振動式直進フィーダ
【課題】水平方向の振動と鉛直方向の振動を独立に調整でき、かつ既存の装置からの改造が容易な振動式直進フィーダを提供する。
【解決手段】トラフ1を上部振動体2の上面に取り付け、上部振動体2とその下方に配される基台3との間に中間振動体4を設け、中間振動体4と基台3とを鉛直方向に向けて配した第1の板ばね5で連結し、上部振動体2と中間振動体4とを水平方向に向けて配した第2の板ばね6で連結し、中間振動体4と基台3の間に水平方向の振動を発生させる第1の加振機構7を設け、上部振動体2と中間振動体4の間に鉛直方向の振動を発生させる第2の加振機構8を設けた。これにより、水平方向の振動と鉛直方向の振動を独立に調整でき、かつ傾斜板ばねを用いた既存の装置を改造して容易に作り上げられるものとなる。
【解決手段】トラフ1を上部振動体2の上面に取り付け、上部振動体2とその下方に配される基台3との間に中間振動体4を設け、中間振動体4と基台3とを鉛直方向に向けて配した第1の板ばね5で連結し、上部振動体2と中間振動体4とを水平方向に向けて配した第2の板ばね6で連結し、中間振動体4と基台3の間に水平方向の振動を発生させる第1の加振機構7を設け、上部振動体2と中間振動体4の間に鉛直方向の振動を発生させる第2の加振機構8を設けた。これにより、水平方向の振動と鉛直方向の振動を独立に調整でき、かつ傾斜板ばねを用いた既存の装置を改造して容易に作り上げられるものとなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加振機構の駆動により直線状の搬送路に沿って部品を搬送する振動式直進フィーダに関する。
【背景技術】
【0002】
振動式部品搬送装置には、直線状の部品搬送路が形成されたトラフ(部品搬送部材)を加振機構の駆動により振動させて部品を搬送する方式のもの(直進フィーダ)がある。
【0003】
図4は上記振動式直進フィーダの一例を示す。この直進フィーダは、直線状の搬送路51aが形成されたトラフ51を上部振動体52の上面に取り付けて、上部振動体52とその下方に配される基台53とを前後一対の傾斜板ばね54で連結し、上部振動体52と基台53との間に加振機構55を設けたものである。その基台53は、床上に固定された防振ゴム等の防振部材(図示省略)によって支持されている。
【0004】
前記各板ばね54は、それぞれ搬送路51aと直交する鉛直面に対して搬送路51aの上流側へ同じ角度だけ傾斜した姿勢で、上部振動体52および基台53に取り付けられている。また、前記加振機構55は、基台53に取り付けられる交流電磁石56と上部振動体52に取り付けられる可動鉄心57とからなり、その電磁石56と可動鉄心57との間に作用する断続的な電磁吸引力により、上部振動体52を振動させるようになっている。これにより、トラフ51が上部振動体52と一体に水平面に対して板ばね54の傾斜角度と等しい振動角度で往復振動し、トラフ51に供給された部品が搬送路51aに沿って搬送される。
【0005】
ところで、上記のように一対の傾斜板ばねを用いてトラフを振動させる直進フィーダでは、トラフの往復振動に水平方向の成分と鉛直方向の成分が含まれるため、搬送する部品の重量等の運転条件に応じて、トラフの水平方向の振動と鉛直方向の振動をそれぞれが同時に部品搬送に最適となるように調整することは困難である。
【0006】
この問題に対しては、トラフの水平方向の振動と鉛直方向の振動を互いに独立に調整できるようにするために、上部振動体(トラフ支持部材)と基台との間に中間振動体を介在させて、鉛直方向に向けた第1の板ばねと水平方向に向けた第2の板ばねで、基台と中間振動体および上部振動体と中間振動体をそれぞれ連結し、水平方向の振動を発生させる第1の加振機構と鉛直方向の振動を発生させる第2の加振機構を別々に設けることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された直進フィーダは、中間振動体をトラフに取り付けられる加振機構用の接続板と干渉しないように配置したり、基台上に2つの加振機構の設置スペースを確保したりすることが設計上の大きな制約となる。このため、図4に示したような傾斜板ばねを用いた既存の装置を改造して作り上げることが難しく、新たに製造せざるをえないという難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭55−84707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、水平方向の振動と鉛直方向の振動を独立に調整でき、かつ既存の装置からの改造が容易な振動式直進フィーダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の振動式直進フィーダは、直線状の搬送路を有するトラフを上部振動体の上面に取り付け、前記上部振動体とその下方に配される基台との間に中間振動体を設け、前記中間振動体と基台とを鉛直方向に向けて配した第1の板ばねで連結し、前記上部振動体と中間振動体とを水平方向に向けて配した第2の板ばねで連結し、前記中間振動体と基台の間に水平方向の振動を発生させる第1の加振機構を設け、前記上部振動体と中間振動体の間に鉛直方向の振動を発生させる第2の加振機構を設けた構成とした。
【0011】
上記のような構成とすれば、運転条件に応じて水平方向の振動と鉛直方向の振動を独立に調整できるうえ、トラフ、基台、第1の板ばねおよび第1の加振機構には、傾斜板ばねを用いた既存の装置のものを流用し、中間振動体の下部にも既存の装置の上部振動体を使用して、中間振動体の干渉や2つの加振機構の設置スペースに関して大きな設計上の制約を受けることなく、容易に作り上げることができる。
【0012】
あるいは、直線状の搬送路を有するトラフを上部振動体の上面に取り付け、前記上部振動体とその下方に配される基台との間に中間振動体を設け、前記上部振動体と中間振動体とを鉛直方向に向けて配した第1の板ばねで連結し、前記中間振動体と基台とを水平方向に向けて配した第2の板ばねで連結し、前記上部振動体と中間振動体の間に水平方向の振動を発生させる第1の加振機構を設け、前記中間振動体と基台の間に鉛直方向の振動を発生させる第2の加振機構を設けた構成としても、上記構成と同じく、水平方向の振動と鉛直方向の振動を独立に調整でき、かつ既存の装置からの改造が容易なものとなる。
【0013】
ここで、前記第1の板ばねで連結される中間振動体と基台または上部振動体が、第1の板ばねを傾斜させた状態で取り付け可能な取付面を有している場合は、すなわち、傾斜板ばねを用いた既存の装置の部品を流用したものである場合は、これらの各取付面と第1の板ばねとの間にスペーサを設けて第1の板ばねを鉛直方向に向けるようにするとよい。
【0014】
前記各加振機構を電磁石と可動鉄心とで構成し、そのうちの一方の電磁石への印加電圧設定回路に、印加電圧の基準波形を発生させる基準波形発生手段と、前記基準波形に対して振幅を調整する波形振幅調整手段を設け、他方の電磁石への印加電圧設定回路には、前記基準波形に対して所定の位相差をもつ波形を発生させる位相差調整手段と、位相差調整手段で発生した波形に対して振幅を調整する波形振幅調整手段を設けて、各電磁石への印加電圧の波形、周期、位相差および振幅を自在に制御できるようにすれば、水平方向の振動と鉛直方向の振動を容易に所望の振動とすることができる。
【0015】
また、前記各加振機構の電磁石への印加電圧設定回路に、それぞれの前記波形振幅調整手段で振幅を調整された波形をPWM(Pulse Width Modulation)信号に変換するPWM信号発生手段を設けて、PWM方式で各加振機構を駆動することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の振動式直進フィーダは、上述したように、トラフが取り付けられた上部振動体と基台との間に中間振動体を設け、中間振動体と基台との間、および上部振動体と中間振動体との間に、それぞれ1組の板ばねと加振機構を設けて、水平方向の振動と鉛直方向の振動を独立に調整できるようにしたものであるから、部品搬送に適した所望の振動が容易に得られる。しかも、傾斜板ばねを用いた既存の装置を改造して容易に作り上げることができるので、前述のような新製せざるをえない構造のものに比べて製造コストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の直進フィーダの正面図
【図2】図1の直進フィーダの各加振機構の印加電圧設定回路の概略図
【図3】第2実施形態の直進フィーダの正面図
【図4】従来の直進フィーダの正面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1乃至図3に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1は第1実施形態の振動式直進フィーダを示す。この直進フィーダは、直線状の搬送路1aが形成されたトラフ1を上部振動体2の上面に取り付け、上部振動体2とその下方に配される基台3との間に中間振動体4を設け、中間振動体4と基台3とを鉛直方向に向けて配した第1の板ばね5で連結し、上部振動体2と中間振動体4とを水平方向に向けて配した第2の板ばね6で連結し、中間振動体4と基台3の間に水平方向の振動を発生させる第1の加振機構7を設け、上部振動体2と中間振動体4の間に鉛直方向の振動を発生させる第2の加振機構8を設けたものである。その基台3は、床上に固定された防振ゴム等の防振部材(図示省略)によって支持されている。
【0019】
ここで、前記トラフ1、基台3、第1の板ばね5および第1の加振機構7は、傾斜板ばねを用いた既存の装置(図4参照)のものをそのまま流用しており、中間振動体4の下部にも既存の装置の上部振動体を使用している。従って、中間振動体4と基台3はそれぞれ第1の板ばね5を傾斜させた状態で取り付け可能な取付面4a、4b、3a、3bを有しており、これらの各取付面4a、4b、3a、3bと第1の板ばね5との間にスペーサ9、10を設けて、第1の板ばね5を鉛直方向に向けるようにしている。また、中間振動体4は既存の装置の上部振動体の上面側に連結部11と板ばね取付部12を設けたものであり、その連結部11と板ばね取付部12は、この例のように別体で製作して結合してもよいし一体で製作してもよい。
【0020】
前記第1の板ばね5は、トラフ1の搬送方向の2箇所に配置され、それぞれの上端部を中間振動体4の取付面4a、4bに取り付けられたスペーサ9、10に固定され、下端部を基台3の取付面3a、3bに取り付けられたスペーサ10、9に固定されている。一方、前記第2の板ばね6は、トラフ1の搬送方向の2箇所に配置され、トラフ1中央側の端部を上部振動体2に固定され、トラフ1端側の端部を中間振動体4の板ばね取付部12に固定されている。
【0021】
前記第1の加振機構7は、基台3に取り付けられる交流電磁石13と、この電磁石13と所定の間隔をおいて対向するように中間振動体4に取り付けられる可動鉄心14とで構成されている。一方、前記第2の加振機構8は、中間振動体4の連結部11に取り付けられる交流電磁石15と、この電磁石15と所定の間隔をおいて対向するように上部振動体2に取り付けられる可動鉄心16とで構成されている。
【0022】
そして、第1の加振機構7の電磁石13と可動鉄心14との間に作用する断続的な電磁吸引力が、中間振動体4に水平方向の振動を発生させ、この振動が第2の板ばね6を介して上部振動体2およびトラフ1に伝わるとともに、第2の加振機構8の電磁石15と可動鉄心16との間に作用する断続的な電磁吸引力が、上部振動体2およびトラフ1に鉛直方向の振動を発生させ、トラフ1に供給された部品が直線状搬送路1aに沿って搬送されるようになっている。
【0023】
従って、各加振機構7、8の電磁石13、15への印加電圧を別々に設定することにより、トラフ1の水平方向の振動と鉛直方向の振動を互いに独立に調整して所望の振動を得ることができる。
【0024】
図2は各加振機構7、8の電磁石13、15へ印加電圧を設定する回路を示す。第1の加振機構7の回路には、印加電圧の基準波形を発生させる基準波形発生手段17が設けられている。基準波形発生手段17では、波形の種類(例えば、正弦波)とその波形の周期(周波数)の設定値に応じた基準波形を発生させる。一方、第2の加振機構8の回路には、基準波形発生手段17で発生した基準波形に対して所定の位相差をもつ波形を発生させる位相差調整手段18が設けられている。
【0025】
そして、各加振機構7、8の回路において、基準波形発生手段17または位相差調整手段18で発生した波形を、波形振幅調整手段19で所定の振幅に調整して、PWM信号発生手段20でPWM信号に変換した後、電圧増幅手段21で昇圧し、それぞれの電磁石13、15へ印加するようになっている。これにより、各電磁石13、15への印加電圧の波形、周期、位相差および振幅を自在に制御して、水平方向の振動と鉛直方向の振動を互いに独立に調整することができる。なお、PWM方式で各加振機構を駆動しない場合は、PWM信号発生手段20は不要となる。
【0026】
この振動式直進フィーダは、上記の構成であり、上部振動体と基台との間に中間振動体を設けて、中間振動体と基台との間に水平方向振動発生用の板ばねと加振機構を、上部振動体と中間振動体との間に鉛直方向振動発生用の板ばねと加振機構をそれぞれ設けているので、水平方向の振動と鉛直方向の振動を独立に調整して、部品搬送に適した所望の振動を得ることができる。
【0027】
しかも、トラフ、基台、水平方向振動用の板ばねおよび加振機構は、傾斜板ばねを用いた既存の装置のものをそのまま流用でき、中間振動体の一部にも既存の装置の上部振動体を使用できるので、既存の装置からの改造が容易で、安価に製造することができる。
【0028】
図3に示す第2実施形態の振動式直進フィーダは、水平方向と鉛直方向の振動発生機構の配置を第1実施形態と逆にしたものである。すなわち、この実施形態では、トラフ31を取り付けた上部振動体32とその下方に配される基台33との間に中間振動体34を設け、上部振動体32と中間振動体34とを鉛直方向に向けて配した第1の板ばね35で連結し、中間振動体34と基台33とを水平方向に向けて配した第2の板ばね36で連結し、上部振動体32と中間振動体34の間に水平方向の振動を発生させる第1の加振機構37を設け、中間振動体34と基台33の間に鉛直方向の振動を発生させる第2の加振機構38を設けている。
【0029】
前記トラフ31、上部振動体32、第1の板ばね35および第1の加振機構37は、傾斜板ばねを用いた既存の装置(図4参照)のものをそのまま流用しており、中間振動体34にも既存の装置の基台を使用している。そして、上部振動体32と中間振動体34の板ばね取付面32a、32b、34a、34bと第1の板ばね35との間にスペーサ39、40を設けて、第1の板ばね35を鉛直方向に向けるようにしている。また、第2の板ばね36は、その両端部を中間振動体34の下面側の連結部41と基台33の上面側に設けた板ばね取付部42に固定されている。その他の部分の構成は、各加振機構の電磁石への印加電圧設定回路を含めて、第1実施形態と同じである。
【0030】
従って、この実施形態でも、第1実施形態と同様に、水平方向の振動と鉛直方向の振動を独立に調整でき、既存の装置を改造して容易に作り上げることができる。
【符号の説明】
【0031】
1、31 トラフ
2、32 上部振動体
3、33 基台
4、34 中間振動体
5、35 第1の板ばね
6、36 第2の板ばね
7、37 第1の加振機構
8、38 第2の加振機構
9、10、39、40 スペーサ
11、41 連結部
12、42 板ばね取付部
13、15 電磁石
14、16 可動鉄心
【技術分野】
【0001】
本発明は、加振機構の駆動により直線状の搬送路に沿って部品を搬送する振動式直進フィーダに関する。
【背景技術】
【0002】
振動式部品搬送装置には、直線状の部品搬送路が形成されたトラフ(部品搬送部材)を加振機構の駆動により振動させて部品を搬送する方式のもの(直進フィーダ)がある。
【0003】
図4は上記振動式直進フィーダの一例を示す。この直進フィーダは、直線状の搬送路51aが形成されたトラフ51を上部振動体52の上面に取り付けて、上部振動体52とその下方に配される基台53とを前後一対の傾斜板ばね54で連結し、上部振動体52と基台53との間に加振機構55を設けたものである。その基台53は、床上に固定された防振ゴム等の防振部材(図示省略)によって支持されている。
【0004】
前記各板ばね54は、それぞれ搬送路51aと直交する鉛直面に対して搬送路51aの上流側へ同じ角度だけ傾斜した姿勢で、上部振動体52および基台53に取り付けられている。また、前記加振機構55は、基台53に取り付けられる交流電磁石56と上部振動体52に取り付けられる可動鉄心57とからなり、その電磁石56と可動鉄心57との間に作用する断続的な電磁吸引力により、上部振動体52を振動させるようになっている。これにより、トラフ51が上部振動体52と一体に水平面に対して板ばね54の傾斜角度と等しい振動角度で往復振動し、トラフ51に供給された部品が搬送路51aに沿って搬送される。
【0005】
ところで、上記のように一対の傾斜板ばねを用いてトラフを振動させる直進フィーダでは、トラフの往復振動に水平方向の成分と鉛直方向の成分が含まれるため、搬送する部品の重量等の運転条件に応じて、トラフの水平方向の振動と鉛直方向の振動をそれぞれが同時に部品搬送に最適となるように調整することは困難である。
【0006】
この問題に対しては、トラフの水平方向の振動と鉛直方向の振動を互いに独立に調整できるようにするために、上部振動体(トラフ支持部材)と基台との間に中間振動体を介在させて、鉛直方向に向けた第1の板ばねと水平方向に向けた第2の板ばねで、基台と中間振動体および上部振動体と中間振動体をそれぞれ連結し、水平方向の振動を発生させる第1の加振機構と鉛直方向の振動を発生させる第2の加振機構を別々に設けることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された直進フィーダは、中間振動体をトラフに取り付けられる加振機構用の接続板と干渉しないように配置したり、基台上に2つの加振機構の設置スペースを確保したりすることが設計上の大きな制約となる。このため、図4に示したような傾斜板ばねを用いた既存の装置を改造して作り上げることが難しく、新たに製造せざるをえないという難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭55−84707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、水平方向の振動と鉛直方向の振動を独立に調整でき、かつ既存の装置からの改造が容易な振動式直進フィーダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の振動式直進フィーダは、直線状の搬送路を有するトラフを上部振動体の上面に取り付け、前記上部振動体とその下方に配される基台との間に中間振動体を設け、前記中間振動体と基台とを鉛直方向に向けて配した第1の板ばねで連結し、前記上部振動体と中間振動体とを水平方向に向けて配した第2の板ばねで連結し、前記中間振動体と基台の間に水平方向の振動を発生させる第1の加振機構を設け、前記上部振動体と中間振動体の間に鉛直方向の振動を発生させる第2の加振機構を設けた構成とした。
【0011】
上記のような構成とすれば、運転条件に応じて水平方向の振動と鉛直方向の振動を独立に調整できるうえ、トラフ、基台、第1の板ばねおよび第1の加振機構には、傾斜板ばねを用いた既存の装置のものを流用し、中間振動体の下部にも既存の装置の上部振動体を使用して、中間振動体の干渉や2つの加振機構の設置スペースに関して大きな設計上の制約を受けることなく、容易に作り上げることができる。
【0012】
あるいは、直線状の搬送路を有するトラフを上部振動体の上面に取り付け、前記上部振動体とその下方に配される基台との間に中間振動体を設け、前記上部振動体と中間振動体とを鉛直方向に向けて配した第1の板ばねで連結し、前記中間振動体と基台とを水平方向に向けて配した第2の板ばねで連結し、前記上部振動体と中間振動体の間に水平方向の振動を発生させる第1の加振機構を設け、前記中間振動体と基台の間に鉛直方向の振動を発生させる第2の加振機構を設けた構成としても、上記構成と同じく、水平方向の振動と鉛直方向の振動を独立に調整でき、かつ既存の装置からの改造が容易なものとなる。
【0013】
ここで、前記第1の板ばねで連結される中間振動体と基台または上部振動体が、第1の板ばねを傾斜させた状態で取り付け可能な取付面を有している場合は、すなわち、傾斜板ばねを用いた既存の装置の部品を流用したものである場合は、これらの各取付面と第1の板ばねとの間にスペーサを設けて第1の板ばねを鉛直方向に向けるようにするとよい。
【0014】
前記各加振機構を電磁石と可動鉄心とで構成し、そのうちの一方の電磁石への印加電圧設定回路に、印加電圧の基準波形を発生させる基準波形発生手段と、前記基準波形に対して振幅を調整する波形振幅調整手段を設け、他方の電磁石への印加電圧設定回路には、前記基準波形に対して所定の位相差をもつ波形を発生させる位相差調整手段と、位相差調整手段で発生した波形に対して振幅を調整する波形振幅調整手段を設けて、各電磁石への印加電圧の波形、周期、位相差および振幅を自在に制御できるようにすれば、水平方向の振動と鉛直方向の振動を容易に所望の振動とすることができる。
【0015】
また、前記各加振機構の電磁石への印加電圧設定回路に、それぞれの前記波形振幅調整手段で振幅を調整された波形をPWM(Pulse Width Modulation)信号に変換するPWM信号発生手段を設けて、PWM方式で各加振機構を駆動することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の振動式直進フィーダは、上述したように、トラフが取り付けられた上部振動体と基台との間に中間振動体を設け、中間振動体と基台との間、および上部振動体と中間振動体との間に、それぞれ1組の板ばねと加振機構を設けて、水平方向の振動と鉛直方向の振動を独立に調整できるようにしたものであるから、部品搬送に適した所望の振動が容易に得られる。しかも、傾斜板ばねを用いた既存の装置を改造して容易に作り上げることができるので、前述のような新製せざるをえない構造のものに比べて製造コストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の直進フィーダの正面図
【図2】図1の直進フィーダの各加振機構の印加電圧設定回路の概略図
【図3】第2実施形態の直進フィーダの正面図
【図4】従来の直進フィーダの正面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1乃至図3に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1は第1実施形態の振動式直進フィーダを示す。この直進フィーダは、直線状の搬送路1aが形成されたトラフ1を上部振動体2の上面に取り付け、上部振動体2とその下方に配される基台3との間に中間振動体4を設け、中間振動体4と基台3とを鉛直方向に向けて配した第1の板ばね5で連結し、上部振動体2と中間振動体4とを水平方向に向けて配した第2の板ばね6で連結し、中間振動体4と基台3の間に水平方向の振動を発生させる第1の加振機構7を設け、上部振動体2と中間振動体4の間に鉛直方向の振動を発生させる第2の加振機構8を設けたものである。その基台3は、床上に固定された防振ゴム等の防振部材(図示省略)によって支持されている。
【0019】
ここで、前記トラフ1、基台3、第1の板ばね5および第1の加振機構7は、傾斜板ばねを用いた既存の装置(図4参照)のものをそのまま流用しており、中間振動体4の下部にも既存の装置の上部振動体を使用している。従って、中間振動体4と基台3はそれぞれ第1の板ばね5を傾斜させた状態で取り付け可能な取付面4a、4b、3a、3bを有しており、これらの各取付面4a、4b、3a、3bと第1の板ばね5との間にスペーサ9、10を設けて、第1の板ばね5を鉛直方向に向けるようにしている。また、中間振動体4は既存の装置の上部振動体の上面側に連結部11と板ばね取付部12を設けたものであり、その連結部11と板ばね取付部12は、この例のように別体で製作して結合してもよいし一体で製作してもよい。
【0020】
前記第1の板ばね5は、トラフ1の搬送方向の2箇所に配置され、それぞれの上端部を中間振動体4の取付面4a、4bに取り付けられたスペーサ9、10に固定され、下端部を基台3の取付面3a、3bに取り付けられたスペーサ10、9に固定されている。一方、前記第2の板ばね6は、トラフ1の搬送方向の2箇所に配置され、トラフ1中央側の端部を上部振動体2に固定され、トラフ1端側の端部を中間振動体4の板ばね取付部12に固定されている。
【0021】
前記第1の加振機構7は、基台3に取り付けられる交流電磁石13と、この電磁石13と所定の間隔をおいて対向するように中間振動体4に取り付けられる可動鉄心14とで構成されている。一方、前記第2の加振機構8は、中間振動体4の連結部11に取り付けられる交流電磁石15と、この電磁石15と所定の間隔をおいて対向するように上部振動体2に取り付けられる可動鉄心16とで構成されている。
【0022】
そして、第1の加振機構7の電磁石13と可動鉄心14との間に作用する断続的な電磁吸引力が、中間振動体4に水平方向の振動を発生させ、この振動が第2の板ばね6を介して上部振動体2およびトラフ1に伝わるとともに、第2の加振機構8の電磁石15と可動鉄心16との間に作用する断続的な電磁吸引力が、上部振動体2およびトラフ1に鉛直方向の振動を発生させ、トラフ1に供給された部品が直線状搬送路1aに沿って搬送されるようになっている。
【0023】
従って、各加振機構7、8の電磁石13、15への印加電圧を別々に設定することにより、トラフ1の水平方向の振動と鉛直方向の振動を互いに独立に調整して所望の振動を得ることができる。
【0024】
図2は各加振機構7、8の電磁石13、15へ印加電圧を設定する回路を示す。第1の加振機構7の回路には、印加電圧の基準波形を発生させる基準波形発生手段17が設けられている。基準波形発生手段17では、波形の種類(例えば、正弦波)とその波形の周期(周波数)の設定値に応じた基準波形を発生させる。一方、第2の加振機構8の回路には、基準波形発生手段17で発生した基準波形に対して所定の位相差をもつ波形を発生させる位相差調整手段18が設けられている。
【0025】
そして、各加振機構7、8の回路において、基準波形発生手段17または位相差調整手段18で発生した波形を、波形振幅調整手段19で所定の振幅に調整して、PWM信号発生手段20でPWM信号に変換した後、電圧増幅手段21で昇圧し、それぞれの電磁石13、15へ印加するようになっている。これにより、各電磁石13、15への印加電圧の波形、周期、位相差および振幅を自在に制御して、水平方向の振動と鉛直方向の振動を互いに独立に調整することができる。なお、PWM方式で各加振機構を駆動しない場合は、PWM信号発生手段20は不要となる。
【0026】
この振動式直進フィーダは、上記の構成であり、上部振動体と基台との間に中間振動体を設けて、中間振動体と基台との間に水平方向振動発生用の板ばねと加振機構を、上部振動体と中間振動体との間に鉛直方向振動発生用の板ばねと加振機構をそれぞれ設けているので、水平方向の振動と鉛直方向の振動を独立に調整して、部品搬送に適した所望の振動を得ることができる。
【0027】
しかも、トラフ、基台、水平方向振動用の板ばねおよび加振機構は、傾斜板ばねを用いた既存の装置のものをそのまま流用でき、中間振動体の一部にも既存の装置の上部振動体を使用できるので、既存の装置からの改造が容易で、安価に製造することができる。
【0028】
図3に示す第2実施形態の振動式直進フィーダは、水平方向と鉛直方向の振動発生機構の配置を第1実施形態と逆にしたものである。すなわち、この実施形態では、トラフ31を取り付けた上部振動体32とその下方に配される基台33との間に中間振動体34を設け、上部振動体32と中間振動体34とを鉛直方向に向けて配した第1の板ばね35で連結し、中間振動体34と基台33とを水平方向に向けて配した第2の板ばね36で連結し、上部振動体32と中間振動体34の間に水平方向の振動を発生させる第1の加振機構37を設け、中間振動体34と基台33の間に鉛直方向の振動を発生させる第2の加振機構38を設けている。
【0029】
前記トラフ31、上部振動体32、第1の板ばね35および第1の加振機構37は、傾斜板ばねを用いた既存の装置(図4参照)のものをそのまま流用しており、中間振動体34にも既存の装置の基台を使用している。そして、上部振動体32と中間振動体34の板ばね取付面32a、32b、34a、34bと第1の板ばね35との間にスペーサ39、40を設けて、第1の板ばね35を鉛直方向に向けるようにしている。また、第2の板ばね36は、その両端部を中間振動体34の下面側の連結部41と基台33の上面側に設けた板ばね取付部42に固定されている。その他の部分の構成は、各加振機構の電磁石への印加電圧設定回路を含めて、第1実施形態と同じである。
【0030】
従って、この実施形態でも、第1実施形態と同様に、水平方向の振動と鉛直方向の振動を独立に調整でき、既存の装置を改造して容易に作り上げることができる。
【符号の説明】
【0031】
1、31 トラフ
2、32 上部振動体
3、33 基台
4、34 中間振動体
5、35 第1の板ばね
6、36 第2の板ばね
7、37 第1の加振機構
8、38 第2の加振機構
9、10、39、40 スペーサ
11、41 連結部
12、42 板ばね取付部
13、15 電磁石
14、16 可動鉄心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状の搬送路を有するトラフを上部振動体の上面に取り付け、前記上部振動体とその下方に配される基台との間に中間振動体を設け、前記中間振動体と基台とを鉛直方向に向けて配した第1の板ばねで連結し、前記上部振動体と中間振動体とを水平方向に向けて配した第2の板ばねで連結し、前記中間振動体と基台の間に水平方向の振動を発生させる第1の加振機構を設け、前記上部振動体と中間振動体の間に鉛直方向の振動を発生させる第2の加振機構を設けた振動式直進フィーダ。
【請求項2】
直線状の搬送路を有するトラフを上部振動体の上面に取り付け、前記上部振動体とその下方に配される基台との間に中間振動体を設け、前記上部振動体と中間振動体とを鉛直方向に向けて配した第1の板ばねで連結し、前記中間振動体と基台とを水平方向に向けて配した第2の板ばねで連結し、前記上部振動体と中間振動体の間に水平方向の振動を発生させる第1の加振機構を設け、前記中間振動体と基台の間に鉛直方向の振動を発生させる第2の加振機構を設けた振動式直進フィーダ。
【請求項3】
前記第1の板ばねで連結される中間振動体と基台または上部振動体が、第1の板ばねを傾斜させた状態で取り付け可能な取付面を有し、これらの各取付面と第1の板ばねとの間にスペーサを設けて第1の板ばねを鉛直方向に向けたことを特徴とする請求項1または2に記載の振動式直進フィーダ。
【請求項4】
前記各加振機構を電磁石と可動鉄心とで構成し、そのうちの一方の電磁石への印加電圧設定回路に、印加電圧の基準波形を発生させる基準波形発生手段と、前記基準波形に対して振幅を調整する波形振幅調整手段を設け、他方の電磁石への印加電圧設定回路には、前記基準波形に対して所定の位相差をもつ波形を発生させる位相差調整手段と、位相差調整手段で発生した波形に対して振幅を調整する波形振幅調整手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の振動式直進フィーダ。
【請求項5】
前記各加振機構の電磁石への印加電圧設定回路に、それぞれの前記波形振幅調整手段で振幅を調整された波形をPWM信号に変換するPWM信号発生手段を設けたことを特徴とする請求項4に記載の振動式直進フィーダ。
【請求項1】
直線状の搬送路を有するトラフを上部振動体の上面に取り付け、前記上部振動体とその下方に配される基台との間に中間振動体を設け、前記中間振動体と基台とを鉛直方向に向けて配した第1の板ばねで連結し、前記上部振動体と中間振動体とを水平方向に向けて配した第2の板ばねで連結し、前記中間振動体と基台の間に水平方向の振動を発生させる第1の加振機構を設け、前記上部振動体と中間振動体の間に鉛直方向の振動を発生させる第2の加振機構を設けた振動式直進フィーダ。
【請求項2】
直線状の搬送路を有するトラフを上部振動体の上面に取り付け、前記上部振動体とその下方に配される基台との間に中間振動体を設け、前記上部振動体と中間振動体とを鉛直方向に向けて配した第1の板ばねで連結し、前記中間振動体と基台とを水平方向に向けて配した第2の板ばねで連結し、前記上部振動体と中間振動体の間に水平方向の振動を発生させる第1の加振機構を設け、前記中間振動体と基台の間に鉛直方向の振動を発生させる第2の加振機構を設けた振動式直進フィーダ。
【請求項3】
前記第1の板ばねで連結される中間振動体と基台または上部振動体が、第1の板ばねを傾斜させた状態で取り付け可能な取付面を有し、これらの各取付面と第1の板ばねとの間にスペーサを設けて第1の板ばねを鉛直方向に向けたことを特徴とする請求項1または2に記載の振動式直進フィーダ。
【請求項4】
前記各加振機構を電磁石と可動鉄心とで構成し、そのうちの一方の電磁石への印加電圧設定回路に、印加電圧の基準波形を発生させる基準波形発生手段と、前記基準波形に対して振幅を調整する波形振幅調整手段を設け、他方の電磁石への印加電圧設定回路には、前記基準波形に対して所定の位相差をもつ波形を発生させる位相差調整手段と、位相差調整手段で発生した波形に対して振幅を調整する波形振幅調整手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の振動式直進フィーダ。
【請求項5】
前記各加振機構の電磁石への印加電圧設定回路に、それぞれの前記波形振幅調整手段で振幅を調整された波形をPWM信号に変換するPWM信号発生手段を設けたことを特徴とする請求項4に記載の振動式直進フィーダ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2012−41137(P2012−41137A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183771(P2010−183771)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
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