説明

振動コンベヤ

【課題】従来の振動コンベヤが有する利点を生かしつつ、耐久性を高めることが可能な振動コンベヤを提供すること。
【解決手段】振動コンベヤ1は、被搬送物2を搬送するために振動する振動体3と、振動体3を振動させる振動発生手段6と、振動体3を直線状に振動させるためのガイド手段5とを備え、振動発生手段6は、支持体4に回転可能に支持される円筒状の駆動側磁石30と、振動体3に固定され駆動側磁石30に対向配置される振動側磁石31と、振動体3の振動方向の一方側に配置され振動体3が振動時に接触する接触部材35とを備えている。駆動側磁石30の外周面にはN極とS極とが交互にかつ螺旋状に着磁され、振動側磁石31には駆動側磁石30の磁極と対応するようにN極とS極とが交互に着磁されている。振動発生手段6は、接触部材35に向かって振動体3が移動する方向に駆動側磁石30を回転させて、振動体3を振動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送物に振動を与えながら被搬送物を搬送する振動コンベヤに関する。
【背景技術】
【0002】
山積み状態の被搬送物に振動を与え、この振動で山積み状態の被搬送物をばらしながら所定方向へ搬送する振動コンベヤが様々な用途で使用されている。この種の振動コンベヤとして、永久磁石を利用して、コンベヤ上の被搬送物に振動を与えながら被搬送物を搬送する振動コンベヤが本出願人によって提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の振動コンベヤでは、ブラケット等を介して基台に回転可能に支持された支軸の外周側に円筒状の駆動側磁石が固定され、被搬送物が載置される振動板が取り付けられた支持板の下面に駆動側磁石に対向するように平板状の振動側磁石が固定されている。また、支持板は、基台に取り付けられた板バネに支持されている。駆動側磁石には、S極とN極とが交互にかつ螺旋状に着磁され、振動側磁石には、駆動側磁石の磁極に対応するようにS極とN極とが交互に配置されている。
【0004】
また、この振動コンベヤでは、支軸にモータが連結されており、モータの動力で駆動側磁石が回転する。駆動側磁石が回転すると、駆動側磁石のN極(あるいはS極)と振動側磁石のS極(あるいはN極)との間に生じる吸引力で、振動側磁石は駆動側磁石に追従して移動するが、支持板が板バネに支持されているため、振動側磁石が所定位置まで移動すると、板バネの復元力によって振動側磁石と駆動側磁石との間にすべり(脱調現象)が生じる。このように、特許文献1に記載の振動コンベヤでは、駆動側磁石と振動側磁石との間に生じる吸引力と脱調現象とを利用して、振動板を振動させて、振動板上の被搬送物に振動を与えながら被搬送物を搬送している。なお、特許文献1では、振動板の振動方向を限定するためのリニアガイドを備える振動コンベヤも提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−89088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の振動コンベヤは、駆動側磁石を回転させるモータの回転数を制御することで振動周波数を容易に制御することができ、また、駆動側磁石および振動側磁石の磁極数を増減させることで振動の強弱を容易に調整することができるといった利点を有する。また、リニアガイドを備える振動コンベヤは、上下方向への振動が発生せず、被搬送物の搬送方向の振動を安定させることができるといった利点を有する。一方、市場では、かかる利点を生かしつつ、さらに耐久性に優れた振動コンベヤが要求されている。
【0007】
そこで、本発明の課題は、従来の振動コンベヤが有する利点を生かしつつ、耐久性を高めることが可能な振動コンベヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、被搬送物に振動を与えながら被搬送物を搬送する振動コンベヤにおいて、被搬送物が載置され被搬送物を搬送するために振動する振動体と、振動体を振動可能に支持する支持体と、振動体を振動させる振動発生手段と、支持体に対して振動体を直線状に振動させるためのガイド手段とを備え、振動発生手段は、振動体の振動方向を軸方向として支持体に回転可能に支持される駆動側磁石と、振動体に固定され駆動側磁石に対向配置される振動側磁石と、振動体の振動方向の一方側に配置され振動体が振動時に接触する接触部材とを備え、駆動側磁石の外周面には、N極とS極とが交互にかつ螺旋状に着磁され、振動側磁石には、駆動側磁石の磁極と対応するようにN極とS極とが交互に配置され、振動発生手段は、接触部材に向かって振動体が移動する方向に駆動側磁石を回転させて、振動体を振動させることを特徴とする。
【0009】
本発明の振動コンベヤでは、振動発生手段が、振動体の振動方向の一方側に配置され振動体が振動時に接触する接触部材を備え、この接触部材に向かって振動体が移動する方向に駆動側磁石を回転させて、振動体を振動させている。具体的には、振動発生手段は、以下のように振動体を振動させている。
【0010】
すなわち、外周面にN極とS極とが螺旋状に着磁された駆動側磁石が回転すると、駆動側磁石のN極(あるいはS極)と振動側磁石のS極(あるいはN極)との間に生じる吸引力で、振動側磁石は駆動側磁石の回転に追従して移動するが(すなわち、振動側磁石が固定された振動体は接触部材に向かって移動するが)、接触部材に振動体が接触した後さらに駆動側磁石が回転すると、振動側磁石と駆動側磁石との間にすべり(脱調現象)が生じる。この状態でさらに駆動側磁石が回転すると、駆動側磁石のN極(あるいはS極)と振動側磁石のN極(あるいはS極)との間の反発力、および、駆動側磁石のN極(あるいはS極)と振動側磁石のS極(あるいはN極)との間の吸引力によって、駆動側磁石のN極(あるいはS極)と振動側磁石のS極(あるいはN極)とが対向するまで、一旦、接触部材から離れる方向に振動体が移動する。また、駆動側磁石のN極(あるいはS極)と振動側磁石のS極(あるいはN極)が対向すると再び、駆動側磁石のN極(あるいはS極)と振動側磁石のS極(あるいはN極)との間の吸引力で、振動側磁石は駆動側磁石に追従して移動する(すなわち、振動体は接触部材に向かって移動する)。
【0011】
このように、本発明では、接触部材に振動体を接触させることで生じる脱調現象と、駆動側磁石と振動側磁石との間の吸引力および反発力とを利用して、振動体を振動させている。そのため、本発明では、振動体を振動させるために高周波で振動する板バネが不要となり、振動コンベヤの耐久性を高めることが可能になる。なお、被搬送物は、接触部材に向かって移動する際の振動体の速度と、接触部材から離れる方向に移動する際の振動体の速度との差を利用して搬送される。
【0012】
また、本発明の振動コンベヤでは、駆動側磁石の外周面にN極とS極とが交互にかつ螺旋状に着磁され、振動側磁石に駆動側磁石の磁極と対応するようにN極とS極とが交互に配置されているため、駆動側磁石の回転数を制御することで振動体の振動周波数を容易に制御することができ、また、駆動側磁石および振動側磁石の磁極数を増減させることで振動体の振動の強弱を容易に調整することができる。さらに、本発明の振動コンベヤは、支持体に対して振動体を直線状に振動させるためのガイド手段を備えているため、上下方向での振動体の振動を抑制することができる。したがって、被搬送物の搬送を安定させることができ、被搬送物の損傷を抑制することができる。また、振動体の上下方向の振動に起因する音の発生を防止することができる。
【0013】
本発明において、振動体および/または接触部材は、緩衝部材を備えることが好ましい。このように構成すると、振動体を振動させるため、振動体と接触部材とが周期的に接触する場合であっても、緩衝部材によって、振動体や接触部材の損傷を抑制することが可能となり、振動コンベヤの耐久性を高めることが可能になる。また、緩衝部材が弾性を有する場合には、被搬送物の搬送方向での振動体の振幅を大きくすることが可能になる。
【0014】
本発明において、接触部材は、駆動側磁石を支持する軸受を保持する軸受ブロックであることが好ましい。このように構成すると、軸受ブロックに加えて別途、接触部材を設ける必要がなくなるため、振動コンベヤの構成を簡素化することができる。
【0015】
本発明において、振動コンベヤは、振動体の振幅を規制するために、接触部材に接触する方向へ振動体を付勢する付勢手段を備えることが好ましい。この場合には、たとえば、付勢手段は、振動体および/または支持体に取り付けられる永久磁石を備えている。このように構成すると、付勢手段の作用で、接触部材から離れる方向に移動する振動体の動きを規制することができる。したがって、振動体の振幅を安定させることができ、振動体の振動周波数を安定させることができる。
【0016】
本発明において、振動体は、被搬送物が載置される載置部材と、振動側磁石が取り付けられる振動部材とを備え、載置部材は、振動部材に着脱可能に取り付けられていることが好ましい。このように構成すると、振動部材から載置部材を容易に取り外すことができる。したがって、振動コンベヤのメンテナンス性が向上する。
【0017】
本発明において、駆動側磁石は、支持体に対して振動体を所定距離、相対移動させるための移動用着磁部と、振動体を振動させるための振動用着磁部とを備え、振動側磁石よりも長く形成されていることが好ましい。このように構成すると、駆動側磁石と振動側磁石との間に生じる吸引力を利用して、所定距離、振動体を振動させずに移動させることができる。すなわち、所定距離、被搬送物を振動させずに移動させることができる。そのため、たとえば、振動体上への被搬送物の供給位置と被搬送物の搬送完了位置とが比較的離れている場合であっても、被搬送物の供給位置から所定距離、振動体を振動させず移動させることができ、被搬送物を搬送するための振動体の振動時間を短縮することが可能になる。したがって、被搬送物の損傷を抑制することができ、また、振動コンベヤの耐久性を高めることができる。また、振動体上への被搬送物の供給位置と被搬送物の搬送完了位置とが比較的離れている場合であっても、短時間で、被搬送物の搬送を完了させることが可能になる。その結果、振動コンベヤの使い勝手が向上する。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の振動コンベヤでは、従来の振動コンベヤが有する利点を生かしつつ、耐久性を高めることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(振動コンベヤの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる振動コンベヤ1の側面図であり、(A)は振動コンベヤ1に被搬送物2が供給されている状態を示し、(B)は振動コンベヤ1で被搬送物2が搬送されている状態を示す。図2は、図1に示す振動コンベヤ1からトラフ9を取り外した状態を示す平面図である。図3は、図1のE−E方向から振動コンベヤ1を示す図である。図4は、図1に示すトラフ9と振動板10との着脱部分の構成を説明するための図である。図5は、図2のF−F方向から振動発生手段6の主要部を示す図である。図6は、図3に示す付勢手段7を側面から示す図である。なお、図1では、付勢手段7等の図示が省略されている。
【0021】
本形態の振動コンベヤ1は、たとえば、砂糖等の粉状物やドライフーズ等の食品、ネジ等の機械部品あるいは砂や砂利等の所定の被搬送物2に振動を与えながら被搬送物2を所定方向へ搬送するための装置である。この振動コンベヤ1は、図1〜図3に示すように、被搬送物2を搬送するために振動する振動体3と、振動体3を振動可能に支持する支持体4と、支持体4に対して振動体3を図1の左右方向へ直線状に移動させるためのガイド手段5と、振動体3を振動させるための振動発生手段6と、振動体3の振幅を規制するための付勢手段7とを備えている。
【0022】
本形態では、図1の左右方向に振動体3が振動して、図1の右側から左側に向かって被搬送物2が搬送される。すなわち、本形態では、図1の左右方向は振動体3の振動方向であり、図1の左方向は被搬送物2の搬送方向である。また、以下では、図1の右を「右」、図1の左を「左」、図1の紙面手前を「前」、図1の紙面奥を「後(後ろ)」として、各構成を説明する。
【0023】
振動体3は、被搬送物2が載置される載置部材としてのトラフ9と、振動発生手段6を構成する後述の振動側磁石31が取り付けられる振動部材としての振動板10と、振動板10の左右両端面に固定される緩衝部材11、12とを備えている。
【0024】
トラフ9は、上端側が開口するとともに少なくとも左端が開口する溝型に形成されている。トラフ9の下面には、左右方向に所定の間隔をあけた状態で2個の固定ブロック13が固定され(図1参照)、固定ブロック13には、前後方向に所定の間隔をあけた状態で2個の係合ブロック14が固定されている(図3参照)。係合ブロック14は磁性材料で形成されている。係合ブロック14には、図4に示すように、振動板10に固定された後述の磁石固定軸15に係合する円形の係合孔14aが形成されている。
【0025】
振動板10は、矩形の平板状に形成されている。振動板10の4隅には、係合ブロック14の固定位置に対応するように、段付きの貫通孔10aが形成されている(図4参照)。貫通孔10aの中には、磁石固定軸15によって固定されたリング状の永久磁石16が配置されている。具体的には、磁石固定軸15の上端側に形成された鍔部15aと貫通孔10aの段部との間に挟まれた状態で、永久磁石16が貫通孔10aの中に配置されている。磁石固定軸15は、磁性材料で形成されるとともに、段付の円柱状に形成されている。この磁石固定軸15は、その上端部分を振動板10の上面から突出させた状態で、振動板10に固定されている。
【0026】
本形態では、トラフ9は、振動板10の上面に着脱可能に取り付けられている。具体的には、磁石固定軸15の上端部分が係合孔14aに挿入されて係合し、係合ブロック14の下面と磁石固定軸15の鍔部15aとが当接した状態で、振動板10の上面にトラフ9が取り付けられており、永久磁石16の吸着力で振動板10の上面にトラフ9が保持されている。また、係合孔14aに挿入された磁石固定軸15の上端部分は、水平方向での振動板10に対するトラフ9の位置ずれを防止する位置決め機能を果たしている。
【0027】
なお、振動板10の対角線上の2箇所のみに永久磁石16が配置されても良い。また、この場合には、永久磁石16が配置されていない対角線上の2箇所のみでトラフ9の水平方向の位置決めがされても良い。また、係合ブロック14に永久磁石を取り付けて、この永久磁石と振動板10側の永久磁石16とによって、トラフ9と振動体10との間の吸着力を高めても良い。
【0028】
緩衝部材11、12は、細長い直方体状に形成されている。また、緩衝部材11、12は、たとえば、ポリウレタンやゴム等の弾性部材によって形成されている。この緩衝部材11、12は、後述の軸受ブロック35、36と振動体3とが接触するときの音の発生や、振動体3および軸受ブロック35、36の損傷を抑制する機能を果たしている。
【0029】
支持体4は、平板状に形成された底面板19と、左右方向に所定の間隔をあけた状態で底面板19の上面に固定されたブロック状のブロック部材20と、ブロック部材20の上面に固定された平板状の取付板21とを備えている。
【0030】
ガイド手段5は、リニアガイド(リニアモーションガイド)22と、ガイドローラ23とを備えている。リニアガイド22は、支持体4に固定されるガイドレール24と、振動体3に固定され、ガイドレール24に係合する2個のスライドブロック25とから構成されている。ガイドローラ23は、振動板10の下面に固定されたブラケット26に前後方向を軸方向として回転可能に取り付けられている。
【0031】
ガイドレール24は、図3に示すように、取付板21の後端側の上面に取り付けられた取付ブロック27の上面に固定されている。また、ガイドレール24は、左右方向を長手方向として固定されている。2個のスライドブロック25は、左右方向に所定の間隔をあけた状態で、振動板10の後端側の下面に固定されている。
【0032】
ブラケット26は、振動板10の前端側の下面に固定されている。ブラケット26に取り付けられたガイドローラ23は、図1に示すように、底面板19と取付板21との間に配置されており、底面板19の上面あるいは取付板21の下面に接触しながら回転する。
【0033】
振動発生手段6は、左右方向を軸方向として支持体4に回転可能に支持される円筒状の駆動側磁石30と、振動体3に固定され上方から駆動側磁石30に対向配置される振動側磁石31と、駆動側磁石30を回転駆動するためのモータ32とを備えている。
【0034】
駆動側磁石30は、左右方向を軸方向とする回転軸33の外周側に固定されている。回転軸33の右端は、カップリング34を介してモータ32に連結されている。また、回転軸33の両端側は、軸受ブロック35、36に保持された軸受に回転可能に支持されている。すなわち、駆動側磁石30は、軸受ブロック35、36内の軸受に回転可能に支持されている。軸受ブロック35、36は、取付板21の左右両端側の上面に固定され、モータ32は、底面板19の上面に固定されている。また、モータ32はモータ制御部(図示省略)に接続されており、モータ32の回転数はモータ制御部で調整可能となっている。
【0035】
振動側磁石31は、細長い略平板状に形成され、左右方向を長手方向として振動板10の下面に固定されている。具体的には、図5に示すように、振動板10に固定された2枚の固定板37と振動板10の下面との間に前後方向の両端部分が挟まれた状態で、振動板10の前後方向の中心位置に、振動側磁石31が固定されている。
【0036】
なお、本形態では、後述のように、振動時の振動体3は、左端側に配置される軸受ブロック35の上端部に接触し、また、軸受ブロック35から離れる。すなわち、本形態の軸受ブロック35は、振動体3の振動方向の一方側に配置され振動体3が振動時に接触する接触部材となっている。
【0037】
付勢手段7は、図3、図6に示すように、振動板10の下面に固定された板状の永久磁石40と、取付板21の上面に取り付けられたブロック部材41の上面に固定された板状の永久磁石42とを備えている。永久磁石40の下面に着磁される磁極と、永久磁石42の上面に着磁される磁極とは異なっている。
【0038】
この付勢手段7は、振動体3の振幅を規制するために、軸受ブロック35に接触する方向へ振動体3を付勢する。具体的には、図6に示すように、永久磁石40および永久磁石42は、振動体3の左端に固定される緩衝部材11と軸受ブロック35とが接触する状態で互いに対向するように配置されており、永久磁石40と永久磁石42との間の吸引力で、緩衝部材11と軸受ブロック35とが接触する方向に振動体3が付勢されている。
【0039】
(駆動側磁石および振動側磁石の構成)
図7は、図5に示す駆動側磁石30の着磁状態を説明するための図である。図8は、図5に示す振動側磁石31の着磁状態を説明するための図である。
【0040】
駆動側磁石30は、細長い円筒状に形成されている。この駆動側磁石30の外周面には、図7に示すように、N極とS極とが交互に着磁されている。また、駆動側磁石30の外周面には、N極とS極とが螺旋状に着磁されている。
【0041】
振動側磁石31は、上述のように、細長い略平板状に形成されている。具体的には、図8に示すように、傾斜する矩形状の複数の板片31aによって振動側磁石31が構成されている。振動側磁石31では、駆動側磁石30に対向する面がN極となっている板片31aと、駆動側磁石30に対向する面がS極となっている板片31aとが交互に配置されている。また、螺旋状に形成される駆動側磁石30の磁極の傾斜角度とほぼ同じ角度で板片31aが傾斜し、かつ、板片31aの幅は駆動側磁石30の磁極の幅とほぼ同じになっている。すなわち、振動側磁石31には、駆動側磁石30の磁極と対応するようにN極とS極とが交互に配置されている。
【0042】
なお、本形態では、緩衝部材11と軸受ブロック35とが接触する位置(図6参照)で、駆動側磁石30のN極と振動側磁石31のS極とが対向し、駆動側磁石30のS極と振動側磁石31のN極とが対向するように、振動コンベヤ1の組立時に、駆動側磁石30の磁極位置が調整される。
【0043】
図2等に示すように、駆動側磁石30は、振動側磁石31よりも大幅に長くなっている。たとえば、駆動側磁石30は、振動側磁石31の倍の長さになっている。また、本形態では、図1(A)に示すように、振動体3が右端側に配置されている状態で、トラフ9上に被搬送物2が供給される。また、被搬送物2が供給されると、図1(B)に示すように、振動体3が左端側に移動し、左端側で振動して被搬送物2が左方向へ搬送される。
【0044】
このように、本形態では、駆動側磁石30の右側部分は、支持体4に対して振動体3を所定距離、相対移動させるための移動用着磁部30aとなっている。また、駆動側磁石30の左側部分は、振動体3を振動させるための振動用着磁部30bとなっている。
【0045】
(被搬送物の搬送動作)
図9は、図1に示す振動コンベヤ1で被搬送物2を搬送する際の駆動側磁石30と振動側磁石31との関係を説明するための図である。
【0046】
以上のように構成された振動コンベヤ1では、以下のように被搬送物2が搬送される。
【0047】
まず、図1(A)に示すように、振動体3が右端側に配置されている状態で、トラフ9上に被搬送物2が供給される。被搬送物2の供給が終わると、モータ32が駆動し、駆動側磁石30が回転する。すると、図9(A)に示すように、駆動側磁石30のN極(あるいはS極)と振動側磁石31のS極(あるいはN極)との間の吸引力で、振動側磁石31は駆動側磁石30の回転に追従して左方向へ移動する。すなわち、振動側磁石31が固定された振動体3は左方向へ移動する。
【0048】
振動体3が左方向へ移動していくと、やがて、軸受ブロック35に緩衝部材11が接触する。この状態でさらに、駆動側磁石30が同方向へ回転すると、振動体3は動かないため、図9(B)に示すように、駆動側磁石30と振動側磁石31との間ですべり(脱調現象)が生じる。その後さらに、駆動側磁石30が同方向へ回転すると、駆動側磁石30のN極(あるいはS極)と振動側磁石31のN極(あるいはS極)との間の反発力、および、駆動側磁石30のN極(あるいはS極)と振動側磁石31のS極(あるいはN極)との間の吸引力で、図9(C)に示すように、駆動側磁石30のN極(あるいはS極)と振動側磁石31のS極(あるいはN極)とが対向するまで、一旦、軸受ブロック35から離れる方向(すなわち、右方向)に振動体3が移動する。
【0049】
また、図9(C)に示すように、駆動側磁石30のN極(あるいはS極)と振動側磁石31のS極(あるいはN極)が対向する位置まで、移動体3が移動すると再び、駆動側磁石30のN極(あるいはS極)と振動側磁石31のS極(あるいはN極)との間の吸引力で、振動側磁石31は駆動側磁石30に追従して左方向へ移動する。すなわち、振動体3は、左方向へ移動する。
【0050】
このように、振動体3が軸受ブロック35に向かって移動するように、駆動側磁石30を一方向へ回転させることで、駆動側磁石30と振動側磁石31との間に吸引およびすべりが繰り返しで生じ、振動体3が振動する。また、振動体3が振動すると、山積み状態にあった被搬送物2はトラフ9上でばらけながら左方向へ搬送されていく。具体的には、振動時に左方向へ移動する振動体3の速度が右方向へ移動する振動体3の速度よりも遅くなっており、この速度差を利用して、被搬送物2が左方向へ搬送されていく。なお、脱調現象が生じて、振動体3が右方向へ移動する際には、付勢手段7の作用で、振動体3が必要以上に右方向へ移動することがない。
【0051】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、軸受ブロック35に向かって振動体3が移動する方向に駆動側磁石30を回転させて、振動体3を振動させている。すなわち、軸受ブロック35に振動体3を接触させることで生じる脱調現象と、駆動側磁石30と振動側磁石31との間に生じる吸引力および反発力とを利用して、振動体3を振動させている。そのため、本形態では、振動体3を振動させるために高周波で振動する板バネが不要となり、振動コンベヤ1の耐久性を高めることが可能になる。
【0052】
また、本形態では、駆動側磁石30の外周面にN極とS極とが交互にかつ螺旋状に着磁され、振動側磁石31に駆動側磁石30の磁極と対応するようにN極とS極とが交互に配置されている。そのため、駆動側磁石30の回転数(すなわち、モータ32の回転数)を制御することで振動体3の振動周波数を容易に制御することができる。また、駆動側磁石30および振動側磁石31の磁極数を増減させることで振動の強弱を容易に調整することができる。さらに、本形態では、ガイド手段5によって、上下方向での振動体3の振動を防止することができ、その結果、被搬送物2の搬送を安定させることができる。
【0053】
本形態では、振動板10の左端面に緩衝部材11が固定されている。したがって、振動体3を振動させるために、振動体3と軸受ブロック35とが周期的に接触する場合であっても、振動体3や軸受ブロック35の損傷を抑制することができる。その結果、振動コンベヤ1の耐久性を高めることが可能になる。また、緩衝部材11は弾性を有するため、緩衝部材11の弾性力で振動体3の左右方向の振幅を大きくすることができる。
【0054】
本形態では、軸受ブロック35に当接させて、振動体3を振動させている。そのため、振動体3を振動させるための部材を別途設ける必要がなく、振動コンベヤ1の構成を簡素化することができる。
【0055】
本形態では、振動コンベヤ1は付勢手段7を備えている。そのため、振動体3の振動時に、軸受ブロック35から離れる方向に振動体3が移動する場合であっても、付勢手段7の付勢力で、振動体3が必要以上に右方向へ移動することがない。すなわち、付勢手段7の作用で、軸受ブロック35から離れる方向に移動する振動体3の動きを規制することができる。したがって、振動体3の振幅を安定させることができ、振動体3の振動周波数を安定させることができる。
【0056】
本形態では、トラフ9は、永久磁石16によって振動板10に着脱可能に取り付けられている。そのため、振動板10からトラフ9を容易に取り外すことができ、振動コンベヤ1のメンテナンス性が向上する。たとえば、被搬送物2が食品である場合には、トラフ9の洗浄を頻繁に行う必要が生じることもあるが、本形態では、振動板10からトラフ9を容易に取り外すことができるため、トラフ9の洗浄が容易になる。また、係合孔14aに挿入される磁石固定軸15の上端部分と係合孔14aとによって、トラフ9の水平方向の位置決めがされるため、トラフ9が着脱可能であっても、容易かつ適切にトラフ9を振動板10に取り付けることができる。すなわち、振動板10に対するトラフ9の適切な取付けを容易に再現することができる。
【0057】
本形態では、駆動側磁石30が、支持体4に対して振動体3を所定距離、相対移動させるための移動用着磁部30aと、振動体3を振動させるための振動用着磁部30bとを備えている。そのため、たとえば、振動コンベヤ1の右端側で被搬送物2をトラフ9上に供給し、振動体3を振動させずに右端側から左端側まで移動させた後(すなわち、トラフ9を右端側から左端側まで移動させた後)、振動コンベヤ1の左端側で被搬送物2に振動を与え、被搬送物2をばらしながら搬送することができる。このように、駆動側磁石30と振動側磁石31との間の吸引力を利用して、比較的長い距離、振動体3を振動させずに移動させることができる。すなわち、比較的長い距離、被搬送物2を振動させずに移動させることができる。そのため、トラフ9上への被搬送物2の供給位置と被搬送物2の搬送完了位置とが離れている場合であっても、振動体3の振動時間を短縮することできる。したがって、被搬送物2の損傷を抑制することができ、また、振動コンベヤ1の耐久性を高めることができる。また、短時間で、被搬送物2の搬送を完了させることが可能になり、振動コンベヤ1の使い勝手が向上する。さらに、トラフ9の全長(左右方向の長さ)を短くすることができるため、振動コンベヤ1の構成を簡素化することができる。
【0058】
(他の実施の形態)
上述した形態では、駆動側磁石30は、移動用着磁部30aと振動用着磁部30bとを備え、振動側磁石31より長くなっているが、駆動側磁石30は、振動体3を振動させるための振動用着磁部のみを備え、振動用磁石31と同等の長さに形成されても良い。
【0059】
上述した形態では、振動板10側に固定される永久磁石40と、支持体4側に固定される永久磁石42とによって、振動体3の振幅を規制する付勢手段7が構成されているが、振動板10側に固定される磁性部材と永久磁石42とによって、あるいは、永久磁石40と支持体4側に固定される磁性部材とによって、付勢手段7が構成されても良い。
【0060】
上述した形態では、永久磁石40、42間の吸引力で振動体3を付勢しているが、永久磁石同士の反発力で軸受ブロック35に接触する方向へ振動体3を付勢するように、永久磁石を配置しても良い。また、駆動側磁石30が、振動体3を振動させるための振動用着磁部のみで構成される場合には、たとえば、振動体3に一端が固定され支持体4に他端が固定されるコイルバネやゴム等の弾性部材を用いて軸受ブロック35に接触する方向へ振動体3を付勢しても良いし、板バネ等のその他のバネ部材やスポンジ等の弾性部材を用いて軸受ブロック35に接触する方向へ振動体3を付勢しても良い。
【0061】
上述した形態では、ガイド手段5を構成するリニアガイド22が後端側に配置され、ガイドローラ23が前端側に配置されているが、ガイドローラ23に代えて、リニアガイド22と同様のリニアガイドが前端側に配置されても良い。また、上述した形態では、駆動側磁石30は、細長い円筒状に形成され、回転軸33の外周側に固定されているが、回転軸33の外周面に磁極が着磁されて、回転軸33が駆動側磁石となっても良い。
【0062】
上述した形態では、振動体3を軸受ブロック35に接触させて、振動体3を振動させているが、振動体3を振動させるための振動体3の接触部材を別途設けても良い。また、上述した形態では、振動板10に緩衝部材11が固定されているが、軸受ブロック35に緩衝部材11が固定されても良い。また、振動板10に緩衝部材11が固定されずに、振動板10と軸受ブロック35とが直接、接触しても良い。
【0063】
上述した形態では、永久磁石40および永久磁石42が、振動体3の左端に固定される緩衝部材11と軸受ブロック35とが接触する状態で互いに対向するように配置されており、付勢手段7は、軸受ブロック35に接触する方向へ振動体3を付勢している。この他にもたとえば、永久磁石40および永久磁石42が、振動体3の左端に固定される緩衝部材11と軸受ブロック35との間に所定の隙間が形成される状態で互いに対向するように配置され、付勢手段7が、緩衝部材11と軸受ブロック35との間に所定の隙間が形成される位置に向かって振動体3を付勢しても良い。
【0064】
なお、上述した形態では、駆動側磁石30の外周面に、N極とS極とが螺旋状に着磁されているが、振動側磁石31とともに振動体3を振動させることができるのであれば、駆動側磁石30には、螺旋状以外の形状でN極とS極とが着磁されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態にかかる振動コンベヤの側面図であり、(A)は振動コンベヤに被搬送物が供給されている状態を示し、(B)は振動コンベヤで被搬送物が搬送されている状態を示す。
【図2】図1に示す振動コンベヤからトラフを取り外した状態を示す平面図である。
【図3】図1のE−E方向から振動コンベヤを示す図である。
【図4】図1に示すトラフと振動板との着脱部分の構成を説明するための図である。
【図5】図2のF−F方向から振動発生手段の主要部を示す図である。
【図6】図3に示す付勢手段を側面から示す図である。
【図7】図5に示す駆動側磁石の着磁状態を説明するための図である。
【図8】図5に示す振動側磁石の着磁状態を説明するための図である。
【図9】図1に示す振動コンベヤで被搬送物を搬送する際の駆動側磁石と振動側磁石との関係を説明するための図である。
【符号の説明】
【0066】
1 振動コンベヤ
2 被搬送物
3 振動体
4 支持体
5 ガイド手段
6 振動発生手段
7 付勢手段
9 トラフ(載置部材)
10 振動板(振動部材)
11 緩衝部材
16 永久磁石
30 駆動側磁石
30a 移動用着磁部
30b 振動用着磁部
31 振動側磁石
35 軸受ブロック(接触部材)
40、42 永久磁石(付勢手段の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物に振動を与えながら前記被搬送物を搬送する振動コンベヤにおいて、
前記被搬送物が載置され前記被搬送物を搬送するために振動する振動体と、前記振動体を振動可能に支持する支持体と、前記振動体を振動させる振動発生手段と、前記支持体に対して前記振動体を直線状に振動させるためのガイド手段とを備え、
前記振動発生手段は、前記振動体の振動方向を軸方向として前記支持体に回転可能に支持される駆動側磁石と、前記振動体に固定され前記駆動側磁石に対向配置される振動側磁石と、前記振動体の振動方向の一方側に配置され前記振動体が振動時に接触する接触部材とを備え、
前記駆動側磁石の外周面には、N極とS極とが交互にかつ螺旋状に着磁され、前記振動側磁石には、前記駆動側磁石の磁極と対応するようにN極とS極とが交互に配置され、
前記振動発生手段は、前記接触部材に向かって前記振動体が移動する方向に前記駆動側磁石を回転させて、前記振動体を振動させることを特徴とする振動コンベヤ。
【請求項2】
前記振動体および/または前記接触部材は、緩衝部材を備えることを特徴とする請求項1記載の振動コンベヤ。
【請求項3】
前記接触部材は、前記駆動側磁石を支持する軸受を保持する軸受ブロックであることを特徴とする請求項1または2記載の振動コンベヤ。
【請求項4】
前記振動体の振幅を規制するために、前記接触部材に接触する方向へ前記振動体を付勢する付勢手段を備えることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の振動コンベヤ。
【請求項5】
前記付勢手段は、前記振動体および/または前記支持体に取り付けられる永久磁石を備えることを特徴とする請求項4記載の振動コンベヤ。
【請求項6】
前記振動体は、前記被搬送物が載置される載置部材と、前記振動側磁石が取り付けられる振動部材とを備え、
前記載置部材は、前記振動部材に着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1から5いずれかに記載の振動コンベヤ。
【請求項7】
前記駆動側磁石は、前記支持体に対して前記振動体を所定距離、相対移動させるための移動用着磁部と、前記振動体を振動させるための振動用着磁部とを備え、前記振動側磁石よりも長く形成されていることを特徴とする請求項1から6いずれかに記載の振動コンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−274852(P2009−274852A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129515(P2008−129515)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(391019289)マルヤス機械株式会社 (32)
【Fターム(参考)】