説明

指針式時計

【課題】時計本体自体を回転させることなく、文字板上の時刻位置を所望の回転位置に設定変更することのできる指針式時計を提供する。
【解決手段】周方向に沿って複数の透過窓h,h,…hが形成された文字板5と、文字板5上を運針して時刻を表示する複数の指針2〜4と、文字板5の時刻位置を表わす指標21A〜21Dが形成された時字板21と、指標21A〜21Dを複数の透過窓h,h,…hのうち何れかから露出させるために時字板21を回転させる時字板回転制御手段と、時字板回転制御手段により回転された時字板の回転角度に応じて複数の指針2〜4の位置を修正する指針修正手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の指針により時刻を表示する指針式時計に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の指針により時刻が表示される指針式時計においては、文字板の上方位置に12時の位置が固定されるのが通常である。
【0003】
また、従来、指針式腕時計において、時計本体を含む内部ケースを、時計バンドに固定される外部ケースに対して回転自在にした技術の提案がなされている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】実開昭61−40682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、ハンドル操作中など腕に付けている時計が常に傾いた状態となるような場合、文字板上の12時の位置を、初期の位置から変化させて例えば2時の位置など時計の傾きに合わせた位置へ変更したいという要求が生じる場合がある。
【0005】
また、上記特許文献1の技術のように、時計本体を外部ケースに対して回転可能な構成とした場合、ケースが二重になるため外部ケースを含めた時計全体の寸法が大きくなるといった課題や、時計本体に設けられるリューズやボタンなども時計本体の回転に伴って移動してしまうという課題が生じる。
【0006】
この発明の目的は、時計本体自体を回転させることなく、文字板上の時刻位置を所望の回転位置に設定変更することのできる指針式時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
周方向に沿って複数の透過窓が形成された文字板と、
この文字板上を運針して時刻を表示する複数の指針と、
前記文字板の時刻位置を表わす指標を有するとともに、該指標を前記複数の透過窓の何れかから選択的に露出させるために前記文字板の裏側に回転可能に配置された時字板と、
前記指標を前記複数の透過窓のうち何れかから露出させるために前記時字板を回転させる時字板回転制御手段と、
前記時字板回転制御手段により回転された時字板の回転角度に応じて前記複数の指針の位置を修正する指針修正手段と、
を備えたことを特徴とする指針式時計。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の指針式時計において、
前記透過窓は、前記文字板の周縁寄りに30度間隔で複数形成され、
前記時字板には、0時、3時、6時、9時を示す指標が設けられていることを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の指針式時計において、
外部からの操作入力を受ける操作部を備え、
前記時字板回転制御手段は、前記操作部の操作入力に応じた回転角度で前記時字板を回転させる構成であることを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の指針式時計において、
前記複数の指針は、時、分、秒をそれぞれ表示する時針、分針、秒針を含み、
さらに、
前記時針と前記分針と前記秒針をそれぞれ独立的に回転駆動可能な3個の駆動部を備え、
前記指針修正手段は、前記3個の駆動部を駆動制御して前記時針と前記分針と前記秒針の位置をそれぞれ修正する構成であることを特徴としている。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の指針式時計において、
前記指針修正手段は、前記時字板が回転してない標準の時刻表示の位置から、前記時字板の回転角度と同一の回転角度だけ、前記複数の指針の位置を変化させる構成であることを特徴としている。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項3記載の指針式時計において、
前記操作部により第1の操作入力が行われた場合に前記時字板の回転設定モードに移行し、前記操作部により第2の操作入力が行われた場合に前記時字板の回転設定モードを抜けるモード変更制御手段を備え、
前記時字板回転制御手段は、前記回転設定モードのときに前記操作部の操作入力に基づいて前記時字板を回転させる構成であり、
前記指針修正手段は、前記回転設定モードを抜けた際に前記複数の指針の位置を修正する構成であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に従うと、時字板回転制御手段による時字板の回転と指針修正手段による複数の指針の回転位置の修正とによって、時計本体ごと回転させることなく、文字板上に設定される各時刻位置を標準の位置から回転方向に変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態の指針式時計1を示す正面図である。
【0016】
この実施形態の指針式時計1は、電気的な駆動により時針2、分針3、秒針4を回転させて時刻を表示するもので、例えば、腕時計の本体となるものである。この指針式時計1は、外周部をケーシング10と中央の風防ガラスとでそれぞれ囲まれ、この風防ガラスの内側に文字板5が設けられ、さらに、この文字板5上に時針2と分針3と秒針4とが配設された構成になっている。また、ケーシング10の側方には、操作部として例えば4つの操作スイッチS1〜S4が設けられている。
【0017】
文字板5は、円板形状の部材であり、その周縁寄りの部位に30度間隔で透過窓h,h,…hが形成され、これら透過窓h,h,…hを介して、文字板5の裏側に配置された時字板21の一部が露出されるようになっている。これらの透過窓h,h,…hは、貫通穴の構成としても良いし、透明板や透明レンズにより構成しても良い。また、これら透過窓h,h,…hの間には時刻の目盛り等が形成されている。
【0018】
図2は、実施形態の指針式時計1において時字板21を標準基準位置G0から60度回転させた状態を表わした正面図、図3は、文字板5の裏側に回転可能に配置される時字板21の構成を示した正面図である。
【0019】
時字板21は、図3に示すように、中央部分に外周円と同心円状の穴が空けられた薄く平らなリング形状の部材であり、中央の円形穴の内周面には内歯車部211が形成されている。そして、文字板5の裏側に回転可能に配置されて、文字板5の時刻位置を表わすようになっている。
【0020】
時字板21の外周部から内周部にかけた帯状の部分は、文字板5の透過窓h,h,…hの裏側に配置される部分であり、この部分に文字板5上の時刻位置を表わす指標21A〜21Dが設けられている。例えば、この帯状の部分の上下左右に、90度間隔で12時位置を表わす指標21Aと、3時位置を表わす指標21Bと、6時位置を表わす指標21Cと、9時位置を表わす指標21Dとが、例えば、印字などによりそれぞれ形成されている。これらの指標21A〜21Dは、例えば、他の部分よりも濃い表示としたり、色の異なる表示等にすることで、他の部分よりも目立つようにされている。また、指標21A〜21Dには、時刻位置が認識できるように時刻を表わす文字が形成されている。
【0021】
なお、時字板21に形成される指標は、図3の例に限定されるものではない。例えば、30度間隔で「1」,「2」,〜「12」の12個の指標を設けるようにしたり、或いは、12時位置だけに1個の指標を設けるようにしても良い。また、時刻位置を表わす文字はアラビア数字のほか、ローマ数字や漢数字を適用しても良い。また、文字をなくしてマークや記号によって時刻位置を表わすものとしても良い。
【0022】
この実施形態の指針式時計1は、標準の状態においては、図1に示すように、指針式時計1の上方位置である標準の基準位置G0に12時位置が設定されるようになっている。すなわち、この標準の基準位置G0にある透過窓hに12時位置を表わす指標21Aが露出され、また、標準の基準位置G0から90度、180度、270度ずれた透過窓h,h,hに、それぞれ時字板21の3時と6時と9時の位置を示す指標21B〜21Dがそれぞれ露出されるように設定されている。さらに、このような標準の基準位置G0を12時位置とした時刻配置に従って、複数の指針2〜4が計時時刻の時桁、分桁、秒桁の値をそれぞれ指し示すように駆動制御される。
【0023】
一方、詳細は後述するが、この実施形態の指針式時計1においては、時字板21の回転位置をユーザ操作に基づいて設定変更することが可能になっている。例えば、図2に示すように、文字板5の12時位置となる基準位置G1を標準の基準位置G0から所定角度(図2では時計方向に60度)ずらすことが可能になっている。すなわち、標準の基準位置G0から所定角度ずれた基準位置G1にある透過窓hに12時位置を表わす指標21Aが露出され、また、この基準位置G1から90度、180度、270度ずれた透過窓h,h,hに、時字板21の3時と6時と9時の指標21B〜21Dがそれぞれ露出される設定である。
【0024】
また、このように時字板21の回転位置が設定変更された状態においては、設定変更後の時刻配置に従って現在の計時時刻が指し示されるように、各指針2〜4の位置も時字板21の回転角度に応じて修正されるようになっている。例えば、図1と図2の例では各指針2〜4が互いに60度ずつずれた配置となっているが、両方とも同時刻(例えば10時8分33秒)を表示した内容になっている。
【0025】
図4には、実施形態の指針式時計1の内部構成等を表わしたブロック図を示す。
【0026】
指針式時計1の内部には、図4に示すように、CPU(中央演算処理装置)が搭載され装置の全体的な制御を行う制御部80と、制御部80により実行される制御プログラムや制御データが格納されたROM(Read Only Memory)82と、制御部80に作業用のメモリ空間を提供するRAM81と、時字板21を輪列機構(25〜27)を介して独立的に回転させる第1ステップモータ23と、制御部80からの信号に基づいて第1ステップモータ23をステップ駆動する駆動回路84と、時針2と分針3と秒針4とを輪列機構(33〜35,43〜45,53,54)を介してそれぞれ独立的に回転させる駆動部としての第2〜第4ステップモータ31,41,51と、制御部80からの信号に基づき第2〜第4ステップモータ31,41,51をそれぞれステップ駆動する駆動回路85〜87と、所定の周波数信号をカウントして現在時刻の計時を行う計時部83等が設けられている。また、上述したケーシング10の側方に設けられている4つの操作スイッチS1〜S4から制御部80へ操作信号が入力されるように構成されている。
【0027】
上記ROM82に格納された制御プログラムには、計時部83の計時データに基づいて所定のタイミングで各指針2〜4の駆動回路85〜87に駆動指令の信号を出力して、時針2、分針3および秒針4とを回転制御していく時刻表示処理の制御プログラムや、操作スイッチS1〜S4を介したユーザからの操作入力に基づいて時字板21を回転させ且つ各指針2〜4の位置修正とを行う時刻表示位置の回転設定処理の制御プログラムが含まれている。
【0028】
上記の第1〜第4ステップモータ23,31,41,51は、例えば、磁性材料によって構成されるステータと、ステータに巻回されるコイルと、ステータに囲まれてなる貫通孔部に回転可能に配置された2極のロータ23a,31a,41a,51aとを備え、ステータのコイルに駆動パルスが供給されるごとに、ロータ23a,31a,41a,51aが180度ずつ同一方向に回転するように構成されている。
【0029】
図5には、本実施形態の指針式時計1からケーシング10と文字板5等をはずした内部機構の平面図を、図6には、この内部機構のうち時字板21を駆動する部分を表わした図5の矢印A−A線断面図を示す。
【0030】
図5に示すように、時字板21は文字板5の中央位置(秒針軸56の位置)を中心に回動可能なように機枠101に保持されている。そして、図6に示すように、第1ステップモータ23のロータ23aの回転運動が、2つの中間車25,26と、日の裏車27とを介して時字板21に伝達されて、時字板21が回転するように構成されている。第1ステップモータ23のロータ23aが1ステップ(180度)回転すると、時字板21が2度回転するように各歯車は設計されており、それにより、第1ステップモータ23の15ステップの駆動により時字板21が1時間分移動し、180ステップの駆動により時字板21が1回転するようになっている。
【0031】
図7には、指針式時計1の内部機構のうち時針2を駆動する部分を表わした断面図を示す。
【0032】
図7に示すように、第2ステップモータ31のロータ31aの回転運動は、中間車33と日の裏車34と時針車35を介して、時針2が固定されている時針軸36に伝達されるようになっている。第2ステップモータ31のロータ31aが1ステップ(180度)回転すると、時針2が2度回転するように各歯車が設計されており、それにより、第2ステップモータ31の15ステップの駆動により時針2が1時間分移動し、180ステップの駆動により時針2が1回転するようになっている。
【0033】
図8には、指針式時計1の内部機構のうち分針3と秒針4とを駆動する部分を表わした断面図を示す。
【0034】
図8に示すように、第3ステップモータ41のロータ41aの回転運動は、中間車43と三番車44とを介して、分針3が固定されている分針車45に伝達されるようになっている。第3ステップモータ41のロータ41aが1ステップ(180度)回転すると、分針3が2度回転するように各歯車が設計されており、それにより、第3ステップモータ41の3ステップの駆動により分針3が1分だけ移動し、180ステップの駆動により分針3が1回転するようになっている。
【0035】
また、図8に示すように、第4ステップモータ51のロータ51aの回転運動は、五番車53を介して、秒針4が固定されている秒針車54に伝達されるようになっている。第4ステップモータ51のロータ51aが1ステップ(180度)回転すると、秒針4が6度回転するように各歯車が設計されており、それにより、第4ステップモータ51の1ステップの駆動により秒針4が1秒分移動し、60ステップの駆動により秒針4が1回転するようになっている。
【0036】
次に、上記のように構成された指針式時計1の動作について説明する。
【0037】
通常時、制御部80は時刻表示処理のプログラムを実行しており、計時部83の計時データに基づく適宜なタイミングで、駆動回路85〜87へ駆動指令の信号を出力している。例えば、秒針4に対応する駆動回路87へは1秒に1回の駆動指令信号を出力し、分針3に対応する駆動回路86へは20秒に1回の駆動指令信号を出力し、時針2に対応する駆動回路85へは4分に1回の駆動指令信号を出力する。これにより、各指針2〜4が適宜回転して各指針2〜4により計時部83の計時時刻が常に指し示された状態となる。
【0038】
また、制御部80は、上記の時刻表示処理のプログラムと並行して、次に示す時刻表示位置の回転設定処理のプログラムを、例えば短い所定周期ごとに実行するようになっている。
【0039】
図9には、制御部80により実行される時刻表示位置の回転設定処理のフローチャートを示す。
【0040】
時刻表示位置の回転設定処理は、ユーザ操作に基づいて文字板5上の12時位置を示す基準位置G1(図2参照)を時計上方に設定された標準の基準位置G0から所望の角度だけ回転させることを可能とする処理である。この時刻表示位置の回転設定処理が開始されると、先ず、ステップJ1において、制御部80は操作スイッチS1〜S4の入力信号を確認して操作スイッチS2を2秒間押し続ける操作(第1の操作入力)があったか否かを判別する。この操作は、ユーザが時字板21の回転設定モードへ移行するために予め定められた操作であり、このステップJ1を実行する制御部80によりモード変更制御手段が構成される。
【0041】
その結果、上記操作がなければ、回転設定モードへの移行要求は無いとして、そのままこの時刻表示位置の回転設定処理を一旦終了し、次の所定周期で再びステップJ1の処理から開始する。
【0042】
一方、ステップJ1の判別処理で操作ありと判別されたら、ステップJ2に移行して時字板21の回転設定モードに移行する。ステップJ2では、先ず、操作スイッチS1〜S4の入力信号を確認して操作スイッチS1の操作の有無を判別し、操作がなければステップJ5に移行して、次に、操作スイッチS2の操作(第2の操作入力)の有無を判別する。また、操作スイッチS1,S2の何れの操作もなければ、再び、ステップJ2に戻って、何れかの操作があるまでこのステップJ2,J5のループ処理を繰り返す。
【0043】
その結果、操作スイッチS1の操作があれば時字板21を回転させるためにステップJ3に移行する。ステップJ3では、時字板21の駆動回路84に所定個の駆動指令の信号を出力し、時字板21を時計回りに30度回転駆動する。このステップJ3の処理により、文字板5の透過窓h,h,…hに露出されていた指標21A〜21Dが、時計方向に30度回転移動して、隣の透過窓h,h,…hから露出された状態となる。このステップJ3の処理を実行する制御部80により時字板回転制御手段が構成される。
【0044】
時字板21が回転移動したら、続くステップJ4で、時字板21の12時位置が標準の基準位置G0(図1,図2参照)からトータルで何度回転した位置にあるかを演算してRAM81の所定領域に記憶する。そして、再び、ステップJ2に戻る。
【0045】
上記のステップJ2〜J4の処理により、ユーザは、時字板21の回転設定モード中、操作スイッチS1を1回又は複数回操作することで、時字板21を時計方向に30度ずつ1回又は複数回回転させて、時字板21の指標21A〜21Dを回転させて所望の透過窓h,h,…hから露出した状態に設定変更することができる。さらに、時字板21を回転させたときに、時字板21の12時位置が標準の基準位置G0から何度ずれた位置にあるかが記憶されるようになっている。
【0046】
一方、ステップJ2,J5の操作判別処理において操作スイッチS2の操作があったと判別された場合には、時字板21の回転設定モードを抜けて針位置修正の処理を行うためにステップJ6に移行する。上記ステップJ5を実行する制御部80によりモード変更制御手段が構成される。ステップJ6では、ステップJ4で記憶した時字板21のトータルの回転角度に基づいて、時字板21の指標21A〜21Dに応じた時刻配置で時針2による時桁の値が指し示されるように、時針2の修正位置の演算と演算結果に応じた時針2の位置修正とを行う。
【0047】
制御部80は、例えば、RAM81の所定領域に各指針2〜4の現在の針位置を表わす針位置カウンタを構築しており、各指針2〜4に対応する駆動回路85〜87へ駆動指令の信号を出力するたびに、この針位置カウンタをカウントアップして、各指針2〜4の現在の針位置を記憶した状態にある。
【0048】
従って、ステップJ6の時針修正処理においては、先ず、文字板5の基準位置G1が標準の基準位置G0と重なっている場合において、現在の計時時刻に対応した時針2の針位置を算出する。次に、この算出した針位置を、ステップJ4で記憶している時字板21の回転角度分だけずらして目的の針位置を算出する。さらに、針位置カウンタに記憶されている現在の時針2の針位置と、上記算出した目的の針位置との差分を算出する。この差分が時針2の修正量となる。そして、時針2に対応する駆動回路85にこの修正量に応じた駆動指令の信号を出力して時針2を回転させることで、時針2が時字板21の回転角度に応じた位置に修正されることとなる。
【0049】
時針2の修正が済んだら、続いて、ステップJ7で分針3についても時字板21の回転に伴った同様の針位置修正を行い、さらに、ステップJ8で秒針4についても時字板21の回転に伴った同様の針位置修正を行う。これらのステップJ6〜J8の処理を実行する制御部80により指針修正手段が構成される。そして、針位置修正の処理が済んだら、この時刻表示位置の回転設定処理を終了する。
【0050】
つまり、上記ステップJ5〜J8の処理により、ユーザが操作スイッチS2を操作して時字板21の回転設定モードを抜けた場合に、新たに回転設定された時字板21の回転角度に応じて各指針2〜4が高速に回転して針位置が修正され、それにより時字板21の新たな時刻配置に従って各指針2〜4により現在の計時時刻が指し示されることとなる。そして、その後、制御部80により実行される時刻表示処理によって、この修正後の針位置から各指針2〜4が時間の経過に従って適宜なタイミングて回転駆動され、それにより現在の計時時刻が各指針2〜4により常に表示された状態に制御される。
【0051】
図10には、本実施形態の指針式時計1において時字板21を標準基準位置G0から回転させた状態での使用例を表わした図を示す。
【0052】
以上のように、この実施の形態の指針式時計1によれば、ユーザか操作スイッチS1,S2を操作することで、時字板21を回転させて文字板5の基準位置(12時位置)G1を標準的な基準位置G0から30度単位で適宜設定変更することが可能となる。例えば、図10に示すように、指針式時計1を嵌めた腕でハンドル200を長い時間握るなどして指針式時計1が長い時間60度傾いた状態にされる場合において、文字板5の基準位置G1を標準の基準位置G0から60度回転させた設定とすることで、見た目上、文字板5の12時位置が上方位置に設定されて時刻表示の視認をし易くすることが可能となる。また、例えば、ランニング中など指針式時計1をいつも所定の傾きで視認する場合、或いは、ユーザの好みなどによって指針式時計1の基準位置G1を所定の回転角度に設定したい場合などにおいても、時字板21の回転設定により適宜時刻表示の視認をし易くしたり、ユーザの好みに応じた表示態様を実現したりすることが可能となる。
【0053】
また、時字板21に設けられた12時位置、3時位置、6時位置、9時位置の各指標21A〜21Dは、時刻位置を示す文字だけでなく、他の部分より濃い色が付されるなど目立つ表示にされているので、文字板5を見たときにごく短い時間で文字板5の時刻配置を認識することができ、それにより、時刻を瞬時に視認することが可能となる。
【0054】
また、時字板21の回転設定は操作スイッチS1,S2の操作によって行われるので、ユーザの好みに応じた設定変更が可能となる。
【0055】
また、時字板21の回転設定モードに移行することで、操作スイッチS1の操作により時字板21を回転させることが可能となり、また、回転設定モードを抜ける際に、各指針2〜4の位置修正が行われる構成により、ユーザに分かりやすく整然とした時刻表示位置の回転設定処理を実現できる。
【0056】
また、時針2と分針3と秒針4とがそれぞれ独立して回転駆動できる構成により、各指針2〜4を時字板21の回転角度に応じて位置修正する際に、高速な修正が可能となる。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態の指針式時計1に限られるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、文字板5に透過窓h,h,…hを30度間隔で12個設けた例を示したが、45度間隔で8個設けたり、90度間隔で4個設けるようにしても良い。また、透過窓hを文字板5の全周にわたって等間隔で設けた例を示したが、例えば、標準基準位置G0から90度の範囲など、特定の角度範囲にのみ複数の透過窓h,h,…hを設けて、この範囲でのみ時刻表示位置の回転設定変更を可能とする構成としてもよい。この場合、時字板21には12時位置を示す1つの指標21Aのみを設けて、この指標21Aを複数の透過窓h,h,…hの何れかから露出させる構成とすれば良い。
【0058】
また、時字板21の操作方法も、1個の操作スイッチにより時計方向に所定角度ずつ回転させる形式だけでなく、2個の操作スイッチを用いて時計方向と反時計方向の両方向に回転可能な形式を採用しても良い。また、時字板21を全回転可能な構成とせず、所定の角度範囲でのみ回転角度を設定変更可能とする構成を採用しても良い。
【0059】
その他、時字板21や各指針2〜4を回転駆動する機構構成、時字板21の回転角度を設定変更したり針位置を時字板21の回転角度に応じて修正する処理の制御手順など、実施の形態で示した細部構造および細部方法は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態の指針式時計を示す正面図である。
【図2】実施形態の指針式時計において時字板を標準基準位置から60度回転させた状態を示す正面図である。
【図3】実施形態の指針式時計の時字板を示す平面図である。
【図4】実施形態の指針式時計の内部構成を表わしたブロック図である。
【図5】実施形態の指針式時計からケーシングと文字板等をはずした内部機構を表わした平面図である。
【図6】指針式時計の内部機構のうち時字板を駆動する部分を示した断面図である。
【図7】指針式時計の内部機構のうち時針を駆動する部分を示した断面図である。
【図8】指針式時計の内部機構のうち秒針と分針を駆動する部分を示した断面図である。
【図9】制御部により実行される時刻表示位置の回転設定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】実施形態の指針式時計において時字板を標準基準位置から回転させた状態での一使用例を表わした図である。
【符号の説明】
【0061】
1 指針式時計
2 時針
3 分針
4 秒針
5 文字板
h 透過窓
21 時字板
21A〜21D 指標
80 制御部
81 RAM
82 ROM
83 計時部
84〜87 駆動回路
23,31,41,51 ステップモータ
S1〜S4 操作スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に沿って複数の透過窓が形成された文字板と、
この文字板上を運針して時刻を表示する複数の指針と、
前記文字板の時刻位置を表わす指標を有するとともに、該指標を前記複数の透過窓の何れかから選択的に露出させるために前記文字板の裏側に回転可能に配置された時字板と、
前記指標を前記複数の透過窓のうち何れかから露出させるために前記時字板を回転させる時字板回転制御手段と、
前記時字板回転制御手段により回転された時字板の回転角度に応じて前記複数の指針の位置を修正する指針修正手段と、
を備えたことを特徴とする指針式時計。
【請求項2】
前記透過窓は、前記文字板の周縁寄りに30度間隔で複数形成され、
前記時字板には、0時、3時、6時、9時を示す指標が設けられていることを特徴とする請求項1記載の指針式時計。
【請求項3】
外部からの操作入力を受ける操作部を備え、
前記時字板回転制御手段は、前記操作部の操作入力に応じた回転角度で前記時字板を回転させる構成であることを特徴とする請求項1記載の指針式時計。
【請求項4】
前記複数の指針は、時、分、秒をそれぞれ表示する時針、分針、秒針を含み、
さらに、
前記時針と前記分針と前記秒針をそれぞれ独立的に回転駆動可能な3個の駆動部を備え、
前記指針修正手段は、前記3個の駆動部を駆動制御して前記時針と前記分針と前記秒針の位置をそれぞれ修正する構成であることを特徴とする請求項1記載の指針式時計。
【請求項5】
前記指針修正手段は、前記時字板が回転してない標準の時刻表示の位置から、前記時字板の回転角度と同一の回転角度だけ、前記複数の指針の位置を変化させる構成であることを特徴とする請求項1記載の指針式時計。
【請求項6】
前記操作部により第1の操作入力が行われた場合に前記時字板の回転設定モードに移行し、前記操作部により第2の操作入力が行われた場合に前記時字板の回転設定モードを抜けるモード変更制御手段を備え、
前記時字板回転制御手段は、前記回転設定モードのときに前記操作部の操作入力に基づいて前記時字板を回転させる構成であり、
前記指針修正手段は、前記回転設定モードを抜けた際に前記複数の指針の位置を修正する構成であることを特徴とする請求項3記載の指針式時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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