遮光層を配置することがある。かかる押釦スイッチでは、裏面側からキートップに光を照射することにより、文字や図形等が光って見える。(たとえば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−60334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の押釦スイッチでは、強い光を照射した場合に、光の一部が遮光層を透過し、いわゆる光漏れが生じる場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、かかる問題を解消すべくなされたものであって、光が漏れにくい押釦スイッチ用部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の押釦スイッチ用部材の一実施の形態は、押圧するためのキートップと、キートップの裏面側に設けられるシート部材と、キートップとシート部材との間に設けられ、シート部材の裏面側からその表面側への光を遮光する第1の遮光層と、を有し、シート部材は、少なくとも第1の遮光層と重なる領域に第2の遮光層を有する。
【0007】
さらに、操作面から見て、シート部材、キートップの外周よりも少なくとも一部で大きいものであり得る。
【0008】
さらに、キートップの外周よりも大きい内周を有する開口部を内側に備える枠部を有し、キートップは、開口部から操作面の方向に露出すると共に、シート部材のうちキートップの外周よりも大きい部分と、枠部の開口部以外の領域とが、押圧方向で重なるように構成され得る。
【0009】
また、キートップを表面側に保持するベースシートと、ベースシートの表面側または裏面側に配置される第3の遮光層と、をさらに有し、シート部材のうちキートップの外周よりも大きい部分は、第3の遮光層と一部で押圧方向にて重なり得る。
【0010】
また、本発明の押釦スイッチ用部材の製造方法の一実施の形態は、押圧するためのキートップと、キートップの裏面側に設けられるシート部材と、キートップとシート部材との間に設けられ、シート部材の裏面側からその表面側への光を遮光する第1の遮光層と、を有し、シート部材の少なくとも第1の遮光層と重なる領域に第2の遮光層を有する押釦スイッチ用部材の製造方法であって、キートップに第1の遮光層を設ける第1の遮光層形成ステップと、キートップに第2の遮光層が設けられたシート部材を固着するシート部材固着ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光が漏れにくい押釦スイッチ用部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材を備える携帯電話の正面図である。
【図2】図1に示す押釦スイッチ用部材をA−A線で切断した断面図である。
【図3】図2の押釦スイッチ用部材についてbで示す領域を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材の製造の概略的な流れを示すフローチャートである。
【図5】図4の押釦スイッチ用部材の各ステップにおける状態を図3と同様の領域にて示す断面図である。
【図6】本発明の変形例に係る押釦スイッチ用部材の図3と同様の領域における断面図である。
【図7】本発明の別の変形例に係る押釦スイッチ用部材の図3と同様の領域における断面図である。
【図8】本発明の別の変形例に係る押釦スイッチ用部材を、図1のB−B線で切断した場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材およびその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
(押釦スイッチ用部材の構造)
図1は、本発明の実施の形態に係る押釦スイッチ用部材2を備える携帯電話1を操作面側から見た場合の正面図である。図2は、図1に示す押釦スイッチ用部材2のA−A線断面図である。図3は、図2の押釦スイッチ用部材2についてbで示す領域を示す拡大断面図である。なお、図2およびそれ以後の断面図では、見易さを考慮して、各部材の厚さの比率を実際の比率と変えて図示している。
【0015】
図1に示すように、電子機器の一例である携帯電話1は、押釦スイッチ用部材2をその操作面に備える。なお、押釦スイッチ用部材2は、押圧操作によりON/OFFを切り替える押釦スイッチのために用いられるが、他の入力機器に用いられてもよいし、あるいはスイッチ機能を有さない装飾用パネルとして用いられてもよい。押釦スイッチ用部材2の操作面には、パネル3およびキートップ5が主に露出している。キートップ5の裏面にはシート部材6が固着され、シート部材6の裏面は、ベースシート7に固着されている。なお、以後、操作面側を表面側、操作面と逆の面側を裏面側という。また、表面と裏面との間の距離を厚さという。
【0016】
枠体としてのパネル3には、キートップ5を操作面側へと突出させるための開口部4が複数設けられている。開口部4の表面側の内周は、キートップ5の外周よりも大きく、かつ、後述のフランジ部10の外周よりも小さい。パネル3は、最終的に、携帯電話1の筺体の一部となってもよい。パネル3の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレンあるいはポリブチレンテレフタレート等のポリマー、あるいはステンレス、アルミニウム、銅、チタニウム等の金属若しくは各種金属から成る合金を用いることができる。また、パネル3の裏面側には、開口部4の内周部分に、外周側へ凹むざぐり部4aが設けられている。
【0017】
キートップ5は、ユーザが押圧するための構成部である。キートップ5としては、所定の強度を備えた材料であれば特に限定なく使用でき、例えば、0.1〜3mm程度の板状の樹脂、ガラス、金属あるいはそれらのコンポジット等から主に構成できる。また、キートップ5の材料として透光性の材料を用いる場合には、キートップ5の裏面側から照光したときに、キートップ5を光らせることができる。なお、本明細書において、「透光性」とは、一方向から光を照射した際の全光線透過率が30%以上、好ましくは80%以上である状態を指すものとする。一方、「遮光性」とは、一方向から光を照射した際の全光線透過率が30%以下である状態を指すものとする。キートップ5を構成するための透光性の樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエステル樹脂あるいはポリアミド樹脂等の各樹脂を使用でき、特に好ましい樹脂は、ポリカーボネート樹脂あるいはアクリル樹脂である。また、樹脂ではなく、ガラス等の透明な材料により、キートップ5が形成されていてもよい。
【0018】
キートップ5の裏面側の少なくとも一部は、第1の遮光層8を備える。第1の遮光層8は、キートップ5の裏面側から照光した場合に、第1の遮光層8が設けられた領域から光が漏れないように遮光する層である。第1の遮光層8は、全光線透過率が30%以下であるのが好ましく、さらに好ましくは、全光線透過率が10%以下である。第1の遮光層8は、遮光性のインク、例えば黒色のインクを用いた印刷により、約1〜30μmの厚さにて形成できる。第1の遮光層8は、キートップ5の裏面側全面に設けられていてもよいし、キートップ5の裏面の一部に設けられていてもよい。キートップ5の裏面であって、第1の遮光層8が設けられていない領域を「透光部9」という。本実施の形態では、キートップ5の表面側から視認される文字あるいは図等を透光部9にて形成している。したがって、キートップ5の裏面側から表面側に向かって光が照射されると、文字あるいは図等を形成する透光部9のみから光が出射するため、文字あるいは図等が光って見える。この結果、文字あるいは図等が視認されやすくなる他、暗所でも文字等の形状を容易に視認できる。なお、第1の遮光層8は、キートップ5の裏面側ではなく、キートップ5の表面側あるいは、キートップ5の内部に設けられていてもよい。
【0019】
シート部材6は、キートップ5の裏面側に固着される部材である。なお、シート部材6は、透光性の材料から構成され、裏面側、表面側あるいはその両方に第2の遮光層11を有する。たとえば、シート部材6としては、厚さ0.1〜0.5mmの透光性の樹脂製シートを好適に用いることができる。また、シート部材6は、キートップ5との固着が容易な部材であるのがより好ましい。たとえば、シート部材6としては、ポリカーボネート製のシートを好適に用いることができる。また、シート部材6は、第2の遮光層11を、少なくとも第1の遮光層8の一部と押圧方向で重なる領域に有している。また、第2の遮光層11は、第1の遮光層8の全部と押圧方向で重なる領域に設けられているのがより好ましく、さらに好ましくは、第1の遮光層8と押圧方向で重なる領域と略同一の領域にのみ設けられている。第2の遮光層11は、第1の遮光層8と同様に、遮光性のインクにより印刷にてシート部材6に設けることができる。また、第2の遮光層11は、全光線透過率が10%以下であるのが好ましく、さらに好ましくは、全光線透過率が5%以下である。したがって、シート部材6の裏面側から光を照射すると、光は、第2の遮光層11および第1の遮光層8の両方で遮蔽される。したがって、裏面側から照射された光は、文字あるいは図等の形状に設けられた透光部9以外から漏れにくい。
【0020】
また、シート部材6は、操作面から見た場合に、キートップ5の外周よりも少なくとも一部で外周側に突出している。以後、シート部材6のうち、キートップ5の外周よりも外側にある部分をフランジ部10という。フランジ部10は、パネル3のざぐり部4aの天面に引掛かる大きさで形成されている。このため、キートップ5が開口部4から表面側へ飛び出す(あるいは脱落する)のを防止できる。また、フランジ部10により当該脱落防止を実現するためには、シート部材6がある程度の硬度を有していればよく、たとえば、ポリカーボネート、アクリルあるいはポリエチレンテレフタレートから主に成るシート部材6を用いることができる。
【0021】
ベースシート7は、シート部材6を介して、配列された複数のキートップ5を所定の位置に固定および配列するために用いられる。また、ベースシート7は、キートップ5の部分が表面側から押圧された場合に、その下方に設けられたスイッチ部材(不図示)等を押し込むことができると共に、キートップ5の押圧が解除されると元の位置に復帰できるように、柔軟な弾性材料から構成されるのが好ましい。そのようなベースシート7の材料としては、たとえば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴムあるいはスチレンブタジエンゴム等の熱硬化性エラストマー、ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系あるいはフッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を用いることができる。それらの材料の中でも、耐久性が高いウレタン系エラストマー、シリコーンゴムあるいはそれらの複合材を用いるのが好ましい。
【0022】
ベースシート7の裏面側には、キートップ5と重なる位置に、押圧子12が形成されていてもよい。押圧子12は、ベースシート7から裏面方向に向かって突出する部分である。押圧子12は、ベースシート7と一体として形成され、ベースシート7の一部として構成されていてもよい。また、押圧子12は、ベースシート7とは別部材から構成され、ベースシート7に固着されるような形態であってもよい。押圧子12は、裏面側からの光を透過できるように、透光性であるのが好ましい。また、ベースシート7の表面側には、キートップ5と重なる位置に、台座部13が形成されていてもよい。台座部13は、フィルム5を介してキートップ5と固着される部分である。
【0023】
シート部材6とベースシート7、あるいはキートップ5とシート部材6は、これらを固着することができれば、どのような方法で固着されてもよい。たとえば、融着により固着してもよいし、接着剤または両面テープ等を介して固着されてもよい。または、ホットメルトテープ、シアノアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂若しくは加熱した際の軟化点が低い樹脂等から成る層により固着されてもよい。たとえば、第1の遮光層8または第2の遮光層11を構成するインクによりキートップ5とシート部材6とを固着してもよい。あるいは、第2の遮光層11を構成するインクにより、シート部材6とベースシート7とを固着してもよい。また、それらを固着する際には、互いに接触する面の全面で固着されてもよいし、互いに接触する面の内、一部のみで固着されてもよい。たとえば、接着面に接着剤をドット状に配置してもよい。
【0024】
上述のような押釦スイッチ用部材2を構成することにより、遮光を所望する領域(第1の遮光層8および第2の遮光層11が配置された領域)から光が漏れにくくなる。結果として、透光部9から出射する光を際立たせることができる。なぜなら、裏面側から光を照射した場合に、第1の遮光層8だけではなく、第1の遮光層8および第2の遮光層11の両方で遮光できるからである。特に、第1の遮光層8が金属を主に含む場合、第1の遮光層8が電波を遮ることがないように第1の遮光層8を薄くするため十分に遮光できない。しかし、第1の遮光層8が十分に遮光できなくても、第2の遮光層11が設けられているため、確実に遮光できる。また、1層の遮光層のみで十分な遮光を行うためには、形成する遮光層を厚く形成しなければならず、厚さムラが生じやすい。しかし、本実施の形態では、第1の遮光層8および第2の遮光層11をそれぞれ薄く均一の厚さに形成できる。
【0025】
シート部材6がフランジ部10を有する場合には、キートップ5自体がフランジを有するような形状にキートップ5を成型する場合よりも、フランジ部10を薄く形成できる。なぜなら、キートップ5と一体の薄いフランジ部分を成型する場合には、成型用樹脂の流動性等から、その厚さを薄くするのは難しいからである。特に、フランジ部分の厚さを0.3mm以下とすることは、難しい。しかし、フランジ部分を有さないキートップ5に、シート部材6を固着してフランジ部10を形成する場合には、シート部材6の厚さを選択するだけで、薄いフランジ部10を設けることができる。特に、0.3mm以下の厚みを有するシート部材6を採用した場合には、フランジ部分を有する形状にキートップ5を成型した場合よりもフランジ部10を薄くできる。フランジ部10が薄くなることで、ざぐり部4aの押圧方向の高さも小さくできるため、押圧スイッチ用部材2を薄型化できる。さらに、フランジ部10が薄くなることで、ざぐり部4aの厚さ方向を小さくできるため、パネル3の強度低下が小さくなる。また、フランジ部10が薄型化することで、キートップ5の押圧方向への変位を大きくできるため、クリック感が向上する。
【0026】
シート部材6によりフランジ部10を形成する場合に、フランジ部10に第2の遮光層11が設けてある場合には、キートップ5の外周から光が表面に漏れるのを防止できる。なぜなら、フランジ部10により裏面からの光が遮られるからである。かかる場合には、パネル3とフランジ部10とが押圧方向で重なる(図3のαで示す領域)ように構成されるのがより好ましい。パネル3とフランジ部10とが押圧方向で重なる場合には、裏面側からの光を二重で遮光できるからである。また、第2の遮光層11を設けることで、第1の遮光層8の端面から光が表面側に漏れにくくなる。
【0027】
(押釦スイッチ用部材の製造方法)
次に、押釦スイッチ用部材2の製造方法について説明する。図4は、押釦スイッチ用部材2の製造の概略的な流れを示すフローチャートである。図5は、図4の各工程における押釦スイッチ用部材2の状態を図3と同様の領域で示す断面図である。
【0028】
まず、図5の(A)に示すように、キートップ5に第1の遮光層8を設ける(ステップS101:遮光層形成ステップ)。なお、第1の遮光層8は、透光部9以外の領域に形成されるのが好ましい。しかし、第1の遮光層8をキートップ5の裏面全面に形成した後で、透光部9の領域に設けられた第1の遮光層8をレーザ加工やエッチング等により除去してもよい。
【0029】
次に、図5の(B)に示すように、キートップ5の裏面側に、第2の遮光層11を予め形成したシート部材6を固着する(ステップS102:シート部材固着ステップ)。次に、図5の(C)に示すように、シート部材6の裏面側に、予め成型したベースシート7を固着する(ステップS103)。最後に、図5の(D)に示すように、パネル3を所定の位置に配置する。
【0030】
上述のような方法で押釦スイッチ用部材2を製造することにより、遮光を所望する領域(第1の遮光層8および第2の遮光層11が配置された領域)から光が漏れにくくなる。なぜなら、裏面側から光を照射した場合に、第1の遮光層8だけではなく、第1の遮光層8および第2の遮光層11の両方で光を遮光できるからである。また、第1の遮光層8あるいは第2の遮光層11を厚く構成しなくてよいため、簡単に形成できることに加えて、第1の遮光層8または第2の遮光層11の厚さを制御しやすい。
【0031】
以上、本発明の押釦スイッチ用部材2およびその製造方法を説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されることなく、種々変形を施して実施可能である。
【0032】
たとえば、上述の実施の形態では、操作面から見てキートップ5の外周よりも外側にシート部材6が突出するものとしているが、このような形態に限らない。シート部材6は、キートップ5の裏面と略同一の面積を有していなくてもよい。
【0033】
図6は、本実施の形態の変形例に係る押釦スイッチ用部材2aを図3と同様に示す断面図である。
【0034】
図6に示すように、押釦スイッチ用部材2aに備えるシート部材6aは、シート部材6と異なりキートップ5の外周と略同一の外周を有する。押釦スイッチ用部材2aでは、裏面側から照光した場合に、キートップ5の外周部分から光を出射できる。すなわち、キートップ5の外周を光らせることができる。
【0035】
図7は、別の変形例に係る押釦スイッチ用部材2bを図3と同様の断面について示す断面図である。
【0036】
図7に示すように、キートップ5aは、シート部材6により形成されるフランジ部10とは別に、キートップ5aがフランジを有していてもよい。キートップ5aがフランジを有する場合には、キートップ5aと一体として設けられたフランジと、シート部材6aによるフランジ部10との両方で裏面からの光を遮蔽できる。したがって、裏面からの光を確実に遮蔽できる。
【0037】
また、押釦スイッチ用部材2bでは、パネル3とベースシート7との間に第3の遮光層15が配置されている。具体的には、別途の第3の遮光層15は、フランジ部10と押圧方向で重なる(図7のβで示す領域)ように配置されている。第3の遮光層15は、遮光性の層で、たとえば、遮光性のシート状部材あるいは遮光性のインク層等から形成される。かかる場合には、裏面側から照光すると、キートップ5とパネル3との間から光が操作面側に出射するのを防ぐことができる。フランジ部10および第3の遮光層15の両方により、裏面側からの光を遮光できるからである。また、第3の遮光層15は、全光線透過率が10%以下であるのが好ましく、さらに好ましくは、全光線透過率が5%以下である。なお、第3の遮光層15は、フランジ部10よりも表面側に配置されてもよい。
【0038】
図8は、別の変形例に係る押釦スイッチ用部材2cを図1のB−B線で切断した場合の断面図である。
【0039】
図8に示すように、第1の遮光層8を有する別のキートップ5が、間隙tを隔てて隣接する場合に、フランジ部10と、隣接するキートップ5が有する第1の遮光層8とは、押圧方向で重なるのが好ましい。また、第3の遮光層15は、フランジ部10と押圧方向で重なる(図8のγで示す領域)ように配置されているのが好ましい。かかる場合には、フランジ部10と第3の遮光層15との両方により、キートップ5とパネル3aとの間隙tから表面側に出射しようとする光を確実に遮断できる。なお、図8では、操作面から見た形状が環状のキートップ5は、第1の遮光層8のみを有するものとしているが、第1の遮光層8と第2の遮光層11とを両方有していてもよいし、第2の遮光層11のみを有していてもよい。
【0040】
なお、上述の実施の形態では、ベースシート7は、押圧子12および台座部13を備えているが、これらは、必須ではない。ベースシート7は、平滑な部材であってもよい。さらに、ベースシート7は、必須ではない。キートップ5として、複数のキートップ5が連接されているようなキーシートを用いる場合には、ベースシート7がなくてもよい。
【0041】
また、上述の実施の形態では、透光性のキートップ5,5aを用いているが、このような形態に限らない。キートップ5,5aは、透光性でなくてもよく、たとえば、半透光性あるいは遮光性の材料から構成され、貫通孔を有するキートップとしてもよい。かかる場合には、裏面側から照光すると、貫通孔の内部が光って見える。遮光性の材料から構成される場合には、キートップ5,5aは、金属、樹脂、ガラス、セラミックスあるいはそれらのコンポジット等から主に形成されてもよい。
【0042】
また、上述の実施の形態では、透光性のシート部材6,6aに第2の遮光層11を設けたものを用いているが、このような形態に限らない。シート部材6,6aは、遮光性の部材から構成されてもよい。かかる場合には、シート部材6,6aのうち、透光部9と重なる領域のシート部材6,6aを除去し、いわゆる抜き文字としてもよい。
【0043】
また、上述の各実施の形態では、第1の遮光層8および第2の遮光層11を設ける押釦スイッチ用部材2,2a,2b,2cとしたが、第1の遮光層8および第2の遮光層11以外の遮光層が形成されていてもよい。たとえば、シート部材6,6aの両面に他の遮光層が設けられていてもよいし、キートップ5,5aの両面に遮光層が設けられていてもよい。あるいは、ベースシート7に遮光層が設けられていてもよい。また、第1の遮光層8、第2の遮光層11あるいはその他の遮光層は、印刷以外の手法により形成されてもよい。しかし、印刷により第1の遮光層8および第2の遮光層11が形成される場合には、位置合わせ等が容易であるため好ましい。
【0044】
また、上述の実施の形態では、ステップS101においてキートップ5の裏面に第1の遮光層8を設けるものとしたが、このような形態に限らない。たとえば、表面に第1の遮光層8が、裏面に第2の遮光層11が設けられたシート部材6,6aを用いてもよい。かかる場合には、キートップ5,5aに第1の遮光層8を設けなくてもよい。
【0045】
また、上述の実施の形態では、透光部9には、印刷層が形成されていないが、透光性あるいは半透光性の層を形成してもよい。たとえば、全光線透過率が60%の赤色のインクを透光部9に配置することで、押釦スイッチ用部材2の裏面から照光した場合に、透光部9を赤色に光らせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、たとえば、各種電子機器の入力装置としての押釦スイッチ等に利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
2,2a,2b,2c 押釦スイッチ用部材
3,3a パネル(枠部)
4 開口部
5,5a キートップ
6,6a シート部材
7 ベースシート
8 第1の遮光層
10 フランジ部(シート部材の一部)
11 第2の遮光層
15 第3の遮光層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧するためのキートップと、
上記キートップの裏面側に設けられるシート部材と、
上記キートップと上記シート部材との間に設けられ、上記シート部材の裏面側からその表面側への光を遮光する第1の遮光層と、を有し、
上記シート部材は、少なくとも上記第1の遮光層と重なる領域に第2の遮光層を有することを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項2】
請求項1に記載の押釦スイッチ用部材であって、
操作面から見て、前記シート部材は、前記キートップの外周よりも少なくとも一部で大きいことを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項3】
請求項2に記載の押釦スイッチ用部材であって、
さらに、前記キートップの外周よりも大きい内周を有する開口部を内側に備える枠部を有し、
前記キートップは、上記開口部から操作面の方向に露出すると共に、
前記シート部材のうち前記キートップの外周よりも大きい部分と、上記枠部の上記開口部以外の領域とが、押圧方向で重なるように構成されていることを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項4】
請求項3に記載の押釦スイッチ用部材であって、
前記キートップを表面側に保持するベースシートと、
上記ベースシートの表面側または裏面側に配置される第3の遮光層と、をさらに有し、
前記シート部材のうち前記キートップの外周よりも大きい部分は、上記第3の遮光層と一部で押圧方向にて重なることを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項5】
押圧するためのキートップと、当該キートップの裏面側に設けられるシート部材と、上記キートップと上記シート部材との間に設けられ、上記シート部材の裏面側からその表面側への光を遮光する第1の遮光層とを有し、シート部材の少なくとも当該第1の遮光層と重なる領域に第2の遮光層を有する押釦スイッチ用部材の製造方法であって、
上記キートップに上記第1の遮光層を設ける遮光層形成ステップと、
上記キートップに上記第2の遮光層が設けられた上記シート部材を固着するシート部材固着ステップと、
を含むことを特徴とする押釦スイッチ用部材の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−38611(P2012−38611A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178485(P2010−178485)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】