説明

挟持用治具、配線板吊り下げ具

【課題】半硬化状態の樹脂膜が形成された配線板を小さい掴み代で確実に挟持でき、しかも、前記配線板を挟持したときに形成される樹脂の盛り上がり部を縮小することができる挟持用治具、配線板吊り下げ具の提供。
【解決手段】半硬化状態の樹脂膜が形成されたプリント配線板の上辺端部に沿って水平方向に延在され配線板に押し付けられる断面山形の突条24が上下方向に6mmの範囲内にて上下方向の複数箇所に突設されている挟持用治具、この挟持用治具を用いて構成された配線板吊り下げ具を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半硬化状態の樹脂膜が形成されたプリント配線板の上辺端部を挟持して吊り下げるために使用される挟持用治具、挟持用治具を具備しプリント配線板を吊り下げ搬送するための配線板吊り下げ具に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板(以下、単に配線板とも言う)の製造工程ではシート状に切断された配線板の表面に半硬化状態の樹脂膜が形成され、配線板を吊り下げて前記樹脂膜を乾燥もしくは加熱により硬化するための装置に搬送する工程がある。このような半硬化状態の樹脂膜が形成された配線板を治具によって挟持して吊り下げ搬送する技術が特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平9−289366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半硬化状態の樹脂膜が形成された配線板の上辺端部を挟持して搬送する従来の治具には以下のような問題がある。
半硬化状態の樹脂膜は流動性があるので、治具に対して配線板が滑りやすく、搬送時の揺れなどによって治具から配線板が落下することがある。特に近年、生産性の点から配線板は大版化しており質量が大きくなっているので一層滑りやすくなっている。またコスト低減や環境負荷の低減のため、配線板のワークサイズの中に割り付ける製品パターンがワークサイズの周辺部まで配置されるようになってきている。このため、配線板において治具によって挟持する部位は配線パターンが配置されていない配線板端部の狭い範囲に限定されてきており、治具の配線板に押し付ける部分(以下、挟持部)を小型化し、挟持のために配線板端部に確保する挟持範囲(掴み代)を縮小することが要求される。しかしながら、挟持部の小型化は上記の配線板の大版化による質量の増大に対する確実かつ安定な挟持状態の確保と相反する関係にある。このため、挟持部が小さくても配線板を確実に挟持できる治具が求められるが、これまで適切なものが無いのが実情であった。
【0004】
また、従来の治具の挟持部は配線板との面接触部分によって配線板を挟持する構造のものが一般的であり、半硬化状態の樹脂膜が形成された配線板を治具によって挟持するとき、治具の挟持部で半硬化状態の樹脂が排除され挟持部周囲に樹脂の盛り上がりが生じる。この盛り上がり部の突出は樹脂膜から1mm以上の大きさになることがあり、このように盛り上がり部の突出が大きいと後工程でこすれて樹脂異物が生じやすく、この樹脂異物が異物不良を引き起こす原因になる。またこの樹脂の表面に紫外線照射用パターンマスクフィルムを重ねて紫外線を照射し現像処理することによって硬化させた樹脂パターンが得られるが、挟持部周辺の樹脂の盛り上がり部の突出が大きいと、紫外線照射用パターンマスクフィルムがこすられてマスクフィルムの使用可能回数が減少すると言う問題がある。
このため、樹脂異物の発生抑制、マスクフィルムの寿命延長(使用可能回数の増大)を実現するべく、半硬化状態の樹脂膜が形成された配線板を治具で挟持したときに形成される盛り上がり部を縮小できる技術の開発が求められていた。
【0005】
本発明は、前記課題に鑑みて、半硬化状態の樹脂膜が形成された配線板を小さい掴み代で確実に挟持でき、しかも、前記配線板を挟持したときに形成される樹脂の盛り上がり部を縮小することができる挟持用治具、配線板吊り下げ具の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために、片面あるいは両面に半硬化状態の樹脂膜が形成されたプリント配線板(以下、単に配線板とも言う)を挟持するための挟持用治具として、前記配線板に押し付けられる複数の突部を有する構成の挟持部を具備したものを採用することを検討した。この構成の場合、この挟持用治具を用いて配線板を挟持して吊り下げ支持する際に、突部の周囲の空間に樹脂膜の樹脂を収容することができる。このため、挟持部の押し付けに伴い挟持部と配線板との間から排除される樹脂膜の樹脂の量が少なくなり、挟持部の周辺に形成される樹脂の盛り上がり部のサイズが小さくて済む。また、挟持用治具の配線板に対する押圧力が前記突部に集中的に作用することで、樹脂膜に挿入した突部を配線板に確実に当接させることができる。
【0007】
上述のように突部を複数設けた構成の挟持部を具備する挟持用治具の場合、例えば図11(a)、(b)に示すように挟持部の突部87を先細りのテーパ状の先端部(先鋭部86)を有するピン状に形成すれば、挟持部の押し付けに伴い挟持部と配線板との間から排除される樹脂膜の樹脂の量を少なくすることができるため、配線板を挟持したときに突部の周囲に形成される樹脂の盛り上がり部を縮小する点で有利である。
しかしながら、本発明者は、試作品による試験と鋭意検討の結果、図11(a)、(b)に例示した挟持用治具を用いて、前記配線板の上辺端部を挟持して配線板を吊り下げ搬送した場合には、突部が配線板に食い込んで(配線板を局所的に破壊する)配線板を傷めやすく、また、配線板の挟持状態が安定しにくく、配線板の揺動が大きくなるといった不都合が発生しやすい。
【0008】
つまり、挟持用治具の挟持部の突部としては、該挟持用治具を用いて挟持して吊り下げた配線板が揺動しても挟持状態を安定に維持できる構成である必要がある。
そして、本発明は、本発明者の鋭意検討の結果、配線板の揺動に対しても挟持状態を安定に維持する点で、挟持部に形成する突部を水平方向に延在する断面山形の突条とし、この突条を上下方向の複数箇所に突設することが有効であることを見出し、発明の完成に至ったものである。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
第1の発明は、半硬化状態の樹脂膜が形成されたプリント配線板を吊り下げるための配線板吊り下げ具に設けられて前記プリント配線板の上辺端部の挟持に用いられる挟持用治具であって、治具本体と、該治具本体に突設され、前記プリント配線板を挟持するために前記プリント配線板に押し付けられる挟持部とを具備し、前記挟持部は、前記プリント配線板の上辺端部に沿って水平方向に延在され前記プリント配線板に押し付けられる断面山形の突条を上下方向の複数箇所に有し、しかも、該挟持部の上下方向に6mmの範囲内に全ての突条が形成されていることを特徴とする挟持用治具を提供する。
第2の発明は、隣り合う前記突条間の溝部のうちその深さ方向において該溝部の開口部側から前記樹脂膜の膜厚に相当する範囲を除く部分の容積が、前記突条のその先端から前記樹脂膜の膜厚の範囲の体積よりも大きいことを特徴とする第1の発明の挟持用治具を提供する。
第3の発明は、隣り合う前記突条間の溝状の溝部の深さが1.5mm以上、かつ、前記突条のピッチが1.5mm以上であることを特徴とする第1又は第2の発明の挟持用治具を提供する。
第4の発明は、前記突条が、その長手方向の1以上の箇所に形成された分断溝によって複数本の分割突条に分断されており、前記分断溝の溝幅が1〜3mm、1本の分割突条の長さが3〜5mmであることを特徴とする第1〜3のいずれかの発明の挟持用治具を提供する。
第5の発明は、前記突条は、その断面形状が直角三角形をなし、水平方向に延在する上面と、該突条の先端稜線から斜め下方に延在する下側斜面とを有することを特徴とする第1〜4のいずれかの発明の挟持用治具を提供する。
第6の発明は、全体が一体の金属製の1部材とされていることを特徴とする第1〜5のいずれかの発明の挟持用治具を提供する。
第7の発明は、半硬化状態の樹脂膜が形成されたプリント配線板をその上辺端部を一対あるいは複数対の挟持用治具によって挟持して吊り下げ搬送するための配線板吊り下げ具であって、対を構成する挟持用治具の一方又は両方が第1〜6のいずれかの発明の挟持用治具であることを特徴する配線板吊り下げ具を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る挟持用治具、配線板吊り下げ具によれば、半硬化状態の樹脂膜が形成された配線板を小さい掴み代で確実に挟持できる。
しかも、前記配線板を挟持したときに形成される樹脂の盛り上がり部を縮小することができるため、樹脂パターン形成用のマスクフィルム等の部材の接触による樹脂異物の発生を抑制できる。樹脂膜の半硬化状態の樹脂の硬化後にマスクフィルムを使用して樹脂パターンを形成する場合、マスクフィルムと樹脂の盛り上がり部との接触(こすられる)がマスクフィルムの寿命に影響(使用回数の減少)を与えることを抑えることができ、マスクフィルムの寿命を延ばす(使用回数の増大)ことができる。
また、前記挟持用治具を用いて挟持して吊り下げた配線板が揺動しても挟持状態を安定に維持できる。配線板の揺動抑制にも有効に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施した挟持用治具、配線板吊り下げ具について、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明に係る配線板吊り下げ具10、挟持用治具20を用いて、片面に樹脂膜52が形成された配線板51の上辺端部51aを挟持して配線板51を吊支した状態を示す図、図2は配線板吊り下げ治具10の配線板挟持機構30を説明する図、図3は本発明に係る挟持用治具の一例を示す斜視図、図4は配線板挟持機構30の一対の挟持用治具20によって配線板51を挟持した状態における配線板51及び樹脂膜52と挟持用治具との関係を示す図である。
なお、図1〜図4において、上側を上、下側を下として説明する。
【0013】
図1、図2において、符号51は配線板(プリント配線板)、52は配線板51の片面全体に形成された半硬化状態の樹脂塗膜52(以下、単に樹脂膜とも言う)である。
前記配線板51は四角板状に形成されている。
なお、本発明においては、配線板として、その両面に樹脂膜52が形成されたもの(両面が樹脂膜形成面)も採用可能である。
【0014】
前記樹脂膜52は、ここでは配線板51の配線パターンを形成済みの表面51b(樹脂膜形成面)を覆うソルダーレジスト膜を形成するための半硬化状態の樹脂塗膜である。ソルダーレジスト膜の膜厚は概ね50〜80μmであり、100μm未満であることが一般的である。
本発明に係る樹脂膜52はソルダーレジスト膜を形成するための半硬化樹脂塗膜に限定されないが、本発明に係る挟持用治具、配線板吊り下げ具の適用対象の配線板としては、膜厚が100μm未満の樹脂膜52が形成されたものであることが好ましい。ここでは、膜厚が100μm未満の樹脂膜52が形成されている配線板51を採用した場合について説明する。
【0015】
図1に示すように、配線板吊り下げ具10は、前記配線板51を挟持して吊り下げ搬送するための吊支具であって、前記配線板51を挟持するための配線板挟持機構30を連結部材11に2つ取り付けた構成になっている。前記配線板挟持機構30は、連結部材11の互いに離隔された2箇所に取り付けられている。
【0016】
図2に示すように、前記配線板挟持機構30は、配線板51を挟持するための一対の挟持用治具20と、この一対の挟持用治具20の一方あるいは両方を移動して一対の挟持用治具20間を開閉するための開閉装置31とを具備している。
図示例の配線板挟持機構30は、開閉装置31によって一対の挟持用治具20の両方を移動して一対の挟持用治具20間を開閉する構成となっているが、これに限定されず、一対の挟持用治具20の一方(例えば、図2中、符号20bの挟持用治具)が開閉装置31に固定されており、他方の挟持用治具20(例えば、図2中、符号20aの挟持用治具)を開閉装置31によって前記一方の挟持用治具20b(固定側挟持用治具)に対して進退動させることで、一対の挟持用治具20間を開閉するようになっている構成であっても良い。
【0017】
図1に示すように、前記配線板吊り下げ具10は、配線板51を、その外周の4辺の内の1辺を上端(上辺)とする向きで、配線板51の上辺端部51aの互いに離隔した2箇所を2つの前記配線板挟持機構30によって挟持して吊り下げる。そして、配線板51を吊り下げた配線板吊り下げ具10の連結部材11を例えば搬送装置などによって横移動して搬送することで、配線板51を配線板吊り下げ具10に吊り下げた状態のまま配線板吊り下げ具10とともに搬送できる。これにより、樹脂膜52を乾燥もしくは加熱による硬化するための装置(硬化装置)への配線板51の搬送(搬入)等を行える。
なお、配線板吊り下げ具10の搬送は、例えば、高所架設されたレールに沿う移動や可動アームによる吊り上げ移動などによって、その下方に、該配線板吊り下げ具10から吊り下げた配線板51の移動用の空間を確保した状態で行う。
配線板吊り下げ具10は、例えば、樹脂膜52の硬化後の配線板51の、硬化装置から洗浄装置への移送、樹脂パターン形成のための紫外線照射用の露光装置への搬入、露光装置から現像装置への移送等にも利用できる。
【0018】
次に、前記挟持用治具20について説明する。
図3、図4に示すように、前記挟持用治具20は、ブロック状の治具本体21と、この治具本体21に突設された挟持部22とを具備している。この挟持用治具20は、治具本体21を開閉装置31に取り付けて開閉装置31(図2参照)に設けられる。
開閉装置31に2つ設けられた挟持用治具20a、20bの挟持部22の構成は互いに同じになっている。なお、ここでは、特に、配線板の樹脂膜形成面に押し付けられる挟持用治具20について説明する。
【0019】
図3、図4に示す挟持用治具20は金属製の一体成形品であり、前記挟持部22は治具本体21から突出する突起状に形成されている。
前記挟持部22は、前記治具本体21から突出する矩形板状のベース部23と、このベース部23の前記治具本体21とは反対側に突設された複数本(図示例では3本)の突条24とを具備して構成されている。
【0020】
なお、挟持部は、ベース部23を具備していない構成であっても良い。
すなわち、複数本の突条24が治具本体21から突出する個々に独立した突起として形成され、突条24間の溝部25が治具本体21に達するように形成されている構成であっても良い。
【0021】
この挟持部22において、前記突条24は、上下方向の複数箇所に互いに平行に形成されている。前記挟持用治具20は前記突条24が水平方向に延在する向きで設けられる。図1に示すように、配線板51はその上辺端部51aが水平方向に延在する向きで、配線板吊り下げ具10の2つの配線板挟持機構30によって挟持して吊り下げる。このため、配線板51を配線板吊り下げ具10の2つの配線板挟持機構30によって挟持して吊り下げた状態としたときには、突条24は、配線板51の上辺端部51aに沿うように延在配置された状態となる。
【0022】
各突条24は、その延在方向(以下、長手方向とも言う)に垂直の断面形状が三角形の断面山形に形成されている。
各突条24のベース部23からの突出寸法及び断面形状は互いに同じに揃えられている。
この挟持用治具20において上下方向に隣り合う突条24の基端部(ベース部23側の端部)同士は互いに隣接されており、上下方向に隣り合う突条24間には、各突条24のベース部23からの突出寸法tに相当する深さdの溝部25が確保されている。前記溝部25の断面形状は、突条24の断面とは逆向きで突条24の断面形状と同じに揃えられている。
挟持用治具20の挟持部22は鋸状の断面形状を有している。
【0023】
突条24のピッチP(突条24の先端稜線24aのピッチ)は1.5mm以上であることが好ましく、溝部25の深さdは1.5mm以上であることが好ましい。突条24のピッチPと溝部25の深さdの比(P/d)はほぼ1.0(0.8〜1.2)であることが好ましい。
また、この挟持用治具20の挟持部22の上下方向の外形寸法aは6mm以下とする。挟持部22は、突条24のピッチPが1.5mm以上、溝部25の深さdが1.5mm以上の場合、2〜4本の突条24が並列に突設されている構成とする。
【0024】
また、挟持部22は、突条24の長手方向寸法bが短かすぎれば局所的な固定力(挟持力)の集中によって、突条24が配線板51表面から配線板51に食い込んで配線板51を傷めるおそれがある。突条24が配線板51に食い込むと、配線板51の吊り下げ搬送時の揺れ等によって配線板51の破壊部分の拡大を招く。
また、突条24の長手方向寸法bが長すぎても固定力が低下する。突条24の長手方向寸法bが長すぎると、突条24の単位長さ当たりに作用する挟持力の低下によって、樹脂膜52の半硬化状態の樹脂による配線板51の滑りが生じやすくなり、配線板51が落下しやすくなる。また、突条24の長手方向全長における挟持力のばらつきを防止するために突条24に非常に高い形成精度が必要となり、コストも上昇する。これらのことに鑑みて、突条24の長手方向の寸法bは6〜50mmが好ましく、8〜20mmがより好ましい。
【0025】
挟持部22の上下方向の外形寸法aを6mm以下にすることは、ワークサイズ(配線板51のサイズ)内の配線パターン割り付け面積の増大に有利である。
【0026】
また、この挟持用治具20を用いた配線板吊り下げ具10であれば、配線板51の上辺端部51aを挟持して配線板51を吊り下げ支持する際に、挟持用治具20の複数本の突条24(具体的にはその先端稜線24a)が配線板51に線接触されることで配線板51をしっかりと固定(挟持)することができる。挟持用治具20の突条24が断面山形であることは、挟持用治具20によって配線板51の上辺端部51aを挟持する際に、配線板51の樹脂膜52が形成されている面51b(樹脂膜形成面)に押し付けられる挟持用治具20の突条24の樹脂膜52中への押し込みに伴う樹脂膜52の樹脂の排除(樹脂膜52において突条24の進入部分に存在していた樹脂の突条24による押し出し)を円滑にして、配線板51に突条24を確実に当接させることに寄与する。
これにより、例えば、配線板吊り下げ具10の配線板挟持機構30によって配線板51を挟持して吊り下げ搬送する場合、配線板51を落下させることなく、吊り下げ支持状態を安定に維持できる。
【0027】
挟持用治具20の複数本の突条24(具体的にはその先端稜線24a)が配線板51に線接触されることで配線板51を固定(挟持)する構成であれば、配線板51の上辺端部51aの挟持によって吊り下げた配線板51の揺動抑制にも寄与する。このため、配線板吊り下げ具10の配線板挟持機構30によって配線板51を挟持して吊り下げた配線板51に揺動を与える外力が作用しても、配線板51の揺動が抑えられ、配線板挟持機構30による挟持状態を安定に維持でき、配線板吊り下げ具10からの配線板51の落下が生じにくい。
また、この構成であれば、図11(a)、(b)に例示したように、ピン状の突部を複数設けた構成の挟持部を具備する挟持用治具に比べて、配線板51に対する挟持部の接触部分が大きいため、配線板51を傷めにくい。このことも配線板挟持機構30による挟持状態の安定維持に有効に寄与する。
【0028】
また挟持用治具20は水平方向に延在する突条24が上下方向の複数箇所に並列に形成されている構成により、挟持用治具20の間に配線板51を挟み込んで挟持するときに、樹脂膜52側の挟持用治具20(本実施形態にあっては図2の符号20aの挟持用治具)の突条24が樹脂膜52中に進入していくに伴い突条24によって排除された樹脂が前記溝部25に入り込む。これにより、挟持部22の周囲に形成される樹脂の盛り上がり部52a(図4参照)の樹脂膜52からの突出寸法52tを非常に小さく抑えることができる。
【0029】
挟持部22の周囲に形成される樹脂の盛り上がり部52aの樹脂膜52からの突出寸法52tは500μm以下であることが好ましい。これにより、盛り上がり部52aが接触物の接触によりこすれて樹脂異物が発生したり、紫外線照射用パターンマスクフィルムが盛り上がり部52aでこすられて使用可能回数が減少すると言う不都合を抑えることができ、樹脂異物の発生抑制、マスクフィルムの寿命延長(使用可能回数の増大)を実現できる。
【0030】
突条24のピッチPが狭くなると必然的に溝部25の深さdが浅くなるため、配線板51の挟持(具体的には配線板51の挟持)によって排除される樹脂の量が多くなり挟持部22の周囲の樹脂の盛り上がり部52aの高さが高く(突出寸法52tが大きく)なる。またこのような挟持用治具20は溝部25が半硬化状態の樹脂で埋め込まれると、挟持用治具20の間に配線板51を挟持するときの樹脂膜52中への突条24の進入に伴う樹脂の排除性が低下して、挟持力が減少する。したがって、溝部25に半硬化樹脂を収容するための充分な容量が確保されていることが好ましい。また、突条24のピッチPが狭く溝部25の深さdが深いと、突条24の強度が低下する。
挟持用治具20の突条24のピッチPが1.5mm以上、溝部25の深さdが1.5mm以上、突条24のピッチPと溝部25の深さdの比(P/d)が1.0程度(0.8〜1.2)の構成であれば、溝部25に半硬化樹脂を収容するための充分な容量が確保されているため、盛り上がり部52aの樹脂膜52からの突出寸法52tを500μm以下とすることができ、しかも、配線板51を挟持する挟持力を充分に確保できる。また、突条24の強度も確保できる。
【0031】
本発明に係る挟持用治具20の材質は配線板を強く挟持するために強度が高いことが必要である。また配線板51に形成される樹脂膜52の半硬化状態の樹脂は一般に有機溶剤が含まれているので耐溶剤性が必要である。このような条件を満足する材料の使用が好ましい。具体的にはステンレス等の耐食性があり、強度の高い金属を加工したものが望ましい。
【0032】
図示例の挟持用治具20の場合、挟持用治具20の間に配線板51を挟持するときの樹脂膜52中への突条24の進入に伴う樹脂の排除性を維持する点では、溝部25の深さ寸法d(換言すれば各突条24のベース部23からの突出寸法t)が、配線板51の樹脂膜52の膜厚sの2倍よりも大きいものを採用することで足りる。この場合、上下方向に隣り合う前記突条24間の溝部25は、その深さ方向において該溝部25の開口部側から前記配線板51の樹脂膜52の膜厚sに相当する範囲を除く部分(溝部25のその深さ方向において図4中符号25dの部分)の容積V1が、前記突条24のその先端から前記樹脂膜52の膜厚sの範囲の体積V2よりも大きいため、挟持用治具20の間に配線板51を挟持するときの樹脂膜52中への突条24の進入に伴い排除される樹脂が溝部25内に流入しても溝部25が樹脂によって完全に埋め込まれることを回避でき、樹脂膜52中への突条24の進入に伴う樹脂の排除性を維持できる。
【0033】
また、この挟持用治具20は、溝部25の清掃を適宜行って、配線板51の挟持(具体的には配線板51の挟持)によって溝部25に入り込んだ樹脂を除去すれば、配線板51の挟持(具体的には配線板51の挟持)に繰り返し使用しても、盛り上がり部52aの樹脂膜52からの突出寸法52tの抑制、優れた挟持力の確保を実現できることは言うまでも無い。
【0034】
挟持用治具20の突条24のピッチPが1.5mm以上、溝部25の深さdが1.5mm以上、突条24のピッチPと溝部25の深さdの比(P/d)がほぼ1.0(0.8〜1.2)の構成であれば、挟持用治具20の間に配線板51を挟持するときに樹脂膜52中への突条24の進入によって排除される樹脂を収容するための容積を溝部25に充分に確保できるため、溝部25が樹脂で満たされる(完全に埋め込まれる)までは、溝部25に溜まった樹脂を溝部25から除去しなくても、配線板51を挟持したときに挟持部22の周囲に形成される樹脂の盛り上がり部52aの樹脂膜52からの突出寸法52tを小さく抑える効果が得られる。優れた挟持力も確保できる。配線板51の挟持(具体的には配線板51の挟持)に繰り返し使用してから溝部25から樹脂を排除する清掃作業を行うといったことが可能であり、清掃回数を削減できる。
【0035】
次に、挟持部22の構造例について図3〜図7を参照して説明する。
なお、図5、図6、図7について、上側を上、下側を下として説明する。
また、以下に説明する各挟持部はいずれも矩形板状のベース部を有していることは共通であり、図中、ベース部に符号23を付した。
【0036】
(挟持部の構造例1)
図3、図4に例示する挟持部22(説明の便宜上、他の構造例との区別のため図中符号221を付記する)は、上下方向の外形寸法aが6mm以下であり、ベース部23の上下方向の3箇所に突設された突条24(図中符号241を付記する)のピッチPが1.5mm以上、溝部25(図中符号251を付記する)の深さdが1.5mm以上、突条241のピッチPと溝部251の深さdの比(P/d)がほぼ1.0(0.8〜1.2)となっているものである。
前記突条241は、その延在方向に垂直の断面形状が直角三角形をなし、延在方向全長にわたって水平方向に延在する上面241bと、該突条241の先端稜線241aから治具本体21に向かって斜め下方に延在する下側斜面241cとを有している。
【0037】
(挟持部の構造例2)
図5に例示する挟持部222は、構造例1の挟持部221の突条241にかえて、図中符号242の突条を採用したものである。
この挟持部222は、突条242としてその延在方向に垂直の断面形状が直角三角形のものを採用しているが、但し前記突条242は、その延在方向全長にわたって水平方向に延在する下面242bと、該突条242の先端稜線242aから治具本体21に向かって斜め上方に延在する上側斜面242cとを有する構成となっている点で構造例1の突条241と異なる。
挟持部222の上下方向の外形寸法aが6mm以下、上下方向の3箇所に突設された突条242のピッチPが1.5mm以上、隣り合う突条242間の溝部252の深さdが1.5mm以上、突条242のピッチPと溝部252の深さdの比(P/d)がほぼ1.0(0.8〜1.2)となっている点、各突条242はベース部23から突出されている点は構造例1の挟持部221と共通する。
【0038】
(挟持部の構造例3)
図6に例示する挟持部223は、構造例1の挟持部221の突条241にかえて、図中符号243の突条を採用したものである。
前記突条243は、その延在方向に垂直の断面形状が二等辺三角形(正三角形を含む)をなしている。各突条243の断面形状(延在方向に垂直の断面形状)は先端稜線243aを通る仮想水平面243bを介して上下対称になっている。
挟持部223の上下方向の外形寸法aが6mm以下、上下方向の3箇所に突設された突条243のピッチPが1.5mm以上、隣り合う突条243間の溝部253の深さdが1.5mm以上、突条243のピッチPと溝部253の深さdの比(P/d)がほぼ1.0(0.8〜1.2)となっている点、各突条243はベース部23から突出されている点は構造例1の挟持部221と共通する。
【0039】
(挟持部の構造例4)
図7に例示する挟持部224は、構造例2の挟持部222の突条242と同様の断面形状で前記突条242よりもサイズが小さい突条244をベース部23の上下方向の6箇所に突設した構成になっている。符号244aは突条244の先端稜線である。
この挟持部224の上下方向の外形寸法aは6mm以下、上下方向の6箇所に突設された突条244のピッチPは0.4mm以上、隣り合う突条244間の溝部254の深さdは0.4mm以上、突条244のピッチPと溝部254の深さdの比(P/d)はほぼ1.0(0.8〜1.2)である。
【0040】
本発明に係る挟持用治具としては、挟持部として上述したいずれの挟持部(構造例1〜4)も採用可能であり、配線板51(樹脂膜52の膜厚sが100μm未満)の吊り下げ支持のために配線板51の上辺端部51aの挟持に使用したときに、挟持部22の周囲に形成される盛り上がり部52aの樹脂膜52からの突出寸法の抑制、優れた挟持力の確保を実現できる。
【0041】
なお、本発明者が試作品を用いて検証した結果、構造例1の挟持部221は、配線板51の挟持に用いた場合、構造例2、3、4の挟持部に比べて、配線板51を挟持したときの配線板51の下方への移動抵抗がやや高いことが把握できた。
【0042】
本発明に係る挟持用治具に形成する突条の本数(上下方向における突条の本数)は6本以下(例えば構造例4)であることが好ましい。突条の本数が6本よりも多いと、各突条の先端稜線の合計長の増大により、配線板51を挟持する際、突条の先端稜線の単位長さ当たりに作用する挟持力が低下して、挟持した配線板51の下方への移動抵抗の低下を招きやすくなる。
【0043】
本発明に係る挟持用治具の挟持部としては、上述した構造例1〜4の他、例えば、構造例4について前記突条244にかえて、構造例1の挟持部22の突条24と同様の断面形状の突条、あるいは、構造例3の挟持部223の突条243と同様の断面形状の突条を採用した構成も採り得る。また、突条の形成数は図示例のものに限定されないことは言うまでも無い。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図8に示すように、この実施形態の挟持用治具20Aは、ブロック状の治具本体21と、この治具本体21に突設された挟持部26とを具備するものであり、挟持部26の構成が第1実施形態の挟持用治具と異なる。この挟持用治具20Aの挟持部26は、第1実施形態の挟持用治具の突条の長手方向の1以上の箇所に分断溝28を形成したものである。この挟持用治具20Aの挟持部26の突条27は、その長手方向の1以上の箇所に形成された分断溝28によって複数本の分割突条29に分断されている構成のものである。前記突条27は、分断溝28を介して間隔を空けて一列に配列された複数の分割突条29によって構成されている。
【0045】
図8に例示した挟持用治具20Aの挟持部26はベース部23と、このベース部23の治具本体21とは反対の側に突設された突条27とを具備している。前記突条27は、具体的には、図3、図4に例示した挟持部221の突条241をその長手方向中央部の1箇所に形成した分断溝28によって2本の分割突条29に分断した構成になっている。この挟持用治具20Aの挟持部26は、2本の分割突条29からなる前記突条27を具備する点のみが、構造例1の挟持部221と異なる。
各分割突条29は、その長手方向(延在方向)に垂直の断面形状が直角三角形になっており、延在方向全長にわたって水平方向に延在する上面29bと、該分割突条29の先端稜線29aから治具本体21に向かって斜め下方に延在する下側斜面29cとを有している。
【0046】
但し、本発明に係る挟持用治具の挟持部はこれに限定されず、第1実施形態の挟持用治具20の突条の長手方向の1以上の箇所に分断溝が形成され、分断溝を介して間隔を空けて一列に配列された複数の分割突条からなる突条を具備する構成を採用できる。
例えば、既述の構造例2〜4の挟持部や、構造例4について前記突条244にかえて構造例1の挟持部221の突条241あるいは構造例3の挟持部223の突条243と同様の断面形状の突条を採用した構成の挟持部について、突条の長手方向の1以上の箇所に分断溝が形成され、分断溝を介して間隔を空けて一列に配列された複数の分割突条からなる突条を具備する構成も採用できる。
【0047】
図示例の突条27は、分断溝28が1つであり、2本の分割突条29を分断溝28を介して一列に配列させた構成を例示しているが、1本の突条27を形成する分割突条の数(あるいは分断溝の形成数)は図示例に限定されない。分断溝28が突条の長手方向の複数箇所に存在し、分断溝28を介して3以上の分割突条を互いの間隔を空けて一列に配列してなる構成の突条を採用することも可能である。
【0048】
また、この挟持用治具20Aは前記挟持部26を採用した点のみが第1実施形態の挟持用治具20と異なるものであり、配線板吊り下げ具10(図1参照)の配線板挟持機構30(図2参照)の挟持用治具20(挟持用治具20a、20b)にかえて配線板吊り下げ具10の配線板挟持機構30に適用して、配線板51の挟持に使用することができる。ここでは、この挟持用治具20Aが、特に、配線板の樹脂膜形成面に押し付けられる挟持用治具として用いられる場合について説明する。但し、この挟持用治具20Aは、配線板の樹脂膜52が形成されていない面に押し付けられる挟持用治具としても適用可能であることは言うまでも無い。
なお、図8中、この挟持用治具20Aの突条27間の溝部に符号25を付している。
突条27の全長(両端間の長さ)は、第1実施形態の挟持用治具の突条と同様に6〜50mmが好ましく、8〜20mmがより好ましい。
【0049】
図9(a)、(b)は、配線板51の樹脂膜形成面51bに突条27を当接させてあった挟持用治具20Aを前記配線板51から離隔させる際の、突条27と配線板51との間での樹脂膜52の樹脂の挙動を説明する図である。
【0050】
この挟持用治具20Aを配線板51の吊り下げ支持に用いた場合、配線板51の挟持を解除するために配線板51の樹脂膜形成面51bに当接させていた挟持用治具20Aを配線板51から離隔させたときに(図9(b)参照)、樹脂膜52の挟持用治具20Aの分割突条29が挿入されていた箇所の付近に樹脂膜52の樹脂が山形に盛り上がった樹脂突部52bが形成されるが、突条27が複数本の分割突条29からなる構成であれば1本の分割突条29の長さは短くて済むため、樹脂突部52bの高さ(樹脂膜52からの突出寸法52t1)を小さく抑えることができる。
【0051】
図9(a)に示すように、配線板51の樹脂膜形成面51bに当接されていた挟持用治具20Aを配線板51から離隔させていくと、樹脂膜52の半硬化樹脂がその表面張力によって、分割突条29の先端部(先端稜線29a付近)と配線板51との間を橋絡する橋絡部52cを形成する。図9(b)に示すように、この橋絡部52cは、挟持用治具20Aと配線板51との間の離隔距離の増大によって切断される。挟持用治具20Aは、橋絡部52cが切断される距離よりも大きい距離を移動させて、挟持部26を樹脂膜52から抜き出す。周知のソルダーレジストインク(アネスト岩田株式会社製の岩田粘度カップNK−2を使用して計測した粘度が0.12〜0.17Pa・s(パスカル秒)の範囲にあるもの)で形成された樹脂膜52の場合、樹脂膜付き配線板を挟持していた挟持用治具の配線板51からの離隔距離を5mm以上確保すれば、橋絡部52cを切断するに充分に足りる。
前記橋絡部52cが切断されることで、橋絡部52cの配線板51側端部付近に樹脂突部52bが形成される。また、前記橋絡部52cを形成していた樹脂の一部は分割突条29の先端部に付着したままとなる。
【0052】
図9(b)に示すように、前記樹脂突部52bは、樹脂膜52における分割突条29が挿入されていた箇所(以下、突条挿入部52d)の配線板51表面(樹脂膜形成面51b)に沿う延在方向中央部付近に頂点を有する(樹脂膜52からの突出寸法52t1が最も大きい)山形に形成される。
【0053】
樹脂突部52bの高さ(樹脂膜52からの突出寸法52t1)は、挟持用治具20Aの分割突条29の先端稜線29aの長さ(換言すれば、突条挿入部52dの長手方向寸法)が長いほど増大する。この点、本発明にかかる第1実施形態の挟持用治具のように分断溝28を有していない構成の突条を具備する挟持用治具を採用した場合は、挟持用治具20Aを用いた場合に比べて、樹脂突部52bの高さが高くなる(樹脂膜52からの突出寸法52t1が大きくなる)。第1実施形態の挟持用治具の突条の先端稜線は、突条の長手方向全長にわたって連続する直線になっているため、配線板51の挟持を解除するために挟持用治具を配線板51から離隔させ挟持部を樹脂膜52から抜き出すときに、突条の長手方向全長と樹脂膜52との間に樹脂膜52の半硬化樹脂の橋絡部が形成される。
【0054】
本発明に係る挟持用治具は、配線板51の挟持を解除するとき、樹脂膜52の半硬化樹脂が形成する橋絡部が切断される距離よりも大きい距離を移動させて、配線板51から離隔させる。本発明に係る配線板吊り下げ具は、配線板51を挟持していた挟持用治具の対を開放して挟持を解除するときに、挟持用治具と配線板との間に、橋絡部が切断される距離よりも大きい距離が確保される構成とする。このことは、第1実施形態にて説明したように分断溝28を有していない構成の突条を具備する挟持用治具を採用したときも同様である。
【0055】
試作した複数の挟持用治具を用いて本発明者が確認した結果に基づいて検討したところ、突条の長さが3〜50mm程度の第1実施形態の挟持用治具(つまり、分断溝が形成されていない挟持用治具)を用いて組み立てた配線板吊り下げ具を使用して、樹脂膜52が形成された配線板51を挟持して吊り下げる場合、橋絡部の切断によって形成される樹脂突部の高さ(樹脂膜からの突出寸法)は最大でも300μm程度である(つまり、500μmよりもかなり小さい)。突条の長さが50mm以下あれば樹脂突部の高さは500μmに達することはなく、500μmよりも小さいものと言える。
【0056】
挟持用治具の挟持部の周囲に形成される盛り上がり部の高さ(樹脂膜52からの突出寸法)を小さくし、さらに、樹脂突部の高さも小さく(低く)することは、樹脂異物の発生抑制、マスクフィルムの寿命延長の点で好ましい。
樹脂突部の高さは突条の長さが短い程、小さくなる傾向があるが、第1実施形態の挟持用治具の場合、突条の長さを短縮することは、挟持した配線板51の揺動抑制の点で不利である。
第2実施形態に係る挟持用治具20Aを採用した場合は、橋絡部52cが複数の分割突条29の個々に対応して形成され、樹脂突部52bも複数の分割突条29の個々に対応して形成される。挟持用治具20Aは、突条27が複数本の分割突条29からなる構成であり、1本の分割突条29の長さが短くて済むため、分割突条29の個々に対応して形成される樹脂突部52bの樹脂膜52からの突出寸法52t1の縮小を容易に実現できる。
このため、第2実施形態の挟持用治具であれば、複数本の分割突条の長さ、あるいは、1本の突条を構成する複数本の分割突条の長さの合計(合計長)が、第1実施形態の挟持用治具の突条の長さと同じであっても、第1実施形態の挟持用治具に比べて樹脂突部の高さを小さく(低く)することが可能である。
【0057】
前記分断溝28の溝幅W(図8参照)は1〜3mm、1本の分割突条29の長さは3〜5mmであることが好ましい。
分断溝28の溝幅Wが狭すぎると、配線板51を挟持していた挟持用治具の対を開放するときに、分割突条29の先端部と配線板51との間に形成される前記橋絡部52cが分断溝28を介して両側の分割突条29に跨って形成されやすくなる。分割突条29毎の橋絡部52c、樹脂突部52bの形成をより確実に実現するために、分断溝28の溝幅Wは1mm以上であることが好ましく、1.2mm以上であることがより好ましい。
一方、挟持部の小型化の点で、溝幅は最大でも3mm程度であることが好ましい。
【0058】
樹脂突部52bの突出寸法52t1を小さく抑える点では、分割突条29の長さが短いほど有効である。また、挟持部26の小型化の点でも分割突条29の長さが短い方が好ましく、分割突条29の長さが5mm以下であることが好ましい。分割突条29の長さが5mm以下であれば、樹脂突部52bの突出寸法52t1を500μm以下に確実に抑えることができることは言うまでも無い。
一方、分割突条29の長さが短すぎると、挟持力の集中によって分割突条29が配線板51に食い込んで配線板51を傷めやすい。分割突条29の配線板51への食い込みを抑える点で、分割突条29の長さは3mm以上であることが好ましい。
【0059】
前記分断溝28の深さは1.5mm以上であることが好ましい。分断溝28の深さが1.5mm以上であれば、橋絡部52c、樹脂突部52bが個々の分割突条29毎に形成されるようにする点で有利である。
【0060】
(対比)
以下の実施例1の挟持用治具と比較例1、2の挟持用治具を用意して、性能を比較した。
なお、以下の実施例1、比較例1、2の挟持用治具は、いずれも、治具本体に挟持用治具が突設された構成のものであり、治具本体の構成は共通であり、互いの挟持用治具の構成が異なるものである。
【0061】
(実施例1)
挟持用治具として、図8、図9(a)、(b)に例示した挟持用治具20A(実施例1の挟持用治具)を作製し、この挟持用治具20Aを用いて、一対の挟持用治具20Aの間に樹脂膜52を片面に形成した配線板51の上辺端部を挟持する配線板挟持機構を互いに離隔させた2箇所に具備する配線板吊り下げ具(実施例1の配線板吊り下げ具)を組み立てた。この配線板吊り下げ具は、図1、図2を参照して説明した配線板吊り下げ具10について挟持用治具20にかえて挟持用治具20Aを用いたものである。
【0062】
前記挟持用治具20Aは1つのステンレス製ブロックを加工して形成した1部材となっている。図8、図9(a)、(b)に示すように、この挟持用治具の挟持部26の突条27を構成する分割突条29は、その長手方向(延在方向)に垂直の断面形状が直角三角形になっており、延在方向全長にわたって水平方向に延在する上面29bと、該分割突条29の先端稜線29aから治具本体21に向かって斜め下方に延在する下側斜面29cとを有しているものである。挟持部26の上下方向の外形寸法a21は6mm、ベース部23の上下方向の3箇所に突設された突条27のピッチP21が2.0mm、溝部25の深さd21が2.0mm、突条27のピッチP21と溝部25の深さd21の比(P21/d21)が1.0である。
また、1本の突条27を構成する2本の分割突条29の長さはそれぞれ4.3mm、分断溝28の溝幅Wは1.5mmである。
また、配線板吊り下げ治具として、2つの配線板挟持機構の挟持用治具の対による配線板51の挟持用治具による挟持位置間の距離(図1中の距離L)が110mmであるもの(以下、第1治具とも言う)と、280mmであるもの(以下、第2治具とも言う)とを用意した。
【0063】
(比較例1)
実施例1の挟持用治具20Aにかえて、図10(a)、(b)に示す挟持部81を具備する挟持用治具801(比較例1の挟持用治具)を用いて配線板吊り下げ治具(比較例1の配線板吊り下げ具。比較例1の第1治具、第2治具)を組み立てた。
図10(a)、(b)に示すように、前記挟持用治具801の挟持部81は、治具本体21から突出する突起82の先端面83に、深さdh0.4mm、溝幅Wh0.3mmの溝84a、84bを複数格子状に形成したものである。突起82の先端面83には、上下方向(鉛直方向。図10(a)において上下方向)に対して60度程度傾斜させてピッチ1.0mmで互いに並列に配列された複数本の溝84a(第1溝)と、上下方向に対して前記第1溝84aとは逆向きに60度程度傾斜させてピッチ1.0mmで互いに並列に配列された複数本の溝84b(第2溝)とが形成されている。先端面83の溝84a、84b以外の部分は面一の平坦面になっている。
前記突起82の先端面83は台形に形成されており、突起82は前記先端面83から治具本体21まで断面形状が前記先端面83と同じになっているスタッド状に形成されている。前記突起82の先端面83は、長さ10mmの上辺83aと、この上辺83aの下方にて該上辺83aに平行に形成された長さ2mmの下辺83bとを有し、高さH、すなわち、上辺83aと下辺83bとの間の距離が4mmである。
【0064】
(比較例2)
実施例1の挟持用治具20Aにかえて、図11(a)、(b)に示す挟持部85を具備する挟持用治具802(比較例2の挟持用治具)を用いて配線板吊り下げ治具(比較例2の配線板吊り下げ具。比較例2の第1治具、第2治具)を組み立てた。
図11(a)、(b)に示す挟持用治具802の挟持部85は、治具本体21から突出するベース部23の水平方向(図11(b)左右方向)の2箇所に、先細りのテーパ状の先端部(先鋭部86)を有するピン状の突部87を突設した構成になっている。各突部87の先鋭部86は、治具本体21側の端部(基端部)の外径が3mm、先鋭部86の基端部から頂点までの軸方向寸法が1.5mmの外観円錐状に形成されている。また、2つの突部87間の距離(先鋭部86の頂点間の距離)は10mmである。
【0065】
(吊り下げ搬送試験)
実施例1、比較例1、2の配線板吊り下げ具を用いて配線板51の吊り下げ搬送(吊り下げ搬送試験)を行った。前記吊り下げ搬送試験は、実施例1、比較例1、2のそれぞれについて、搬送開始位置にて第1治具に樹脂膜52付きの前記配線板51(樹脂膜付き配線板)を取り付け、前記搬送開始位置から約1m離隔した掴み換え位置まで搬送して樹脂膜付き配線板を第2治具に掴み換え、この第2治具によって掴み換え位置から約1.5m離隔した搬送終点位置まで搬送するものである。
また、実施例1、比較例1、2の配線板吊り下げ具の配線板挟持機構は、それぞれ、配線板を挟み込むための対を構成する挟持用治具間を開放した時に挟持用治具間に20mmの離隔距離が確保されるように構成されている。
配線板51は、その上辺端部の長さ(横方向の長さ。図1の符号x)が404mm、この上辺端部に直交する縦方向の長さ(図1中、符号y)が504mm、厚さ1.4mmの配線板51の片面に膜厚80μmの樹脂膜52を形成したものである。樹脂膜付きの配線板51の1枚の質量(樹脂膜52を含む質量)は約560gである。
【0066】
実施例1の配線板吊り下げ具を用いた樹脂膜付き配線板の吊り下げ搬送試験は、樹脂膜付き配線板の吊り下げ搬送を60回行う度に、挟持用治具20Aの溝部25に入り込んだ樹脂を溝部25から除去する清掃作業を行い、搬送終点位置にて配線板51を取り外した配線板吊り下げ具を配線板51の吊り下げ搬送に繰り返し使用した。その結果、4000回の吊り下げ搬送を行っても搬送途中での樹脂膜付き配線板の落下が発生しないことを確認できた。
【0067】
比較例1の配線板吊り下げ具を用いた吊り下げ搬送試験では、1000回の吊り下げ搬送で樹脂膜付き配線板の落下が5回程度発生した。配線板吊り下げ具は挟持用治具801の挟持部81の溝84a、84bに入り込んだ樹脂を除去する清掃作業を行うことなく繰り返し使用した。
また、樹脂膜付き配線板の吊り下げ搬送に使用した比較例1の配線板吊り下げ具の挟持用治具801の溝84a、84bの清掃を適宜実施することで、溝84a、84b内が樹脂膜52で完全に埋め込まれない状態を維持して、配線板の吊り下げ搬送に繰り返し使用する吊り下げ搬送試験も行ったが、配線板の落下頻度は清掃作業を行わない場合と同程度であった。
なお、上述の吊り下げ搬送試験において、比較例1の第1治具、第2治具とで、配線板の落下頻度の差異は認められなかった。
【0068】
比較例2の配線板吊り下げ具を用いた吊り下げ搬送試験では、搬送中の配線板51の揺動が大きく、実用上、適さないことを把握できた。また、比較例2については、挟持用治具802の突部87の配線板51への針入(配線板の局所的破壊による配線板表面からの食い込み)による配線板の損傷が確認された。比較例2の配線板吊り下げ具は、挟持用治具802の突部87が配線板51に食い込むことで配線板51の吊り下げ搬送中の落下は生じにくいと考えられるものの、上述のように搬送中の配線板51の揺動が大きく、配線板51を傷めやすいため、実用上、配線板51の吊り下げ搬送への使用には不適と言えるものであった。
【0069】
一方、実施例1、比較例1の配線板吊り下げ具を用いた場合は、比較例2に比べて、吊り下げ搬送中の配線板51の揺動が格段に小さかった。
また、実施例1、比較例1のいずれについても、第1治具、第2治具とで配線板の揺動の大きさには大きな差は認められなかったが、第1治具に比べて第2治具の方がやや揺動が小さかった。第1治具同士、第2治具同士の比較では、比較例1に比べて実施例1の方が、吊り下げ搬送中の配線板51の揺動が小さかった。
【0070】
また、配線板51として、その上辺端部の長さ(横方向の長さ。図1の符号x)が334mm、この上辺端部に直交する縦方向の長さ(図1中、符号y)が604mm、厚さ2mmのものを用い、この配線板51の片面に樹脂膜52を形成した質量(重さ)約800g(樹脂膜52を含む質量)の樹脂膜付き配線板についても、上述の吊り下げ搬送試験を行った。その結果、実施例1では、4000回の搬送を行っても配線板の落下が生じなかった。一方、比較例1では、100回の搬送で10枚程度の落下が生じた。
【0071】
(樹脂盛り上がり部の高さ測定)
上述の実施例1、比較例1、2の配線板吊り下げ具を用いて、吊り下げ搬送試験にて使用したものと同じ樹脂膜付き配線板(404mm×504mm、厚さ1.4mmの配線板51の片面に膜厚80μmの樹脂膜52が形成された質量約560gのもの)を吊り下げた後、各配線板挟持機構の挟持用治具の対の間を開放して配線板吊り下げ具から樹脂膜付き配線板を取り外し、配線板の上辺端部に形成された樹脂の盛り上がり部(挟持部の周囲に形成された盛り上がり部)の高さ(樹脂膜からの突出寸法)を測定した。この樹脂盛り上がり部の高さ測定を、複数の樹脂膜付き配線板について行った。
【0072】
樹脂盛り上がり部の高さ測定の結果、実施例1では、盛り上がり部の高さは概ね100〜200μm程度であり、最大でも300μm未満であった。実施例1では、盛り上がり部の高さを500μm以下にできることを確認できた。
比較例1の盛り上がり部の高さは概ね700μm程度であった。
比較例2の盛り上がり部の高さは最大でも200μm程度であった。
【0073】
また、配線板吊り下げ具から取り外した配線板(樹脂膜付き配線板)について挟持用治具による挟持部位を観察した。
実施例1については、挟持用治具の突条の配線板への食い込み(配線板の局所的破壊による配線板表面からの食い込み)による配線板の損傷は認められなかった。
また、比較例1についても配線板の損傷は確認できなかった。
比較例2については、挟持用治具の突部87の配線板への針入(配線板の局所的破壊による配線板表面からの食い込み)による配線板の損傷が確認された。また、挟持した配線板が揺動しやすく、挟持状態が不安定であった。
【0074】
さらに、実施例1については、各配線板挟持機構の挟持用治具の対の間を開放したときに、樹脂膜からの挟持用治具の突条の抜き出しによって突条と樹脂膜との間に生じる半硬化樹脂の橋絡部の切断に起因して樹脂突部が樹脂膜に形成されるが、配線板吊り下げ具から取り外した配線板について挟持用治具による挟持部位を観察した結果、前記樹脂突部の高さ(樹脂膜からの突出寸法)は最大でも300μm程度であった。
なお、樹脂膜は、周知のソルダーレジストインク(アネスト岩田株式会社製の岩田粘度カップNK−2を使用して計測した粘度が0.12〜0.17Pa・s(パスカル秒)の範囲にあるもの)を使用して形成した。
【0075】
配線板吊り下げ具から取り外した配線板(樹脂膜付き配線板)について挟持用治具による挟持部位を観察した結果、実施例1については、配線板51表面に形成された圧痕(極めて微小な凹み)によって、挟持用治具の突条が配線板51自体に直接的に接触して配線板51を挟持したことを確認できた。
一方、比較例1については、挟持用治具801の挟持部81の圧接によって配線板51に形成された圧痕が見られるケースが実施例1に比べて少なかった。
【0076】
なお、実施例1の挟持用治具20Aにかえて、実施例1の挟持用治具20Aについて分断溝28を省略し、2つの分割突条29が互いに連続して長手方向全長にわたって断面形状が一定になっている突条を具備する挟持用治具(図3、図4参照)を採用して配線板吊り下げ具を組み立てて、上述の吊り下げ搬送試験を行った結果、実施例1と同様の結果が得られた。
また、樹脂盛り上がり部の高さ測定を行った結果、実施例1と同様の結果が得られた。
【0077】
構造例2の挟持部222を具備する挟持用治具を採用して組み立てた配線板吊り下げ具、構造例3の挟持部224を具備する挟持用治具を採用して組み立てた配線板吊り下げ具についても、上述の吊り下げ搬送試験を行った結果、実施例1と同様の結果が得られた。
【0078】
本発明者の鋭意検討の結果、比較例1の挟持用治具801について、挟持部81の先端面83の面積を増大すると、挟持した配線板51の落下が一層生じやすくなることが判っている。
比較例1の挟持用治具801は、先端面83の溝84a、84b以外の部分によって配線板51を挟持する構成であり、このような構成の挟持用治具に比べて、本発明に係る挟持用治具の方が、吊り下げ搬送する樹脂膜付き配線板の質量の増大に対応するには有利である。
【0079】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、適宜変更が可能であることは言うまでもない。
配線板(プリント配線板)51の片面のみに半硬化状態の樹脂膜52を形成してなる配線板51の吊り下げ支持、吊り下げ搬送に使用する配線板吊り下げ具の配線板挟持機構としては、配線板51を挟持するための1対の挟持用治具の内、少なくとも配線板51の樹脂膜52が形成されている側から配線板51を挟持する挟持用治具が本発明に係る挟持用治具であればよく、反対側の挟持用治具については特には限定は無く、必ずしも本発明に係る挟持用治具である必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る配線板吊り下げ具、挟持用治具を用いて、樹脂膜が形成されている配線板の上辺端部を挟持して配線板を吊支(吊り下げ支持)した状態を示す図である。
【図2】本発明に係る配線板吊り下げ治具の配線板挟持機構を説明する図である。
【図3】本発明に係る第1実施形態の挟持用治具の一例を示す斜視図である。
【図4】配線板吊り下げ治具の配線板挟持機構の一対の挟持用治具によって配線板を挟持した状態における配線板及び樹脂膜と挟持用治具との関係を示す図である。
【図5】本発明に係る第1実施形態の挟持用治具の挟持部の別態様(構造例2)を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る第1実施形態の挟持用治具の挟持部の別態様(構造例3)を説明する側面図である。
【図7】本発明に係る第1実施形態の挟持用治具の挟持部の別態様(構造例4)を説明する側面図である。
【図8】本発明に係る第2実施形態の挟持用治具の一例を説明する斜視図である。
【図9】配線板の樹脂膜形成面に突条を当接させてあった図8の挟持用治具を前記配線板から離隔させる際の、突条と配線板との間での樹脂膜の樹脂の挙動を説明する図であって、(a)は樹脂膜の半硬化樹脂によって突条と配線板との間を橋絡する橋絡部が形成された状態、(b)は前記橋絡部の切断後の状態を示す。
【図10】比較例1の挟持用治具を説明する図であって、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図11】比較例2の挟持用治具を説明する図であって、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【符号の説明】
【0081】
10…配線板吊り下げ具、11…連結部材、20、20a、20b、20A…挟持用治具、21…治具本体、22…挟持部、23…ベース部、24…突条、24a…先端稜線、25…溝部、221…挟持部、241…突条、241a…先端稜線、241b…上面、241c…下側斜面、251…溝部、222…挟持部、242…突条、242a…先端稜線、242b…下面、242c…上側斜面、252…溝部、223…挟持部、243…突条、243a…先端稜線、253…溝部、224…挟持部、244…突条、245…溝部、26…挟持部、27…突条、28…分断溝、29…分割突条、29a…先端稜線、29b…上面、29c…下側斜面、51…配線板、51a…上辺端部、51b…樹脂膜形成面、52…樹脂膜、52a…盛り上がり部、52b…樹脂突部、52c…橋絡部、52d…突条挿入部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半硬化状態の樹脂膜が形成されたプリント配線板を吊り下げるための配線板吊り下げ具に設けられて前記プリント配線板の上辺端部の挟持に用いられる挟持用治具であって、
治具本体と、該治具本体に突設され、前記プリント配線板を挟持するために前記プリント配線板に押し付けられる挟持部とを具備し、
前記挟持部は、前記プリント配線板の上辺端部に沿って水平方向に延在され前記プリント配線板に押し付けられる断面山形の突条を上下方向の複数箇所に有し、しかも、該挟持部の上下方向に6mmの範囲内に全ての突条が形成されていることを特徴とする挟持用治具。
【請求項2】
隣り合う前記突条間の溝部のうちその深さ方向において該溝部の開口部側から前記樹脂膜の膜厚に相当する範囲を除く部分の容積が、前記突条のその先端から前記樹脂膜の膜厚の範囲の体積よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の挟持用治具。
【請求項3】
隣り合う前記突条間の溝状の溝部の深さが1.5mm以上、かつ、前記突条のピッチが1.5mm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の挟持用治具。
【請求項4】
前記突条が、その長手方向の1以上の箇所に形成された分断溝によって複数本の分割突条に分断されており、前記分断溝の溝幅が1〜3mm、1本の分割突条の長さが3〜5mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の挟持用治具。
【請求項5】
前記突条は、その断面形状が直角三角形をなし、水平方向に延在する上面と、該突条の先端稜線から斜め下方に延在する下側斜面とを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の挟持用治具。
【請求項6】
全体が一体の金属製の1部材とされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の挟持用治具。
【請求項7】
半硬化状態の樹脂膜が形成されたプリント配線板をその上辺端部を一対あるいは複数対の挟持用治具によって挟持して吊り下げ搬送するための配線板吊り下げ具であって、
対を構成する挟持用治具の一方又は両方が請求項1〜6のいずれかに記載の挟持用治具であることを特徴とする配線板吊り下げ具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−73873(P2010−73873A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239370(P2008−239370)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(597079681)株式会社 大昌電子 (42)
【Fターム(参考)】