説明

捕虫器

【課題】不用意なる接着剤の付着を防止することができるようにすること。
【解決手段】虫を誘引する誘引手段12と、誘引手段12の近傍に繰り出される捕虫シート11と、この捕虫シート11を繰り出し可能に保持する保持手段13とを備えて捕虫器10が構成されている。捕虫シート11は、帯状をなす基材シート11Aと、この基材シート11Aの一方の面に積層された接着剤層11Bとを備えている。基材シート11Aの繰り出し方向に沿う両端に沿う位置には、接着剤層11Bを積層しない非接着領域11Dが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕虫器に係り、更に詳しくは、不用意な接着剤の付着を防止することができる捕虫器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、食品や粘着シート、精密機械等の製品に虫が混入することを防止するために捕虫器が利用されている(特許文献1参照)。特許文献1の捕虫器は、捕虫用の光源と、この光源の周りに設けられた粘着フィルムとを備えており、未使用の粘着フィルムはロール状に巻回されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3091766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記粘着フィルムは、基材シートの一方の面の全領域に亘って接着剤が積層されている。また、このような捕虫用の接着剤は虫を捕らえやすくするために低凝集力気味に設計されていて非常にべたべたしており、巻回された粘着フィルムの両端側から接着剤が染み出たり、はみ出たりし易くなる。このため、粘着フィルムを繰り出す過程で、捕虫器の各部材に接着剤が付着してしまい、メンテナンスの負担が大きくなるという不都合がある。また、ロール状の粘着フィルムの取り換え時に、作業者の手や衣服等にも接着剤が付着してしまうため取り扱いが非常に厄介となるという不都合もある。更には、粘着フィルムの接着剤面側に当接する部材を設けると繰り出しを行えなくなるので、粘着フィルムを繰り出すときの蛇行や、風等によるばたつきを抑制するガイド等を設けることができなくなる、という不都合も招来する。
【0005】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、不用意なる接着剤の付着を防止することができる捕虫器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、虫を誘引する誘引手段と、前記誘引手段の近傍に繰り出される捕虫シートと、この捕虫シートの繰り出しを許容し当該捕虫シートを保持する保持手段とを備えた捕虫器において、
前記捕虫シートは、帯状をなす基材シートと、この基材シートの一方の面に積層された接着剤層とを含み、基材シートの繰り出し方向に沿う両端に沿って、接着剤層を積層しない非接着領域を設ける、という構成を採っている。
【0007】
本発明において、前記接着剤層が表出する基材シートの下側には、虫受け手段が設けられるとよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、捕虫シートに非接着領域を設けたので、原反の両端側から接着剤が染み出たり、はみ出たりすることを防止することができる。これにより、捕虫シートの繰り出しによって捕虫器に接着剤が付着することを抑制でき、清掃やメンテナンス等の作業時の負担を軽減することができる他、原反を取り扱う作業者の手や衣服等に接着剤が付着することを回避することが可能となる。また、非接着領域に相対或いは当接するようにガイド手段を設けることができ、捕虫シートを繰り出すときの蛇行や、風等によるばたつきを抑制してスムースなる繰り出しを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る捕虫器の概略斜視図。
【図2】図1を一部破断した概略斜視図。
【図3】図1の正面図。
【図4】図1の右側面図。
【図5】図1の平面図。
【図6】(A)は、捕虫シートの正面図であり、(B)は、(A)のB−B線に沿う断面図である。
【図7】図3のC−C線に沿う拡大断面図。
【図8】(A)は、図3のD−D線に沿う拡大断面図であり、(B)は、(A)の分解断面図。
【図9】変形例に係る捕虫器の部分右側面図。
【図10】他の変形例に係る捕虫器の部分右側面図。
【図11】更に他の変形例に係る捕虫器の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「未使用」とは、接着剤層を表出する前の状態を意味する他、捕虫を行うべく接着剤層を表出した直後の状態も意味する。また、「使用済み」とは、捕虫を行った後の状態を意味する他、虫が捕獲されていない状態であっても、所定期間捕虫の用に供した状態も意味する。
更に、本明細書及び特許請求の範囲の方向若しくは位置を示す用語は、特に明示しない限り、図1中矢印A方向から見た場合を基準とし、「前」とは矢印A方向から見た場合の手前側を示す一方、「後」とは、同奥行き側について用いられる。
【0011】
図1には、本実施形態に係る捕虫器の概略斜視図が示され、図2には、その一部破断斜視図が示されている。また、図3には、その正面図が示され、図4には、その右側面図が示され、図5には、その平面図が示されている。これらの図において、捕虫器10は、虫を捕獲するための捕虫シート11と、この捕虫シート11に沿って位置する誘引手段12と、捕虫シート11の繰り出しを許容し保持可能に設けられた保持手段13と、誘引手段12と捕虫シート11との間に設けられた撓み抑制手段としての複数のローラ15と、この複数のローラ15の左右両側に位置するガイド手段16とを備えて構成されている。
【0012】
前記捕虫シート11は、ロール状に巻回された状態から下方に向かって繰り出され、誘引手段12の前方を通過するようになっている。捕虫シート11は、図6(A)及び(B)に示されるように、帯状をなす基材シート11Aと、この基材シート11Aの一方の面(図6(B)中上面)に積層された接着剤層11Bと、この接着剤層11Bによって仮着された剥離シート11Cとを備えている。基材シート11Aの繰り出し方向に沿う両端、すなわち、図6中左右両端に沿う位置には、前記接着剤層11Bを積層しない非接着領域11Dがそれぞれ設けられている。
【0013】
前記誘引手段12は、平面視略コ字状の背面フレーム26と、この背面フレーム26の左右両側にそれぞれ設けられ、図1中前方へ延びる一対の側板22とで構成された本体フレーム19の内部に支持され、蛍光灯18により構成されている。本体フレーム19の下端側には、平面視略H形状をなす脚部材27が設けられ、捕虫器10全体が自立できるようになっている。
【0014】
図4に示されるように、背面フレーム26の後面には、コンセント29及び電源ケーブル30が設けられている。電源ケーブル30は、そのプラグ30Aを電力源となるコンセントに接続することにより、前記コンセント29及び蛍光灯18に電力を供給可能に設けられている。従って、電源ケーブル30により電力供給を受けつつコンセント29に他の捕虫器10の電源ケーブル30を接続すると、一の電力源から複数台の捕虫器10に電力を供給することが可能となる。
【0015】
前記保持手段13は、ロール状に巻回された捕虫シート11を支持する支持手段33と、この支持手段33の前方に隣接する剥離手段34と、本体フレーム19の下方に設けられた巻取手段35と、剥離手段34及び巻取手段35に連結され、支持手段33から巻取手段35に基材シート11Aを繰り出す繰出手段36とを備えて構成されている。
【0016】
前記支持手段33は、ロール状に巻回された捕虫シート11の回転中心軸位置に設けられた支持軸38(図5参照)と、この支持軸38の両端側にそれぞれ設けられた軸受け部材39と、前記背面フレーム26の上端側に形成されるとともに、軸受け部材39を受容し回転を許容する一対の切欠部40とを備え、ロール状の捕虫シート11が回転して剥離手段34側へ繰り出すことができるようになっている。
【0017】
前記剥離手段34は、側板22の上部右側から立設するブラケット42と、図7に示されるように、捕虫シート11の剥離シート11Cを折り返して当該剥離シート11Cを上方へ導く剥離用ローラ43と、剥離用ローラ43により剥離された剥離シート11Cを回収する剥離シート回収装置としての剥離シート回収軸44とを備えて構成されている。剥離用ローラ43及び剥離シート回収軸44は、ブラケット42によりそれぞれ片持ち支持されている。剥離シート11Cが剥離された後の基材シート11Aは、未使用の接着剤層11Bを表出しつつ上ガイドローラ46Aに巻回されて鉛直方向下向きに繰り出され、下ガイドローラ46Bを巻回して巻取手段35へ案内される。
【0018】
巻取手段35は、背面フレーム26下部右側に設けられたブラケット47と、基材シート11Aを巻き取る巻取軸49により構成され、巻取軸49はブラケット47に片持ち支持されている。
【0019】
前記繰出手段36は、剥離シート回収軸44及び巻取軸49にそれぞれ連結されたプーリ51,52と、これらプーリ51,52に掛け回されたベルト53と、前記剥離シート回収軸44に連結された操作ハンドル55とを備えて構成されている。
【0020】
前記ローラ15は、図2に示されるように、前記側板22間の前方に複数設けられ、基材シート11Aの後面に位置して基材シート11Aが後方に撓んだり、ばたつくことを抑制できるようになっている。
【0021】
前記ガイド手段16は、図8(A)及び(B)に示されるように、鉛直方向に沿って位置する基材シート11Aの非接着領域11Dに相対する位置に設けられた左右一対のガイド板61と、各ガイド板61の後面に設けられるとともに、非接触領域11Dに接触可能なシート状の当接部材62と、各ガイド板61と側板22とを連結するヒンジ部63とを備えて構成されている。
【0022】
前記当接部材62は、厚み方向に収縮変形可能な部材とされ、フェルト材、布材、樹脂材、ゴム等が例示できる。当接部材62は、基材シート11Aの繰り出し時に、側板22に設けられたガイド板受け22Aとで非接触領域11Dを挟んで摩擦抵抗を付与し、基材シート11Aを適度な張力に保ちつつ、基材シート11Aの垂れ下がりを抑制するようになっている。
【0023】
前記ヒンジ部63は、ガイド板61を回動可能に支持している。具体的には、上述した基材シート11Aを挟む位置(図8(A)参照)と、その位置から退避した位置(図8(B)参照)との間で回動可能になっている。これにより捕虫シートの掛け替えがより迅速に行うことができるうえ、ガイド板61やガイド板受け22Aに付着した接着剤の除去が行いやすくなっている。
【0024】
前記捕虫器10は、図1に示される状態から、蛍光灯18を発光させると、基材シート11A及び接着剤層11Bを通じて外部に発せられる。すると、光に誘引されて虫が蛍光灯18に近付くように飛来し、接着剤層11Bに接触した虫が当該接着剤層11Bに接着されて捕獲される。
【0025】
このように一定期間捕虫を行った後、未使用の接着剤層11Bを前方に表出させる場合、前記繰出手段36の操作ハンドル55を図4中矢印R1方向に回転操作すればよい。これにより、剥離シート回収軸44が同矢印R1方向に回転し、剥離シート11Bが巻き取られて回収される。この巻き取りにより、支持手段33に支持されたロール状の捕虫シート11が図4中矢印R2方向に繰り出され、剥離用ローラ43通過時に剥離シート11Cが順次剥離される。剥離シート11Cが剥離されると同時に、基材シート11Aが蛍光灯18の前方に繰り出され、未使用の接着剤層11Bが表出する。このとき、前記ガイド板受け22Aとガイド板61との間に非接着領域11Dが位置し、基材シート11Aが下方に案内されて繰り出される。
【0026】
ここで、前記操作ハンドル55の回転操作により、ベルト53を介して巻取軸49が矢印R3方向に回転する。これにより、図7に示されるように、接着剤層11Bが内側に向けられるように、使用済みの基材シート11Aが巻取軸49に巻き取られる。なお、剥離シート回収軸44に巻き取られた剥離シート11Cの外径と、巻取軸49に巻き取られた基材シート11Aの外径差による巻取速度(量)の違いは、巻取軸49に設けられた図示しない滑り機構によって相殺されるようになっている。
【0027】
このように、捕虫器10において、単一の駆動源として操作ハンドル55を回転することにより、剥離シート回収軸44、ロール状の捕虫シート11及び巻取軸49が全て同時に回転する。この回転により、剥離手段34による剥離シート11Cの剥離及び回収と、誘引手段12の前方位置への未使用の接着剤層11Bのセットと、使用済みの基材シート11Aの回収とを同時に行えるようになる。
【0028】
従って、このような実施形態によれば、捕虫シート11に非接着領域11Dを設けたので、接着剤層11Bの接着剤が左右にはみ出ようとしても、非接着領域11Dが設けられていることによって、捕虫シート11の左右両側から接着剤がはみ出ることを防止することができる。
また、ヒンジ部63を介してガイド板61を回動可能としたので、図8(B)に示された状態で捕虫シート11をローラ15及びガイド板受け22Aの前方に簡単にセットすることができ、捕虫シート11を取り換える作業を容易に行うことができる。
【0029】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対し、形状、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0030】
例えば、誘引手段12は、虫を誘引する作用を奏する限りにおいて種々の変更が可能であり、紫外線の光源や虫が好む匂いを発する装置に代替、若しくは、前記蛍光灯18と併用することができる。また、紫外線の光源は蛍光灯18に替えてLED(発光ダイオード)によって構成してもよい。
【0031】
また、撓み抑制手段として複数のローラ15を用いたが、基材シート11Aの後部に位置して撓みを抑制できる限りにおいて変更可能であり、例えば、側板22間に光を透過可能な樹脂板等を設けてもよい。
【0032】
更に、繰出手段36は、モータ等を用いて前記回転を自動的に行うようにしてもよい。
【0033】
また、前記ガイド板61は、ヒンジ部63を介して非接着領域11Dから離れるように移動可能としたが、例えば、本体フレーム19にガイド板61を着脱自在として移動する構造としてもよい。
【0034】
更に、前記支持手段33の支持軸38、剥離シート回収軸44及び巻取軸49の少なくとも一つに、前述した繰り出し方向に逆行する方向に進行することを規制する逆転防止手段を設けてもよい。この逆転防止手段としては、ラチェット機構や、各軸に対するピン止め構造、ワンウェイクラッチ構造が例示できる。
【0035】
また、図9及び図10に示されるように、略鉛直方向に向けられた基材シート11Aの下側に、虫受け手段65,70を設けてもよい。図9の虫受け手段65は、下ガイドローラ46Bを通過した基材シート11Aを略水平前方に向かうようにガイドローラ66によって案内しており、接着剤層11Bに付着した虫が意図することなく落下しても、この虫受け手段65によって収集できるようになっている。
図10の虫受け手段70は、脚部27上に配置された別の捕虫シートからなり、当該捕虫シートの上面が接着剤面とされ、上記同様落下した虫を収集できるようになっている。
【0036】
更に、図11に示されるように、前記本体フレーム19をスタンド73を介して支持するようにし、当該スタンド73を介して本体フレーム19を上下方向及び回転方向に移動可能としてもよい。
また、スタンド73の関節を増設することによって、上下、回転方向に加え左右、前後方向に移動可能とすることもできる。
更に、捕虫器10は、自立タイプに限られず、壁や天井等に取り付け可能な構成としてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、捕虫シートとして3層構造の積層シートを用いて図示、説明したが、4層以上の積層シートであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 捕虫器
11 捕虫シート
11A 基材シート
11B 接着剤層
11C 剥離シート
11D 非接着領域
12 誘引手段
13 保持手段
16 ガイド手段
62 当接部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
虫を誘引する誘引手段と、前記誘引手段の近傍に繰り出される捕虫シートと、この捕虫シートの繰り出しを許容し当該捕虫シートを保持する保持手段とを備えた捕虫器において、
前記捕虫シートは、帯状をなす基材シートと、この基材シートの一方の面に積層された接着剤層とを含み、基材シートの繰り出し方向に沿う両端に沿って、接着剤層を積層しない非接着領域を設けたことを特徴とする捕虫器。
【請求項2】
前記接着剤層が表出する基材シートの下側には、虫受け手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載の捕虫器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−45004(P2012−45004A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−265374(P2011−265374)
【出願日】平成23年12月5日(2011.12.5)
【分割の表示】特願2006−274351(P2006−274351)の分割
【原出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】