説明

指装着型入力デバイスとプログラム

【課題】 指の自由度を束縛しないように指に装着するデバイスを用いてタッチパネルの接触位置検出機能を多用途・多機能に利用することを可能とする。
【解決手段】 タッチパネルとの接触に関する情報を、指の触覚にフィードバックする仕組みを供えた接触部を指の自由度を束縛しないように配置したフレームで支持して指に装着することで、操作者に束縛感を与えずに接触位置情報を明瞭に把握しながら座標情報を正確、快適に入力することを可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にコンピュータ用の入力装置に係り、特に手指に装着してタッチパネル上で規則的な接触位置パターンを生成して、データや指令を入力する指装着型入力デバイスとプログラムに関する。
【0002】
近年、タッチパッド、タッチパネル、タッチディスプレイといった指やスタイラスでタッチして操作する接触位置検出装置(以下タッチパネルと総称する)が普及している。こうした装置では指や器具でタッチパネル表面を接触した地点の座標の入力が基本になる。本発明では、従来のスタイラスに代わるタッチパネル用の入力器具として、指に装着する新しいタイプの入力デバイスを考案した。従来のスタイラスでは、座標系列を手書きで入力していたため、座標系列は不規則に変動し、特殊な手書き文字認識方法と組み合わせなければ、文字や指令などを入力することができず、入力誤りも多かった。一方、本入力デバイスでは、変動の少ない規則的な座標系列を生成することができ、単純な照合処理によって正確に文字や指令などを入力することができる。また操作者がタッチパネルとの接触状況を触覚を通じて明瞭に把握できるように触覚フィードバックの機構を導入している。さらに、こうしたデバイスを指に装着してしまうと指の自由が奪われて、強い束縛感を感じることが問題であったが、本発明では束縛感を与えることのないように本デバイスを指に固定する固定部から指の側面または上面を辿って指先端に至るフレーム部を通じて、指先端においてタッチパネルとの接触部(突起部)を支持するようにし、指の下面(物を触ったり摘んだりする時に使う指の腹側の面)を開放するようにして、束縛感を軽減している。本発明では以上に述べた指装着型入力デバイスに加えて、それがタッチパネルに接触する際に生じる座標系列をデータや指令に対応付けるプログラムを与える。また単に接触位置を利用するに留まらず、タッチパネルに接して転がる転動体と呼ぶ部材を、上記フレームで指先端において支持し、転動体をタッチパネル上で転動させたときに検出される転動方向と転動量を利用して入力する情報を定める指装着型入力デバイスとプログラムを与える。
【背景技術】
【0003】
現在タッチパネルへの座標入力に使われる一般的な入力デバイスはスタイラスと呼ばれるペン状の器具である。しかしながら一度スタイラスを持ってしまうと、ボタンを押すなどの他の操作ができなくなることが問題であった。またスタイラスで手書きで座標入力する場合には、入力する座標系列が不規則に変動するため、その変動を吸収しながら、操作者の意図を解釈するために、文字認識技術等で開発された特殊な工夫が必要となり、そうした工夫を用いても解釈の誤りが多発することが問題であった。
【0004】
そこで、本発明では、指が特定の器具を持つことによる束縛を避け、かつ指で手書き入力することによる不正確さを排除するために、タッチパッドに座標系列を入力する器具を、物に触れたり摘んだりするときに使用する指の下面を避けて、指に装着する構成とし、タッチパネル上で特定の位置関係を持った接触位置の座標系列を正確に生成する機能を備え、さらにその座標系列が正しく生成できているかどうかを操作者が触覚を通じて把握できるように、触覚フィードバックを生成して操作者の指の触覚を刺激する仕組みを備えた、指装着型の入力デバイスとプログラムを与える。
【0005】
本発明に関連する特許文献を以下に示す。
【特許文献1】特開2003−208262号公報
【特許文献2】特開2001−306238号公報
【特許文献3】特開2004−46684号公報
【特許文献4】特開2003−208262号公報
【特許文献5】特開2003−167669号公報
【特許文献6】特開2005−293512号公報
【0006】
特許文献1と2では、タッチパネル上でローラ状の転動体を転がす操作によってデータや指令を入力する方法が示されている。いずれもローラ状の特殊な器具を用いることによって規則的な座標系列を生成している点が本発明と関連している。また特許文献3でも器具を使って規則的な接触点系列を生成しているが対象はタッチパネルではなく、スイッチの電気接点となっている。
【0007】
次に特許文献4と5はタッチパネル上で座標系列を特殊な形態で生成して、その特殊な形態で以って特定の指令をコンピュータに伝えようとしている点で本特許と関連はあるが触覚刺激との組み合わせで操作性の向上を目的としたものではない。また特許文献6は、指装着型入力デバイスに関する発明であるが、タッチパネル上で規則的な座標系列を生成する器具に関わる発明ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の状況に鑑みて考案されたものであり、指の自由度を束縛することなく指とタッチパネルの間に特殊な器具を介在させることによって、タッチパネルの接触位置検出機能を多用途・多機能に応用せしめ、かつ入力状況を操作者が触覚を通じて把握できるようにするための指装着型入力デバイスとプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の指装着型入力デバイスは、その表面上で接触点または加圧点の位置を検出する機能を備えたタッチパネルと共に使われる。このデバイスは、操作者の指に装着して使用する指装着型入力デバイスであるが、そのフレーム部は、装着時に、デバイスを指に固定するための指固定部から、指の側面または上面を辿って指先端にまで至り、指先端においてタッチパネルに接触する突起部を支持するようにしている。そうすることで、指の下面(腹部)にはフレーム部が来ないようにして、物を摘んだり触ったりする際に用いる指の下面はフレーム部で遮られることなく、露出するように構成している。このように指の下面がフレーム部に覆われることがないため、本デバイスを装着した状態でも指の自由度は束縛されずに済むことが本発明の特徴の1つである。
【0010】
本発明の請求項2に記載の指装着型入力デバイスは、上述した突起部を次のように構成している。すなわち、タッチパネルに接触する接触用突起と指を刺激する刺激用突起とを突起部の構成要素とし、接触用突起がタッチパネルに触れる際に刺激用突起が指側に動いて、指の触覚を刺激するように構成している。接触用突起と刺激用突起は一体構成としても良く、その場合には、その一端がタッチパネルに触れるとその反動で他端が指側に動いて、指の触覚を刺激するように構成することができる。この刺激を通じて、操作者は突起部が確実にタッチパネルに触れたこと、他の部分が誤ってタッチパネルに接触したのではないことを、確認することができる。また、接触用突起と刺激用突起は複数設けても良く、両者の動作を連動させるために種々の機構を介在させることができる。
【0011】
本発明の請求項3に記載の指装着型入力デバイスは、前述したフレーム部の全体またはその一部を柔軟性及び弾力性に富む素材で構成している。この素材は、前述した突起部またはその構成要素である接触用突起と刺激用突起(以下簡略のためこれらを総称して単に突起と呼ぶ)を支持するところに部分的に導入するだけでも効果がある。また後述するように接触用突起と刺激用突起を複数導入する場合には、それらを個別に柔軟性または弾力性を持つ素材で支持して、それらが独立に動けるようにする必要がある。この場合にフレーム部全体を一体として柔軟性または弾力性のある素材で構成してしまうと、全ての突起が同時に動くことになってしまうので好ましくない。そこで各突起が別個に動くように素材に適当な切れ目を入れると良い。以上の点に注意しながら、フレーム部と突起を一体に構成できると、突起をフレーム部に対して相対的に動くようにする機構が不要になるため、デバイスの構成が単純になり、製造コストを下げることのできる利点がある。こうして一体に構成してコストを下げながらも、素材の柔軟性及び弾力性によって、突起の一端が前記タッチパネルに触れるとその反動でフレーム部またはその一部が変形し他端が指の触覚を刺激するように動くようになる。
【0012】
本発明の請求項4に記載の指装着型入力デバイスは、突起がフレーム部に対して相対的に動くように構成している。例えば、後に図1に示す構成では、接触用突起と刺激用突起が一体となって、フレームによって支持された保持部の穴の中をスライド移動する。このスライド移動はフレーム部に対する相対的な運動になっている。こうした機構を設けると上記の一体構成の場合と比較して製造コストは上昇するが、突起とタッチパネルの微妙な接触でも確実に指の触覚に伝わるため、より敏感に接触を把握できるデバイスを構成できる。
【0013】
本発明の請求項5に記載の指装着型入力デバイスは、前述した接触用突起と刺激用突起を複数個備えており、刺激用突起はそれぞれが独立に動いて指の触覚を刺激するように構成されている。これらの突起を備えた突起部は前述したフレーム部で支持されており、指の運動により、複数ある接触用突起が次々とタッチパネルに接触する。この接触の順序は指の運動の形態に依存して変化する。各接触用突起のタッチパネルへの接触を特定の刺激用突起の動きと連動させれば、複数ある接触用突起のどれがタッチパネルに接触したかということを、刺激用突起からの刺激を通じて区別できるようになる。各接触用突起がタッチパネルに接触する度に、それに対応する刺激用突起が指の触覚を刺激して操作者にその突起が接触したことを通知するので、操作者はこの刺激を手掛かりにして運動を調整し、接触用突起のタッチパネルへの接触の順序を正しくコントロールすることができる。こうして操作者が適切に運動を行い、所定の順序で所定の位置に接触用突起を接触させて行けば、突起の位置関係が固定していることから、接触座標点の位置関係も変動することなく、正確に規定された関係となり、タッチパネル側で検出される接触位置の座標系列も規則的となって入力する情報を正確に指定することができる。これに対して従来のスタイラスで手書きで座標入力する場合には、タッチパネル上の接触位置の座標系列は入力操作の度に変動するため、手書き文字によって正しくデータ入力を行うためには、その変動を吸収する特殊な工夫が必要となる。また吸収しきれない変動については誤入力を生じることとなる。
【0014】
本発明の請求項6に記載の指装着型入力デバイスは、前述した突起部に転動体と呼ぶ部材を設けたものである。タッチパネルに接触しながら、その上で転がって移動する運動を転動と呼ぶことにする。また転がって移動する物体を転動体と呼ぶことにする。操作者は、まずは転動体をタッチパネルに接触させて、そこを始点として転動体を転動させて情報を入力する。転動体の形状としては、球体やラグビーボール形状等、各種のものがある。転動体は転がる際に指の触覚を刺激して操作者に転動方向と転動量を通知するので、操作者はこの刺激を手掛かりにして運動を調整し、転動方向と転動量を正しくコントロールすることができる。また従来のスタイラスで座標入力する場合には指の震えがスタイラス先端に伝わりやすく、座標系列が乱れることが多かったが、転動体を転がしながら座標入力する場合には、震えが軽減されて正確に座標系列を入力することが可能になる。
【0015】
本発明の請求項7に記載のプログラムは、以上に述べた指装着型入力デバイスと組み合わせて使用するプログラムである。このプログラムでは、まず登録時あるいは設計時に、操作者の各操作に対応する座標系列を登録し、また登録した座標系列に対応するデータや指令を定義してテーブルなどにしまうようにする。すなわち、操作者が、登録時あるいは設計時に、接触用突起が所定の順序でタッチパネルに接触するように操作する際に、タッチパッド側で検出される接触位置の座標系列を事前に登録し、またこの登録座標系列と入力するデータまたは指令の間の対応関係を定義しておく。そして今度は操作者が入力操作を行う際には、入力時に検出される接触位置の座標系列と、事前に登録しておいた座標系列を比較照合し、照合の取れた登録座標系列と対応するデータまたは指令を入力するようにする。
【0016】
本発明の請求項8に記載のプログラムは、請求項6に述べた指装着型入力デバイスと組み合わせて使用するプログラムである。このプログラムでは、まずタッチパネル上で事前に設けられた複数のエリアの中で転動体が接触する位置がどのエリアに含まれるのかに基づいてメニューを画面上にポップアップ表示する。そしてタッチパネル上に転動体が接触したまま移動する場合に、ポップアップしたメニューの中の項目を次のように選択する。すなわち、転動体の最初のタッチパネルへの接触位置を基準点として、転動体が接触したまま移動する方向と量を求め、ポップアップしたメニューの中でこの方向と量に対応した位置にある項目を選択するようにする。
【0017】
以上に述べた指装着型入力デバイスは、ストラップによって携帯電話やPDA等につなげるようにしておくと紛失を防げるし、携帯電話などの軽量な装置であればストラップと本デバイスを通じて指に繋げることで落下防止にも有効となる。なお指装着型入力デバイスを指に装着する際に、このストラップの一部をバンドとして用いて指装着型入力デバイスを指に留めるようにしても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、突起とタッチパネルの間の接触関係を、機器に入力すると共に指の触覚にフィードバックする仕組みを導入し、またこの仕組みを、指の自由度を束縛しないように配置したフレームで支持して指に装着することで、操作者に束縛感を与えずに複数の突起の接触位置情報を明瞭に把握しながら座標情報を正確、快適に入力することを可能とし、座標系列を認識するプログラムと組み合わせて、タッチパネルの接触位置検出機能を多用途・多機能に利用することを可能にした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1に本発明の実施の形態による指装着型入力デバイスの1例を示す。また図2にはこの実施例を指に装着した例を示す。図1と図2の(a)に指装着型入力デバイス50の上面図、(b)に側面図を示す。また図2の(c)には本実施例の指装着型入力デバイス50でタッチパネル6に接触する様子を示す。図1(a)で接触用突起1の軸52は、その保持部2に設けられた穴を貫通し、反対側に設けられた刺激用突起51と一体となっている。そしてこれらの全体が突起部を構成している。この突起部はフレーム部3を通じて指固定部8に繋がっている。指固定部8にはストラップを通す穴9が設けられており、図2に示すようにストラップ4をバンドのように用いて指固定部の穴9に通した後で指をぐるりと巻いてバックル5を通じて固定する。またストラップのもう一方の端は携帯電話やPDA等に繋げることで、これらの機器の落下を指で支えて防ぐことができる。図2に示すようにフレーム部3は指の側面に接するように装着するので、フレーム部に囲まれた開口部7は指の下面をできる限り広く露出するように最大限に広く空けられている。軸52は保持部2に設けられた穴を滑って動くことができるので、接触用突起1がタッチパネルに接触して押し込まれると軸52の反対端にある刺激用突起51が指の側に飛び出して指の触覚を刺激することになる。
【0020】
図3に本発明の実施の形態による指装着型入力デバイス50の図1と異なる例を示す。(a)に上面図、(b)に側面図、そして(c)にタッチパネルに接触する様子を示す。この例の突起部の構造は図1と同じであり、接触用突起がタッチパネルに接触するとその反動で刺激用突起が指を刺激する原理も同じである。この突起部は指の上面に沿って設けられたフレーム部54によって指固定部53とつながっている。フレーム部54は指の上面の側に設けられているので、符号7に示されるように指の下面は全面的に開放されており、指の下面で物に触れることに何の束縛も生じない。ストラップ4は指固定部53の穴を通して指をぐるりと回って指固定部を指に締め付けた後でバックル5を通じて緩まないように留められる。
【0021】
図4に、本発明の実施の形態による指装着型入力デバイス50について、上述した例のいずれとも異なる実施例を示す。(a)に上面図、(b)に側面図を示す。この例においては接触用突起と刺激用突起は一体化して突起部を構成しており、符号10によって示されている。この突起部はフレーム部12、及び指固定部11と一体構成になっている。フレーム部12は弾力性があり変形しやすい素材でできており、突起部10の一端がタッチパネルに接触すると、フレーム部が変形することで、突起部は指側に移動して、突起部の他端が指の触覚を刺激する。フレーム部12は指の片側の側面に沿うように装着されるので、指の下面は広く露出するようになる。この例でも指固定部8にはストラップを通す穴が設けられており、図1の例と同様にストラップをバンドのように用いて指固定部の上に乗せる指を固定する。
【0022】
図5に、本発明の実施の形態による指装着型入力デバイス50について、突起部の構造とタッチパネルに接触用突起が接触したときに刺激用突起が指の触覚を刺激する仕組の動作例を示す。図5のいずれの図においても突起部の構造は図1と同じで、動作が分かり易いように突起部の断面が図示されている。図5(a)と(b)には、接触用突起と刺激用突起が1対設けられた場合の例を示す。(a)では接触用突起がタッチパネルに接触していないので、接触用突起は押し込まれておらず、刺激用突起は指を刺激していないが、(b)では接触用突起が押し込まれて、刺激用突起が指を刺激している様子が分かる。また、図5(c)と(d)には、接触用突起と刺激用突起が3対設けられた場合の例を示す。(c)ではどの接触用突起もタッチパネルに接触していないので、どの接触用突起も押し込まれておらず、刺激用突起は1a、1b、1cのいずれも指を刺激していないが、(b)では指が傾いてタッチパネルに接触した結果、接触した側の接触用突起が押し込まれて、刺激用突起1aが指を刺激している様子が分かる。操作者は、3つの刺激用突起のうち1aのみが指の触覚を刺激することから、1aに対応した位置にある接触用突起のみがタッチパネルに接触したことを知ることができる。もしもこのように触覚を刺激する仕組がなかったら、操作者は指をタッチパネルに向けて下げて行って、コツンとぶつかった感触を受けたときに、突起部のどこかがタッチパネルに接触したことは分かっても、それがどこであるかまでは分からない。一方、図5の(c)(d)の例では、例えば、指をタッチパネル上でくるっと捻りながら3つの接触用突起を次々とタッチパネルにぶつけて行ったときに、ぶつかった接触用突起に対応する刺激用突起が次々と指を刺激する。操作者はこの刺激を通じて、3つの接触用突起が確実にこの順でタッチパネルに接触していったことを知ることができる。またこの際に、タッチパネルの接触点の間隔は、3つの接触用突起の間隔によって正確に決まるので、規則的な座標系列が入力することになり、後のプログラムで登録されている座標系列との照合を行う際に、作業が容易になり、精度も高くなる。図6には、指をタッチパネル6上でくるっと捻りながら接触用突起を次々とタッチパネルにぶつけて行ったときにタッチパネルが検出する座標点を黒丸で示す。まず(a)では中央の突起が接触しP1の符号で示す点が接触点として検出される座標になる。(b)では指を捻った結果、左側の二つの突起が同時にタッチパネルに接触している。抵抗膜方式のタッチパネルを用いると、2点が同時に接触するときに検出される座標は両接触点の重心となるので、P2の符号で示す点が検出される座標になる。また(c)ではさらに捻っていった結果、左端の突起だけがタッチパネルに接触するのでP3の符号で示す点が接触点として検出される座標になる。
【0023】
図7に、突起部において、接触用突起と刺激用突起を動かす各種方式を示す。図7(a)ではボール型ジョイントの受け部23の中でボール22が自在に回転し、ボール22に固定された支柱21bは自在に姿勢を変えることができる。その結果、タッチパネル6に21bの一方の端を押し付けたまま指を横に動かすと図7(b)に示すように接触用突起となっている21aの一方の端がタッチパネルに接触し、同時に刺激用突起となる21cの指側の端が突出して指を刺激している。また図7(c)には後に説明する転動体32(タッチパネル上で転がるボール)が導入されており、この転動体32を支点としてシーソーのように突起部が姿勢を変えることで、接触用突起と刺激用突起が一体となった31aと31cのうちタッチパネルにぶつかる側が反動で動いて指を刺激する様子を示す。
【0024】
図8には以上の説明で示した原理で、タッチパネル上で指を運動して接触用突起を一連の順序でタッチパネルと接触させて得られる座標系列に基づいて、データや指令を決定するプログラムの手順を示す。このプログラムは、タッチパネルからデータを入力して種々の演算処理を実行する汎用のパーソナルコンピュータやコンピュータ内蔵の制御装置等のコンピュータ装置上で動作する。
【0025】
まず設計時または事前登録時に図中の「座標系列とデータ、コマンド(指令)との対応テーブル」(S2)を予めコンピュータ装置に保存しておく。そして操作者がタッチパネル上の操作によって座標系列を生成すると(S1)、コンピュータ装置は、この対応テーブル中の座標系列と照合を行い(S3)、一致した座標系列に関連付けられたデータまたはコマンド(指令)を入力したり、実行したりする(S4)。一致するまではテーブル中の座標系列を次々と取り出して(S2)照合を繰り返すが(S3)、その結果、どの登録座標系列とも一致しなければ、エラーメッセージを表示するか、または何も実行せずに終了する。
【0026】
図9には本発明の実施の形態による指装着型入力デバイス50について、突起部に転動体42を設けた例を示す。この場合の転動体はゴムなどの滑りにくい材質でできた球体であり、指とタッチパネル6の間に挟まれて指が運動するときにタッチパネル上を転がって移動する。図9(a)で41aと41bはフレーム部であり、本実施例で突起部に相当する転動体はフレーム部にバネ43を介して回転かつ並進可能に取り付けられている。例えば図9(b)に示すように指を右に動かすと転動体はタッチパネル上を転がって右に移動するが、その移動距離は指の移動距離の半分となるので図に示すようにバネが伸び縮みして、移動距離の違いに対応する。また図9(c)に示すように指を前方に動かすとやはり転動体42が転がって移動する距離は指の移動距離の半分となるのでバネ43は図のように伸びて対応する。転動体を突起部に導入するとこのように転動体の転がりを通じてタッチパネルの接触位置をスムーズに移動でき、また指の触覚が感じる転がりの感触を通じて、移動量や移動方向を把握し易くなることが利点である。
【0027】
図10には、図9に説明した指装着型入力デバイス50について、タッチパネル上で転動体が接触する位置PAと接触点から接触したまま転がって移動する方向Dと移動量Mを通じてメニューの項目選択をするプログラムの動作手順を説明する。コンピュータ装置は、まず事前に登録してあるメニューを選択するための接触エリア(S8)について、PA(S7)がどのエリアに含まれるか判定して(S9)、含まれるエリアがあった場合には、エリアに対応するメニューをポップアップしてディスプレイの画面に表示する(S10)。このときにもしもPAを含むエリアがなければ、何も実行せずにそのまま次の接触位置座標PAが与えられるまで待つ(S8)。PAを含むエリアがあり、タッチパネルに転動体が接触したままPAを始点として転がって接触点が移動したときには、その移動方向Dと移動量M(S11)をPAの位置を基準点として求め、DとMに基づき、ポップアップしたメニュー内の項目を選んで、それをハイライト表示する(S12)。この作業は転動体がタッチパネルに接触し続ける限り継続するが、離れた瞬間(S13)に選択されていた(ハイライト表示されていた)項目に対応するデータが入力したり指令が実行されたりする(S14)。
【0028】
以上、本実施の形態によれば、突起とタッチパネルの間の接触関係によって、コンピュータ装置等の機器へデータを入力すると共に指の触覚にフィードバックすることが可能となる。これによって、操作者に束縛感を与えずに複数の突起の接触位置情報を明瞭に把握しながら座標情報を正確、快適に入力することを可能とし、座標系列を認識するコンピュータプログラムと組み合わせて、タッチパネルの接触位置検出機能を多用途・多機能に利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の指装着型入力デバイスの1実施例(フレーム部を指側面に沿って設けた例)について上面図(a)と側面図(b)を示す。
【図2】図1に示した指装着型入力デバイスの1実施例を指に装着した時の上面図(a)と側面図(b)及びタッチパネルに接触用突起を接触する様子(c)を示す。
【図3】本発明の指装着型入力デバイスの1実施例(フレーム部を指上面に沿って設けた例)を指に装着した時の上面図(a)と側面図(b)及びタッチパネルに接触用突起を接触する様子を示す。
【図4】本発明の指装着型入力デバイスの1実施例(フレーム部が弾力性のある変形可能な素材でできていてフレーム部、突起部、指固定部を一体構成とした例)について上面図(a)と側面図(b)を示す。
【図5】本発明の指装着型入力デバイスの接触用突起をタッチパネルに接触させるときの刺激用突起の動きを示す。いずれも突起部の断面を示す。(a)と(b)は接触用突起と刺激用突起が一対の場合、(c)と(d)は接触用突起と刺激用突起が三対の場合である。
【図6】図5の(c)(d)に示した接触用突起と刺激用突起が三対の場合について、接触用突起をタッチパネルに接触させながら指をタッチパネル上で捻ったときに、(a)(b)(c)の各姿勢において入力する座標系列の点位置を黒丸で示す。転動部の形状を分かりやすくするために3次元的に陰影をつけて形状を表示した図である。
【図7】本発明の指装着型入力デバイスの突起部において、タッチパネルとの接触時に接触用突起と刺激用突起の動きを連動させる方式を2通り示す。(a)(b)はボール状ジョイントを用いた例、(c)(d)は転動体を用いた例を示す図である。
【図8】本発明の指装着型入力デバイスによって入力する座標系列に基づいて入力するデータや実行する指令を決めるプログラムの動作手順を示す図である。
【図9】本発明の指装着型入力デバイスにおいて突起部に転動体を導入した構成例である。
【図10】図9に示した転動体を突起部に導入した指装着型入力デバイスによって、メニュー選択とメニューの項目選択を行うためのプログラムの動作手順を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触点または加圧点の位置を検出する機能を備えたタッチパネルと共に使われ、操作者の指に装着される指装着型入力デバイスであって、
指に固定するための指固定部と、
前記タッチパネルに接触するための突起部と、
前記指固定部と前記突起部をつなぐフレーム部と、を備え、
前記フレーム部は、指先端において前記突起部を支持し、
前記フレーム部は、装着時に、前記指固定部から指の側面または上面を辿って指先端に至ることで、指の下面(腹部)を露出するように構成されたことを特徴とする指装着型入力デバイス。
【請求項2】
前記突起部は、前記タッチパネルに接触する接触用突起と指を刺激する刺激用突起とを構成要素とし、前記接触用突起が前記タッチパネルに触れる際に前記刺激用突起が指側に動いて、指の触覚を刺激するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の指装着型入力デバイス。
【請求項3】
前記フレーム部またはその一部を柔軟性及び弾力性に富む素材で構成し、また前記フレーム部と前記接触用突起及び前記刺激用突起を一体に構成し、前記接触用突起が前記タッチパネルに触れるとその反動で前記フレームまたはその一部が変形して、前記刺激用突起が指の触覚を刺激するように動くことを特徴とする請求項2に記載の指装着型入力デバイス。
【請求項4】
前記接触用突起及び前記刺激用突起が前記フレーム部に対して相対的に動くように構成したことを特徴とする請求項2に記載の指装着型入力デバイス。
【請求項5】
前記接触用突起と前記刺激用突起を複数個備えて、
前記タッチパネルに接触する接触用突起に対応した刺激用突起が指の触覚を刺激することによって、操作者に接触した接触用突起がどれであるのかを通知し、
複数の接触用突起が所定の順序で前記タッチパネルに接触する際にタッチパッド側で検出される接触位置の座標系列によって入力する情報を指定することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一に記載の指装着型入力デバイス。
【請求項6】
前記突起部に前記タッチパネルに接触しながら転動する転動体を備えたことを特徴とする請求項1に記載の指装着型入力デバイス。
【請求項7】
請求項5に記載の指装着型入力デバイスと共に用いられるプログラムであって、
前記接触用突起が所定の順序で前記タッチパネルに接触するように操作する際に、タッチパネル側で検出される接触位置の座標系列を事前に登録する処理と、
またこの登録座標系列と入力するデータまたは指令の間の対応関係を定義する処理と、
操作者が入力操作を行う際に検出される接触位置の座標系列と、前記登録されている座標系列とを比較照合し、照合の取れた登録座標系列と対応するデータまたは指令を入力する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
請求項6に記載の指装着型入力デバイスと共に用いられるプログラムであって、
前記タッチパネル上の前記転動体の接触位置に依存してメニューの選択を実行する処理と、
前記転動体の前記接触位置を基準にした転動方向と転動量に依存して前記メニュー内の項目を選択する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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