説明

捲縮繊維束の幅異常検出方法及び装置

【課題】フィルター品質を左右するトウバンドの捲縮斑を繊維束の幅変動から正確に検知のするのに特に適し、その繊維束の変動状態を目視によってもいつでも簡単に確認できる異常検知方法及び装置を提供する。
【解決手段】捲縮繊維束(1) を積載装置に搬送する工程で、撮像手段により繊維束の画像を取得し、画像処理手段(4) により、前記取得した画像の輝度変化量から繊維束の幅方向における両端を検出すると共に、繊維束幅として前記両端間の距離を演算する。その繊維幅の変動値を一定時間ごとに演算手段(5) を使って算出して、その変動値が閾値を越えた時に、刑法装置(7) から警報を発生する。また、繊維束(1) の画像を記録・表示手段(6) に記録し表示可能としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捲縮のかかった繊維束(特にトウバンド等)を積載装置に送る搬送工程において、搬送中の繊維束の幅変化量が所定の範囲内にあるかどうかを検知するための捲縮繊維束の幅異常検知方法と検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たばこフィルター等に用いられるアセテートトウ(トウバンド)は、一般に連続したフィラメントを集合し、帯状に揃えた繊維束を、例えばクリンパ等により捲縮を付与した後、乾燥することによって製造することができる。トウバンドは、フィードロールを用いて積載装置まで搬送され、圧縮、梱包後にフィルターメーカーにて、円棒状のプラグに巻き上げられた後、たばこ用フィルターとして使用される。この際、フィルターの硬さや通気抵抗などの性能を発現するために、トウバンドの捲縮が非常に重要な役割をしているのは、周知の事実である。
【0003】
また、連続したトウバンドから得られるプラグやフィルターは、一定の条件で巻き上げられている限り、一定の性能を示すことが求められる。
【0004】
しかし、部分的にトウバンドの捲縮状態が変化した場合、捲縮が強く、細かく施されている場合は、得られるプラグの通気抵抗が高くなり、逆に捲縮が弱く、荒く施されている場合は、通気抵抗が低くなるという問題が発生する。そのため、長手方向に均一な捲縮状態のトウバンドが求められている。
【0005】
部分的にトウバンドの捲縮状態が変化する理由としては、クリンパの性能不良、繊維束の引き揃え不良、トウバンドを構成するフィラメントの繊度斑、油分斑など、様々な要因考えられる。
【0006】
これまでは、一旦積載装置まで引き上げられたトウバンドの一部を取り出して、オフラインで捲縮数を測定したり、実際にプラグを巻き上げ、通気抵抗のバラツキを測定したりして、均一な捲縮状態となっているかを判断していた。
【0007】
しかしながら、このようなオフラインによる判断は時間がかかり、製品ロスにつながり、また全てのトウバンドを一律に評価できないという問題がある。
【0008】
そこで、上記のような問題を解消するために、例えば特開平7−207570号公報(特許文献1)に開示されているように、繊維束の片側から投光し、繊維束の影を利用して、連続的に厚さや幅を計測し、得られた計測値を基に閾値を算出し、計測値と閾値とから、繊維束の形状異常を検出、警報を発することにより、オンラインで異常を検知できる装置が提案されている。
【特許文献1】特開平7−207570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかして、この装置では、繊維束のねじれ等のような形状の大きな異常を検出することはできるが、最終製品であるフィルター品質を左右する僅かな大きさの捲縮斑までをも検出することはできなかった。
【0010】
本発明の目的は、フィルター品質を左右するトウバンドの捲縮斑を繊維束の幅変動から正確に検知するとともに、その繊維束の変動状態を目視によってもいつでも簡単に確認できる異常検知方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の基本構成は、捲縮が付与されている繊維束の幅異常を検知する方法であって、前記繊維束を積載装置に搬送する工程で、撮像手段により繊維束の画像を取得すること、画像処理手段により、前記取得した画像の輝度変化量から繊維束の幅方向における両端を検出すると共に、繊維束幅として前記両端間の距離を演算すること、前記幅の変動値を一定時間ごとに演算手段を使って算出すること、その変動値が閾値を越えた時に、警報を発生すること、及び繊維束の画像を記録・表示手段に記録し表示可能とすることを含んでなる捲縮繊維束の幅異常検知方法にある。
【0012】
さらに、本発明の第2の基本構成は、捲縮が付与されている繊維束の幅異常を検知する装置であって、前記繊維束の画像を取得する撮像手段と、繊維束の幅方向両端の輝度変化量を検出すると共に、前記両端間の距離を繊維束幅として演算する画像処理手段と、一定時間ごとに幅の変動値を算出する演算手段と、前記変動値が閾値を越えた時を品質異常と判定する異常判定手段と、異常判定手段により異常と判定されたときに警報を発生する警報発生手段と、繊維束の画像を記録し、画面で繊維束の状態を確認できる記録・表示手段とを備えてなる捲縮繊維束の幅異常検知装置にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の繊維束の幅異常検知方法及び装置によれば、捲縮が付与された繊維束の捲縮斑を画像によって正確にかつ早期に発見でき、製品ロスを最小限に止めることができる。また、いつでも、トウの状態を記録画像で確認することができ、捲縮異常要因解析の一助とすることができると共に、割れや汚れなどの他の異常をも早期に発見することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るトウ幅の検出によるトウ品質監視方法では、捲縮が付与されている繊維束を積載装置に搬送する工程で、繊維束の画像を取得し、繊維束の幅方向における両端を画像の輝度変化量から検出し、その両端間の距離を繊維束幅として演算すると共に、一定時間ごとに前記幅の変動値を算出し、前記変動値が閾値を超えた時に、警報を発生することにより、捲縮斑を早期に発見するようにしている。
【0015】
トウ幅を検出する位置は、捲縮が付与された繊維束が乾燥機から出た後から積載装置のフィードロールまでの間であれば、どこでも良い。ただし、繊維束が異常に揺れることによる誤作動を防ぐために、ローラーガイドや、バーガイドなどのガイド類でトウ位置が規制されている間に検出することが望ましい。
【0016】
繊維束の幅変動値CVは、以下の式で求めることができる。
CV(%)=SD/AV×100 ・・・ (1)
SD=√(Σ(Xi−AV)2 /(N−1)) ・・・(2)
ここで、AVは、N個の測定値の平均値。Xiは、個々の測定値を示す。
【0017】
繊維束の幅測定頻度は、任意に設定できる。捲縮斑による幅異常部は長手方向に50mm程度の長さに渡っていることが多い。繊維束の搬送速度は、300〜700m/min.であるので、50mm長の異常部を全て検知するためには、少なくとも100〜250回/secの頻度で幅を測定する必要がある。しかしながら、プラグ品質のばらつきが問題となる捲縮斑の場合、長手方向に連続的に斑が発生している場合が多く、全ての異常部を検知しなくても、ある間隔で測定した幅が、一定時間内でどの程度変動しているかを解析することにより、問題となる捲縮斑を特定することが可能である。具体的には、約17回/sec程度の測定頻度でも、ある時間内の変動値から、捲縮斑を特定することが可能である。
【0018】
変動値を求める際に区切りとする時間についても、任意の設定が可能である。ただし、あまりに短い時間で区切ると、測定本数が少なすぎて捲縮斑を判定できるだけの測定点数とならない問題があり、逆に長い時間で区切ると、捲縮斑の判定に時間がかかり、問題があった場合に製品ロスが増大するという問題がある。例えば、標準的なプラグ50本分に相当するトウ長さ6mに相当する時間で区切ってもよい。
【0019】
警報を発生するかどうかの閾値は、予め設定してもいいし、測定した値に基づき自動的に設定してもよい。
【0020】
また、繊維束の画像を取得する方法は、撮像できるものであれば何でも良い。例えば、CCDカメラ、赤外線カメラなどでも良い。撮像の際、繊維束の幅方向における両端と背景との識別が容易にできるよう、背景と異なった色調の光をトウに照射しても良い。
【実施例】
【0021】
以下に、代表的な一実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。図1は、本発明の捲縮繊維束の幅異常を検知する装置の概略図である。
捲縮繊維束の幅異常を検知する検知装置の仕分は、
カメラ:株式会社キーエンス CV−025(レンズ CA−LH8)
画像処理装置:株式会社キーエンス CV−2500
コンピュータ:NEC VY13M/RF−R
モニタ:株式会社キーエンス CA−MN80
照明装置:株式会社キーエンス CA−R20
であった。
【0022】
がイド2に沿って搬送されている繊維束1の幅方向を撮像できるように、繊維束の上方にカメラ3が配置されている。カメラ3は、繊維束1の幅方向における両端を一つの画像に含むように配置されなければならない。カメラ3を通して得られた画像情報は、画像処理装置4に送られ、当該装置4で繊維束1の幅方向における両端を画像の輝度変化量から検出し、その両端間の距離を繊維束幅として演算される。この時、カメラ3を通して得られる画像のスケールを予め計測し、演算式に組み込むことにより、正確な繊維束幅を得ることができる。また、照明装置8により、繊維束1に照明を照射することにより、背景から繊維束を識別しやすくしてもよい。 コンピューター5では、画像処理装置4で演算されたトウ幅について、一定時間ごとに変動値を算出するとともに、カメラ3を通して得られた画像を記録する。また、コンピューター5では、変動値が閾値を超えた時に、警報装置7が警報を発するよう異常判定手段から信号が送られる。記録する画像は、一定時間ごとに得られた画像でも良いが、トウ幅に許容範囲を設けて、その範囲外の画像のみを記録することにしてもよい。記録された画像は、モニター6を通して、いつでも目で確認することができる。
【0023】
表1には、2種類の全繊度が3.9キロテックス、単繊維当たりの繊度が3.0デシテックスのY字断面形状を有するフィルター用アセテートトウ搬送中のトウ幅変動とそのトウを用いたプラグ品質を示した。
【0024】
【表1】

【0025】
このとき、トウ幅の測定頻度17回/secで測定し、1分毎にトウ幅変動値を演算させた。プラグは、プラグ製造装置にて400m/minで巻き上げた後、300本の各物性を測定した。表1より、トウ幅変動値が大きいものは、プラグ変動が大きいことがわかる。
【0026】
図2には、表1に示したトウの幅を測定中に、トウ幅が許容範囲外となったときの、一画像を示した。捲縮状態が部分的に変化し、均一な捲縮となっていないことが目視で確認できる。
【0027】
上述の通り、本発明のトウ監視方法によれば、捲縮が付与された繊維束の捲縮斑を早期に発見でき、製品ロスを最小限に止めることができる。また、トウの状態を画像で確認することができ、捲縮異常要因解析の一助とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のトウ品質監視装置を示す図である。
【図2】繊維束の画像の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 繊維束
2 ガイド
3 カメラ
4 画像処理装置
5 コンピューター
6 モニター
7 警報装置
8 照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
捲縮が付与されている繊維束の幅異常を検知する方法であって、
繊維束を積載装置に搬送する工程で、撮像手段により繊維束の画像を取得すること、
画像処理手段により、前記取得した画像の輝度変化量から繊維束の幅方向における両端を検出すると共に、繊維束幅として前記両端間の距離を演算すること、
前記幅の変動値を一定時間ごとに演算手段を使って算出すること、
その変動値が閾値を越えた時に、警報を発生すること、及び
繊維束の画像を記録・表示手段に記録し表示可能とすること、
を含んでなる捲縮繊維束の幅異常検知方法。
【請求項2】
捲縮が付与されている繊維束の幅異常を検知する装置であって、
前記繊維束の画像を取得する撮像手段と、
繊維束の幅方向両端の輝度変化量を検出すると共に、前記両端間の距離を繊維束幅として演算する画像処理手段と、
一定時間ごとに幅の変動値を算出する演算手段と、
前記変動値が閾値を越えた時を品質異常と判定する異常判定手段と、
異常と判定されたときに警報を発生する警報発生手段と、
繊維束の画像を記録し、画面で繊維束の状態を確認できる記録・表示手段と、
を備えてなる捲縮繊維束の幅異常検知装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−280637(P2008−280637A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124840(P2007−124840)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】