説明

拡張可能なポートを有するトロカールシステム

【課題】患者の体内の目標箇所へ皮膚を貫通して貫通腔を形成し、その貫通腔を拡大する改良型の装置及び方法を提供する。
【解決手段】貫通腔を形成し、該貫通腔を拡大する貫通腔形成及び拡大装置であって、径方向へ拡張可能な管状編み紐20を備え、基端部と終端部と第一断面積を有する軸線方向の内腔とを有する長い拡張部材10と、該拡張部材の終端部に設けられ、該拡張部材が皮膚を貫通して進められると組織に腔を開ける組織腔開け手段と、終端部と基端部と第二断面積を有する軸線方向の内腔とを有する一定半径の管状要素を備えた長い拡大部材と、該拡大部材の終端部に設けられ、前記管状要素を該拡張部材の軸線方向の内腔へ容易に挿入できるようにする挿入促進手段とを具備することを特徴とする貫通腔形成及び拡大装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して外科手術において体内の処置箇所へ皮膚を貫通してアクセスできるようにする装置及びその方法に関する。特に本発明は、小さな直径で皮膚を貫通して挿入され、その挿入後に容易に広げられ、さらに大きい直径の外科器具を通す通路を提供するトロカールシステムに関する。
【0002】
通常トロカールと呼ばれる小さな直径(典型的には5mm〜12mm)のアクセスチューブを用いて体内の処置箇所へ皮膚を貫通してアクセスすることにより、外科手術の際の外傷を最小限にしており、トロカールは皮膚を貫通し、所望の処置箇所へ開放されている。外科医は、このようなトロカールの一つに視鏡を通し、適切な場所に配置された別のトロカールに通した器具を用いると共に、視鏡に接続されたビデオモニターで処置箇所を監視しながら手術を行う。したがって外科医は処置箇所でほんの幾つかの5mm〜12mmの穴を開けるだけで幅広い外科手術を行うことができる。したがって患者の外傷が小さく、回復にかかる時間は非常に短くなる。
【0003】
外傷を特に最小限に押さえた外科手術は、処置箇所である体の部分を観察するのに用いられる視鏡に基づいて呼ばれることが多い。したがって観察のために腹腔鏡を用いた腹部手術は腹腔鏡法と呼ばれる。このような腹腔鏡法での患者の腹部は典型的に(加圧された二酸化炭素又は窒素ガスを)注入され、腹壁が持ち上がり、所望の処置を行うのに十分な処置空間が形成される。したがって注入ガスの漏れを防ぎつつ視鏡や外科器具を通すことができるよう、腹腔鏡法で用いられるトロカールは基端部に弁を備えていなければならない。またガス注入によるのではなく腹部を機械的に拡大することで腹腔鏡法を行うことも提案されている。
【0004】
外傷を最小限に押さえた他の外科手術は、胸部で行われる胸腔鏡法、体の関節、特に膝で行われる関節鏡法、婦人科学における腹腔鏡法、及び典型的には可撓性を有する視鏡を用いて体の様々な部分で行われる内視鏡外科手術を含む。これら後者の手術では通常加圧は採用されておらず、使用されるトロカールは概してその基端部に圧力弁は備えていない。
【0005】
適切なトロカールの設計においては、特に加圧環境での腹腔鏡法で使用されるのに対する多くの条件を満たさなければならない。全てのトロカールは、外傷を最小限に且つ内蔵を傷つける危険性を最小限に押さえつつ患者の体内へ挿入されるべきである。腹腔鏡法で用いられるトロカールは腹部からガスが漏れないよう素早くシール可能であり、特に腹壁に通されたトロカールの外周を覆う領域での漏れを防ぐように設計されているべきである。またトロカールは皮膚を通過する通路内に固定する手段を有することが望ましく、一つのトロカールに広範囲の断面形状及びサイズを有する複数の器具を収容させるならば特に望ましい。
【0006】
今日までトロカールの設計は、様々な結果を備えた上述で挙げた条件を満たしていた。様々な大きさの器具を収容することは、異なる固定直径を有するトロカールによってなされてきた。大抵の場合、外科医は普通10mm〜12mmの最も大きいトロカールを挿入し、ゴム製のアダプタを用いて(トロカールの最大寸法以内の大きさの)殆ど又は全ての器具を収容する。このような方法は適しているが、大きいサイズのトロカールを挿入するため、トロカールを使用する場合よりも、患者が大きな外傷を受け、傷つく危険性が高い。
またトロカールの外周の周りでの外側シールは適切に取り組まれでこなかった。あるトロカールの設計では、その外周の周りにテーパ付きの螺旋ねじを採用している。この螺旋ねじは固定するには有用であるが、加圧された注入ガスの損失を防ぐのにシールするためにトロカールの穴を非常に大きくしてしまう。マルコー構造(malecot structure)のような他の固定具をトロカールの終端部で用いたものもあり、固定するには有用であるが、圧力損失に対しあまりシールできない。
【0007】
これらの理由で、比較的小さな穴(好ましくは5mmより小さい)を介して容易に患者に挿入でき、径方向へ拡張して(選択可能にはその後小さくなる)広範囲の大きさの器具を収容でき、そしてトロカールの外周の周りでのシールを改善し且つ手術処置の目標箇所内に固定できるような、腹腔鏡や他の外傷を最小限に押さえた外科手術で使用するのに適したトロカールを提供することが望ましい。
【背景技術】
【0008】
本発明の譲渡人に譲渡された米国特許第5,183,464号には、長い拡大チューブを収容する長い拡張チューブを有する径方向へ拡張可能な拡張部材が開示されている。欧州特許出願番号第385920号には血管から狭窄材料を捕らえて取り除く目的の種々の直径の編み紐構造が開示されている。米国特許第5,122,122号には、終端部にマルコー構造を有するトロカールスリーブが開示されている。腹腔鏡法で使用されるトロカールはコネチカット州ノーウォーク(Norwalk)のユナイテッドステイツサージカルコーポレーション(United States Surgical Corp.)、コネチカット州シェルトン(Shelton)のクーパーサージカルインコーポレイティド(Cooper Surgical,Inc.)のエンドムドデビジョン(Endomed division)、テキサス州フォートウォース(Fort Worth)のデキサイドインコーポレイティド(Dexide Inc.)のような供給者から商業的に入手可能である。
【0009】
米国特許第4,738,666号には、外側鞘を有する拡張可能なカテーテルが開示されており、外側鞘には、カテーテルが拡張すると取り外し易いよう穴が設けられている。米国特許第4,601,713号には、終端部に膨張可能な保持バルーンを有する種々の直径のカテーテルが開示されている。カテーテルには、つぶれた(直径の小さくなった)状態でカテーテルを保持する内部スタイレットが導入される。この内部スタイレットを取り外すことで、カテーテルは拡張する。米国特許第4,141,364号には、拡張可能な気管内チューブが開示されており、この気管内チューブはつぶれた状態で挿入され、空気が導入されると拡張した状態にさっと戻る(spring back)。米国特許第4,589,868号と米国特許第2,548,602号には膨張可能な拡張装置が開示されている。
【0010】
米国特許第4,986,830号、米国特許第4,955,895号、米国特許第4,896,669号、米国特許第4,479,497号、米国特許第3,902,492号には拡張可能な構造を有するカテーテルが開示されている。
【0011】
米国特許第4,772,266号には、アクセス腔を拡大するために内在案内ワイヤへ押圧される拡張/鞘組立体が開示されており、鞘が入ることによって腔がさらに拡大される。米国特許第1,213,001号には、スリーピース構造を形成する中間チューブを有するトロカール・カニューレ組立体が開示されている。米国特許第3,742,958号には、軸線方向のスロットを有するカニューレが開示されており、ここではカニューレに導入された作業カテーテルからカニューレを取り外すことができる。米国特許第4,888,000号、米国特許第4,865,593号、米国特許第4,581,025号、米国特許第3,545,443号、米国特許第1,248,492号には、各々、体内空洞、血管又は固い組織の皮膚を貫通した腔開けに適した装置が開示されている。この段落で引用した各米国特許の開示内容は本願にも含まれている。
【0012】
米国特許第4,899,729号には、皮膚を貫通して導入され、その後内部シリンダを進めることにより拡張するコイル状の円錐鞘を有する拡張可能なカニューレが開示されている。米国特許第4,716,901号には、先端の尖った終先端を有する一対の対向した構成要素を具備し、基部分が弾性スリーブで覆われた(トロカール弁を備えていない)拡張可能なトロカールが開示されている。
【0013】
米国特許第4,846,791号には、弾性外側スリーブと、挿入されたときスリーブを拡張する内部分割部材とを有するマルチ内腔カテーテルが開示されている。また米国特許第668,879号、米国特許第3,789,852号、米国特許第4,411,655号、米国特許第4,739,762号、米国特許第4,798,193号、米国特許第4,921,479号、米国特許第4,972,827号、米国特許第5,116,318号、米国特許第5,139,511号を参照して頂きたく、これらは、米国特許第5,183,464号の記述からのものであり、本発明の譲渡人に譲渡されたている。
【0014】
終端部に固定具を有する案内部材を有する拡張部材組立体は、本発明の譲渡人に譲渡された係属中の米国特許出願番号第07/616,122号及び米国特許出願番号第07/913,129号に開示されており、これらの開示内容は本願にも含まれている。剥き取り可能な鞘は本発明の譲渡人に譲渡された係属中の米国特許出願番号第07/967,602号に開示されており、この開示内容は本願にも含まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的の1つのは、患者の体内の目標箇所へ皮膚を貫通して貫通腔を形成し、その貫通腔を拡大する改良型の装置及び方法が提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
1.貫通腔を形成し、該貫通腔を拡大する貫通腔形成及び拡大装置であって、径方向へ拡張可能な管状編み紐を備え、基端部と終端部と第一断面積を有する軸線方向の内腔とを有する長い拡張部材と、該拡張部材の終端部に設けられ、該拡張部材が皮膚を貫通して進められると組織に腔を開ける組織腔開け手段と、終端部と基端部と第二断面積を有する軸線方向の内腔とを有する一定半径の管状要素を備えた長い拡大部材と、該拡大部材の終端部に設けられ、前記管状要素を該拡張部材の軸線方向の内腔へ容易に挿入できるようにする挿入促進手段とを具備することを特徴とする貫通腔形成及び拡大装置。
2.前記長い拡張部材は前記拡張可能な管状編み紐を覆って形成された取り外し可能な鞘をさらに有し、該鞘は前記管状編み紐を覆いつつ前記拡張部材が皮膚を貫通して進められ、その後、取り外され、腔が形成された組織に前記管状編み紐を露出することを特徴とする項目1に記載の貫通腔形成及び拡大装置。
3.前記組織腔開け手段は先端の尖った終端部を有する長い貫通腔形成要素を具備し、前記拡張部材の軸線方向の内腔内に取り外し可能に収容され、前記先端の尖った終先端は前記拡張部材から終端部方向へ延びることを特徴とする項目1に記載の貫通腔形成及び拡大装置。
4.前記長い拡大部材はその終端部近傍に拡大可能な固定部をさらに有することを特徴とする項目1に記載の貫通腔形成及び拡大装置。
5.前記挿入促進手段は前記拡大部材の軸線方向の内腔に取り外し可能に収容されたテーパ付き終端部を有するロッドを具備し、該テーパ付き終端部は、前記ロッドが完全に挿入されたとき、前記拡大部材から終端部方向へ延びることを特徴とする項目1に記載の貫通腔形成及び拡大装置。
6.径方向へ拡張可能なトロカールシステムであって、 基端部と終端部とを有し、第一断面積を有する軸線方向の内腔を有する径方向へ拡張可能な管状編み紐を有する長い拡張部材と、 基端部と先端の尖った終端部とを有する長い貫通腔形成要素と、該貫通腔形成要素は前記管状編み紐の軸線方向の内腔内に取り外し可能に収容され、前記先端の尖った終先端は前記長い拡張部材の終端部から終端部方向へ延びており、 基端部とテーパ付き終端部とを有し、前記管状編み紐の第一断面積よりも大きい断面積を有する軸線方向の内腔を有する一定半径の管状要素を有する第一の長い拡大部材と、 該第一の長い拡大部材の基端部に取り外し可能に取り付けられたトロカール弁とを具備しており、該トロカール弁は前記一定半径の管状要素の前記軸線方向の内腔の終端部に配置されていることを特徴とするトロカールシステム。
7.前記径方向へ拡張可能な管状編み紐は非弾性フィラメントからなるメッシュを具備し、前記管状編み紐の長さはその半径が大きくなると短くなることを特徴とする項目6に記載のトロカールシステム。
8.前記長い拡張部材は前記管状編み紐を覆う取り外し可能な鞘を有し、前記拡張可能な管状編み紐はその基端部で第一取っ手に取り付けられ、前記取り外し可能な鞘はその基端部で第二取っ手に取り付けられ、前記第二取っ手は前記第一取っ手の終端部方向へ位置し、前記第二取っ手を用いて前記管状編み紐を覆う前記鞘を取り外すことが可能であることを特徴とする項目7に記載のトロカールシステム。
9.前記取り外し可能な鞘は両側部又は一方の側部のみに軸線方向へ切り目を付けられた円筒形の重合体チューブであり、前記第二取っ手は前記重合体チューブの軸線方向の切り目と整列した位置で弱くなっており、前記鞘を取り外し易いように前記鞘及び前記取っ手を割ることが可能である項目8に記載のトロカールシステム。
10.前記拡張部材の前記管状編み紐は弾性又は熱可塑的に変形可能なマトリックス層の編み紐フィラメントを具備する積層構造であることを特徴とする項目7に記載のトロカールシステム。
11.前記長い貫通腔形成要素はその終端部に後退可能なオブトラトールを有する針部材であることを特徴とする項目6に記載のトロカールシステム。
12.前記長い拡大部材は前記管状要素の軸線方向の内腔に取り外し可能に収容されたテーパ付き終端部を有するロッドをさらに有し、該テーパ付き終端部は、前記ロッドが前記管状要素に完全に収容されたとき、前記管状要素から終端部方向へ延びることを特徴とする項目6に記載のトロカールシステム。
13.前記一定半径の管状要素はの終端部付近に拡大可能な固定部をさらに有することを特徴とする項目12に記載のトロカールシステム。
14.前記長い拡大部材は前記拡大部材の前記内腔へ開放したコネクタをその基端部にさらに有し、該コネクタは前記トロカール弁を着脱可能に取り付けることを特徴とする項目6に記載のトロカールシステム。
15.前記コネクタは差込み式適合具であることを特徴とする項目14に記載のトロカールシステム。
16.前記トロカールシステムは軸線方向の通路を備えたボディを有する弁本体と、前記軸線方向の通路に設けられ、該通路を通る圧力損失を防ぐ弁手段と、前記ボディに設けられ、前記軸線方向の通路と整列し、前記ボディを前記長い拡大部材の基端部へ取り外し可能に取り付ける取付け手段とを具備することを特徴とする項目6に記載のトロカールシステム。
17.少なくとも1つの付加的な長い拡大部材と、基端部と、テーパ付き終端部とをさらに有し、前記管状編み紐の断面積よりも大きく且つ前記第一の長い拡大部材の断面積とは異なる断面積を有する軸線方向の内腔を有する一定半径の管状要素を有することを特徴とする項目6に記載のトロカールシステム。
18.径方向へ拡張可能な拡張部材と、該拡張部材の軸線方向の内腔を通って挿入可能な長い拡大部材とを有する改良型の径方向へ拡張可能な拡張器であって、前記改良は、非弾性のフィラメントのメッシュを具備する径方向へ拡張可能な管状編み紐を有する拡張可能な拡張器を具備し、該管状編み紐の長さは、径方向へ拡張すると短くなることを特徴とする拡張器。
19.前記拡張手段が前記管状編み紐を覆う取り外し可能な鞘をさらに具備することを特徴とする項目18に記載の改良型の径方向へ拡張可能な拡張器。
20.前記拡張部材の前記管状編み紐が、弾性又は熱可塑的に変形可能なマトリックス層の編み紐フィラメントを具備する積層構造であることを特徴とする項目18に記載の改良型の径方向へ拡張可能な拡張器。
21.基端部にトロカール弁を有する一定半径の管状要素を有するタイプの改良型のトロカールであって、該改良が、前記トロカール弁を着脱可能に取り付ける取付け手段を有する異なる一定半径の複数の管状要素と、該複数の管状要素を選択的に収容し且つ該管状要素に適合する径方向に拡張可能な軸線方向の内腔を形成する形成手段とを具備し、該形成手段が、管状部材を導入し且つ相互に交換するためのアクセス内腔を提供するよう皮膚を貫通して導入されると共に、前記トロカール弁が、導入されたあと各管状部材へ選択可能に取り付けられることを特徴とする改良型のトロカール。
22.前記形成手段は、径方向へ拡張可能な長い管状編み紐と、前記管状編み紐の終端部に設けられ、該管状編み紐が皮膚を貫通して進められると組織に腔を開ける組織腔開け手段とを具備することを特徴とする項目21に記載の改良型のトロカール。
23.前記組織腔開け手段は、先端の尖った終先端を有する貫通孔形成要素であって、径方向へ拡張可能な長い管状編み紐の軸線方向の内腔内に取り外し可能に収容される長い貫通腔形成要素を具備することを特徴とする項目22に記載の改良型のトロカール。
24.各管状要素は、その軸線方向の内腔に収容されるロッドを有し、該ロッドは前記管状要素の終端部から終端部方向へ延びるテーパ付き終端部であって、前記径方向へ拡張可能な長い管状編み紐の前記軸線方向の内腔への挿入を容易にするテーパ付き終端部を有することを特徴とする項目23に記載の改良型トロカール。
25.患者の体内の目標箇所へ皮膚を貫通した貫通腔を形成し、該貫通腔を拡大する貫通腔形成及び拡大方法であって、 組織を通って目標位置まで長い拡張部材を貫通する貫通工程であって、該拡張部材が非弾性フィラメントのメッシュで形成された管状編み紐を有し、前記非弾性フィラメントが径方向へ拡張するとその長さが軸線方向へ短くなる貫通工程と、 前記管状編み紐の内腔に第一の一定半径の管状要素を挿入する挿入工程であって、該管状要素の前記内腔が前記管状編み紐の前記内腔の断面積よりも大きい断面積を有し、前記メッシュが短くなることで前記拡張部材が組織に固定される挿入工程とを具備することを特徴とする貫通腔形成及び拡大方法。
26.径方向へつぶれるが概して軸線方向へは固定されたままである前記管状編み紐の前記内腔から前記第一の一定半径の管状要素を取り外す取外し工程と、前記管状編み紐の前記内腔に第二の一定半径の管状要素を挿入する挿入工程であって、該第二の一定半径の管状要素の断面積が、前記第一の一定半径の管状要素の断面積とは異なる挿入工程とを具備することを特徴とする項目25に記載の貫通腔形成及び拡大方法。
27.前記第二の管状要素の断面積は前記第一の管状要素の断面積よりも大きいことを特徴とする項目26に記載の貫通腔形成及び拡大方法。
28.前記第二の管状要素の断面積は前記第一の管状要素の断面積よりも小さいことを特徴とする項目26に記載の貫通腔形成及び拡大方法。
29.前記長い拡張部材は前記管状編み紐を覆って配置されたカバーを具備し、当該貫通腔形成及び拡大方法は、前記管状要素を挿入するまえに前記管状編み紐を露出するために前記カバーを取り外す取外し工程を具備することを特徴とする項目25に記載の貫通腔形成及び拡大方法。
30.前記カバーは、前記管状編み紐を割り、剥き、引き抜くことにより取り外される重合体材料からなる薄壁シートであることを特徴とする項目29に記載の貫通腔形成及び拡大方法。
31.前記長い拡張部材は、先端の尖った終先端を有する長い貫通腔形成要素を具備し、該終先端は前記拡張可能な管状編み紐の軸線方向の内腔内に取り外し可能に収容され、前記管状編み紐の軸線方向の内腔から終端部方向へ延び、当該貫通腔形成及び拡大方法は、前記拡張部材を貫通させたあとで且つ第一の半径一定の管状要素を挿入するまえに前記管状編み紐から前記長い貫通腔形成要素を取り外す取外し工程を具備することを特徴とする項目25に記載の貫通腔形成及び拡大方法。
32.前記第一の半径一定の管状要素は、その軸線方向の内腔に取り外し可能に収容されたテーパ付き終端部を有するロッドを有しており、該テーパ付き終端部は前記管状要素から終端部方向へ延び、前記管状編み紐の前記軸線方向の内腔への挿入を容易にし、当該貫通腔形成及び拡大方法は、アクセス路を残したまま前記管状要素から前記ロッドを取り外す取外し工程を具備することを特徴とする項目25に記載の貫通腔形成及び拡大方法。
33.前記管状編み紐の前記メッシュが弾性又は熱可塑的に変形するマトリックスで積層にされていることを特徴とする項目25に記載の貫通腔形成及び拡大方法。
【0017】
本発明に従うと、患者の体内の目標箇所へ皮膚を貫通して貫通腔を形成し、その貫通腔を拡大する改良型の装置及び方法が提供される。装置は径方向へ拡張可能な管状編み紐を有する長い拡張部材と、長い拡張部材の軸線方向の内腔へ収容された長い拡大部材であって、管状編み紐を径方向へ拡張し、その拡張したアクセス内腔を提供する拡大部材とを有する。長い拡張部材は終端部近傍に腔開け手段をさらに有しており、この腔開け手段は、典型的には管状編み紐の軸線方向の内腔に取り外し可能に収容された先端の尖った終先端であって、軸線方向の内腔から終端方向へ延びる終先端を有する長い貫通腔形成要素である。したがって長い拡大部材は皮膚に腔を開けることにより皮膚を貫通して導入される。それから貫通腔形成部材は取り除かれて長い拡大部材を導入することができる。長い拡大部材は所望のアクセス路を形成する軸線方向の内腔を有する一定半径の管状部材を有する。
【0018】
長い拡張部材の拡張可能な編み紐は、固定機能とシール機能との両方を提供する。好ましくは非弾性重合体、ステンレス鋼、又は他のフィラメントから形成されたメッシュの形態の管状編み紐の長さは、それが径方向へ拡張すると短くなり、編み紐が接触する組織のところで編み紐を締め、又は係止する。径方向の拡張と相まって編み紐が締まると、組織の層が分離することが防止され、皮膚を貫通した腔内に長い拡張部材を良好に固定し、腹腔鏡法で用いられる注入ガス圧力の損失を防ぐための周面シールを高める。長い拡張部材の管状編み紐のさらなる利点は、長い拡大部材がそこから引き抜かれても所定位置に残るということである。したがって異なる断面積と形状とを有する長い拡大部材は管状編み紐の内腔へ導入され、且つ引き出されて、所望のようにアクセス内腔の断面積を変えることが可能である。編み紐の外側の組織は、このような編み紐の直径の変化を受けるべく、適切に伸びたり、弛緩したりすることが可能である。
【0019】
本発明の好ましい局面では、長い拡張部材は初期に皮膚を貫通して導入することを容易にするために編み紐を覆って形成された取り外し可能な保護鞘を具備する。長い拡張部材が所定位置に配置されたあと、保護鞘は管状編み紐が拡張する前、拡張中、又は拡張後のいずれかに取り外される。例として挙げた実施例においては、取り外し可能な鞘は、管状編み紐が径方向へ拡張したあと軸線方向へ割られて、鞘の割れた部分は拡張後に取り除かれる。
【0020】
本発明の第二の好ましい局面では、長い拡大部材は、一定半径の管状要素の軸線方向の内腔に取り外し可能に収容されるテーパ付き終端部を有するロッドをさらに有する。このテーパ付き終端部は管状要素から終端部方向へ延び、したがって管状編み紐の軸線方向の内腔へ拡大部材を導入することが容易になる。ロッドは管状編み紐へ導入されたあと管状要素から引き抜かれるが、皮膚を経由した所望のアクセス路として管状要素の内腔は利用可能な状態にある。
【0021】
本発明のさらなる好ましい局面では、長い拡大部材は、その基端部にトロカール弁を取り付ける手段を有する。典型的にはトロカール弁は拡大部材へ取り外し可能に取り付けられ、処置中に交換されても異なる断面積を有する異なる長い拡大部材で同じトロカール弁を使用することができる。
本発明のさらなる好ましい局面においては、長い貫通孔形成手段は、その終端部に後退可能なオブトラトールを有する針部材である。オブトラトールは、針部材が皮膚を貫通すると後退させられ、針部材が患者の体内へ入ると直ぐに前方へ延び、したがって針部材による不意の外傷から患者を守るのに役立つ。例として挙げた針部材はガス注入装置で一般的に使用されるタイプのベレスニードル(Veress needle)である。
【0022】
本発明は径方向へ拡張可能な拡張部材を有するタイプの改良型の径方向へ拡張可能な拡張器と、拡張部材の軸線方向の内腔へ挿入可能な長い拡大部材とを提供する。この改良には、取り外し可能な鞘によって覆われた径方向へ拡張可能な管状編み紐を有する拡張可能な拡張部材を具備することが含まれる。好ましくは管状編み紐は非弾性重合体又は金属製のフィラメントからなる開口メッシュを具備し、したがって管状編み紐の長さはその径が増加すると短くなる。
【0023】
本発明は一定半径の管状要素と、その管状要素の基端部に配置されたトロカール弁とを有する改良型のトロカールをまたさらに提供する。この改良には、異なる一定径を有する複数の管状要素と、基端部においてトロカール弁を取り付ける相互変換可能な手段とを提供することを含む。トロカールは上述の複数の管状要素の特定の1つを選択的に収容し且つ一致する径方向へ拡張可能な軸線方向の内腔を形成する手段をさらに具備し、この形成する手段は皮膚を貫通して導入されて、管状部材を導入し且つ相互変換するためのアクセス内腔を提供し、トロカール弁はそれが導入されたあと管状要素へ選択可能に取り付けられる。好ましくは形成手段は、編み紐が皮膚を貫通して進められると終端部において組織に腔を開ける手段を有する長い径方向へ拡張可能な管状編み紐を具備する。
【0024】
本発明に従った方法は、患者の体内の目標箇所へ体の皮膚面へ長い拡張部材を貫通させることを具備する。選択可能にはカバーが拡張部材から取り外されて、体の皮膚面から目標箇所へ延びる軸線方向の内腔を有する径方向へ拡張可能な管状編み紐を露出する。それから第一の一定半径の管状要素は管状編み紐の内腔へ挿入され、管状編み紐はそれ自体を皮膚を貫通した腔内に固定するよう拡張する。したがって管状要素は拡大した断面積を有するアクセス内腔を提供する。選択可能には、この方法には、第一の一定半径の管状要素を取り外し、第一の管状要素の断面積とは異なる断面積の内腔を有す第二の一定半径の管状要素を挿入することが含まれるこのように所望の断面積を有するアクセス内腔が同じ箇所に導入されると共に、患者の傷が最小限になる。組織の擦り傷は、管状編み紐を通って第二の管状要素を摺動することにより少なくなり、又は排除され、新しい皮膚を貫通した腔を形成する必要はない。
【発明の効果】
【0025】
本発明によって、患者の体内の目標箇所へ皮膚を貫通して貫通腔を形成し、その貫通腔を拡大する改良型の装置及び方法が提供された。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は本発明の原理に従って構成されたトロカールシステムの第一構成要素の側面図である。第一構成要素は軸線方向の内腔に収容された長い貫通要素を有する長い拡張要素を有する。
【図2】図2は図1の領域2−2の断面図である。
【図3】図3は図1の構成要素の一部を除いた基端部の詳細図である。
【図4】図4は本発明の原理に従って構成され、本発明のトロカールシステムの第二構成要素を形成する第一の長い拡張部材を示す図である。
【図5】図5は図4の線5−5に沿った終端突起の詳細な断面図である。
【図6】図6は、テーパ付き終端部を有するロッドがこの構造の内腔から除かれたところを除いて図5と同様な図であって、拡大された固定手段を破線で示した図である。
【図7】図7は直径がより大きいことを除いて図4の第一の長い拡張部材と同様な第二の長い拡張部材を示す図である。図7の第二の拡張部材は拡大した固定部材を破線で示し、内部のテーパ付きロッドを取り除いて示す。
【図8】図8は一部を省略した図8の拡張部材の基端部であって、そこに取り付けられたトロカール弁を備えた基端部の拡大図である。
【図9】図9は図1の長い拡張チューブを拡張し、編み紐の周りの鞘を割る図4又は図7の長い拡張部材の使用を示す。
【図10−1】図10は終端固定部材を拡大及び展開したあとの図9の長い拡張部材を示す。
【図10−2】図10は終端固定部材を拡大及び展開したあとの図9の長い拡張部材を示す。
【図11】図11及び図12はそれぞれ長い拡張部材の管状編み紐が径方向へ拡張されていない形状と、径方向へ拡張された形状とを示す。
【図12】図11及び図12はそれぞれ長い拡張部材の管状編み紐が径方向へ拡張されていない形状と、径方向へ拡張された形状とを示す。
【図12A】図12Aは径方向への拡張に対する図11及び図12の管状編み紐の短くなる程度を示すグラフである。
【図13】図13〜図20は皮膚に貫通腔を形成し、その貫通腔を拡大するトロカールシステムの使用を示す。
【図14】図13〜図20は皮膚に貫通腔を形成し、その貫通腔を拡大するトロカールシステムの使用を示す。
【図15】図13〜図20は皮膚に貫通腔を形成し、その貫通腔を拡大するトロカールシステムの使用を示す。
【図16】図13〜図20は皮膚に貫通腔を形成し、その貫通腔を拡大するトロカールシステムの使用を示す。
【図17】図13〜図20は皮膚に貫通腔を形成し、その貫通腔を拡大するトロカールシステムの使用を示す。
【図18】図13〜図20は皮膚に貫通腔を形成し、その貫通腔を拡大するトロカールシステムの使用を示す。
【図19】図13〜図20は皮膚に貫通腔を形成し、その貫通腔を拡大するトロカールシステムの使用を示す。
【図20】図13〜図20は皮膚に貫通腔を形成し、その貫通腔を拡大するトロカールシステムの使用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は多くの目的で患者の体内の様々な目標箇所へ皮膚を貫通した貫通腔を形成し、その貫通腔を拡大するのに有用である。このような目的はドレナージ、内蔵への薬物投与、栄養補給、灌流、吸引などを含み、これら殆どにおいては通常、腹腔鏡法、胸腔鏡法、関節鏡法、内視鏡法など、外傷を最小限に押さえた外科手術で用いられる視鏡や外科器具を挿入する。
【0028】
本発明の器具は、普通約5mm以下、より一般的には約4mm以下、さらに一般的には約3.5mm以下、好ましくは3mm又はそれ以下であるような非常に小さい初期腔を形成するため特に価値がある。貫通腔はその後所望の最終的な大きさ、普通約5mm〜15mm、より一般的には5mm〜12mm、典型的には5mm〜10mmの範囲の最終直径を有する大きさに拡大される。拡大された貫通腔は患者の体の外側から所望の体内の位置までのアクセス内腔を形成し、後述でより詳細に説明するようにアクセス内腔の直径を変えられることは本発明の特徴的な利点である。
【0029】
本発明に従った拡張装置は、終端部と、基端部と、終端部から基端部まで延びる軸線方向の内腔とを有する長い拡張チューブを有する。拡張チューブは、初めは長くて小径の拡張可能な管状編み紐を有する。この編み紐は目が開いているが、シリコンゴム、ラテックス、ポリエチレンC−フレックスなど、弾性を有し又は熱可塑的に変形する材料のコーティング又は層を設けられ又はコーティングされていることが多い。管状編み紐は小径で皮膚を貫通して挿入され、その後、後述でより詳しく説明する長い拡大部材を用いて径方向へ拡張する。管状編み紐は好ましくは独立した非弾性フィラメント
【数1】

【0030】
登録商標)、ステンレス鋼など)からなるメッシュとして形成され、径方向へ拡張することによって編み紐の軸線方向の長さが短くなる。編み紐のフィラメントが周囲の組織へ径方向へ入り込む際に軸線方向へ短くなることは、患者の組織内の所定位置に拡張部材を固定し、そして組織に対し拡張部材の外側をシールするのに役立つ。このような確実な固定及び気密シールは腹腔鏡法では特に利点がある。
【0031】
編み紐は丸いフィラメント、平坦又は帯状のフィラメント、又は四角いフィラメントなどを具備する従来の構造である。丸くないフィラメントは径方向へ拡張するのに必要な軸線方向の力が少なくて済むので利点がある。フィラメントの幅又は直径は典型的には約0.002インチ〜0.25インチまでであり、通常は約0.005インチ〜0.010インチである。適切な編み紐は、ペンシルベニア州ライオンビル(Lionville)のベントリハリス(Bently Harris)、コロラド州デンバー(Denver)のマンビルシーリングコンポーネント(Manville Sealing Componets)、ミネソタ州セントポール(St.Paul)のスリーエムセラミックマテリアル(3M Ceramic Materials)のような商業上の供給者から得られる。特に適した編み紐としてはベントリハリス(Bently Harris)の商標名エクザンドピーティ(Exando
【数2】

【0032】
長い拡張部材は選択可能には管状編み紐を覆う取り外し可能な鞘をさらに含む。この鞘は通常はポリエチレン、テトラフルオロエチレン、弗素化エチレンプロピレンなどの薄壁で可撓性のプラスチックのような潤滑材料からなる。鞘は拡張部材の初期挿入の間、管状編み紐を保護するが、拡張部材が所定位置に配置されたあとは編み紐から取り除かれる。好ましくは鞘は軸線方向に沿って弱くなっており、処置の間に幾つかの点で鞘を容易に割ることができる。このような取り外し可能な鞘は通常、管状編み紐自体が編み紐のフィラメント材へ取り付けられた弾性を有し又は変形可能な層を有するときのみ採用される。適した鞘の構造は本発明の譲渡人に譲渡された出願係属中の米国特許出願番号第07/702,642号に詳細に説明されており、この全開示内容は本願にも含まれている。
【0033】
長い拡張部材は、この拡張部材が皮膚を貫通して進められると組織に腔を開ける手段をその終端部にさらに具備する。この腔開け手段は、管状編み紐、選択可能には保護鞘、又はその両方に取り外し可能に又は永久に取り付けられている。
【0034】
しかしながら例としての実施例では、この腔開け手段は、編み紐が軸線方向へ長い形状をしている状態で、管状編み紐の軸線方向の内腔に収容される長い分離腔開け要素を具備する。腔開け手段は、管状編み紐及び選択可能な覆い鞘の終端部を越えて終端部方向へ延びる先端の尖った終先端を有し、したがって組織を通って拡張部材を容易に通すことができる。
【0035】
特に好ましい実施例においては、腔開け要素は、後退可能に取り付けられ且つ先端の尖った終先端を越えて終端部方向へ延びるオブトラトールを有する針部材である。オブトラトールは通常ばねで付勢されており、したがって針部材が組織を貫通して進められ、腔開けに対し十分な組織の抵抗がかかったとき自動的に後退される。しかしながらオブトラトールは先端の尖った終先端を越えて終端方向へ延び、拡張部材が腹腔鏡法中に腹部の膨張領域内のような所望の目標位置へ入ったあとに患者を傷つけることから患者を守る。このような針部材はベレスニードル(Veress needle)として知られており、一般的には腹腔鏡法及び他の方法でのガス注入に採用されている。
【0036】
長い拡張部材は挿入後であるが拡張前に展開される固定具をその終端部にさらに具備する。この固定具は拡張部材を所定位置に保持し、拡大部材が拡張部材を通って導入されるときの皮膚と筋膜層と分離を防ぐ。しかしながら通常は管状編み紐の固有の固定能力は、拡張部材を保持し且つ組織の分離を防ぐのにはそれ自体で十分であるので、固定具は必要ない。
【0037】
長い拡大部材は、終端部と、基端部と、これらの間で延びる軸線方向の内腔とを有する一定半径の管状要素を具備する。軸線方向の内腔の断面積は径方向へ拡張していない管状編み紐の断面積よりも大きい。したがって拡大部材を管状編み紐の内腔に通して、編み紐を径方向へ拡張することにより、拡大したアクセス路が一定半径の管状要素の内腔によって提供される。長い拡大部材を管状編み紐の軸線方向の内腔に容易に導入するために、テーパ付き終端部を有するロッドは好ましくは管状要素の内腔内に設けられる。テーパ付き終端部はチューブから終端部方向へ延び、拡大部材が進められたとき管状編み紐を展開するのに役立つ。それからロッドがチューブから外され、拡大部材が管状編み紐を通して完全に進められたあとアクセス内腔が邪魔にならないようにされる。本発明のトロカールシステムは好ましくは異なる断面積を有する2つの長い拡大部材を有し、したがって幾つかの拡張部材を多くの異なるサイズのアクセスポートを導入する通路として選択的に用いることができる。
【0038】
長い拡大部材は選択可能には固定手段をその終端部に又はその終端部近傍に有する。この固定手段は種々の形態をとることが可能であり、マルコー形状や、フック形状、膨張可能なバルーンなどを有し、展開したあと拡大部材を目標の所定位置に保持するのに役立つ。さらに固定性能を高めるために、外部クランプ又は固定具を拡大部材の基端部に又は基端部近傍にさらに設けてもよく、固定部の間にある組織、例えば腹壁をこれらの間で捕らえることができるようになる。このようなクランプによる固定は、もちろん、本来の固定に加えて、上述したように管状編み紐を拡張することによって達成される。
【0039】
一般的に、長い拡大部材はトロカール弁を着脱可能に取り付ける手段をその基端部に有する。トロカール弁はトロカールに固定された従来のトロカール弁と同様なものである。このトロカール弁は、異なる断面積を有する視鏡及び/又は外科器具を導入することを可能にすると共に、腹腔鏡法における注入ガス圧の損失を防ぐためにこのような外科器具の外周の周りでシールする内部構造を有する。
【0040】
またトロカール弁は典型的に止め栓を有しており、この止め栓は注入ガス、灌注、吸引などの導入や通気を行うことを可能とする。従来のトロカール弁は、ニュージャージー州サマービル(Somerville)のエセコンインコーポレイティド(Ethicon,Inc.)、コネチカット州ノーウォーク(Norwalk)のユナイテッドステイツサージカルコーポレイーション(United States Surgical Corporation)、テキサス州フォートウォース(Fort Worth)のデキシドインコーポレイティド(Dexide,Inc.)などような種々の供給者によって製造されている。
【0041】
長い拡張チューブの長さは使用意図によって変わるが、概して約10cm〜25cmの範囲である。腹腔鏡法のための拡張チューブの長さは概して約10cm〜20cmの範囲であり、典型的には約10cm〜15cmの範囲である。胸腔鏡法のためのトロカールシステムで使用する拡張チューブの長さは、それより概して短く、典型的には約5cm〜10cmの範囲の長さである。もちろん長い拡大部材の長さは長い拡張部材の長さよりも幾分か概して長く、したがって拡張部材の全長にわたる径方向の拡張が可能となる。
【0042】
以下、図面を参照しながら本発明の原理に従って構成した例としてのトロカールシステムを説明する。トロカールシステムの3つの基本構成要素は、図1〜3で最も良く示した長い拡張部材10と、図4〜8で最も良く示した1つ以上の長い拡大部材12及び14と、図8で最も良く示したトロカール弁16とである。これら各基本構成要素と、本発明の方法におけるこれら基本構成要素の使用法を以下で詳細に説明する。
【0043】
長い拡張部材10は軸線方向の内腔を有する管状編み紐20を具備し、この管状編み紐20は、その基端部に位置する取っ手22からその終端部に位置する針部材40の金環24まで延びている。管状編み紐20は、以下で詳述するように、拡大部材12又は14が続けて導入されると管状編み紐を径方向へ拡張するよう基端部の取っ手22に取り付けられている。管状編み紐は上述したような分離した編み紐フィラメントを有し、これも上述したような積層された弾性を有する又は熱可塑的に変形可能な層をさらに具備する。拡大部材を管状編み紐20の軸線方向の内腔へ通せるように、通路26が基端部の取っ手22に設けられている。
【0044】
管状編み紐20は基端部に取っ手32を有する(本実施例では)取り外し可能な鞘30で覆われている。鞘30は管状編み紐20の全長にわたって延び、基端部、概して図2で最も良く示したように金環24の位置で終端する。取り外し可能な鞘30は係属中の米国特許出願第07/967,602号で説明されている構造であり、この全開示内容は本願にも前もって含まれている。
【0045】
先端の尖った終先端42と基端部の取っ手44とを有する針部材40は、管状編み紐20の軸線方向の内腔内に初めに収容される。金環24は針部材20の先端の尖った終先端42近傍に取り付けられており、患者の皮膚、筋膜組織、及び臓器壁に長い拡張部材10を挿入し易いように前方へテーパの付いたテーパ面46(図2参照)を有する。特に金環24は小径の針部材40からそれより僅かに大きい直径の取り外し可能な鞘30までの遷移部分として機能する。管状編み紐20は針部材40の外面と鞘30の内面との間に形成された環状の内腔内に収容される。選択可能には、鞘30の終端部には所望なように滑らかに遷移するようそれ自体にテーパが設けられている。したがって本発明のある実施例においては金環24を排除することも可能である。
【0046】
針部材40は好ましくはその終端部に保護要素を有するガス注入針部材の形態をしている。図示したように保護要素は先端が丸くなった端部50を有するオブトラトール48であり、このオブトラトール48は針部材40の軸線方向の内腔に往復動可能に収容される。オブトラトール48はばね付勢されているため、先端の丸くなった端部50は棚にある状態で又は『未使用』形状の状態で針部材40の先の尖った終先端42から終端方向へ延びる。針部材42が患者の皮膚又は他の組織へしっかり押しつけられても、先端の丸くなった端部50は針部材40の方へ後退し、先端の尖った端部42が貫通するようになる。通常、オブトラトール48は中空であり、その終端部にポート52を有する。基端部に弁組立体54を設けることにより、針部材40とオブトラトール48とを組み合わせて、ガス注入の初期段階を形成するのに特に有用である流体を導入したり、引き出したりするのに用いる。本発明で使用するために変更したガス注入針部材は、ニュージャージー州サマービル(Somerville)のエセコンインコーポレイティド(Ethicon,Inc.)(商標名:エンドパ
【数3】

【0047】
コネチカット州ノーウォーク(Norwalk)のユナイテッドステイツサージカルコーポレイーション(United States Surgical Corporatio
【数4】

【0048】
ここから図4〜6を参照して、第一の長い拡大部材12を詳細に説明する。拡大部材12は、終端部62と基端部64とを有する一定半径の管状要素60を具備する。その一定半径の管状要素60の軸線方向の内腔内には、内部共軸チューブ66が摺動可能に収容されており、終端部68のみが管状要素に取り付けられている。基端部の取っ手70は内部共軸チューブ66の基端部に取り付けられた終端部半体70Aと、管状要素60の基端部に接続された基端部半体70Bとを有する。したがって半体70Aと半体70Bとを(拡大部材の第二実施例を示した図7にあるように)軸線方向へ引く離すことで、内部共軸チューブは一定半径の管状要素60に対し基端部方向へ引っ張られる。こうして図6の破線で示したように、一定半径の管状要素60の終端部近くに形成されたマルコー構造72が拡大される。
【0049】
第一の長い拡大部材12は、取っ手76を基端部に、テーパ付き円錐面78を終端部に有する内部オブトラトール又はロッド74をさらに有する。テーパ付き円錐面78は、図5で最も良く示したように、一定半径の管状要素60の終端部62から終端部方向へ延びる。一定半径の管状要素60及び内部共軸チューブ66双方の外側外周面は、ロッド74が拡大部材12内に完全に挿入されるとテーパ付き円錐面78と整列する円錐面80を形成するように面取りされている。以下、図9を合わせて見ると、テーパ付き円錐面78とテーパ領域80とを組み合わせることで、長い拡張部材10の管状編み紐20へ拡大部材12を導入することが容易になる。
【0050】
ここで図7を参照すると、第二の長い拡大部材14が示されている。第二の拡大部材14は一定半径の管状要素60’の直径が第一の拡大部材12の管状要素60の直径よりも大きいことを除いて、第一の拡大部材12と全ての点で同様である。例として範囲を上述したが、拡大部材の特定の直径は重要ではない。例としての実施例においては、第一の長い拡大部材12の直径は典型的に約6mm〜8mmで、約5mmのアクセス内腔を提供する。第二の拡大部材14の直径は約12mm〜14mmであり、約10mmのアクセス内腔を提供する。5mm及び10mmのアクセス内腔を使用することは腹腔鏡法の外科手術では従来から行われている。しかしながらアクセス内腔の直径が広範囲であることは本発明の特徴的な利点である。したがってトロカールシステムが、導入する視鏡又は器具を実際に収容するより大きな異なる直径の2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の拡大部材を有することが期待できる。
【0051】
図7は拡大部材14を示しており、この拡大部材14はそこから取り外される内部ロッドを有する。内部ロッドが取り外されたあと、取っ手70’の2つの半体70A’及び70B’は破線で示したようにマルコー構造72’を拡大するために、破線で示したように軸線方向へ引き離される。
ここで図8を参照すると、第一の拡大部材12の取っ手70(及び第二の拡大部材14の取っ手70’)は、トロカール弁16を取り外し可能に収容するように構成されている。トロカール弁16は、このトロカール弁16がその終端部に取付け手段を有することを除いて、従来の構造と同じである。図8に示したように、取付け手段は、取っ手70の基端部半体70Bの雌差込み凹部92内に着脱可能に収容される雄差込み取付け部90を具備する。
【0052】
このようにトロカール弁16は、拡大部材が拡張部材10の管状編み紐20内で交換されても異なる拡大部材にも取り付けられる。このためコストを削減でき、各直径の鞘に専用の弁を有するトロカールの在庫を維持しておくことに関する煩雑さを少なくできるので特に利点がある。
【0053】
ここで図9及び10を参照して、長い拡大部材12を長い拡張部材10へ挿入したところを詳細に説明する。もちろん拡大部材12を挿入するまえに、針部材40は拡張部材10の管状編み紐20の軸線方向の内腔から取り外されている。面78及び80によって形成されたテーパ付き終端部が取っ手22の通路26へ挿入されて、管状編み紐20の軸線方向の内腔へ入る。選択可能には針部材40を引き抜き、金環24が鞘を通ることにより鞘30が割られる。選択可能には、拡大部材12を挿入することによって図9に示したように鞘30を軸線方向へ割る。明らかに、拡張部材12を終端部方向へ前進することによって管状編み紐20を径方向へ拡張し、結果として図10で示したような完全な管状編み紐へ拡張される(ここでは内部ロッド74は取り外されている)。
【0054】
拡大部材12が完全に挿入されたあと、(展開されていない)マルコー構造22は、図10に示したように、管状編み紐の終端部から終端部方向へ延びている。それから(拡大部材が通ることにより割られた)鞘30は、取っ手32を使用して引き抜かれ、内部ロッド74が取っ手76を使用して引き抜かれる。それから取っ手70の半体70A及び70Bが軸線方向へ引き離されて、マルコー構造72を展開する。それからトロカール弁16は取っ手70の基端部半体70Bに取り付けられ、概して図10に示したような構造になる。注意していただきたいのは、拡張された管状編み紐20内の構造的な支持を提供するのは一定半径の管状要素60であるということである。またトロカール弁16から構造の終端部まで所望のアクセス路を提供するのは一定半径の管状要素60内の軸線方向の内腔である。
【0055】
ここで図11と12とを参照し、図11で示した初期の小さい径の形態から図12で示した径方向へ拡張した形態への管状編み紐20の拡張を説明する。図12Aは、例としてエクスパンドピーティ(Expando PT)編み紐が約0.1インチから0.45インチヘ径方向へ拡張したときの短くなるパーセンテージを示している。
図13〜20を参照し、皮膚を貫通して腔を開ける本発明の例としてのトロカールシステムの使用の仕方を説明する。初めに長い拡張部材10が腔を開けるのに望ましい場所である患者の皮膚Sの位置に配置される。それから図14に示したように、拡張部材10は皮膚を貫通して針部材40の先の尖った終先端42(図1参照)を前進することにより皮膚Sを貫通する。腹腔鏡法の場合は、針部材40の先端の尖った終先端42が皮膚を通って腹部へ貫通すると直ぐに、オブトラトール48の先が丸くなった端部50が自動的に延び、患者の内蔵を不注意に傷つけてしまうことから保護する。所望であるならば、この時点で針部材40の内腔をガス注入に使用することもできる。
【0056】
拡張部材10が所望の位置に進められたあと、針部材40は、図15に示したように、(針部材40と取り付けられた金環24とを引き抜いて割られた)鞘と、基端部に取っ手22を備えた管状編み紐とを残して、取っ手44を用いて引き抜かれる。
次に長い拡大部材12が取っ手22の通路26へ導入され、したがって図16に示したように管状編み紐20を拡張し、(まだ割られていないならば)鞘30を割る。鞘30と管状編み紐20とがあることで、図16に示したような、皮膚Sを貫通して形成された貫通腔を径方向へ拡大することは容易である。
【0057】
図17に示したように、拡大部材12が拡張部材10を通って完全に挿入されたあと、内部共軸ロッド66が一定半径のチューブ60から引き抜かれ、拡張した管状編み紐の周りの鞘30が引き抜かれる。図17に示すように、マルコー構造72は半体70A及び70Bを引き離すことで拡大される。それからトロカール弁16が、図18に示したように、取っ手70の基端部半体70Bに取り付けられる。
【0058】
拡大部材のアクセス路の直径を変えたいならば、第一の拡大部材12を図19で示したように管状編み紐から引き抜く。管状編み紐20は少なくとも部分的につぶれるが、内部内腔を提供しており、より大きな直径の第二の拡大部材14のような第二の拡大部材を挿入することができる。第二の拡大部材14は、鞘30がもはや所定位置にないということを除いて、第一の拡大部材12の挿入と類似した形態で取っ手22を通って挿入される。しかしながら管状編み紐20は、それ自体で、患者に対し最小限の傷で皮膚Sを貫通した皮膚貫通腔を通って拡大部材14を通すことが十分可能である。より小さい又はより大きい直径の拡大部材を管状編み紐20の最初の拡大部材と交換することが可能であることは明らかである。図20に第二の拡大部材14の最終的な配置を示してあり、マルコー構造72’は一定半径のチューブ60’に対し基端部方向へ取っ手70’を引っ張ることによって展開される。
【0059】
上述した本発明は、理解し易くするために図及び例によって詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲内で変更や修正を行うことが可能であることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10−1】
image rotate

【図10−2】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2010−264259(P2010−264259A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151318(P2010−151318)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【分割の表示】特願2009−55754(P2009−55754)の分割
【原出願日】平成6年3月2日(1994.3.2)
【出願人】(501289751)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (320)
【Fターム(参考)】