説明

拭取り用シートの製造方法、及び拭取り用シート

【課題】トリムの有効利用を図ることによりトリムロスを無くす。
【解決手段】上記課題は、脚通し部を有する外装シート12と、この外装シート12における脚通し部以外の部分に設けられた第1の吸収体56とを備えたパンツ型使い捨ておむつを製造するにあたり、外装シート12における少なくとも脚通し部となる部分LBを、外側不織布層12S及び内側不織布層12Hを貼り合わせて形成した後、外装シート12における脚通し部となる部分LBをそれ以外の主要部分から切り離し、当該切離部分LBを拭取り用シートとして得ることを特徴とする吸収性物品の製造方法により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拭取り用シートの製造方法、及び拭取り用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品は、支持部と、この支持部に形成された、脚を通す部分となる開口又は切欠からなる脚通し部と、支持部における脚通し部以外の部分に設けられた吸収体とを備えている。
例えば、パンツ型使い捨ておむつにおいては、液透過性表面シートと液不透過性シートとの間に吸収体が介在されてなり、背側から股間部を通り腹側までを覆うように形成された内装体と、この内装体の外面における少なくとも前後のウエスト側端部に張り付けられ、少なくとも胴回りを覆うように形成された外装シートとを備え、胴開口部及び左右一対の脚開口部を備えた構造が一般的となっており、このうち外装シートが前述の支持部に、また脚開口部が前述の脚通し部にそれぞれ相当する。テープ式使い捨ておむつや生理用ナプキンにおいても、吸収体の裏面側には、両側部に脚通し部としての切欠部が形成されたシートが設けられるのが一般的であり、このシートが前述の支持部に相当する。
このような吸収性物品を製造する場合、従来、脚通し部を形成するために、支持部における脚通し部となる部分の切り離しを余儀なくされており、切離し片(以下、トリムともいう)は廃棄処分されるため、この部分が資材ロス(以下、トリムロスともいう)をもたらしている。
このような脚通し部の資材ロスを無くすための提案(特許文献1参照)もなされているが、支持部の構造が限定されるため、汎用性のある解決策とはなっていない。
【特許文献1】再表2004−054490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の主たる課題は、トリムの有効利用を図ることによりトリムロスを無くすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
支持部と、この支持部に形成された、脚を通す部分となる開口又は切欠からなる脚通し部と、前記支持部における前記脚通し部以外の部分に設けられた吸収体とを備えた吸収性物品を製造するにあたり、
前記支持部における少なくとも前記脚通し部となる部分を、単層又は複数層の不織布により形成した後、前記支持部における前記脚通し部となる部分をそれ以外の主要部分から切り離すことによって、当該切離部分を拭取り用シートとして得る、
ことを特徴とする拭取り用シートの製造方法。
【0005】
(作用効果)
本発明者は、従来廃棄されていた吸収性物品におけるトリムの特性について鋭意研究した結果、拭取り用シートとして極めて適しているとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づいてなされたものである。本発明によれば、支持部における脚通し部となる部分を不織布により形成した後に切断することによって、主要部分の吸収性物品とは別に、従来はトリムロスとなっていた脚通し部となる部分を、拭取り性能等に優れた拭取り用シートとして同時に製造することができる。しかも製造される拭取り用シートは、工業的に大量生産されるものであるため、形状が統一しており、安定した品質が確保できるものである。 <請求項2記載の発明>
前記不織布として、繊度1.0〜10dtexのオレフィン系樹脂繊維からなり、繊維目付け10〜60g/m2、厚み0.1〜0.5mmのスパンボンド不織布を用いる、請求項1記載の拭取り用シートの製造方法。
【0006】
(作用効果)
このような不織布は、薄く柔らかいため拭取り対象に傷を付け難く、また繊維の脱落も発生しないため、拭取り用シートの素材として特に好適である。また、このようなオレフィン系樹脂繊維からなる不織布は、吸収性物品の分野で広く採用されているものの、原料としての再利用が困難である。よって、本発明に特に適している。
【0007】
<請求項3記載の発明>
前記切離部分に液体を付与せずに乾燥タイプの工業用ワイパーを製造する、請求項2記載の拭取り用シートの製造方法。
【0008】
(作用効果)
前述の切離部分を構成する特定のスパンボンド不織布は、薄く柔らかい、その割には強度が高い、繊維の脱落が無い、親油性がある、エンボスによる凹凸を有しており汚れの掻き取り性能に優れる、等の特徴を有しているため、液体を付与せずに乾燥タイプの工業用ワイパーとして製造するのが好ましい。
【0009】
<請求項4記載の発明>
前記切離部分を親水化剤により親水化した後、液体を含浸させて、湿潤タイプの拭取り用シートを製造する、請求項2記載の拭取り用シートの製造方法。
【0010】
(作用効果)
前述の切離部分を構成する特定のスパンボンド不織布は、オレフィン系樹脂繊維からなるため疎水性であり、そのままでは湿潤タイプの拭取り用シート(例えば、お尻や体を拭くための清拭シートや、ウエットタオル、アルコールタオル等)となりえないが、本項記載のように、予め親水化剤を用いて親水化した後に液体を含浸させることで、湿潤タイプの拭取りシートとして製造することができる。製造されるシートは、薄く柔らかい、その割には強度が高い、繊維の脱落が無い、エンボスによる凹凸を有しており汚れの掻き取り性能に優れる、等の特徴を有しているのは前述の場合と同様である。
【0011】
<請求項5記載の発明>
前記脚通し部となる部分に弾性伸縮部材及び液不透過性シートを設けない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の拭取り用シートの製造方法。
【0012】
(作用効果)
吸収性物品においては、身体へのフィット性を向上させるために、支持部に弾性伸縮部材を設けることが行われており、脚通し部となる部分に弾性伸縮部材を設ける形態も採用されている。また、通常の吸収性物品においては吸収体で吸収した液分が外部に染み出さないように、吸収体の外面側に液不透過性シートを設けることが行われており、この液不透過性シートとなる部分に弾性伸縮部材を設ける場合がある。しかし、脚通し部となる部分に弾性伸縮部材や液不透過性シートを有すると、それが拭取り用シートに残留し、拭取り時の滑りを阻害する等の問題を発生させる。よって、本項記載のように脚通し部となる部分には弾性伸縮部材及び液不透過性シートを設けないのが好ましい。
【0013】
<請求項6記載の発明>
前記支持部における少なくとも前記脚通し部となる部分を、外側不織布層及び内側不織布層を重ねて形成するとともに、この脚通し部となる部分のうち、周縁部の一部及び周縁部により囲まれた部分では外側不織布層及び内側不織布層を接合しないか又は剥離可能に接合し、且つ周縁部の残部では外側不織布層及び内側不織布層を接合し、
しかる後に前記切り離しを行い、前記切離部分を、前記周縁部の一部が開口部となる袋状の拭取り用シートとして得る、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の拭取り用シートの製造方法。
【0014】
(作用効果)
このように、支持部における脚通し部となる部分を、外側不織布層及び内側不織布層を重ねて袋状に形成した後に切断することによって、袋状の拭取りシートを製造することができる。このような袋状の拭取りシートは、開口部から手若しくは指を入れて拭取りを行うことが可能であり、拭取り時のシートが安定し、より容易に拭取りを行うことができるようになる。
【0015】
<請求項7記載の発明>
前記支持部における少なくとも前記脚通し部となる部分を、外側不織布層及び内側不織布層を重ねて形成するとともに、この脚通し部となる部分のうち、周縁部により囲まれた部分では外側不織布層及び内側不織布層を接合しないか又は剥離可能に接合し、且つ周縁部の全体では外側不織布層及び内側不織布層を接合し、
しかる後又はこれに先立って、前記脚通し部となる部分における外側不織布層及び内側不織布層の少なくとも一方に開口形成用ミシン目を形成し、
しかる後に、前記切り離しを行い、前記切離部分を、前記開口形成用ミシン目を切り離すことにより開口部が形成される袋状の拭取り用シートとして得る、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の拭取り用シートの製造方法。
【0016】
(作用効果)
このように、支持部における脚通し部となる部分を、外側不織布層及び内側不織布層を重ねて袋状に形成した後に切断することによって、袋状の拭取りシートを製造することができる。このような袋状の拭取りシートは、開口形成用ミシン目を切り離して形成される開口部から手若しくは指を入れて拭取りを行うことが可能であり、拭取り時のシートが安定し、より容易に拭取りを行うことができるようになる。
【0017】
<請求項8記載の発明>
前記切り離しに代えて、前記支持部における前記脚通し部となる部分を、前記主要部分に対して切り離し可能に繋がった状態となるように部分的に切断する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の拭取り用シートの製造方法。
【0018】
(作用効果)
切離部分は、従来空気輸送により収集されることが行われているが、本発明では切離部分を拭取り用シートとして製造するため、このような収集形態では拭取り用シートの製品包装が困難となる等の問題がある。これに対して、脚通し部となる部分を切離さずに、一部切り残したり、脚通し部の周縁に沿ってミシン目加工を施したりする等により、支持部における脚通し部となる部分を主要部分に対して切り離し可能に繋がった状態とすることで、脚通し部により形成される拭取り用シートを、主要部分の吸収性物品の付属物として付属させることができるようになり、製品包装も困難とならず、しかも使用時には切り離して同時に又は別個に使用できるようになる。例えば、本発明により製造される拭取り用シートを、吸収性物品使用後の体等を拭き取るのに用いることができる。
【0019】
<請求項9記載の発明>
請求項1〜8のいずれか1項記載の製造方法により製造されたことを特徴とする、拭取り用シート。
【0020】
(作用効果)
上記の各作用効果が奏せられる。
【発明の効果】
【0021】
以上のとおり、本発明によれば、トリムの有効利用を図ることによりトリムロスを無くすことができる、等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、パンツ型使い捨ておむつの製造にあたり拭取り用シートを製造する例を引いて詳説する。
<パンツ型使い捨ておむつの例>
図1〜図10は、パンツ型使い捨ておむつの一例を示している。このパンツ型使い捨ておむつは、製品外面(裏面)をなす外装シート12と、外装シートの内面に貼り付けられた内装体200とから構成されているものである。内装体200は、尿等の排泄物等を吸収保持する部分であり、外装シート12は着用者に装着するための部分である。なお、断面図における点模様部分は各構成部材を接合する接合部分を示しており、ホットメルト接着剤などのベタ、ビード、カーテン、サミットまたはスパイラル塗布などにより形成されるものである。なお、「前後方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味し、「上下方向」とはおむつの装着状態、すなわちおむつの前身頃両側部と後身頃量側部を重ね合わせるようにおむつを股間部で2つに折った際に胴回り方向と直交する方向、換言すれば胴開口部WO側と股間部側とを結ぶ方向を意味する。
【0023】
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。内装体200は、図3〜図5に示されるように、身体側となる表面シート30と、液不透過性シート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えているものである。符号40は、表面シート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させるために、表面シート30と吸収要素50との間に設けられた中間シート(セカンドシート)を示しており、符号60は、内装体200の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側に設けられた、身体側に起立するバリヤーカフス60を示している。
【0024】
(表面シート)
表面シート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンボンド法、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、エアスルー法、ポイントボンド法、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0025】
また、表面シート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、表面シート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0026】
バリヤーカフス60を設ける場合、表面シート30の両側部は、液不透過性シート11とバリヤーカフス60との間を通して、吸収要素50の裏側まで回りこませ、液の浸透を防止するために、液不透過性シート11及びバリヤーカフス60に対してホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。
【0027】
(中間シート)
表面シート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、表面シート30より液の透過速度が速い、中間シート(セカンドシートとも呼ばれている)40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、表面シート30を乾燥した状態とすることができる。中間シート40は省略することもできる。
【0028】
中間シート40としては、表面シート30と同様の素材や、スパンレース、スパンボンド、SMS、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは20〜80g/m2が好ましく、25〜60g/m2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.2〜10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0029】
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、吸収体56の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0030】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができる。液不透過性シート11には、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材を用いることが好ましい。透湿性を有するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性プラスチックフィルムが広く用いられている。このほかにも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができる。
【0031】
液不透過性シート11は、防漏性を高めるために、吸収要素50の両側を回りこませて吸収要素50の表面シート30側面の両側部まで延在させるのが好ましい。この延在部の幅は、左右それぞれ5〜20mm程度が適当である。
また、液不透過性シート11の内側、特に吸収体56側面に、液分の吸収により色が変化する排泄インジケータを設けることができる。
【0032】
(バリヤーカフス)
バリヤーカフス60は、内装体200の両側部に沿って前後方向全体にわたり延在する帯状部材であり、表面シート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を遮断し、横漏れを防止するために設けられているものである。本実施の形態のバリヤーカフス60は、内装体200の側部から起立するように設けられ、付け根側の部分は幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側の部分は幅方向外側に向かって斜めに起立するものである。
【0033】
より詳細には、バリヤーカフス60は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のバリヤーシート62を幅方向に折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状弾性伸縮部材63を長手方向に沿って伸張状態で、幅方向に間隔をあけて複数本固定してなるものである。バリヤーカフス60のうち幅方向において折り返し部分と反対側の端部は内装体200の側縁部の裏面に固定された取付部分65とされ、この取付部分65以外の部分は取付部分65から突出する突出部分66(折り返し部分側の部分)とされている。また、突出部分66のうち前後方向両端部は、取付部分65から内装体200の側部を通り表面シート30の側部表面まで延在し且つこの表面シート30の側部表面に対してホットメルト接着剤やヒートシールによる前後固定部67固定された付け根側部分と、この付け根側部分の先端から幅方向外側に折り返され且つ付け根側部分に固定された先端側部分とからなる。突出部分のうち前後方向中間部は非固定の自由部分(内側自由部分)とされ、この自由部分に前後方向に沿う細長状弾性部材63が伸張状態で固定されている。
【0034】
バリヤーシート62としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは10〜30g/m2程度とするのが好ましい。細長状弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは470〜1240dtexが好ましく、620〜940dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、150〜350%が好ましく、200〜300%がより好ましい。また、図示のように、二つに折り重ねたバリヤーシートの間に防水フィルムを介在させることもできる。
【0035】
バリヤーカフス60の自由部分に設けられる細長状弾性伸縮部材63の本数は2〜6本が好ましく、3〜5本がより好ましい。配置間隔60dは3〜10mmが適当である。このように構成すると、細長状弾性伸縮部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にも細長状弾性伸縮部材63を配置しても良い。
バリヤーカフス60の取付部分65の固定対象は、内装体200における表面シート30、液不透過性シート11、吸収要素50等適宜の部材とすることができる。
【0036】
かくして構成されたバリヤーカフス60では、細長状弾性伸縮部材63の収縮力が前後方向両端部を近づけるように作用するが、突出部分66のうち前後方向両端部が起立しないように固定されるのに対して、それらの間は非固定の自由部分とされているため、自由部分のみが図3に示すように身体側に当接するように起立する。特に、取付部分65が内装体200の裏面側に位置していると、股間部及びその近傍においてバリヤーカフス60が幅方向外側に開くように起立するため、バリヤーカフス60が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。
【0037】
バリヤーカフス60の寸法は適宜定めることができるが、乳幼児用紙おむつの場合は、例えば図7に示すように、バリヤーカフス60の起立高さ(展開状態における突出部分66の幅方向長さ)W6は15〜60mm、特に20〜40mmであるのが好ましい。また、バリヤーカフス60をトップシート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離W3は60〜190mm、特に70〜140mmであるのが好ましい。
【0038】
なお、図示形態と異なり、内装体200の左右各側においてバリヤーカフスを二重に(二列)設けることもできる。
【0039】
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の全体を包む包装シート58とを有する。包装シート58は省略することもできる。
【0040】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。吸収体56中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。
【0041】
吸収体56は長方形形状でも良いが、図1にも示すように、前端部、後端部及びこれらの間に位置し、前端部及び後端部と比べて幅が狭い括れ部とを有する砂時計形状を成していると、吸収体56自体とバリヤーカフス60の、脚回りへのフィット性が向上するため好ましい。
【0042】
また、吸収体の寸法は適宜定めることができるが、前後方向及び幅方向において、内装体の周縁部又はその近傍まで延在しているのが好ましい。
【0043】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0044】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0045】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和する。
【0046】
必要であれば、高吸収性ポリマー粒子は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、液の排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
【0047】
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
【0048】
包装シート58の包装形態は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、吸収体56の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻き付け、且つその前後縁部を吸収体56の前後から食み出させ、この食み出し部分を表裏方向に潰してホットメルト接着剤等の接合手段により接合する形態が好ましい。
【0049】
(外装シート)
外装シート12は、股間部から腹側に延在する腹側部分Fと、股間部から背側に延在する背側部分Bとを有し、これら腹側部分Fの両側部と背側部分Bの両側部とが接合されて、図8及び図9に示すように、装着者の胴を通すための胴開口部WO及び脚を通すための左右一対の脚開口部LOが形成されているものである。符号12Aは接合部分を示している(以下、この部分をサイドシール部ともいう)。なお、股間部とは、展開状態における腹側部分のウエスト端縁から背側部分のウエスト端縁までの前後方向中央を意味し、それよりも前側の部分及び後側の部分が腹側部分F及び背側部分Bをそれぞれ意味する。
【0050】
外装シート12は、胴開口部WOから脚開口部LOの上端に至る前後方向範囲として定まる胴周り部Tと、脚開口部LOを形成する部分の前後方向範囲として定まる中間部Lとを有する。胴周り部Tは、概念的に「ウエスト側端部」Wと「胴周り下部」Uとに分けることができる。これらの前後方向の長さは、製品のサイズによって異なり、適宜定めることができるが、一例を挙げると、ウエスト側端部Wは15〜40mm、胴周り下部Uは65〜120mmとすることができる。一方、中間部Lの両側縁は被着者の脚周りに沿うように括れており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。換言すれば、展開状態の外装シート12は、全体としては略砂時計形状をなしている。外装シート12の括れの程度は適宜定めることができ、図1〜図10に示す形態のように、すっきりとした外観とするために最も幅が狭い部分では内装体200の幅より狭くすることもできるが、図17に示すように、最も幅が狭い部分でも内装体200の幅以上となるように定めるのが好ましい。
【0051】
外装シート12は、図3〜図5に示されるように、二枚のシート基材12S,12Hをホットメルト接着剤等の接着剤により張り合わせて形成されるものであり、内側に位置する内側シート基材12Hはウエスト開口部WOの縁までしか延在していないが、外側シート基材12Sは内側シート基材12Hのウエスト側の縁を回り込んでその内側に折り返されており、この折り返し部分12rは内装体20のウエスト側端部上までを被覆するように延在されている。また、外側シート基材12Sは背側から腹側まで連続しているが、内側シート基材12Hは、背側に位置する部分と腹側に位置する部分とが別々に設けられており、且つこれらの離間部の全体(一部でも良い)が脚開口部LOと対応する前後方向範囲L内に位置している。この離間部分の離間距離は適宜定めることができるが、内側シート基材12Hは、後述する胴回り方向の締め付け機能を発揮する弾性伸縮部材15〜19を、外側シート基材12Sの内面との間に挟持して固定するものであるため、少なくとも弾性伸縮部材15〜19を有する部分には設けるのが好ましい。図示(図1〜9)の形態では、外側シート12S及び内側シート基材12Hは、背側から腹側まで連続し、外装シート12全体が一様な二層構造となっている。
【0052】
また、図10及び図11に示す形態のように、内側シート基材12Hが弾性伸縮部材15〜19を有する前後方向範囲に設けられ、これらの離間部を繋ぐように後述する表面補完シート12Tが設けられる形態も採用することができる。このような形態は、後述するように素材の選択の自由度が高いため好ましい。また逆に、外側シート基材12Sが弾性伸縮部材15〜19を有する前後方向範囲に設けられ、これらの離間部を繋ぐように後述する裏面補完シート12Bが設けられる形態も採用でき、あるいは、脚開口部LOと対応する前後方向範囲L内の少なくとも一部に、後述する液不透過性シート12W(遮水シート)を設ける形態も採用でき、さらに、これらの形態を適宜組み合わせることも可能である。なお、液不透過性シート12Wを外装シート12のほぼ全体あるいは少なくとも前記吸収体56を含む平面領域に設ける場合は、前記液不透過性シート11を省略することもできる。
【0053】
すなわち、外装シート12に用いるシート基材12S,12Hとしては、シート基材であれば特に限定無く使用できるが、不織布であるのが好ましい。不織布は、その原料繊維が何であるかは特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。シート基材12S,12Hとして不織布を用いる場合、各シート基材の坪量は10〜30g/m2程度とするのが好ましい。
【0054】
また、外装シート12を通して後述する印刷シート25のデザインを製品外面から良好に視認できるように、外装シート12の総目付けは20〜60g/m2程度であるのが好ましく、外装シート12のJIS K 7105に規定される全光線透過率(測定法A)が40%以上、特に50%以上となっているのが好ましい。
【0055】
そして、外装シート12には、胴回りに対するフィット性を高めるために、両シート基材12S,12H間に糸ゴム等の細長状弾性伸縮部材15〜19が所定の伸張率で設けられている。細長状弾性伸縮部材15〜19としては、合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。外装シート12の両シート基材12S,12Hの貼り合せや、その間に挟まれる細長状弾性伸縮部材15〜19の固定には種々の塗布方法によるホットメルト接着またはヒートシールや超音波接着を用いることができる。外装シート12全面を強固に固定するとシートの風合いを損ねるため好ましくない。これらを組合せ、細長状弾性伸縮部材15〜19の接着は強固にし、それ以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。
【0056】
より詳細には、背側部分B及び腹側部分Fのウエスト端部(上端部)Wにおける内側シート基材12Hの内側面と外側シート基材12Sの折り返し部分12rの外側面との間には、幅方向全体にわたり連続するように、複数のウエスト部弾性伸縮部材17,18が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。また、ウエスト部弾性伸縮部材17,18のうち、胴周り下部Uに隣接する領域に配設される1本または複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。このウエスト弾性伸縮部材17,18としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、4〜12mmの間隔で3〜22本程度、それぞれ伸張率150〜400%、特に220〜320%程度で固定するのが好ましい。また、ウエスト部弾性伸縮部材17,18は、その全てが同じ太さと伸張率にする必要はなく、例えばウエスト側端部Wの上部と下部で弾性伸縮部材の太さと伸張率が異なるようにしてもよい。
【0057】
また、腹側部分F及び背側部分Bの胴周り下部Uにおける内側シート基材12Hの外側面と外側シート基材12Sの内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その上側および幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の細長状弾性伸縮部材15,19が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
【0058】
胴回り下部Uの細長状弾性伸縮部材15,19としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で5〜30本程度、それぞれ伸張率200〜350%、特に240〜300%程度で固定するのが好ましい。
【0059】
また、腹側部分F及び背側部分Bの中間部Lにおける内側シート基材12Hの外側面と外側シート基材12Sの内側面との間には、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、複数の細長状弾性伸縮部材16が上下方向に間隔を空けて、かつ所定の伸張率で幅方向に沿って伸張された状態で固定されている。
【0060】
中間部Lの細長状弾性伸縮部材16としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm2、特に0.1〜1.0mm2程度)の糸ゴムを、5〜40mm、特に5〜20mmの間隔で2〜10本程度、それぞれ伸張率150〜300%、特に180〜260%で固定するのが好ましい。
【0061】
なお、図示のように、胴回り下部U及び中間部Lの細長状弾性伸縮部材15,19,16,18が、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けられていると、内装体200が幅方向に必要以上に収縮することがなく、モコモコと見た目が悪かったり吸収性が低下したりすることがないため好ましい。この形態には、幅方向両側にのみ弾性伸縮部材が存在する形態の他、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで弾性伸縮部材が存在しているが、内装体200と重なる幅方向中央部では弾性伸縮部材が切断され、伸縮力が作用しない(実質的には、弾性伸縮部材を設けないことに等しい)ように構成されている形態も含まれる。もちろん細長状弾性伸縮部材15,19,16,18の配設形態は上記例に限るものではなく、胴回り下部Uの幅方向全体にわたり伸縮力が作用するように、胴回り下部Uの細長状弾性伸縮部材15,19,16,18の一部または全部を、内装体200を横切ってその幅方向一方側から他方側まで設けることもできる。
【0062】
また、細長状弾性伸縮部材15〜19が後述する印刷シート25を横切る場合において、細長状弾性伸縮部材15〜19として酸化チタンを含有するゴムを用いる場合には、酸化チタンの含有量が低い(例えば2%以下の)ものあるいは酸化チタンを含有しないものを用いるのが好ましい。
【0063】
(後処理テープ)
外装シート12の背側部分Bの外面における幅方向中央部には、後処理テープ70(固定手段)が設けられている。後処理テープ70は、おむつを表面シート30が内側になるとともに腹側部分Fが内側となるように丸め若しくは折り畳んだ状態で固定するためのものである。一般的な後処理テープ70は基端部が外装シート12の外面に接着剤等により固定されるとともに、この固定部よりも先端側の部分は三つ折り(断面Z字状)や二つ折りで折り畳まれて、折り重なり部分間が接着剤により剥離可能に固定(仮固定)されている。廃棄時には、おむつを表面シート30が内側になるとともに腹側部分Fが内側となるように丸め若しくは折り畳んだ後、後処理テープ70の折り重なり部分を剥離して展ばし、丸めた若しくは折り畳んだおむつの背側部分Bからウエスト開口部WOを越えて反対側の外面まで巻き付けるようにして接着剤により固定する。
【0064】
図示しないが、所謂テープ式使い捨ておむつは、身体にあてがった状態で、背側部分の両側部から突出する止着テープを腹側外面に止着することにより装着を行い、使用後は、止着テープを一旦腹側外面から取り外しした後に、腹側部分と背側部分とを重ねて腹側部分が内側となるように股間部側から丸め若しくは折り畳み、しかる後、背側部分の両側部の止着テープを丸めた若しくは折り畳んだおむつの両側から回しこみ外面に固定する。よって、テープ式使い捨ておむつの場合にはこの止着テープが固定手段となる。
【0065】
(印刷シート)
液不透過性シート11と外装シート12との間(外装シート12の層間を含む)には、印刷によりデザインの施された印刷シート25が設けられている。図示例の印刷シート25は、腹側部分F及び背側部分Bに個別に設けられているが、腹側部分Fから股間部を通り背側部分Bまで一体的に連続するように設けることもできる。
【0066】
印刷シート25のシート基材としては、プラスチックフィルムや不織布、紙などを用いることができるが、嵩高く通気性の高い素材が好ましい。プラスチックフィルムを用いる場合は、ムレ防止のため透湿性を有することが望ましい。不織布や紙は透湿性を有するため好ましいが、不織布を用いる場合は平滑性が高く印刷しやすいもの、紙を用いる場合は強度が高くインクの滲み難いものを用いるのが好ましい。特に好ましいものとしては、目付け15〜35g/m2程度、厚み0.05〜0.3mm程度のクレープ紙(薄葉紙)や、目付け10〜25g/m2程度、厚み0.1〜0.3mm程度の不織布(特にスパンボンド部の繊度が1.0〜6.0dtex程度のスパンボンド不織布やSMS不織布)を挙げることができる。クレープ紙を用いる場合は、クレープ率は5〜20%程度、特に5〜15%程度のものを用いるのが好ましい。クレープ率が20%以上であると、インクの定着量は大きくなるが滲みが生じてデザイン印刷には適さない。クレープ率が5%以下であるとインクが浸透しにくいため定着量が少ない。また印刷シート25は、消臭機能を有するものを用いるのが好ましい。印刷シート25に消臭機能を付与する場合、シート素材自体が消臭性を有するものを用いてもよいが、印刷等の手段によりシート素材に消臭剤を付与してもよい。印刷シート25のシート基材が通気性を有する繊維集合体であると、基材自体が臭気吸着により若干の消臭効果を発揮できるとともに、基材の表面積が大きく通気性があることから後述する消臭粒子と臭気との接触確率が向上し、消臭効率が向上するため好ましい。
【0067】
印刷シート25の寸法・形状は特に限定されないが、後述するように印刷シート25に消臭機能を持たせる場合には十分に面積を大きくするのが好ましく、例えば、印刷シート25の幅25Xは吸収体56の幅の50〜120%程度であるのが好ましく、印刷シート25の長さ25Yは少なくとも腹側及び背側の片側で物品全長Yの15〜30%程度であるのが好ましい。また、印刷シート25の形状はトリムロスが発生しない点では図示例のような矩形であるのが好ましいが、円形や楕円形、三角形、六角形等の幾何学形状、若しくはデザインの周囲に沿う形状にカットしても良い。
【0068】
<製造方法について>
図12は、上段部分の平面図が、上述した構造と略同様のパンツ型使い捨ておむつと同時に脚開口部となる部分により拭取り用シートを製造する基本フローを概略的に示しており、中段部分の平面図が袋状の拭取り用シートを製造する応用フローを概略的に示しており、及び下段部分がこれらのフローの正面図であり、各フローに共通する工程を対比可能なように並べて示しているものである。また、図13は図12中のA−A´断面を示している。
【0069】
両フローに共通する工程は、外装シート形成工程501、弾性伸縮部材の切断工程502、脚開口部の切り離し工程503、内装体取付工程504、側部接合工程505、及び切り離し工程506である。先ず、外装シート形成工程501では、連続帯状の外側シート基材12S及び内側シート基材12Hを各ロールから繰り出して、両シート基材12S,12H間に糸ゴム等の弾性伸縮部材15〜19を搬送方向(胴回り方向)に沿って伸張した状態で挟みつつ、両シート基材12S,12Hをホットメルト接着剤等により順次貼り合わせることにより外装シート12を連続的に形成する。なお、図中の点模様部分が両シート基材12S,12Hの接合部分を示している(他の図も同様)。
【0070】
次に、弾性伸縮部材の切断工程502では、形成した連続外装シート12に対して、後に内装体200と重なる部分CTに位置する弾性伸縮部材15,16,19をヒートエンボス等の切断装置601により切断し、当該部分CTにおいて弾性伸縮部材15,16,19の伸縮力が作用しない状態とする。
【0071】
そして、次の脚開口部の切り離し工程502では、連続方向(搬送方向(MD方向))に隣接するおむつの脚開口部となる部分LBを、ダイカッター602等の切断装置により一体的な孔として打抜き、おむつとなる部分である主要部分から切り離す。つまり、脚開口部となる部分LBは一個の切離し片として切り離し、当該切離部分を拭取り用シートとして得るとともに、主要部分には脚開口部LOが形成される。
【0072】
しかる後、内装体200の取付工程504において、別のラインで製造された内装体200が供給され、順次搬送されてくる連続帯状の外装シート12上に間欠的にホットメルト接着剤等により貼り付けられる。次に、側部接合工程505では、CD方向の一方側を他方側に折り畳み、腹側部分と背側部分とを重ね、MD方向に所定の間隔を空けてヒートシール等の接合装置603により接合加工を施し、個々のおむつの幅方向両側部となる部分12Aにおいて腹側部分と背側部分とを接合する。しかる後、最後の切り離し工程506では切断装置604において、MD方向に所定の間隔を空けて、個々のおむつとなる部分の境界(隣接するおむつとなる部分のうち一方のおむつの接合部12Aと他方のおむつの接合部12Aとの間に位置する)に沿って切断し、個々のおむつを得る。このように、上記製造方法によれば拭取り用シート12Fだけではなく、パンツ型使い捨ておむつも製造される。つまり、単一の製造ラインで二種類の製品を製造できるのである。
【0073】
図14は上述の基本フローにより製造される拭取り用シートを示しており、シート基材12S,12H(それぞれ外側不織布層及び内側不織布層に相当する)をホットメルト接着剤等の接合手段により貼り合わせてなるものである。各シート基材12S,12Hに用いる不織布しては、繊度1.0〜10dtexのオレフィン系樹脂繊維からなり、繊維目付け(不織布一層あたり)10〜60g/m2、厚み0.1〜0.5mmのスパンボンド不織布が特に好適である。このような不織布で拭取り用シートを製造することにより、薄く柔らかい、拭取り対象に傷を付け難い、繊維の脱落も発生しない等の利点がもたらされる。
【0074】
特に、このようなシート基材12S,12Hを用いる場合、切離部分LBに液体含浸処理をせずに乾燥タイプの工業用ワイパーとして製造するのは好ましい。前述した特定のスパンボンド不織布は、薄く柔らかい、その割には強度が高い、繊維の脱落が無い、オレフィン系樹脂繊維からなるため親油性がある、エンボスによる凹凸を有しており汚れの掻き取り性能に優れる、等の特徴を有しているため、液体を付与せずに乾燥タイプの工業用ワイパーとして特に適している。
【0075】
その他に好適な不織布としては、SMS不織布やスパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布等を例示することができる。上記スパンボンド不織布と同様の効果を得ようとする場合はSMS不織布等も好適であり、柔らかさや保水性を求めるのであればスパンレース不織布やエアスルー不織布等が好適であり、しなやかさや強度を求めるのであればポイントボンド不織布等が好適であり、汚れの掻き取り性能を求めるのであればニードルパンチ不織布等が好適である。構成繊維としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを使用することができる。
【0076】
乾燥タイプのワイパーとする場合は、上記のような疎水性のオレフィン系樹脂からなるスパンボンド不織布に対し、界面活性剤等の親水化剤により処理すると、水分も拭取り可能になるため、好ましい。この場合は、予め親水剤により処理した不織布をシート基材12S,12Hの少なくとも一方に用いたり、切り離し工程506の前にシート基材12S,12Hの少なくとも一方の一部または全体に親水化剤による処理を施したりしてもよいし、切り離し工程506の後に切離部分LBに対し親水剤による処理を施してもよい。もちろん、素材については上記のものに限らず、シート基材12Sと12Hの少なくとも一方を、例えばセルロース系繊維を含む親水性かつ保水性のシート材により構成してもよい。なお、外装シート12に用いる不織布としては、撥水性のものが液分の染み出しを防止できるため好ましく、また汎用されているため、シート基材12S,12Hの少なくとも一方が全体的に親水性であるのは好ましくない。従って、シート基材12S及び12Hに疎水性のオレフィン系樹脂からなるスパンボンド不織布を用い、切り離し工程506の前にシート基材12S及び12Hの脚開口部LOと対応する前後方向範囲のみに親水剤による処理を施す、あるいは切り離し工程506の後に切離部分LBに対し親水剤による処理を施すのが特に好ましい。
【0077】
また、少なくとも一部が親水化剤により処理された切離部分LBに液体を含浸させて、湿潤タイプの拭取り用シートを製造するのも好ましい形態である。この場合における、親水化剤としては、人体への安全性、工程での安全性等を考慮して、高級アルコール、高級脂肪酸、アルキルフェノール等のエチレンオキサイドを付加した非イオン系活性剤、アルキルリン酸エステル塩(オクチル、ドデシル系)、アルキル硫酸塩等のアニオン系活性剤等の単独あるいは混合物等が好ましく用いられ、付与量は、要求される性能によって異なるが、通常は繊維に対して0.1〜2.0wt%程度、特に0.2〜1.0wt%程度とする。また、液体としては、精製水をベースとし、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、グルコースやアミノ酸等の保湿成分、エタノール、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、イソブチルメチルフェノール、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジウム、パラオキシ安息香酸エステル、塩化ベンザルコニウム等の抗菌剤(防腐剤)、アルコール類(エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール等)、グリコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等)等の水溶性溶剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム等のpH調整剤、香料、消臭剤、アロエエキス等の天然抽出物、さらに対物用ワイパーの場合は陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤等の界面活性剤、過酸化水素、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、第4級アンモニウム塩、ポリリジン等の除菌剤といった成分を適宜混合したものを用いることができる。前述した特定のスパンボンド不織布は、オレフィン系樹脂繊維からなるため疎水性であり、そのままでは湿潤タイプの拭取り用シート(例えば、お尻や体を拭くための清拭シートや、ウエットタオル、アルコールタオル等)となりえないが、予め親水化剤を用いて親水化した後に液体を含浸させることで、湿潤タイプの拭取りシートとして製造することができる。製造されるシートは、薄く柔らかい、その割には強度が高い、繊維の脱落が無い、エンボスによる凹凸を有しており汚れの掻き取り性能に優れる、等の特徴を有しているのは前述の場合と同様である。
【0078】
一方、応用フロー(中段平面図)においては、外装シート形成工程501において両シート基材12S,12H(それぞれ外側不織布層及び内側不織布層に相当する)を貼り合わせる際、脚開口部となる部分LBのうち、周縁部の一部及び周縁部により囲まれた部分では両シート基材12S,12Hを接合せずに(剥離可能に接合しても良い)、周縁部の残部では両シート基材12S,12Hを接合する。この接合手段としては、図示例ではホットメルト接着剤を想定しており、その接着部分が点模様で示されているが、ヒートシールや超音波シール等の他の接合手段を用いることも可能であり、その場合、接合部分を曲線状にすることも可能である。かかる工程を追加することによって、図15にも示すように、脚開口部の切り離し工程で切り離される部分LBは、両シート基材12S,12Hが周縁の一部及び周縁部により囲まれた部分を残して接合され、両シート基材12S,12H間に収容空間12kを有する袋状の拭取り用シート12Fとなる。符号12pは、拭取り用シートの周縁の一部に形成された、収容空間12kに連通する開口部を示している。この拭取り用シート12Fにおいては、使用後や使用前において必要に応じて、開口部12pから手又は指を入れることにより、拭取り用シート12Fと手との一体性が高まり、拭取り時のシートが安定し、より容易に拭取りを行うことができるようになる。
【0079】
外装シート形成工程において両シート12S,12H間に弾性伸縮部材15〜19を挟持させる場合は、図示のように、CD方向一方側に取り付ける弾性伸縮部材15及び他方側に取り付ける弾性伸縮部材19を、脚開口部となる部分LBを通過しないように、つまり脚開口部となる部分LBを避けて側方を通過するように取り付けると、製造される拭取り用シート12Fに弾性伸縮部材が存在しなくなり、拭取り時の滑りを阻害する等の問題が発生しないため好ましい。
【0080】
また、図示形態のように内装体200に液不透過性シート11を備え、外装シート12に液不透過性シートを備えないパンツ型使い捨ておむつの場合、製造される拭取りシート12Fはシート基材12Sと12Hとの間に液不透過性シートを有しないためシート2枚分の拭取りが可能な拭取り性に優れたものとなる。図示形態と異なり、脚通し部を形成するシートに液不透過性シートを設ける場合には、脚通し部となる部分を避けて液不透過性シートを設けることにより、同様の構造としても良い。
【0081】
逆に、図示しないが、外装シート形成工程において両シート基材12S,12Hを貼り合わせるのに先立ち、外側シート基材12Sと内側シート基材12Hとの間に液不透過性の遮水シートを設けることもできる。このように遮水シートを設けることにより、肌に直接触れると有害な物質を拭取る場合でも、手袋等の保護具を着用することなく拭取り作業を行うことが可能となる。遮水シートは、内装体200の裏面側に配置する液不透過性シート11等の遮水用シートと同様に、プラスチックフィルムが好ましく、その他の不織布等の素材を用いる場合は、耐水度の高いもの、具体的にはJIS L 1092に規定される耐水度(A法)が400mm以上、特に700mm以上のものが好ましい。遮水シートを外装シート12のほぼ全体あるいは少なくとも前記吸収体56を含む平面領域に設ける場合は、内装体200の裏面側に配置する液不透過性シート11を省略してもよい。
【0082】
図16は、図10及び図11に示す外装シート二分割構造のおむつを製造する場合に適した製造フローを示している。外装シート12を腹側及び背側で分離するとしても、図示の背側外装シート122のように股間側の縁を曲線状にする場合にはトリムが発生するため、本発明を適用することができる。すなわち、外装シート二分割構造の場合、外装シート形成工程において、脚開口部となる部分LBより狭いCD方向間隔を空けて、腹側外装シート121及び背側外装シート122を別々に内側シート基材12H及び外側シート基材12Sを貼り合わせて形成する。そしてこの際、図17にも示すように腹側外装シート121の内側シート基材12Hと背側外装シート122の内側シート基材12Hとに跨るように、離間部分全体を補完する表面補完シート12Tを設け、一体的な内側不織布層を形成するとともに、腹側外装シート121の外側シート基材12Hと背側外装シート122の外側シート基材12Hとに跨るように、離間部分全体を補完する裏面補完シート12Bを設け、一体的な外側不織布層を形成する。切離部分LBを、少なくとも一部が親水性あるいは親水性かつ保水性を有するワイパーとして得ようとする場合は、前述のように外装シート12の性能を考慮すると素材の選択が難しい。そこで、図16及び図17に示す製造フローのように、疎水性の内側シート基材12Hを、CD方向一方側及び他方側で別々に且つ互いの離間部が脚開口部となる部分LBと対応するCD方向中間部内に形成されるように設けるとともに、この離間部分全体を補完する親水性あるいは親水性かつ保水性の表面補完シート12Tを設け、疎水性の外側シート基材12Sを、CD方向一方側及び他方側で別々に且つ互いの離間部が脚開口部となる部分と対応するCD方向中間部内に形成されるように設けるとともに、この離間部分全体を補完する親水性あるいは親水性かつ保水性の裏面補完シート12Bを設けてもよい。その他は前述の形態と同様であり、図18にも示すように、脚開口部の切り離し工程503で切り離される部分LBは、外側不織布層及び内側不織布層が周縁の一部及び周縁部により囲まれた部分を残して接合され、両層間に収容空間を有する拭取り用シート12Fとなる。なお、図示例では、内側不織布層が表面補完シート12Tのみから構成され、外側不織布層が裏面補完シート12Bのみから構成されているが、脚開口部の切り離し領域が広い場合には、それぞれ両側部に内側シート基材12H及び外側シート基材12Sが継ぎ足されるようになる。また、この製造形態では、股間部外装シート12Mが表面補完シート12T及び裏面補完シート12Bを貼り合わせた積層シートにより形成されることとなる。このように構成すると、切離部分LB専用の素材選択が可能であることにより、よりワイパーとして好適な切離部分LBを得ることができる。なお、表面補完シート12T及び裏面補完シート12Bのいずれか一方のみを設けるようにしても良い。
【0083】
脚開口部となる部分LBの形状は適宜定めることができ、図19及び図20(a)に示すように、MD方向長さ(幅)がCD方向長さより長い形状とする他、図14及び図20(b)に示すように、CD方向長さがMD方向長さ(幅)より長い形状とすることもできる。MD方向長さ(幅)/CD方向長さは、0.6〜1.3程度が適当である。いずれにせよ、製造される拭取り用シート12Fの使用容易性等の観点から、可能な限り大きな形状が好ましい。なお、図20のような形状例の場合、得られる袋体12Fは必ずしも左右対称な形状とはならない。この場合も格別の不都合が生じることはないが、必要に応じて左右対称な形状に近づくよう適宜周縁部を切り込んで形状を整えてもよい。この場合は切り込み(トリミング)による若干の資材ロスが生じるが、脚通しとなる部分の切離し片の面積の大部分(例えば80%以上)が利用できれば、資材ロスを減らそうとする本発明の目的は十分に達せられる。
【0084】
他方、上記フローでは切り離し工程503で脚開口部となる部分LBを切り離すこととしたが、切離部分LBを収集及び製品包装するためには設備変更が必要となる。よって、図21に示すように、脚開口部となる部分LBの切り離しに代えて、脚開口部となる部分LBを、MD方向一方側の脚開口部となる部分LBの縁に対して切り離し可能に繋がった状態となるように切断することも提案される。具体的には、MD方向一方側の脚開口部となる部分LBの縁に対しては一部切り残すか又は脚開口部となる部分の縁に沿ってミシン目(図示形態)を形成し、MD方向他方側の脚開口部となる部分の縁は同時に又は後の切り離し工程における切り離しと同時に全て切断するといった手法をとることができる。
【0085】
かくして製造される使い捨ておむつは、一方の脚開口部LOの縁に、脚開口部となる部分LBにより形成された拭取り用シート12F(周縁の一部の形状が脚開口部の縁と同寸且つ同形状である)が切り離し可能に繋がった状態となる。つまり、製造設備の軽微な変更で、脚開口部となる部分LBにより形成される拭取り用シートを、使い捨ておむつの付属物として付属させることができるようになり、しかも使用時には切り離して同時に又は別個に使用できるようになる。
【0086】
また、図22に示すように、外装シート12の形成工程において、脚開口部となる部分LBのうち周縁部により囲まれた部分では両シート基材12S,12Hを接合せずに(剥離可能に接合しても良い)、周縁部の全体では両シート基材12S,12Hを接合した後、脚開口部となる部分LBにおける幅方向略中央部に、MD方向に沿って開口形成用ミシン目72を形成する形態も提案される。開口形成用ミシン目72は、その加工を外装シートの形成工程501に先立って行う場合には両シート基材12S,12Hのいずれか一方に形成することもできるが、両シート基材12S,12Hを貼り合わせた後ではいずれか一方にのみミシン目72を加工するのは困難となるため、両シート基材12S,12Hを一体としてミシン目72を加工するのが好ましい。
【0087】
この場合、製造される拭取り用シート12Fは、図23に示すように、両シート基材12S,12Hの周縁部全体が接合されて袋状に形成されるとともに、開口形成用ミシン目72が形成されたものとなる。この拭取り用シート12Fにおいては、使用後や使用前において必要に応じて、開口形成用ミシン目72を切り離して手又は指を入れることにより、拭取り用シート12Fと手との一体性が高まり、拭取り時のシートが安定し、より容易に拭取りを行うことができるようになる。
なお、この開口形成用ミシン目72を有する拭取り用シート12Fは、図21に示すようにおむつの脚開口部の縁に切り離し可能に繋げる形態にも適用できる。
【0088】
<その他>
上記例はパンツ型使い捨ておむつの製造を利用した実施形態であるが、本発明は、テープ式使い捨ておむつや生理用ナプキンの製造を利用することもできる。一般に、パンツ型使い捨ておむつの製造ラインにおいては腹側及び背側を両側部で接合する都合上、製造ラインのMD方向(流れ方向)に物品の幅方向が沿う搬送形態が採用され、CD方向中間部において脚通し部が切り離されるのに対して、テープ式使い捨ておむつや生理用ナプキンの製造ラインにおいては、製造ラインのMD方向(流れ方向)に物品の前後方向が沿う搬送形態が採用され、CD方向両端部に切欠状の脚通し部を形成することが一般的であるが、このような脚通し部の形成に際しても本発明は適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、工業用ワイパー、産業ワイパー、清拭シート等の拭取り用シートの製造に利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】パンツ型使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図2】パンツ型使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図3】図1の3−3断面図である。
【図4】図1の4−4断面図である。
【図5】図1の5−5断面図である。
【図6】パンツ型使い捨ておむつの要部のみを示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図7】パンツ型使い捨ておむつの要部のみを示す、断面図である。
【図8】製品状態の正面図である。
【図9】製品状態の背面図である。
【図10】パンツ型使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図11】図10の6−6断面図である。
【図12】製造フローを対比的に示す概略図である。
【図13】図12のA−A´断面図である。
【図14】切離部分からなる拭取り用シートの(a)平面図、及び(b)断面図である。
【図15】パンツ型使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。
【図16】他の製造フローの概略図である。
【図17】図16のA−A´断面図である。
【図18】切離部分からなる拭取り用シートの(a)平面図、及び(b)断面図である。
【図19】切離部分からなる拭取り用シートの(a)平面図、及び(b)断面図である。
【図20】脚開口部となる部分の形状例を示す平面図である。
【図21】他の製造フローの概略図である。
【図22】他の製造フローの概略図である。
【図23】切離部分からなる拭取り用シートの(a)平面図、及び(b)断面図である。
【符号の説明】
【0091】
11…液不透過性シート、12…外装シート、12H…内側シート基材、12S…外側シート基材、12T…表面補完シート、12B…裏面補完シート、12r…折り返し部分、25…印刷シート、200…内装体、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、56…吸収体、58…包装シート、60…側部バリヤーカフス、62…バリヤーシート、70…後処理テープ、71…止着テープ、LB…脚開口部となる部分、12F…拭取り用シート、12p…開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部と、この支持部に形成された、脚を通す部分となる開口又は切欠からなる脚通し部と、前記支持部における前記脚通し部以外の部分に設けられた吸収体とを備えた吸収性物品を製造するにあたり、
前記支持部における少なくとも前記脚通し部となる部分を、単層又は複数層の不織布により形成した後、前記支持部における前記脚通し部となる部分をそれ以外の主要部分から切り離すことによって、当該切離部分を拭取り用シートとして得る、
ことを特徴とする拭取り用シートの製造方法。
【請求項2】
前記不織布として、繊度1.0〜10dtexのオレフィン系樹脂繊維からなり、繊維目付け10〜60g/m2、厚み0.1〜0.5mmのスパンボンド不織布を用いる、請求項1記載の拭取り用シートの製造方法。
【請求項3】
前記切離部分に液体を付与せずに乾燥タイプの工業用ワイパーを製造する、請求項2記載の拭取り用シートの製造方法。
【請求項4】
前記切離部分を親水化剤により親水化した後、液体を含浸させて、湿潤タイプの拭取り用シートを製造する、請求項2記載の拭取り用シートの製造方法。
【請求項5】
前記脚通し部となる部分に弾性伸縮部材及び液不透過性シートを設けない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の拭取り用シートの製造方法。
【請求項6】
前記支持部における少なくとも前記脚通し部となる部分を、外側不織布層及び内側不織布層を重ねて形成するとともに、この脚通し部となる部分のうち、周縁部の一部及び周縁部により囲まれた部分では外側不織布層及び内側不織布層を接合しないか又は剥離可能に接合し、且つ周縁部の残部では外側不織布層及び内側不織布層を接合し、
しかる後に前記切り離しを行い、前記切離部分を、前記周縁部の一部が開口部となる袋状の拭取り用シートとして得る、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の拭取り用シートの製造方法。
【請求項7】
前記支持部における少なくとも前記脚通し部となる部分を形成した後、この脚通し部となる部分のうち、周縁部により囲まれた部分では外側不織布層及び内側不織布層を接合しないか又は剥離可能に接合し、且つ周縁部の全体では外側不織布層及び内側不織布層を接合し、
しかる後又はこれに先立って、前記脚通し部となる部分における外側不織布層及び内側不織布層の少なくとも一方に開口形成用ミシン目を形成し、
しかる後に、前記切り離しを行い、前記切離部分を、前記開口形成用ミシン目を切り離すことにより開口部が形成される袋状の拭取り用シートとして得る、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の拭取り用シートの製造方法。
【請求項8】
前記切り離しに代えて、前記支持部における前記脚通し部となる部分を、前記主要部分に対して切り離し可能に繋がった状態となるように部分的に切断する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の拭取り用シートの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の製造方法により製造されたことを特徴とする、拭取り用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−29280(P2010−29280A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192208(P2008−192208)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】