説明

担体流出防止装置

【課題】微生物を固定化する担体を用いた水処理槽において、簡易な構成で処理水の円滑な流出を可能にする担体流出防止装置を提供する。
【解決手段】整流板23,23…は、例えば金属や樹脂製の平板から構成されていればよい。こうした個々の整流板23は、整流板23とスクリーン22との成す間隔が、水流Wの上流側となる間隔Δp1が下流側となる間隔Δp2よりも狭められるように、スクリーン22の広がり面に対して傾斜して配置されていればよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を固定化させた担体が、水処理槽の槽外へ流出することを防ぐための担体流出防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機物やアンモニア性窒素などを含む汚水を浄化する際には、有機物酸化、硝化、脱窒などの各工程を経ることによって、汚水中に含まれる有機物やアンモニア性窒素などを低減させている。こうした水処理装置の各工程において、各処理槽内には処理に応じた種類の微生物を適切に存在させておく必要があり、従来は活性汚泥中に微生物を繁殖させていた。しかし、処理を行う汚水の流量が多くなると、汚水の流量に対応して多くの微生物が必要となり、処理槽が大型化してしまうという課題があった。
【0003】
こうした課題を解決するために、多孔質の担体を処理槽内に投入し、この担体に微生物を付着させた微生物固定化担体(以下、単に担体と称することがある)を用いることによって、処理槽内に高密度に微生物を存在させることを可能とし、小さな処理槽でも多くの汚水を処理可能な水処理装置も知られている(特許文献1)。
【0004】
このような担体を用いた水処理では、水処理槽の槽外へ担体が流出することを防ぐ必要がある。このため、従来こうした担体を用いた水処理では、水処理槽の流出口に網などのスクリーンを設けて、担体の流出を防止していた。しかしながら、こうした網などのスクリーンでは、水流によって担体がスクリーンに押し付けられ、流出口が閉塞されやすいという課題があった。
【0005】
このため、例えば特許文献2には、スクリーンの近傍にバッフルを形成すると共に、スクリーンの近傍で曝気させることによって、スクリーンへの担体の付着を防止した担体分離用スクリーン装置が記載されている。
【0006】
また、例えば特許文献3には、スクリーンに対して平行に整流体を形成すると共に、この整流体とスクリーンとの間で曝気させることにより、スクリーンへの担体の付着を防止した担体分離用スクリーン装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−337494号公報
【特許文献2】特許第3301299号公報
【特許文献3】特開平10−128361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献2に記載された担体分離用スクリーン装置では、スクリーンの近傍で、担体がスクリーンに付着されるのを阻止できるほど大きなエネルギーで過剰に曝気を行わなければならず、ランニングコストがかかり過ぎるという課題があった。
【0009】
同様に、特許文献3に記載された担体分離用スクリーン装置においても、スクリーンの近傍で大きなエネルギーで過剰に曝気を行わなければならない。また、曝気のエネルギーが小さいと、スクリーンと整流体との間に担体が詰まって閉塞してしまうという課題もある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、微生物を固定化する担体を用いた水処理槽において、担体の分離のためのエネルギーを必要とせず、簡易な構成で処理水の円滑な流出を可能にする担体流出防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は次のような担体流出防止装置を提供した。
すなわち、本発明の担体流出防止装置は、内部に水流が形成される水処理槽に投入された、微生物を固定化させた担体が、前記水処理槽の外部へ流出することを防止する担体流出防止装置であって、
前記担体の流出を阻止するスクリーンと、該スクリーンの前記水処理槽の内側近傍に配設された複数の整流板とを備え、個々の前記整流板においては前記スクリーンとの間隔が、前記水処理槽の水流の上流側が下流側よりも狭められるように配置されることを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、流出口に向かって流れ出す被処理水の水圧で、担体がスクリーンに押し付けられ、スクリーンが閉塞されることを確実に防止することができる。
【0013】
前記水処理槽の水流の最も上流側に配設された前記整流板においては、前記スクリーンとの前記上流側での間隙が閉じられるようにされているのが好ましい。
このような構成によれば、水流によって担体がスクリーンと複数の整流板との間に入り込んでスクリーンが閉塞されることを確実に防止することができる。
【0014】
前記水処理槽の水流の最も上流側に配設された前記整流板においては、前記スクリーンとの前記上流側での間隙が開閉可能なようにされているのが好ましい。
このような構成によれば、整流板の一端がスクリーンと密着して、最も上流側の整流板の上流側の間隔が閉じられた場合でも、例えば水処理槽の清掃などの際にこの間隔を開いて作業を容易にすることができる。
【0015】
前記整流板は、前記水処理槽の水流方向に応じて、前記スクリーンに対する角度を変化させることが可能であることが好ましい。
このような構成によれば、水流の方向が変わっても、これに応じて整流板とスクリーンとの間隔を上流側が下流側より常に狭められるようにすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の担体流出防止装置によれば、スクリーンの内側近傍で水流に対して上流側に位置する整流板の一端とスクリーンとの成す間隔が、水流に対して下流側に位置する整流板の他端とスクリーンとの成す間隔よりも小さくなるように、個々の整流板がスクリーンに対して傾斜して配置される。
【0017】
このように整流板を配置することによって、スクリーンの内側には水流の上流側から下流側に向かうに従いスクリーンから離れるように傾斜して配置された整流板の面が連続して並ぶように配列されて、水処理槽の内側から見てスクリーンが覆い隠された状態となり、水流に伴って流れる担体がスクリーンから離れることになるため、スクリーンを通って流出口から流出する被処理水の流れに乗って担体がスクリーンに到達することを防止することができる。
【0018】
こうした作用によって、担体がスクリーンに押し付けられてスクリーンが閉塞されることを確実に防止でき、かつ円滑に抵抗無く流出口から被処理水だけを流出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の担体流出防止装置を備えた水処理槽の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の担体流出防止装置の実施形態について説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0021】
図1は、本発明の担体流出防止装置を備えた水処理槽の一例を示す断面図である。水処理槽10は、例えば有機物やアンモニア性窒素を含んだ被処理水(汚水)などの水処理を行う有機物酸化槽、硝化槽、または脱窒槽などであればよい。
【0022】
本実施形態では、水処理槽10の一例として有機物酸化槽を例示する。水処理槽(有機物酸化槽)10は、好気状態において好気性微生物によって、被処理水中の有機物を空気中の酸素で酸化させ、水と二酸化炭素に分解する。
【0023】
水処理槽(有機物酸化槽)10は、被処理水15を貯留する水槽本体11と、微生物を固定化させた担体12と、水槽本体11内に空気Aを送り込む通気装置13と、担体12の流出を防止する担体流出防止装置21とを備えている。
【0024】
水処理槽10には、図1中の左上の流入部から被処理水15aが流入し、図1中の右上に形成された流出口19から被処理水15が流出される。
【0025】
担体(微生物固定化担体)12は、例えば、多孔質の基材に微生物を担持させたものである。有機物酸化槽であるならば、有機物を酸化させる好気性微生物を担持させればよい。こうした担体12を用いることによって、水処理槽10に高密度に微生物を存在させることができ、小さな槽容量で大きな水処理能力を得ることが可能になる。
【0026】
通気装置13は、水処理槽10内に貯留された被処理水15内に空気を送り込み、好気性微生物の活動を活性化するとともに、有機物の酸化に必要な酸素を供給する。図1中の左下に形成された通気装置13からの通気によって、水処理槽10内の被処理水15は図1中に示されるように、時計回り方向に旋回する水流Wが形成される。
【0027】
水処理槽10の流出口10aの内側に形成された本発明の担体流出防止装置21は、スクリーン22と、このスクリーン22の水処理槽10の内側近傍に配設された複数の整流板23,23…とから構成される。
【0028】
スクリーン22は、少なくとも担体12の外形寸法よりも小さい開口をもつ網部材(セパレータ)が好ましく挙げられる。スクリーン22は、例えば、流出口19の流出面に対して平行あるいは直角に広がるように設置されているのが好ましい。また、流出口19の流出面に対して傾斜して設置されていてもよい。
【0029】
整流板23,23…は、例えば金属や樹脂製の平板から構成されているのが好ましい。こうした個々の整流板23は、整流板23とスクリーン22との成す間隔が、水流Wの上流側となる間隔Δp1が下流側となる間隔Δp2よりも狭められるように、スクリーン22の広がり面に対して傾斜して配置されている。
【0030】
即ち、図1に示す実施形態においては、水処理槽10内の水流Wは、スクリーン22の内面側近傍では上方の水面から底部に向けた下方向の流れ(水流)となる。こうしたスクリーン22の内側近傍で、水処理槽10内を下方向に向かう水流Wに対して上流側に位置する整流板23の一端とスクリーン22との成す間隔Δp1が、下方向に向かう水流Wに対して下流側に位置する整流板23の他端とスクリーン22との成す間隔Δp2よりも小さくなるように、個々の整流板23がスクリーン22に対して傾斜して配置される。
【0031】
こうした整流板23は、スクリーン22に対して、例えば45度で傾斜するように、間隔Δp1および間隔Δp2が設定される。
【0032】
このように、スクリーン22と複数の整流板23,23…とから担体流出防止装置21を構成することによって、流出口19に向かって流れ出す被処理水15の水圧で、担体12がスクリーン22に押し付けられ、スクリーン22が閉塞されることを確実に防止することができる。
【0033】
即ち、スクリーン22の近傍を流れる水流Wの上流から下流に向かう方向に見ると、スクリーン22の内側にはこの水流Wの方向に向けてスクリーン22から離れる向きに傾斜して配置された整流板23,23…の面が連続して並ぶように配列され、水処理槽10の内側から見たときにはスクリーン22が覆い隠された状態となる。
【0034】
このため、水流に伴って流れる担体12は、スクリーンから離れることとなり、担体12がスクリーン22に到達することが少なくなる。
【0035】
こうした作用によって、担体12がスクリーン22に押し付けられてスクリーン22が閉塞されることを確実に防止でき、かつ円滑に抵抗無く流出口19から被処理水15を流出させることができる。これによって、高い処理効率で水処理を行うことができる。
【0036】
なお、水処理槽の水流の最も上流側を成す整流板とスクリーンとの間隙が閉じるように、整流板が配置されていても良い。具体的には、図1に示す個々の整流板23において、水流Wに対して上流側に位置する整流板23の一端とスクリーン22との成す間隔Δp1を0にする、即ち、水流Wに対して上流側に位置する整流板23の一端がスクリーンと密着、あるいは固着したような構成であっても良い。
【0037】
このような構成とすることにより、水流Wによって担体12がスクリーン22と複数の整流板23,23…との間に入り込むのを確実に防止することができる。
【0038】
また、水処理槽の水流の最も上流側を成す整流板とスクリーンとの間隙が開閉可能なように整流板を配置してもよい。具体的には、図1に示す個々の整流板23のうち最も上流側の整流板23において、水流Wに対して上流側に位置する整流板23の一端とスクリーン22との成す間隔Δp1が可変になるように、整流板23がスクリーンに対して可動となるような構成であっても良い。
【0039】
このような構成とすることにより、特に上述のように整流板23の一端がスクリーン22と密着して、最も上流側の整流板23の上流側の間隔が閉じられた場合でも水処理槽10の清掃などのときにはこの間隔を開いて作業を容易にすることができる。
【0040】
さらに、整流板は水処理槽の水流方向に応じて、スクリーンに対する角度を変化させてもよい。具体的には、図1に示す個々の整流板23を回動可能に軸着し、水流Wの方向に応じて、整流板23を回動させてもよい。この場合、整流板23を回動は、水流Wによる水圧で自然に回動させても、あるいは外部から操作部材などによって機械的に回動させても良い。また、整流板23を枠に固定し、水流が逆になればこの枠ごと逆向きになるような構成にしてもよい。
【0041】
このような構成とすることにより、後述する本発明の別な実施形態のように、水流Wの方向が変わっても、これに応じて整流板23とスクリーン22との間隔を上流側が下流側より狭められるようにすることができる。
【0042】
図2は、本発明の別な実施形態を示す断面図である。この実施形態では、水処理槽10の通気装置13を図2中の右下、即ち流出口19が形成されている側に配したものである。この通気装置13からの通気によって、水処理槽10内の被処理水15は図2中に示されるように、反時計回り方向に水流Wが形成される。
【0043】
従って、図2に示す実施形態においては、水処理槽10内の水流Wは、スクリーン22の内面側近傍では底部から上方の水面に向けた上方向の流れ(水流)となる。こうしたスクリーン22の内側近傍で、水処理槽10内を上方向に向かう水流Wに対して上流側に位置する整流板23の一端とスクリーン22との成す間隔Δp1が、上方向に向かう水流Wに対して下流側に位置する整流板23の他端とスクリーン22との成す間隔Δp2よりも小さくなるように、個々の整流板23がスクリーン22に対して傾斜して配置される。
【0044】
図3は、本発明の別な実施形態を示す断面図である。この実施形態では、担体流出防止装置21を構成するスクリーン22を、被処理水15の水面と平行に広がるように形成したものである。そして、水処理槽10の通気装置13を図3中の右下、即ち流出口19が形成されている側に配したものである。この通気装置13からの通気によって、水処理槽10内の被処理水15は図3中に示されるように、反時計回り方向に水流Wが形成される。
【0045】
従って、図3に示す実施形態においては、水処理槽10内の水流Wは、スクリーン22の内面側近傍では水面付近を右側から左側に向けて流れる水流となる。こうしたスクリーン22の内側近傍で、水処理槽10の水面付近を左方向に向かう水流Wに対して上流側に位置する整流板23の一端とスクリーン22との成す間隔Δp1が、左方向に向かう水流Wに対して下流側に位置する整流板23の他端とスクリーン22との成す間隔Δp2よりも小さくなるように、個々の整流板23がスクリーン22に対して傾斜して配置される。
【0046】
図4は、本発明の別な実施形態を示す断面図である。この実施形態では、担体流出防止装置21を構成するスクリーン22を、被処理水15の水面と平行に広がるように形成するとともに、水処理槽10の通気装置13を図4中の左下側に配したものである。この通気装置13からの通気によって、水処理槽10内の被処理水15は図4中に示されるように、時計回り方向に水流Wが形成される。
【0047】
従って、図4に示す実施形態においては、水処理槽10内の水流Wは、スクリーン22の内面側近傍では水面付近を左側から右側に向けて流れる水流となる。こうしたスクリーン22の内側近傍で、水処理槽10の水面付近を右方向に向かう水流Wに対して上流側に位置する整流板23の一端とスクリーン22との成す間隔Δp1が、右方向に向かう水流Wに対して下流側に位置する整流板23の他端とスクリーン22との成す間隔Δp2よりも小さくなるように、個々の整流板23がスクリーン22に対して傾斜して配置される。
【0048】
こうした図2〜4にそれぞれ示した実施形態においても、担体12が、流出口19に向かう水流に乗って整流板23どうしの隙間を通過してスクリーン22に到達する可能性は殆ど無く、担体12がスクリーン22に押し付けられてスクリーン22が閉塞されて詰まることを確実に防止でき、かつ円滑に抵抗無く流出口19から被処理水Wを流出させることが可能となる。
【0049】
なお、上述した各実施形態では、被処理水の水流を通気装置によって形成しているが、もちろんこれに限定されるものではなく、プロペラによる撹拌など、各種の水流形成手段によって水流を形成すればよい。
【符号の説明】
【0050】
10…水処理槽、12…担体(微生物固定化担体)、13…通気装置、15…被処理水、19…流出口、21…担体流出防止装置、22…スクリーン(セパレータ)、23…整流板。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に水流が形成される水処理槽に投入された、微生物を固定化させた担体が、前記水処理槽の外部へ流出することを防止する担体流出防止装置であって、
前記担体の流出を阻止するスクリーンと、該スクリーンの前記水処理槽の内側近傍に配設された複数の整流板とを備え、
個々の前記整流板においては前記スクリーンとの間隔が、前記水処理槽の水流の上流側が下流側よりも狭められるように配置されることを特徴とする担体流出防止装置。
【請求項2】
前記水処理槽の水流の最も上流側に配設された前記整流板においては、前記スクリーンとの前記上流側での間隙が閉じられるようにされていることを特徴とする請求項1記載の担体流出防止装置。
【請求項3】
前記水処理槽の水流の最も上流側に配設された前記整流板においては、前記スクリーンとの前記上流側での間隙が開閉可能なようにされていることを特徴とする請求項1または2記載の担体流出防止装置。
【請求項4】
前記整流板は、前記水処理槽の水流方向に応じて、前記スクリーンに対する角度を変化させることが可能であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の担体流出防止装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−125831(P2011−125831A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289423(P2009−289423)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】