説明

振幅制限回路及びデジタル処理装置

【課題】後段でサンプリングレートが変換されてもデジタル信号を所望の振幅に制限できる振幅制限回路及びこれを有するデジタル処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】振幅制限回路100は、デジタル信号を所望の振幅値に制限する振幅制限部12と、振幅制限部12の入力側に接続され、デジタル信号のサンプリングレートを変換するサンプリングレート変換部11と、振幅制限部12の出力側に接続され、デジタル信号のサンプリングレートを変換するサンプリングレート変換部13と、を有する。デジタル処理装置301は、振幅制限回路100とデジタル回路200を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル信号の振幅を制限する振幅制限回路及びこれを備えるデジタル処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンプの高効率化を検討する場合、入力信号の振幅制限は重要な技術の一つである。このため、信号品質の劣化を抑えた振幅制限方法が考案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−274310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下の説明において、デジタル処理とはデジタル信号を含む信号処理、デジタル−アナログ変換、アナログ−デジタル変換、デジタル信号処理のための振幅制限等の処理を示すものとする。図1は、振幅制限をしてデジタル処理を行う従来のデジタル処理装置におけるデジタル信号の状態を説明する図である。従来のデジタル処理装置は、デジタル回路の前段でデジタル信号を振幅制限し、デジタル回路でデジタル信号のサンプリングレートを変換している。図1(a)は、振幅制限前のデジタル信号の周波数特性を説明する図である。図1(b)は、振幅制限前のデジタル信号の時間軸波形を説明する図である。図1(c)は、振幅制限(振幅制限閾値7dB)を行った後にサンプリングレートを変換したデジタル信号の時間軸波形を説明する図である。
【0005】
図1のように、入力されたデジタル信号のピーク値を7dBに振幅制限しても、サンプリングレートを変換すると、デジタル信号のピーク値は振幅制限閾値7dBを超過することになる。このように、従来のデジタル処理装置は、デジタル信号の振幅制限を行ったとしても後段のデジタル回路でサンプリングレートが変換されれば再び振幅が大きくなり、所望の振幅に制限することが困難という課題があった。
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、後段でサンプリングレートが変換されてもデジタル信号を所望の振幅に制限できる振幅制限回路及びこれを有するデジタル処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る振幅制限回路は、入力されるデジタル信号のサンプリングレートを変換して振幅制限処理を行い、もとのサンプリングレートに戻すこととした。
【0008】
具体的には、本発明に係る振幅制限回路は、デジタル信号を所望の振幅値に制限する振幅制限部と、前記振幅制限部の入力側と出力側の双方に接続され、デジタル信号のサンプリングレートを変換するサンプリングレート変換部と、を有する。
【0009】
本発明に係る振幅制限回路は、入力されるデジタル信号のサンプリングレートを変換後に振幅制限処理を行い、再び入力時のサンプリングレートに戻して出力している。このような回路とすることで、後段でサンプリングレートが変換されてもデジタル信号を所望の振幅に制限できる振幅制限回路を提供することができる。
【0010】
本発明に係る振幅制限回路の出力側の前記サンプリングレート変換部は、前記振幅制限部から出力されるデジタル信号のサンプリングレートを入力側の前記サンプリングレート変換部へ入力されるデジタル信号のサンプリングレートへ戻すことを特徴とする。本振幅制限回路の前後でサンプリングレートが変わらないため、本振幅制限回路を既存の装置に組み込むことができる。また、本発明は、従来のデジタル処理装置の振幅制限部を変更せずにその前後にサンプリングレート変換回路を加えるだけであり、適用が簡単である。
【0011】
本発明に係るデジタル処理装置は、前記振幅制限回路と、前記振幅制限回路から入力されるデジタル信号のサンプリングレートを変換する前置サンプリングレート変換部、及び前記前置サンプリングレート変換部でサンプリングレートを変換されたデジタル信号に対して所定の処理を行うデジタル処理部を有するデジタル回路と、を備える。
【0012】
デジタル処理装置は、内部でサンプリングレートを変換するデジタル回路を備えることができ、デジタル処理の効率化を図ることができる。
【0013】
本発明に係るデジタル処理装置において、前記振幅制限回路の前記振幅制限部が振幅制限を行うデジタル信号のサンプリングレートと前記デジタル処理部が処理するデジタル信号のサンプリングレートとが等しいことが好ましい。本デジタル回路の内部でサンプリングレートを変換されたデジタル信号は本振幅変換回路で制限した振幅となるため、デジタル処理装置の処理のさらなる効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、後段でサンプリングレートが変換されてもデジタル信号を所望の振幅に制限できる振幅制限回路及びこれを有するデジタル処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来のデジタル処理装置におけるデジタル信号の振幅を説明する図である。
【図2】本発明に係る振幅制限回路を説明するブロック図である。
【図3】本発明に係るデジタル処理装置におけるデジタル信号の振幅を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0017】
図2は、本実施形態のデジタル処理装置301を説明するブロック図である。デジタル処理装置301は、振幅制限回路100とデジタル回路200を備える。振幅制限回路100は、デジタル信号を所望の振幅値に制限する振幅制限部12と、振幅制限部12の入力側に接続され、デジタル信号のサンプリングレートを変換するサンプリングレート変換部11と、振幅制限部12の出力側に接続され、デジタル信号のサンプリングレートを変換するサンプリングレート変換部13と、を有する。
【0018】
振幅制限部12は、入力されるデジタル信号のピーク値を低減し、振幅値が所定の範囲にあるように調整する。
【0019】
サンプリングレート変換部11は振幅制限部12の前段に配置される。サンプリングレート変換部11は振幅制限回路100に入力されるデジタル信号のサンプリングレートを変換する。例えば、サンプリングレート変換部11はインターポレータであり、デジタル信号のサンプリングレートPを上げてサンプリングレートQに変換する。ここで、サンプリングレートQは、後述するデジタル回路200の前置サンプリングレート変換部21が変換するデジタル信号のサンプリングレートと等しくしておく。
【0020】
サンプリングレート変換部13は振幅制限部12の後段に配置される。サンプリングレート変換部13は振幅制限部12が出力するデジタル信号のサンプリングレートを変換する。例えば、サンプリングレート変換部13はデシメータである。サンプリングレート変換部13は、振幅制限部12が出力したデジタル信号のサンプリングレートQを下げて、振幅制限回路100に入力されるデジタル信号のサンプリングレートPに戻す。
【0021】
サンプリングレート変換部13が出力するデジタル信号はデジタル回路200に入力される。デジタル回路200は、前置サンプリングレート変換部21とデジタル処理部22を有する。
【0022】
前置サンプリングレート変換部21は、デジタル回路200に入力されるデジタル信号のサンプリングレートを変換する。例えば、前置サンプリングレート変換部21はインターポレータであり、デジタル信号のサンプリングレートPを上げてサンプリングレートQに変換する。
【0023】
デジタル処理部22は、前置サンプリングレート変換部21でサンプリングレートを変換されたデジタル信号に所定のデジタル処理を行い出力する。例えば、デジタル処理部22はデジタルプリディストーションアンプであり、該デジタル信号を増幅して出力する。
【0024】
次に、図3を用いてデジタル処理装置301の効果を説明する。デジタル処理装置301は、振幅制限回路100で入力されたデジタル信号の振幅制限を行い、デジタル回路200で振幅制限されたデジタル信号のデジタル処理を行っている。図3(a)は、振幅制限回路100に入力されるデジタル信号の周波数特性を説明する図である。図3(b)は、振幅制限回路100に入力されるデジタル信号の時間軸波形を説明する図である。入力されるデジタル信号は図1(a)(b)で説明したデジタル信号と同じである。
【0025】
振幅制限回路100は図3(a)(b)で説明したデジタル信号に対して、デジタル回路200の前置サンプリングレート変換部21が変換するサンプリングレートに変換して振幅制限(振幅制限閾値7dB)を行い、もとのサンプリングレートに戻す。振幅制限回路100はこのデジタル信号をデジタル回路200に入力する。デジタル回路200は、前置サンプリングレート変換部21で入力されたデジタル信号のサンプリングレートを変換し、デジタル処理部22でこのデジタル信号にデジタル処理する。図3(c)は前置サンプリングレート変換部21が出力するデジタル信号の時間軸波形を説明する図である。
【0026】
図1(c)で説明した従来のデジタル処理装置におけるデジタル信号の時間軸波形とは異なり、前置サンプリングレート変換部21が出力するデジタル信号の振幅は図3(c)のようにピーク値が7dBに抑えられている。振幅制限回路100を用いて後段のデジタル回路200において変換されるサンプリングレートで振幅制限をしておくことで、デジタル処理部22に入力されるデジタル信号の振幅を所望の値に抑えることができた。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る振幅制限回路は、処理の効率を高めるために内部でサンプリングレートを変換するデジタル回路の前段に配置することができる。
【符号の説明】
【0028】
11、13:サンプリングレート変換部
12:振幅制限部
21:前置サンプリングレート変換部
22:デジタル処理部
100:振幅制限回路
200:デジタル回路
301:デジタル処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル信号を所望の振幅値に制限する振幅制限部と、
前記振幅制限部の入力側と出力側の双方に接続され、デジタル信号のサンプリングレートを変換するサンプリングレート変換部と、
を有する振幅制限回路。
【請求項2】
出力側の前記サンプリングレート変換部は、前記振幅制限部から出力されるデジタル信号のサンプリングレートを入力側の前記サンプリングレート変換部へ入力されるデジタル信号のサンプリングレートへ戻すことを特徴とする請求項1に記載される振幅制限回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載される振幅制限回路と、
前記振幅制限回路から入力されるデジタル信号のサンプリングレートを変換する前置サンプリングレート変換部、及び前記前置サンプリングレート変換部でサンプリングレートを変換されたデジタル信号に対して所定の処理を行うデジタル処理部を有するデジタル回路と、
を備えるデジタル処理装置。
【請求項4】
前記振幅制限回路の前記振幅制限部が振幅制限を行うデジタル信号のサンプリングレートと前記デジタル処理部が処理するデジタル信号のサンプリングレートとが等しいことを特徴とする請求項3に記載のデジタル処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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