説明

振動式コンベア

【課題】上白糖などのトラフに付着し易い搬送材であっても、トラフに強固に付着することを防止して搬送材を効率良く搬送できるとともに、振動式コンベアのメンテナンス作業に掛かる労力と時間とを大幅に削減して、稼働率が向上された振動式コンベアを提供する。
【解決手段】搬送方向に延びる樋状のトラフ11に振動を与えて、トラフ11上に載置された搬送材を搬送する振動式コンベア10であって、トラフ10は、前記搬送方向に直交する断面が円弧状に形成されるとともに、前記搬送材に対して滑り易さを有する材料によって構成され、トラフ11の径方向の肉厚tが3mm以上とされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送方向に延びる樋状のトラフを振動させることによって、トラフ上に載置された搬送材を搬送する振動式コンベアであって、特に上白糖などの食品材料を搬送する振動式コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば上白糖などの食品材料を搬送する手段として、搬送方向に延びる樋状のトラフと、このトラフに振動を与える振動付与手段とを備え、振動付与手段によってトラフを振動させて、トラフの上に載置された搬送材を搬送方向に向けて搬送する振動式コンベアが使用されている。
このような振動式コンベアに備えられたトラフとしては、主に鋼材などで構成されて底面が平板状に形成されたものが広く提供されている(特許文献1参照)。
【0003】
搬送材として例えば上白糖を鋼材で構成されたトラフの上に載置した場合には、上白糖がトラフの底面に強固に付着してしまい、トラフに振動を与えても上白糖を搬送できなくなってしまうことがあった。また、トラフに上白糖が付着してトラフ自体の重量が増加すると、トラフを振動させるための動力が必要以上に大きくなり、エネルギーを無駄に消費してしまうといった問題があった。
さらに、トラフに強固に付着した上白糖を除去するために、トラフの清掃を頻繁に行う必要があり、振動式コンベアのメンテナンス作業に多くの時間と労力を要するといった問題や、振動式コンベアの稼働率が低下するといった問題があった。
【0004】
そこで上白糖等の搬送材がトラフに強固に付着することを防止するために、トラフの内面に固体潤滑性を有するポリテトラフルオロエチレン系樹脂を膜厚0.02〜1.2mm程度でコーティングしたものや、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂で構成された肉厚0.1〜0.3mm程度のシート材を張り付けたものが提供されている。
【0005】
ここで、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂は滑り摩擦係数が小さく、載置された上白糖等の搬送材が滑り易くなるため、トラフに搬送材が強固に付着することが防止され、搬送材を効率良く搬送することができるものである。
【特許文献1】特開2002−321811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トラフの内面にポリテトラフルオロエチレン系樹脂をコーティングしたものや肉厚0.1〜0.3mm程度の薄いシート材を張り付けたものでは、上白糖などの搬送材がトラフ内に投入される際にコーティング及びシート材に強く衝突して、これらコーティング及びシート材が短期間で摩滅してしまうことがあった。ポリテトラフルオロエチレン系樹脂が局所的に摩滅して鋼材が露呈した場合には、鋼材が露呈した部分に搬送材が付着して搬送できなくなってしまうことがあった。
【0007】
このため、トラフの表面状況を確認するために、トラフ内部を頻繁に点検する必要があった。また、コーティングやシート材の摩滅が確認された場合には、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の再コーティングや、シート材の張り替えを行う必要があった。
このように、せっかく搬送材の付着を防止してトラフの清掃などのメンテナンス作業を軽減したにもかかわらず、点検作業や張り替え作業などが必要となり、かえってメンテナンス作業に多くの労力と時間とを費やすことになり、振動式コンベアの稼働率が低下してしまうといった問題があった。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであって、上白糖などのトラフに付着し易い搬送材であっても、トラフに強固に付着することを防止して搬送材を効率良く搬送できるとともに、振動式コンベアのメンテナンス作業に掛かる労力と時間とを大幅に削減でき、稼働率が向上された振動式コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に係る発明は、搬送方向に延びる樋状のトラフに振動を与えて、前記トラフ上に載置された搬送材を搬送する振動式コンベアであって、前記トラフは、前記搬送方向に直交する断面が円弧状に形成されるとともに、前記搬送材に対して滑り易さを有する材料によって構成され、前記トラフの径方向の肉厚が3mm以上とされていることを特徴としている。
【0010】
この構成の振動式コンベアでは、トラフの搬送方向に直交する断面が円弧状に形成されているので、搬送材とトラフとの接触面積が比較的小さくなる。
また、トラフが、搬送材に対して滑り易さを有する材料によって構成されているので、トラフ上に載置された搬送材がトラフに強固に付着することが防止される。
さらに、トラフの径方向の肉厚が3mm以上とされているので、搬送材が投入されてトラフに強く衝突しても、搬送材に対して滑り易さを有する材料が容易に摩滅することがない。
【0011】
ここで、搬送材に対して滑り易さを有する材料とは、滑り摩擦係数が小さく、かつ搬送材との反応性が低く化学的安定性を有する材料である。
滑り摩擦係数の小さな材料の具体例として、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリウレタン樹脂などの合成樹脂や、ステンレスなどの金属及び、アルミナ、ジルコニア、ムライトなどのセラミックスなどが挙げられる。これらの材料の中から、搬送材の性質や温度などを考慮して選択することが好ましい。
【0012】
例えば、上白糖などの食品材料を搬送するコンベアには、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、及びこれらの重合体で構成されたトラフを使用することが好ましい。これらポリテトラフルオロエチレン系樹脂は、滑り摩擦係数が小さいとともに耐熱性、耐酸性に優れ、さらに吸水性、吸湿性を有していないため、上白糖とトラフとの反応がなく、上白糖がトラフ上に強固に付着することがない。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記トラフは、前記搬送方向に直交する断面が半円形に形成されていることを特徴としている。
この構成の振動式コンベアでは、トラフが半円形に形成されているので、搬送材とトラフとの接触面積が最も小さくなる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、搬送材とトラフとの接触面積が小さくなるとともに、トラフが搬送材に対して滑り易さを有する材料によって構成されているので、トラフと搬送材との滑り摩擦抵抗が小さくなり、搬送材がトラフに強固に付着することを防止できる。よって、振動によって搬送材を効率良く搬送することができる。
【0015】
また、搬送材がトラフに強く衝突しても搬送材に対して滑り易さを有する材料が容易に摩滅することがないので、頻繁な点検作業や再コーティング作業及びシート材の張り替え作業が不要となり、振動式コンベアのメンテナンス作業に掛かる労力と時間とを大幅に削減することができる。よって、振動式コンベアの稼働率を上げることができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、搬送材とトラフとの接触面積が最も小さくなるので、トラフと搬送材との滑り摩擦抵抗をさらに小さくすることができ、搬送材がトラフに強固に付着することを確実に防止でき、搬送材を効率良く搬送することができる。
【0017】
このように、本発明によれば、上白糖などのトラフに付着し易い搬送材であっても、トラフに強固に付着することを防止して搬送材を効率良く搬送できるとともに、振動式コンベアのメンテナンス作業に掛かる労力と時間とを大幅に削減でき、稼働率が向上された振動式コンベアを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態について添付した図面を参照して説明する。図1から図4に本発明の実施形態である振動式コンベアを示す。
振動式コンベア10は、図3及び図4に示すように、搬送方向Xに向けて延びる樋状をなすトラフ11と、トラフ11の外周面に配置されたカバー12と、カバー12及びトラフ11を支持するベース13と、トラフ11に対して振動を付与する振動付与手段14とを有している。
【0019】
樋状をなすトラフ11は、搬送方向Xに沿って配置され、本実施形態では図3に示すように搬送方向X前方側(図3において右側)が下方に向かうように傾斜して配置されている。
このトラフ11の搬送方向Xに直交する断面は、図1に示すように半円形をなしており、トラフ11の径方向の肉厚tは3mm以上に設定され、本実施形態では20mmとされている。
【0020】
そして、このトラフ11は、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)とテトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)との重合体によって構成されており、滑り摩擦係数が小さいとともに、耐熱性、耐酸性に優れ、かつ、吸水性、吸湿性を有さないものである。
【0021】
トラフ11は、図1及び図3に示すように上方に向けて大きく開口されており、本実施形態では、図3に示すように、トラフ11の長手方向のうちの搬送方向X後端側から約8割の部分が開口されており、搬送材である上白糖の投入口15とされている。
また、トラフ11の搬送方向X前方側には、下方に向けて垂直に延びる排出部16が設けられている。
【0022】
断面半円形をなすトラフ11の外周側には、図1に示すように、例えば鋼材で構成されたカバー12が装着されている。トラフ11の上縁部には、図1に示すように、断面が概略L字状をなしてL字の内側を向く壁面の一方からボルト17Aが突出された挟持部材17が配置されている。ボルト17Aがトラフ11及びカバー12を挿通するようにして配置され、該ボルト17Aにカバー12の外側からナット17Bが締め込まれることによって、トラフ11にカバー12が装着されているのである。
また、トラフ11の上縁部の上方には、図2及び図3に示すように、投入口15の側壁面をなすスカート部18が、搬送方向Xに対して垂直で上方に向けて延びるように立設されている。
【0023】
トラフ11及びカバー12を支持するベース13は、図3に示すように側面視して五角形状をなしている。具体的には、搬送方向Xに沿って延びる長辺とこの長辺から垂直に延びる一対の短辺と、この一対の短辺の端部から延びて下側に向かうに従い互いに近づく一対の斜辺とからなる五角形状をなしているのである。この一対の斜辺の接点は、図3に示すように搬送方向X後方側に位置するように形成されている。
【0024】
ベース13の搬送方向X前方側には、図3及び図4に示すように、ベース13から側方に向けて張り出した台座部21が設けられ、この台座部21を下側から支持するように制振バネ材23が配備されている。また、搬送方向X後方側には、図3及び図4に示すように、ベース13から搬送方向X後方へ突出したフック部22が設けられ、このフック部22には、上方からベース13を支持するように制振バネ材23が掛止されている。
【0025】
トラフ11に対して振動を付与する振動付与手段14は、ベース13の側面に取り付けられたロータリーバイブレータ24によって構成されている。このロータリーバイブレータ24は、ロータリーバイブレータ24の内部に偏心状態で取り付けられたウエイト(図示せず)を回転させ、その遠心力によって往復振動を発生させるものである。
【0026】
このロータリーバイブレータ24は、図4に示すようにベース13の両側面に各一基ずつ対向するように配置されている。さらに、ロータリーバイブレータ24は、図3に示すように、ベース13がなす五角形の重心近傍に取り付けられており、ベース13に配備された制振バネ材23に対してウエイトの回転軸Oが傾斜するように配置されているのである。
【0027】
このように構成された振動式コンベア10の作用について説明する。
ロータリーバイブレータ24を起動することにより、ロータリーバイブレータ24の内部に収容されたウエイトが回転軸O中心に回転される。このウエイトの回転による遠心力によって回転軸Oと直交する方向Pに向けた振動が発生する。この振動が、ロータリーバイブレータ24が取り付けられているベース13に直接伝達され、トラフ11が振動することになる。
【0028】
ここで、ロータリーバイブレータ24が、ベース13がなす五角形の重心近傍に取り付けられているので、カバー12、ベース13及びトラフ11は、振動方向Pに沿って略直線的に往復振動することになる。
このように振動が付与されたトラフ11内には、例えば上白糖が投入ポッパー(図示せず)から投入口15に向けて落下され、トラフ11の底面に上白糖が載置される。この上白糖はトラフ11の振動によって搬送方向Xに向けて搬送され、排出部16から振動式コンベア10の外部へと排出されるのである。
【0029】
本実施形態に係る振動式コンベア10では、トラフ11の搬送方向Xに直交する断面が半円形に形成されており、搬送材である上白糖とトラフ11との接触面積が最も小さくなるとともに、トラフ11が滑り摩擦係数の小さいポリテトラフルオロエチレン系樹脂によって構成されているので、トラフ11と上白糖との滑り摩擦抵抗を小さくすることができる。また、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂は、耐熱性、耐酸性に優れているとともに吸湿性や吸水性を有していないので、トラフ11と上白糖とが反応しない。
したがって、上白糖がトラフ11に強固に付着することが防止され、振動によって上白糖を効率良く搬送することができる。
さらに、上白糖との接触によってトラフ11が劣化することがないとともに、上白糖がトラフ11との接触によって変質するおそれがない。よって、搬送材である上白糖を安定して搬送することができる。
【0030】
また、トラフ11の径方向の肉厚が3mm以上に設定され、本実施形態では20mmとされているので、上白糖が投入ポッパーから投入されてトラフ11に強く衝突した場合でも、滑り摩擦係数の小さなポリテトラフルオロエチレン系樹脂が摩滅することがなく、頻繁な点検作業や再コーティングやシート材の張り替えなどのメンテナンス作業が不要となり、振動式コンベア10のメンテナンス作業に掛かる労力と時間とを大幅に削減して、振動式コンベア10の稼働率を向上することができる。
【0031】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、上白糖を搬送する振動式コンベア10として説明したが、他の搬送材を搬送するものであってもよい。
【0032】
また、トラフ11をポリテトラフルオロエチレン系樹脂で構成されたもので説明したが、搬送材に対して滑り易さを有する材料で構成されたものであればよい。ただし、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂は、摩擦抵抗が小さいとともに、耐酸性や耐熱性に優れた材料であるため、上白糖などの食品材料を搬送する振動式コンベア10には好適である。
【0033】
さらに、トラフ11の搬送方向Xに直交する断面の形状が半円形に形成されたもので説明したが、これに限定されることはなく、断面が円弧状をなしていればよい。ただし、半円形とすることによってトラフ11と搬送材との接触面積が最も小さくなり、トラフ11と搬送材との滑り摩擦抵抗を小さくすることができるので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態である振動式コンベアのトラフの断面図である。
【図2】図1のトラフ取付部拡大図である。
【図3】本発明の実施形態である振動式コンベアの側面図である。
【図4】図3の正面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 振動式コンベア
11 トラフ
14 振動付与手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に延びる樋状のトラフに振動を与えて、前記トラフ上に載置された搬送材を搬送する振動式コンベアであって、
前記トラフは、前記搬送方向に直交する断面が円弧状に形成されるとともに、前記搬送材に対して滑り易さを有する材料によって構成され、
前記トラフの径方向の肉厚が3mm以上とされていることを特徴とする振動式コンベア。
【請求項2】
前記トラフは、前記搬送方向に直交する断面が半円形に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の振動式コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−143641(P2008−143641A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331837(P2006−331837)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000002059)神鋼電機株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】