説明

振動式コンベア

【課題】泥状とされた焼却灰などのトラフの底面に付着し易い搬送材であっても、トラフに強固に付着することを防止でき、搬送材を効率よく搬送できるとともに、振動式コンベアのメンテナンス作業に掛かる労力と時間とを大幅に削減して、稼働率を向上することができる振動式コンベアを提供する。
【解決手段】搬送方向に向けて延びる樋状に形成されたトラフ2と、トラフ2に振動を与える振動付与手段とを備えた振動式コンベアであって、トラフ2の底面には、エラストマからなるシート材22が、搬送方向に直交する断面において中央部分が上側に凸となるアーチ状に張架されており、シート材22の下側には、複数の隔壁28によって形成された収容室29が複数並列に設けられ、収容室29の少なくとも一つには、前記振動手段による振動によって収容室29内で跳動してシート材22の下面を叩くタッピング部材30が収容されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樋状のトラフを振動させることによってトラフ上に載置された搬送材を搬送する振動式コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
振動式コンベアは、搬送方向に延びる樋状のトラフと、このトラフに振動を与える振動付与手段とを備えており、トラフを振動付与手段によって振動させて、トラフの上に載置された搬送材を搬送方向に向けて搬送するものである(特許文献1参照)。また、このトラフの底面に篩枠を設けて搬送材を篩に掛けながら搬送するものも提供されている(特許文献2参照)。
【0003】
上記のような振動式コンベアに備えられた樋状のトラフは、主に鋼材などの金属で構成されたものが広く提供されている。
ところで、振動式コンベアによって搬送される搬送材の一例として、焼却炉で発生する焼却灰が挙げられる。焼却炉で発生する焼却灰には、冷却のため及び搬送中の飛散防止のために水が吹き付けられており、搬送される焼却灰は水分を20%から30%を含んだ泥状のものとされている。
【0004】
水分を含んで泥状とされた焼却灰を金属製のトラフの上に載置した場合には、焼却灰がトラフの底面に強固に付着してしまい、トラフに振動を与えても焼却灰を搬送できなくなってしまうことがあった。また、トラフに搬送材が付着してトラフ自体の重量が増加すると、トラフを振動させるための動力が必要以上に大きくなり、エネルギーを無駄に消費してしまうといった問題があった。
さらに、トラフに付着した搬送材を除去するために、トラフの清掃を頻繁に行う必要があり、振動式コンベアのメンテナンス作業に多くの時間と労力を要するといった問題や、振動式コンベアの稼働率が低下するといった問題があった。
【0005】
そこで搬送材の付着防止のため、トラフの底面にゴム板を水平に張架した振動式コンベアが提供されている。このような構成とされた振動式コンベアでは、トラフの底面に張架されたゴム板が振動付与手段による振動に伴って揺動するため、泥状の焼却灰などがトラフ底面に強固に付着する前に剥離することができるものである。
【特許文献1】特開平07−328550号公報
【特許文献2】実開平07−25975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようにゴム板を水平に張架した振動式コンベアでは、振動付与手段による振動に伴ってゴム板が上下方向に大きく移動してばたつくことがあり、ゴム板の劣化が著しく、ゴム板の交換を頻繁に行う必要があった。このため、トラフの底面をゴム板にして搬送材の付着を防止したにもかかわらず、ゴム板交換などのメンテナンス作業が必要となり、振動式コンベアの稼働率が低下してしまうといった問題があった。
さらに、ゴム板全体が大きく上下に揺動するため、ゴム板に付着した搬送材を効率よく剥離できないといった問題があった。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであって、泥状とされた焼却灰などの付着し易い搬送材であっても、トラフに強固に付着することを防止でき、搬送材を効率よく搬送できるとともに、振動式コンベアのメンテナンス作業に掛かる労力と時間とを大幅に削減して、稼働率を向上することができる振動式コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に係る発明は、搬送方向に向けて延びる樋状に形成されたトラフと、該トラフに振動を与える振動付与手段とを備えた振動式コンベアであって、前記トラフの底面には、エラストマからなるシート材が、前記搬送方向に直交する断面において中央部分が上側に凸となるアーチ状に張架されており、前記シート材の下側には、複数の隔壁によって形成された収容室が複数並列に設けられ、該収容室の少なくとも一つには、前記振動手段による振動に伴って前記収容室内で跳動して前記シート材の下面を叩くタッピング部材が収容されていることを特徴としている。
【0009】
この構成の振動式コンベアでは、エラストマからなるシート材が、搬送方向に直交する断面において中央部分が上側に凸となるアーチ状に張架されており、シート材の上方への弾性変形量が抑制されているので、振動付与手段による振動に伴ってシート材が揺動する場合に、シート材が大きく上方に向けて移動することが防止される。
また、シート材の下側に設けられた収容室に、収容室内で跳動するタッピング部材が収容されているので、振動付与手段による振動に伴ってタッピング部材が収容室内で跳動してシート材を下側から叩くことになる。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記タッピング部材がボール材であることを特徴としている。
この構成の振動式コンベアでは、振動付与手段による振動によってボール材が収容室内で跳動し、シート材を下側から局所的に叩くことになる。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記隔壁のうちの少なくともひとつが、前記搬送方向に交差する方向に延びるように配置されていることを特徴としている。
この構成の振動式コンベアでは、隔壁が搬送方向に交差する方向に延びるように配置されているので、例えば搬送方向に沿ってトラフが傾斜している場合でも、タッピング部材とされたボール材が一箇所に偏ってしまうことがない。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記トラフには、前記シート材の張力を調整する張力調整機構が備えられたことを特徴としている。
この構成の振動式コンベアでは、張力調整機構によってシート材の張力を調整することにより、振動付与手段による振動に伴ってシート材が揺動する場合のシート材の上下方向の移動量が調整されることになる。つまり、張力を高くすることにより、シート材の弾性変形が抑制されてシート材の移動量が小さくなり、張力を低くすることにより、シート材が弛緩してシート材の移動量が大きくなるのである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、振動付与手段による振動に伴ってシート材が揺動する場合にシート材が大きく上方に向けて移動することが防止されるので、シート材が大きくばたつくことがなく、シート材の早期劣化を抑えて寿命延長を図ることができる。したがって、シート材の交換頻度を少なくすることができ、振動式コンベアのメンテナンス作業に掛かる時間と労力を大幅に削減できる。そして、この振動式コンベアの稼働率を向上させることができる。
【0014】
また、タッピング部材が収容室内で跳動してシート材を下側から叩くことになるので、シート材の上に付着した搬送材を簡単に剥離することができ、搬送材が強固に付着することを防止でき、トラフの清掃などのメンテナンス作業を軽減することができる。
【0015】
さらに、振動付与手段による振動に伴ってタッピング部材が跳動するために、別途シート材を揺動したり叩いたりする手段を設けることなく搬送材の付着を防止できる。したがって、振動式コンベアの構成を簡単なものとすることができ、この振動式コンベアのメンテナンス作業を軽減することができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、ボール材によってシート材が局所的に叩かれるので、シート材全体が大きく揺動することがないとともに、シート材に付着した搬送材を効率よく剥離することができる。
また、請求項3に係る発明によれば、例えばトラフが傾斜するように配置されている場合でもタッピング部材としてのボール材が一箇所に偏ってしまうことがなく、シート材全体にわたって搬送材の付着を防止できる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、シート材の張力を調整することにより、振動付与手段による振動に伴ってシート材が揺動する場合のシート材の上下方向の移動量が調整されるので、シート材の無用なばたつきをさらに確実に防止することができ、シート材の寿命延長を図ることができる。また、搬送材やシート材の材質を考慮して、好適な張力に調整することにより、搬送材の搬送や付着防止をさらに効率よく行うことができる。
【0018】
このように、本発明によれば、泥状とされた焼却灰などの付着し易い搬送材であっても、トラフに強固に付着することを防止でき、搬送材を効率よく搬送できるとともに、振動式コンベアのメンテナンス作業に掛かる労力と時間とを大幅に削減して、稼働率を向上することができる振動式コンベアを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態について添付した図面を参照して説明する。図1から図4に本発明の実施形態である振動式コンベアの一例を示す。
振動式コンベア1は、図3及び図4に示すように、搬送方向Xに向けて延びる樋状をなすトラフ2と、トラフ2を収容する箱型のケーシング3と、トラフ2及びケーシング3を支持する振動台4とを有している。
【0020】
振動台4は、基台5の上に制振バネ6を介して設置されている。振動台4にはモータ7が載置されており、このモータ7にベルトによって接続されたクランクプーリー8が備えられている。このクランクプーリー8には、一端側がケーシング3の側壁面に固定された振動伝達部材9の他端側が接続されている。そして、これら振動台4とモータ7とクランクプーリー8と振動伝達部材9とがケーシング3及びトラフ2に対して振動を与える振動付与手段10を構成している。
【0021】
この振動台4とケーシング3とは、複数(本実施形態では、図3に示すように4つ)の棒状の連結部材11によって連結されており、連結部材11の一端側とケーシング3とが第1係止部12によって回転可能に係止され、連結部材11の他端側と振動台4とが第2係止部13によって回転可能に係止されている。そして、この連結部材11の長手方向中央部は、振動台4の上面に設けられた回転支軸14によって回転可能に支持されているのである。
また、連結部材11と振動台4とは、一端がケーシング3に設けられた第1係止部12に接続された傾斜バネ15によって連結されている。
【0022】
ケーシング3は、図3に示すように搬送方向Xに向けて延びるように形成されており、一端側から他端側に向けて漸次低くなるように傾斜して設けられている。ケーシング3の一端側の上面には、搬送材が投入される投入口31が設けられており、ケーシング3の他端側には搬送材の排出口32が設けられている。
【0023】
ケーシング3の内部には、樋状をなすトラフ2が収容されている。このトラフ2は、例えば鋼材等で構成されたトラフ本体21と、このトラフ本体21の底面側に配置されたゴム板22とを有している。このゴム板22は、図1及び図2に示すように、トラフ本体21の底面から上方に向けて立設されて搬送方向Xに沿うように延びる複数(本実施形態では3つ)の支持壁23によって支持されている。図1に示すように搬送方向Xに直交する断面において中央部に位置する支持壁23の高さが最も高くされており、ゴム板22が、搬送方向Xに直交する断面において中央部分が上側に凸となるアーチ状に張架されているのである。
【0024】
また、ゴム板22の搬送方向Xに直交する断面における端部は、断面がS字状をなす掛止フック24の一端にボルト止めされており、掛止フック24の他端側がトラフ本体21の側壁面の内面に当接させられている。また、この掛止フック24とトラフ本体21の側壁面とを挟持するように調整ボルト25が備えられている。この掛止フック24と調整ボルトとがゴム板22の張力調整機構26を構成している。
【0025】
ゴム板22の下側部分には、図2に示すように複数の仕切り壁27が搬送方向Xに対して直交する方向に延びるように設けられ、仕切り壁27と前記支持壁23とが格子状に配置され断面矩形の収容室29が形成されている。つまり、支持壁23と仕切り壁27とが収容室29を形成する隔壁28を構成しているのである。そして、この収容室29は、ゴム板23の下面全体にわたって設けられている。
これらの収容室29には、収容室29の内部で跳動するタッピングボール30が複数収容されており、本実施形態では、図2に示すように、一つの収容室29に4〜5個のタッピングボール30が収容されている。
【0026】
このように構成された振動式コンベア1の作用について説明する。
モータ7を回転させることにより、ベルトを介して接続されたクランクプーリー8が回転する。このクランクプーリー8の回転によってクランクプーリー8に他端側が接続された振動伝達部材9が揺動し、この揺動が振動伝達部材9の一端側が固定されているケーシング3に伝達されて、ケーシング3及びケーシング3内部に収容されたトラフ2に振動が付与される。ここで、傾斜バネ15及び連結部材11は、ケーシング3の動きを規制するガイドの役割をなしている。また、振動台4もケーシング3からの反力により振動することになるが、基台5と振動台4との間に設けられた制振バネ6によって振動台4の振動が基台5へ伝わることを防止している。
【0027】
このように振動が付与されたケーシング3内に、ケーシング3の一端側に設けられた投入口31から搬送材として水分を20%から30%含んだ焼却灰が投入され、トラフ2の底面に配置されたゴム板22の上に焼却灰が載置される。この焼却灰はトラフ2の振動によって搬送方向Xに向けて搬送され、排出口32からケーシング3外部への排出されるのである。
【0028】
本実施形態に係る振動式コンベア1では、トラフ2の底面にゴム板22が配置され、このゴム板22の搬送方向Xに直交する断面における中央部分が上側に凸となるようにアーチ状に張架されているので、振動によってゴム板22が上方に向けて過度に移動することがない。さらに、本実施形態ではゴム板22が支持壁23によって下側から支持されているので、振動によってゴム板22が下方に向けて過度に移動することもない。
よって、ゴム板22が無用にばたつくことがなくなり、ゴム板22の寿命延長を図ることができる。
【0029】
また、ゴム板22の下側に複数の収容室29が設けられ、この収容室29の中に複数のタッピングボール30が備えられているので、振動付与手段10による振動によってタッピングボール30が収容室29内で跳動し、ゴム板22を下側から叩くことになる。したがって、ゴム板22の上に載置された水分を多く含む焼却灰がゴム板22に強固に付着することを防止して、焼却灰の搬送を効率的に行うことができる。また、搬送材の付着によるトラフ2の重量増加を防止でき、振動付与する際に必要な動力を少なくすることができる。
【0030】
また、タッピングボール30は振動付与手段10による振動によって、収容室29内を跳動してゴム板22を叩くことになるので、ゴム板22を叩くための駆動手段等を別途設ける必要がなく、この振動式コンベア1を簡単な構成とすることができる。
また、ゴム板22への付着が防止されてゴム板22を頻繁に清掃する必要がなくなるとともに、振動式コンベア1が簡単な構成とされているので、この振動式コンベア1のメンテナンス作業に掛かる労力と時間とを大幅に削減することができる。
【0031】
また、タッピングボール30によってゴム板22を局所的に叩くことができるので、ゴム板23に付着した搬送材を効率良く剥離するとともに、ゴム板22全体が大きくばたつくことを防止できる。
また、仕切り壁27が搬送方向に直交する方向に延びるように設けられ、収容室29がゴム板22の下面全体にわたって形成されているので、トラフ2が傾斜するように配置されていてもタッピングボール30が一箇所に偏ってしまうことがなく、ゴム板22の下面全体を叩くことができる。
また、ゴム板22の搬送方向と直交する方向における張力を調整する張力調整機構26が備えられているので、調整ボルト25によってゴム板22の張力を調整してゴム板22の上方への移動量を調整でき、搬送材を効率よく搬送することができる。
【0032】
このように、本実施例に係る振動式コンベア1によれば、メンテナンスが容易であるとともに、水分を多く含む焼却灰のように付着し易い搬送材であっても効率よく搬送することができる。
【0033】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、水分を含む焼却灰を搬送する振動式コンベアとして説明したが、他の搬送材を搬送するものであってもよい。
また、タッピング部材をタッピングボールとして説明したが、他の形状であっても良く、立方体形状や板状のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態である振動式コンベアのトラフ部分の断面図である。
【図2】図1のトラフ本体の下側に設けられた収容室部分の上面図である。
【図3】本発明の実施形態である振動式コンベアの側面図である。
【図4】図3の正面部分断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 振動式コンベア
2 トラフ
10 振動付与手段
22 ゴム板(シート材)
23 支持壁
26 張力調整機構
27 仕切り壁
28 隔壁
29 収容室
30 タッピングボール(タッピング部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に向けて延びる樋状に形成されたトラフと、該トラフに振動を与える振動付与手段とを備えた振動式コンベアであって、
前記トラフの底面には、エラストマからなるシート材が、前記搬送方向に直交する断面において中央部分が上側に凸となるアーチ状に張架されており、
前記シート材の下側には、複数の隔壁によって形成された収容室が複数並列に設けられ、該収容室の少なくとも一つには、前記振動手段による振動に伴って前記収容室内で跳動して前記シート材の下面を叩くタッピング部材が収容されていることを特徴とする振動式コンベア。
【請求項2】
前記タッピング部材がボール材であることを特徴とする請求項1に記載の振動式コンベア。
【請求項3】
前記隔壁のうちの少なくともひとつが、前記搬送方向に交差する方向に延びるように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の振動式コンベア。
【請求項4】
前記トラフには、前記シート材の張力を調整する張力調整機構が備えられたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の振動式コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−143643(P2008−143643A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331839(P2006−331839)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000002059)神鋼電機株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】