説明

挿入装置

【課題】穿刺針による穿刺操作と穿刺針の収納操作とを片手の操作で実現可能な挿入装置を提供する。
【解決手段】挿入装置は、皮下注入器の留置部材400におけるカニューラ410を装着者の体内に挿入するための挿入装置であって、カニューラ410に挿入される穿刺針100と、穿刺針100を保持する外筒200と、外筒200と同軸に位置するように該外筒200内に挿入された内筒300とを備え、外筒200は、カニューラ410を装着者の体内に挿入した状態で上方に引き上げることが可能であり、内筒300は、上方から押圧可能であり、かつ、該内筒300が上方から押圧されたときに留置部材400を下方に押圧する当接面310を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入装置に関し、特に、皮下注入器の留置部材におけるカニューラを装着者の体内に挿入するための挿入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
装着者の体内に薬液を注入するための皮下注入器が従来から知られている。皮下注入器の一般的な例として、装着者の体内にカニューラを挿入するように、装着者の体表に留置部材を留置するものが知られている。
【0003】
上記のような留置部材のカニューラを装着者の体内に挿入するための挿入装置が従来から知られている。このような挿入装置の例として、下記の特許文献1〜4に記載のものなどが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0173410号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0173414号明細書
【特許文献3】米国特許第6355021号明細書
【特許文献4】国際公開第2005/068006号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1〜4に記載の挿入装置は、いずれも、使用後に挿入装置に設けられた穿刺針を収納し、該穿刺針による誤穿刺を防止する機能を備えている。しかし、特許文献1〜4に記載の挿入装置では、穿刺針による穿刺操作と、穿刺後の穿刺針の収納操作とを、片手で行なうことができない。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、穿刺針による穿刺操作と穿刺針の収納操作とを片手の操作で実現可能な挿入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る挿入装置は、皮下注入器の留置部材におけるカニューラを装着者の体内に挿入するための挿入装置であって、カニューラに挿入される穿刺針と、穿刺針を保持する外筒と、外筒と同軸に位置するように該外筒内に挿入された内筒とを備え、外筒は、カニューラを装着者の体内に挿入した状態で上方に引き上げることが可能であり、内筒は、上方から押圧可能であり、かつ、該内筒が上方から押圧されたときに留置部材を下方に押圧する押圧部分を有する。
【0008】
なお、本願明細書において『上方』とは、装着者の体表から離れる方向を意味し、逆に、『下方』とは、装着者の体表に近づく方向を意味する。
【0009】
上記構成によれば、内筒を上方から押圧することにより、留置部材が装着者の体表に向けて押圧される。さらに、カニューラを装着者の体内に挿入した後、内筒と同軸に設けられた外筒を上方に引き上げることができるので、内筒に設けられた押圧部分で留置部材を下方に押圧しながら、外筒に保持された穿刺針を上方に引き上げて内筒の内部に収納することができる。したがって、穿刺針による穿刺操作と穿刺針の収納操作とを片手の操作で実現することが可能である。
【0010】
上記挿入装置において、好ましくは、外筒は、筒状の本体と、該本体に対して径方向外方に突出するフランジ部とを含む。
【0011】
上記構成によれば、カニューラを装着者の体内に挿入した後、内筒と同軸に設けられた外筒を上方に引き上げやすくなる。
【0012】
上記挿入装置において、好ましくは、内筒は、筒状の本体と、該本体に対して径方向内方に突出し、留置部材と係合する係合部とを含み、カニューラを装着者の体内に挿入した状態で、外筒を内筒に対して引き上げることにより、係合部と留置部材との係合が解除される。
【0013】
上記構成によれば、内筒が係合部を有することにより、装着者の体表に挿入する前の留置部材をより確実に保持することができる。さらに、カニューラを装着者の体内に挿入した後においては、外筒を内筒に対して引き上げて、外筒に保持された穿刺針を内筒の内部に収納した後でない限り、係合部と留置部材との係合を解除することができないので、使用後の穿刺針による誤穿刺をより一層有利に防止することができ、挿入装置の安全性が更に向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、穿刺針による穿刺操作と穿刺針の収納操作とを片手の操作で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1に係る挿入装置を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す挿入装置に含まれる外筒の斜視図である。
【図3】図2におけるIII−III断面を示す図である。
【図4】図2におけるIV−IV断面を示す図である。
【図5】図1に示す挿入装置に含まれる内筒の斜視図である。
【図6】図5におけるVI−VI断面を示す図である。
【図7】図5におけるVII−VII断面を示す図である。
【図8】図1に示す挿入装置の使用状態における第1の状態を示す斜視図である。
【図9】(A)は、図8におけるIXA−IXA断面を示す図であり、(B)は、図8におけるIXB−IXB断面を示す図である。
【図10】図1に示す挿入装置の使用状態における第2の状態を示す斜視図である。
【図11】(A)は、図10におけるXIA−XIA断面を示す図であり、(B)は、図10におけるXIB−XIB断面を示す図である。
【図12】図1に示す挿入装置の使用状態における第3の状態を示す斜視図である。
【図13】(A)は、図12におけるXIIIA−XIIIA断面を示す図であり、(B)は、図12におけるXIIIB−XIIIB断面を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係る挿入装置を示す分解斜視図である。
【図15】図14に示す挿入装置に含まれる外筒の斜視図である。
【図16】図15におけるXVI−XVI断面を示す図である。
【図17】図15におけるXVII−XVII断面を示す図である。
【図18】図14に示す挿入装置に含まれる内筒の斜視図である。
【図19】図18におけるXIX−XIX断面を示す図である。
【図20】図18におけるXX−XX断面を示す図である。
【図21】図14に示す挿入装置の使用状態における第1の状態を示す斜視図である。
【図22】(A)は、図21におけるXXIIA−XXIIA断面を示す図であり、(B)は、図21におけるXXIIB−XXIIB断面を示す図である。
【図23】図14に示す挿入装置の使用状態における第2の状態を示す斜視図である。
【図24】(A)は、図23におけるXXIVA−XXIVA断面を示す図であり、(B)は、図23におけるXXIVB−XXIVB断面を示す図である。
【図25】図14に示す挿入装置の使用状態における第3の状態を示す斜視図である。
【図26】(A)は、図25におけるXXVIA−XXVIA断面を示す図であり、(B)は、図25におけるXXVIB−XXVIB断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0017】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、特に記載がある場合を除き、後述の実施の形態1,2の構成を適宜組合わせることは、当初から予定されている。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る挿入装置を示す分解斜視図である。図1を参照して、本実施の形態に係る挿入装置は、穿刺針100と、外筒200と、内筒300とを含んで構成される。当該挿入装置は、皮下注入器を構成する留置部材400を装着者の体内に挿入するためのものである。
【0019】
留置部材400は、インスリン持続皮下注入法(CSII:Continuous Subcutaneous Insulin Infusion)に用いられる皮下注入器を構成するものであって、カニューラ410と、突出部420と、ベース部430とを含む。カニューラ410は、装着者の体内に挿入される部分である。突出部420は、ベース部430に対して上方に突出する部分であり、突出部に薬液供給部を接続することにより、カニューラ410に該薬液が供給される。ベース部430は、装着者の体表に取り付けられる部分であって、その裏面(図1における下側の面)には、ベース部430を患者(装着者)の皮膚に固定するための接着層が設けられている。
【0020】
なお、上記皮下注入器は、インスリン以外の薬液を体内に供給するための用途(たとえば疼痛治療など)にも適用可能である。
【0021】
穿刺針100は、金属製の針であり、カニューラ410を装着者の体内に挿入する際の芯材となるものである。外筒200は、穿刺針100を保持している。内筒300は、外筒200と同軸に配置される。外筒200と内筒300とは、軸方向に沿って相対的に移動可能である。
【0022】
次に、図2〜図4を用いて、外筒200の構造について説明する。図2は、外筒200の斜視図であり、図3,図4は、それぞれ、図2におけるIII−III断面,IV−IV断面を示す図である。
【0023】
図2〜図4を参照して、外筒200は、典型的には樹脂製の部材であり、当接面210と、本体220と、フランジ部230と、保持部分240とを含んで構成される。当接面210は、本体220の先端側の端面であり、留置部材400を装着者の体内に挿入する際に、留置部材400のベース部430に当接する面である。本体220は、筒状に形成された部分である。フランジ部230は、該本体220の基端側に本体220と一体に設けられ、本体220に対して径方向外方に突出する。フランジ部230は、後述する引き上げ動作の際に、装着者の指の形に沿うように、上方側(図3,図4における左側)に凸の形状を有する。保持部分240は、略円柱形状とされており、その中心軸上に穿刺針100が保持される。本実施の形態では、保持部分240が、その外周面の一部から径方向外方に延びる板状の連結部250を介して、本体220に一体に設けられている。穿刺針100は、外筒200の径方向中心に位置するように保持される。
【0024】
また、外筒200の本体220には、その軸方向中間部分に、一対の係止爪部260,260が、径方向に対向するように一体に設けられている。各係止爪部260は、その先端部分が、径方向内方に突出している。なお、係止爪部260の数は、適宜変更可能である。
【0025】
次に、図5〜図7を用いて、内筒300の構造について説明する。図5は、内筒300の斜視図であり、図6,図7は、それぞれ、図5におけるVI−VI断面,VII−VII断面を示す図である。
【0026】
図5〜図7を参照して、内筒300は、当接面310と、本体320と、フランジ部330とを含んで構成される。当接面310は、本体320の先端側の端面であり、留置部材400の突出部420に当接する面である。本体320は、筒状に形成された部分であり、大径部340と小径部350とを有し、それら大径部340と小径部350との間の段差面が、係止面360とされている。また、本体320には、当接面310から係止面360まで軸方向に延出するスリット370が設けられている。本体320は、外筒200の本体220内に挿入される。挿入の際、本体320のスリット370に、外筒200の本体220の連結部250が挿し込まれる。これにより、内筒300と外筒200との相対回転が規制されて、外筒200が内筒300に対して、軸方向に真っ直ぐ相対移動することができる。なお、本体320は、外筒200の本体220よりも大きな軸長を有している。フランジ部330は、本体320の上端に形成される。フランジ部330は、本体320と一体に設けられ、本体320に対して径方向外方に突出する。
【0027】
次に、図8〜図13を用いて、本実施の形態に係る挿入装置の作用について説明する。
図8は、本実施の形態に係る挿入装置の使用状態における第1の状態を示す斜視図である。図9(A)は、図8におけるIXA−IXA断面を示す図であり、図9(B)は、図8におけるIXB−IXB断面を示す図である。
【0028】
図8,図9は、留置部材400を装着者の体表に設置する前の状態を示すものである。図8,図9に示すように、穿刺針100は、カニューラ410に挿入されている。これにより、留置部材400が挿入装置に保持される。外筒200の当接面210は、留置部材400のベース部430に当接し、内筒300の当接面310は、留置部材400の突出部420に当接している。
【0029】
装着者は、親指とその他の指(たとえば、人差し指)とで外筒200を挟持する。その状態でカニューラ410を穿刺針100とともに、装着者の体内に挿入する。これにより、留置部材400が装着者の体表に取り付けられる。
【0030】
図10は、上記第1の状態に続く第2の状態を示す斜視図である。図11(A)は、図10におけるXIA−XIA断面を示す図であり、図11(B)は、図10におけるXIB−XIB断面を示す図である。
【0031】
図10,図11は、外筒200および内筒300から突出した穿刺針100を、内筒300内に収納する収納動作を行なった状態を示すものである。装着者は、親指で内筒300のフランジ部330を押圧しながら、その他の指(たとえば、人差し指と中指)で外筒200を挟持し、図10,図11に示すように、内筒300のフランジ部330を下方に押圧したままの状態で、複数の指で挟持した外筒200を上方に引き上げる。これにより、穿刺針100は外筒200とともに上方に移動し、内筒300に収納される。ここで、内筒300の当接面310が留置部材400の突出部420に当接しているため、留置部材400は装着者の体表に押し付けられている。したがって、留置部材400が装着者の体表から離れることを防止するために留置部材400のベース部430をもう一方の手指で下方に押圧する必要がなく、穿刺針100の収納動作を片手で行なうことができる。上記収納動作が完了した状態では、図11に示すように、外筒200の本体220に設けられた係止爪部260が、内筒300の本体320に設けられた係止面360に係止されて、外筒200が内筒300に対して下方に戻るようなことが阻止されるとともに、穿刺針100が、内筒300内に確実に収納される。また、上記収納動作が完了した状態では、外筒200に設けられた連結部250の端面が、内筒300に設けられたスリット370の端面に当接して、外筒200の更なる上方への移動が阻止されている。
【0032】
図12は、上記第2の状態に続き第3の状態を示す斜視図である。図13(A)は、図12におけるXIIIA−XIIIA断面を示す図であり、図13(B)は、図12におけるXIIIB−XIIIB断面を示す図である。
【0033】
図12,図13は、留置部材400の取付完了後、挿入装置を取り外した状態を示すものである。図12,図13に示すように、挿入装置は、留置部材400に対して上方に離れるように取り外される。この際、穿刺針100は内筒300内に収納されているため、穿刺針100の先端で誤穿刺する惧れがない。
【0034】
本実施の形態に係る挿入装置によれば、上方から押圧されたときに留置部材400を下方に押圧する当接面310を内筒300が有しているため、内筒300を上方から押圧することにより、留置部材400が装着者の体表に向けて押圧される。さらに、カニューラ410を装着者の体内に挿入した後、内筒300と同軸に設けられた外筒200を上方に引き上げることができるので、内筒300に設けられた当接面310で留置部材400を下方に押圧しながら、外筒200に保持された穿刺針100を上方に引き上げて内筒300の内部に収納することができる。したがって、穿刺針100による穿刺操作と穿刺針100の収納操作とを片手の操作で実現することが可能である。
【0035】
さらに、筒状の本体220に対して径方向外方に突出するフランジ部230を外筒200が有しているため、フランジ部230に指を掛けることが可能であり、カニューラ410を装着者の体内に挿入した後、内筒300と同軸に設けられた外筒200を上方に引き上げやすい。
【0036】
さらに、内筒300の軸長が外筒200の軸長よりも大きく、内筒300の上端部には、径方向外方に突出するようにフランジ部330が形成されているため、外筒200を上方に引き上げて内筒300内に穿刺針100を収納する際に、内筒300を上方から押圧することが容易である。
【0037】
上述した内容について要約すると、以下のようになる。すなわち、本実施の形態に係る挿入装置は、皮下注入器の留置部材400におけるカニューラ410を装着者の体内に挿入するための挿入装置であって、カニューラ410に挿入される穿刺針100と、穿刺針100を保持する外筒200と、外筒200と同軸に位置するように該外筒200内に挿入された内筒300とを備え、外筒200は、カニューラ410を装着者の体内に挿入した後に上方に引き上げることが可能であり、内筒300は、上方から押圧可能であり、かつ、該内筒300が上方から押圧されたときに留置部材400を下方に押圧する『押圧部分』としての当接面310を有する。
【0038】
(実施の形態2)
図14は、実施の形態2に係る挿入装置を示す分解斜視図である。図14を参照して、本実施の形態に係る挿入装置は、実施の形態1に係る挿入装置の変形例であって、実施の形態1と同様に、穿刺針100と、外筒200と、内筒300とを含んで構成される。
【0039】
次に、図15〜図17を用いて、外筒200の構造について説明する。図15は、外筒200の斜視図であり、図16,図17は、それぞれ、図15におけるXVI−XVI断面,XVII−XVII断面を示す図である。
【0040】
図15〜図17を参照して、本実施の形態における外筒200は、実施の形態1に係る外筒200と同様に、当接面210と、本体220と、フランジ部230と、保持部分240とを含む。また、本体220には、周方向に4つの係止爪部260が形成されているとともに、保持部分240は、連結部250を介して本体220に一体に設けられている。
【0041】
次に、図18〜図20を用いて、内筒300の構造について説明する。図18は、内筒300の斜視図であり、図19,図20は、それぞれ、図18におけるXIX−XIX断面,XX−XX断面を示す図である。
【0042】
図18〜図20を参照して、本実施の形態に係る内筒300は、実施の形態1に係る内筒300と同様に、当接面310と、本体320と、フランジ部330とを含み、さらに、係合部380と、傾斜部390とを含む。また、本体320は、大径部340と、小径部350と、係止面360と、スリット370とを含む。
【0043】
係合部380は、本体320の下端に形成され、後述するように、留置部材400を保持するために留置部材400の突出部420と係合する。傾斜部390は、係合部380に対して上方側に形成された部分であり、傾斜部390を径方向内方に押し込むことにより、係合部380が径方向外方に移動する。係合部380および傾斜部390は、周方向に180度離れた位置に2つ形成されているが、これらが3つ以上形成されていてもよい。傾斜部390の外表面は、下方から上方に向かって径方向外側に広がるように形成されている。
【0044】
次に、図21〜図26を用いて、本実施の形態に係る挿入装置の作用について説明する。
【0045】
図21は、本実施の形態に係る挿入装置の使用状態における第1の状態を示す斜視図である。図22(A)は、図21におけるXXIIA−XXIIA断面を示す図であり、図22(B)は、図21におけるXXIIB−XXIIB断面を示す図である。
【0046】
図21,図22は、留置部材400を装着者の体表に設置する前の状態を示すものである。
【0047】
図21,図22に示すように、穿刺針100は、カニューラ410に挿入されている。さらに、内筒300の係合部380は、留置部材400の突出部420に形成された凹部420Aに係合している。なお、係合部380における径方向内方の表面は、下方から上方に向かって径方向内側に広がる傾斜面を有しており、この傾斜面を有することにより、内筒300を留置部材400に押し付けた際に、2つの係合部380が開いて留置部材400の凹部420Aと係合する。これにより、留置部材400が挿入装置に保持される。
【0048】
外筒200の当接面210および内筒300の当接面310は、いずれも留置部材400のベース部430に当接している。
【0049】
装着者は、親指とその他の指(たとえば、人差し指)とで外筒200を挟持する。その状態でカニューラ410を穿刺針100とともに、装着者の体内に挿入する。これにより、留置部材400が装着者の体表に取り付けられる。
【0050】
図23は、上記第1の状態に続く第2の状態を示す斜視図である。図24(A)は、図23におけるXXIVA−XXIVA断面を示す図であり、図24(B)は、図23におけるXXIVB−XXIVB断面を示す図である。
【0051】
図23,図24は、外筒200および内筒300から突出した穿刺針100を、内筒300内に収納する収納動作を行なった状態を示すものである。装着者は、親指で内筒300のフランジ部330を押圧しながら、その他の指(たとえば、人差し指と中指)で外筒200を挟持し、図23,図24に示すように、内筒300のフランジ部330を下方に押圧したままの状態で、複数の指で挟持した外筒200を上方に引き上げる。これにより、穿刺針100は外筒200とともに上方に移動し、内筒300に収納される。ここで、内筒300の当接面310が留置部材400のベース部430に当接しているため、留置部材400は装着者の体表に押し付けられている。したがって、留置部材400が装着者の体表から離れることを防止するために留置部材400のベース部430を下方に押圧する必要がなく、穿刺針100の収納動作を片手で行なうことができる。
【0052】
上記収納動作が完了した状態では、図24に示すように、外筒200の下端部により傾斜部390が径方向内方に押圧される。これにより、係合部380が矢印DR380方向に開き、係合部380と突出部420との係合が解除される。これにより、挿入装置を留置部材400から取り外すことが可能になる。さらに、上記収納動作が完了した状態では、図24に示すように、外筒200の本体220に設けられた係止爪部260が、内筒300の本体320に設けられた係止面360に係止されて、外筒200が内筒300に対して下方に戻るようなことが阻止されるとともに、穿刺針100が、内筒300内に確実に収納される。また、上記収納動作が完了した状態では、外筒200に設けられた連結部250の端面が、内筒300に設けられたスリット370の端面に当接して、外筒200の更なる上方への移動が阻止されている。
【0053】
図25は、上記第2の状態に続き第3の状態を示す斜視図である。図26(A)は、図25におけるXXVIA−XXVIA断面を示す図であり、図26(B)は、図25におけるXXVIB−XXVIB断面を示す図である。
【0054】
図25,図26は、留置部材400の取付完了後、挿入装置を取り外した状態を示すものである。図25,図26に示すように、挿入装置は、留置部材400に対して上方に離れるように取り外される。この際、内筒300の係合部380と留置部材400の突出部420との係合は解除されている。さらに、穿刺針100は内筒300内に収納されているため、穿刺針100の先端で誤穿刺する惧れがない。
【0055】
本実施の形態に係る挿入装置によれば、実施の形態1に係る挿入装置と同様の効果を奏するとともに、さらに、以下の効果を奏する。
【0056】
すなわち、本実施の形態に係る挿入装置によれば、本体320に対して径方向内方に突出し、留置部材400と係合する係合部380を内筒300が有することにより、装着者の体表に挿入する前の留置部材400をより確実に保持することができる。さらに、カニューラ410を装着者の体内に挿入した後においては、外筒200を内筒300に対して引き上げて、外筒200に保持された穿刺針100を内筒300の内部に収納した後でない限り、係合部380と留置部材400との係合を解除することができるないので、使用後の穿刺針100による誤穿刺をより一層有利に防止することができ、挿入装置の安全性が更に向上する。
【0057】
上述した内容について要約すると、以下のようになる。すなわち、本実施の形態に係る挿入装置は、実施の形態1に係る挿入装置の変形例であって、実施の形態1に係る挿入装置の構成と同様の構成を有し、さらに、内筒300は、筒状の本体320と、該本体320に対して径方向内方に突出し、留置部材400と係合する係合部380とを含み、カニューラ410を装着者の体内に挿入した後に、外筒200を内筒300に対して引き上げることにより、係合部380と留置部材400との係合が解除されるものである。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
100 穿刺針、200 外筒、210 当接面、220 本体、230 フランジ部、240 保持部分、250 連結部、260 係止爪部、300 内筒、310 当接面、320 本体、330 フランジ部、340 大径部、350 小径部、360 係止面、370 スリット、380 係合部、390 傾斜部、400 留置部材、410 カニューラ、420 突出部、430 ベース部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮下注入器の留置部材におけるカニューラを装着者の体内に挿入するための挿入装置であって、
前記カニューラに挿入される穿刺針と、
前記穿刺針を保持する外筒と、
前記外筒と同軸に位置するように該外筒内に挿入された内筒とを備え、
前記外筒は、前記カニューラを前記装着者の体内に挿入した状態で上方に引き上げることが可能であり、
前記内筒は、上方から押圧可能であり、かつ、該内筒が上方から押圧されたときに前記留置部材を下方に押圧する押圧部分を有する、挿入装置。
【請求項2】
前記外筒は、筒状の本体と、該本体に対して径方向外方に突出するフランジ部とを含む、請求項1に記載の挿入装置。
【請求項3】
前記内筒は、筒状の本体と、該本体に対して径方向内方に突出し、前記留置部材と係合する係合部とを含み、
前記カニューラを前記装着者の体内に挿入した状態で、前記外筒を前記内筒に対して引き上げることにより、前記係合部と前記留置部材との係合が解除される、請求項1または請求項2に記載の挿入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−246634(P2010−246634A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96877(P2009−96877)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】