説明

振出竿の竿尻構造

【課題】中竿等を保護する受止体に合理的な機構を設けることによって、受止体の竿先側空間から竿尻側空間への水の誘導を円滑に行え、メインテナンス作業の容易化を図ることのできる振出竿の竿尻構造を提供する。
【解決手段】元竿2の竿尻端の内部に元竿2内に収納された穂先竿及び中竿3の元上3Aの竿尻端を受け止める座ゴム5を配置し、座ゴム5の周縁部にその座ゴム5の竿先側空間と竿尻側空間とを連通させる凹入面5B、5Cを形成し、座ゴム5を尻栓4に嵌め合い装着してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、元竿内に収納された中竿等の竿尻端を受け止めてその竿尻端を保護する受止体を装備している振出竿の竿尻構造に関する。
【背景技術】
【0002】
受止体としてのシート部材(公報内番号22)には、中心位置に貫通孔(公報内番号34)が設けてあり、この貫通孔を通してシート部材の竿先側空間内の水を竿尻側空間へ誘導し、竿尻側空間へ誘導された水については尻栓の水抜き孔を介して外部に排出する構成を採っていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−13084号公報(公報段落番号〔0025〕、及び、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、シート部材の竿先側空間からの水は元竿の内周面を伝って流れてくることが多く、中心位置に貫通孔を設けているだけでは、水を竿尻側空間に誘導することが難しいこともあり、排出機能が十分に生かされてはいなかった。
【0005】
本発明の目的は、中竿等を保護する受止体に合理的な機構を設けることによって、受止体の竿先側空間から竿尻側空間への水の誘導を円滑に行え、メインテナンス作業の容易化を図ることのできる振出竿の竿尻構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、竿尻端の内部に元竿内に収納された中竿の竿尻端を受け止める受止体を配置し、前記受止体の周縁部にその受止体の竿先側空間と竿尻側空間とを連通させる連通機構を形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用効果〕
竿先側空間と竿尻側空間とを連通させる連通機構を受止体の周縁部に形成したので、元竿の内周面を伝って流れてくる水は、その連通機構を介して竿尻側空間に誘導され、尻栓を通して外部に排出される。
これによって、竿の内部に水が長く溜まることに起因する水に含まれる砂等が竿の内周面に付着するといったことが少なくなり、メインテナンスも容易になる。
【0008】
〔構成〕
請求項2に係る発明の特徴構成は、前記連通機構が前記受止体の周縁部に凹入形成されたものである点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0009】
〔作用効果〕
前記連通機構が凹入形成されたものであるので、簡単な機構で水の誘導が円滑に行えるようになった。
【0010】
〔構成〕
請求項3に係る発明の特徴構成は、元竿の竿尻端に尻栓を装着するとともに、前記尻栓に前記受止体を装着してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0011】
〔作用効果〕
尻栓に受止体を装着することとしたので、元竿等の竿側に受止体を装着するための機構(例えば受け座)を形成する必要がなく、共に元竿に取り付ける部品である尻栓と受止体とを一体に扱うことができ、製造上または流通上でも取扱性を向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)座ゴムを装着した尻栓を元竿に取り付け、その元竿内に中竿を収納した振出竿を示す縦断側面図、(b)座ゴムを装着した尻栓を、元竿に取り付ける前の状態を示す分解縦断側面図である。
【図2】(a)座ゴムの周縁部に半円状の凹入部を形成した状態を示す正面図、(b)座ゴムの縦断側面図である。
【図3】座ゴムを装着した尻栓を元竿に取り付け、その元竿内に中竿を収縮保持した伸縮式振出竿を示す縦断側面図である。
【図4】座ゴムの周縁部にギヤ状の凹凸部を形成した受止体の別実施構造を示す正面図である。
【図5】座ゴムの周縁部に複数の貫通孔を形成した受止体の別実施構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1実施形態〕
リールを取付る磯竿及び船竿、或いは、リールを取り付けない鮎竿等に使用される釣り竿1について説明する。
釣り竿1は、元竿2、複数の中竿3、穂先竿(図示せず)とを備えて振出式の釣り竿に構成してあり、図1に示すように、元竿2の竿尻端に尻栓4を装着して構成されている。
【0014】
元竿2等は、基本的には、ガラス繊維かカーボン繊維等の強化繊維にエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成したプリプレグをマンドレルに巻回して筒状に形成し、その筒状に形成した竿素材を焼成して形成されている。
【0015】
尻栓4の構成について説明する。図1に示すように、尻栓4は、金属製の円筒状の取付本体4Aと、その取付本体4Aに合成樹脂製の摘み操作部4Bが接着一体固定されている。
一方、元竿2の竿尻端には金属製または合成樹脂製のスリーブ体2Aが固着されており、スリーブ体2Aは、後端にフランジ部2aを配置し、そのフランジ部2aの内端より竿先側に向けて円筒部2bを延出し、円筒部2bの内周面に雌ねじaを形成して構成されている。
【0016】
他方、尻栓4の取付本体4Aは、後端のフランジ部4aと、そのフランジ部4aの内端から竿先側に向けて延出されたテーパコーン部4bと、テーパコーン部4bの竿先側端より更に竿先側に向けて延出されている筒状部4cとを一体形成して構成されている。筒状部4cの外周面に雄ねじbを形成し、筒状部4cの雄ねじbを円筒部2bの雌ねじaに螺着することによって、尻栓4を元竿2に着脱可能に構成することができる。
【0017】
尻栓4の摘み操作部4Bは、取付本体4Aのフランジ部4a、テーパコーン部4b、筒状部4cの背面側に接着する状態で固着されており、内部に空き空間cを形成して軽量化を図るとともに、空き空間cと外部とを連通する水抜き孔4dを形成してある。また、取付本体4Aの外周面には、竿軸線X方向に平行な細溝dが多数刻設されており、摘む指の滑り止めを形成してある。
【0018】
中竿3等を元竿2内に収納した際に、中竿等の竿尻端を受け止め保護する座ゴム(受止体の一例)5について説明する。図2に示すように、受止体5の外周縁に連通機構を構成するに、半円状の凹入部5Bを周方向に沿って複数個形成し、複数個の凹入部5Bの間に突起部5Aを形成する。そうすると、元竿2等の内周面を伝って流れ落ちてくる水をその凹入部5Bを介して竿先側空間としての元竿等の内部から竿尻側空間としての尻栓4の内部空間c内に導入することができ、尻栓4に設けた水抜き孔4dを介して外部に排出することができる。
【0019】
図2(b)に示すように、座ゴム5の竿尻側端には面取り部5aが設けてあり、尻栓4の摘み操作部4Bの先端との間隙を確保して、水の流れをよくする構成を採っている。
また、座ゴム5の中心位置にも貫通孔5Dを設けてあり、この貫通孔5Dを通しても水を、尻栓4の内部空間cに導入することが可能である。
【0020】
この座ゴム5を尻栓4に取り付けるには、図1(a)に示すように、突起部5Aを取付本体4Aの筒状部4cの内周面に圧接するように嵌め込むことによって、座ゴム5を取り付けることができる。
【0021】
以上のような構成によって、釣り竿1を立てた場合に、元竿2の内周面に沿って落下してくる水は、スリーブ体2Aの内周面に沿って座ゴム5の外周縁に達し、凹入部5Bから竿尻側空間となる尻栓4の空き空間c内に誘導されて、尻栓4の水抜き孔4bを介して外部に配出される。
【0022】
〔第2実施形態〕
ここでは、伸縮式釣り竿1の構造について説明する。図3に示すように、元竿2の竿尻端にスリーブ体2Aを固着する。スリーブ体2Aは後端にフランジ部2aを配置し、そのフランジ部2aの内端より竿先側に向けて円筒部2bを延出し、円筒部2bの内周面に雌ねじaを形成して構成されている。
【0023】
一方、尻栓4は、略ディスク状の摘み操作部4Bと摘み操作部4Bの竿先側に延出されている筒状の本体部4Aとを、合成樹脂で一体形成されており、本体部4Aの外周面に雄ねじbが形成してある。このような構成によって、本体部4Aの雄ねじbを円筒部2bの雌ねじaに螺合させることによって、尻栓4を元竿2に螺合することができる。
【0024】
受止体としての座ゴム5は、スリーブ体2Aの雌ねじaより竿先側に形成されている嵌合面2cに内嵌合されて、取付固定される。嵌合面2cより更に竿先側には、内嵌面2dが形成してあり、この内嵌面2dに中竿3の一つである元上3Aを内嵌することによって、元上3Aを収縮状態に保持することができる。このような構成によって、元上3Aを伸長状態(図示せず)だけでなく、収縮状態においても保持可能な伸縮式振出竿を構成することができる。
【0025】
図3に示す状態で竿を立てて、元竿2の内周面を伝って水を座ゴム5まで誘導するには、元上3Aの竿尻端部を内嵌しているスリーブ体2Aの内嵌面2dを凹凸面(図示せず)に形成し、その凹凸面に形成された内嵌面2dの凹入面から水を座ゴム5から尻栓4まで誘導し、尻栓4の水抜き孔4dを介して排出することが可能である。
【0026】
〔別実施の形態〕
(1) 受止体としては座ゴム5のようにゴム製ではなく、合成樹脂で構成してもよい。また、単に板状を呈するだけでなく、尻栓4のように複雑な断面形状を採る躯体状のものであってもよい。
(2) 図4に示すように、ギヤ歯状の突起部5Aと突起部5Aの間に凹入部5Cを周方向に沿って交互に配置して、座ゴム5を形成してある。このように、突起部5Aと凹入部5Cとを交互に配置してあるので、凹入部5Cを介して後記するように水を誘導することができる。
このように、突起部5Aと凹入部5Cとを交互に形成して、凹入部5Cによって連通機構を構成してもよい。
(3) 図5に示すように、受止体5の外周縁に連通機構を構成するに、外周縁よりやや内側に小径の貫通孔5aを円周方向に複数個配置してもよい。
(4) 座ゴム5の中心位置に設けた貫通孔5Dについては、穂先竿の竿尻端を受け止めるだけの小径のものであるか、または、形成しなくともよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、磯竿や船竿のみならず鮎竿等の竿尻構造にも適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
2 元竿
3 中竿
4 尻栓
5 座ゴム(受止体)
5B,5C 凹入部(連通機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿尻端の内部に元竿内に収納された穂先竿及び中竿の竿尻端を受け止める受止体を配置し、前記受止体の周縁部にその受止体の竿先側空間と竿尻側空間とを連通させる連通機構を形成してある振出竿の竿尻構造。
【請求項2】
前記連通機構が前記受止体の周縁部に凹入形成されたものである請求項1記載の振出竿の竿尻構造。
【請求項3】
元竿の竿尻端に尻栓を装着するとともに、前記尻栓に前記受止体を装着してある請求項1又は2記載の振出竿の竿尻構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−78335(P2011−78335A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231569(P2009−231569)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】