説明

担体分離用スクリーン装置

【課題】散気量を増やすことなく、担体分離用スクリーンの閉塞防止を図ることができる担体分離用スクリーン装置を提供する。
【解決手段】担体投入型曝気槽1内に設けられた不透水性材料からなる仕切り板3と、仕切り板3の少なくとも一部に設けられた担体分離用スクリーン4とからなる担体分離用スクリーン装置であり、仕切り板3の上縁が曝気槽1の水面位置にあるか、あるいは水面上に突出するとともに、スクリーン4の上縁が、曝気槽1の水面より100mm以上下がった位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、担体分離用スクリーン装置、特に、廃水中の有機物および無機物を生物学的に浄化処理する際に、微生物固定化担体を用いる廃水処理設備において使用する担体分離用スクリーン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微生物固定化担体を投入することによって曝気槽内に微生物を保持させる、いわゆる担体投入型曝気槽は、標準活性汚泥法における曝気槽と比較して、有用でかつ増殖速度の大きなBOD除去菌等の微生物を高濃度に保持することが可能であり、しかも、有用でかつ増殖速度の小さな硝化菌等の微生物を高濃度に保持することが可能であるために、処理の高速化あるいは処理設備のコンパクト化を図ることができるという利点を有している。
【0003】
一方、担体投入型曝気槽においては、投入した微生物固定化担体が曝気槽外へ流出することを防止する必要があり、流出防止手段の一つとして、微生物固定化担体を投入した曝気槽の流出側に担体分離用スクリーンを設置するという手段が用いられている。
【0004】
図3に、担体分離用スクリーンが設置された曝気槽の部分断面図を示す。
【0005】
図3において、1は、微生物固定化担体(以下、単に、担体という)2が投入された曝気槽である。曝気槽1内には、仕切り板3が設けられ、仕切り板3に担体分離用スクリーン(以下、単に、スクリーンという)4が取り付けられている。スクリーン4は、処理水に混入した夾雑物質や曝気槽1に投入した担体2等からなる閉塞性物質によって閉塞し易い。このため、スクリーン4の閉塞を防止することが必要である。
【0006】
スクリーン4の閉塞防止手段としての従来法として、特許文献1には、図3に示すように、スクリーン4の近傍に気泡5を発生させる散気装置6を設置する技術が開示され、特許文献2には、図3に示すように、スクリーン4の近傍に循環液噴射装置7を設置する技術が開示され、特許文献3には、スクリーン4を閉塞した閉塞性物質をブラシ等を用いて機械的に押除去して清掃するという技術が開示されている。また、スクリーン4の近傍に散気装置6を設置する技術に関しては、図3に示すように、スクリーン4の近傍に間隔をあけて整流体8を設けて、効率的に閉塞を防止する技術が特許文献4に開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平3−38298号公報
【特許文献2】特開平10−128364号公報
【特許文献3】特開平6−238290号公報
【特許文献4】特開平10−128361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
スクリーン4の閉塞メカニズムの一つは、閉塞性物質が水の流れによって、スクリーン4面に押し付けられて密着し、水の流路面積を減ずることである。このため、閉塞性物質がスクリーン4面に密着しないように閉塞性物質をスクリーン4から剥離させることは、スクリーン4の閉塞防止のために有効な手段の一つである。
【0009】
しかしながら、スクリーン4面を散気することによって閉塞性物質の剥離性能を高めるという特許文献1に開示された方法は、以下のような問題点がある。
【0010】
スクリーン4面への散気は、担体等が存在するスクリーン4の上流側で行って、閉塞性物質をスクリーン4から剥離するが、この散気のためスクリーン4の上流側ではガスホールドアップ現象により、スクリーン4の下流側より水位が上昇する。この水位差(図3にTで示す)により、水面近傍ではスクリーン4の上流側から下流側に向かって大きな圧力差が生じる。この結果、閉塞性物質がスクリーン4面に強く押しつけられる現象が生じる。従って、このようにスクリーン4面に強く押し付けられて、強固に密着した閉塞性物質を剥離するには、散気空気量を多くするか、あるいは、図4に示すように、スクリーン4の両側に散気装置6を設置し、スクリーン4の下流側で上流側と同等量の散気を行って、水位差(T)を無くす必要がある。このため、スクリーン4面への散気量が多くなり、送風機の消費電力費の増大を招く。
【0011】
従って、この発明の目的は、上記のような問題点を解決するためになされたものであって、散気量を増やすことなく、担体分離用スクリーンの閉塞防止を図ることができる担体分離用スクリーン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。
【0013】
ガスホールドアップ現象により生じるスクリーン上流側と下流側との水圧の差は、水面近傍で最大になる。このため担体等の閉塞性物質は、水面近傍で最も強くスクリーン面に押し付けられることになる。このときの水位差(T)は、一般的に10mm〜100mmであることが多い。従って、100mm以上の深さに亘ってスクリーン面を塞げば、スクリーン上流側と下流側とに大きな水位差(T)が生じても、閉塞性物質がスクリーン面に強固に密着することを防止でき、この結果、少ない散気量で効率良く閉塞物質を剥離することが可能となる。
【0014】
この発明は、上記知見に基づきなされたものであって、下記を特徴とする。
【0015】
請求項1記載の発明は、担体投入型曝気槽内に設けられた不透水性材料からなる仕切り板と、前記仕切り板の少なくとも一部に設けられた担体分離用スクリーンとからなる担体分離用スクリーン装置であり、前記仕切り板の上縁が前記曝気槽の水面位置にあるか、あるいは水面上に突出するとともに、前記担体分離用スクリーンの上縁が、前記曝気槽の水面より100mm以上下がった位置に配置されていることに特徴を有するものである。
【0016】
請求項2に記載の発明は、担体投入型曝気槽内に設けられた不透水性材料からなる仕切り板と、前記仕切り板の上部部分に設けられ、その上縁が前記曝気槽の水面位置にあるか、あるいは水面上に突出する担体分離用スクリーンとからなる担体分離用スクリーン装置であり、前記担体分離用スクリーンの、少なくとも、前記曝気槽の水面から水面下100mmまでの範囲に対応する部分に不透水化手段を設けたことに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、水面から水面下少なくとも100mmまでの範囲に対応する部分を不透水部とすることによって、スクリーンの上流側と下流側とに大きな水位差が生じても、担体によるスクリーンの閉塞を防止することができ、少ない散気量で効率良く閉塞物質を剥離することが可能となる。特に、スクリーン下流側の散気を必要としていた条件の場合は、下流側の散気が不要となるので、より必要散気量の削減効果が大となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明の担体分離用スクリーン装置の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、この発明の担体分離用スクリーン装置が設置された曝気槽を示す部分断面図である。
【0020】
図1において、1は、微生物固定化担体(以下、単に、担体という)2が投入された曝気槽である。曝気槽1内には、コンクリート、金属、プラスチック等の不透水性材料からなる仕切り板3が設けられ、仕切り板3に担体分離用スクリーン(以下、単に、スクリーンという)4が取り付けられている。仕切り板3の上縁は、曝気槽1の水面(S)位置にあるか、あるいは水面(S)上に突出している。スクリーン4の上縁は、担体等の閉塞性物質が水面近傍で最も強くスクリーン面に押し付けられる、曝気槽1の水面(S)より(L)だけ下った位置に配置されている。(L)は、100mm以上とする必要がある。6は、スクリーン4の近傍に設置された散気装置であり、気泡5を発生させて、スクリーン4面に密着した担体2をスクリーン4から剥離する。
【0021】
水面(S)から水面(S)下少なくとも100mmまでの範囲に対応する部分(L)を不透水性材料からなる仕切り板3により不透水部とすることによって、ガスホールドアップ現象により、スクリーン4の上流側と下流側との水位差(図1にTで示す)が生じ、これによって、スクリーン4の上流側から下流側に向かって大きな圧力差が生じても、閉塞性物質がスクリーン4面に強固に密着することを防止することができる。しかも、スクリーン4面への担体2の強固な密着がないので、散気装置6からの少ない散気量で効率良く閉塞物質をスクリーン4面から剥離することが可能となる。特に、スクリーン4の下流側の散気が不要となるので、より必要散気量の削減効果が大となる。
【0022】
次に、この発明の他の担体分離用スクリーン装置の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図2は、この発明の他の担体分離用スクリーン装置が設置された曝気槽を示す部分断面図である。
【0024】
図2において、1は、微生物固定化担体(以下、単に、担体という)2が投入された曝気槽である。曝気槽1には、コンクリート、金属、プラスチック等の不透水性材料からなる仕切り板3が設けられ、仕切り板3の上部部分に担体分離用スクリーン(以下、単に、スクリーンという)4が取り付けられている。スクリーン4の上縁は、曝気槽1の水面(S)位置にあるか、あるいは水面(S)上に突出している。スクリーン4の、曝気槽1の水面(S)から水面(S)下少なくとも100mmまでの範囲に対応する部分は、不透水化手段としての閉塞板9により覆われている。閉塞板9は、コンクリート、金属、プラスチック等からなっている。この他、図1と同一番号は同一物を示し、説明は省略する。
【0025】
水面(S)から水面(S)下少なくとも100mmまでの範囲に対応する部分(L)のスクリーン4を閉塞板9により覆うことによって、ガスホールドアップ現象により、スクリーン4の上流側と下流側との水位差(図2にTで示す)が生じ、これによって、スクリーン4の上流側から下流側に向かって大きな圧力差が生じても、閉塞性物質がスクリーン4面に強固に密着することを防止することができる。しかも、スクリーン4面への担体2の強固な密着がないので、散気装置6からの少ない散気量で効率良く閉塞物質をスクリーン4面から剥離することが可能となる。特に、スクリーン4の下流側の散気が不要となるので、より必要散気量の削減効果が大となる。
【0026】
スクリーン4前後に生じた水位差を迅速に解消したい場合、閉塞板9を一時的に取り外すことにより、容易かつ迅速に水位差を解消することが可能である。
【0027】
上記何れの実施態様においても、スクリーン4全体を上流側から下流側へ向かう流れ方向の軸に対して60度から120度の角度で傾斜させても良い。また、この発明のスクリーン装置は、水深5m程度の通常の曝気槽のみならず水深10m程度の旋回流方式の深層曝気槽に設置しても良い。
【実施例】
【0028】
図1に示すような、散気装置が設置された担体投入型曝気槽内に、担体分離用スクリーン装置を設置して、スクリーンの閉塞を起こさずにスクリーン通過流速90m/hrで水を流すことができる散気量について試験を行った。
【0029】
この結果、閉塞板を有さない担体分離用スクリーン装置を設置した場合には、スクリーン前後合計で0.2〜0.3m3/min/m2程度の散気量が必要であったが、閉塞板により水面から200mmの深さまでプラスチック板によりスクリーン面を塞ぐことができる、この発明の担体分離用スクリーン装置を設置した場合には、スクリーン前面のみで0.1〜0.15m3/min/m2の散気でスクリーンの閉塞が起こらず、運転が可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の担体分離用スクリーン装置が設置された曝気槽を示す部分断面図である。
【図2】この発明の他の担体分離用スクリーン装置が設置された曝気槽を示す部分断面図である。
【図3】従来の担体分離用スクリーンが設置された曝気槽の部分断面図である。
【図4】担体分離用スクリーンの上流側および下流側で散気を行う曝気槽の部分断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1:曝気槽
2:微生物固定化担体
3:仕切り板
4:担体分離用スクリーン
5:気泡
6:散気装置
7:循環液噴射装置
8:整流体
9:閉塞板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体投入型曝気槽内に設けられた不透水性材料からなる仕切り板と、前記仕切り板の少なくとも一部に設けられた担体分離用スクリーンとからなる担体分離用スクリーン装置であり、前記仕切り板の上縁が前記曝気槽の水面位置にあるか、あるいは水面上に突出するとともに、前記担体分離用スクリーンの上縁が、前記曝気槽の水面より100mm以上下がった位置に配置されていることを特徴とする担体分離用スクリーン装置。
【請求項2】
担体投入型曝気槽内に設けられた不透水性材料からなる仕切り板と、前記仕切り板の上部部分に設けられ、その上縁が前記曝気槽の水面位置にあるか、あるいは水面上に突出する担体分離用スクリーンとからなる担体分離用スクリーン装置であり、前記担体分離用スクリーンの、少なくとも、前記曝気槽の水面から水面下100mmまでの範囲に対応する部分に不透水化手段を設けたことを特徴とする担体分離用スクリーン装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate