振動刺激、触覚刺激、温度刺激によって患者を治療する装置
本発明は、振動刺激、触覚刺激、温度刺激(20)の少なくとも1種類によって患者を治療する装置(100)に関する。この装置(100)は、第1の刺激を生成する第1の刺激ユニット(11)と、第2の刺激を生成する第2の刺激ユニット(12)とを含んでいる。刺激は、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類であり、刺激それぞれが、平均して1〜60Hzの周波数で繰り返される。刺激は、少なくとも一部が異なるタイミングで生成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類を使用して患者を治療する装置および方法に関する。
【0002】
本発明は、特に、ニューロンの同期性が高まる病気を治療する刺激装置および刺激方法に関する。本発明を使用することによって、特に、脳の病気、例えば、運動機能障害、パーキンソン病、本態性振戦、ジストニア、偏頭痛、緊張性頭痛、痙性、脳卒中および脳梗塞後の機能障害、神経因性疼痛、慢性疼痛、神経痛、切断術後の疼痛、振戦、および頭部外傷後のその他の機能障害を、治療することができる。また一方で、胃腸の病気(例えば過敏性腸症候群)も治療することができる。この点において、有痛性痙攣および不十分な腸運動に対する効果は未確認である。潰瘍性大腸炎およびクローン病の場合、本発明による装置を使用した治療によって、抗痙攣性および疼痛緩和の効果をもたらすことができる。さらには、本発明による装置を使用することで、気管支喘息、心臓虚血、および末梢動脈閉塞性疾患を治療することができる。
【背景技術】
【0003】
前述の病気を治すための唯一の治療法(存在する場合)は、薬理療法または定位療法(stereotactic therapy)である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“Lehrbuch der Anatomie des Menschen. Dargestellt unter Bevorzugung funktioneller Zusammenhange. 3. Bd. Nervensystem, Haut und Sinnesorgane”, [Textbook of Human Anatomy. Presented With Emphasis on Functional Relationships. 3rd Vol., Nervous System, Skin and Sensory Organs”], Urban und Schwarzenberg, Munich1964
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薬理療法の効果は、一般には時間的な制限がある。定位療法では、例えば脳ペースメーカーを埋め込むときの動脈出血の危険性のような関連する危険性が伴う。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような背景に対して、請求項1による装置、請求項12による、請求項に請求された装置の使用、請求項13および請求項15によるさらなる装置、請求項17による方法が、記載されている。本発明のさらなる有利な発展形態および実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
以下では、本発明について、実施形態に基づき、図面を参照しながら例示的に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態による、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類を生成する装置100の概略図
【図2】装置100を使用して実行される刺激方法の概略図
【図3A】振動刺激の概略図
【図3B】振動刺激の概略図
【図3C】振動刺激の概略図
【図3D】振動刺激の概略図
【図4】触覚刺激の概略図
【図5A】温度刺激の概略図
【図5B】温度刺激の概略図
【図5C】温度刺激の概略図
【図6】意図された使用時における装置100の概略図
【図7】装置100を使用して実行される刺激方法の概略図
【図8】装置100を使用して実行される刺激方法の概略図
【図9】装置100を使用して実行される刺激方法の概略図
【図10】さらなる実施形態による、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類を生成する装置200の概略図
【図11A】振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を生成する刺激部の概略図
【図11B】振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を生成する刺激部の概略図
【図11C】振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を生成する刺激部の概略図
【図12A】振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を生成する刺激部の概略図
【図12B】振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を生成する刺激部の概略図
【図13A】振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を生成する刺激部の概略図
【図13B】振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を生成する刺激部の概略図
【図13C】振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を生成する刺激部の概略図
【図14A】温度刺激を生成する刺激部の概略図
【図14B】温度刺激を生成する刺激部の概略図
【図14C】温度刺激を生成する刺激部の概略図
【図15A】温度刺激を生成する刺激部の概略図
【図15B】温度刺激を生成する刺激部の概略図
【図15C】温度刺激を生成する刺激部の概略図
【図16】刺激方法の概略図
【図17】刺激方法の概略図
【図18】さらなる実施形態による、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類を生成する装置300の概略図
【図19A】さらなる実施形態による、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類を生成する装置300の概略図
【図19B】さらなる実施形態による、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類を生成する装置300の概略図
【図19C】さらなる実施形態による、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類を生成する装置300の概略図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類を使用して患者を非侵襲的に治療する装置100を概略的に示している。図1に示した実施形態における装置100は、第1の刺激を生成する第1の刺激部11と、第2の刺激を生成する第2の刺激部12と、第3の刺激を生成する第3の刺激部13と、第4の刺激を生成する第4の刺激部14と、を備えている。図1に示した実施形態は、単なる例示であることを理解されたい。この実施形態に代えて、装置100は、任意の望ましい数N(N=2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,...)の刺激部を含んでいてもよい。さらに、装置100は制御部10を有し、この制御部10は、適切な接続線を介して、または無線を介して刺激部11〜14に接続されており、刺激の生成を制御する。刺激部11〜14のうちの1つまたは複数、あるいはすべての刺激部11〜14に、制御部10を組み込むこともできる。
【0010】
刺激部11〜14それぞれは、振動刺激、触覚刺激、および温度刺激からなる群のうちの1つまたは複数の刺激を生成することができる。刺激部11〜14は、患者の皮膚の上に配置できるように設計されている。刺激部11〜14は、病気に応じて、あるいは患部に応じて、患者の皮膚の上に適切な配置構成で(例えば患者の腕、脚、手、足のうちの1つまたは複数に)固定される。症状に応じて、振動刺激、触覚刺激、および温度刺激のそれぞれは、個別に、または組み合わせて、皮膚に印加される。
【0011】
複数の刺激部11〜14を使用することで、個々の刺激部11〜14を介しての刺激を時間的および空間的に調整しながら、皮膚のさまざまな受容領域を刺激することができる。皮膚組織に印加された刺激が神経伝達物質を介してさまざまな対象領域(例えば脊髄や脳内に位置する領域)に送られるように、刺激部11〜14を患者の皮膚の上に配置することができる。したがって、装置100を使用することにより、脊髄もしくは脳またはその両方の中の複数の異なる対象領域を、同じ刺激期間の中で、場合によっては異種の刺激、もしくはタイミングをずらせた刺激、またはその両方によって、刺激することができる。
【0012】
図2は、装置100を使用して実行できる刺激方法を概略的に示している。図2では、刺激部11〜14を介して印加される刺激20を、時間tに対して示してある。
【0013】
図2に示した方法において、刺激部11〜14それぞれは、刺激部11〜14の各部が取り付けられている皮膚の受容領域に、周期的に刺激20を印加する。刺激部11〜14それぞれによって生成される刺激20が繰り返される周波数fstim=1/Tstim(Tstimは継続期間)は、1〜60Hzの範囲内、特に、30〜60Hzの範囲内、あるいは1〜30Hzの範囲内、1〜20Hzの範囲内、または5〜20Hzの範囲内であるが、より低い値またはより高い値を採用することもできる。個々の刺激20の持続時間Dstimは、特に、刺激のタイプに依存することができる。同様に、図2に示した縦座標も、刺激20のタイプに依存する。例えば、振動刺激または触覚刺激の場合、縦座標を時間tに対する刺激要素の変位lとすることができ、温度刺激の場合、縦座標を温度Tとすることができる。異なる刺激部11〜14を介して印加される刺激20は、同じ刺激または異なる刺激とすることができる。
【0014】
図3A、図3B、図3Cおよび図3Dは、個々の振動刺激20のさまざまな実施形態を示す。時間tに対する刺激要素の変位lを示している。刺激要素は、図3Aの時刻t1において、休止位置から変位し、患者の皮膚に押し込まれる。皮膚の表面の位置は、破線21によって示してある。刺激要素が皮膚に接触すると、30〜300Hzの範囲内の周波数fvib=1/Tvib(Tvibは振動刺激の継続期間)で周期的な振動刺激が印加される。刺激要素は、周波数fvib=300Hzにおいて約2Nの力をかけることができる。振動刺激20の持続時間Dstimは、10〜500msの範囲内とすることができる。刺激の持続時間Dstimは、特に、以下の範囲内である。
【数1】
【0015】
この式において、Nは、刺激部の数である。例えば、Tstim=1秒、N=4の場合、刺激の持続時間Dstimは10ms〜250msの範囲内となる。しかしながら、時間的に重なる刺激を使用することもできる。
【0016】
時刻t2において、刺激要素が再び休止位置に動き、休止位置では刺激要素は皮膚に接触していない。図3Aに示したように、振動刺激20は、矩形刺激または正弦波刺激とすることができるが、別の形状をとることもできる。図3Aに示す、刺激要素を皮膚に押し込むための変位l1は、0.5〜3mmの範囲内とすることができる。振動時の刺激要素の変位l2は、0.1mm〜0.5mmの範囲内とすることができる。
【0017】
図3Bは、図3Aに示した振動刺激20のバリエーションを示している。図3Bに示した実施形態においては、刺激要素が患者の皮膚に常に接触している。刺激の持続時間Dstimの間、上述した振動刺激20が印加される。
【0018】
図3Cは、振動刺激20のさらなるバリエーションを示している。図3Aの振動刺激20とは異なり、刺激の持続時間Dstimの間に刺激要素は初期位置に戻り始め、時間の経過とともに振動によって皮膚が押し込まれる深さが減少していき、最終的に刺激要素は皮膚から完全に離れる。刺激要素の戻りは、例えば直線または非線形曲線22(例:指数曲線)に沿うようにすることができ、これらの線上に刺激要素の振動fvibが重ね合わされる。図3Cに示した例においては、各パルスの立ち下がりが曲線22に達している。隣接するパルスは、固定的なプリセット高さl2を有し、すなわち各パルスの立ち上がりの高さがl2である。
【0019】
図3Dは、図3Cの振動刺激20のバリエーションを示している。この場合、曲線22は0の線(l=0)まで戻らず、0の線からの固定的なプリセットオフセットΔLを有する。
【0020】
図4は、触覚刺激20の実施形態を示している。刺激要素は、時刻t1に患者の皮膚に押し込まれ、刺激の持続時間Dstimの間そのままであり、時刻t2に再び戻る。触覚刺激20による刺激の持続時間Dstimは、10〜500msの範囲内である。特に、刺激の持続時間Dstimは、上記の(1)式によって与えられる範囲内である。しかしながら、時間的に重なる刺激を使用することもできる。
【0021】
図5A、図5B、および図5Cは、個々の温度刺激20のさまざまな実施形態を示している。図5Aおよび図5Bに示した実施形態においては、刺激要素が温度Ttempまで加熱または冷却される。図5Bに示したように、温度Ttempは、温度刺激20を印加する直前に得られればよい。この場合、刺激要素は、刺激が中断している間は温度T0(例えば室温に一致する)を有する。これに代えて、刺激要素を一定の温度Ttempに維持してもよい。
【0022】
図5Aによる実施形態においては、時刻t1において、加熱または冷却された刺激要素が患者の皮膚に当てられ、刺激の持続時間Dstim全体にわたり、そのままにされる。図5Bによる実施形態においては、これとは異なり、刺激の持続時間Dstimの間、刺激要素は周波数fthermoで周期的に皮膚に当てられた後、再び離れる。周波数fthermo=1/Tthermoは、1〜10Hzの範囲内とすることができる(Tthermoは温度刺激の継続期間)。
【0023】
図5Cに示した温度刺激20は、図5Bの温度刺激20に実質的に対応する。違いは、図5Cの温度刺激20が無接触式に生成されることである。この場合、刺激温度Ttempは、電磁放射によって(例えば赤外線光によって)発生する。さらには、(例えば赤外線放射体のオン/オフを切り替えることによって)電磁放射は、周波数fthermo=1/Tthermoで周期的に変化する。
【0024】
温度刺激の場合、刺激の持続時間Dstimは、10〜500msの範囲内である。特に、刺激の持続時間Dstimは、上記の(1)式によって与えられる範囲内である。また、時間的に重なる刺激も使用できる。温度Ttempは、22〜42℃とすることができる。温度T0は、一般には患者の体温である。周波数fthermoは、1〜10Hzの範囲内とすることができるが、この範囲外とすることもできる。
【0025】
個々の刺激20が複数のタイプの刺激を含んでいることも考えられる。例えば、図3Aに示した振動刺激20は、刺激を印加する刺激要素が加熱または冷却される場合、同時に温度刺激とすることができる。さらに、図3Aの振動刺激20は、同時に触覚刺激でもある(皮膚に刺激要素が当たることによって触覚受容器が活性化される)。
【0026】
装置100は、特に、ニューロンの同期性が高まる病気を治療する目的に使用することができる。特に、装置100を使用して、脳の病気、例えば、運動機能障害、パーキンソン病、本態性振戦、ジストニア、偏頭痛、緊張性頭痛、痙性、脳卒中および脳梗塞後の機能障害、神経因性疼痛、慢性疼痛、神経痛、切断術後の疼痛、振戦、および頭部外傷後のその他の機能障害を、治療することができる。また一方で、装置100は、胃腸の病気(過敏性腸症候群など)も治療することができる。さらには、潰瘍性大腸炎、クローン病、気管支喘息、心臓虚血、および末梢動脈閉塞性疾患を、装置100を使用して治療することができる。
【0027】
前述した病気は、特定の回路内に結合されている神経集合体の生体伝達の障害によって発症することがある。この点において、ニューロン集団(neuronal population)は、病的なニューロン活動、場合によってはニューロン活動に関連付けられる異常な結合性(網構造)を、絶え間なく発生させる。この場合、多数のニューロンが同期して活動電位を形成する。すなわち、関与するニューロンが過度に同期して発火する。さらには、病的なニューロン集団が振動性のニューロン活動を示す。すなわちニューロンが律動的に発火する。神経疾患または精神疾患の場合、正常でない神経集合体の病的な律動的活動の平均周波数は、およそ1〜30Hzの範囲内であるが、この範囲外であることもある。しかしながら健康な人では、ニューロンの発火は質的に異なる(例えば相関性がない)。
【0028】
刺激部11〜14によって印加される刺激は、皮膚またはその下層に位置する受容器が受け取り、神経系に送られる。受容器としては、例えば、メルケル細胞、ルフィニ小体、マイスナー小体、毛包受容器が挙げられ、これらは特に触覚刺激20の受容器として機能する。振動刺激20は、主として固有受容覚を対象とする。振動刺激20は、患者の皮膚、筋肉、皮下組織、腱に位置する受容器が受け取ることができる。振動刺激に対する受容器の例として、振動の感覚および加速度を伝達するパチニ小体が挙げられる。温度刺激は、皮膚の温度受容器が受け取る。温度受容器は、温受容器(熱受容器、温センサ、熱センサとも称する)および冷センサ(冷受容器とも称する)である。冷センサは、人の皮膚の浅い位置に存在しており、熱受容器はこれよりいくらか深い。
【0029】
刺激要素11〜14によって生成される刺激20が対応する受容器によって受け取られ、神経伝達物質を介して、脳または脊髄内の病的に同期した振動性の活動を有するニューロン集団に伝えられると、刺激要素11〜14によって生成される刺激20は、ニューロン集団内の刺激されたニューロンのニューロン活動の位相がリセットされるように設計されている。刺激されたニューロンの位相は、リセットされることで、現在の位相値とは無関係に特定の位相値(例えば0゜)に設定される。したがって、病的なニューロン集団のニューロン活動の位相が直接的な刺激によって制御される。
【0030】
さらには、複数の刺激要素を使用することで、病的なニューロン集団を、複数の異なる位置において刺激することが可能である。すなわち、皮膚の異なる位置に印加された刺激20が、脳または脊髄内の異なる位置に伝えられる。これによって、病的なニューロン集団のニューロン活動の位相を、複数の異なる刺激位置において異なるタイミングでリセットすることが可能となる。結果として、集団内のニューロンがリセット前は同期して活性化され、周波数および位相が同じであった、病的なニューロン集団が、複数のサブ集団に分割される。サブ集団の中では、ニューロンは依然として同期しており同じ病的な周波数で発火するが、各サブ集団において、ニューロン活動に関連する固有の位相が、刺激によって与えられる。
【0031】
ニューロン間に病的な相互関係が存在することにより、刺激によって生じた少なくとも2つのサブ集団の状態は安定的ではなく、ニューロン集団全体としては、完全な脱同期状態(ニューロンは無相関に発火する)に急速に近づく。したがって、刺激20を印加した直後には、望ましい状態(すなわち完全な脱同期)は得られないが、通常、病的な活動の2〜3周期以内、場合によっては1周期以内に、そのような状態になる。
【0032】
上述したタイプの刺激の場合、最終的に望まれる脱同期が可能であるのは、ニューロン間の相互作用が病的に高いためである。この点において、病的な同期の原因である自己組織化プロセス(self-organization process)を利用している。集団全体が、位相の異なるサブ集団に分割された後、この自己組織化プロセスによって脱同期がもたらされる。ニューロン間の病的に高い相互作用が存在しなければ、効果的な脱同期は起こらない。
【0033】
さらには、装置100を使用した刺激によって、機能不全の神経回路網の結合性を再編成することができ、したがって、持続する治療効果をもたらすことができる。
【0034】
図6は、装置100を使用して、病的に活性化されるニューロン集団30の複数のサブ集団を刺激する状況を概略的に示している。振動刺激20、触覚刺激20、温度刺激20のうちの少なくとも1種類によって、刺激部11〜14を介して、皮膚15の異なる位置において、それぞれの受容器が刺激される。刺激部11,12,13,14によって印加される刺激20は、ニューロン集団30の異なるサブ集団31,32,33,34に伝えられ(刺激部11からの刺激がサブ集団31に、刺激部12からの刺激がサブ集団32に、刺激部13からの刺激がサブ集団33に、刺激部14からの刺激がサブ集団34に伝えられる)、これらのサブ集団の位相がそれぞれの異なるタイミングでリセットされ、これによってニューロン集団30全体の脱同期が達成される。
【0035】
脳または脊髄の特定の領域を刺激することが可能であるのは、体の領域と、脳または脊髄の特定の領域との体部位の関連性(somatotopic association)による。刺激部11〜14は、例えば、患者の足、下肢、および大腿部に、あるいは、手、前腕、および上腕に、取り付けることができる。神経経路の体部位の関連性によって、それぞれの位置に印加される刺激により異なるニューロンが刺激される。脳の領域と皮膚の位置との体部位の関連性については、例えば、A.Benninghoffらの非特許文献1に記載されている。
【0036】
病的に同期したニューロン集団30のサブ集団31〜34の位相を異なるタイミングでリセットすることによってニューロン集団30全体の脱同期を達成する方法は、さまざまな手順をとることができる。例えば、ニューロンの位相のリセットをもたらす刺激20を、複数の異なる刺激部11〜14によって、皮膚のそれぞれの受容野にタイミングをずらせて出力することができる。さらには、例えば位相をずらして、あるいは異なる極性において、刺激を印加することができ、これらによっても、結果として複数の異なるサブ集団31〜34の位相が異なるタイミングでリセットされる。
【0037】
図7は、上述した目的に適する刺激方法を概略的に示している。図7では、刺激部11〜14を介して印加される刺激20を、上下に重ねて時間tに対して示してある。刺激20としては、例えば図3A〜図5Cに示した振動刺激、触覚刺激、および温度刺激を使用することができる。図7に示したダイアグラムは、周期的に繰り返される長さTstimの第1の期間に分割されている。長さTstimの第1の期間が繰り返される周波数fstim=1/Tstimは、1〜60Hzの範囲内、特に、30〜60Hzの範囲内、あるいは1〜30Hzの範囲内、1〜20Hzの範囲内、または5〜20Hzの範囲内とすることができ、ただしこれらより低い値または高い値とすることもできる。
【0038】
長さTstimの第1の期間は、さらに、長さTstim/4の第2の期間に分割されている。N個の刺激部を介して刺激するとき、第1の期間を、長さTstim/NのN個の第2の期間に分割することができる。
【0039】
実施形態によると、刺激部11〜14それぞれは、第1の期間内に最大で1つの刺激20を生成する。異なる刺激部11〜14からの刺激20は、連続する第2の期間内に生成されることができる。
【0040】
図7に示した実施形態においては、刺激部11〜14それぞれは、周波数fstimにおいて正確に周期的に刺激20を印加する。複数の異なる刺激部11〜14を介しての刺激20の印加は、個々の刺激部11〜14の間の時間遅延がTstim/4であるように行われる。
【0041】
刺激部がN個である場合、連続する2つの刺激20の間の時間遅延は、例えば、周期1/fstimのN分の1、すなわち1/(N×fstim)=Tstim/Nとすることができる。すなわち、特に、連続する2つの刺激20の開始時刻の間に時間Tstim/Nが経過する。
【0042】
周波数fstimは、例えば、対象の神経回路網の病的な律動的活動の平均周波数のオーダーとすることができる。ニューロンの同期性が高まる病気の場合、この平均周波数は、一般に1〜30Hzの範囲内であるが、この範囲外となることもある。なお、この点において、正常でないニューロンが同期して発火する周波数は、通常では一定ではなく、ある程度変動することがあり、さらには、患者ごとに個人差が見られることに留意されたい。
【0043】
図7に示した正確な周期的な刺激パターンを基本として、さまざまなバリエーションを導入することができる。例えば、同一の刺激部によって生成される連続する刺激20の間の時間遅延Tstimは、必ずしもつねに同じ大きさでなくてもよく、Tstimを中心として±10%、または±5%、または±3%の範囲内で変化させることができる。さらには、異なる刺激部によって生成される連続する2つの刺激20の間の時間間隔も、Tstim/Nを中心として±10%、または±5%、または±3%の範囲内で変化させることができる。個々の刺激20の間の時間間隔を、互いに異なる長さとして選択することができる。さらには、患者の治療中に遅延時間を変化させることもできる。生理学的刺激信号の伝達時間に基づいて遅延時間を調整することもできる。
【0044】
さらには、刺激20の印加中に中断を設けることができ、中断の間は刺激が発生しない。図8は、このような中断を一例として示している。中断の持続時間は、任意の長さとすることができ、特に、期間Tstimの整数倍とすることができる。さらには、任意の所望の回数だけ刺激した後に中断を配置することができる。例えば、長さTstimのn個の連続する期間において刺激を実行した後、長さTstimのm個の期間において、刺激の存在しない中断を配置することができる。この場合、nおよびmは小さな整数(例えば、1〜10の範囲内)である。このパターンを、そのまま継続する、あるいは周期的、または確率論的もしくは決定論的に、または確率論および決定論の混合型として修正することができる。
【0045】
図7に示した正確な周期的な刺激パターンを変化させるためのさらなる可能な方法として、時間軸に沿った個々の刺激20の並びを、確率論的もしくは決定論的に、または確率論および決定論の混合型として、変化させる。
【0046】
さらには、図9に一例として示したように、刺激部11〜14が刺激20を印加する順序を、期間Tstim(またはそれ以外の時間間隔)を単位として変化させることができる。このランダム化は、確率論的もしくは決定論的に、または確率論および決定論の混合型として、行うことができる。
【0047】
図9に示したランダム化を、図8に示した刺激の形態と組み合わせることができる。例えば、長さTstimのn個の連続する刺激期間のそれぞれにおいてランダム化を繰り返すことができ、または、長さm×Tstimの中断それぞれの後にランダム化を行い、それに続くn個の刺激期間では、刺激部11〜14が一定の順序で刺激20を印加する。
【0048】
さらには、期間Tstim(または別の時間間隔)を単位として、刺激部11〜14のうちの特定の数のみを使用して刺激することが可能であり、刺激を行う刺激部を、時間間隔ごとに変化させることができる。この変化も、確率論的もしくは決定論的に、または確率論および決定論の混合型として、行うことができる。
【0049】
刺激の開始は、例えば遠隔操作によって患者が行うことが考えられる。この場合、患者は、例えば、外部の送信器によって所定の時間長(例:60分)の間、刺激を有効にすることができる。または患者は、刺激の開始と終了をそれぞれ独立して操作することができる。
【0050】
装置100は、例えば、いわゆる開ループモードで動作させることができ、開ループモードでは、刺激部11〜14が皮膚組織に出力される所定の刺激20を生成するように、制御部10が刺激部11〜14を制御する。さらには、装置100を発展させて図10に示した装置200とすることもできる。装置200は、いわゆる閉ループシステムを表している。装置200は測定部16をさらに含んでおり、測定部16は、患者において取得される1種類または複数の測定信号を生成し、この信号を制御部10に転送する。制御部10は、測定部16によって取得された測定信号を使用して、刺激部11〜14を制御する。
【0051】
測定部16は、非侵襲的センサとすることができ、例えば、脳電図(EEG)電極、脳磁図(MEG)センサ、加速度計、筋電図(EMG)電極、あるいは血圧や呼吸、皮膚の電気抵抗を求めるセンサとすることができる。さらには、測定部16を、1つまたは複数のセンサの形で患者の体に埋め込むことができる。例えば、脳深部の電極、硬膜下または硬膜外の脳電極、皮下EEG電極、硬膜下または硬膜外の脊髄電極は、侵襲的センサとして機能することができる。さらには、末梢神経に取り付けられる電極をセンサとして使用することもできる。特に、刺激する対象領域または関連する領域におけるニューロン活動(すなわち例えば図6に概略的に示したニューロン集団30のニューロン活動)を、測定部16によって測定することができる。
【0052】
制御部10と測定部16との協働に関して、さまざまな実施形態が考えられる。例えば、制御部10は、必要時に刺激を有効にすることができる。この目的のため、制御部10は、1種類または複数の病的な状態の存在もしくは特性またはその両方を、測定部16によって取得される測定信号を使用して検出する。例えば、ニューロン活動の振幅または活動量が測定され、所定のしきい値と比較されることができる。所定のしきい値を超えた時点でただちに刺激が開始されるように、制御部10を設計することができる。測定部16によって取得された測定信号を使用して刺激のタイミングを制御することに代えて、またはこれに加えて、制御部10は、病的な状態の特性を用いて、刺激の強さを設定することができる。例えば、1つまたは複数のしきい値を予め決定し、測定された信号の振幅または信号量が特定のしきい値を超えた時点で、制御部10は、刺激20の特定の強さ(例えば、振動刺激の場合には特定の周波数fvibまたは押し込み深さl2)を設定する。
【0053】
さらには、測定部16によって取得される測定信号は、刺激20としてそのまま、またはオプションとして使用され、1つまたは複数の処理ステップの後、制御部10によって刺激部11〜14のうちの1つまたは複数に送られる。例えば、測定信号は、増幅され、処理され、オプションとして、時間遅延と、線形/非線形のオフセットステップと、合成ステップとによる数学的オフセット処理を行った後(例えば測定信号を混合した後)、刺激部11〜14の少なくとも1つに送られる。この点において、オフセットモードは、病的なニューロン活動が打ち消され、病的なニューロン活動の減少につれて刺激信号も同様に消失する、または強さが少なくとも相当に減少するように、選択される。(送られる)測定信号は、例えば図7による個々の刺激部11〜14を介しての刺激プロセス(Tstim/4の時間遅延を伴う)に同様に適用することができる。
【0054】
このタイプの刺激、すなわち、患者において取得された測定信号が、ニューロン集団の脱同期を目的として患者の体にフィードバックされる場合、一般的には、1つの刺激部のみを使用して刺激が生成される。しかしながら、より多くの任意の望ましい数の刺激部を設けることもできる。
【0055】
測定信号は、刺激20を生成するために例えば増幅され、オプションとして、時間遅延と、線形/非線形のオフセット処理ステップによる数学的オフセット処理の後(例:測定信号を混合した後)に使用することで刺激部を電気的に制御することができる。刺激部は、測定信号を、振動刺激、触覚刺激、または温度刺激に変換する。この点において、オフセットモードは、病的なニューロン活動が打ち消され、ニューロン活動の減少につれて、印加される刺激も同様に消失するように、または強さが少なくとも相当に減少するように、選択される。
【0056】
以下では、測定部16によって得られる測定信号を刺激部の制御に使用する前に処理するための線形処理ステップおよび非線形処理ステップについて説明する。測定信号を非線形処理する場合、刺激されるサブ集団におけるニューロン活動の位相がリセットされるのではなく、同期の飽和プロセスに影響を与えることによって、病的な活動を有するニューロン集団における同期が抑制される。
【0057】
測定部16によって得られる測定信号を線形処理する場合、測定信号に対して、例えば、フィルタリング、増幅、時間遅延の導入、のうちの1つまたは複数を行うことができ、その後、このように処理した信号が刺激部に送信され、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類に変換される。一例として、測定信号はEEG電極によって取得され、対象領域における病的な活動を表すものと想定する。したがって、測定信号は、1〜30Hzの範囲内の周波数を有する正弦波振動である。一例として、測定信号26は5Hzの周波数を有するものと想定する。5Hz程度の通過帯域を有する帯域通過フィルタによって測定信号26がフィルタリングされ、刺激部を制御するのに適したレベルとなるように、増幅器によって増幅される。次いで、このようにして得られる増幅された正弦波振動は、刺激部を制御するために使用される。刺激部が振動刺激または触覚刺激を印加する場合、刺激要素は周波数5Hzの正弦波運動を行う。
【0058】
N個の刺激部を使用して刺激する場合、測定信号を対応する刺激部に送る前に、図7に示したように、測定信号に対して時間遅延Tstim/Nを導入することができる。
【0059】
以下では、測定部16によって得られる測定信号を、刺激として使用する前に非線形処理する方法について、例を通じて説明する。線形処理の場合とまったく同様に、この場合も、測定信号に対して、フィルタリング、増幅、時間遅延の導入、のうちの1つまたは複数を行うことができる。
【0060】
処理前の刺激S(t)の等式は、以下である。
【数2】
【0061】
等式(2)において、Kは、適切に選択される増幅係数であり、Z−(t)は、測定信号の平均状態変数である。Z−(t)は複素変数であり、次のように表すことができる。
【数3】
【0062】
この式において、X(t)は、例えば神経系の測定信号とすることができ、iは虚数単位である。観察される周波数は10Hz=1/100ms=1/Tαのオーダーであるため、虚部Y(t)は、X(t−τα)によって近似することができる。例えばτα=Tα/4である。結果として、以下の式となる。
【数4】
【0063】
等式(4)は、次のように書き直すことができる。
【数5】
【0064】
等式(5)の実部を、刺激として使用する。
【数6】
【0065】
図11A〜図11Cは、例えば図3A〜図4に示した振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を生成する刺激部を実施するためのさまざまな可能な形態を概略的に示している。刺激部は、例えば棒状の刺激要素40を含んでおり、棒の一端によって患者の皮膚15が刺激される。刺激要素40は、電気機械変換器41(アクターまたはアクチュエータ)によって駆動され、この電気機械変換器41は、電気エネルギを刺激要素40の運動に変換する。電気機械変換器41としては、DCモータ、ボイスコイル、圧電変換器、あるいは電気活性高分子(EAP)(電圧の印加時に形が変化する)を備えた変換器が適している。
【0066】
電気機械変換器41は、刺激要素40が皮膚の表面に対して垂直に(図11Aを参照)、または平行に(図11Bを参照)変位するように設計することができる。または、刺激要素40の動きは、任意の別の望ましい経路をとることもできる。この例として、図11Cは、刺激要素40の振り子の変位を示している。
【0067】
皮膚の表面に接触して刺激を生成する刺激要素40の端部は、例えば、半球の形状を有する(図12Aを参照)、または凹凸状の(nub-like)表面を有する(図12Bを参照)、または別の好適な形状を有することができる。
【0068】
図13A〜図13Cは、振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を印加する刺激要素の実施形態を、透視図として(図13Aを参照)、下からの平面図として(図13Bを参照)、および断面図として(図13Cを参照)、示している。この刺激要素は、電気機械変換器として圧電アクチュエータ41を含んでいる。圧電アクチュエータ41の変位は、意図する目的において十分ではないため、圧電アクチュエータ41の変位を増幅するメカニズムを設けることができる。ここでは、一例として、圧電アクチュエータ41の動きを増幅するレバーアーム42を示してある。この場合、レバーアームは、細長い可撓性ばね42であり、一方の端部が刺激要素のハウジング43に固定されており、他方の端部に刺激要素40が取り付けられている。圧電アクチュエータ41が可撓性ばね42の上面を押すと、圧電アクチュエータ41の変位に対応して、可撓性ばね42の下面に取り付けられている刺激要素40が動き(その振幅は幾何学的な配置構造によって増幅される)、患者の皮膚に振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を印加する。皮膚に接触する刺激要素40の下面は、別の幾何学形状および寸法を有することができる。例えば、刺激要素40の下面を、平たい形状、丸みを帯びた形状、または不規則な形状とすることができる。
【0069】
さらには、圧電アクチュエータ41および増幅メカニズムを収容している、刺激要素のハウジング43の中に、電子機器および接続端子のための空間44を設けることができる。さらには、ハウジング43の下面に調節リング45が取り付けられており、この調節リング45は、ハウジング43にねじ込まれており、刺激要素が休止位置にあるとき刺激要素40が刺激部の下面から突き出す高さを調整できるようにしている。動作時、刺激部の下面を患者の皮膚に密着させ、例えば適切なカフ(cuff)によって患者の体に固定する。カフに加えて、またはカフに代えて、刺激部を片面または両面の医療用粘着テープによって患者の皮膚に固定することができる。ハウジング43は、電圧などの危険から患者を保護する。
【0070】
図14A〜図14Bは、例えば図5A〜図5Cに示した温度刺激を生成するように設計されたさまざまな刺激部を概略的に示している。図14Aに示した刺激部は、無接触式に機能し、赤外線LED50の光によって皮膚を加熱する。
【0071】
図14Bおよび図14Cは、患者の皮膚に接触することで温度刺激を印加する刺激部を示している。図14Bに示した刺激部は、図11Aの刺激部と実質的に同じ構成要素として、電気機械変換器41および棒状の刺激要素40を含んでいる。図14Bの刺激部は、これらに加えて、刺激要素を加熱または冷却する加熱要素(例えば加熱ループの形)または冷却要素またはその両方を有する。温度刺激は、刺激要素40の運動、すなわち刺激要素40が皮膚に接触して再び離れる動作を繰り返すことによって、発生する。刺激要素40の温度は、刺激の全期間にわたり一定とすることができる。
【0072】
これに代えて、図14Cに示したように、加熱可能または冷却可能な刺激要素40を、刺激の全期間にわたり患者の皮膚15に接触させることができる。この場合、刺激要素40の温度を時間に対して変化させることによって温度刺激が生成される。この実施形態においては、電気機械変換器は必ずしも要求されない。
【0073】
図15A〜図15Cは、温度刺激を印加する刺激要素の実施形態を、透視図として(図15Aを参照)、下からの平面図として(図15Bを参照)、および断面図として(図15Cを参照)、示している。この刺激部は、棒状の刺激要素40を含んでおり、刺激要素40の下端部は加熱可能もしくは冷却可能またはその両方である。刺激要素40は、その上端部においてカムディスク51によって駆動される。刺激時、DCモータ52によってカムディスク51が回転する。カムディスク51の下面に取り付けられているカム53によって、刺激要素40が下方に変位する。次いで、刺激要素40は、復元ばね54によって開始位置に戻る。このメカニズムによって、カムディスク51の回転運動が刺激要素40の直線運動に変換される。上述したように、刺激要素40は、特定の時間の間、患者の皮膚に接触している、またはカムディスク51の回転によって皮膚に接触して再び離れる動作を周期的に繰り返す。
【0074】
刺激部の構成要素は、ハウジング55の中に収容することができる。ハウジング55の中には、電子回路および接続端子のための空間56を設けることができる。さらには、ハウジング55の下面に調節リング57を取り付けることができ、この調節リング57は、ハウジング55にねじ込まれており、刺激要素が休止位置にあるとき刺激要素40が刺激部の下面から突き出す高さを調整できるようにしている(調節リングによって、刺激要素40が休止位置にあるとき調節リングの下面より上に完全に隠れるようにすることもできる)。動作時、刺激部の下面が患者の皮膚に密着し、例えば適切なカフによって患者の体に固定される。カフに加えて、またはカフに代えて、刺激部を片面または両面の医療用粘着テープによって患者の皮膚に固定することができる。ハウジング55は、電圧などの危険から患者を保護する。
【0075】
本出願において記載されている刺激部は、患者に単体として固定することもでき、または、いくつかの刺激部を1つのモジュールに統合することもできる。例えば、モジュールは、複数の刺激部が固定されたカフを含んでいることができる。このカフを、患者の腕または脚に固定することができる。図16は、それぞれが4つの刺激部を含んでいるモジュールを合計N個使用して実行することのできる刺激方法を示している。図16の左端に示した刺激方法において、刺激期間Tstimの開始時に、すべての刺激部が、振動刺激20、触覚刺激20、または温度刺激20を印加する。図16の中央に示した刺激方法においては、モジュールの4つの異なる刺激部の刺激20が、それぞれTstim/4ずれている。この場合、長さTstim/4の時間長それぞれにおいて、各モジュールの1つの刺激部が刺激20を印加する。図16の右端に示した刺激方法においては、モジュールの4つの刺激部が刺激20を同時に生成するが、モジュールごとに刺激20が互いにずれている。
【0076】
図16に示した刺激方法すべてにおいて、刺激中に任意の望ましい中断を入れることもできる。刺激の中断の長さは、一般には、1つまたは複数の刺激期間Tstimである。図17は、一例としてこの状況を示している。図17に示した刺激方法においては、2つの連続する刺激期間Tstimにおいて刺激が行われ、次いで、1つの刺激期間Tstimの間、刺激が中断される。このパターンが周期的に繰り返される。
【0077】
さらには、図16および図17に示した刺激方法において、個々の刺激部が刺激を生成する順序のランダム化を加えることができ、特に、以下のランダム化が考えられる。
【0078】
1.刺激期間Tstimを単位とし、すべてのモジュールにおいて同一パターンで行われる、刺激順序のランダム化。すなわち、各刺激期間Tstimの開始時において、刺激部が刺激を生成する順序が固定されており(例:刺激#4、刺激#2、刺激#3、刺激#1の順)、この順序がすべてのモジュールに適用される。
【0079】
2.いくつかの連続する刺激期間Tstimのブロックを単位とし、すべてのモジュールにおいて同一パターンで行われる、刺激順序のランダム化。すなわち、図17に示したいくつかの連続する刺激期間Tstimのブロックの開始時(または刺激の中断の後)において、刺激部が刺激を生成する順序が固定されており(例:刺激#4、刺激#2、刺激#3、刺激#1の順)、次の中断までの刺激期間のブロックにおいて、すべてのモジュールにこの順序が適用される。
【0080】
3.全モジュールにわたり同一パターンで変化させるのではなく、全モジュールのうちの一部のモジュールのみにおいて同一パターンで行われる、刺激順序のランダム化。すなわち、上の項目1または項目2によるランダム化が、特定のモジュール(例:モジュール#2)においてのみ行われ、残りのモジュールは図16に示したような挙動をとる。
【0081】
4.全モジュールにわたり同一パターンで変化させるのではなく、全モジュールのうちの一部のモジュールのみにおいて同一パターンで行われる、刺激順序のランダム化。すなわち、上の項目1または項目2によるランダム化が、2つ以上のモジュール(例:モジュール#2およびモジュール#4)において行われ、残りのモジュールは図16に示したような挙動をとる。
【0082】
5.異なるモジュールにおいて互いに無関係に行われる、刺激順序のランダム化。すなわち、刺激部が刺激を生成する順序は、モジュールごとに、刺激期間Tstimを単位として、または2つの中断の間のいくつかの連続する刺激期間Tstimのブロックを単位として、他のモジュールには無関係に固定されている。
【0083】
図18は、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類を生成する装置300のブロック図を概略的に示している。装置300は、それぞれがn個の刺激部を有するn個のモジュールと、n個のセンサとを含んでいる。モジュールおよびセンサは、接続線または無線を介して(例えばWPAN(無線パーソナルエリアネットワーク)を介して)、接続モジュール60に接続されており、この接続モジュール60は、コンピュータ61(例えばノートブック)および外部装置62に接続される。すべてのモジュールおよびセンサを必ずしも同時に使用する必要はなく、刺激の種類に応じて、一部のみを使用することもできる。モジュールもしくはセンサまたはその両方には、電池または充電式電池によって電力を供給することができ、したがってモジュールもしくはセンサは中央の電源から独立している。使用者(例えば医師)は、コンピュータ61に格納されている適切なソフトウェアによって、刺激方法を選択し、その刺激方法のパラメータを設定することができる。
【0084】
モジュールに組み込まれている刺激部の制御は、コンピュータ61を介して行うことができる。あるいはこれに代えて、各モジュールに制御部10を組み込んで(図19Aを参照)、制御部10はそれぞれのモジュールの刺激部の制御を担当する。これによって、モジュールの独立した動作が可能になる。さらには、刺激部ごとに個別の制御部10を設けることができる(図19Bを参照)。これによって、刺激部の動作のバリエーションが最大になるが、モジュールの重量および寸法が増大する。さらなる代替形態として、中央の制御部10を接続モジュール60内に配置することができる。この場合の利点として、モジュールの重量およびサイズが小さく、製造コストが安価である。しかしながら、この実施形態においては、接続モジュール60から独立してモジュールを動作させることができない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類を使用して患者を治療する装置および方法に関する。
【0002】
本発明は、特に、ニューロンの同期性が高まる病気を治療する刺激装置および刺激方法に関する。本発明を使用することによって、特に、脳の病気、例えば、運動機能障害、パーキンソン病、本態性振戦、ジストニア、偏頭痛、緊張性頭痛、痙性、脳卒中および脳梗塞後の機能障害、神経因性疼痛、慢性疼痛、神経痛、切断術後の疼痛、振戦、および頭部外傷後のその他の機能障害を、治療することができる。また一方で、胃腸の病気(例えば過敏性腸症候群)も治療することができる。この点において、有痛性痙攣および不十分な腸運動に対する効果は未確認である。潰瘍性大腸炎およびクローン病の場合、本発明による装置を使用した治療によって、抗痙攣性および疼痛緩和の効果をもたらすことができる。さらには、本発明による装置を使用することで、気管支喘息、心臓虚血、および末梢動脈閉塞性疾患を治療することができる。
【背景技術】
【0003】
前述の病気を治すための唯一の治療法(存在する場合)は、薬理療法または定位療法(stereotactic therapy)である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“Lehrbuch der Anatomie des Menschen. Dargestellt unter Bevorzugung funktioneller Zusammenhange. 3. Bd. Nervensystem, Haut und Sinnesorgane”, [Textbook of Human Anatomy. Presented With Emphasis on Functional Relationships. 3rd Vol., Nervous System, Skin and Sensory Organs”], Urban und Schwarzenberg, Munich1964
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薬理療法の効果は、一般には時間的な制限がある。定位療法では、例えば脳ペースメーカーを埋め込むときの動脈出血の危険性のような関連する危険性が伴う。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような背景に対して、請求項1による装置、請求項12による、請求項に請求された装置の使用、請求項13および請求項15によるさらなる装置、請求項17による方法が、記載されている。本発明のさらなる有利な発展形態および実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
以下では、本発明について、実施形態に基づき、図面を参照しながら例示的に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態による、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類を生成する装置100の概略図
【図2】装置100を使用して実行される刺激方法の概略図
【図3A】振動刺激の概略図
【図3B】振動刺激の概略図
【図3C】振動刺激の概略図
【図3D】振動刺激の概略図
【図4】触覚刺激の概略図
【図5A】温度刺激の概略図
【図5B】温度刺激の概略図
【図5C】温度刺激の概略図
【図6】意図された使用時における装置100の概略図
【図7】装置100を使用して実行される刺激方法の概略図
【図8】装置100を使用して実行される刺激方法の概略図
【図9】装置100を使用して実行される刺激方法の概略図
【図10】さらなる実施形態による、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類を生成する装置200の概略図
【図11A】振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を生成する刺激部の概略図
【図11B】振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を生成する刺激部の概略図
【図11C】振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を生成する刺激部の概略図
【図12A】振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を生成する刺激部の概略図
【図12B】振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を生成する刺激部の概略図
【図13A】振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を生成する刺激部の概略図
【図13B】振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を生成する刺激部の概略図
【図13C】振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を生成する刺激部の概略図
【図14A】温度刺激を生成する刺激部の概略図
【図14B】温度刺激を生成する刺激部の概略図
【図14C】温度刺激を生成する刺激部の概略図
【図15A】温度刺激を生成する刺激部の概略図
【図15B】温度刺激を生成する刺激部の概略図
【図15C】温度刺激を生成する刺激部の概略図
【図16】刺激方法の概略図
【図17】刺激方法の概略図
【図18】さらなる実施形態による、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類を生成する装置300の概略図
【図19A】さらなる実施形態による、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類を生成する装置300の概略図
【図19B】さらなる実施形態による、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類を生成する装置300の概略図
【図19C】さらなる実施形態による、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類を生成する装置300の概略図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類を使用して患者を非侵襲的に治療する装置100を概略的に示している。図1に示した実施形態における装置100は、第1の刺激を生成する第1の刺激部11と、第2の刺激を生成する第2の刺激部12と、第3の刺激を生成する第3の刺激部13と、第4の刺激を生成する第4の刺激部14と、を備えている。図1に示した実施形態は、単なる例示であることを理解されたい。この実施形態に代えて、装置100は、任意の望ましい数N(N=2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,...)の刺激部を含んでいてもよい。さらに、装置100は制御部10を有し、この制御部10は、適切な接続線を介して、または無線を介して刺激部11〜14に接続されており、刺激の生成を制御する。刺激部11〜14のうちの1つまたは複数、あるいはすべての刺激部11〜14に、制御部10を組み込むこともできる。
【0010】
刺激部11〜14それぞれは、振動刺激、触覚刺激、および温度刺激からなる群のうちの1つまたは複数の刺激を生成することができる。刺激部11〜14は、患者の皮膚の上に配置できるように設計されている。刺激部11〜14は、病気に応じて、あるいは患部に応じて、患者の皮膚の上に適切な配置構成で(例えば患者の腕、脚、手、足のうちの1つまたは複数に)固定される。症状に応じて、振動刺激、触覚刺激、および温度刺激のそれぞれは、個別に、または組み合わせて、皮膚に印加される。
【0011】
複数の刺激部11〜14を使用することで、個々の刺激部11〜14を介しての刺激を時間的および空間的に調整しながら、皮膚のさまざまな受容領域を刺激することができる。皮膚組織に印加された刺激が神経伝達物質を介してさまざまな対象領域(例えば脊髄や脳内に位置する領域)に送られるように、刺激部11〜14を患者の皮膚の上に配置することができる。したがって、装置100を使用することにより、脊髄もしくは脳またはその両方の中の複数の異なる対象領域を、同じ刺激期間の中で、場合によっては異種の刺激、もしくはタイミングをずらせた刺激、またはその両方によって、刺激することができる。
【0012】
図2は、装置100を使用して実行できる刺激方法を概略的に示している。図2では、刺激部11〜14を介して印加される刺激20を、時間tに対して示してある。
【0013】
図2に示した方法において、刺激部11〜14それぞれは、刺激部11〜14の各部が取り付けられている皮膚の受容領域に、周期的に刺激20を印加する。刺激部11〜14それぞれによって生成される刺激20が繰り返される周波数fstim=1/Tstim(Tstimは継続期間)は、1〜60Hzの範囲内、特に、30〜60Hzの範囲内、あるいは1〜30Hzの範囲内、1〜20Hzの範囲内、または5〜20Hzの範囲内であるが、より低い値またはより高い値を採用することもできる。個々の刺激20の持続時間Dstimは、特に、刺激のタイプに依存することができる。同様に、図2に示した縦座標も、刺激20のタイプに依存する。例えば、振動刺激または触覚刺激の場合、縦座標を時間tに対する刺激要素の変位lとすることができ、温度刺激の場合、縦座標を温度Tとすることができる。異なる刺激部11〜14を介して印加される刺激20は、同じ刺激または異なる刺激とすることができる。
【0014】
図3A、図3B、図3Cおよび図3Dは、個々の振動刺激20のさまざまな実施形態を示す。時間tに対する刺激要素の変位lを示している。刺激要素は、図3Aの時刻t1において、休止位置から変位し、患者の皮膚に押し込まれる。皮膚の表面の位置は、破線21によって示してある。刺激要素が皮膚に接触すると、30〜300Hzの範囲内の周波数fvib=1/Tvib(Tvibは振動刺激の継続期間)で周期的な振動刺激が印加される。刺激要素は、周波数fvib=300Hzにおいて約2Nの力をかけることができる。振動刺激20の持続時間Dstimは、10〜500msの範囲内とすることができる。刺激の持続時間Dstimは、特に、以下の範囲内である。
【数1】
【0015】
この式において、Nは、刺激部の数である。例えば、Tstim=1秒、N=4の場合、刺激の持続時間Dstimは10ms〜250msの範囲内となる。しかしながら、時間的に重なる刺激を使用することもできる。
【0016】
時刻t2において、刺激要素が再び休止位置に動き、休止位置では刺激要素は皮膚に接触していない。図3Aに示したように、振動刺激20は、矩形刺激または正弦波刺激とすることができるが、別の形状をとることもできる。図3Aに示す、刺激要素を皮膚に押し込むための変位l1は、0.5〜3mmの範囲内とすることができる。振動時の刺激要素の変位l2は、0.1mm〜0.5mmの範囲内とすることができる。
【0017】
図3Bは、図3Aに示した振動刺激20のバリエーションを示している。図3Bに示した実施形態においては、刺激要素が患者の皮膚に常に接触している。刺激の持続時間Dstimの間、上述した振動刺激20が印加される。
【0018】
図3Cは、振動刺激20のさらなるバリエーションを示している。図3Aの振動刺激20とは異なり、刺激の持続時間Dstimの間に刺激要素は初期位置に戻り始め、時間の経過とともに振動によって皮膚が押し込まれる深さが減少していき、最終的に刺激要素は皮膚から完全に離れる。刺激要素の戻りは、例えば直線または非線形曲線22(例:指数曲線)に沿うようにすることができ、これらの線上に刺激要素の振動fvibが重ね合わされる。図3Cに示した例においては、各パルスの立ち下がりが曲線22に達している。隣接するパルスは、固定的なプリセット高さl2を有し、すなわち各パルスの立ち上がりの高さがl2である。
【0019】
図3Dは、図3Cの振動刺激20のバリエーションを示している。この場合、曲線22は0の線(l=0)まで戻らず、0の線からの固定的なプリセットオフセットΔLを有する。
【0020】
図4は、触覚刺激20の実施形態を示している。刺激要素は、時刻t1に患者の皮膚に押し込まれ、刺激の持続時間Dstimの間そのままであり、時刻t2に再び戻る。触覚刺激20による刺激の持続時間Dstimは、10〜500msの範囲内である。特に、刺激の持続時間Dstimは、上記の(1)式によって与えられる範囲内である。しかしながら、時間的に重なる刺激を使用することもできる。
【0021】
図5A、図5B、および図5Cは、個々の温度刺激20のさまざまな実施形態を示している。図5Aおよび図5Bに示した実施形態においては、刺激要素が温度Ttempまで加熱または冷却される。図5Bに示したように、温度Ttempは、温度刺激20を印加する直前に得られればよい。この場合、刺激要素は、刺激が中断している間は温度T0(例えば室温に一致する)を有する。これに代えて、刺激要素を一定の温度Ttempに維持してもよい。
【0022】
図5Aによる実施形態においては、時刻t1において、加熱または冷却された刺激要素が患者の皮膚に当てられ、刺激の持続時間Dstim全体にわたり、そのままにされる。図5Bによる実施形態においては、これとは異なり、刺激の持続時間Dstimの間、刺激要素は周波数fthermoで周期的に皮膚に当てられた後、再び離れる。周波数fthermo=1/Tthermoは、1〜10Hzの範囲内とすることができる(Tthermoは温度刺激の継続期間)。
【0023】
図5Cに示した温度刺激20は、図5Bの温度刺激20に実質的に対応する。違いは、図5Cの温度刺激20が無接触式に生成されることである。この場合、刺激温度Ttempは、電磁放射によって(例えば赤外線光によって)発生する。さらには、(例えば赤外線放射体のオン/オフを切り替えることによって)電磁放射は、周波数fthermo=1/Tthermoで周期的に変化する。
【0024】
温度刺激の場合、刺激の持続時間Dstimは、10〜500msの範囲内である。特に、刺激の持続時間Dstimは、上記の(1)式によって与えられる範囲内である。また、時間的に重なる刺激も使用できる。温度Ttempは、22〜42℃とすることができる。温度T0は、一般には患者の体温である。周波数fthermoは、1〜10Hzの範囲内とすることができるが、この範囲外とすることもできる。
【0025】
個々の刺激20が複数のタイプの刺激を含んでいることも考えられる。例えば、図3Aに示した振動刺激20は、刺激を印加する刺激要素が加熱または冷却される場合、同時に温度刺激とすることができる。さらに、図3Aの振動刺激20は、同時に触覚刺激でもある(皮膚に刺激要素が当たることによって触覚受容器が活性化される)。
【0026】
装置100は、特に、ニューロンの同期性が高まる病気を治療する目的に使用することができる。特に、装置100を使用して、脳の病気、例えば、運動機能障害、パーキンソン病、本態性振戦、ジストニア、偏頭痛、緊張性頭痛、痙性、脳卒中および脳梗塞後の機能障害、神経因性疼痛、慢性疼痛、神経痛、切断術後の疼痛、振戦、および頭部外傷後のその他の機能障害を、治療することができる。また一方で、装置100は、胃腸の病気(過敏性腸症候群など)も治療することができる。さらには、潰瘍性大腸炎、クローン病、気管支喘息、心臓虚血、および末梢動脈閉塞性疾患を、装置100を使用して治療することができる。
【0027】
前述した病気は、特定の回路内に結合されている神経集合体の生体伝達の障害によって発症することがある。この点において、ニューロン集団(neuronal population)は、病的なニューロン活動、場合によってはニューロン活動に関連付けられる異常な結合性(網構造)を、絶え間なく発生させる。この場合、多数のニューロンが同期して活動電位を形成する。すなわち、関与するニューロンが過度に同期して発火する。さらには、病的なニューロン集団が振動性のニューロン活動を示す。すなわちニューロンが律動的に発火する。神経疾患または精神疾患の場合、正常でない神経集合体の病的な律動的活動の平均周波数は、およそ1〜30Hzの範囲内であるが、この範囲外であることもある。しかしながら健康な人では、ニューロンの発火は質的に異なる(例えば相関性がない)。
【0028】
刺激部11〜14によって印加される刺激は、皮膚またはその下層に位置する受容器が受け取り、神経系に送られる。受容器としては、例えば、メルケル細胞、ルフィニ小体、マイスナー小体、毛包受容器が挙げられ、これらは特に触覚刺激20の受容器として機能する。振動刺激20は、主として固有受容覚を対象とする。振動刺激20は、患者の皮膚、筋肉、皮下組織、腱に位置する受容器が受け取ることができる。振動刺激に対する受容器の例として、振動の感覚および加速度を伝達するパチニ小体が挙げられる。温度刺激は、皮膚の温度受容器が受け取る。温度受容器は、温受容器(熱受容器、温センサ、熱センサとも称する)および冷センサ(冷受容器とも称する)である。冷センサは、人の皮膚の浅い位置に存在しており、熱受容器はこれよりいくらか深い。
【0029】
刺激要素11〜14によって生成される刺激20が対応する受容器によって受け取られ、神経伝達物質を介して、脳または脊髄内の病的に同期した振動性の活動を有するニューロン集団に伝えられると、刺激要素11〜14によって生成される刺激20は、ニューロン集団内の刺激されたニューロンのニューロン活動の位相がリセットされるように設計されている。刺激されたニューロンの位相は、リセットされることで、現在の位相値とは無関係に特定の位相値(例えば0゜)に設定される。したがって、病的なニューロン集団のニューロン活動の位相が直接的な刺激によって制御される。
【0030】
さらには、複数の刺激要素を使用することで、病的なニューロン集団を、複数の異なる位置において刺激することが可能である。すなわち、皮膚の異なる位置に印加された刺激20が、脳または脊髄内の異なる位置に伝えられる。これによって、病的なニューロン集団のニューロン活動の位相を、複数の異なる刺激位置において異なるタイミングでリセットすることが可能となる。結果として、集団内のニューロンがリセット前は同期して活性化され、周波数および位相が同じであった、病的なニューロン集団が、複数のサブ集団に分割される。サブ集団の中では、ニューロンは依然として同期しており同じ病的な周波数で発火するが、各サブ集団において、ニューロン活動に関連する固有の位相が、刺激によって与えられる。
【0031】
ニューロン間に病的な相互関係が存在することにより、刺激によって生じた少なくとも2つのサブ集団の状態は安定的ではなく、ニューロン集団全体としては、完全な脱同期状態(ニューロンは無相関に発火する)に急速に近づく。したがって、刺激20を印加した直後には、望ましい状態(すなわち完全な脱同期)は得られないが、通常、病的な活動の2〜3周期以内、場合によっては1周期以内に、そのような状態になる。
【0032】
上述したタイプの刺激の場合、最終的に望まれる脱同期が可能であるのは、ニューロン間の相互作用が病的に高いためである。この点において、病的な同期の原因である自己組織化プロセス(self-organization process)を利用している。集団全体が、位相の異なるサブ集団に分割された後、この自己組織化プロセスによって脱同期がもたらされる。ニューロン間の病的に高い相互作用が存在しなければ、効果的な脱同期は起こらない。
【0033】
さらには、装置100を使用した刺激によって、機能不全の神経回路網の結合性を再編成することができ、したがって、持続する治療効果をもたらすことができる。
【0034】
図6は、装置100を使用して、病的に活性化されるニューロン集団30の複数のサブ集団を刺激する状況を概略的に示している。振動刺激20、触覚刺激20、温度刺激20のうちの少なくとも1種類によって、刺激部11〜14を介して、皮膚15の異なる位置において、それぞれの受容器が刺激される。刺激部11,12,13,14によって印加される刺激20は、ニューロン集団30の異なるサブ集団31,32,33,34に伝えられ(刺激部11からの刺激がサブ集団31に、刺激部12からの刺激がサブ集団32に、刺激部13からの刺激がサブ集団33に、刺激部14からの刺激がサブ集団34に伝えられる)、これらのサブ集団の位相がそれぞれの異なるタイミングでリセットされ、これによってニューロン集団30全体の脱同期が達成される。
【0035】
脳または脊髄の特定の領域を刺激することが可能であるのは、体の領域と、脳または脊髄の特定の領域との体部位の関連性(somatotopic association)による。刺激部11〜14は、例えば、患者の足、下肢、および大腿部に、あるいは、手、前腕、および上腕に、取り付けることができる。神経経路の体部位の関連性によって、それぞれの位置に印加される刺激により異なるニューロンが刺激される。脳の領域と皮膚の位置との体部位の関連性については、例えば、A.Benninghoffらの非特許文献1に記載されている。
【0036】
病的に同期したニューロン集団30のサブ集団31〜34の位相を異なるタイミングでリセットすることによってニューロン集団30全体の脱同期を達成する方法は、さまざまな手順をとることができる。例えば、ニューロンの位相のリセットをもたらす刺激20を、複数の異なる刺激部11〜14によって、皮膚のそれぞれの受容野にタイミングをずらせて出力することができる。さらには、例えば位相をずらして、あるいは異なる極性において、刺激を印加することができ、これらによっても、結果として複数の異なるサブ集団31〜34の位相が異なるタイミングでリセットされる。
【0037】
図7は、上述した目的に適する刺激方法を概略的に示している。図7では、刺激部11〜14を介して印加される刺激20を、上下に重ねて時間tに対して示してある。刺激20としては、例えば図3A〜図5Cに示した振動刺激、触覚刺激、および温度刺激を使用することができる。図7に示したダイアグラムは、周期的に繰り返される長さTstimの第1の期間に分割されている。長さTstimの第1の期間が繰り返される周波数fstim=1/Tstimは、1〜60Hzの範囲内、特に、30〜60Hzの範囲内、あるいは1〜30Hzの範囲内、1〜20Hzの範囲内、または5〜20Hzの範囲内とすることができ、ただしこれらより低い値または高い値とすることもできる。
【0038】
長さTstimの第1の期間は、さらに、長さTstim/4の第2の期間に分割されている。N個の刺激部を介して刺激するとき、第1の期間を、長さTstim/NのN個の第2の期間に分割することができる。
【0039】
実施形態によると、刺激部11〜14それぞれは、第1の期間内に最大で1つの刺激20を生成する。異なる刺激部11〜14からの刺激20は、連続する第2の期間内に生成されることができる。
【0040】
図7に示した実施形態においては、刺激部11〜14それぞれは、周波数fstimにおいて正確に周期的に刺激20を印加する。複数の異なる刺激部11〜14を介しての刺激20の印加は、個々の刺激部11〜14の間の時間遅延がTstim/4であるように行われる。
【0041】
刺激部がN個である場合、連続する2つの刺激20の間の時間遅延は、例えば、周期1/fstimのN分の1、すなわち1/(N×fstim)=Tstim/Nとすることができる。すなわち、特に、連続する2つの刺激20の開始時刻の間に時間Tstim/Nが経過する。
【0042】
周波数fstimは、例えば、対象の神経回路網の病的な律動的活動の平均周波数のオーダーとすることができる。ニューロンの同期性が高まる病気の場合、この平均周波数は、一般に1〜30Hzの範囲内であるが、この範囲外となることもある。なお、この点において、正常でないニューロンが同期して発火する周波数は、通常では一定ではなく、ある程度変動することがあり、さらには、患者ごとに個人差が見られることに留意されたい。
【0043】
図7に示した正確な周期的な刺激パターンを基本として、さまざまなバリエーションを導入することができる。例えば、同一の刺激部によって生成される連続する刺激20の間の時間遅延Tstimは、必ずしもつねに同じ大きさでなくてもよく、Tstimを中心として±10%、または±5%、または±3%の範囲内で変化させることができる。さらには、異なる刺激部によって生成される連続する2つの刺激20の間の時間間隔も、Tstim/Nを中心として±10%、または±5%、または±3%の範囲内で変化させることができる。個々の刺激20の間の時間間隔を、互いに異なる長さとして選択することができる。さらには、患者の治療中に遅延時間を変化させることもできる。生理学的刺激信号の伝達時間に基づいて遅延時間を調整することもできる。
【0044】
さらには、刺激20の印加中に中断を設けることができ、中断の間は刺激が発生しない。図8は、このような中断を一例として示している。中断の持続時間は、任意の長さとすることができ、特に、期間Tstimの整数倍とすることができる。さらには、任意の所望の回数だけ刺激した後に中断を配置することができる。例えば、長さTstimのn個の連続する期間において刺激を実行した後、長さTstimのm個の期間において、刺激の存在しない中断を配置することができる。この場合、nおよびmは小さな整数(例えば、1〜10の範囲内)である。このパターンを、そのまま継続する、あるいは周期的、または確率論的もしくは決定論的に、または確率論および決定論の混合型として修正することができる。
【0045】
図7に示した正確な周期的な刺激パターンを変化させるためのさらなる可能な方法として、時間軸に沿った個々の刺激20の並びを、確率論的もしくは決定論的に、または確率論および決定論の混合型として、変化させる。
【0046】
さらには、図9に一例として示したように、刺激部11〜14が刺激20を印加する順序を、期間Tstim(またはそれ以外の時間間隔)を単位として変化させることができる。このランダム化は、確率論的もしくは決定論的に、または確率論および決定論の混合型として、行うことができる。
【0047】
図9に示したランダム化を、図8に示した刺激の形態と組み合わせることができる。例えば、長さTstimのn個の連続する刺激期間のそれぞれにおいてランダム化を繰り返すことができ、または、長さm×Tstimの中断それぞれの後にランダム化を行い、それに続くn個の刺激期間では、刺激部11〜14が一定の順序で刺激20を印加する。
【0048】
さらには、期間Tstim(または別の時間間隔)を単位として、刺激部11〜14のうちの特定の数のみを使用して刺激することが可能であり、刺激を行う刺激部を、時間間隔ごとに変化させることができる。この変化も、確率論的もしくは決定論的に、または確率論および決定論の混合型として、行うことができる。
【0049】
刺激の開始は、例えば遠隔操作によって患者が行うことが考えられる。この場合、患者は、例えば、外部の送信器によって所定の時間長(例:60分)の間、刺激を有効にすることができる。または患者は、刺激の開始と終了をそれぞれ独立して操作することができる。
【0050】
装置100は、例えば、いわゆる開ループモードで動作させることができ、開ループモードでは、刺激部11〜14が皮膚組織に出力される所定の刺激20を生成するように、制御部10が刺激部11〜14を制御する。さらには、装置100を発展させて図10に示した装置200とすることもできる。装置200は、いわゆる閉ループシステムを表している。装置200は測定部16をさらに含んでおり、測定部16は、患者において取得される1種類または複数の測定信号を生成し、この信号を制御部10に転送する。制御部10は、測定部16によって取得された測定信号を使用して、刺激部11〜14を制御する。
【0051】
測定部16は、非侵襲的センサとすることができ、例えば、脳電図(EEG)電極、脳磁図(MEG)センサ、加速度計、筋電図(EMG)電極、あるいは血圧や呼吸、皮膚の電気抵抗を求めるセンサとすることができる。さらには、測定部16を、1つまたは複数のセンサの形で患者の体に埋め込むことができる。例えば、脳深部の電極、硬膜下または硬膜外の脳電極、皮下EEG電極、硬膜下または硬膜外の脊髄電極は、侵襲的センサとして機能することができる。さらには、末梢神経に取り付けられる電極をセンサとして使用することもできる。特に、刺激する対象領域または関連する領域におけるニューロン活動(すなわち例えば図6に概略的に示したニューロン集団30のニューロン活動)を、測定部16によって測定することができる。
【0052】
制御部10と測定部16との協働に関して、さまざまな実施形態が考えられる。例えば、制御部10は、必要時に刺激を有効にすることができる。この目的のため、制御部10は、1種類または複数の病的な状態の存在もしくは特性またはその両方を、測定部16によって取得される測定信号を使用して検出する。例えば、ニューロン活動の振幅または活動量が測定され、所定のしきい値と比較されることができる。所定のしきい値を超えた時点でただちに刺激が開始されるように、制御部10を設計することができる。測定部16によって取得された測定信号を使用して刺激のタイミングを制御することに代えて、またはこれに加えて、制御部10は、病的な状態の特性を用いて、刺激の強さを設定することができる。例えば、1つまたは複数のしきい値を予め決定し、測定された信号の振幅または信号量が特定のしきい値を超えた時点で、制御部10は、刺激20の特定の強さ(例えば、振動刺激の場合には特定の周波数fvibまたは押し込み深さl2)を設定する。
【0053】
さらには、測定部16によって取得される測定信号は、刺激20としてそのまま、またはオプションとして使用され、1つまたは複数の処理ステップの後、制御部10によって刺激部11〜14のうちの1つまたは複数に送られる。例えば、測定信号は、増幅され、処理され、オプションとして、時間遅延と、線形/非線形のオフセットステップと、合成ステップとによる数学的オフセット処理を行った後(例えば測定信号を混合した後)、刺激部11〜14の少なくとも1つに送られる。この点において、オフセットモードは、病的なニューロン活動が打ち消され、病的なニューロン活動の減少につれて刺激信号も同様に消失する、または強さが少なくとも相当に減少するように、選択される。(送られる)測定信号は、例えば図7による個々の刺激部11〜14を介しての刺激プロセス(Tstim/4の時間遅延を伴う)に同様に適用することができる。
【0054】
このタイプの刺激、すなわち、患者において取得された測定信号が、ニューロン集団の脱同期を目的として患者の体にフィードバックされる場合、一般的には、1つの刺激部のみを使用して刺激が生成される。しかしながら、より多くの任意の望ましい数の刺激部を設けることもできる。
【0055】
測定信号は、刺激20を生成するために例えば増幅され、オプションとして、時間遅延と、線形/非線形のオフセット処理ステップによる数学的オフセット処理の後(例:測定信号を混合した後)に使用することで刺激部を電気的に制御することができる。刺激部は、測定信号を、振動刺激、触覚刺激、または温度刺激に変換する。この点において、オフセットモードは、病的なニューロン活動が打ち消され、ニューロン活動の減少につれて、印加される刺激も同様に消失するように、または強さが少なくとも相当に減少するように、選択される。
【0056】
以下では、測定部16によって得られる測定信号を刺激部の制御に使用する前に処理するための線形処理ステップおよび非線形処理ステップについて説明する。測定信号を非線形処理する場合、刺激されるサブ集団におけるニューロン活動の位相がリセットされるのではなく、同期の飽和プロセスに影響を与えることによって、病的な活動を有するニューロン集団における同期が抑制される。
【0057】
測定部16によって得られる測定信号を線形処理する場合、測定信号に対して、例えば、フィルタリング、増幅、時間遅延の導入、のうちの1つまたは複数を行うことができ、その後、このように処理した信号が刺激部に送信され、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類に変換される。一例として、測定信号はEEG電極によって取得され、対象領域における病的な活動を表すものと想定する。したがって、測定信号は、1〜30Hzの範囲内の周波数を有する正弦波振動である。一例として、測定信号26は5Hzの周波数を有するものと想定する。5Hz程度の通過帯域を有する帯域通過フィルタによって測定信号26がフィルタリングされ、刺激部を制御するのに適したレベルとなるように、増幅器によって増幅される。次いで、このようにして得られる増幅された正弦波振動は、刺激部を制御するために使用される。刺激部が振動刺激または触覚刺激を印加する場合、刺激要素は周波数5Hzの正弦波運動を行う。
【0058】
N個の刺激部を使用して刺激する場合、測定信号を対応する刺激部に送る前に、図7に示したように、測定信号に対して時間遅延Tstim/Nを導入することができる。
【0059】
以下では、測定部16によって得られる測定信号を、刺激として使用する前に非線形処理する方法について、例を通じて説明する。線形処理の場合とまったく同様に、この場合も、測定信号に対して、フィルタリング、増幅、時間遅延の導入、のうちの1つまたは複数を行うことができる。
【0060】
処理前の刺激S(t)の等式は、以下である。
【数2】
【0061】
等式(2)において、Kは、適切に選択される増幅係数であり、Z−(t)は、測定信号の平均状態変数である。Z−(t)は複素変数であり、次のように表すことができる。
【数3】
【0062】
この式において、X(t)は、例えば神経系の測定信号とすることができ、iは虚数単位である。観察される周波数は10Hz=1/100ms=1/Tαのオーダーであるため、虚部Y(t)は、X(t−τα)によって近似することができる。例えばτα=Tα/4である。結果として、以下の式となる。
【数4】
【0063】
等式(4)は、次のように書き直すことができる。
【数5】
【0064】
等式(5)の実部を、刺激として使用する。
【数6】
【0065】
図11A〜図11Cは、例えば図3A〜図4に示した振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を生成する刺激部を実施するためのさまざまな可能な形態を概略的に示している。刺激部は、例えば棒状の刺激要素40を含んでおり、棒の一端によって患者の皮膚15が刺激される。刺激要素40は、電気機械変換器41(アクターまたはアクチュエータ)によって駆動され、この電気機械変換器41は、電気エネルギを刺激要素40の運動に変換する。電気機械変換器41としては、DCモータ、ボイスコイル、圧電変換器、あるいは電気活性高分子(EAP)(電圧の印加時に形が変化する)を備えた変換器が適している。
【0066】
電気機械変換器41は、刺激要素40が皮膚の表面に対して垂直に(図11Aを参照)、または平行に(図11Bを参照)変位するように設計することができる。または、刺激要素40の動きは、任意の別の望ましい経路をとることもできる。この例として、図11Cは、刺激要素40の振り子の変位を示している。
【0067】
皮膚の表面に接触して刺激を生成する刺激要素40の端部は、例えば、半球の形状を有する(図12Aを参照)、または凹凸状の(nub-like)表面を有する(図12Bを参照)、または別の好適な形状を有することができる。
【0068】
図13A〜図13Cは、振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を印加する刺激要素の実施形態を、透視図として(図13Aを参照)、下からの平面図として(図13Bを参照)、および断面図として(図13Cを参照)、示している。この刺激要素は、電気機械変換器として圧電アクチュエータ41を含んでいる。圧電アクチュエータ41の変位は、意図する目的において十分ではないため、圧電アクチュエータ41の変位を増幅するメカニズムを設けることができる。ここでは、一例として、圧電アクチュエータ41の動きを増幅するレバーアーム42を示してある。この場合、レバーアームは、細長い可撓性ばね42であり、一方の端部が刺激要素のハウジング43に固定されており、他方の端部に刺激要素40が取り付けられている。圧電アクチュエータ41が可撓性ばね42の上面を押すと、圧電アクチュエータ41の変位に対応して、可撓性ばね42の下面に取り付けられている刺激要素40が動き(その振幅は幾何学的な配置構造によって増幅される)、患者の皮膚に振動刺激もしくは触覚刺激またはその両方を印加する。皮膚に接触する刺激要素40の下面は、別の幾何学形状および寸法を有することができる。例えば、刺激要素40の下面を、平たい形状、丸みを帯びた形状、または不規則な形状とすることができる。
【0069】
さらには、圧電アクチュエータ41および増幅メカニズムを収容している、刺激要素のハウジング43の中に、電子機器および接続端子のための空間44を設けることができる。さらには、ハウジング43の下面に調節リング45が取り付けられており、この調節リング45は、ハウジング43にねじ込まれており、刺激要素が休止位置にあるとき刺激要素40が刺激部の下面から突き出す高さを調整できるようにしている。動作時、刺激部の下面を患者の皮膚に密着させ、例えば適切なカフ(cuff)によって患者の体に固定する。カフに加えて、またはカフに代えて、刺激部を片面または両面の医療用粘着テープによって患者の皮膚に固定することができる。ハウジング43は、電圧などの危険から患者を保護する。
【0070】
図14A〜図14Bは、例えば図5A〜図5Cに示した温度刺激を生成するように設計されたさまざまな刺激部を概略的に示している。図14Aに示した刺激部は、無接触式に機能し、赤外線LED50の光によって皮膚を加熱する。
【0071】
図14Bおよび図14Cは、患者の皮膚に接触することで温度刺激を印加する刺激部を示している。図14Bに示した刺激部は、図11Aの刺激部と実質的に同じ構成要素として、電気機械変換器41および棒状の刺激要素40を含んでいる。図14Bの刺激部は、これらに加えて、刺激要素を加熱または冷却する加熱要素(例えば加熱ループの形)または冷却要素またはその両方を有する。温度刺激は、刺激要素40の運動、すなわち刺激要素40が皮膚に接触して再び離れる動作を繰り返すことによって、発生する。刺激要素40の温度は、刺激の全期間にわたり一定とすることができる。
【0072】
これに代えて、図14Cに示したように、加熱可能または冷却可能な刺激要素40を、刺激の全期間にわたり患者の皮膚15に接触させることができる。この場合、刺激要素40の温度を時間に対して変化させることによって温度刺激が生成される。この実施形態においては、電気機械変換器は必ずしも要求されない。
【0073】
図15A〜図15Cは、温度刺激を印加する刺激要素の実施形態を、透視図として(図15Aを参照)、下からの平面図として(図15Bを参照)、および断面図として(図15Cを参照)、示している。この刺激部は、棒状の刺激要素40を含んでおり、刺激要素40の下端部は加熱可能もしくは冷却可能またはその両方である。刺激要素40は、その上端部においてカムディスク51によって駆動される。刺激時、DCモータ52によってカムディスク51が回転する。カムディスク51の下面に取り付けられているカム53によって、刺激要素40が下方に変位する。次いで、刺激要素40は、復元ばね54によって開始位置に戻る。このメカニズムによって、カムディスク51の回転運動が刺激要素40の直線運動に変換される。上述したように、刺激要素40は、特定の時間の間、患者の皮膚に接触している、またはカムディスク51の回転によって皮膚に接触して再び離れる動作を周期的に繰り返す。
【0074】
刺激部の構成要素は、ハウジング55の中に収容することができる。ハウジング55の中には、電子回路および接続端子のための空間56を設けることができる。さらには、ハウジング55の下面に調節リング57を取り付けることができ、この調節リング57は、ハウジング55にねじ込まれており、刺激要素が休止位置にあるとき刺激要素40が刺激部の下面から突き出す高さを調整できるようにしている(調節リングによって、刺激要素40が休止位置にあるとき調節リングの下面より上に完全に隠れるようにすることもできる)。動作時、刺激部の下面が患者の皮膚に密着し、例えば適切なカフによって患者の体に固定される。カフに加えて、またはカフに代えて、刺激部を片面または両面の医療用粘着テープによって患者の皮膚に固定することができる。ハウジング55は、電圧などの危険から患者を保護する。
【0075】
本出願において記載されている刺激部は、患者に単体として固定することもでき、または、いくつかの刺激部を1つのモジュールに統合することもできる。例えば、モジュールは、複数の刺激部が固定されたカフを含んでいることができる。このカフを、患者の腕または脚に固定することができる。図16は、それぞれが4つの刺激部を含んでいるモジュールを合計N個使用して実行することのできる刺激方法を示している。図16の左端に示した刺激方法において、刺激期間Tstimの開始時に、すべての刺激部が、振動刺激20、触覚刺激20、または温度刺激20を印加する。図16の中央に示した刺激方法においては、モジュールの4つの異なる刺激部の刺激20が、それぞれTstim/4ずれている。この場合、長さTstim/4の時間長それぞれにおいて、各モジュールの1つの刺激部が刺激20を印加する。図16の右端に示した刺激方法においては、モジュールの4つの刺激部が刺激20を同時に生成するが、モジュールごとに刺激20が互いにずれている。
【0076】
図16に示した刺激方法すべてにおいて、刺激中に任意の望ましい中断を入れることもできる。刺激の中断の長さは、一般には、1つまたは複数の刺激期間Tstimである。図17は、一例としてこの状況を示している。図17に示した刺激方法においては、2つの連続する刺激期間Tstimにおいて刺激が行われ、次いで、1つの刺激期間Tstimの間、刺激が中断される。このパターンが周期的に繰り返される。
【0077】
さらには、図16および図17に示した刺激方法において、個々の刺激部が刺激を生成する順序のランダム化を加えることができ、特に、以下のランダム化が考えられる。
【0078】
1.刺激期間Tstimを単位とし、すべてのモジュールにおいて同一パターンで行われる、刺激順序のランダム化。すなわち、各刺激期間Tstimの開始時において、刺激部が刺激を生成する順序が固定されており(例:刺激#4、刺激#2、刺激#3、刺激#1の順)、この順序がすべてのモジュールに適用される。
【0079】
2.いくつかの連続する刺激期間Tstimのブロックを単位とし、すべてのモジュールにおいて同一パターンで行われる、刺激順序のランダム化。すなわち、図17に示したいくつかの連続する刺激期間Tstimのブロックの開始時(または刺激の中断の後)において、刺激部が刺激を生成する順序が固定されており(例:刺激#4、刺激#2、刺激#3、刺激#1の順)、次の中断までの刺激期間のブロックにおいて、すべてのモジュールにこの順序が適用される。
【0080】
3.全モジュールにわたり同一パターンで変化させるのではなく、全モジュールのうちの一部のモジュールのみにおいて同一パターンで行われる、刺激順序のランダム化。すなわち、上の項目1または項目2によるランダム化が、特定のモジュール(例:モジュール#2)においてのみ行われ、残りのモジュールは図16に示したような挙動をとる。
【0081】
4.全モジュールにわたり同一パターンで変化させるのではなく、全モジュールのうちの一部のモジュールのみにおいて同一パターンで行われる、刺激順序のランダム化。すなわち、上の項目1または項目2によるランダム化が、2つ以上のモジュール(例:モジュール#2およびモジュール#4)において行われ、残りのモジュールは図16に示したような挙動をとる。
【0082】
5.異なるモジュールにおいて互いに無関係に行われる、刺激順序のランダム化。すなわち、刺激部が刺激を生成する順序は、モジュールごとに、刺激期間Tstimを単位として、または2つの中断の間のいくつかの連続する刺激期間Tstimのブロックを単位として、他のモジュールには無関係に固定されている。
【0083】
図18は、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類を生成する装置300のブロック図を概略的に示している。装置300は、それぞれがn個の刺激部を有するn個のモジュールと、n個のセンサとを含んでいる。モジュールおよびセンサは、接続線または無線を介して(例えばWPAN(無線パーソナルエリアネットワーク)を介して)、接続モジュール60に接続されており、この接続モジュール60は、コンピュータ61(例えばノートブック)および外部装置62に接続される。すべてのモジュールおよびセンサを必ずしも同時に使用する必要はなく、刺激の種類に応じて、一部のみを使用することもできる。モジュールもしくはセンサまたはその両方には、電池または充電式電池によって電力を供給することができ、したがってモジュールもしくはセンサは中央の電源から独立している。使用者(例えば医師)は、コンピュータ61に格納されている適切なソフトウェアによって、刺激方法を選択し、その刺激方法のパラメータを設定することができる。
【0084】
モジュールに組み込まれている刺激部の制御は、コンピュータ61を介して行うことができる。あるいはこれに代えて、各モジュールに制御部10を組み込んで(図19Aを参照)、制御部10はそれぞれのモジュールの刺激部の制御を担当する。これによって、モジュールの独立した動作が可能になる。さらには、刺激部ごとに個別の制御部10を設けることができる(図19Bを参照)。これによって、刺激部の動作のバリエーションが最大になるが、モジュールの重量および寸法が増大する。さらなる代替形態として、中央の制御部10を接続モジュール60内に配置することができる。この場合の利点として、モジュールの重量およびサイズが小さく、製造コストが安価である。しかしながら、この実施形態においては、接続モジュール60から独立してモジュールを動作させることができない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動刺激(20)、触覚刺激(20)、温度刺激(20)の少なくとも1種類を使用して患者を治療する装置(100−300)であって、
第1の刺激(20)を生成する第1の刺激部(11)と、
第2の刺激(20)を生成する第2の刺激部(12)と、
を備えており、
前記第1の刺激(20)および前記第2の刺激(20)の各々は、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類であり、
前記第1の刺激(20)および前記第2の刺激(20)は、刺激期間において、平均して1〜60Hzの周波数でそれぞれ繰り返され、
前記第1の刺激(20)および前記第2の刺激(20)の少なくとも一部が異なるタイミングで生成される、
装置(100−300)。
【請求項2】
前記振動刺激(20)は、30〜300Hzの範囲内の周波数を有する周期的な刺激である、
請求項1に記載の装置(100−300)。
【請求項3】
前記第1の刺激部(11)および前記第2の刺激部(12)は、前記患者の皮膚の上に配置される、
請求項1または請求項2に記載の装置(100−300)。
【請求項4】
前記第1の刺激部(11)および前記第2の刺激部(12)の各々は、前記振動刺激もしくは前記触覚刺激またはその両方を生成するためのDCモータ、ボイスコイル、圧電変換器、電気活性高分子のうちの少なくとも1つ、を含んでいる、
請求項1から請求項3のいずれかに記載の装置(100−300)。
【請求項5】
前記第1の刺激部(11)および前記第2の刺激部(12)の各々は、前記温度刺激を生成するための加熱要素、冷却要素、赤外光源のうちの1つまたは複数を含んでいる、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の装置(100−300)。
【請求項6】
前記第1の刺激(20)および前記第2の刺激(20)の開始タイミングは、それぞれ、前記刺激期間において周期的に定められている、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の装置(100−300)。
【請求項7】
前記第1の刺激(20)および前記第2の刺激(20)の開始タイミングは、それぞれ、前記刺激期間において、確率論的もしくは決定論的に、または確率論および決定論の混合型として、定められている、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の装置(100−300)。
【請求項8】
刺激要素は、振動刺激(20)の場合に最大で0.5mmの振幅で振動する、
請求項1から請求項7のいずれかに記載の装置(100−300)。
【請求項9】
加熱要素は、温度刺激(20)の場合に前記患者の皮膚の表面上に37℃〜42℃の範囲内の温度を発生させる、
請求項1から請求項8のいずれかに記載の装置(100−300)。
【請求項10】
冷却要素は、温度刺激(20)の場合に前記患者の皮膚の表面上に22℃〜37℃の範囲内の温度を発生させる、
請求項1から請求項9のいずれかに記載の装置(100−300)。
【請求項11】
測定部(16)は、前記患者において測定された測定信号を受け取り、前記測定信号は前記第1の刺激(20)もしくは前記第2の刺激(20)またはその両方として前記患者に適用される、
請求項1から請求項10のいずれかに記載の装置(100−300)。
【請求項12】
患者の脳もしくは脊髄またはその両方におけるニューロンが病的に同期した活動を有する病気、を治療するために、請求項1から請求項11のいずれかに記載の装置(100−300)を使用する方法。
【請求項13】
振動刺激(20)、触覚刺激(20)、温度刺激(20)の少なくとも1種類を使用して患者を治療する装置(100−300)であって、
刺激(20)を生成するN個の刺激部(11−14)、
を備えており、
前記刺激(20)は、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類であり、
前記刺激部(11−14)の各々は、1〜60Hzの範囲内の周波数fstimで前記刺激(20)を周期的に生成し、
異なる刺激部(11−14)によって生成される前記刺激(20)は、タイミングをずらして生成され、
2つの連続する前記刺激(20)の間のタイミングのずれは、平均して1/(fstim×N)である、
装置(100−300)。
【請求項14】
前記刺激部(11−14)は、前記患者の皮膚の上に配置される、
請求項13記載の装置(100−300)。
【請求項15】
振動刺激(20)、触覚刺激(20)、温度刺激(20)の少なくとも1種類を使用して患者を治療する装置(100−300)であって、
第1の刺激(20)を前記患者の皮膚に印加する第1の刺激部(11)と、
第2の刺激(20)を前記患者の皮膚に印加する第2の刺激部(12)と、
を備えており、
前記第1の刺激(20)および前記第2の刺激(20)の各々は、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類であり、
前記第1の刺激(20)は、前記患者の受容器によって受け取られたとき、病的に同期した振動性の活動を有するニューロン集団の第1のサブ集団に伝えられ、前記第1の刺激(20)は、前記第1のサブ集団のニューロン活動の位相がリセットされる効果を有し、
前記第2の刺激(20)は、前記患者の受容器によって受け取られたとき、病的に同期した振動性の活動を有するニューロン集団の第2のサブ集団に伝えられ、前記第2の刺激(20)は、前記第2のサブ集団のニューロン活動の位相がリセットされる効果を有し、
前記第1の刺激(20)および前記第2の刺激(20)の少なくとも一部が異なるタイミングで生成される、
装置(100−300)。
【請求項16】
前記第1の刺激(20)および前記第2の刺激(20)の各々は、刺激期間において、平均して1〜60Hzの周波数fstimで繰り返される、
請求項15に記載の装置(100−300)。
【請求項17】
振動刺激(20)、触覚刺激(20)、温度刺激(20)の少なくとも1種類を使用して患者を治療する方法であって、
前記患者の皮膚に第1の刺激が印加され、前記第1の刺激が受容器によって受け取られ、前記受容器が、前記第1の刺激を、病的に同期した振動性の活動を有するニューロン集団の第1のサブ集団に伝え、前記第1の刺激は前記第1のサブ集団のニューロン活動の位相がリセットされる効果を有し、
前記患者の皮膚に第2の刺激が印加され、前記第2の刺激が受容器によって受け取られ、前記受容器が、前記第2の刺激を、病的に同期した振動性の活動を有するニューロン集団の第2のサブ集団に伝え、前記第2の刺激は前記第2のサブ集団のニューロン活動の位相がリセットされる効果を有し、
前記第1の刺激および前記第2の刺激の各々は、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類であり、
前記第1の刺激および前記第2の刺激の少なくとも一部が異なるタイミングで生成される、
方法。
【請求項18】
前記第1の刺激および第2の刺激の各々は、刺激期間において、平均して1〜60Hzの周波数fstimで繰り返される、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記振動刺激は、30〜300Hzの範囲内の周波数を有する周期的な刺激である、
請求項17または請求項18に記載の方法。
【請求項20】
刺激要素は、振動刺激の場合に最大で0.5mmの振幅で振動する、
請求項17から請求項19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
温度刺激の場合に、前記患者の皮膚の表面に22℃〜42℃の範囲内の温度が発生する、
請求項17から請求項20のいずれかに記載の方法。
【請求項1】
振動刺激(20)、触覚刺激(20)、温度刺激(20)の少なくとも1種類を使用して患者を治療する装置(100−300)であって、
第1の刺激(20)を生成する第1の刺激部(11)と、
第2の刺激(20)を生成する第2の刺激部(12)と、
を備えており、
前記第1の刺激(20)および前記第2の刺激(20)の各々は、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類であり、
前記第1の刺激(20)および前記第2の刺激(20)は、刺激期間において、平均して1〜60Hzの周波数でそれぞれ繰り返され、
前記第1の刺激(20)および前記第2の刺激(20)の少なくとも一部が異なるタイミングで生成される、
装置(100−300)。
【請求項2】
前記振動刺激(20)は、30〜300Hzの範囲内の周波数を有する周期的な刺激である、
請求項1に記載の装置(100−300)。
【請求項3】
前記第1の刺激部(11)および前記第2の刺激部(12)は、前記患者の皮膚の上に配置される、
請求項1または請求項2に記載の装置(100−300)。
【請求項4】
前記第1の刺激部(11)および前記第2の刺激部(12)の各々は、前記振動刺激もしくは前記触覚刺激またはその両方を生成するためのDCモータ、ボイスコイル、圧電変換器、電気活性高分子のうちの少なくとも1つ、を含んでいる、
請求項1から請求項3のいずれかに記載の装置(100−300)。
【請求項5】
前記第1の刺激部(11)および前記第2の刺激部(12)の各々は、前記温度刺激を生成するための加熱要素、冷却要素、赤外光源のうちの1つまたは複数を含んでいる、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の装置(100−300)。
【請求項6】
前記第1の刺激(20)および前記第2の刺激(20)の開始タイミングは、それぞれ、前記刺激期間において周期的に定められている、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の装置(100−300)。
【請求項7】
前記第1の刺激(20)および前記第2の刺激(20)の開始タイミングは、それぞれ、前記刺激期間において、確率論的もしくは決定論的に、または確率論および決定論の混合型として、定められている、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の装置(100−300)。
【請求項8】
刺激要素は、振動刺激(20)の場合に最大で0.5mmの振幅で振動する、
請求項1から請求項7のいずれかに記載の装置(100−300)。
【請求項9】
加熱要素は、温度刺激(20)の場合に前記患者の皮膚の表面上に37℃〜42℃の範囲内の温度を発生させる、
請求項1から請求項8のいずれかに記載の装置(100−300)。
【請求項10】
冷却要素は、温度刺激(20)の場合に前記患者の皮膚の表面上に22℃〜37℃の範囲内の温度を発生させる、
請求項1から請求項9のいずれかに記載の装置(100−300)。
【請求項11】
測定部(16)は、前記患者において測定された測定信号を受け取り、前記測定信号は前記第1の刺激(20)もしくは前記第2の刺激(20)またはその両方として前記患者に適用される、
請求項1から請求項10のいずれかに記載の装置(100−300)。
【請求項12】
患者の脳もしくは脊髄またはその両方におけるニューロンが病的に同期した活動を有する病気、を治療するために、請求項1から請求項11のいずれかに記載の装置(100−300)を使用する方法。
【請求項13】
振動刺激(20)、触覚刺激(20)、温度刺激(20)の少なくとも1種類を使用して患者を治療する装置(100−300)であって、
刺激(20)を生成するN個の刺激部(11−14)、
を備えており、
前記刺激(20)は、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類であり、
前記刺激部(11−14)の各々は、1〜60Hzの範囲内の周波数fstimで前記刺激(20)を周期的に生成し、
異なる刺激部(11−14)によって生成される前記刺激(20)は、タイミングをずらして生成され、
2つの連続する前記刺激(20)の間のタイミングのずれは、平均して1/(fstim×N)である、
装置(100−300)。
【請求項14】
前記刺激部(11−14)は、前記患者の皮膚の上に配置される、
請求項13記載の装置(100−300)。
【請求項15】
振動刺激(20)、触覚刺激(20)、温度刺激(20)の少なくとも1種類を使用して患者を治療する装置(100−300)であって、
第1の刺激(20)を前記患者の皮膚に印加する第1の刺激部(11)と、
第2の刺激(20)を前記患者の皮膚に印加する第2の刺激部(12)と、
を備えており、
前記第1の刺激(20)および前記第2の刺激(20)の各々は、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類であり、
前記第1の刺激(20)は、前記患者の受容器によって受け取られたとき、病的に同期した振動性の活動を有するニューロン集団の第1のサブ集団に伝えられ、前記第1の刺激(20)は、前記第1のサブ集団のニューロン活動の位相がリセットされる効果を有し、
前記第2の刺激(20)は、前記患者の受容器によって受け取られたとき、病的に同期した振動性の活動を有するニューロン集団の第2のサブ集団に伝えられ、前記第2の刺激(20)は、前記第2のサブ集団のニューロン活動の位相がリセットされる効果を有し、
前記第1の刺激(20)および前記第2の刺激(20)の少なくとも一部が異なるタイミングで生成される、
装置(100−300)。
【請求項16】
前記第1の刺激(20)および前記第2の刺激(20)の各々は、刺激期間において、平均して1〜60Hzの周波数fstimで繰り返される、
請求項15に記載の装置(100−300)。
【請求項17】
振動刺激(20)、触覚刺激(20)、温度刺激(20)の少なくとも1種類を使用して患者を治療する方法であって、
前記患者の皮膚に第1の刺激が印加され、前記第1の刺激が受容器によって受け取られ、前記受容器が、前記第1の刺激を、病的に同期した振動性の活動を有するニューロン集団の第1のサブ集団に伝え、前記第1の刺激は前記第1のサブ集団のニューロン活動の位相がリセットされる効果を有し、
前記患者の皮膚に第2の刺激が印加され、前記第2の刺激が受容器によって受け取られ、前記受容器が、前記第2の刺激を、病的に同期した振動性の活動を有するニューロン集団の第2のサブ集団に伝え、前記第2の刺激は前記第2のサブ集団のニューロン活動の位相がリセットされる効果を有し、
前記第1の刺激および前記第2の刺激の各々は、振動刺激、触覚刺激、温度刺激の少なくとも1種類であり、
前記第1の刺激および前記第2の刺激の少なくとも一部が異なるタイミングで生成される、
方法。
【請求項18】
前記第1の刺激および第2の刺激の各々は、刺激期間において、平均して1〜60Hzの周波数fstimで繰り返される、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記振動刺激は、30〜300Hzの範囲内の周波数を有する周期的な刺激である、
請求項17または請求項18に記載の方法。
【請求項20】
刺激要素は、振動刺激の場合に最大で0.5mmの振幅で振動する、
請求項17から請求項19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
温度刺激の場合に、前記患者の皮膚の表面に22℃〜42℃の範囲内の温度が発生する、
請求項17から請求項20のいずれかに記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【公表番号】特表2013−519400(P2013−519400A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552256(P2012−552256)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【国際出願番号】PCT/DE2011/075004
【国際公開番号】WO2011/098082
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(510238926)フォースチュングスヌートラム ユーリッヒ ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【国際出願番号】PCT/DE2011/075004
【国際公開番号】WO2011/098082
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(510238926)フォースチュングスヌートラム ユーリッヒ ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】
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