説明

押釦装置

【課題】視認性に優れるとともに、利用者の注意を引くことができる押釦装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る押釦装置100は、光源となる発光素子127と、押動操作可能に配設され発光素子127からの光が透過する釦部125bとを具え、発光素子127からの光が通過する範囲にシルク印刷による凹凸面124bを形成し、発光素子127からの光を凹凸面124bで散乱させて釦部125bから出射させる。上記構造を有する押釦装置100によれば、発光素子127からの光が凹凸面124bで屈折・反射して散乱するため、視認性に優れたものになるとともに、シルク印刷により多種多様なパターンを施すことができ、これまでにない表示をすることが可能となるから、販売可能な商品を利用者に明示するという押釦本来の機能に加えて、利用者や通行人の注意を引く機能が押釦に付与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押釦装置に関し、特に、自動販売機等の機器に用いられる押釦装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動販売機の前面パネルには、左右方向に沿って商品見本を陳列した陳列棚が複数段設けられており、それぞれの陳列棚に対応して押釦装置が配設されている。押釦装置は、陳列棚に沿って延在するケーシングと、ケーシングに対して操作可能に配設された押釦スイッチとからなり、例えば紙幣投入口や硬貨投入口から投入された貨幣が商品の販売価格以上になった場合に前記押釦スイッチの釦を点灯させて、販売可能な商品を購買者に明示するものである。
【0003】
従来、押釦装置の光源としては、発光ダイオード(LED:Light-emitting diode)が用いられてきたが、発光ダイオードから出射される光の直進性が強いため、釦を均一に照らすことができず、視認性が悪いという問題があった。そこで、透光性を有する材質から構成され、光の入射面に複数の溝を切削や成形等により形成した光散乱部材を、光源から出射される光の通過域に配置し、この光散乱部材により光を屈折・反射させて拡散させることにより、押圧操作部の視認性を向上させていた(特許文献1を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−317375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の自動販売機に用いられる押釦装置は、販売可能な商品を利用者に明示するものに過ぎず、たとえ特許文献1のような光散乱部材を用いて視認性を向上させたとしても、これにより利用者の注意をひくことはできなかった。利用者の注意を引く自動販売機としては、外扉の前面パネルに、くじ用のランプを多数配列し、これらランプを順次点灯させたもの等が数多く存在する。しかし、このような自動販売機においては、利用者の注意を引くために余計な設備を追加しなければならず、その分、製造コストが掛かるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑み、発光ダイオードのような直進性の強い光を光源に適用した場合であっても視認性に優れるとともに、利用者の注意を引くことができる押釦装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る押釦装置は、光源となる発光素子と、押動操作可能に配設され前記発光素子からの光が透過する釦部とを具えた押釦装置において、前記発光素子からの光が通過する範囲にシルク印刷による凹凸面を形成し、前記発光素子からの光を該凹凸面で散乱させて前記釦部から出射させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の押釦装置によれば、光源となる発光素子からの光が通過する範囲に、シルク印刷による凹凸面を形成し、この凹凸面で発光素子からの光を屈折・反射させて散乱させ、散乱光を釦部から出射させるようにしたので、釦部の広い範囲に斑なく光を透過させることができ、釦の視認性を向上させることができる。また、シルク印刷は、切削等の機械加工では施すことのできない高精細パターン(凹凸面)を施すことが可能であり、切削により形成した溝で散乱させた出射光による表示とは違った、これまでにない表示をすることが可能となる。従って、本発明の押釦装置を自動販売機に適用した場合には、販売可能な商品を利用者に明示するという押釦本来の機能に加えて、利用者又は通行人の注意を引く機能を押釦に付与することができる。その結果、余計な設備等を追加することなく、押釦装置のみで利用者や通行人の注意を引くことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る押釦装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態である押釦装置を適用した自動販売機を示したものである。ここで例示する自動販売機1は、缶入り飲料やペットボトル入り飲料等の商品を冷却もしくは加熱した状態で販売するもので、本体キャビネット2及び外扉3を具えている。
【0011】
本体キャビネット2は、複数の鋼板を組み合わせることによって構成され、前面が開口した断熱構造の箱状を成している。図には明示していないが、この本体キャビネット2の内部には、商品収納ラックを介して複数の商品が収納されている。外扉3は、本体キャビネット2の前面開口を閉塞するためのもので、開閉可能となる態様で本体キャビネット2の一側縁部に保持させてある。
【0012】
この外扉3の前面パネルには、紙幣投入口4、硬貨投入口5、表示部6、商品取出口7が設けられている。紙幣投入口4は、利用者が紙幣を投入するための開口であり、また硬貨投入口5は、利用者が硬貨を投入するための開口であり、それぞれ前面パネルの高さ方向中間位置に設けられている。これら紙幣投入口4や硬貨投入口5を通じて投入された貨幣は、図示せぬ貨幣処理装置において適宜処理される。貨幣処理装置は、紙幣投入口4や硬貨投入口5を通じて投入された貨幣が正規なものであるか否かを判別し、正規なものとして判別した貨幣を内部に取り込む一方、正規な貨幣として判別できなかった場合、並びに投入操作の後に返却レバー8が操作された場合、それぞれ貨幣を返却するためのものである。なお、紙幣投入口4は、利用者に対して紙幣を返却する際の紙幣返却口としても機能する。これに対して硬貨投入口5から投入された硬貨は、硬貨返却口9を通じて利用者に返却される。表示部6は、利用者が投入した貨幣の入金額や釣銭の金額等、商品を販売する上で必要となる各種情報を外部に表示するためのものであり、例えば液晶表示器によって構成されている。商品取出口7は、本体キャビネット2から払い出された商品を利用者が取り出すための開口であり、前面パネルの最下部に設けられている。
【0013】
また、外扉3の前面パネルには、その上方部にディスプレイウィンドウ10が設けられている。ディスプレイウィンドウ10は、前面が透明板11によって覆われた窓であり、その内部に左右方向に沿って商品見本12を陳列した陳列棚13が複数段設けられており、各陳列棚13の商品見本12は、透明板11を通じて外部から視認することができる。
【0014】
透明板11の前面には、それぞれの陳列棚13に対応して販売商品を選択するための押釦装置100が設けられている。押釦装置100は、ケーシング110と、ケーシング110に対して押動操作可能に配設された複数の押釦スイッチ120とを具え、支持部材(図示せず)によって透明板11に支持させることにより、利用者に対して各商品見本12に対応した押釦スイッチ120を個別に提供するためのものである。
【0015】
図2は、図1に示した自動販売機1に適用する押釦装置100の分解斜視図であり、図3は、図2の要部断面図である。なお、図1では1個のケーシング110に6個の押釦スイッチ120が配設されているが、以下の説明においては、便宜上、図2に示すように1個のケーシング110に2個の押釦スイッチ120が配設されたものについて説明する。
【0016】
図2及び図3に示すように、押釦装置100におけるケーシング110は、ベース部材111とカバー部材112とを具える。
【0017】
ベース部材111は、矩形の板状を成すもので、その表面周縁に枠部111aを有するとともに、枠部111aに装着溝111bを有している。枠部111aは、ベース部材111の各辺に沿って設けた矩形枠状を成すもので、ベース部材111の表面から表面側に向けて突設し、装着溝111bは、枠部111aの突出端面に形成した狭幅の凹所であり、無端の矩形状に形成されている。
【0018】
カバー部材112は、ベース部材111の表面を覆うためのもので、前板部112a及び一対の側板部112cを具える。前板部112aは、長手方向に沿う軸心を中心とした円弧状の横断面を有し、2つの釦挿通孔112dを有している。釦挿通孔112dは、後述する押釦スイッチ120の操作部材125を外部に露出させるためのものである。このカバー部材112は、前板部112a及び側板部112cによって構成される矩形状の開口をベース部材111によって閉塞することのできる大きさに構成されている。なお、カバー部材112には、裏面側から光を照射した場合に、その光が表面側に透過しないように、遮光性を有した材料により成形する、又は、遮光性を有した塗装を施す等の処理がなされる。
【0019】
押釦スイッチ120は、配線基板121、ハウジング122、パッキン123、表示板124及び操作部材125を順次重ね合わせて構成されたものである。
【0020】
配線基板121は、2つの押釦スイッチ120に対して1つ用意されたもので、上述したベース部材111の枠部111aに収容することのできる大きさの矩形状に成形されている。この配線基板121の表面には、長手方向にほぼ二等分したそれぞれの部分に各押釦スイッチ120の実装領域が構成されており、各実装領域にそれぞれ接点部材126、第1光源127及び第2光源128が実装され、両実装領域の境界となる部位に2つの押釦スイッチ120で共通に用いられる集積回路素子129が実装されている。
【0021】
接点部材126は、押圧された場合に配線基板121に構成された所望の電子回路をON状態に切り換えるもので、それぞれの押釦スイッチ120における各実装領域の両端部に、2つずつ配置されている。
【0022】
第1光源127及び第2光源128は、明滅状態の相違によって自動販売機1の状態を報知するためのもので、それぞれが2つの互いに発光色の異なる発光素子の対、例えば発光ダイオードの対によって構成される。より具体的には、第1光源127は、青色の発光色を呈する第1青色発光ダイオード127aと、橙色の発光色を呈する第1橙色発光ダイオード127bとを各実装領域の一端部側に互いに配線基板121の短手方向に並設することによって構成され、また、第2光源128は、赤色の発光色を呈する第2赤色発光ダイオード128aと、橙色の発光色を呈する第2橙色発光ダイオード128bとを各実装領域の他端部側に互いに配線基板121の短手方向に並設することによって構成されている。
【0023】
集積回路素子129は、それぞれの実装領域に配置された接点部材126が押圧された場合に個別の作動信号を自動販売機1の図示せぬメインコントローラに出力する一方、メインコントローラから指令が与えられた場合、この指令に応じてそれぞれの実装領域に配置された第1光源127及び/又は第2光源128を明滅させるためのものである。
【0024】
ハウジング122は、各押釦スイッチ120に個別に設けられたもので、第1光源及び第2光源から出射される光が重ならないようにするものである。ハウジング122は、遮光性を有した材料からなり、配線基板121の各実装領域において接点部材126の間に収容される。
【0025】
ハウジング122の第1光源127に対応する部位には、第1青色発光ダイオード127a及び第1橙色発光ダイオード127bの光を通過させる光通過面122aが形成されている。光通過面122aは、ハウジング122の表面に楕円形状の開口122cを有した筒状に形成され、ハウジングの光源に面する側に、第1青色発光ダイオード127a及び第1橙色発光ダイオード127bを含む大きさ以上に形成された楕円形状の開口122dを有している。
【0026】
一方、第2光源128の第2赤色発光ダイオード128a及び第2橙色発光ダイオード128bに対応する部位には、それぞれ個別の反射面122bが設けられている。反射面122bは、ハウジング122の表面にそれぞれ矩形状の開口122eを有した四角錐台状に形成され、ハウジングの光源に面する側に、第2赤色発光ダイオード128a及び第2橙色発光ダイオード128bをそれぞれ個別に含む大きさに形成された矩形状の開口122fを有している。なお、図には明示されていないが、反射面122bには、光反射性に富むアルミニウムもしくはアルミニウム合金が蒸着されている。
【0027】
パッキン123は、2つの押釦スイッチ120に対して1つ用意されたもので、配線基板121を密閉して防塵性及び水密性を確保するために設けられるものであり、例えばシリコーン系ゴム等のように透光性及び弾性を有した材料により、基部123aが配線基板121と同等の大きさを有した矩形状に成形されている。このパッキン123には、突条部123b、釦装着部123c及び部品収容部123d及びスプリング部123eが一体成形してある。
【0028】
突条部123bは、基部123aの裏面周縁から各辺に沿う態様で突設した無端の矩形状を成す部分であり、ベース部材111の装着溝111bに対応して構成してある。
【0029】
釦装着部123cは、基部123aの裏面において配線基板121の各実装領域に対応する部位にそれぞれハウジング122を嵌挿することのできる楕円形状の開口を有し、この開口から基部123aの表面側に向けて突設した部分であり、個々の突出端面が閉塞した楕円の筒状を成している。
【0030】
部品収容部123dは、配線基板121に実装した接点部材126や集積回路素子129等、突出量が大きい電子部品との干渉を避けるための部分であり、これらの電子部品に対応する部位に基部123aから表面側に突出させ、電子部品を覆う態様で形成されている。これらの部品収容部123dには、接点部材126に対応する部位にそれぞれ突起部123fが設けられている。
【0031】
スプリング部123eは、所望とする弾性復元力を維持した状態で、他の部分よりも弾性変形し易いように薄肉に成形された部分であり、基部123aと釦装着部123cとの間、並びに、基部123aと部品収容部123dとの間に構成されている。
【0032】
表示板124は、各押釦スイッチ120に個別に設けられたもので、透光性を有した材料からなり、パッキン123の釦装着部123cの突出端面とほぼ同一の形状に成形されている。図4は表示板124の正面図である。図4に示すように、表示板124には、第2光源128に対応する部位、すなわち、ハウジング122の2つの反射面122bに対応する部位に、それぞれ抜き文字124aが構成され、また、第1光源127に対応する部位、すなわち、ハウジング122の光通過面122aに対応する部位に、凹凸面124bが形成されている。
【0033】
抜き文字124aは、文字以外の部分に遮光性のある塗装を施す等の処理をすることにより、表示板124に光を透過させた場合に文字部分を浮き上がらせるようにしたもので、本実施の形態では、第2赤色発光ダイオード128aの反射面122bに対応する部位に「売切」と表示するように構成する一方、第2橙色発光ダイオード128bの反射面122bに対応する部位に「準備中」と表示するように構成されている。
【0034】
凹凸面124bは、透光性を有する透明なインクを用いてシルク印刷されたパターン(模様)であり、パターン部分のインク層が凸部となることにより形成されるものである。凹凸面124bは、ハウジング122の光通過面122aにおける開口122cと同等の大きさを有する楕円形状を成し、第1青色発光ダイオード127a及び第1橙色発光ダイオード127bの光を屈折・反射させ、光を散乱させる。本実施形態では、表示板124の両面、すなわち、第1光源127の光の入射面124c及び出射面124dに、入射面に印刷された複数の凸条124eと出射面に印刷された複数の凸条124fとが直交する態様で、凹凸面124bが形成されている。
【0035】
なお、シルク印刷によって施される凹凸面124bのパターンは、図4に示されているような直線状のものに限定されないのはもちろんであり、例えば、縮み模様やドット模様等、多種多様なパターンを印刷することが可能である。
【0036】
この凹凸面124bは、表示板124表面に直接シルク印刷をして形成するか、あるいは、予めシルク印刷された透光性を有するフィルム等を成型しておき、これを表示板124表面に貼り付けることにより形成することができる。また、凹凸面124bの周囲は、上記抜き文字124bの処理と同様にして、遮光性を有する塗装を施す等の処理がなされる。
【0037】
操作部材125は、押釦スイッチ120に個別に設けられたもので、透光性を有した材料からなり、釦基部125aと釦部125bと押圧操作面125cとから構成される。釦基部125aは、カバー部材112の前板部112aに形成された釦挿通孔112dよりも大きく、配線基板121の実装領域に実装した2つの接点部材126を覆うに十分な幅及び長さを有した矩形の外形形状に成形され、釦基部125aの外表面は、カバー部材112の内表面に倣って円弧状に膨出している。
【0038】
釦部125bは、操作部材125の裏面にパッキン123の釦装着部123c及び表示板124を嵌挿することのできる楕円形状の開口を有し、この開口から釦基部125aの表面側に向けて楕円の筒状に突設し、カバー部材112の釦挿通孔112dに嵌挿できる外形寸法に構成されている。釦基部125aの外表面からの釦部125bの突出高さは、カバー部材112の板厚よりも僅かに大きく構成され、釦部125bの先端面は、押圧操作面125cとなっている。図5は操作部材125の正面図であり、図5に示すように、押圧操作面125cは、第1光源127からの光が透過する部分、すなわち、販売可能表示点灯部125dと、第2光源128からの光が透過する部分、すなわち、抜き文字124aが表示される文字表示部125eとから構成される。
【0039】
上記のような構成を有する押釦装置100は、例えば以下のようにして組立てる。まず、パッキン123に設けられた釦装着部123cの内部にハウジング122を嵌挿させるとともに、パッキンの釦装着部123cの突出端面に表示板124を重ね合わせた状態でこれらを操作部材125の裏面側から釦125bの内部に嵌挿させることにより、ハウジング122、パッキン123、表示板124及び操作部材125を一体化させる。その後、ベース部材111の枠部111aに配線基板121を収容させた状態で装着溝111bにパッキン123の突条部123bを圧入することにより、ベース部材111に操作部材125が保持される。次に、カバー部材112の釦挿通孔112dに操作部材125の釦部125bを挿通させる態様でベース部材111をカバー部材112によって覆い、両者の間をレーザ溶着等の方法によって互いに接合することにより、ケーシング110が構成され、ケーシング110の内部に複数の押釦スイッチ120が操作可能に配設された押釦装置100が構成される。
【0040】
次に、上記構成を有する押釦装置100を自動販売機1に適用した場合の動作と作用について説明する。まず、紙幣投入口4や硬貨投入口5から投入された貨幣が商品の販売価格以上になった場合に、その商品に対応する押釦スイッチ120の第1光源127を駆動させる。この際、冷温状態に保持された商品に対応する押釦スイッチ120の場合には、第1青色発光ダイオード127aを駆動させ、暖温状態に保持された商品に対応する押釦スイッチ120の場合には、第1橙色発光ダイオード127bを駆動させる。
【0041】
第1青色発光ダイオード127a及び/又は第1橙色発光ダイオード127bを駆動させると、これらの出射光はハウジング122の光通過面122aを通過し、パッキン123の釦装着部123cを透過して表示板124の凹凸面124bに到達し、この凹凸面124bで屈折・反射して散乱し、散乱光となって押圧操作面125cを透過する。これにより、販売可能表示点灯部125dを点灯させ、販売可能な商品を利用者に明示する。
【0042】
次に、押圧操作面125cが押圧されると、パッキン123のスプリング部123eが弾性変形して、パッキン123の操作突起部123fを介して接点部材126が押圧され、これにより入力信号がメインコントローラに送出され、押圧された押釦スイッチ120に対応する商品が商品取出口7に払い出される。一方、押圧操作面125cの押圧が解除されると、スプリング部123eの弾性復元力によって、接点部材126の押圧も解除される。
【0043】
一方、販売する商品がなくなった場合には、その商品に対応する押釦スイッチ120の第2赤色発光ダイオード128aを駆動させ、また、販売する商品が適温状態に至っていない場合には、その商品に対応する押釦スイッチ120の第2橙色発光ダイオード128bを駆動させる。この場合、第2赤色発光ダイオード128a及び/又は第2橙色発光ダイオード128bの出射光は、光通過孔122fを通過し、反射面122bで反射した後、パッキン123、表示板124及び操作部材125の押圧操作面125cを順次透過する。そして、第2赤色発光ダイオード128aの透過光により、押圧操作面125cの文字表示部125eに「売切」の抜き文字を浮き上がらせることにより、図6に示すように「売切」の文字を表示する。また、第2橙色発光ダイオード128bの透過光により、文字表示部125eに「準備中」の抜き文字を浮き上がらせることにより、図7に示すように、「準備中」の文字を表示する。
【0044】
上記の押釦装置100によれば、第1光源127から出射される光が、表示板124上にシルク印刷により形成された凹凸面124bで屈折・反射して散乱し、散乱光となって押圧操作面125cを透過するので、釦部の広い範囲に斑なく光を透過させることができ、釦の視認性を向上させることができる。また、シルク印刷は、切削等の機械加工では施すことのできない高精細パターン(凹凸面)を施すことが可能であり、切削や成形等により形成した溝で散乱させた出射光による表示とは違った、これまでにない表示をすることが可能となる。従って、販売可能な商品を利用者に明示するという押釦本来の機能に加えて、利用者又は通行人の注意を引く機能を押釦に付与することができる。その結果、余計な設備等を追加することなく、押釦装置のみで利用者や通行人の注意を引くことが可能となる。
【0045】
また、従来のように、光源からの光を拡散させるためのレンズや、光を散乱させる散乱板等の部材を別途設ける必要がないので、部品点数を減らすことができ、製造コストを削減することができる。
【0046】
なお、上記実施形態では、表示板124の入射面124c及び出射面124d両面に凹凸面124bを形成したが、いずれか片面のみに形成してもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、表示板124に凹凸面124bを形成したが、これに限定されず、押釦スイッチ120を構成する他の部材の表面に凹凸面を形成してもよいのはもちろんである。例えば、配線基板121の表面、ハウジング122の光通過面122a、パッキン123の釦装着部123c及び操作部材125の押圧操作部125cに凹凸面を形成した場合も、上記実施形態と同様の効果が得られる。また、上記構成部材のうち複数の部材の表面に凹凸面を形成してもよい。なお、配線基板121やハウジング122の光通過面122aに凹凸面を形成する場合は、透光性を有するインクを用いる必要性はなく、例えば金属等の粒子からなる反射性のよいインクを使用することができる。
【0048】
また、上記実施形態では、紙幣投入口4や硬貨投入口5から投入された貨幣が商品の販売価格以上になった場合、すなわち利用者が商品を購入する場合に、第1光源127を駆動させて販売可能表示点灯部125dを点灯させたが、商品購入時以外の通常の待機時に、常に販売可能表示点灯部125dを点灯させておく構成としてもよい。
【0049】
さらに、上記実施形態では、操作部材125の押圧操作面125cの板材の厚みを均一にしたが、第1光源127からの光が透過する領域、すなわち、販売可能表示点灯部125dの厚みを連続的に変化させ、この部分をレンズ部として形成してもよい。この場合、中央部分の厚みを最も大きく形成した凸レンズとするのが好ましい。販売可能表示点灯部125dをレンズ部として構成することで、第1光源127からの透過光の美観性にさらに優れたものになる。
【0050】
さらに、上記実施形態では、自動販売機1において販売商品を選択するための押釦装置100を例示しているが、その他の用途にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態である押釦装置を適用した自動販売機の正面図である。
【図2】図1に示した押釦装置の分解斜視図である。
【図3】図1に示した押釦装置の要部断面図である。
【図4】図2に示した押釦装置を構成する表示板の正面図である。
【図5】図2に示した押釦装置を構成する操作部材の正面図である。
【図6】図2に示した押釦装置を構成する第2赤色発光ダイオードを発光させた場合を示した押釦スイッチの正面図である。
【図7】図2に示した押釦装置を構成する第2橙色発光ダイオードを発光させた場合を示した押釦スイッチの正面図である。
【符号の説明】
【0052】
100 押釦装置
125b 釦部
124b 凹凸面
127 光源(発光素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源となる発光素子と、
押動操作可能に配設され前記発光素子からの光が透過する釦部と
を具えた押釦装置において、
前記発光素子からの光が通過する範囲にシルク印刷による凹凸面を形成し、前記発光素子からの光を該凹凸面で散乱させて前記釦部から出射させるようにしたことを特徴とする押釦装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−66181(P2008−66181A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244227(P2006−244227)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】