説明

振動検出センサー

【課題】 安価な構成であっても、微弱な振動を感度良く検出し、しかも振動に対する感度も調整できる振動検出センサーを提供する。
【解決手段】 振動検出センサーは、振動を与えたときに揺動する棒状の可動導電体3と、この可動導電体3の一端側に接触するように設けられた接触用固定導電体2と、可動導電体3の揺動支点を支持する支点支持用固定導電体1と、可動導電体3の重心が支点支持用固定導電体1側に位置するように配置して可動導電体3と接触用固定導電体2との接離と接触抵抗の変化により振動を検出する振動検出回路とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動又は振動量を検出する、振動検出センサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、振動を検出する振動検出センサーとしては、特許第3275127号公報(特許文献1)に開示された、磁力線の揺れにより振動を検出する振動検出センサー、或いは、特開2005−164400号公報(特許文献2)に開示された、遊動導電体と電極との接触抵抗の変化により振動を検出する振動検出センサーが知られている。
【特許文献1】特許第3275127号公報
【特許文献2】特開2005−164400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1では磁力線を利用するため、振動検出センサーと回路が複雑になることから、高価になってしまう問題があった。また、特許文献2では、微弱振動が検出できない問題の他に、振動に対する感度が調整できないといった問題を有している。
【0004】
そこで本発明の課題は、安価な構成であっても、微弱な振動を感度良く検出し、しかも振動に対する感度も調整できる振動検出センサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するために、本発明の振動検出センサーは、振動を与えたときに揺動する棒状の可動導電体と、この可動導電体の一端側に接触するように設けられた接触用固定導電体と、上記可動導電体の揺動支点を支持する支点支持用固定導電体と、上記可動導電体の重心が上記支点支持用固定導電体側に位置するように配置して上記可動導電体と上記接触用固定導電体との接離と接触抵抗の変化により振動を検出する振動検出回路とを具備することを要旨としている。
【0006】
上記可動導電体は、上記支点支持用固定導電体との間に通電用の第1の接点部を構成するとともに、上記接触用固定導電体との間に導通可能な第2の接点部を構成するようにしている。
【0007】
振動検出回路は、上記可動導電体と上記接触用固定導電体との接離と接触抵抗の変化により振動を検出するようにしている。
【0008】
上記支点支持用固定導電体に対して上記接触用固定導電体とは反対側の上記可動導電体にウエイトを設け、上記可動導電体の重心位置を可変し振動に対する感度を調整するようにしている。
【0009】
上記可動導電体に対して、上記接触用固定導電体に対する上記支点支持用固定導電体の位置を変更して上記可動導電体の重心位置と上記接触用固定導電体との距離を変更して振動に対する感度を変更するようにしている。
【0010】
上記可動導電体の重心位置は、可動導電体内部に有る必要はなく、可動導電体の外部に設けるようにしても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、振動検出センサーの可動導電体の重心が支点支持用固定導電体側に位置するように配置したので、接触用固定導電体の接点で支える重さが軽量となり、可動導電体が微弱な振動を与えたときにも可動するので、可動導電体と接触用固定導電体との接離と接触抵抗の変化を振動検出回路によって検出することにより、高感度の振動検出が可能となる。また、簡易な構成のため、安価に製造でき、しかも小型、軽量に構成できるので、各種の装置等に広範囲に使用することが可能となる。
【0012】
可動導電体は、導電性金属線により形成され、接触用固定導電体との間に接点を構成し、振動による接点の接離と接触抵抗の変化により振動を検出するようにしたので、複雑な振動検出回路を必要とせず、安価な回路構成で振動を検出することができる。
【0013】
上記支点支持用固定導電体に対して上記接触用固定導電体とは反対側の上記可動導電体にウエイトを設け、上記可動導電体の重心位置を可変するように構成したので、振動に対する感度を調整することができる。
【0014】
上記接触用固定導電体に対する上記支点支持用固定導電体の位置を変更して、上記可動導電体の重心位置と上記接触用固定導電体との距離を変更するように構成したので、振動に対する感度を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を、その実施の形態を表す図面を参照しつつ詳しく説明する。
【0016】
図1は、本発明の振動検出センサーの概念的な構成を示す斜視図である。支点支持用固定導電体1と接触用固定導電体2は、導電性を有する真鍮板によって形成されている。この実施例においては、支点支持用固定導電体1と接触用固定導電体2は、厚さが0.3mm、巾が6mm、高さが17mmに設定している。また、支点支持用固定導電体1と接触用固定導電体2は、10mmの間隔で基板に固定している。
【0017】
支点支持用固定導電体1と接触用固定導電体2には、孔が形成され、これらの孔には可動導電体3が挿通されている。因みに、上記孔の内径は2mmに設定されている。
【0018】
可動導電体3は、例えば、長さ20mm、直径0.9mmに設定された導電性を有する真鍮製の丸棒によって形成され、支点支持用固定導電体1の孔に対応する個所には、可動導電体3が軸方向に移動しないように、くびれ部3aが設けられている。そして、この可動導電体3は、支点支持用固定導電体1と接触用固定導電体2との支点接点4、接点5の2個所で支えられるとともに、電気的に接触するように構成されている。このように構成したときには、支点支持用固定導電体1と接触用固定導電体2に対する可動導電体3の重心位置の関係から、可動導電体3は、支点支持用固定導電体1と常時接触し、接触用固定導電体2とは振動量に応じて接離または接触抵抗が変化するようになっている。
【0019】
図1に示す振動検出回路6は、支点支持用固定導電体1と接触用固定導電体2に接続されている。振動検出回路6は、可動導電体3と接触用固定導電体2との接離または接触抵抗の変化を電気的に検出するための回路であり、この電気的変化に基づいて振動量を検出するようにしている。電気的に変換された振動量の変化は、表示器7によって表示される。この表示器7は、用途によって省略しても良い。
【0020】
尚、上記図1の本発明による振動検出センサーの、厚さ、巾、高さ、間隔等の寸法と、形状、材質、等は様々な改良と変更が可能なため、上述した実施例に限定するものではない。例えば、可動導電体3は、銅等の導電性を有する金属、金属の丸棒の表面に金等のメッキを施した金属、或いは、固形状の炭素等、適宜に変更可能である。
【0021】
次に、本発明による振動検出センサーの動作について説明する。図1に示すように、可動導電体3を直線状の棒材とした場合には、可動導電体3の重心Jは中心に位置する。この可動導電体3の重心Jの位置を、図2に示すように、支点支持用固定導電体1と接触用固定導電体2の間の支点支持用固定導電体1側(図示の右側)としたときに、支点支持用固定導電体1よりも図示左側の重量モーメントによって可動導電体3が接触用固定導電体2に接触する加重が小さくなる。接触用固定導電体2への加重は、可動導電体3の重心Jの位置が接触用固定導電体2側に近づけるに従って大きくなり、支点支持用固定導電体1側に近づけるに従って小さくなる。
【0022】
図2に示すような可動導電体3の重心Jの位置では、可動導電体3が接触用固定導電体2に加わる加重が小さいことから、実質的には可動導電体3の重量が小さくなったことと等価となり、この可動導電体3に振動が与えられたときには、僅かな振動であっても可動導電体3が揺動することになる。
【0023】
可動導電体3に振動が与えられたとき、支点支持用固定導電体1の支点接点4とは電気的に導通状態が維持されるが、可動導電体3は支点接点4を支点として揺動することにより、接触用固定導電体2の接点5との接触抵抗が変化する。また、可動導電体3に大きな振動を与えたときには、接触用固定導電体2の接点5との間で接離する。一方、振動を与えないときには、可動導電体3と接触用固定導電体2の接点5とは導通状態となる。従って、このような可動導電体3と接触用固定導電体2の接点5との接触抵抗の変化や接離状態を振動検出回路6によって電気的に検出することにより、振動量が検出できる。特に、可動導電体3の重心Jの位置を支点支持用固定導電体1に近づけたときには、微弱な振動であっても感度良く検出することが可能となる。
【0024】
図3は、本発明からなる振動検出センサーにおいて、振動に対する感度を調整するための実施例を示している。支点支持用固定導電体1を挟んで接触用固定導電体2と反対側(図示の左側)の可動導電体3には、ウエイトWが変位可能に設けられている。このウエイトWを設けることによって、図1において示した可動導電体3の重心Jの位置よりも図示左方に変位する。また、ウエイトWを図示のように変位することにより、重心Jの位置を調整することができる。
【0025】
例えば、ウエイトWを図示左方に変位させたときには、可動導電体3の重心Jの位置が支点支持用固定導電体1に近づくことにより、重量モーメントによって可動導電体3が接触用固定導電体2に接触する加重が小さくなる。一方、ウエイトWを図示右方に変位させたときには、可動導電体3の重心Jの位置が支点支持用固定導電体1よりも遠くなることにより、可動導電体3が接触用固定導電体2に接触する加重が大きくなる。
【0026】
このように、ウエイトWの位置を適宜に変位することによって、可動導電体3の実質的な重量が変化することになり、この可動導電体3に振動が与えられたときに可動導電体3が揺動する量が変化する。このため、ウエイトWの位置の調整により検出する振動量を任意に調整することが可能となる。尚、ウエイトWは、その位置を一定にして、重量を変更することにより重心Jの位置を変更するようにしても良い。
【0027】
図4は、振動に対する感度を調整するための第2の実施例を示している。すなわち、第2の実施例において図1と相違する点は、支点支持用固定導電体1を可動導電体3の軸線方向に変位可能に設けたことである。この実施例において、可動導電体3は図1に示したように直線の棒状に形成されている。従って、可動導電体3に重心Jは中央に位置している。
【0028】
そして、可動導電体3の位置はそのままにして、支点支持用固定導電体1を変位させると、可動導電体3の重心Jの位置と支点支持用固定導電体1との間の距離が変化する。上述したように、可動導電体3の重心Jの位置が支点支持用固定導電体1に近づくと、重量モーメントによって可動導電体3が接触用固定導電体2に接触する加重が小さくなり、重心Jの位置が支点支持用固定導電体1から遠くなると接触用固定導電体2に接触する加重が小さくなり、可動導電体3の実質的な重量が変化して、可動導電体3に振動が与えられたときに揺動する量が変化する。この結果、支点支持用固定導電体1の位置を変位させて調整することにより、検出する振動量、すなわち感度を任意に調整することが可能となる。
【0029】
なお、図4に示した実施例において、可動導電体3にはくびれ部3aが1個所に設けられているが、可動導電体3が軸方向に移動しないようにするために、適宜の間隔をおいて複数個所に設けることが望ましい。また、軸方向に移動させない手段としては、他の適宜の方法を用いても良い。
【0030】
図5(A)(B)(C)は、可動導電体3の重心Jを可動導電体3の軸線よりも図示下方、換言すれば、重心Jの位置が可動導電体3よりも低い低重心にした例を示している。図5(A)に示す例は、支点支持用固定導電体1よりも図示左方、すなわち、接触用固定導電体2の反対側を屈曲している。この結果、実質的な重心Jは可動導電体3よりも低い位置になる。
【0031】
このように、可動導電体3の重心Jを低重心にすることにより、可動導電体3の回動が防止され、接触用固定導電体2の接点5と可動導電体3との接触位置が安定し、接触抵抗の誤差を小さくすることができるので、振動検出センサーを高精度にすることが可能となる。
【0032】
図5の(B)は、図5(A)と同様に支点支持用固定導電体1よりも図示左方を屈曲し、更に、その先端を屈曲している。この結果、実質的な重心Jは、図5(A)に示す可動導電体3の重心J位置よりも更に低い位置になる。
【0033】
図5の(C)は、支点支持用固定導電体1よりも図示左方をリング状に巻回した例を示している。この結果、やはり、実質的な重心J位置を可動導電体3よりも低くすることにより低重心している。
【0034】
以上のように構成した本発明の振動検出センサーの動作を確認するため、振動検出センサーを固定板に固定すると共に、固定板の上面にクッション材を張設した実験装置を製作し、クッション材の上から重さ約0.1gの球体を落下させ、接離が始まる高さを測定した。尚、クッション材を張設した理由は、クッション材が無い状態で球体を落下させた場合、高さ数mmからセンサーの接離が始まり、測定誤差が大きくなるためである。
【0035】
このような実験装置により、まず、可動導電体3の重心Jを支点接点4と接点5の中間に置いた場合、球体を約50mmの高さから落下させたときから、接触用固定導電体2の接点5と可動導電体3との接離が始まった。次に、重心Jの位置を支点接点4の近傍に置いた場合、接点5と可動導電体3との接離は約35mmの高さから落下させたときに始まった。この結果から、可動導電体3の重心Jの位置により振動検出センサーの感度を調整することができることが確認できた
【0036】
なお、本発明にかかる振動検出センサーは、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲で適宜に変更可能である。例えば、可動導電体は、真鍮製の金属棒材に限らず、導電性を有する他の金属棒材に変更することができる。また、絶縁体の棒材であっても、可動導電体の表面に、導電率良好な金属をメッキ等により被覆して電気的に導通させるようにしても良い。更に、可動導電体は、平帯状の金属製棒材を用いて横方向の変位を防止するようにしても良い。一方、支点支持用固定導電体や接触用固定導電体は、支点接点や接点部分のみを導電率良好な金属材を配設して可動導電体と電気的に導通させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による振動検出センサーの概念的な構成を示す斜視図である。
【図2】本発明による振動検出センサーの固定導電体と可動導電体の構成を示す断面図である。
【図3】本発明による振動検出センサーにおいて感度調整可能な第1の実施例を示す断面図である。
【図4】本発明による振動検出センサーにおいて感度調整可能な第2の実施例を示す断面図である。
【図5】(A)(B)(C)は、可動導電体の重心を低重心にする構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 支点支持用固定導電体
2 接触用固定導電体
3 可動導電体
4 支点接点
5 接点
J 重心
W ウエイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動を与えたときに揺動する棒状の可動導電体と、
この可動導電体の一端側に接触するように設けられた接触用固定導電体と、
上記可動導電体の揺動支点を支持する支点支持用固定導電体と、
上記可動導電体の重心が上記支点支持用固定導電体側に位置するように配置して上記可動導電体と上記接触用固定導電体との接離と接触抵抗の変化により振動を検出する振動検出回路とを具備したことを特徴とする振動検出センサー。
【請求項2】
上記可動導電体は、上記支点支持用固定導電体との間に通電用の第1の接点部を構成するとともに、上記接触用固定導電体との間に導通可能な第2の接点部を構成した請求項1に記載の振動検出センサー。
【請求項3】
上記支点支持用固定導電体に対して上記接触用固定導電体とは反対側の上記可動導電体にウエイトを設け、上記可動導電体の重心位置を可変する請求項1及び2に記載の振動検出センサー。
【請求項4】
上記接触用固定導電体に対する上記支点支持用固定導電体の位置を変更して上記可動導電体の重心位置と上記接触用固定導電体との距離を変更して振動に対する感度を変更する請求項1乃至3に記載の振動検出センサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−102110(P2008−102110A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310764(P2006−310764)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(306040584)有限会社サンテック (2)
【出願人】(503219684)
【Fターム(参考)】