説明

振動板とそれを用いたスピーカ

【課題】本発明は振動板とそれを用いたスピーカに関し、合成樹脂製振動板において音声出力を出しにくくなるのを防止することを目的とするものである。
【解決手段】この目的を達成するために本発明は、合成樹脂よりなる振動板10の表面と裏面の少なくとも一方に補強リブ14、16、17を一体に形成した。また、補強リブ14は複数の六角形の集合体としたものである。これにより、全体の肉厚を薄くしても十分な強度が保て、しかも全体の肉厚を薄くした分軽くなり、この結果として音声出力を出しにくくなるのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動板とそれを用いたスピーカに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スピーカに使用される振動板として、合成樹脂製のものがある。つまり、振動板を合成樹脂で形成すれば耐水性が向上するので、例えば自動車用のスピーカとして有用なものとなる。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開昭59−176995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記合成樹脂製の振動板は耐水性が向上するので自動車用等としては非常に有用なものとなるが、例えば紙製のものと同じ強度を得るために厚肉状にすると、重量が重くなり、この結果音声出力を出しにくいものとなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は音声出力を出しにくくなるのを防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして、この目的を達成するために本発明は、合成樹脂よりなり、その表面と裏面の少なくとも一方に補強リブを一体に形成したものである。
【発明の効果】
【0007】
以上のように本発明は、表面と裏面の少なくとも一方に補強リブを一体に形成したものであるので、全体の肉厚を薄くしても十分な強度が保て、しかも全体の肉厚を薄くした分軽くなり、この結果として音声出力を出しにくくなるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について図を用いて説明する。
【0009】
図1は本発明のスピーカを示す断面図であり、すり鉢状のフレーム1の外底部中央に配置された磁気回路2は、円板状マグネット3、円板状プレート4、円筒状のヨーク5を組み合わせて接着することにより形成され、ヨーク5の側壁部分の外周側面とプレート4の内周側面間により、磁気回路2における上面側に向けて開口した円筒状の磁気ギャップ6が形成されている。
【0010】
また、ボイスコイル体7は、円筒状の本体8の外周部にコイル9が巻き付けられた構造であり、磁気ギャップ6に対して上下方向に可動可能に配置され、これにより、ボイスコイル体7の上部外周部分に接続された薄皿状の振動板10を振動させる構造となっている。なお、ボイスコイル体7の上端部分には防塵対策としてのダストキャップ11が設けられている。
【0011】
振動板10はスピーカの発音源となる部分であり、合成樹脂により形成したもので、その外周端部分が上方に突出したエッジ12を介してフレーム1の開口端部分に接続され、また内周端部分がボイスコイル体7の本体8の外周側に接着剤(図示せず)により固定されている。なお、エッジ12は振動板10に可動負荷を加えないようウレタン、発泡ゴム、SBRゴムや布などの材料で形成されている。
【0012】
ダンパー13は図1に示すように、その内周端部分がボイスコイル体7の本体8外周側の振動板3固定部よりも磁気回路2側に接着剤により接着固定され、外周端部分がフレーム1に接続されている。なお、このダンパー13は波板状のリング構造となっており、ボイスコイル体7の可動に対応して伸縮する構造とするとともに、振動板10に設けられたエッジ12と同様に振動板10に可動負荷を加えないようウレタン、発泡ゴム、SBRゴムや布などの材料で形成されている。
【0013】
以上の構成において、ボイスコイル体7のコイル9に音声信号を印加することで磁気ギャップ6の磁界と反応しボイスコイル体7が上下方向に可動し、この可動により振動板10が振動してスピーカから音が発信されるものである。
【0014】
さて上記振動板10は上述のごとく合成樹脂で形成されたものであるが、本実施形態では図2、図3に示すようにその裏面側に、複数の六角形の集合体形状の補強リブ14を一体に形成している。
【0015】
また、この振動板10は平面的には円板状で、その中心部分には、上記ボイスコイル体7が貫通し、固定されるための貫通孔15が形成され、この貫通孔15の周辺は、その外方よりも補強リブ14の密度を高めている。つまりこの内周部分にはボイスコイル体7が貫通し、固定されるために強度をアップさせている。
【0016】
また強度をアップさせるために貫通孔15の周辺と最外周に枠状の補強リブ16、17も形成している。
【0017】
この振動板10は合成樹脂の射出成形によって補強リブ14、16、17を一体に形成するものであるが、この射出成形は貫通孔15部分から行う。
【0018】
この射出成形で特徴的なことは、補強リブ14、16、17で囲まれた平面部分は、合成樹脂の硬化時に補強リブ14、16、17部分に引かれ、いわゆるヒケが形成された状態になっている。この結果補強リブ14、16、17部分だけでなく、それらに囲まれた平面部分の強度も強くなり、振動板10として不要振動が発生しないものとなる。
【0019】
なお、上記実施形態では裏面側にのみ補強リブ14、16、17を一体に形成したが、これらの補強リブ14、16、17の少なくとも一つを表面側に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上のように本発明は、表面と裏面の少なくとも一方に補強リブを一体に形成したものであるので、全体の肉厚を薄くしても十分な強度が保て、しかも全体の肉厚を薄くした分軽くなり、この結果として音声出力を出しにくくなるのを防止することができ、スピーカにおいて極めて有用なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態におけるスピーカの断面図
【図2】それに用いる振動板の平面図
【図3】それに用いる振動板の斜視図
【符号の説明】
【0022】
1 フレーム
2 磁気回路
7 ボイスコイル体
10 振動板
14 補強リブ
15 貫通孔
16 補強リブ
17 補強リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂よりなり、その表面と裏面の少なくとも一方に補強リブを一体に形成した振動板。
【請求項2】
補強リブは複数の六角形の集合体で形成した請求項1に記載の振動板。
【請求項3】
内周に貫通孔を形成し、この貫通孔の周辺は、その外方よりも補強リブの密度を高めた請求項1または2に記載の振動板。
【請求項4】
貫通孔の周辺と最外周に枠状の補強リブを形成した請求項3に記載の振動板。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の振動板にボイスコイルを接続したスピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−221638(P2007−221638A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−42151(P2006−42151)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】