説明

捲回式二次電池

【課題】 極柱部の絶縁と液密性を確保しつつ、軽量化・小型化を図ることができる二次電池を提供する。
【解決手段】 正極極柱20の円盤部には肉抜きされた環状溝20Aが形成されいる。正極極柱20のフランジ部と電池蓋18との間には、絶縁チューブ36に覆われ、Oリング28を弾性変形させた状態で一定間隔に保持する固定ピン34が電池蓋18から立設されている。電池蓋18は押圧されて電池容器16に接合されており、電池蓋18と正極極柱20とは、Oリング28を介して、この押圧力により互いに押圧されており、軸芯14と正極極柱20とは、直接接触してこの押圧力により互いに押圧されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は捲回式二次電池に係り、特に軸芯を有する捲回群が電池容器に収容され、極柱が前記電池容器内から電池蓋に形成された穴を貫通して外部端子となり、前記電池蓋と前記極柱のフランジ部との間に電気的絶縁性を有する弾性部材を介在させた捲回式二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】近年の電子技術の進歩により、電子機器の性能が向上すると共に小型化・ポータブル化が進み、電子機器用電源としてより高エネルギー密度の電池が望まれている。このため、自己放電が小さい上に軽量という優れた特性を持つ金属リチウムやリチウム合金を負極として使用したリチウム二次電池の研究が盛んに行われている。しかしながら、この電池では、充放電時に負極で金属リチウムがデンドライト状に析出するので、正極と短絡を起こしやすい、という問題点がある。
【0003】そこで、この問題点を克服した電池系として、負極に炭素材を使用した有機電解質二次電池が実用化されるに至っている。有機電解質二次電池では、リチウムイオンの炭素層間へのドープ・脱ドープを負極反応に利用するので、適切な電池設計により金属リチウムは析出しない。従って、上述したリチウム二次電池に比べ、より安全な電池であるといえる。
【0004】図5はこのような有機電解質二次電池の従来例を示したものである。図5に示すように、有機電解質二次電池100は捲回群12が、アルミニウム製の正極極柱20(図示を省略した負極極柱は純銅)から捲回群12方向へ突出した突出部を捲回群12の中心である管状の軸芯14に挿入することにより支持されている。捲回群12の正極集電体から延出された正極リード30は束ねられ、正極極柱20に図示しない押さえ金具を挟んで超音波溶接されている。正極極柱20は、絶縁リング26、Oリング28、及び電池蓋18を組み込んで絶縁ワッシャ24を介してナット22で締め付けられて電池蓋18に固定されており、このナット締めによりOリング28はシール圧を得ている。電池蓋18は、例えば、SUS304等のステンレス製の電池容器16にレーザ溶接することにより固定されている。なお、負極側も正極側と同様とされている。
【0005】このような有機電解質二次電池はその高容量・高特性ゆえ、近時、有機電解質二次電池を複数個直列又は並列に繋ぎあわせて電気自動車(EV)などの動力源としても用いられるようになってきた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した二次電池を電気自動車用電源として用いる場合には、大容量の二次電池を複数個繋ぎあわせて使用するので相当の重量・容積となることから、二次電池単体の軽量化・小型化が大きな課題となっている。また、二次電池を車載する場合には、振動や急加減速による重力加速度も加わるので、極柱部の電池容器等に対する絶縁の確保や電解液の二次電池外への漏出防止についても安全上及び内部短絡を回避する上でも万全を期す必要がある。
【0007】本発明は上記事案に鑑み、極柱部の絶縁と液密性を確保しつつ、軽量化・小型化を図ることができる捲回式二次電池を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は、軸芯を有する捲回群が電池容器に収容され、極柱が前記電池容器内から電池蓋に形成された穴を貫通して外部端子となり、前記電池蓋と前記極柱のフランジ部との間に電気的絶縁性を有する弾性部材を介在させた捲回式二次電池において、前記極柱には該極柱の重量を軽減するように肉抜きされた薄肉部が形成され、該薄肉部と前記電池蓋とに電気的絶縁性を有して当接し、前記フランジ部と前記電池蓋との間隔を前記弾性部材を弾性変形させた状態で一定に保持する間隔保持部材を備え、前記電池蓋は押圧力により押圧されて前記電池容器に接合されており、前記電池蓋と前記フランジ部とは前記弾性部材を介して前記押圧力により互いに押圧されており、前記軸芯と前記極柱とは直接接触して前記押圧力により互いに押圧されている、ことを特徴とする。本発明では、間隔保持部材によりフランジ部と電池蓋とは弾性部材を弾性変形させた状態で一定間隔に保持されており、極柱と軸芯とは直接接触しているので、電池蓋が押圧力により押圧されて電池容器に接合されると、電池蓋と極柱、極柱と軸芯にはそれぞれ押圧力が加わり互いに押圧された状態で固定される。従って、従来のように極柱を電池蓋に固定するためのナットや金属ワッシャ等の締結部材を用いなくても極柱を固定することができるので、捲回式二次電池を小型化することができる。加えて、極柱には該極柱の重量を軽減するように肉抜きされた薄肉部が形成されているので、捲回式二次電池の重量を軽減することができる。また、電池蓋と極柱とは、電気的絶縁性を有する弾性部材と、薄肉部と電池蓋とに電気的絶縁性を有して当接する間隔保持部材と、で絶縁されているので、電気的な絶縁を保つことができる。更に、電池蓋とフランジ部との間隔は弾性部材が弾性変形された状態で一定に保持されるので、液密性を確保することができる。
【0009】この場合において、間隔保持部材を、押圧力に対して剛性を有する棒状部材と、この棒状部材と少なくとも薄肉部及び電池蓋のいずれか一方とを電気的に絶縁するようにこの棒状部材を覆う絶縁部材と、で構成するようにすれば、棒状部材は押圧力に対して剛性を有しているので、電池蓋とフランジ部との間隔を一定に保持して弾性部材が弾性変形された状態を維持し、液密性を維持することができると共に、絶縁部材により棒状部材は薄肉部及び電池蓋の少なくともいずれか一方と電気的に絶縁するように覆われているので、電池蓋と極柱との絶縁が確保される。また、間隔保持部材を複数個備えるようにすれば、電池蓋とフランジ部との間は複数の間隔保持部材により一定間隔に保持されるので、弾性部材が均等に弾性変形され液密性を更に高めることができる。更に、絶縁部材の材質をポリプロピレンとすれば、ポリプロピレンは電解液に対する耐食性に優れ、適度な柔軟性を有するので、電気的絶縁性を維持することができると共に、絶縁部材を覆うことが容易となる。また、薄肉部を、極柱の外周近傍から内周側に形成された環状溝とし、環状溝を極柱の強度を維持する仕切により複数に分割すれば、環状溝の直径を大きくすることができるので、肉抜きされる体積が大きくなり捲回式二次電池の軽量化を図ることができると共に、仕切により極柱の強度を維持することができる。そして、電池蓋と極柱との間を絶縁する絶縁シートを更に備えるようにすれば、電池蓋と極柱とは絶縁シートにより更に絶縁されるので、高い電気的絶縁性を確保することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)以下、本発明に係る捲回式二次電池を車載用リチウムイオン二次電池(以下、リチウム電池という。)に適用した第1の実施の形態について説明する。
【0011】[構成]図1に示すように、リチウム電池10は、ステンレス製(SUS304)で円筒状の電池容器16を備えている。電池容器16の中心部には、外径φ16mm、内径φ14mm、長さ360mmのポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)製の円筒状軸芯14が配置されている。この軸芯14の周囲には、帯状の正極板及び負極板がセパレータを介して断面渦巻状に捲回された捲回群12が配置されている。
【0012】図2に示すように、正極板12Aは、厚さ20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体12Aaと、この正極集電体12Aaの両面に塗布された正極活物質層12Abと、を有している。正極活物質層12Abは、コバルト酸リチウム(LiCoO)と非晶質炭素とポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、N−メチル2ピロリドン(NMP)に分散して得られたスラリを、正極集電体12Aaの両面に均一に塗布し、乾燥させた後、ロールプレス機で圧縮成型して長さ6900mm、幅340mm+未塗工部40mm、厚さ174μmとしたものである。
【0013】一方、負極板12Bは、厚さ10μmの銅箔からなる負極集電体12Baと、この負極集電体12Baの両面に塗布された負極活物質層12Bbと、を有している。負極活物質層12Bbは、黒鉛とPVDFとを、NMPに分散して得られたスラリを、負極集電体12Baの両面に均一に塗布し、乾燥させた後、ロールプレス機で圧縮成型して長さ7000mm、幅350mm+未塗工部40mm、厚さ174μmとしたものである。
【0014】セパレータ12Cは、厚さ41μmの微多孔性のPE製フィルムからなり、正極板12A及び負極板12Bの接触を避けるために、両極板より寸法の大きい、長さ7700mm、幅359mmとされている。
【0015】正極板12Aからは正極リード30が延出されている。この正極リード30は、正極集電体12Aaのスラリ未塗布部を、幅10mm、長さ35mm、ピッチ40mmおきに短冊状にカットして束ねたものである。また、図1に示すように、負極板12Bからも正極板12Aと同様に、負極リード42が延出されている。
【0016】図2に示すように、電池容器16の端部は、ステンレス製で円盤状の電池蓋18により封口されている。電池蓋18の中央部には円形穴が形成されている。電池蓋18の円形穴の周縁と電池蓋18の外周とのほぼ中間の同一円上内壁側からは、捲回群12方向へ突出したステンレス製の固定ピン34が3個立設されている。これらの固定ピン34は小径部と大径部とを有する二段構造の円柱状の形状とされており、小径部の先端端面が電池蓋18の内壁にレーザ溶接で溶着されている。固定ピン34の大径部は電気的絶縁性及び弾性を有するPP製で円筒状の絶縁部材としての絶縁チューブ36により覆われている。絶縁チューブ36の電池蓋18とは反対側の先端部は球面とされており、この球面を切断する円錐面は絶縁チューブ36の外径より大きな直径を有している。
【0017】また、リチウム電池10は、電池容器16の内部にアルミニウム製で略コマ状の正極極柱20を備えている。正極極柱20は、電池容器16の内径より若干小径の円盤部を有している。図3に示すように、この円盤部には円盤部を肉抜きするように外周近傍から内周側に薄肉部としての環状溝20Aが形成されており、更に、環状溝20Aは円盤部に所定強度を持たせるための仕切20Cにより3個の陥没部に分割されている。また、これらの陥没部にはそれぞれ圧入穴20Dが形成されており、図2に示すように、この圧入穴20Dに絶縁チューブ36で覆われた固定ピン34の大径部が電池蓋18側から圧入され絶縁チューブ36の円錐面で正極極柱20に係止・固定されている。正極極柱20の円盤部の中央からは捲回群12方向へ円筒状の突出部が突出形成されており、突出部は軸芯14の内径に挿入されている。更に、円盤部には突出部の反対側から突出部と同径の円筒部が電池蓋18の円形穴方向に外部端子となるように突出形成されている。正極極柱20にはネジ孔20Bが形成されており、図示しないブスバ固定ネジが螺着できるようになっている。なお、円筒部端面は電池蓋18の外壁面と同一面となるように各部材の寸法が定められている。
【0018】正極極柱20のフランジ部と電池蓋18との間には、セラミック製の絶縁リング26及びゴム(EPDM)製で弾性を有する弾性部材としてのOリング28が介在している。更に、正極極柱20と電池蓋18との間には、図3に示すように、正極極柱20と電池蓋18とを絶縁する円形状の絶縁シートとしての絶縁テープ44が介在している。なお、絶縁テープ44には、その中央部に正極極柱20の円筒部及び絶縁リング26を挿通させるための中央穴44A及び絶縁チューブ36で覆われた固定ピン34を挿通させるための絶縁チューブ挿通穴44Bが形成されている。
【0019】また、図2に示すように、束ねられた正極リード30の先端部は図示しない押さえ金具を挟んで超音波溶接により正極極柱20の周縁部に溶着されている。そして、捲回群12、正極リード30及び正極極柱20の周縁部と電池容器16とが直接接触しないように図示しない絶縁フィルムが電池容器16の内径側に配置されている。なお、負極側も正極側と同様に構成されており、負極極柱48(図1参照)の材質は純銅とされている。また、リチウム電池10は、例えば、充電器の故障等により過充電時に電池内部の圧力が所定圧以上に上昇したときに開裂して電池内部の圧力を低下させる図示しない開裂弁を備えており、この開裂弁は絶縁チューブ36と抵触しない位置に配置されている。
【0020】[作製方法]まず、正極集電体12Aa及び負極集電体12Baのスラリ未塗布部を短冊状にカットして正極リード30及び負極リード42を形成し、正極板12A及び負極板12Bを両者が接触しないようにセパレータ12Cを介して軸芯14の周囲に渦巻状に捲回する。この捲回により正極リード30及び負極リード42はそれぞれのリードが集まるように巻き取られる。次いで、正極リード30をリード群に束ねた後、捲芯14の内径に正極極柱20の突出部を挿入し、前記リード群の先端部を正極極柱20の周縁部に超音波溶接する。捲回群12及び正極極柱20に図示しない絶縁フィルムを巻き付けて電池容器16内に挿入する。
【0021】次に、正極極柱20のフランジ部と電池蓋18との間に絶縁リング26、Oリング28を、更に、正極極柱20と電池蓋18との間に絶縁テープ44を介在させ、絶縁テープ44に形成された中央穴44A及び絶縁チューブ挿通穴44Bに、それぞれ、正極極柱20の円筒部及び絶縁リング26、絶縁チューブ34に覆われた固定ピン34を挿通させ、絶縁チューブ36の先端部を圧入穴20Dの位置に位置決めして、電池蓋18を押圧して電池容器16と電池蓋18との境界部をレーザ溶接により溶着する。なお、説明を省略した負極側も同様である。
【0022】更に、図示しない注液口からエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)の混合溶液中に6フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1モル/リットルの割合で溶解した非水電解液(有機電解液)を注液して正極活物質及び負極活物質間に充填し、注液口を封口する。そして、所定時間、所定定電圧・定電流で充電してリチウム電池10を完成させる。
【0023】(第2実施形態)次に、本発明に係る捲回式二次電池を車載用リチウム電池に適用した第2の実施の形態について説明する。なお、本実施形態において第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付しその説明を省略し、異なる箇所のみ説明する。
【0024】図4に示すように、本実施形態のリチウム電池11では、電池蓋18の円形穴の周縁と電池蓋18の外周とのほぼ中間の同一円上内壁側から捲回群12方向へ突出したステンレス製で円柱状の固定ピン38が3個立設されている。この固定ピン38は電気的絶縁性及び弾性を有するPP製で円筒状の絶縁部材としての絶縁チューブ40で覆われている。絶縁チューブ40の電池蓋18とは反対側の先端部外径は縮径されており、絶縁チューブ40の縮径された先端部が圧入穴20Dに圧入可能とされ、縮径された絶縁チューブ40の外径端面が陥没部と当接するようになっている。
【0025】リチウム電池11を作製するには、固定ピン38及び絶縁チューブ40の先端部を陥没部に形成された圧入穴20Dに圧入可能なように位置決めした後、蓋18を40kg/cmの押圧力で押し付けながら電池容器16と蓋18との境界部をレーザ溶接により溶着する。なお、本実施形態では、第1実施形態より小さい押圧力で押し付けることから液密性を高めるために第1実施形態で使用したOリング28の断面径よりやや大きめの断面径を有するOリング29を使用した。
【0026】(作用等)以上の実施形態のリチウム電池10、11では、3個の固定ピン34、38及び絶縁チューブ36、40により電池蓋18の内壁と正極極柱20のフランジ部との間隔が均一かつ一定に保たれ、Oリング28、29が正極極柱20のフランジ部と電池蓋18の内壁とに圧接されるので、Oリング28、29は均等に弾性変形して電池容器16内部の発電要素は外気から遮断される。このため、リチウム電池10、11からは電解液の液漏れ(リーク)が生じない(液密性を高めることができる)。
【0027】また、以上の実施形態では、Oリング28、29、絶縁リング26、絶縁チューブ36、40及び図示しない絶縁フィルムの介在により、正極極柱20、正極リード30及び捲回群12と、電池蓋18及び電池容器16と、は電気的に絶縁されているので、正極極柱20と電池蓋18及び電池容器16との内部短絡は生じない。
【0028】更に、以上の実施形態では、固定ピン34、38及び絶縁チューブ36、40により電池蓋18と環状溝20Aとの間隔は一定に保持されており、正極極柱20と軸芯14とは直接接触しているので、電池蓋18が押圧されて電池容器16に溶接されると、Oリング28、29は弾性変形して反発力が生じ、電池蓋18と正極極柱20と、正極極柱20と軸芯14と、には押圧力が加わり互いに押圧された状態で固定される。従って、図5に示した従来例の電池のように正極極柱20(及び負極極柱)を固定するためのナット22、電池蓋18と正極極柱20とを絶縁するための絶縁ワッシャ24を使用しなくても正極極柱を固定することができる。また、これらの締結部材がない分、リチウム電池10、11の長さを短くすることができる。更に、ナット22で固定するために正極極柱20の円筒部を電池蓋18から電池蓋18の外部に延出させる必要がないので、リチウム電池10、11の長さを短くすることができる。
【0029】また、正極極柱20に外周近傍から内周側に環状溝20Aを形成したので、直径が大きくなることから肉抜きされる体積が大きくなり、リチウム電池10、11の軽量化を図ることができる。更に、環状溝20Aを仕切20Cにより区切りアルミニウム製の正極極柱20に強度を持たせたので、電池作製時に電池蓋18に所定の押圧力を掛けても正極極柱20が破損することもなく、車載したときの振動や急加減速による重力加速度に耐えることができる。
【0030】また、絶縁チューブ36、40の材質をポリプロピレンとしたので、電解液に対する腐食性に優れ電気的絶縁性を維持することができると共に、適度の柔軟性を有し簡単に固定ピン34、突起38を覆うことができ、更に、圧入穴20Dに圧入することが容易となる。
【0031】また更に、電池蓋18と正極極柱20との間に絶縁テープ44を介在させたので、これらの部材間の電気的絶縁性を更に高めることができる。なお、以上の作用等については負極側でも同じである。
【0032】(試験等)次に、このようにして作製した第1実施形態及び第2実施形態のリチウム電池10、11(以下、実施例1、2の電池という。)について、重量及び長さを実測すると共に、リーク試験を行った。なお、実施例の電池の効果を確認するために同時に作製した、図5に示した従来例の電池(以下、比較例の電池という。)についても併せて記載する。
【0033】実施例及び比較例の各電池の重量及び長さの実測結果を下表1に示す。表1に示すように、実施例の電池では、比較例の電池に対し、重量で90g以上軽量化することができ、また、長さで31mm小さくすることができた。従って、リチウム電池10、11を複数個繋ぎあわせて使用する場合には、相当の軽量化・小型化を図ることができることが分かった。
【0034】
【表1】


【0035】また、実施例及び比較例の電池を下表2に示す条件で振動を与え、リークの有無を確認した。このリーク試験の結果、実施例及び比較例の電池からは電解液の液漏れは発生しなかった。従って、小型化・軽量化されたリチウム電池10、11を車載しても振動や急加減速による電解液の液漏れが生じない(液密性が確保されている)ことが確認された。
【0036】
【表2】


【0037】従って、以上の実施形態のリチウム電池10、11では、極柱部の絶縁及び液密性が確保され、かつ、軽量化・小型化が図られている。
【0038】なお、以上の実施形態では、ロール状に捲回して構成された捲回群12を円筒状の電池容器16に挿入した例について説明したが、ロール状に捲回して構成された捲回群12を三角状、四角状等の多角状の電池容器に挿入するようにしてもよい。
【0039】また、以上の実施形態では、リチウムイオン二次電池に本発明を適用した例について説明したが、リチウム二次電池以外の他の有機電解質電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の他の電池系においても本発明を適用することができる。
【0040】更に、以上の実施形態では、環状溝20Aを正極極柱20の上部側に形成した例を示したが、下部側に形成してもよい。また、環状溝20Aは正極極柱20の軽量化を図るために肉抜きしたものであるので、正極極柱20の強度を維持できれば例えば四角柱や三角柱のように環状溝以外の形状で肉抜きを行うようにしてもよい。
【0041】そして、以上の実施形態では、各部材の寸法、材質、形状及びリチウム電池10、11の製造方法等について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、上述した特許請求の範囲内において他の種々の実施形態を採ることができることはいわゆる当業者にとって明らかである。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、間隔保持部材によりフランジ部と電池蓋とは弾性部材を弾性変形させた状態で一定間隔に保持されており、極柱と軸芯とは直接接触しているので、電池蓋が押圧力により押圧されて電池容器に接合されると、電池蓋と極柱、極柱と軸芯にはそれぞれ押圧力が加わり互いに押圧された状態で固定され、極柱を電池蓋に固定するための締結部材を用いなくても極柱を固定することができ、捲回式二次電池を小型化することができると共に、極柱には重量を軽減するように肉抜きされた薄肉部が形成されているので、捲回式二次電池の重量を軽減することができる、という効果を得ることができる。また、電池蓋と極柱とは、電気的絶縁性を有する弾性部材と、薄肉部と電池蓋とを電気的絶縁性を有して当接する間隔保持部材と、で絶縁されているので、電気的な絶縁を保つことができ、電池蓋とフランジ部とは弾性部材が弾性変形された状態で所定間隔に保持されているので、液密性を確保することができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した第1の実施の形態のリチウム電池の概略断面図である。
【図2】第1の実施の形態のリチウム電池の正極極柱近傍の拡大断面図である。
【図3】第1の実施の形態のリチウム電池の正極極柱近傍の分解斜視図である。
【図4】本発明を適用した第2の実施の形態のリチウム電池の概略断面図である。
【図5】従来例の有機電解質二次電池の概略断面図である。
【符号の説明】
10、11 リチウム電池(捲回式二次電池)
12 捲回群
14 軸芯
16 電池容器
18 電池蓋
20 正極極柱
20A 環状溝(薄肉部)
28、29 Oリング(弾性部材)
34、38 固定ピン(棒状部材、間隔保持部材の一部)
36、40 絶縁チューブ(絶縁部材、間隔保持部材の一部)
44 絶縁テープ(絶縁シート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 軸芯を有する捲回群が電池容器に収容され、極柱が前記電池容器内から電池蓋に形成された穴を貫通して外部端子となり、前記電池蓋と前記極柱のフランジ部との間に電気的絶縁性を有する弾性部材を介在させた捲回式二次電池において、前記極柱には該極柱の重量を軽減するように肉抜きされた薄肉部が形成され、該薄肉部と前記電池蓋とに電気的絶縁性を有して当接し、前記フランジ部と前記電池蓋との間隔を前記弾性部材を弾性変形させた状態で一定に保持する間隔保持部材を備え、前記電池蓋は押圧力により押圧されて前記電池容器に接合されており、前記電池蓋と前記フランジ部とは前記弾性部材を介して前記押圧力により互いに押圧されており、前記軸芯と前記極柱とは直接接触して前記押圧力により互いに押圧されている、ことを特徴とする捲回式二次電池。
【請求項2】 前記間隔保持部材は、前記押圧力に対して剛性を有する棒状部材と、この棒状部材と前記薄肉部及び前記電池蓋の少なくともいずれか一方とを電気的に絶縁するようにこの棒状部材を覆う絶縁部材と、で構成されたことを特徴とする請求項1に記載の捲回式二次電池。
【請求項3】 前記間隔保持部材を複数個備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の捲回式二次電池。
【請求項4】 前記絶縁部材は、ポリプロピレンを材質とすることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の捲回式二次電池。
【請求項5】 前記薄肉部は、前記極柱の外周近傍から内周側に形成された環状溝であり、該環状溝は前記極柱の強度を維持する仕切により複数に分割されたこと特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の捲回式二次電池。
【請求項6】 前記電池蓋と前記極柱との間を絶縁する絶縁シートを更に備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の捲回式二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2001−68164(P2001−68164A)
【公開日】平成13年3月16日(2001.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−239596
【出願日】平成11年8月26日(1999.8.26)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】