説明

指輪収納ケース、及び、それに収納される指輪

【課題】内部に収納される指輪の付加価値を高めることが可能な指輪収納ケースを提供する。
【解決手段】所定のパターンで表面に凸部を形成している複数の指輪10を保持するための保持部材3を有する収納ユニット4を筺体2内に設けた指輪収納ケースであって、保持部材は、複数の指輪を着脱自在に軸支し且つ複数の指輪を取り付けられた場合に指輪の回動と同期して回動可能な軸部19を備え、収納ユニットは、軸部を回動させる駆動機構と、所定の音を発生可能な発音機構とを備え、駆動機構は、複数の指輪を軸部に取り付けた場合に、軸部の回動に応じて軸部の軸線まわりに複数の指輪を互いに同期して回動させる同期回動構造を有しており、発音機構は、複数の振動片12を有して該振動片12の振動によって音を生じる振動板9を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指輪収納ケース、及び、それに収納される指輪に関する。
【背景技術】
【0002】
指輪は、単なる宝飾品としての価値を有するものにとどまらず、結婚など様々な人生の場面を記念する記念品としての価値を有するものとして用いられるようになっている。
【0003】
指輪の価値が向上するにつれ、指輪を収納するための収容ケース(指輪収容ケース)についても、指輪を収納するためのものにとどまらず、付加価値を有するものが求められている。
【0004】
そこで、指輪や宝石を収納可能な収納ケースとして、オルゴール用ムーブメントを設けた宝石箱が提案されている(特許文献1)。この宝石箱は、所有者の好みに応じた曲目を演奏可能なオルゴール用ムーブメントを適宜選択して容易に取付けることができるものである点で付加価値を高められたものとなっている。すなわち、特許文献1によれば、指輪や宝石などを収納する収納ケースの付加価値を高めることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願平7−306675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された宝石箱は、それに収納される指輪の付加価値をも高めることができるものではない。
【0007】
本発明は、その内部に収納される指輪の付加価値を高めることが可能な指輪収納ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(1)筺体を備えるとともに、所定のパターンで表面に凸部を形成している複数の指輪を保持するための保持部材を有する収納ユニットを筺体内に設けた指輪収納ケースであって、
保持部材は、複数の指輪を着脱自在に軸支し且つ複数の指輪を取り付けられた場合に指輪の回動と同期して回動可能な軸部を備え、
収納ユニットは、軸部を回動させる駆動機構と、所定の音を発生可能な発音機構とを備え、
駆動機構は、複数の指輪を軸部に取り付けた場合に、軸部の回動に応じて軸部の軸線まわりに複数の指輪を互いに同期して回動させる同期回動構造を有しており、
発音機構は、複数の振動片を有して該振動片の振動によって音を生じる振動板を備えるとともに、複数の指輪を軸部に取り付けた場合に振動片の先端が指輪の表面の凸部に接触するように、前記振動板を配置しており、且つ、複数の指輪を軸部に取り付けて駆動機構により指輪を回動させた場合に、指輪の凸部の形成パターンに応じた所定のタイミングで指輪の凸部が振動片に選択的に接触して該振動片を弾くことによって、音を発生するように構成されている、ことを特徴とする指輪収納ケース、
(2)筺体を備えるとともに、所定のパターンで表面に凹部を形成している複数の指輪を保持するための保持部材を有する収納ユニットを筺体内に設けた指輪収納ケースであって、
保持部材は、複数の指輪を着脱自在に軸支し且つ複数の指輪を取り付けられた場合に指輪の回動と同期して回動可能な軸部を備え、
収納ユニットは、軸部を回動させる駆動機構と、所定の音を発生可能な発音機構とを備え、
駆動機構は、複数の指輪を軸部に取り付けた場合に、軸部の回動に応じて軸部の軸線まわりに複数の指輪を互いに同期して回動させる同期回動構造を有しており、
発音機構は、径方向に複数の突出部を有する複数の板カムと、該複数の板カムを個別に回動可能に軸支する連動軸と、複数の振動片を有して該振動片の振動によって音を生じる振動板とを備え、複数の指輪を軸部に取り付けた場合に指輪の凹部に板カムの突出部が噛み合うように、板カムを配設するとともに、個々の振動片の先端が個々の板カムの突出部の先端に接触するように振動板を配設しており、且つ、複数の指輪を軸部に取り付けて駆動機構により指輪を回動させた場合に、指輪の凹部の形成パターンに応じた所定のタイミングで所定の板カムが該板カムのいずれか一つの突出部にて指輪の凹部に噛み合いながら回動するとともに板カムの他のいずれかの突出部の先端を振動片に選択的に接触させて該振動片を弾くことによって、音を発生するように構成されている、ことを特徴とする指輪収納ケース、
(3)上記(1)に記載の指輪収納ケースに収納される指輪であって、表面に所定のパターンで突起を植設して該突起を植設された部分を凸部となすことで、所定のパターンの凸部を形成している、ことを特徴とする指輪、
(4)上記(2)に記載の指輪収納ケースに収納される指輪であって、表面に所定のパターンで小孔を形成して該小孔を形成された部分を凹部となすことで、所定のパターンの凹部を形成している、ことを特徴とする指輪、を要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の指輪収納ケースによれば、収納ユニットに発音機構を設けており、収納ユニットに表面に凹部又は凸部を有する指輪を組み込まれることで、指輪の回動に応じて所定のパターンで音が生じる。本発明では、発音機構に音を発生可能な振動板が設けられており、個々の振動片の振動によって様々な音階の音を生じるように振動板を構成すれば、指輪の表面の凹部又は凸部のパターンに応じた所定のパターンで振動片が選択的に振動されることで、所定の楽曲を奏でることが可能である。
【0010】
このように、本発明の指輪収納ケースによれば、収納ユニットに指輪を収納することによって全体として楽曲を奏でる機能(楽曲演奏機能)を発揮可能なものとすることができる。このため、指輪収納ケースには、指輪と一体をなして楽曲演奏機能を発揮できるという価値が付加され、指輪収納ケースの付加価値が高められる。さらに、本発明では、収納される指輪の素材を、金や銀、プラチナなど貴金属類や、これら貴金属と同様に耐食性を有するチタンやジルコニウム、さらには両方を組み合わせたものにすると、指輪に宝飾品としての価値が加わり、さらに指輪収納ケースに楽曲演奏機能を発揮させるための部材としての価値とを合わせ持たせることができるため、指輪の付加価値を一層高めることが可能となる。
【0011】
また、本発明の指輪収納ケースには、複数の指輪が収納される。したがって、本発明の指輪収納ケースによれば、指輪収納ケースと複数の指輪とが一体となったときに複数の指輪の表面の凹部又は凸部のパターンの組み合わせが全体として1つの楽曲を奏でさせるように、複数の指輪の表面に凹部又は凸部を構成することが可能となる。
【0012】
特に、本発明によれば、結婚指輪のような一般に2つで一組に扱われる指輪についても、指輪の表面の凹部又は凸部のパターンの組み合わせが全体として1つの楽曲を奏でさせるように、複数の指輪の表面に凹部又は凸部を形成でき、その場合、異なる複数の指輪が、1つの指輪収納ケースに収納されることで、1つの楽曲を奏でる機能を有するようになる。そして、このことは、視覚的に見て2つの異なる指輪が、機能的な関連性を有するものとなることを示すとともに、2つの指輪で1つの曲を奏でることに、結婚ということによって2人が関連性を持ち合うこととを照らし合わせて、結婚という目には見えないつながりを、より深く結婚した2人に視覚的に意識させることができるようにすることができる。このため、本発明によれば、結婚指輪のもつ本来の価値をさらに高めることができる。
【0013】
さらに、本発明の指輪収納ケースによれば、収納される複数の指輪の組み合わせを変えることで新たな曲目を奏でるように、複数の指輪の表面に凹部又は凸部を構成することも可能である。
【0014】
また、本発明の指輪によれば、指輪収納ケースに収納されて、指輪収納ケースと一体をなすことで、所定の楽曲を奏でさせる機能を発揮させるように構成させることが可能となり、指輪に宝飾品としての価値に加えて楽曲演奏機能を発揮可能させるためのものとしての価値を付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態の指輪収納ケースの一例において、指輪収納ケースに指輪を収納した状態を説明するための概略平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】保持部材を説明するための図である。
【図4】軸体に取り付けられる固定部材の一つの例について、固定部材の構成を説明するための図である。
【図5】(a)第1の実施形態の指輪収納ケースの一例において、指輪収納ケースに収納される指輪を説明するための概略斜視図である。(b)第2の実施形態の指輪収納ケースの一例において、指輪収納ケースに収納される指輪を説明するための概略斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の指輪収納ケースの一例において、指輪収納ケースに指輪を収納した状態を説明するための概略平面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の指輪収納ケースの一例において、第1フレームに振動ユニットと第1動力伝達軸と第2動力伝達軸を組み込んだ状態を説明するための概略平面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の指輪収納ケースの一例において、第1フレームに振動ユニットと第1動力伝達軸と第2動力伝達軸を組み込んだ状態を説明するための概略底面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の指輪収納ケースの一例において、第1フレームに振動ユニットと第1動力伝達軸と第2動力伝達軸を組み込んだ状態を説明するための概略側面図である。
【図10】(a)本発明の第2の実施形態の指輪収納ケースの一例において、振動ユニットを説明するための概略図である。(b)振動ユニットに組み込まれる回動体を構成するワッシャーを説明するための概略斜視図である。(c)振動ユニットに組み込まれる回動体を構成する板カムを説明するための概略斜視図である。
【図11】(a)軸体に取り付けられる固定部材の他の例について、固定部材の構成を説明するための図である。(b)軸体に取り付けられる固定部材の他の例について、固定部材の構成を説明するための図である。(c)軸体に取り付けられる固定部材の他の例について、固定部材の構成を説明するための図である。
【図12】(a)本発明の第2の実施形態の指輪収納ケースの一例において、指輪の回転にともなう振動ユニットの板カムの回動および振動片の振動制御を説明するための模式図である。(b)本発明の第2の実施形態の指輪収納ケースの一例において、指輪の回転にともなう振動ユニットの板カムの回動および振動片の振動制御を説明するための模式図である。
【図13】振動板を説明するための概略平面図である。
【図14】逆回転防止構造を設けた指輪収納ケースを説明するための図である。
【図15】変移安定化機構を設けた指輪収納ケースを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の指輪収納ケース100について、図1内に示される指輪収納ケース100の実施例(第1の実施形態の指輪収納ケース1)に基づき詳細に説明する。
【0017】
本発明の第1の実施形態の指輪収納ケース1(100)は、筺体2を備えるとともに、所定のパターンで表面に凸部を形成している複数の指輪70(10)を保持するための保持部材3を有する収納ユニット4を筺体2内に設けた指輪10収納用の収納ケースである。
【0018】
(筺体2)
筺体2は、収納ユニット4を設置可能なものであれば、特に素材や形状を限定されるものではない。図1内に示される指輪収納ケース1の例では、筺体2は、上方に開口した矩形状に形成された木製の箱体となっている。また、筺体2は、箱体の上面開口領域に整合するような形状に形成された蓋体などにて、その箱体上面を閉止されていてもよい。
【0019】
(収納ユニット4)
収納ユニット4は、筺体2内に配置固定される第1フレーム5とその第1フレーム5に対して支軸8まわりに回動可能に固定された第2フレーム6とからなる一対のフレーム体7と、第1フレーム5の所定位置に固定された振動板9,9とを有しており、第2フレームの所定位置に、保持部材3を、その軸部19にて回動可能に配設している。さらに、収納ユニット4には、フレーム体7に、保持部材3を駆動させる駆動構造を構成する各種の部材を設けている。
【0020】
(振動板9)
振動板9は、図1,2,13に示すように、平面視上全体として櫛歯状の外観部分を呈する金属板で構成されるとともに、振動媒体11と複数の振動片12(12a、12b・・・)とから構成される。振動媒体11には、所定位置に取り付け孔13が形成されており、振動板9は、この取り付け孔13に止着螺子14を挿通して第1フレーム5上に固定される。取り付け孔13は、その形状を特に限定されるものではないが、振動片12の長手方向に細長な長孔であることが好ましい。この場合、取り付け孔13をなす長孔と止着螺子14との相対的な位置が適宜変更されることで、第1フレーム5に対する振動板9の固定位置を、振動片12の長手方向に変更調整することができ、指輪10のサイズによって変動する回動面と振動板9の先端との離間距離を適宜調整することができる。
【0021】
複数の振動片12は、それぞれ、振動媒体11の端縁に基端15を有して基端15から先端16に向かってのびるとともに互いに長手方向を揃えて振動媒体11の一端縁に沿って一列に整列形成される。振動片12は、その先端16の部分よりもやや内側所定部分を一方向に隆起させて隆起部17を形成している。図1,2の例では、各振動片12は、その長手方向に沿った縦断面が略半矢印状となるように隆起部17を形成している。
【0022】
複数の振動片12は、互いに長手方向の長さを異にしており、その長さの順に一列に整列して形成されている。複数の振動片12は、その先端16の位置を平面視上一列に揃えており、また、隆起部17の隆起方向を揃えている。
【0023】
図1,2の例では、振動板9は、複数の振動片12の先端16を斜め上方向に向けた状態で第1フレーム5上に固定されており、さらに振動片12の先端16を指輪10の回動面に向けて配置される。このとき、振動板9は、振動片12の隆起部17が下方を向くように配置されている。
【0024】
(保持部材3)
保持部材3は、図1,3に示すように、複数の指輪10を着脱自在に軸支し且つ複数の指輪10を取り付けられた場合に指輪10の回動と同期して回動可能な軸部19を備えてなる。
【0025】
軸部19は、軸体22と、指輪10を軸体22に対して固定する固定部材23とを備えてなる。この軸部19には、軸体22に、所定の位置に後述の駆動機構18を構成するウォームホイール53が設けられる。軸体22に設けられるウォームホイール53は、後述のようにギア部58の一方端面側に軸体22の長手方向に環状リブ部59を突設形成してなる。ウォームホイール53は、ギア部58と環状リブ部59を貫通する孔に軸体22を挿入して軸体22に設けられる。環状リブ部59の円筒側面には径方向に貫通する螺子孔80が設けられており、螺子孔80に螺子81を羅合させている。このとき、螺子81の螺子先が軸体22に圧着され、環状リブ部59と一体のウォームホイール53が軸部19に螺子止め固定される。なお、このようにウォームホイール53は軸部19に固定されるので、ウォームホイール53の回動と軸部19の回動は同期する。
【0026】
固定部材23は、軸体22の長手方向の少なくとも一方端側に設けられておればよいが、図1の指輪収納ケース1の例では、軸体22の長手方向の両端側に設けられている(図3)。固定部材23は、指輪10の内側面形状に対して整合可能な外側周面形状を呈し緩衝性を有する緩衝固定材25と、緩衝固定材25を軸体22の長手方向端部で固定する固定芯材24からなる(図4)。緩衝固定材25は、スポンジなど弾性と緩衝性に優れた材料から構成される。緩衝固定材25は、高い弾力性を有するものであるためには、エチレンビニルアセテート(EVA)からなるスポンジを用いられてなるものが好ましい。固定芯材24は、木材や金属材など緩衝固体材25よりも高い剛性を有するものから構成される。固定芯材24は、円柱体の一方端を径方向に鍔状に延設して鍔部を形成するとともに、鍔部の形成端側の端面の中央部に軸体22の端部形状に整合させた軸孔24aを形成している。緩衝固定材25は、緩衝材からなる円柱体の一方端面を陥没させて陥没部25aを形成しており、陥没部25aの形状は、固定芯材24の円柱体部分の外面形状に整合するような形状となっている。
【0027】
(保持部材3の組立て)
固定芯材24が、その軸孔24aに、軸体22の一方の軸端部分を挿入することで固定され、さらに、固定芯材24の円柱側面部分と、陥没部25aを形成した緩衝固定材25が、その陥没部25aにて軸孔24aの非形成端面を覆うように固定芯材24に装着されることで、軸体22と固定芯材24と緩衝固定材25が相互に固定され、保持部材3が形成される(図4)。なお、このとき、軸体22と固定芯材24と緩衝固定材25は、接着剤を介して相互に固定されていることが好ましい。
【0028】
(フレーム体7)
フレーム体7は、第1フレーム5を筺体2内の内側底面所定位置に螺子などの固定具で固定されるとともに第1フレーム5の上に第2フレーム6を配置させて形成されている。
【0029】
第1フレーム5は、平面視上、中央に略長方形状の開口部35を形成して略ロ字形状に形成されており、開口部35の長手方向両端側には上方に向かって第1壁部36と第2壁部37が互いに対面するように立設形成されており、開口部35の短手方向に向かいあうように第1壁部36の下方端と第2壁部37の下方端を繋ぐ2つの平面長方形状の部分が形成されて下側部38,38をなし、さらに、第1壁部36の上方端と第2壁部37の上方端を繋ぐ2つの平面長方形状の部分が2つ形成されてそれぞれ上側部(図2に一方の上側部60のみ図示、他方の上側部は紙面裏面側に形成される)をなしている。また、第1壁部36の上面には、第1壁部36と第2壁部37とが対面する方向(図1中、矢印Y1−Y2方向)および第1壁部36の突出方向(図2中、矢印Z1−Z2方向のうちの矢印Z1方向)の両方向に対して直交する方向(図1中、矢印X1−X2方向)の両端部に、舌片状の突出片61,61が上方に向かって突出形成されており、それぞれの突出片61,61には、矢印X1−X2方向に支軸挿通孔41が貫通形成されている。第1フレーム5には、下側部38,38の長手方向端縁部のうち第2壁部37に近いほうの端縁部の所定領域に、第1フレーム5の外周縁に向かって下り傾斜する傾斜部42,42が形成されており、それぞれの傾斜部42領域内の所定位置には、振動板9を固定するための止め付け孔43が(図1,2の例では各傾斜部42,42に2箇所ずつ)形成されている。また、第1フレーム5の第1壁部36と第2壁部37それぞれの面内方向所定位置に、後述の駆動機構18を構成する動力伝達軸50を支持するための支持孔44,44がY1−Y2方向に穿かれている。
【0030】
第2フレーム6は、向かいあう2つの側壁部45と両方の側壁部45,45を繋ぐ連結壁部46,46とを形成して、平面視上、略細長ロ字形状に形成されてなる。第2フレーム6の向かいあう2つの側壁部45,45の内面間距離は、ウォームホイール53の厚みよりも大きくなるように形成されている。
【0031】
第2フレーム6において、一方の連結壁部46の所定位置にX1−X2方向に支軸8を挿通するための軸体挿通孔47が形成されている。また、2つの側壁部45,45には、保持部材3の軸体22を挿通して軸体22を回動可能に支持するための支持孔48,48が形成されている。また、支持孔48,48は、互いに向かい合うように形成されている。
【0032】
フレーム体7においては、第1フレーム5の第1壁部36の支軸挿通孔41と第2フレーム6の支軸挿通孔47とが対面配置されるように、第1フレーム5の上に第2フレームが配置されている。また、支軸挿通孔47,41を通るように支軸8が挿通されており、第1フレーム5と第2フレーム6とが、支軸8まわり(図2中、矢印Q方向)に第2フレーム6を回転可能に取り付けられている。そして、第1フレーム5の第2壁部37の上面に第2フレームの一方の連結壁部46(軸体挿通孔47の形成されていないほうの連結壁部)が載置されることで、第1フレーム5上に第2フレーム6が安定的に配設される。
【0033】
(駆動機構18)
駆動機構18は、保持部材3の軸部19を回動させる機構であり、駆動軸体49を備える動力伝達軸50と、動力伝達軸50に伝えられた動力を伝達するギア機構51とからなる。ギア機構51は、動力伝達軸50に軸線を揃えて設けられるねじ歯車(円筒ウォーム52)と、円筒ウォーム52のウォーム歯に噛合うように歯溝を形成したはす歯歯車(ウォームホイール53)とで構成される。
【0034】
動力伝達軸50は、駆動軸体49の一方端に動力伝達軸50を駆動軸体49の長手方向軸線周りに回動させるためのハンドル54(図1の例では、クランクハンドル)を取り付けられている。さらに、動力伝達軸50の駆動軸体49の他方端側(駆動軸体49の端部のうちハンドル54の取り付けを行った方の端部を一方端とした場合の他方端側)の近傍所定位置には円筒ウォーム52が設けられる。円筒ウォーム52は、ウォーム歯を形成した部分でなるウォーム部56からその軸線方向に延びるリブ部55で螺子止めされて駆動軸体49に固設されており、円筒ウォーム52は動力伝達軸50の回動に同期して一体的に回動する。
【0035】
ウォームホイール53は、外周縁に歯溝を形成したギア部58と、ギア部58の側面中央から突設された環状リブ部59とからなり、環状リブ部59で螺子止めされて軸体22の所定の位置に固設されている。このウォームホイール53は、その回動に同期させて軸体22を一体的に回動させる。このように、駆動機構18は保持部材3の軸部19を回動させるための駆動力を、軸体22に伝える。
【0036】
(収納ユニット4の組立て)
収納ユニット4は、次のように振動板9と動力伝達軸50と保持部材3がフレーム体7に取り付けられることで形成される。
【0037】
振動板9は、振動媒体11に設けられた取り付け孔13を第1フレームの傾斜部42の止め付け穴43上に重ねるように配置されて、取り付け孔13に止着螺子14を貫通させるとともに止め付け穴43に螺合固定する。このとき、振動板9の振動片12の先端16は、第2壁部37から第1壁部36に向かう方向に向かうとともに、斜め上方を向く。振動板9,9は、第1フレーム5の個々の傾斜部42,42に対して取り付けられ、第1フレーム5には、2枚の振動板9,9が取り付けられる。これらの取り付けられる振動板9,9は、互いに同様に構成された振動片12を備えるものであってもよいし、構成を異にする振動片12を備えるものであってもよい。
【0038】
動力伝達軸50は、第1フレーム5の第1壁部36と第2壁部37に設けられた2つの支持孔44,44に軸体49を通じることで、回動可能に第1フレーム5に支持される。このとき、動力伝達軸50の軸体49の一方端は、第1フレーム5の第2壁部37の支持孔44を貫通して第2壁部37よりも外側に突出し、その突出端部側にハンドル54が配設されている。なお、第2壁部37と第1壁部36の間の所定位置に動力伝達軸50の円筒ウォーム52が位置している。
【0039】
保持部材3は、その軸体22を、第2フレーム6の2つの側壁部45,45それぞれに設けられた支持孔48,48のそれぞれに挿通させることで、軸体22の軸周りに回動可能に第2フレーム6に取り付けられる。このとき、軸体22の両端面は、第2フレーム6の外側まで突出しており、固定部材23は、第2フレーム6の外側に位置する軸体22の両端部に取り付けられている。
【0040】
このように、振動板9と動力伝達軸50と保持部材3がフレーム体7に取り付けられると、収納ユニット4が形成される。収納ユニット4では、第1フレーム5の第2壁部37の上面に第2フレーム6の連結壁部46を載置した場合に、振動板9の振動片12の先端16が保持部材3の緩衝固定部材25の側周面に向けられている。また、動力伝達軸50と保持部材3の相互の配置は、収納ユニット4が第1フレーム5の第2壁部37の上面に第2フレーム6の連結壁部46を載置した状態である場合に、保持部材3のウォームホイール53の周面が動力伝達軸50の円筒ウォーム52のウォーム部56に対面し、ウォームホイール53のギア歯と円筒ウォーム52のウォーム歯とが互いに噛み合うような配置、となっている。
【0041】
(指輪収納用ケース1の組立て)
指輪収納用ケース1は、収納ユニット4を筺体2に設けることで得ることができる。
収納ユニット4の第1フレーム5を筺体2の内部底面上に配置し、第1フレーム4の四隅で第1フレーム5を筺体2に螺子止固定することで、指輪収納用ケース1を得ることができる。なお、このとき、軸体49は、筺体2において第1壁部36の支持孔44に対面する位置に設けられた貫通孔57をも貫通して、その一方端を筺体2の外側まで突出させている。そして、図1,2に示すとおり、筺体2の外側に位置する軸体49の端部に、ハンドル54が取り付けられている。
【0042】
次に、指輪10について説明する。
【0043】
(指輪10)
指輪10には、図5(a)に示すように、環状体20の円筒外側面(回動表面)に所定のパターンの凸部を形成している指輪70が用いられる。指輪70(10)の凸部は、環状体20の円筒外側表面上に所定のパターンで多数のピン状の突起21を植設することにより形成されている。すなわち、指輪70においては、個々の突起21が凸部をなしている。
【0044】
指輪70の突起21の植設パターンは次のように定められる。すなわち、個々の突起21は、指輪収納ケース1に指輪70を収納した際に所定の1つの振動片12の先端16に対して対面するような位置に植設される。さらに、突起21の植設パターンは、指輪収納ケース1に指輪70(10)を収納した状態で保持部材3を回動させて振動板9を振動させることによって奏でさせようとする旋律(メロディー)に応じて適宜選択される。
【0045】
個々の突起21の口径は、指輪収納ケース1に指輪70を収納した際に指輪70の回動表面に対して対面することになる個々の振動片12(12a、12b・・・)の対面幅以下の大きさである。また、突起21の長さは、指輪収納ケース1に指輪70を収納した際に、指輪70に対面する振動片12に対して接触可能となるような長さであって、指輪70の回動に応じて振動片12の先端に対して突起21を係脱自在とするような長さを適宜選択される。このような長さが選択されることにより、指輪収納ケース1に指輪70を収納するとともに回動させた際に、指輪70において突起21が振動片12に選択的に接触してその振動片12を弾くように、突起21が指輪70に植設されていることになる。
【0046】
なお、指輪70を構成する環状体20はその素材を限定されるものではないが、貴金属であると、指輪70の宝飾品としての価値がより高められて好ましい。貴金属としては、金、銀、プラチナが挙げられるほか、貴金属と同様に耐食性を有するチタンやジルコニウムあるいはそれらの合金、さらには両方を組み合わせたものでもよい。また、突起21は、環状体20に植設可能であり、指輪70の突起21を振動片12に選択的に接触させた際に振動片12を弾くことが可能な程度の硬度を有するものであれば特に素材を限定されるものではなく、具体的に、突起21の素材としては、機械的強度の強いチタンやジルコニウムあるいはそれらの合金が望ましい。なお、指輪70には、突起21のほかに様々な装飾を施されていてもよい。例えば、指輪70の回動面にダイヤモンドなどの装飾用微粒子がちりばめられていてもよい。
【0047】
(指輪収納ケース1への指輪10の収納)
指輪収納ケース1への複数の指輪10の収納は、保持部材3への複数の指輪10の取り付けによって実現される。この取付けは、個々の指輪10が保持部材3の固定部材23に嵌めこまれることで実施される(指輪10の収納)。このとき、個々の指輪10は、固定部材23を構成する緩衝固定材25の緩衝力により保持部材3に装着され、保持部材3と指輪10との間ですべりを生じないようになっている。なお、保持部材3に装着された指輪10は、緩衝固定材25の緩衝力によりその装着状態が維持されているので、保持部材3から容易に取り外すことも可能である。また、緩衝固定材25は、緩衝性を有するので、指輪10の内口径が緩衝固定材25の外径よりも小さくとも、指輪10を保持部材3に着脱自在に装着することが可能である。したがって、多様なサイズの指輪10を保持部材3に装着することができる。より具体的に、指輪10のサイズが、緩衝固定材25の外径と指輪10の内口径の差が1mm程度の範囲内に収まるようなサイズであれば、指輪10を保持部材3にすべりを生じないように装着することが十分に可能である。
【0048】
なお、指輪10の収納では、指輪10の内面の所定位置が固定部材23の緩衝固定材25外面の所定位置に向かい合わせになるように位置あわせされる。このとき、固定部材23の外面の所定位置に位置指定標識39を設けておくとともに、固定部材23の外面の位置指定標識39に対して向かい合わせとなる指輪10の所定位置に対面位置指定標識40を設けておくことが好ましい。このように、上記指輪10の収納にあたり、位置指定標識39と対面位置指定標識40とを向かい合わせにして複数の指輪10を固定部材23に装着されることで、複数の指輪10の収納位置の相対的なずれ(複数の指輪相互間の周方向の位相ずれ)の発生を容易に抑制できる。
【0049】
複数の指輪10は、第2フレーム6の外側に位置する軸部19の固定部材23に嵌め付けられるので、これらの指輪10は、第2フレーム6の外側に配置されることとなる。そして、指輪10が収納ユニット4に収納された状態においては、振動板9の振動片12の先端16が、指輪10の側周面に向けられている(図1,2)。このとき、個々の指輪10と個々の振動板9は、指輪10の突起21と振動片12の先端16とが接触可能な程度に、それぞれ近接している。
【0050】
(音を発生する機構)
このように、収納ユニット4に複数の指輪10が収納され、その状態で、ハンドル54を回動させると、次に示すような機構で、保持部材3が回動して振動板9が振動することによって音が生じ、指輪10の突起21の植設パターンに応じて所定の旋律が奏でられる。
【0051】
駆動構造18を構成するウォームホイール53は、上記のように軸体22のうち第2フレームの2つの側壁部の間にある部分の所定位置に配置されている。収納ユニット4においては、第1フレーム5の第2壁部37の上面に第2フレーム6の連結壁部46を載置した場合に、ウォームホイール53の周面が動力伝達軸50の円筒ウォーム52のウォーム部56に対面し、ウォームホイール53のギア歯と円筒ウォーム52のウォーム歯とが互いに噛み合う。そして第1フレーム5の第2壁部37の上面に第2フレーム6の連結壁部46を載置した状態で手動によりハンドル54に回転力が加えられると、動力伝達軸50はハンドル54を連結した軸体49の回転によって軸体49の軸線周りの回動力を生じ、駆動機構18の円筒ウォーム52を回動させ、円筒ウォーム52の回動によってウォームホイール53と軸体22が一体に所定方向に回動する。軸体22が回動すると、この軸体22の回動に同期して指輪10も回動する。このように指輪10が所定方向に回動すると、指輪10の突起21の設置パターンに応じて所定のタイミングで振動片12に選択的に接触係合して、さらに指輪10の回動が進むとその振動片12に撓みを生じるとともに振動片12と突起21との係合状態が解除され、振動片12が弾かれることとなり、その際に生じた振動板9の振動が振動媒体11を介してフレーム体7へと伝えられて共振を生じ、所定の音として周囲に伝達される。このような共振が、指輪10の突起21の設置パターンに応じた所定のタイミングで生じる。そして、振動板9は、弾かれる振動片12の違いに応じて異なる音階の音を生じるように異なる長さの振動片12を備えて構成されている。こうして、様々な音階の音が、所定のタイミングで生じることとなり、指輪収容ケース1と指輪10とが一体になった構造体から所定の旋律が奏でられることとなる。すなわち、指輪収容ケース1と指輪10のセットは、所定の旋律が奏でる楽曲演奏機能を発揮可能なものである。
【0052】
なお、第1の実施形態の指輪収納ケース1において、指輪10が保持部材3の軸部19に取り付けられることで収納ユニット4に収納された場合に上記のように振動板9と保持部材3と指輪10が連動して所定の音を発生させるように構成される。すなわち、収納ユニット4に指輪10が一体的に収納されることで音を発生させる発音機構が形成されていることになる。このとき、発音機構は、振動板9と保持部材3と指輪10で構成される。また、第1の実施形態の指輪収納ケース1においては、発音機構を構成する保持部材3の軸部19を駆動させる駆動機構18は、動力伝達軸50とギア機構51とで同期回動構造を構成する。同期回動構造は、複数の指輪を軸部に取り付けた場合に、軸部の回動に応じて軸部の軸線まわりに複数の指輪を互いに同期して回動させる構造である。
【0053】
また、第1の実施形態の指輪収納ケース1において、第2フレーム6は、支軸8を介して回動可能に第1フレーム5に取り付けられており、第2フレーム6の連結壁部46が第1フレーム5の第2壁部37の上端面に載置されている状態では、振動片12と突起21とが接触可能になっていることにより、指輪収納ケース1に指輪10を取付けた場合に振動板9と指輪10とが互いに接触可能になる。そして、その指輪収納ケース1において、第2フレーム6の連結壁部46と第1フレーム5の第2壁部37の上端面とが離間するように第2フレーム6が支軸8まわりに回動されると、振動片12と指輪10の突起21とが非接触となる。振動片12と指輪10の突起21とが非接触となる場合は、例えば、図2中、第2フレーム6が破線Kで示す位置にある場合である。このように、指輪収納ケース1には、少なくとも振動片12と指輪10とが非接触となる位置まで変位させる変移機構が備えられている。指輪収納ケース1にこのような変移機構が設けられることで、指輪10の保持部材3に対する着脱をより容易にするとともに、その着脱時に指輪10の傷つきが生じる虞を効果的に抑制する効果がもたらされる。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、本発明の指輪収納ケース100について、図6内に示される指輪収納ケース100の実施例(第2の実施形態の指輪収納ケース101)に基づき詳細に説明する。
【0055】
本発明の第2の実施形態の指輪収納ケース101(100)は、筺体102を備えるとともに、所定のパターンで表面に凹部を形成している複数の指輪71(10)を保持するための保持部材103を有する収納ユニット104を筺体102内に設けた指輪10収納用の収納ケースである。
【0056】
(筺体102及び保持部材103)
第2の実施形態の指輪収納ケース101の筺体102及び保持部材103は、第1の実施形態の指輪収納ケース1の筺体2及び保持部材3と同様に構成されたものが用いられる。
【0057】
(収納ユニット104)
収納ユニット104は、筺体102内に配置固定される第1フレーム105とその第1フレーム105に対して支軸108まわりに回動可能に固定された第2フレーム106とからなる一対のフレーム体107と、第1フレーム105の所定位置に固定された振動ユニット110,110とを有している。さらに、収納ユニット104は、第1の実施形態の指輪収容ケース1と同様に、第2フレーム106の所定位置に保持部材103の軸部にて、その保持部材103を回動可能に配設しており、フレーム体107に、保持部材103の軸部19を駆動させる駆動機構を構成する各種の部材を組み込んでいる。
【0058】
(振動ユニット110)
振動ユニット110は、第1フレーム105に取り付けられる台座200と、台座200の上面の上方所定位置に軸線方向に回動可能に設けられる回動体201と、振動板109を備えてなる。振動ユニット110には、駆動機構を構成する後述の動力伝達軸からの回動力を回動体201に伝達するためのギア(図10(a)の例では、第6ギア226)を設けた中継軸202と、中継軸202の回動力を回動体201に伝達するギア(図10(a)の例では、第8ギア228と第10ギア230)がさらに設けられる。
【0059】
(振動板109)
振動板109は、振動片112と振動媒体111を有してなり、振動媒体112および振動媒体111は、それぞれ、第1の実施形態の指輪収納ケース1に用いられる振動板9の振動片12および振動媒体11と同様に構成されるものを用いられる。ただし、図10(a)に示す例では、振動板109として、振動板109を台座200に取り付けるための孔を1つ形成したものが用いられている。
【0060】
(回動体201)
回動体201は、図10(a)に示すように、連動軸205と、連動軸205に固定された複数のワッシャー206と、隣り合うワッシャー206の間に配置された板カム207とから構成され、連動軸205の軸線方向にワッシャー206と板カム205とを交互に積層してなる。
【0061】
ワッシャー206は、中心に連動軸205を通じる孔部208を形成していればその形状を特に限定されるものではないが、板カム207の側面と均一に面接触するにはドーナツ型であることが好ましい(図10(b))。また、ワッシャー206は、樹脂からなり金属よりも大きな表面の摩擦係数を有するものであることが好ましい。また、ワッシャー206が樹脂からなる場合、ワッシャー206を連動軸205に圧入することでワッシャー206を連動軸205に容易に取り付けることができるという利点もある。
【0062】
板カム205は、円板部213の中心に連動軸205を通じる孔部209を形成するとともにその円板部の周面上、円板部213の径方向外向きに複数の突出部210を延設形成してなる。図10(c)の例では、突出部210は、円板部213の周面上に放射状に90度の位相角をもって等間隔に4つ形成されており、個々の突出部210は、先端から基端に向かって円板部213の周方向の一方側にやや湾曲しながら膨出した湾曲楔形に形成されて、円板部213の周面方向に膨出面211と非膨出面212をと形成している。
【0063】
回動体201は、連動軸205にワッシャー206と板カム207を交互に挿通するとともに、ワッシャー206を連動軸205に固定することで形成される。このとき、板カム207とワッシャー206とは相互に当接しており、板カム207の突出部210の先端は、ワッシャー206の周面よりも連動軸205の径方向外側に向かって突出している。回動体201において、板カム207は、連動軸205に対しては固定されていない。
【0064】
回動体201では、ワッシャー206は連動軸205と一体的に回動し、板カム207は、ワッシャー206から受ける摩擦力によってワッシャー207とともに回動される。ところが、板カム207の突出部210の先端に作用力が働くと、板カム207はその作用力に応じた回動運動を行うようになって、板カム207の回動が規制されることとなり、板カム207は、連動軸205とワッシャー206に対してすべりを生じて回動方向および回動速度を異にするようになりうる。
【0065】
(台座200)
台座200は、略四角錐台の構造体の上面内の所定位置から後方側面219に向けて上面の一側周縁に沿って左右側面218,218に挟まれた部分を部分的に斜下方向に切り欠いてなる切欠部214を形成しており、切欠部214の左右両側縁部に、上方に向かって互いに対面するように側壁217,217を形成している。それぞれの側壁217,217は、台座200の左右側面218,218の一部をなしている。側壁217,217の所定の位置には、連動軸205を支持する軸受孔215,215が形成されている。台座200の軸受孔215の直下位置に、左右方向に台座200を貫通する貫通孔216が形成されている。貫通孔216は、一方端側に孔径差を有して、大口径の孔の内側に小口径の孔を一方端側に形成しており、全体として段差孔を形成している。また、台座200には、切欠部214面内所定位置に下方向に向かって台座200を貫通する取り付け孔が形成されている。さらに、この取り付け孔は、台座200を第1フレーム105に螺子止めするための孔である。なお、振動ユニット110をフレーム体107に取付けた場合に、水平に保持部材103に対して近づく方向を後方向とし、その逆を前方向とする。また、振動ユニット110をフレーム体107に取付けた場合に、保持部材103の軸部19の軸線方向と平行な方向を左右方向とする。
【0066】
(振動ユニット110の組立て)
台座200の軸受孔215に連動軸205を通じ、互いに対面する側壁217,217の間に板カム207とワッシャー206の積層構造が位置するように回動体201を配置させることで、回動体201が台座200に対して連動軸205の軸心まわりに回動可能に取り付けられる。このとき、回動体201における上記積層構造は、切欠部214の上方に位置する。さらに、台座200の後方側面219に振動板109が螺子固定される。このとき、振動板109の振動片112は、その先端が斜め上方を向いて回動体201の回動面に向かうとともに、切欠部214と回動体201の隙間に入り込んで板カム207の突出部210に接触可能になるように、配置される。また、振動ユニット110には、軸受孔215の下方の貫通孔216に中継軸202が通ぜられており、さらに中継軸202の一方端部(段差孔を形成しているほうに向けられる端部)に傘歯ギア(図10(a)では第6ギア226)、他方端部に平歯ギア(図10(a)では第8ギア228)が設けられる。そして、中継軸202の平歯ギアにかみ合うように、回動体201の連動軸205の軸端には、平歯ギア(図10(a)では第10ギア230)が設けられる。こうして、中継軸202と連動軸205の軸端は、台座200の側面218よりも左右方向外側に突出しており、それぞれの突出した同側の軸端に平歯ギアが設けられ、他方端について、中継軸202には傘端ギアが設けられる。さらに、連動軸205の他方端については、かしめ止めされている。こうして、台座200に振動板109と回動体201を取り付けた振動ユニット110が形成されている。
【0067】
(フレーム体107)
フレーム体107は、第1フレーム105を筺体102内の内側底面所定位置に螺子固定されるとともに第1フレーム105の上に第2フレーム106を配置させている。
【0068】
第1フレーム105は、図7に示すように、第1の実施形態の指輪収納ケース1に用いられる第1のフレーム5と同様に、中央に長方形上の開口部135を形成して平面ロ字形状に形成され、第1壁部136と第2壁部137を立設形成し、下側部138,138、上側部160,160を形成している。さらに、第1壁部136には、第1の実施形態の指輪収納ケース1と同様に支軸挿通孔141が形成されている。
【0069】
第1フレーム105の第1壁部136と第2壁部137それぞれの面内方向所定位置には、後述の駆動機構118を構成する第1動力伝達軸150を支持するための支持孔(第1支持孔)が穿かれているほか、第1壁部136と第2壁部137のそれぞれに、第1支持孔から所定間隔をおいた位置に第2動力伝達軸163を支持するための第2支持孔が設けられる。このとき、第1壁部136と第2壁部137の第1支持孔が互いに対面し合う位置に形成されており、第2支持孔同士も互いに対面する位置に形成されている。
【0070】
また、第1フレーム105の開口部135を挟んだ2つの下側部138,138それぞれに、開口部135の長手方向に沿って細長な長孔162,162が穿設形成されている。長孔162,162は、その短手方向縦断面を略逆T字状に形成された段差孔であり、下側部138の裏面側に段差を形成している。
【0071】
第2フレーム106は、第1の実施形態の指輪収納ケース1に用いられる第2フレーム6の側壁部45、連結壁部46、支軸挿通孔47、支持孔48と同様に、側壁部145、連結壁部146、支軸挿通孔147、支持孔148を形成したものを用いられる。
【0072】
フレーム体107では、第1の実施形態の指輪収納ケース1と同様に、第1フレーム105と第2フレーム106の支軸挿通孔141,147が対面配置されるとともに支軸108が支軸挿通孔141,147に挿通されることで、第1フレーム105に第2フレーム106が支軸108まわりに回動可能に取り付けられる。
【0073】
(駆動機構118)
駆動機構118は、保持部材103の軸体22を駆動させる機構であり、駆動軸体149を備える動力伝達軸(第1動力伝達軸150)と、伝達ギア機構とからなる。この伝達ギア機構は、第1動力伝達軸150の回動力を、第2動力伝達軸163、中継軸202、振動ユニット110の連動軸205、および保持部材103に伝達するためのギア構造で構成される。すなわち、伝達ギア機構は、第2動力伝達軸163、第1動力伝達軸150に軸線を揃えて設けられるねじ歯車(円筒ウォーム152)と、円筒ウォーム152の歯溝にかみ合うように歯溝を形成したはす歯歯車(ウォームホイール153)と、第1動力伝達軸150と第2動力伝達軸163とを連動させる第1ギア221と第2ギア222、第1動力伝達軸150と中継軸202を連動させる第3ギア223と第5ギア225、第1動力伝達軸150と連動する中継軸202からさらに連動軸205を連動させて中継軸202と連動軸205を連動させる第7ギア227と第9ギア229、第2動力伝達軸163と中継軸202を連動させる第4ギア224と第6ギア226、第2動力伝達軸163と連動する中継軸202からさらに連動軸205を連動させて中継軸202と連動軸205を連動させる第8ギア228と第10ギア230とで構成される(図6,7,8,9)。
【0074】
ここに、第1ギア221、第2ギア222、第7ギア227、第8ギア228、第9ギア229、第10ギア230は、いずれも、平歯ギアである。第3ギア223、第4ギア224、第5ギア225、第6ギア226は、傘歯ギアである。これらのギアは、平歯ギアと傘歯ギアいずれも、ギア歯面を形成したギア部の回動軸方向にリブ部を延設形成するとともに、回動中心軸に沿ってギア部とリブ部を貫通する挿通孔を形成しており、リブ部の周面所定位置には、ギア部の径方向に沿って、各ギアをネジ止固定するためのネジを通じるための孔部を形成している。
【0075】
第1動力伝達軸150は、駆動軸体149の一方端に第1動力伝達軸150を軸心周りに回動させるためのハンドル154(図6では、クランクハンドル)を取り付けられている。さらに、第1動力伝達軸150の駆動軸体149の他方端側近傍の所定位置には円筒ウォーム152がウォーム部156から軸心方向に延びるリブ部155にて螺子止めされて設けられており、円筒ウォーム152は駆動軸体149と一体に回動する。第1動力伝達軸150における円筒ウォーム152は、第1ギア221とハンドル154の間に固定される。なお、第1ギア221は、そのリブ部に形成された孔部に螺子を通じて駆動軸体149に、螺子止め固定されている。このとき、第1ギア221は、駆動軸体149の他方端(ハンドル154の取り付け端とは逆側の端)と円筒ウォーム152の取り付け位置の間位置に固定されている。第1動力伝達軸150には、第3ギア223が、傘歯の歯面を円筒ウォーム152に向けつつ、駆動軸体149に、円筒ウォーム152とハンドル154の間の位置にて螺子止め固定されている。
【0076】
第2動力伝達軸163には、駆動軸体164の一方端よりもやや軸線方向内側に第2ギア222が、そのリブ部に形成された孔部に螺子を通じて駆動軸体164に螺子止め固定されている。第2ギア222の固定位置は、第1動力伝達軸150と第2動力伝達軸163を第1フレーム105に取りつけた際に第1ギア221と第2ギア222のそれぞれのギア部平歯同士が互いに噛み合うような位置となっている。第2動力伝達軸163には、第4ギア224が、その傘歯の歯面の向きを、第2ギア222にむけつつ、第1動力伝達軸150と第2動力伝達軸163を第1フレーム105に取りつけた際に第3ギア223の位置と隣り合うように、螺子止め固定されている。このとき、第4ギア224と第3ギア223の傘歯の向きは、互いに揃えられている。
【0077】
ウォームホイール153は、第1の実施形態の指輪収納ケース1に用いるものと同様にギア部158と環状リブ部159を有して構成されるとともに、保持部材103の軸体22の所定の位置に螺子などにて位置決め固定され、軸体22と一体に回動するようになっている。
【0078】
第5ギア225と第6ギア226は、それぞれ振動ユニット110の中継軸202の軸端(開口部135に近いほうの端部)に固設されており、第5ギア225と第6ギア226の回動と中継軸202の回動が同期する。第5ギア225、第6ギア226は、振動ユニット110を第1フレーム105に取り付けたときに、それぞれ第1動力伝達軸150の第3ギア223、第2動力伝達軸163の第4ギア224に対してかみ合うように、それぞれの振動ユニット110の中継軸202に設けられる。
【0079】
第8ギア228と第10ギア230は、上記したように、互いにかみ合うように、それぞれ振動ユニット110の中継軸202と連動軸205に設けられる。また、第7ギア227と第9ギア229についても、第8ギア228と第10ギア230と同様に、互いにかみ合うように、それぞれ振動ユニット110の中継軸202と連動軸205に設けられる。
【0080】
(収納ユニット104の組立て)
収納ユニット104は、振動ユニット110と保持部材103と第1動力伝達軸149と第2動力伝達軸163がフレーム体107に取り付けられることで形成される。
【0081】
振動ユニット110は、台座200に設けられた取り付け孔を第1フレーム105の長孔162に重ねるように所定位置に配置されて、取り付け孔と長孔162の幅狭部に螺子231を貫通させるとともに長孔162の幅広部にナット232を配してナット232で締結固定することで、第1フレーム105に取り付けられる。ところで、振動ユニット110においては、振動ユニット110の板カム207の突出部210の先端が保持部材103の固定部材23に取付けられる指輪71の外表面に接触する程度に、板カム207と保持部材103との離間距離が保持されることが必要となる。ここで、指輪71には様々なサイズのものが存在することから、様々なサイズの指輪71が固定部材23に取付けられる可能性があるため、第1フレーム105に対する台座200の相対的な取り付け位置が適宜調節可能であることが好ましい。この点、第1フレーム105には長孔162が形成されているため、長孔162と螺子231の相対的な固定位置を長孔162の長手方向に適宜変更することで、振動ユニット110の第1フレーム105に対する取り付け位置を調整でき、板カム207と保持部材103との離間距離を調整することができる。
【0082】
第1動力伝達軸150は、第1フレーム105の第1壁部136と第2壁部137に向かいあうように設けられた2つの第1支持孔に駆動軸体149を通ずることで、第1フレーム105に回動可能に支持される。また、第1壁部136と第2壁部137の間の所定位置に円筒ウォーム152が位置し、第1動力伝達軸150の駆動軸体149の一方端は、第1フレーム105の第2壁部137の第2支持孔を貫通して第2壁部137よりも外側に位置しており、その駆動軸体149端部側にハンドル154が設けられている。
【0083】
第2動力伝達軸163は、第1フレーム105の第1壁部136と第2壁部137に向かい合うように設けられた2つの第2支持孔に駆動軸体164を通ずることで、第1フレーム105に回動可能に支持される。このとき、第1動力伝達軸150と第2動力伝達軸164は横並びに配列される。
【0084】
保持部材103は、その軸体22を、第2フレーム106の2つの側壁部145,145それぞれに設けられた支持孔148,148のそれぞれに挿通させることで、軸体22の軸周りに回動可能に第2フレーム106に取り付けられる。このとき、軸体22の両端面は、第2フレーム106の外側まで突出しており、固定部材23は、第2フレーム106の外側に位置する軸体22の両端部に取り付けられている。
【0085】
このように、駆動機構118を構成する各種ギア等が取り付けられた振動ユニット110と保持部材103と第1動力伝達軸149と第2動力伝達軸163が、それぞれフレーム体107に取り付けられると、収納ユニット104が形成される。収納ユニット104は、第1フレーム105の第2壁部137の上面に第2フレーム106の連結壁部146を載置した場合に、回動体205の板カム207の突出部210が保持部材103の固定部材23の側周面に向けられており、保持部材103に指輪10を取り付けた場合に指輪10の側周面に突出部210の先端が接触する。また、第1動力伝達軸150と保持部材103の相互の配置は、収納ユニット104が第1フレーム105の第2壁部137の上面に第2フレーム106の連結壁部146を載置した状態である場合に、保持部材103のウォームホイール153の周面が第1動力伝達軸150の円筒ウォーム152のウォーム部156に対面し、ウォームホイール153のギア歯と円筒ウォーム152のウォーム歯とが互いに噛み合うような配置、となっている。
【0086】
(指輪収納用ケース101の組立て)
指輪収納用ケース101は、第1の指輪収納ケース1と同様に、収納ユニット104を筺体102に設けることで得ることができる。
【0087】
次に、指輪10について説明する。
【0088】
(指輪10)
第2の実施形態の指輪収納ケース101に収納される指輪10には、図5(b)に示すように、環状体20の円筒外側面(回動表面)に所定のパターンの凹部を形成している指輪71が用いられる。指輪71(10)の凹部は、環状体20の円筒外側表面上に所定のパターンで多数の小孔121を形成することにより形成されている。すなわち、指輪71においては、個々の小孔121が凹部をなしている。
【0089】
小孔121の植設パターンは次のように定められる。すなわち、個々の小孔121は、指輪収納ケース101に指輪71を収納した際に所定の1つの板カム207の突出部210の先端に対して対面するような位置に植設される。さらに、小孔121の植設パターンは、第1の実施形態の指輪収納ケース1と同様に、指輪収納ケース101に指輪71(10)を収納した状態で保持部材3を回動させて振動板9を振動させることによって奏でさせようとする旋律に応じて適宜選択される。
【0090】
個々の小孔121の口径は、指輪収納ケース101に指輪71を収納した際に指輪71の回動表面に対して対面することになる個々の板カム207の突出部210の対面幅程度の大きさである。また、小孔121の深さは、指輪収納ケース101に指輪71を収納した際に対面する板カム207の突出部210に対して接触して係止可能となるような深さであって、指輪70の回動に応じて板カム207の突出部210の先端に対して係脱自在となるような深さを適宜選択される。このような深さが選択されることにより、指輪収納ケース1に指輪70を収納するとともに回動させた際に、指輪70において突起21が板カム207の突出部210に接触して突出部210の接触に応じて振動片112を選択的に弾くように、小孔121が指輪71に植設されていることになる。
【0091】
(指輪収納ケース101への指輪10の収納)
指輪収納ケース101への複数の指輪10の収納は、第1の実施形態の指輪収納ケースにおける指輪10の収納と同様に、保持部材103へ複数の指輪10を取り付けることよって実現される。このとき、第1の実施形態の指輪収納ケース1と同じく、固定部材23の外面の所定位置に位置指定標識を設けておくとともに、固定部材23の外面の位置指定標識39に対して向かい合わせとなる指輪10の所定位置に対面位置指定標識を設けておくことが好ましい。
【0092】
(音を発生する機構)
このように、収納ユニット104に指輪10が収納され、その状態で、ハンドル154を回動させると、次に示すような機構で、保持部材103が回動して振動板109が振動することによって音が生じ、指輪10の小孔121の植設パターンに応じて所定の旋律が奏でられる。
【0093】
まず収納ユニット104に指輪10が取り付けられると、第1フレーム105の第2壁部137の上面に第2フレーム106の連結壁部146を載置した場合に、振動ユニット110の板カム207の突出部210の先端が指輪10の側周面に向けられる。振動片112と板カム207と指輪10の位置関係は、振動片112が弾かれる際、板カム207の中心と突出部210と指輪10の中心とが一直線状に並んでおり、振動片112が弾かれる前後では、板カム207の突出部210が指輪10の回動表面に当接する(図12(a)(b))ような位置関係となっている。そして、振動ユニット110の振動片109は、板カム207の突出部210に対して鉛直方向に対してやや斜め方向から当接する。
【0094】
さて、第1フレーム105の第2壁部137の上面に第2フレーム106の連結壁部146を載置した状態で、手動によりハンドル154に回転力を加えられると、第1動力伝達軸150はハンドル154を連結した駆動軸体149の回転によって駆動軸体149の軸線周りの回動力を生じ、円筒ウォーム152が回動し、円筒ウォーム152の回動によってウォームホイール153と軸体22が一体に所定方向に回動する。軸体22が回動すると、この軸体22の回動に同期して複数の指輪10も同方向に回動する。これと同時に、第1動力伝達軸149に対して第1ギア221に噛み合う第2ギア222を介して第2動力伝達軸163が逆方向に回転する。第1ギア221の回動に同期して、同方向に第3ギアが回動し、第2ギア222の回動に同期して、同方向に第4ギア224が回動する。そして、第3ギア223,第4ギア224の回動に合わせて第5ギア225,第6ギア226に回動力が生じるとともにこの回動に同期して中継軸202の回動が生じ、第8ギア228から第10ギア230へ、第7ギア227から第9ギア229へと回転力が順次伝えられて、複数の指輪10のそれぞれに対面するそれぞれの回動体201の連動軸205が回動する。なお、それぞれの連動軸205の回動方向は、複数の指輪10のそれぞれの回動方向に対して互いに逆むきである(図12(a))。通常、連動軸205まわりに円軌道を描く板カム207の先端が下方から上方に向かって動く間に、板カム207の先端と指輪10の周面とが最も近接する状態となるように、連動軸205が矢印R2方向に回動する。指輪10は、その逆向き(矢印R1)方向に回動する。このとき、連動軸205の回動速度が指輪10の回動速度よりも大きくなるように、指輪10と連動軸205の相対的な回動速度が調節されている。
【0095】
板カム207の突出部210の先端が指輪10の小孔121以外の側周面に接するときには、板カム207の突出部210の先端の膨出面211が指輪10の周面に当接する。そして、このときには、板カム210の突出部210の先端は、指輪10の周面上を滑るとともに指輪10の周面から連動軸205の回動方向とは逆方向の力を受けて、板カム207の回転が規制され、板カム207は連動軸205に対してもすべりを生じる(空転する)。
【0096】
そして、指輪10の回動が進んで、板カム207の突出部210の先端が指輪10の小孔121に当接するとき、小孔121の位置(指輪10の回動軸線方向に沿った位置)に応じて選択的に板カム207の突出部210の先端がその小孔121に係合する。指輪10の小孔121は、板カム207の突出部210の非膨出面212側から当接してこれに係合し、小孔121が板カム207の突出部210を上方に向かって押圧する。これにより、小孔121の動きに伴って板カム207が回動することになる(図12(a))。そして、これにともない、その板カム207の突出部210のうち小孔121に係合していないものの膨張面211側の先端が、振動片112の隆起部側から振動片112に接触する。そして、その板カム207の更なる回動に伴ってその振動片112を選択的に弾く。
【0097】
その後、指輪10の回動が進んで板カム207の突出部210の先端と小孔121との係合が解除されるにいたると、板カム207はワッシャー206から受ける摩擦力によって連動軸205の回動に同期して回動するようになる。すると、板カム207の突出部210の先端の膨出面211が指輪10の回動面に対して斜め下方から接し、再び、板カム207は連動軸205に対して空転するようになる(図12(b))。こうして、指輪10の小孔121が板カム207の突出部210の先端に所定のタイミングで嵌り込んで板カム207に規制された回動を行わせ(図12(a))、この回動に伴って板カム207の突出部210の先端が振動板109の振動片112を選択的に弾くようになる。ここに、振動板109は、弾かれる振動片112の違いに応じて異なる音階の音を生じるように異なる長さの振動片112を備えて構成されている。これにより、様々な音階の音が、所定のタイミングで生じることとなり、指輪収容ケース101と指輪10とが一体になった構造体から所定の旋律が奏でられることとなる。すなわち、指輪収容ケース101と指輪10のセットは、所定の旋律が奏でる楽曲演奏機能を発揮可能なものである。
【0098】
なお、第2の実施形態の指輪収納ケース101において、指輪10が保持部材103の軸部19に取り付けられることで収納ユニット104に収納された場合に上記のように振動ユニット110と保持部材3と指輪10が連動して所定の音を発生させるように構成される。すなわち、収納ユニット104に指輪10が収納されることで一体的に音を発生させる発音機構が形成されていることになる。このとき、発音機構は、振動ユニット110と保持部材3と指輪10で構成される。また、第2の実施形態の指輪収納ケース101においては、発音機構を構成する保持部材103の軸部19を駆動させる駆動機構118は、第1動力伝達軸150とギア機構51とで同期回動構造を構成する。同期回動構造は、既述のように、複数の指輪10を軸部19に取り付けた場合に、軸部19の回動に応じて軸部19の軸線まわりに複数の指輪10を互いに同期して回動させる構造である。
【0099】
(第1,2の実施形態の変形例)
本発明では、上記のように指輪10を着脱自在に構成した保持部材3や保持部材103と発音機構と同期回動構造を備えるものであれば、上記の各実施形態に示す例に限定されるものではない。
【0100】
(軸部19)
上記の第1,2の実施形態では、軸部19は、軸体22の両端に固定部材23を設けた構成を備えていたが、これに限定されず、軸部19の少なくとも一方端に固定部材23が設けられておればよい。この場合、指輪10は、軸部19の一方端に設けられることになる。
【0101】
(固定部材23)
上記の第1,2の実施形態では、固定部材23が上述のように構成されているものに限定されない。
【0102】
固定部材23は、調節螺子250と、調節螺子250を螺合固定する被チャック穴251を形成した固定材252を有するものでもよい(図11(a))。被チャック穴251は、テーパー状の窪みの中央に穴を形成してなる断面略ロート状の形状に形成される。
【0103】
固定材252には、被チャック穴251の径方向に放射状にスリット253が複数切り込み形成されている。図11(a)の例では、スリット253は、3本設けられる(図では1本のみ表示)。このとき、被チャック穴251の外周に沿って隣り合う2つのスリット253によりそれらのスリット253間に爪部254が形成され、3つの爪部254が形成される。この場合、固定材252は、いわゆる三つ爪チャックをなす。
【0104】
調節螺子250は、螺子溝を形成した胴部255と、胴部255に近い位置ほど小径となるようなテーパー状に形成された傾斜面を有する頭部256とを備えるとともに、頭部256側の端面にI字状のツマミ部257を突出形成してなる。
【0105】
調節螺子250が固定材252の被チャック穴251に挿入され、ツマミ部257が手動により回動されると、調節螺子250の頭部256は、被チャック穴251の傾斜面部に当接する。さらにツマミ部257が回動されると、固定材252の径方向外側に向かって被チャック穴251の傾斜面部に対して外側への押圧力を負荷するようになり、爪部254が外方向に押し広げられ、固定材251の外径が拡大する。このとき指輪10が固定材251に外嵌されていると、指輪10の内面に固定材251の外周面が押し当てられ、指輪10は、固定材251に固定される。
【0106】
固定部材23は、図11(b)に示すように、ゴム弾性を有する環状のゴムリブ260を円柱体の外周面に突設した弾性固定材からなるものであってもよい。この場合、指輪10を固定部材23に嵌めつけることで、固定部材23における円柱体外周面のゴムリブ260が弾性的に指輪10を固定する。
【0107】
固定部材23は、図11(c)に示すように、螺子孔(図示せず)を有するボス部261とボス部261の径方向に広がる鍔部262とを形成したボス部材263と、ボス部261の先端に形成された螺子孔に羅合可能な螺子溝を備える螺子材264と、ワッシャー265にて構成されてもよい。このとき、ボス部材の鍔部およびワッシャー265は、指輪10の外径よりも大径に形成される。この場合、指輪10をボス部261に通じ、ボス部261の先端方向からワッシャー265を指輪10に当接させて、ボス部261の螺子孔に螺子材264を羅合させることで、指輪10が、鍔部262とワッシャー265の間に固定される。
【0108】
(変移機構)
上記の実施形態1,2では、指輪収納ケース1,101には、少なくとも振動片12,112と指輪10とが非接触となる位置まで変位させる変移機構が備えられている。
【0109】
実施形態1,2では、変移機構に、さらに次のように、第2フレームの変移位置を安定化する機構(変移安定化機構)が備えられてもよい。図15に示すように、指輪収納ケース1において、変移安定化機構は、第1フレーム5の第1壁部36の外面側に板バネ266を螺子固定して設けるとともに、第2フレーム6の一方の連結壁部46(支軸挿通孔47を形成したほうの連結壁部46)の先端を逆テーパー形状にして構成される。このとき、板バネ466の上端(先端)は、第2フレーム6上面位置に達する(図15(a))。これにより、振動片12と指輪10とが接触するように第1フレーム5上に第2フレーム6が載置されている場合には、板バネ266は第2フレーム6の端面を押圧し、第1フレーム5上に第2フレーム6が載置された状態が維持される。第2フレーム6を回動させて振動片12と指輪10とが非接触となる位置まで変位させると、第フレーム6の連結壁部46の突端が板バネ266と第1側壁36の間に入りこみ、第2フレーム6の位置を安定化させる(図15(b))。なお、図15では、第1の実施形態において板バネを設ける場合を例示したが、第2の実施形態においても、これと同様に板バネを設け、第2フレーム106の一方の連結壁部146の先端を逆テーパーとすることができる。
【0110】
(第1フレームと第2フレームの取り付け構造)
上記の第1,2の実施形態では、フレーム体7,107は、第2フレーム6,106を第1フレーム5,105に対して支軸8,108まわりに回動可能に取り付けられて構成されたが、第2フレーム6,106は第1フレーム5,105に対して着脱自在に取り付けられていてもよい。例えば、フレーム体7,107は、第1フレームと第2フレームとの当接面に磁石などの磁性体が設けられて第1フレームと第2フレームが互いに磁着されていることで、第2フレームは第1フレームに対して着脱自在に取り付けられていてもよい。
【0111】
(駆動機構18,118)
上記の第1,2の実施形態では、駆動機構18,118の動力伝達軸50、第1動力伝達軸150に、ワンウェイクラッチなどの逆回転防止構造が設けられていてもよい(図14)。逆回転防止構造は、一方向の回転を許容し、逆回転の回転を規制するものである。例えば、図14に示すように、逆回転防止構造270は、第1フレーム5の第1壁部36に円筒状のアウターレース271を設けるとともに、アウターレース271の内側に同心となるように駆動軸体49を配置し、アウターレース271と駆動軸体49の間に複数の球状のローラー272をアウターレース271内面と駆動軸体49外面に接するように駆動軸体49外周面に沿って凡そ等間隔に配置し、駆動軸体49外面に沿って隣り合うローラー272の間に、一端にバネ273を接続したリテーナー274を配置してなる。逆回転防止構造270は、隣り合うリテーナー274の間において、アウターレース271内面と駆動軸体49外面の距離(T)が異なっており、駆動軸体49がP方向に回動する場合には、ローラー272がTの値の比較的大きい部分(幅広通路部分)に進入してローラー272はスムーズに回転して、駆動軸体49の回動が規制されず、駆動軸体49がP方向とは逆向きに回動しようとする場合には、ローラー272がTの値の小さい部分(幅狭通路部分)に進入してローラー272の回転が規制され、駆動軸体49の回動が規制されるようになっている。なお、図14は、逆回転防止構造が第1の実施形態の指輪収納ケースに設けられている場合の例を示すものである。
【0112】
(保持部材3,103の駆動)
上記の第1,2の実施形態では、保持部材3,103は、ハンドルを有して手動により駆動力を付与されるように構成されていたが、駆動力を付与する機構としては手動に限らず、手動の他の動力源に基づく駆動力を付与されてもよい。例えば、上記の第1,2の実施形態において、ゼンマイ装置がさらに設けられてゼンマイによる動力により保持部材3,103が駆動力を付与されてもよい。その場合、第1,2の実施形態において、ゼンマイ装置と、ゼンマイ装置からの駆動力が動力伝達軸に伝達されるようにゼンマイ動力伝達構造が設けられる。ゼンマイ装置とゼンマイ動力伝達構造としては従前より公知なものを適宜用いることができる。
【符号の説明】
【0113】
1 指輪収納ケース
2 筺体
3 保持部材
4 収納ユニット
5 第1フレーム
6 第2フレーム
7 フレーム体
8 支軸
9 振動板
10 指輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筺体を備えるとともに、所定のパターンで表面に凸部を形成している複数の指輪を保持するための保持部材を有する収納ユニットを筺体内に設けた指輪収納ケースであって、
保持部材は、複数の指輪を着脱自在に軸支し且つ複数の指輪を取り付けられた場合に指輪の回動と同期して回動可能な軸部を備え、
収納ユニットは、軸部を回動させる駆動機構と、所定の音を発生可能な発音機構とを備え、
駆動機構は、複数の指輪を軸部に取り付けた場合に、軸部の回動に応じて軸部の軸線まわりに複数の指輪を互いに同期して回動させる同期回動構造を有しており、
発音機構は、複数の振動片を有して該振動片の振動によって音を生じる振動板を備えるとともに、複数の指輪を軸部に取り付けた場合に振動片の先端が指輪の表面の凸部に接触するように、前記振動板を配置しており、且つ、複数の指輪を軸部に取り付けて駆動機構により指輪を回動させた場合に、指輪の凸部の形成パターンに応じた所定のタイミングで指輪の凸部が振動片に選択的に接触して該振動片を弾くことによって、音を発生するように構成されている、ことを特徴とする指輪収納ケース。
【請求項2】
筺体を備えるとともに、所定のパターンで表面に凹部を形成している複数の指輪を保持するための保持部材を有する収納ユニットを筺体内に設けた指輪収納ケースであって、
保持部材は、複数の指輪を着脱自在に軸支し且つ複数の指輪を取り付けられた場合に指輪の回動と同期して回動可能な軸部を備え、
収納ユニットは、軸部を回動させる駆動機構と、所定の音を発生可能な発音機構とを備え、
駆動機構は、複数の指輪を軸部に取り付けた場合に、軸部の回動に応じて軸部の軸線まわりに複数の指輪を互いに同期して回動させる同期回動構造を有しており、
発音機構は、径方向に複数の突出部を有する複数の板カムと、該複数の板カムを個別に回動可能に軸支する連動軸と、複数の振動片を有して該振動片の振動によって音を生じる振動板とを備え、複数の指輪を軸部に取り付けた場合に指輪の凹部に板カムの突出部が噛み合うように、板カムを配設するとともに、個々の振動片の先端が個々の板カムの突出部の先端に接触するように振動板を配設しており、且つ、複数の指輪を軸部に取り付けて駆動機構により指輪を回動させた場合に、指輪の凹部の形成パターンに応じた所定のタイミングで所定の板カムが該板カムのいずれか一つの突出部にて指輪の凹部に噛み合いながら回動するとともに板カムの他のいずれかの突出部の先端を振動片に選択的に接触させて該振動片を弾くことによって、音を発生するように構成されている、ことを特徴とする指輪収納ケース。
【請求項3】
請求項1に記載の指輪収納ケースに収納される指輪であって、表面に所定のパターンで突起を植設して該突起を植設された部分を凸部となすことで、所定のパターンの凸部を形成している、ことを特徴とする指輪。
【請求項4】
請求項2に記載の指輪収納ケースに収納される指輪であって、表面に所定のパターンで小孔を形成して該小孔を形成された部分を凹部となすことで、所定のパターンで凹部を形成している、ことを特徴とする指輪。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−59462(P2011−59462A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210110(P2009−210110)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(504014901)有限会社ソラ (10)
【Fターム(参考)】