説明

指紋撮影装置

【課題】装置全体の大型化を抑制することができる指紋撮影装置を提供する。
【解決手段】指紋を含む検体表面に光を照射するための光源3と、検体表面4の指紋5を含む画像を撮影するための撮影機11と、この撮影機11を支持する一端側2aと、検体表面側に位置させる他端側2bとを有する筒状遮光体2と、を備え、光源3を撮影機11の撮影レンズ10の表面近傍に配置したことを特徴とする。光源3を撮影レンズ10の口径よりも小さいサイズに設定し、かつ撮影レンズ10の中央部に配置することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指紋を含む検体表面に光を照射するための光源と、検体表面の指紋を含む画像を撮影するための撮影機とを備えた指紋撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
犯罪現場に残された遺留品から容疑者を割り出したり、身元を確認したりする方法として、その遺留品の表面に付着残留している指紋を検出する方法が広く用いられている。
【0003】
人の皮膚からは、水分を主体として、その他に塩化ナトリウム、カリウム、カルシウムといった無機質、アミノ酸、乳酸といった有機物、皮脂などが絶えず分泌されており、物体表面に残された指紋は、これらの分泌物が指先から物体表面へと転写されて形成されたものである。物体表面に形成された指紋には、可視的な顕在指紋と、肉眼では見えないが特別な手段によって検出可能な潜在指紋とに分けられる。
【0004】
顕在指紋は、そのままゼラチン紙に転写するか、特殊撮影方法を使用し採取される。また、潜在指紋の検出には、アルミニウムなどの微粉末を潜在指紋の成分に付着させて顕在化する粉末法(固体法)、ニンヒドリンなどを含む溶液を付着させて潜在指紋の成分と反応させて顕在化する溶液法(液体法)、ヨウ素ガスやシアノアクリレートガスなどを潜在指紋の成分と反応させて顕在化する気体法などの方法が用いられている(例えば、特許文献1など)。
【0005】
そして、顕在指紋、および顕在化された潜在指紋は、証拠保全のために写真撮影されることがある。しかしながら、例えば、前述したシアノアクリレートガスで処理された指紋は、顕在化されてはいるものの、容易に目視観察することができず、それらの指紋を写真撮影する際には、斜めからライトで光を照射し、指紋隆線に影をつけて撮影を行なっている。そのため、その撮影作業には多大な時間と労力を要している。また、前述の固体法、液体法、気体法などの方法により潜在指紋を顕在化してしまうと、元々の指紋に何らかの手を加えることになり、指紋を生のまま保存することができなくなってしまう。
【0006】
この問題点を解決するための手段として、下記の特許文献2には、外光を遮断する外光遮断フード内部に光を照射する光源と、光源から発せられた光を軽度に収束させてその光が検体表面で正反射し撮影機に入射するように配設した光学系と、前記外光遮断フードに着脱自在に固定し潜在指紋を含む検体を撮影する撮影機とを備える指紋撮影装置が記載されている。この指紋撮影装置によれば、撮影機を取り外して指紋を容易に目視することができ、目視観察が困難な不鮮明な指紋も短時間に簡単な操作で写真撮影することができる。
【0007】
また、下記の特許文献3にも、外光を遮断する筺体内に、紫外線光源、レンズ、固体撮像素子(撮影機に相当)等を配置した指紋撮影装置が記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開昭60−502088号公報
【特許文献2】特開平6−147852号公報
【特許文献3】特開2001−34738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記先行技術における課題は次の通りである。すなわち、引用文献2では、光源からの光を検体表面に導入するためのハーフミラーを設けており、撮影機の光路(垂直方向)に直交するように光源用の光路(左右方向)を構成しているため、装置全体が大きくなり、撮影を行うときに取り付けた装置がバランスを失わないように支えておく必要が生じる。従って、操作性の面で改善する余地があった。
【0010】
また、引用文献3では、ハーフミラーは設けていないが、撮像用の光路と光源用の光路が傾斜した状態で設定されているため、やはり装置が大型化せざるをえない。また、撮像用の光路を斜めに設定すると、検体表面の全域に焦点を合わせることが難しくなり、不鮮明な指紋画像が撮影される可能性がある。
【0011】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、装置全体の大型化を抑制することができる指紋撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため本発明に係る指紋撮影装置は、
指紋を含む検体表面に光を照射するための光源と、検体表面の指紋を含む画像を撮影するための撮影機と、この撮影機を支持する一端側と、検体表面側に位置させる他端側とを有する筒状遮光体と、を備え、
前記光源を前記撮影機の撮影レンズの表面近傍に配置したことを特徴とするものである。
【0013】
この構成による指紋撮影装置の作用・効果を説明する。筒状遮光体の一端側に撮影機が支持され、撮影時には、他端側が検体表面に位置される。また、光源は、撮影機の撮影レンズの表面近傍に配置されるので、撮影光路と光源光路とは一致もしくはほぼ一致する状態で構成することができる。したがって、ハーフミラーのような部材を設ける必要もなく、装置全体の大型化を抑制することができる。さらに、撮影レンズの表面近傍に配置するので、光源の形状が写りこむこともなく、鮮鋭度の良い指紋画像を撮影することができる。
【0014】
本発明において、前記光源を前記撮影レンズの口径よりも小さいサイズに設定し、かつ撮影レンズの中央部に配置することが好ましい。中央部に配置することで、光源の光路を撮影光路と一致させることができ、検体表面を均一に照射することができる。また、レンズの口径よりも小さな光源を用いるので、被写体光を撮影レンズで捉えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る指紋撮影装置の実施形態の一例について図面を用いて説明する。図1は、指紋撮影装置の外観構成を示す斜視図である。図2は、指紋撮影装置の内部構成を示す概略図である。図3は、光源の構成を示す正面図である。指紋撮影装置Aは、主として、撮影部1、遮光部2(筒状遮光体に相当)とから構成される。
【0016】
<第1実施形態の構成>
撮影部1として、撮影機11を用いる例を図に示す。なお、撮影機11としては、スチールカメラやCCDカメラ、ビデオなどを用いることができる。また、撮影機11には、マクロ撮影が可能なマクロレンズ10(撮影レンズに相当)が取り付けられている。
【0017】
遮光部2は、図2にも示すように円筒形の筒状を呈しており、外光を遮断する機能を有する。なお、形状については上記に限定されるものではなく、角筒状等に形成されていてもよい。遮光部2の一端側2aは、撮影機11のマクロレンズ10が支持されている。撮影機11を支持する方法としては、例えば、マクロレンズ10の先端に形成されたフィルター取り付けねじを利用してもよいし、単に載置するような構成を採用してもよい。
【0018】
遮光部2の他端側2bは、検体表面4に位置させられる。検体表面4の上に存在する指紋5が真中に来るように遮光部2が位置させられる。遮光部2の中心と、マクロレンズ10の光軸とは、一致した状態である。
【0019】
光源3は、検体表面4に光を照射するためのものであり、遮光部2の一端側2aに取り付けられている。光源3は、マクロレンズ10を構成するレンズ群のうち、最前面に位置するレンズ10aの表面近傍に設けられる。光源3は、一端側2aに支持部3aを介して取り付けられており、ちょうどレンズ10aの中心に位置している。光源3への電源供給ライン等は、支持部3aを介して行われる。
【0020】
指紋5を含む検体表面4の画像は、結像面12に位置するCCD等の撮像素子やフィルムにより捉えられる。このとき、光源3は、レンズ10aの表面近傍に配置しているので、光源3の形状が結像面12に結像することはない。従って、光源3がレンズ10aの最前面に位置していても、指紋5の画像を明瞭に撮影することができる。
【0021】
また、撮影機11のファインダーで画像を確認する時も、光源3の形状は結像しないので、合焦操作やその他の操作において支障になることはない。
【0022】
なお、光源3の形状はマクロレンズ10の口径よりも小さな形状であり、被写体光をマクロレンズ10に取り込むことができる。
【0023】
光源3の具体例としては、LEDを利用した光源とすることが好ましい。指紋画像を明瞭に撮影するためには、できるだけ検体表面4に対して垂直な光を照射し、指紋5の形成箇所で乱反射させる必要がある。従って、比較的指向性の強いLEDを光源とすることが好ましい。もちろん、光源3としては、LEDに限定されるものではなく、EL光源や蛍光灯などを利用してもかまわない。
【0024】
以上の構成によれば、簡素な構成で指紋撮影装置Aを構成することができる。遮光部2は、先行技術とは異なり、単純な筒状に形成できるので、重心も光軸近傍に位置するため、安定した状態で撮影することができる。また、遮光部2の一端側2aに光源3が配置されるので、遮光部2を小型化することができ、指紋撮影装置A全体の大きさも抑制することができる。
【0025】
<第2実施形態の構成>
次に、光源3の配置構成が異なる実施形態を図4,5により説明する。この実施形態では、光源6がリング状であり、真中に被写体光を通過させるための穴が形成される。光源6は、遮光部2の一端側2aに取り付けられる。
【0026】
<別実施形態>
光源3の配置構成は、本実施形態で説明したものに限定されるものではなく、種々の変形例が考えられる。例えば、図3では、レンズ10aの中心に光源3を配置しているが、中心ではなく、周辺に配置してもよい。また、光源3を遮光部2に取り付けるのではなく、マクロレンズ10に取り付けるように構成してもよい。例えば、マクロレンズ10のフィルター取り付けネジを利用して取り付けるようにしてもよい。
【0027】
光源3の駆動回路については、図示はしてないが別途設けることができる。あるいは、撮影機11の内部に駆動回路を持たせるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】指紋撮影装置の外観構成を示す斜視図
【図2】指紋撮影装置の内部構成を示す概略図
【図3】光源の構成を示す正面図
【図4】光源の配置構成が異なる実施形態を示す図
【図5】光源の構成を示す正面図
【符号の説明】
【0029】
A 指紋撮影装置
1 撮影部
2 遮光部
2a 一端側
2b 他端側
3 光源
3a 支持部
4 検体表面
5 指紋
6 光源
10 マクロレンズ
11 撮影機
12 結像面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指紋を含む検体表面に光を照射するための光源と、
検体表面の指紋を含む画像を撮影するための撮影機と、
この撮影機を支持する一端側と、検体表面側に位置させる他端側とを有する筒状遮光体と、を備え、
前記光源を前記撮影機の撮影レンズの表面近傍に配置したことを特徴とする指紋撮影装置。
【請求項2】
前記光源を前記撮影レンズの口径よりも小さいサイズに設定し、かつ撮影レンズの中央部に配置したことを特徴とする請求項1に記載の指紋撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−35912(P2010−35912A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204069(P2008−204069)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】