説明

振り出し容器

【課題】内容物の排出量の切り替えを簡易な構造で実現した振り出し容器を提案する。
【解決手段】本発明の振り出し容器は、内容物を収納する容器本体1と、口頚部1cの周りに沿って回動させて内容物の排出量を切り替えるキャップ2とを備え、キャップ2は、口頚部1cを取り囲む環状体2aと、環状体2aの上端部につながり、内容物の排出孔2cを残して口頚部1cを閉塞する天板2bとを備え、口頚部1cに、口頚部1cの一部を外方へ向けて突出させてその内側を内容物の排出経路とする区画凹所1cを設け、環状体2aの内面壁に、キャップ2の周方向の左右の回動に際して区画凹所1cを形成する連結壁部に突き当たってキャップ2の回動を停止させる内側リブ2aを設け、天板2bの排出孔2cは、内側リブ2aによるキャップ2の回動停止姿勢でのみ区画凹所1cに連通して内容物の少量排出又は大量排出を可能とするものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器を反転した状態で、この容器を上下に振動させる振り出し動作によって容器内の内容物を排出する振り出し容器に関するものであり、内容物の排出量の切り替えを簡易な構造で実現しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
粒子径の小さい、例えば、塩やこしょう等の調味料を入れる容器としては、複数種の排出孔群を設けた中蓋を容器の口部に装着するとともに、口部の周りに回動自在に取り付けられる外蓋に、その排出孔群の開放、閉鎖を行う切り欠き部を設け、外蓋の回動によって何れか一つの排出孔群に切り欠き部を適合させて排出量の切り替えを行えるようにした振り出し容器が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−193048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような振り出し容器は、外蓋を回動させるだけで内容物の排出量を切り替えることが可能であるが、容器本体及び中蓋に加え外蓋も必要となる3パーツ構成であるため、容器を構成する部品数が増加して、コストの増大が不可避となっていた。
【0005】
本発明の課題は、容器を反転させたまま上下に振動させる振り出し動作によって容器内の内容物を排出する振り出し容器に関し、内容物の排出量の切り替えを簡易な構造で実現するとともに、異なる排出量の切り替えを確実に行うことができて使い勝手の良い振り出し容器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内容物を収納する容器本体と、該容器本体の口頚部に抜け止め保持され、該口頚部の周りに沿い周方向の左右に交互に回動させて内容物の排出量をそれぞれ切り替えるキャップとを備えた振り出し容器であって、
前記キャップは、前記口頚部を取り囲む環状体と、該環状体の上端部につながり、内容物の排出孔を残して該口頚部を閉塞する天板とを備え、
前記口頚部に、該口頚部の一部を外方へ向けて突出させてその内側を内容物の排出経路とする区画凹所を形成し、
前記環状体の内面壁に、前記キャップの周方向の左右の回動に際して前記区画凹所を形成する連結壁部に突き当たって該キャップの回動を停止させる内側リブを設け、
前記天板の排出孔は、前記内側リブによる該キャップの回動停止姿勢でのみ前記区画凹所に連通して内容物の少量排出又は大量排出を可能とするものであることを特徴とする振り出し容器である。
【0007】
前記環状体の内面壁に相対する前記口頚部の外壁面に、前記環状体の内面壁の手前まで突出し、前記内側リブとの係合により前記キャップの閉塞姿勢を維持する位置決めリブを設けることが好ましい。
【0008】
前記口頚部に、前記環状体の内面壁と当接して前記容器本体内への外気の侵入を阻止する環状リブを形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
容器本体の口頚部の一部を外方へ向けて突出させて、その内側を内容物の排出経路とする区画凹所を形成し、口頚部を取り囲むキャップの環状体の内壁面に、キャップの周方向の左右の回動に際して区画凹所を形成する連結壁部に突き当たってキャップの回動を停止させる内側リブを設け、キャップの天板に設けられた排出孔を、キャップの回動停止姿勢でのみ区画凹所に連通して、内容物の少量排出又は大量排出を可能とする、二種類の排出孔からなるものとしたので、キャップの回動方向に応じて内容物の排出量を切り替えることができる。この場合、キャップを停止するまで回動すれば、確実に排出孔と区画凹所が連通するので、常に所期する量の内容物を排出させることができる。さらに、本発明に従う振り出し容器は、容器本体とキャップとの2つの部材で構成されるので、部品点数の削減を図ることができる。
【0010】
容器の口頚部の外壁面に、キャップ環状体の内面壁の手前まで突出し、内側リブとの係合によりキャップの閉塞姿勢を維持する位置決めリブを設ける場合は、キャップの不用意な回動によって、内容物が意図せず排出することを防止することができる。
【0011】
容器の口頚部に、キャップ環状体の内面壁と当接して容器本体内への外気の侵入を阻止する環状リブを形成する場合は、湿気等の容器本体内への侵入を抑制することができるので、内容物が容器本体内で固まることによる排出の阻害や、内容物の変質等を有効に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に従う振り出し容器の実施の形態を示す平面図であって、排出孔と区画凹所とが連通していない、キャップの閉塞姿勢を示す図である。
【図2】図1に示す振り出し容器のA−Aに沿う断面図である。
【図3】図1に示す振り出し容器のB−Bに沿う部分拡大断面図である。
【図4】図1に示す振り出し容器の容器本体の要部を示す部分拡大斜視図である。
【図5】図1に示す振り出し容器の使用状態を示す図であって、図1に示す状態からカバーを開き、キャップを容器本体に対して反時計回りに回動させ、キャップの内側リブが区画凹所を形成する連結壁部に突き当たって区画凹所と大量排出用の排出孔とが連通する、大量排出時のキャップの回動停止姿勢を示す部分拡大平面図である。
【図6】図1に示す振り出し容器の使用状態を示す図であって、図1に示す状態からカバーを開き、キャップを容器本体に対して時計回りに回動させ、キャップの内側リブが区画凹所を形成する連結壁部に突き当たって区画凹所と小量排出用の排出孔とが連通する、小量排出時のキャップの回動停止姿勢を示す部分拡大平面図である。
【図7】本発明に従う振り出し容器の他の実施の形態を示す部分拡大斜視図である。
【図8】図7に示す振り出し容器のC−Cに沿う部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明に従う振り出し容器の実施の形態を示す平面図であり、排出孔と区画凹所とが連通していない、キャップの閉塞姿勢を示す図であって、図2は、図1に示す振り出し容器のA−Aに沿う断面図であり、図3は、図1に示す振り出し容器のB−Bに沿う部分拡大断面図であり、図4は、図1に示す振り出し容器の容器本体の要部を示す部分拡大斜視図であり、図5は、図1に示す振り出し容器の使用状態を示す図であって、図1に示す状態からカバーを開き、キャップを容器本体に対して反時計回りに回動させ、キャップの内側リブが区画凹所を形成する連結壁部に突き当たって区画凹所と大量排出用の排出孔とが連通する、大量排出時のキャップの回動停止姿勢を示す部分拡大平面図であり、図6は、図1に示す振り出し容器の使用状態を示す図であって、図1に示す状態からカバーを開き、キャップを容器本体に対して時計回りに回動させ、キャップの内側リブが区画凹所を形成する連結壁部に突き当たって区画凹所と小量排出用の排出孔とが連通する、小量排出時のキャップの回動停止姿勢を示す部分拡大平面図であり、図7は、本発明に従う振り出し容器の他の実施の形態を示す部分拡大斜視図であり、図8は、図7に示す振り出し容器のC−Cに沿う部分拡大断面図である。
【0014】
図1及び図2において、1は容器本体である。容器本体1は、底部1aの外縁から立ち上がる胴部1bを有し、頂部を開口させた口頚部1cを肩部1dを介して連結して、その内側に内容物の収納空間Mを形成している。
【0015】
口頚部1cは、肩部1dとの連結部から立ち上がる口頚根元部1cと、口頚根元部1cの上部に位置し、口頚根元部1cよりも小径となる口頚先端部1cと、口頚根元部1cと口頚先端部1cとの相互間を縮径しながら連結する口頚中間部1cとを備えている。また、口頚根元部1cと口頚中間部1cとの境界には、径方向外側に向けて突出する環状の支持リブ1cが設けられ、口頚先端部1cの頂部には、径方向外側に向けて突出するフランジ1cが形成されている。
【0016】
また口頚部1cは、図4に示すように、その口頚部1cの一部を外方へ向けて突出させてその内側に区画凹所1cを形成している。図示の例で区画凹所1cは、フランジ1cの径方向外側端面と同一面となる拡径壁1cと、拡径壁1cと口頚先端部1cとを連結する連結壁部1cとからなる区画壁で区画形成されている。拡径壁1cの内面壁は、図2に示すように、口頚部1cの頂部に向かって口頚部1cの開口面積を広げる向きに傾斜する傾斜壁1cとなっていて、区画凹所1cの背面側には、支持リブ1cとフランジ1cとを連結する補強リブ1c10が形成されている。
【0017】
さらに口頚部1cは、口頚根元部1cから径方向外側に向けて突出する環状リブ1c11と、図1、図3に示すように口頚先端部1cから突出し、その先端がフランジ1cの径方向外側端面よりも径方向内側に位置する位置決めリブ1c12とを備えている。なお図示の例では、位置決めリブ1c12を2個設けた場合を示している。
【0018】
図1及び図2において、2は容器本体1に対して回動可能に取り付けられるキャップである。キャップ2は、容器本体1に取り付けた状態で、口頚部1cを取り囲んで支持リブ1c、フランジ1cの径方向外側端面、拡径壁1c、及び補強リブ1c10で支持される環状体2aと、環状体2aの上端部とつながって口頚部1cを閉塞する天板2bとを備えている。天板2bはその裏面縁部がフランジ1cの上面で支持されるので、容器本体1に対して安定して回動させることができる。また天板2bには、容器本体1に取り付けられた状態で口頚部1cの頂部よりも径方向外側に位置する天板2bの縁部に、その表裏を貫通させた内容物を排出する排出孔2cが設けられている。ここで排出孔2cは、内容物を少量排出するための少量排出孔2cと、大量排出するための大量排出孔2cとの二種類からなり、図1に示す例では、同径となる4つの孔を、区画凹所1cを挟んで1個と3個とに分けて配置していて、1個側を少量排出孔2cとし、3個側を大量排出孔2cとしている。なお、少量排出孔2cと大量排出孔2cとは、孔の開孔面積が少量排出孔2cよりも大量排出孔2cの方が大きければよく、孔の数には限定されない。例えば大量排出孔2cは、図示した3個の孔を連結して1個の長孔とすることもできる。
【0019】
環状体2aの内面壁には、径方向内側に向けて突出する環状の凸部2aが形成されている。これにより、キャップ2を容器本体1に取り付けると、口頚部1cの環状リブ1c11とキャップ2の凸部2aとが係合して抜け止め保持される。この時環状リブ1c11は、環状体2aの内面壁と当接していて、それらの相互間からの外気の侵入を阻止することができる。
【0020】
また、環状体2aの内面壁には、図1、図3に示すように、径方向内側に向けて突設する内側リブ2aが設けられている。図1に示す例で内側リブ2aは2個設けられていて、それぞれの内側リブ2aの両側側面壁のうち、区画凹所1cに対向する側の側面壁は、各位置決めリブ1c12と当接している。
【0021】
環状体2aの外面壁には、図3に示すように、容器の軸線方向に沿って延びる複数の溝を周方向に沿って配置した指掛かり部2aが設けられている。これにより、キャップ2を回動させる際には、指掛かり部2aによって指が滑ることないので、キャップ2を安定して回動させることができる。
【0022】
また図示した例でキャップ2は、天板2bに覆い被さるカバー3を備えている。カバー3は、ヒンジ3aを介して天板2bと連結されており、図5、図6に示すようにヒンジ3aを挟んで両側に弾性片3bが設けられている。ヒンジ3aの反対側には、カバー3を開く際の指掛かりとなる操作片3cが形成されている。これにより、操作片3cに指をかけてカバー3を開く際には、弾性片3bによってカバー3が跳ね上がり開姿勢を維持することができる。またカバー3の裏面には、図3の拡大図で示すように、排出孔2cに対応して突設させたピン3dが設けられており、カバー3が天板2bに覆い被さる閉姿勢では、ピン3dが排出孔2cに挿入される。これにより、排出孔2cに内容物が残留していても、カバー3を閉姿勢にして排出孔2cから押し出すことができるので、内容物の詰まりが有効に防止される。さらにカバー3の端縁から垂下される縁部周壁3eには、その内面壁に環状の凸部3eが形成されていて、カバー3の閉姿勢においては、凸部3eがキャップ2の天板2bを縁取って形成される段部2bの外面壁と当接するので、それらの相互間からの外気の侵入を阻止することができる。
【0023】
上記のように構成される振り出し容器から大量の内容物を排出する場合には、カバー3を図1に示す閉姿勢から図5に示す開姿勢に変位させ、キャップ2を、図1に示す閉塞姿勢から容器本体1に対して反時計回り(周方向左周り)に回動させる。この時キャップ2を、図5に示すように内側リブ2aが連結壁部1cに突き当たるまで回動させることで(大量排出時のキャップの回動停止姿勢)、区画凹所1cと大量排出孔2cとが連通する。この状態から容器を反転させ、容器を上下に振動させる振り出し動作をおこなうことで、容器本体1内の内容物を大量に排出することができる。一方、内容物の排出が少量である場合は、キャップ2を、図1に示す閉塞姿勢から容器本体1に対して時計回り(周方向右回り)に回動させる。この時キャップ2を、図6に示すように内側リブ2aが連結壁部1cに突き当たるまで回動させることで(小量排出時のキャップの回動停止姿勢)、区画凹所1cと小量排出孔2cとが連通する。この状態から容器を反転させ、容器を上下に振動させる振り出し動作をおこなうことで、容器本体1内の内容物を小量だけ排出することができる。これらの場合、容器本体1内の内容物は、経路を狭められた区画凹所1cを排出経路としているので、内容物の残量に左右されずに常時一定量が排出孔2cに向かうこととなり、内容物の排出量の変動を抑えることができる。また、区画凹所1cの開口付近は、傾斜壁1cで傾斜しているので、容器本体1の反転姿勢が水平に近い状態でも内容物を排出することができる。
【0024】
他方、内容物の排出を行わない場合は、キャップ2を回動させて図1に示すキャップの閉塞姿勢に変位させる。この時2つの内側リブ2aのそれぞれは、2つの位置決めリブ1c12のそれぞれと係合してキャップ2の回り止めとなっているので、閉塞姿勢を維持することができる。なお、位置決めリブ1c12と環状体2aの内面壁との間には隙間が形成されているので、キャップに比較的強い回動力を与えると、内側リブ2aは位置決めリブ1c12を乗り越えることができる。
【0025】
図7、図8は、本発明に従う振り出し容器の他の実施の形態を示す図であり、天板2bの中央部に内容物を詰め替えるための中栓4を設けた場合を示している。図示の例で中栓4は、下向き凸状の中栓本体4aの外縁にフランジ4bを備えており、中栓本体4aの頂部には径方向内側に向けて延びる取り外し片4cが設けられている。また天板2bには開口2bが設けられ、開口2bの縁部にはフランジ4bに適合する段部2bが形成されている。中栓4は開口2bに押し込まれて保持されるので、容器本体1を反転させても外れることがなく、常時取り付けた状態で使用できる。また、詰替え時には、取り外し片4cを引き上げることで簡単に取り外すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、内容物の排出量の切り替えを簡易な構造で実現するとともに、異なる排出量の切り替えを確実に行うことができて使い勝手の良い振り出し容器を提供できる。
【符号の説明】
【0027】
1 容器本体
1c 口頚部
1c 支持リブ
1c フランジ
1c 区画凹所
1c 拡径壁
1c 連結壁部
1c 傾斜壁
1c10 補強リブ
1c11 環状リブ
1c12 位置決めリブ
2 キャップ
2a 環状体
2a 凸部
2a 内側リブ
2b 天板
2c 排出孔
2c 少量排出孔
2c 大量排出孔
3 カバー
4 中栓
M 収納空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収納する容器本体と、該容器本体の口頚部に抜け止め保持され、該口頚部の周りに沿い周方向の左右に交互に回動させて内容物の排出量をそれぞれ切り替えるキャップとを備えた振り出し容器であって、
前記キャップは、前記口頚部を取り囲む環状体と、該環状体の上端部につながり、内容物の排出孔を残して該口頚部を閉塞する天板とを備え、
前記口頚部に、該口頚部の一部を外方へ向けて突出させてその内側を内容物の排出経路とする区画凹所を形成し、
前記環状体の内面壁に、前記キャップの周方向の左右の回動に際して前記区画凹所を形成する連結壁部に突き当たって該キャップの回動を停止させる内側リブを設け、
前記天板の排出孔は、前記内側リブによる該キャップの回動停止姿勢でのみ前記区画凹所に連通して内容物の少量排出又は大量排出を可能とするものであることを特徴とする振り出し容器。
【請求項2】
前記環状体の内面壁に相対する前記口頚部の外壁面に、前記環状体の内面壁の手前まで突出し、前記内側リブとの係合により前記キャップの閉塞姿勢を維持する位置決めリブを設けた請求項1記載の振り出し容器。
【請求項3】
前記口頚部に、前記環状体の内面壁と当接して前記容器本体内への外気の侵入を阻止する環状リブを形成した請求項1又は2に記載の振り出し容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−158354(P2012−158354A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18764(P2011−18764)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】