説明

振動式ハツリ機

【課題】チゼル毎にハツリ機を専用とすることなく、既存の振動装置を本体として利用でき、且つ、ハツリの内容に対応してチゼルの交換も容易で、ハツリ作業が能率的に行え、経済性が高いハツリ機の提供を目的とする。
【解決手段】パワーショベル等建設機械のアーム先端に取り付けて使用される振動コンパクタのベースプレート5に着脱容易にチゼルアタッチメント2をボルト締めかピン接続またはロック接続手段で取り付けるもので、チゼルアタッチメント2は下面に多数のチゼル21を基部の溶着手段で平板状のアタッチプレート20に取り付けたものである。このチゼルアタッチメント2は作業対象に応じられるように各種のものを揃える。チゼルアタッチメントはボルト手段で交換可能にアタッチプレートに取り付けるようにしてもよい。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
この考案は、建設機械のアーム先端に取り付けて橋脚やダムの法面等のコンクリート構造物表面のハツリ作業に使用する振動式のハツリ機に関する。
【0002】
【従来の技術】
橋脚、ダムの法面、防波堤、ビル壁、トンネル内壁等コンクリート構造物の築造、補修あるいは増強等のため、コンクリート表面を削るハツリ作業には、通常、図7に示したように、パワーショベルやバックホー等建設機械のアーム40とバケットシリンダ41のロッドの先端に、アームブラケット42と主ブラケット43とハンマーブラケット44等からなる取付け具を使用して圧縮空気を利用するハツリ機45を保持し、バルブ切替え操作によってハツリ機45の下部に組み込んだチゼル46に空気圧による打撃力を加えるもの等が用いられている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のハツリ機は、空気打撃機構とチゼル部を一体に組み合わせた専用ハツリ機で、ハツリ作業にあたっては、専用の取付け具でもってパワーショベル等建設機械に取り付けるようにしてあり、作業対象に応じたチゼルのために、専用の動力機構を備えるハツリ機を幾つか用意し、交換時には、その専用ハツリ機全体を少なくとも一部のブラケットと共に交換しなければならない煩わしさがあった。また、チゼルの配置に制限があってハツリ面積が小さく、作業が比較的非効率的であり、チゼル数を多くしようとすればハツリ機を含む装置全体が大型化し、また、ハツリ機の動作が細かく建設機械の運転台での操作に熟練を要している状況にある。
【0004】
このような状況に鑑み、この考案は、チゼル毎にハツリ機を専用とすることなく、建設機械に取り付けられる既存の振動装置を本体として利用し、且つ、チゼルをアタッチメント方式とし、動作が比較的単純でハツリ作業が能率的に行え、また、ハツリの内容に対応してチゼルの交換も容易な経済性の高いハツリ機の提供を目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、この考案は、パワーショベル等建設機械のアーム先端部に取り付けて地盤の締め固めを行う振動コンパクタのベースプレートに、チゼルアタッチメントを着脱可能に取り付けると共に、該チゼルアタッチメントは下面に多数のチゼルを基部の溶着手段により平板状のアタッチメントプレートに取り付けてなる振動式ハツリ機を、また、前記チゼルアタッチメントはチゼルの形状寸法及び配置の異なるチゼルアタッチメント群から選択された振動式ハツリ機を、さらに、前記チゼルアタッチメントは、前記チゼルをボルト手段により着脱可能に前記アタッチメントプレートに取り付けてなる振動式ハツリ機を、またさらに、前記チゼルアタッチメントは、ボルト手段で前記ベースプレートに取り付けた振動式ハツリ機を、そして、前記チゼルアタッチメントと前記ベースプレートはそれぞれピン孔を有する突設取付け部を備え、該突設取付け部同士をピンの挿通で拘束するピン接続手段で前記チゼルアタッチメントを前記ベースプレートに取り付けた振動式ハツリ機を、そしてまた、前記チゼルアタッチメントの上面に平行な一対の固定ピンを備え、ベースプレートの下面に相互に対称的な凹状部を有する固定係止部と可動係止体を備えると共に、該可動係止体は雌ねじ体を備えてベースプレートに保持された螺子棒の回転でベースプレートの下方を平行方向に移動して、前記固定係止部と協同で前記チゼルアタッチメントの一対の固定ピンに係止して拘束するロック手段を備え、該ロック手段で前記チゼルアタッチメントを前記ベースプレートに取り付けた振動式ハツリ機を提案するものである。
【0006】
【考案の実施の形態】
ハツリ作業に先立ち、予めパワーショベル等建設機械に取り付けてある振動コンパクタのベースプレートからコンパクト用の振動プレートを外し、代わりにチゼルを備えるチゼルアタッチメントを取り付けて振動式ハツリ機に構成する。予め、振動コンパクタにチゼルアタッチメントを取り付け、振動式ハツリ機としてから、この振動式ハツリ機を建設機械に取り付けるようにしてもよい。
【0007】
チゼルアタッチメントを取り付ける振動コンパクタは建設機械に取り付けて使用する既存の油圧モータまたは電動モータ駆動のものが利用できる。
建設機械を操作して振動式ハツリ機をハツリ個所に配置し、モータを駆動し、起振体を作動させると、ベースプレートと共にチゼルが振動する。建設機械のアームでこの振動式ハツリ機を押さえるようにすることにより前後方向の振動を抑えた垂直方向の振動により効率的にハツリ作業が行われる。順次作業個所を移動してハツリ作業を繰り返す。
【0008】
チゼルアタッチメントのチゼルをボルト手段で着脱可能にしたものは、チゼルが損傷した時に、その損傷チゼルのみを交換できる。
【0009】
ベースプレートへのチゼルアタッチメントの取付けは、一般的なボルト締めによるボルト接続、ベースプレートとチゼルアタッチメントの突設取付け部間におけるピンの挿通によるピン接続、及びベースプレートの可動係止体を螺子棒の回転て左右移動させ、固定係止部と協同でチゼルアタッチメントに固設のピンを拘束して保持するロック手段の接続のいずれの方法によっても容易に且つ確実に取付けできる。
【0010】
チゼルアタッチメントはチゼルの形状寸法や配置を変えたものを複数種類用意しておき、振動コンパクタ本体のベースプレートはそのままの状態で、上記の取付け方法等により容易に交換でき、また、適宜交換することにより、対象に合わせて効率的に振動ハツリ作業が行える。
【0011】
【実施例】
図1と図2は本考案の振動式ハツリ機の正面図と側面図である。
図において、Aは起振体を備える振動コンパクタのハウジング1に振動プレートに代えてチゼルアタッチメント2を接続した本考案の振動式ハツリ機であって、バケットを取り付けて作業をするパワーショベルにおいて、前記バケットの代わりに取り付けて使用するようにしたものである。
【0012】
この振動式ハツリ機Aにおいては、図1及図2に示したように、後記する起振体を備えるハウジング1の下部に、取付け脚3と取付け板4とを介して平板状のベースプレート5を一体に固定してあり、このベースプレート5にチゼルアタッチメント2を取り付けるようにしてある。また、このベースプレート5は上面の左右に側面視U字形の保持板6を垂直に接合し、この保持板6はまた上部内側に前後一対(計4か所)の防振ゴム体7を配し、この防振ゴム体7を介してフレーム8に保持されるようにしてある。9はフレーム8の下部間に介在するリブ体である。即ち、ベースプレート5はハウジング1と共に、前記防振ゴム体7を介してフレーム8に懸吊的に保持されるようにし、フレーム8はその上端面に一体に接続したトップブラケット10によりパワーショベルのアーム11とバケットシリンダ12のロッド先端に接続されるようにしてある(図2)。
【0013】
前記防振ゴム体7は、パワーショベル側のアーム11とバケットシリンダ12により上方からこの振動式ハツリ機Aを押さえた際においててもベースプレート5の振動を可能にすると共に、このベースプレート5の振動がパワーショベル側に伝わるのを極力抑える作用を有している。
【0014】
図3に示したように、ハウジング1が備える起振体13は、ハウジング1に付設した油圧モータ14とこの油圧モータ14により回転する回転軸15とこの回転軸15に取り付けられて一体に回転する偏心フライホィール16とからなる。
即ち、回転軸15は、保持リング17A,17Bとベアリング18A,18Bを介してハウジング1に保持させてあり、油圧モータ14の図示しないモータ軸の歯車に噛合した歯車によって回転するようにしてある。この回転軸15の軸周には偏心した錘片即ち偏心フライホィール16を圧入により固着させてある。
【0015】
そして、油圧モータ14の駆動により回転軸15が回転し、偏心フライホィール16が回転することにより、振動を発生するようにしてあり、従って、ハウジング1が振動し、このハウジング1に一体に接続したベースプレート5が振動する。そして、ベースプレート5には、図1と図2のように、アタッチメントプレート20とチゼル21とからなるチゼルアタッチメント2をボルト止めにしてあり、一体に振動するようにしてある。
【0016】
このチゼルアタッチメント2は、アタッチメントプレート20の下面に比較的短いタガネ状のチゼル21を多数垂直に溶接により接合してあり、このチゼル21は通常数本から数十本にわたって所定の均等配置状態に取り付けられているが、チゼル21の形状や配置を変え、また本数を変えたものを数種類用意し、作業対象に応じて交換できるようにするのが望ましい。
【0017】
また、チゼルアタッチメント2は、チゼルの損傷を考慮し、図4のように、チゼル22は、頭部22aを細径にして中央部に雌ねじを形設したものとし、その頭部22aをアタッチメントプレート23に穿設した孔に下方から嵌入し、上方からボルト24を締めて固定する方式で、交換可能にアタッチメントプレート23に取り付けるようにしてもよい。
【0018】
なお、図1と図2のように、ベースプレート5の下面には凸部5aを設け、これにボルト止めするアタッチメントプレート20の上面には前記凸部5aと凹凸関係になるように、凹部20aを設けて組み合わせられるようにし、振動によるずれの発生を防止するようにしてある。
【0019】
従って、起振体13の油圧モータ14を駆動し、回転軸15を介して偏心フライホィール16を回転させることにより、ベースプレート5に振動を生じさせ、同時にパワーショベル側の操作によりトップブラケット10を介してフレーム8を上方から押さえることにより、ベースプレート5に接続固定したチゼルアタッチメント2を上下振動させてハツリ作業を行うことができる。フレーム8を押さえる力を大にすると、ベースプレート5とチゼルアタッチメント2における前後方向の振動が抑制され、垂直方向の振動が大となって、ハツリ作用を大とすることができる。なお、ベースプレート5の上面の4か所には、フレーム8の下端面が当接可能な図示しない受け台をストッパーとして取り付けて、フレーム8の過大な押し込みを防止するようにしてある。
【0020】
この振動ハツリ機Aは、ベースプレート5に振動コンパクタ用の振動プレートを取り付けると本来の振動コンパクタとして機能し、図1のように、前記振動プレートをチゼルアタッチメント2に交換すると、振動式ハツリ機Aとして機能し、さらに、ハツリ内容に応じて好適なチゼルアタッチメントを選んで容易に交換し、常に効率的なハツリ作業を行えるものである。
【0021】
上記の実施例では、チゼルアタッチメントをボルトでベースプレートに取り付けたが、別の実施例として、ベースプレートとチゼルアタッチメントとの接続方式を変えたものを図5と図6に示した。
【0022】
図5のものは、保持板25を接合したベースプレート26の下面にピン挿通孔を有して脚状に突設した上部取付け部26aを前後一対に設け、チゼルアタッチメント27の上面にはピン挿通孔を有し前記上部取付け部26aと左右交差可能に突設した下部取付け部27aを前後一対に設け、それぞれ上部取付け部26aと下部取付け部27aのピン挿通孔を通してピン28を貫挿して接続できるようにしてある。このピン28は基端に頭部を有し先端に雄ねじを刻設しこの雄ねじ部に直径方向の細径の孔を穿設したものとしてあり、このピン28の先端に施すナット28aにも同径の孔を穿設してある。即ち、貫挿したピン28とナット28aの細径孔を通してビス29を貫挿し、その先端に緩み止めのナット30を施すようにして振動によるピンの抜けを防止できる状態にしてあり、比較的簡単な構造で容易に且つ振動に耐えるチゼルアタッチメント27の接続が行えるものである。
【0023】
図6のものは、チゼルアタッチメント31の上面に前後一対にピン取付け部31aを固設し、このピン取付け部31aには係止ピン32を左右に突出させる状態に固定させてある。また、ベースプレート33の下面には前後方向側に対称的に凹部を有する固定係止部33aと可動係止体34とを左右一対に設けてある。
可動係止体34は基部を前後方向に摺動自在にベースプレート33の係合部33bに保持させ、外側部には内部に雌ねじを形設した雌ねじ体35を取り付けてある。そしてこの雌ねじ体35の雌ねじに螺合する雄ねじを有する螺子棒36を一端を回転自在にベースプレート33の下面の保持部33cに保持するようにしてある。この螺子棒36と雌ねじ体35の組合せによる螺合機構は左右一対に備え、それぞれ螺子棒36を回転させることにより、左右一対の可動係止体34を前後方向に移動し、固定係止部33aと協同でチゼルアタッチメント31の係止ピン32に係止して拘束し、チゼルアタッチメント31をベースプレート33に保持させるものである。此の接続手段は上記の方式のものに較べると、機構が複雑ではあるが、さらに取付け速度が早く確実な係止が行えるものである。
【0024】
【考案の効果】
1.この考案によれば、チゼルの振動によるハツリ機構を採用し、振動機本体として既存の振動コンパクタを殆どそのまま利用し、ハツリ用のチゼルをアタッチメントとして容易に交換できるようにしたから、次の効果を奏する。
専用の動力機構を備えるハツリ機及び専用のブラケットを必要としないので、経済的で、ハツリ機の利用が簡便にできる。
ハツリの対象に応じて、チゼルアタッチメントを交換するのみで、容易に対応できるので、作業性が高く、経済的である。
チゼルアタッチメントと振動プレートとの交換ができるので振動コンパクタとしての機能を損なうことがない。
従来のハツリ機のように細かい機能操作を必要とすることなく、振動コンパクタと同様に、振動式ハツリ機を作業個所にただ押さえるだけで、ハツリ作業が行えるので作業が効率的に行える。
2.さらに、チゼルを螺子止めの交換式にした考案は、個々のチゼルに損傷があっても、交換することにより従来同様に使用でき、特に多数のチゼルを備えるものにおいて有利である。
3.チゼルアタッチメットのボルト締め方式の考案は構造が単純で、ボルトの取付け取り外しで容易に交換でき、経済的である。
4.チゼルアタッチメントをピン方式で取り付ける考案は、取付け操作個所が少なく、交換作業を効率的に行える。
5.チゼルアタッチメントをロック方式で取り付ける考案は、簡単なワンタッチ的な操作で、交換作業がさらに効率的に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の振動式ハツリ機の正面図である。
【図2】図1の振動式ハツリ機の側面図である。
【図3】図1におけるハウジングが備える起振体を示す部分正面断面図である。
【図4】別の実施例における交換式のチゼルを示す部分側面断面図である。
【図5】また別の実施例におけるベースプレートとチゼルアタッチメントを示す側面図である。
【図6】さらにまた別の実施例におけるベースプレートとチゼルアタッチメントを示す側面図である。
【図7】従来のハツリ機を装備した建設機械の部分斜視図である。
【符号の説明】
A 振動式ハツリ機
1 ハウジング
2 チゼルアタッチメント
3 取付け脚
4 取付け板
5 ベースプレート
6 保持板
7 防振ゴム体
8 フレーム
9 リブ体
10 トップブラケット
11 アーム
12 バケットシリンダ
13 起振体
14 油圧モータ
15 回転軸
16 偏心フライホィール
17A,17B 保持リング
18A,18B ベアリング
20 アタッチメントプレート
21 チゼル
22 チゼル
23 アタッチメントプレート
24 ボルト
25 保持板
26 ベースプレート
27 チゼルアタッチメント
28 ピン
29 ビス
30 ナット
31 チゼルアタッチメント
32 係止ピン
33 ベースプレート
33a 固定係止部
33b 係合部
33c 保持部
34 可動係止体
35 雌ねじ体
36 螺子棒

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 パワーショベル等建設機械のアーム先端部に取り付けて地盤の締め固めを行う振動コンパクタのベースプレートに、チゼルアタッチメントを着脱可能に取り付けると共に、該チゼルアタッチメントは下面に多数のチゼルを基部の溶着手段により平板状のアタッチメントプレートに取り付けてなることを特徴とする振動式ハツリ機。
【請求項2】 前記チゼルアタッチメントは、チゼルの形状寸法及び配置の異なるチゼルアタッチメント群から選択されたことを特徴とする請求項1記載の振動式ハツリ機。
【請求項3】 前記チゼルアタッチメントは、前記チゼルをボルト手段により着脱可能に前記アタッチメントプレートに取り付けてなることを特徴とする請求項1乃至2記載の振動式ハツリ機。
【請求項4】 前記チゼルアタッチメントは、ボルト手段で前記ベースプレートに取り付けたことを特徴とする請求項1乃至3記載の振動式ハツリ機。
【請求項5】 前記チゼルアタッチメントと前記ベースプレートはそれぞれピン孔を有する突設取付け部を備え、該突設取付け部同士をピンの挿通で拘束するピン接続手段で前記チゼルアタッチメントを前記ベースプレートに取り付けたことを特徴とする請求項1乃至3記載の振動式ハツリ機。
【請求項6】 前記チゼルアタッチメントの上面に平行な一対の固定ピンを備え、ベースプレートの下面に相互に対称的な凹状部を有する固定係止部と可動係止体を備えると共に、該可動係止体は雌ねじ体を備えてベースプレートに保持された螺子棒の回転でベースプレートの下方を平行方向に移動して、前記固定係止部と協同で前記チゼルアタッチメントの一対の固定ピンに係止して拘束するロック手段を備え、該ロック手段で前記チゼルアタッチメントを前記ベースプレートに取り付けたことを特徴とする請求項1乃至3記載の振動式ハツリ機。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate