説明

据置貯槽のガス回収

【課題】据置貯槽に収容されたLPGの液相部分および気相部分を含めて完全に回収できる装置および方法を提供する。
【解決手段】液相側にバルブ11を備えた液化ガス入口・出口12と、気相側にバルブ13を備えた気化ガス入口・出口14およびガス消費バルブ15を設けた回収容器10、並びにガスコンプレッサー17、上記回収容器10の気化ガス入口・出口14と、上記コンプレッサー17の切り替えバルブ16の一方の開口とを管路18で繋ぎ、切り替えバルブ16の他方の開口にバルブ19を介してT分岐管20を接続し、バルブ21を介してガス消費口22を開口させて、上記回収容器10と上記切り替えバルブ16を備えたガスコンプレッサー17とを回収車Kに設置し、据置貯槽30の液化ガス取出し口31にバルブ32とT分岐管33を順に接続し、上記据置貯槽30の液化ガス取出し口31側のT分岐管33との間を管38で繋いでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は液化石油ガス(LPG)の据置貯槽のガス回収に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭あるいは小規模の消費先におけるLPGの容器は、内容量50kgまでの可搬容器(ボンベ)が用いられているが、大量の消費先では据置貯槽が採用され、LPGの供給はタンクローリーによって行われている。
【0003】
LPGの容器は高圧ガス容器であるから法令に従って定期検査を受ける必要があり、小規模の消費先で使用される可搬容器の場合、検査所に集めて検査をすることができ、また容器を転倒させることができるので完全にガスを抜き取ることができるが、据置貯槽の場合は現地検査となる。
【0004】
LPGの容器の検査に際しては、容器内のLPGを完全に抜き取って行われるもので、据置容器の場合、完全に抜き取ることは難しく、これまで特許文献1、特許文献2等の提案がされている。
【0005】
【特許文献1】特許第2715271号公報の特許請求の範囲および図面
【0006】
【特許文献2】特開2005−76814号公報の要約および選択図
【0007】
特許文献1の技術内容を要約すると、据置容器の気相側にコンプレッサーで圧力を加え、その圧力で液相を押え、その圧力で液相の液化ガスを回収容器に回収するものであり、特許文献2の提案は、液化ガスを収容した容器を加熱して容器の内圧を高くし、この圧力を据置貯槽に導いて据置貯槽の気相を押え、その圧力で据置貯槽の液化ガスを回収容器に回収するものである。
【0008】
要するに上記二つの先行技術は、据置貯槽の気相の圧力を高めて、その圧力で据置貯槽の液化ガスを押し出して回収するものであるから、据置貯槽内のガスは完全に回収・排出することが出来ない欠点をもっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記状況に鑑みこの発明は、据置貯槽に収容されたLPGの液相部分および気相部分を含めて完全に回収できる装置および方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためにこの発明は、液相側にバルブ11を備えた液化ガス入口・出口12と、気相側にバルブ13を備えた気化ガス入口・出口14およびガス消費バルブ15を設けた回収容器10、並びに切り替えバルブ16を備えたガスコンプレッサー17、上記回収容器10の気化ガス入口・出口14と、上記コンプレッサー17の切り替えバルブ16の一方の開口とを管路18で繋ぎ、切り替えバルブ16の他方の開口にバルブ19を介してT分岐管20を接続し、そのT分岐側からバルブ21を介してガス消費口22を開口させて、上記回収容器10と上記切り替えバルブ16を備えたガスコンプレッサー17とを回収車Kに設置し、据置貯槽30の液化ガス取出し口31にバルブ32とT分岐管33を順に接続し、上記回収容器10の液化ガス入口・出口12と、上記据置貯槽30の液化ガス取出し口31側のT分岐管33との間を管38で繋ぎ、上記ガスコンプレッサー17のバルブ19側のT分岐管20と、上記据置貯槽30の気化ガス取出し口35側に設けた切り替えバルブ36との間を管40で繋いでなる構成とした。
上記装置のコンプレッサー17で据置貯槽30の液相を押えて回収容器10に液化ガスを回収し、次にコンプレッサー17のロータリーバルブ16を切り替えて据置貯槽30の気化ガスを吸引・回収し、さらに回収容器10の気化ガスを給湯器Wに供給、据置貯槽30に貼り付けた加温マットMに給湯して据置貯槽30内の気化ガスを膨張・排出させるとともに、据置貯槽30内に不活性ガス(窒素ガス)を注入、膨張・排出した気化ガスをバーナーVで燃焼、気化ガスが排出されているときはバーナーVに火がついているが気化ガスがなくなると窒素ガスが排出されるのでバーナーVの火は消える。
【発明の効果】
【0011】
上記構成からなるこの発明によれば、据置貯槽の検査に当たって内部に収容したLPGを完全に回収することができ、据置貯槽に不活性ガスを供給し、据置貯槽を温水循環加温マットで加温することにより残留ガスは気化・膨張して排出され、排ガス燃焼バーナーで燃焼し、最後に不活性ガスが排出されて排ガス燃焼バーナーが消えるので据置貯槽内が完全に空になったことを確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次にこの発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。回収車Kには回収容器10と、ロータリーバルブ16付きコンプレッサー17および発電機Gが搭載されている。
【0013】
回収容器10の、液相側(底)にはバルブ11を介して液化ガス入口・出口12が開口し、フランジを介して可撓管38が接続され、その延長端には雌形カップリング39が取付けられ、気相側(上)にはバルブ15とバルブ13を介して気化ガス流入・出口14が開口し、フランジを介して管路18が延びコンプレッサー17に繋がっている。
【0014】
コンプレッサー17のもう一つの開口にはバルブ19とT分岐管20を介し、フランジでもって可撓管40が接続され、その延長端には雌形カップリング41が取付けられ、上記T分岐管20の分岐側20’にはバルブ21がフランジを介して取付けられガス消費口22が開口している。
【0015】
なお、上記可撓管38と40は、回収車Kが移動するとき、回収車に設置されたホルダー(図示せず)に収容され、また、回収車Kには図示しないキャビネットが用意され、これに加温マットM、給湯器W、窒素ガスボンベB、レギュレーターR1,R2、可撓管45を延長した排ガス燃焼バーナーV等を収納できるようになっている。
【0016】
据置貯槽30の上部一方に液相管47を延したバルブ32が取付けられ、その開口には雄形カップリング34を取付けたT分岐管33が接続され、分岐側にはバルブ42が設けられ、バルブ42の開口には窒素ガスボンベBからのリードパイプが繋がれる。
【0017】
据置貯槽30の上部他方には気化ガス取出し口35が開口し、これに均圧弁を内蔵した切り替えバルブ36および雄形カップリング37が一体的に設けられている。
【0018】
次にこの発明に係る据置貯槽のガス回収操作について説明する。図1に示す可撓管38の雌形カップリング39と雄形カップリング34とをカップリングし、可撓管40の雌形カップリング41と雄形カップリング37とをカップリングする。
【0019】
バルブ11,13,19および32を開、バルブ15,21および42を閉、切り替えバルブ36を雄形カップリング37側に開きコンプレッサー17のロータリーバルブ16を右送りにしてコンプレッサー17を作動させると据置貯槽30の液化ガスは矢印の方向に流れて可撓管38を経て回収容器10に回収される。
【0020】
次に図2に示すように、バルブ13,19および32を開にし、バルブ11,15,21および42を閉にし、切り替えバルブ36を雄形カップリング37側に開きコンプレッサー17のロータリーバルブ16を左送りにしてコンプレッサー17を作動させると据置貯槽30の気化ガスは矢印の方向に流れて可撓管40と管路18を経て回収容器10に回収される。
【0021】
上記の段階では据置貯槽内30には、液化ガスと気化ガスが僅かに残っており、これらを完全に抜き取るため次の準備と操作を行う。
【0022】
即ち、図3に示すように回収容器10のガス消費バルブ15の開口にレギュレーターR1を取付け、ガス管を延長して給湯器Wに繋ぎ、給湯器Wから延びた管を加温マットMに繋ぎ、この加温マットMを据置貯槽30の底面に宛がい、バルブ21のガス消費口22にレギュレーターR2を取付け、ガス管を延長して温度検知器46を備えた排ガス燃焼バーナーVに繋ぐ、また、バルブ42の開口には窒素ガスボンベBから延びる管を繋ぐ。
【0023】
上記のように準備をした後、バルブ11,13および19を閉、バルブ15,21,32および42を開にし、切り替えバルブ36を雄形カップリング37側に開いて給湯器Wと排ガス燃焼バーナーVに点火する。
【0024】
このようにすることにより据置貯槽30内の液化・気化ガスは、加温マットMにより暖められて膨張し、矢印の方向に流れ最終的には排ガス燃焼バーナーVで燃焼消費される。
【0025】
また、据置貯槽30では窒素ガスにより気化ガスが追い出され、最終的には据置貯槽30内も可撓管40内も窒素ガスになり排ガス燃焼バーナーVの火が消えて温度検知器46がそれを検出し警報を鳴らすなどにより据置貯槽30内のガスが完全に抜き取られたことが確認される。
【0026】
上記のように据置貯槽30内のガスを完全に抜き取り所要の検査が終了すると、図4に示すようにバルブ15を閉じ、レギュレーターR1、給湯器Wおよび加温マットMを取り外し、バルブ42を閉じ窒素ガスボンベBを取り外し、バルブ21を閉じレギュレーターR2、可撓管45および排ガス燃焼バーナーVを取り外して、バルブ11,13および32を開とし、コンプレッサー17のロータリーバルブ16を左送りにしてコンプレッサー17を作動させると回収容器10の液化ガスは矢印の方向に流れて据置貯槽30に送り返される。
【0027】
上記作業が終了するとバルブ11,13,15,19および42を閉じ、カップリング37,41および34,39が離されてすべての作業は終了する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上、説明したようにこの発明によれば、据置貯槽内のガスを完全に抜き取ることができるようになり、完全に抜き取られたときに温度検知器がこれを検知して警報等により報知されて確実な作業ができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る据置貯槽のガス回収装置の液化ガス回収行程を示す図
【図2】同気化ガス回収行程を示す図
【図3】同残留ガスの排出燃焼行程を示す図
【図4】回収容器から据置貯槽に液化ガスを戻す行程を示す図
【図5】作業完了を示す図
【符号の説明】
【0030】
10 回収容器
11 (回収容器の液相側の)バルブ
12 (回収容器の)液化ガス入口・出口
13 (同)気相側バルブ
14 (同)気化ガス入口・出口
15 (同)ガス消費バルブ
16 (コンプレッサーの)ロータリーバルブ
17 コンプレッサー
18 管路(回収容器−コンプレッサー)
19 バルブ(コンプレッサー出口)
20 T分岐管(同)
21 バルブ(T分岐管)
22 ガス消費口(バルブ21側)
30 据置貯槽
31 液化ガス取出し口(据置貯槽)
32 バルブ(液化ガス取出し口の)
33 T分岐管(液化ガス取出し口の)
34 雄形カップリング
35 気化ガス取出し口(据置貯槽)
36 切り替えバルブ(据置貯槽)
37 雄形カップリング
38 可撓管(液相側)
39 雌形カップリング
40 可撓管(気相側)
41 雌形カップリング
42 バルブ(T分岐管33の)
43 ガス消費口
44 カップリング
45 可撓管(排ガス燃焼バーナー側)
46 温度検知器
47 液相管
B 窒素ガスボンベ
G 発電機
K 回収車
M 温水循環加温マット
P (温水)循環パイプ
V 排ガス燃焼バーナー
W 給湯器
R1,R2 レギュレーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相側にバルブ(11)を備えた液化ガス入口・出口(12)と、気相側にバルブ(13)を備えた気化ガス入口・出口(14)およびガス消費バルブ(15)を設けた回収容器(10)、並びに切り替えバルブ(16)を備えたガスコンプレッサー(17)、上記回収容器(10)の気化ガス入口・出口(14)と、上記コンプレッサー(17)の切り替えバルブ(16)の一方の開口とを管路(18)で繋ぎ、切り替えバルブ(16)の他方の開口にバルブ(19)を介してT分岐管(20)を接続し、そのT分岐側からバルブ(21)を介してガス消費口(22)を開口させて、上記回収容器(10)と上記切り替えバルブ(16)を備えたガスコンプレッサー(17)とを回収車(K)に設置し、据置貯槽(30)の液化ガス取出し口(31)にバルブ(32)とT分岐管(33)を順に接続し、上記回収容器(10)の液化ガス入口・出口(12)と、上記据置貯槽(30)の液化ガス取出し口(31)側のT分岐管(33)との間を管(38)で繋ぎ、上記ガスコンプレッサー(17)のバルブ(19)側のT分岐管(20)と、上記据置貯槽(30)の気化ガス取出し口(35)側に設けた切り替えバルブ(36)との間を管(40)で繋いだことを特徴とする据置貯槽のガス回収装置。
【請求項2】
上記切り替えバルブ(36)と管(40)との継ぎ手、およびT分岐管(33)と管(38)との継ぎ手を雄形カップリング(34,37)とし、管(40)と切り替えバルブ(36)との継ぎ手、および管(38)とT分岐管(33)との継ぎ手を雌形カップリング(39,41)としたことを特徴とする請求項1または2に記載の据置貯槽のガス回収装置。
【請求項3】
上記管(38)および管(40)を、可撓管としたことを特徴とする請求項1または2に記載の据置貯槽のガス回収装置。
【請求項4】
上記回収車(K)に発電機(G)を搭載したことを特徴とする請求項1乃至3に記載の据置貯槽のガス回収装置。
【請求項5】
上記据置貯槽(30)のガス回収装置を使用して、バルブ(11)を開、バルブ(42)を閉、バルブ(32)を開、切り替えバルブ(36)のガス消費口(43)側を閉、バルブ(21)を閉、バルブ(13)を開、バルブ(15)を閉としてガスコンプレッサー(17)を作動し、管(40)を経て据置貯槽(30)の気相に気化ガスを供給し、この圧力でもって据置貯槽(30)の液相を押し下げ、管(38)を経て回収容器(10)に据置貯槽(30)内の液化ガスを回収する第1ステップ。
次に、バルブ(11)を閉、バルブ(42)を閉、バルブ(32)を開、切り替えバルブ(36)のガス消費口(43)側を閉、バルブ(21)を閉、バルブ(13)を開、バルブ(15)を閉としてガスコンプレッサー(17)を作動し、管(40)を経て据置貯槽(30)の気相の気化ガスを回収容器(10)に回収する第2ステップ。
次に、据置貯槽(30)に温水循環加温マット(M)を取付け、不活性ガスのボンベ(B)を繋いでバルブ(42)を開き、バルブ(15)にレギュレーター(R1)を介して給湯器(W)を接続し、給湯器(W)と温水循環加温マット(M)とを循環パイプ(P)で繋ぎ、上記バルブ(21)のガス消費口(22)にレギュレーター(R2)を介して排ガス燃焼バーナー(V)を接続して、バルブ(11)を閉、バルブ(32)を開、切り替えバルブ(36)のガス消費口(43)側を閉、バルブ(21)を開、バルブ(13)を閉とし、バルブ(15)を開いて給湯器(W)に気化ガスを供給・点火して温水循環加温マット(M)により据置貯槽(30)を加温して据置貯槽(30)内部の残留ガスを管(40)、T分岐管(20)、バルブ(21)およびレギュレーター(R2)を経て排ガス燃焼バーナー(V)に排出し燃焼させる第3ステップ。
からなることを特徴とする据置貯槽のガス回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−16888(P2007−16888A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198666(P2005−198666)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000118534)伊藤工機株式会社 (13)
【Fターム(参考)】