説明

拭取り用紙の製造方法及び拭取り用紙

【課題】原料として古紙パルプが高配合で使用されていながら、紙粉の発生が少ない拭取り用紙の製造方法にする。
【解決手段】古紙パルプの配合割合が90〜100%の原料パルプに、乾燥紙力増強剤を10.0〜25.0kg/t、湿潤紙力増強剤を15〜25kg/t添加し抄紙して、水分率5.8〜6.8%の湿紙を得、この湿紙を乾燥するに際して伸び率が17.0〜25.0%となるようにクレープ加工を施して拭取り用紙を得る。ここで、前記古紙パルプの配合割合は前記原料パルプ全量に対する質量比であり、前記乾燥紙力増強剤及び前記湿潤紙力増強剤の添加量は前記原料パルプを水で懸濁した懸濁液1t当たりの質量であり、前記伸び率は「((伸びた状態の長さ−縮んだ状態の長さ)/縮んだ状態の長さ)×100」である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵埃や水分等を拭取るために使用される拭取り用紙の製造方法及び拭取り用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、研究・検査施設や精密機器取扱い施設等においては、試験管や実験器具、電子部品等に付着した塵埃や、水洗い後における水分等を拭き取るために、いわゆるワイパー等と呼ばれる拭取り用紙が使用されている。この拭取り用紙は、拭取り作業後に試験管等に紙粉が付くと問題であることから、磨耗強度が強く、紙粉の発生が少ないものであることが要求される。
一方、近年では、資源の有効利用という観点から、印刷用紙、葉書、名刺等の紙製品一般に、原料パルプとして古紙パルプが使用されるようになっている。しかしながら、古紙パルプは、叩解が進んでいるため、バージンパルプに比べて繊維が短く、微細繊維を多く含む。したがって、紙粉の発生が特に問題となる拭取り用紙については、原料パルプとして古紙パルプを少なくとも高配合で使用することはないのが現状である。むしろ、例えば、パルプ含有シートに不織布を貼り合わせる(例えば、特許文献1参照)、あるいはかかる不織布を特にメルトブローン不繊布に限定する(例えば、特許文献2参照)、あるいはかかる不繊布を特にリヨセル繊維を水流交絡することで得られるスパンレース不織布に限定する(例えば、特許文献3参照)等、原料として不繊布を使用し、あるいはこの不繊布として適するものを模索する等して、原料として古紙パルプだけではなくバージンパルプの使用をも減らす方向にある。
【特許文献1】特開2001−314360号公報
【特許文献2】特開2002−88660号公報
【特許文献3】特開2005−143523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする主たる課題は、原料として古紙パルプが高配合で使用されていながら、紙粉の発生が少ない拭取り用紙の製造方法及び拭取り用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
古紙パルプの配合割合が90〜100%の原料パルプに、乾燥紙力増強剤を10.0〜25.0kg/t、湿潤紙力増強剤を15〜25kg/t添加し抄紙して、水分率5.8〜6.8%の湿紙を得、この湿紙を乾燥するに際して伸び率が17.0〜25.0%となるようにクレープ加工を施して拭取り用紙を得る、ことを特徴とする拭取り用紙の製造方法。
ここで、前記古紙パルプの配合割合は前記原料パルプ全量に対する質量比であり、前記乾燥紙力増強剤及び前記湿潤紙力増強剤の添加量は前記原料パルプを水で懸濁した懸濁液1t当たりの質量であり、前記伸び率は「((伸びた状態の長さ−縮んだ状態の長さ)/縮んだ状態の長さ)×100」である。
【0005】
〔請求項2記載の発明〕
原料パルプの90〜100%が古紙パルプで、
前記原料パルプの抄紙に際して、乾燥紙力増強剤が10.0〜25.0kg/t、湿潤紙力増強剤が15〜25kg/t添加され、前記抄紙によって水分率5.8〜6.8%の湿紙が得られ、この湿紙の乾燥に際して伸び率が17.0〜25.0%となるようにクレープ加工が施されている、ことを特徴とする拭取り用紙。
ここで、前記古紙パルプの配合割合は前記原料パルプ全量に対する質量比であり、前記乾燥紙力増強剤及び前記湿潤紙力増強剤の添加量は前記原料パルプを水で懸濁した懸濁液1t当たりの質量であり、前記伸び率は「((伸びた状態の長さ−縮んだ状態の長さ)/縮んだ状態の長さ)×100」である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、原料として古紙パルプが高配合で使用されていながら、紙粉の発生が少ない拭取り用紙の製造方法及び拭取り用紙となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
本形態の拭取り用紙の製造方法においては、原料パルプとして、古紙パルプを90〜100%、好ましくは100%使用する。本形態の特徴は、古紙パルプが高配合で使用されていながら、紙粉の発生が少ないことにあり、古紙パルプの配合割合が多いほど、本発明の優位性が発揮される。したがって、古紙パルプ100%の場合に、本発明の優位性が最も発揮される。なお、古紙パルプの配合割合は、原料パルプ全量に対する質量比である。
【0008】
本形態において、古紙パルプの原料となる古紙の種類は、特に限定されず、例えば、新聞古紙、雑誌古紙、書物古紙、無選別古紙等の中から適宜選択して使用することができる。また、古紙から古紙パルプを製造する方法も特に限定されず、例えば、離解、脱墨等の公知の工程を経て古紙パルプを得ることができる。
【0009】
ただし、本形態においては、雑誌古紙を原料とし、かつカナダ標準ろ水度(JIS P 8121:1995)が250〜350ml、好ましくは250〜300ml、かつ繊維長が0.1〜1.1mm、好ましくは0.8〜1.1mmとなるように離解、脱墨等された古紙パルプを使用するのが好適である。このような古紙パルプを使用すれば、柔軟性に富み、かつ嵩高で、強度の強い拭取り用紙となるためである。
【0010】
一方、原料パルプとして、古紙パルプ以外のパルプをも使用する場合において、そのパルプの種類は、特に限定されない。古紙パルプ以外のパルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の木材繊維を含むパルプを主原料として化学的に処理されたクラフトパルプや、チップを機械的にパルプ化したグランドパルプ、木材又はチップに化学薬品を添加しながら機械的にパルプ化したケミグランドパルプ、チップを柔らかくなるまで蒸解した後、リファイナー等でパルプ化したセミケミカルパルプ等のバージンパルプを使用することができ、好ましくはミルクカートン再生パルプ、牛乳パック再生パルプ等を使用することができる。
【0011】
次に、古紙パルプを含む原料パルプは、短網抄紙機や丸網抄紙機等の公知の抄紙機を利用して抄紙する。この抄紙は、基本的に公知の抄紙方法と同様に行うことができる。ただし、この抄紙は、乾燥紙力増強剤を10.0〜25.0kg/t、好ましくは15.0〜20.0kg/t、添加し、かつ湿潤紙力増強剤を15〜25kg/t、好ましくは20.0〜25.0kg/t添加して行う(乾燥紙力増強剤と湿潤紙力増強剤との添加量比は、1:1.25〜1.5)。乾燥紙力増強剤の添加量が10.0kg/t未満であると、紙面の表面強度が低下し、拭取り、摩擦等こすれたときに繊維が脱落するおそれがある。他方、乾燥紙力増強剤の添加量が25.0kg/tを超えると、白水系の過剰な濃度上昇によって、用紙に汚れが付着する。また、湿潤紙力増強剤の添加量が15kg/t未満であると、湿潤紙力が不足し、水が付着した際に容易に破れが生じ拭取用紙としての機能が満たされない。他方、湿潤紙力増強剤の添加量が25kg/tを超えると、白水系内の過剰な濃度上昇により、抄紙用具及び用紙への汚れ付着が生じる。なお、乾燥紙力増強剤及び湿潤紙力増強剤の添加量は、原料パルプを水で懸濁した懸濁液1t当たりの質量である。
【0012】
本形態において、乾燥紙力増強剤としては、その種類が特に限定されず、例えば、アクリルアミド−ビニルモノマー共重合体、アニオン性ポリアクリルアミド等のポリアクリルアミド(PAM)、ポリアミド・エピクロロヒドリン、澱粉、酸化澱粉、カルボキシメチル化澱粉等の澱粉、ポリビニルアルコール等を、例示することができる。ただし、これらの中でも、カチオン性ポリアクリルアマイドを使用するのが好ましい。
【0013】
一方、本形態において、湿潤紙力増強剤としては、その種類が特に限定されず、例えば、尿素ホルモアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、ポリアミド・ポリアミン・エピクロルヒドリン樹脂、ポリアミド・エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリアミド等を、例示することができる。ただし、これらの中でも、ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂を使用するのが好ましい。
【0014】
本形態においては、抄紙に際して、乾燥紙力増強剤及び湿潤紙力増強剤のほか、例えば、耐水性を付与するサイズ剤、紙の色調を調整する染料や顔料、サイズ剤、染料、顔料、紙力増強剤等を原料パルプに定着させる硫酸バンド等を添加することができる。
【0015】
本形態においては、以上の抄紙によって、公知の抄紙方法による場合と同様に、湿紙を得る。ただし、以上の抄紙は、かかる湿紙が、水分率5.8〜6.8%となるように、好ましくは6.0〜6.3%となるように行う。湿紙の水分率が5.8%未満であると、スリッター加工時に切断面からの紙扮発生量が増える傾向にある。他方、湿紙の水分率が6.8%を超えると、紙厚が不足し、数枚の紙を重ねたときの嵩が不足し、ボリューム感、吸収性の低下に繋がる。
【0016】
次に、この湿紙は、適宜公知の処理を行った後、ヤンキードライヤーやヤンキードライヤーに数本のアフタードライヤーを組み合わせた乾燥機等の公知の乾燥機を使用して乾燥する。そして、この乾燥に際しては、伸び率が17.0〜25.0%となるように、好ましくは18.0〜25.0%となるようにクレープ加工を施す。伸び率が17.0%未満であると、抄紙後のスリッター加工を除くプライ加工、エンボス加工において裂け、破れ等が生じ加工効率を下げることとなる。他方、伸び率が25.0%を超えると、抄紙後の加工過程で紙のダブり、しわ等により加工適性が著しく低下するおそれがある。なお、この伸び率は、「((伸びた状態の長さ−縮んだ状態の長さ)/縮んだ状態の長さ)×100」である。
【0017】
以上のクレープ加工を施す具体的な方法は、特に限定されない。例えば、乾燥機としてヤンキードライヤーを使用する場合であれば、ドライヤーロール面から紙を剥がす際のブレードを利用して、付与することができる。この場合、伸び率は、例えば、かかるブレードの角度やブレードの厚み、ドライヤーへの張付き・接着等を調節することによって、調節することができる。
【0018】
以上のような乾燥処理を行った後、必要によってはカレンダー処理等の公知の処理を行うことによって、本形態の拭取り用紙が得られる。ただし、吸水性能の向上や用紙の引張強度の向上、あるいは拭取り性能の向上を図る場合においては、以上の乾燥をして得たシートを2枚、3枚、4枚又はそれ以上の複数枚重ね合わせて、エンボス加工を施し、積層構造とするのが好ましい。この際、エンボス加工のエンボス圧は、特に限定されるものではないが、通常1.0〜5.0kg/cm、好ましくは1.0〜1.5kg/cmである。エンボス圧が1.0kg/cm未満であると、プライ剥がれが生じ易くなる。他方、エンボス圧が5.0kg/cmを超えると、繊維破壊が生じて、強度の低下、繊維の脱落、紙粉発生に繋がる。
【実施例1】
【0019】
次に、本発明の実施例を説明する。
まず、原料パルプに、適宜乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤を添加し抄紙して湿紙を得た。この湿紙は、ヤンキードライヤーで乾燥した。この乾燥に際しては、クレープ加工を施した。そして、このクレープ加工を施した紙を4枚重ね合わせ(4プライ)、エンボス加工を施して、サンプルとした。各サンプルについて、耐磨耗強度、紙粉及びプライ離れの評価を行った。製造条件及び結果を、表1に示した。なお、表中の記載の詳細は、次のとおりである。
〔ブレード角度〕
ドライヤーロール面に対するブレード先端の刃先角度である。
〔NBKP〕
針葉樹晒クラフトパルプである。配合率は質量%である。
〔MDIP〕
雑誌古紙パルプである。配合率は質量%である。
〔ろ水度〕
JIS P 8121:1995に基づいて測定したカナダ標準ろ水度である。
〔乾燥紙力増強剤〕
乾燥紙力増強剤としては、ハリマ化成株式会社製のハーマイドDN−420カチオン性ポリアクリルアマイドを使用した。
〔湿潤紙力増強剤〕
湿潤紙力増強剤としては、星光PMC株式会社製のWS4024 ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂を使用した。
〔クレープ率〕
ドライヤーとリールとの速度差をリール速度で割った数値をパーセント表示したものである。
〔坪量〕
JIS P 8124:1998に基づいて測定した値である。
〔紙厚〕
尾崎製作所製のピーコックによって測定した値である。
〔乾燥紙力〕
JIS P 8113:2006に基づいて測定した値である。
〔伸び率〕
((伸びた状態の長さ−縮んだ状態の長さ)/縮んだ状態の長さ)×100である。
〔湿潤紙力〕
JIS P 8135:1998に基づいて測定した値である。
〔水分率〕
湿紙の((水分質量/湿紙質量)×100)である。
〔耐磨耗強度〕
JIS P 8136:1994に基づいて測定した値である。
〔紙粉〕
50組のサンプルを10組ずつに分けた後、まず10組のサンプルをナイロン袋に入れ、この袋の端を持ち20回振り紙紛を落とした。次いで、ナイロン袋の反対側を持ち同じように20回振り紙紛を落とした。この作業を繰り返し行い、50組のサンプル全てについて紙紛を落とした後、質量を測定した。この質量からナイロン袋の質量を除いた値を紙紛量とした。
〔プライ離れ〕
4枚のシートをエンボス加工し、貼り合せした場合のプライ離れの有無である。
【0020】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、塵埃や水分等を拭取るために使用される拭取り用紙の製造方法及び拭取り用紙として、適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙パルプの配合割合が90〜100%の原料パルプに、乾燥紙力増強剤を10.0〜25.0kg/t、湿潤紙力増強剤を15〜25kg/t添加し抄紙して、水分率5.8〜6.8%の湿紙を得、この湿紙を乾燥するに際して伸び率が17.0〜25.0%となるようにクレープ加工を施して拭取り用紙を得る、ことを特徴とする拭取り用紙の製造方法。
ここで、前記古紙パルプの配合割合は前記原料パルプ全量に対する質量比であり、前記乾燥紙力増強剤及び前記湿潤紙力増強剤の添加量は前記原料パルプを水で懸濁した懸濁液1t当たりの質量であり、前記伸び率は「((伸びた状態の長さ−縮んだ状態の長さ)/縮んだ状態の長さ)×100」である。
【請求項2】
原料パルプの90〜100%が古紙パルプで、
前記原料パルプの抄紙に際して、乾燥紙力増強剤が10.0〜25.0kg/t、湿潤紙力増強剤が15〜25kg/t添加され、前記抄紙によって水分率5.8〜6.8%の湿紙が得られ、この湿紙の乾燥に際して伸び率が17.0〜25.0%となるようにクレープ加工が施されている、ことを特徴とする拭取り用紙。
ここで、前記古紙パルプの配合割合は前記原料パルプ全量に対する質量比であり、前記乾燥紙力増強剤及び前記湿潤紙力増強剤の添加量は前記原料パルプを水で懸濁した懸濁液1t当たりの質量であり、前記伸び率は「((伸びた状態の長さ−縮んだ状態の長さ)/縮んだ状態の長さ)×100」である。

【公開番号】特開2008−253284(P2008−253284A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95405(P2007−95405)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】