説明

掃除具

【課題】清掃対象物や隙間の形状に対して追従性が高く、清掃を効率的に行なうことができる掃除具を提供する。
【解決手段】清掃用シート30が装着される掃除具本体部10と、掃除具本体部10に連結される把手20と、を備えた掃除具1において、掃除具本体部10は、所定の角度で交差する二つの仮想平面H,H上にある2枚の可撓性板体11,11を備えて構成され、当該掃除具本体部10は、上方向からの押力によって2枚の可撓性板体11,11の間の距離が前端側から大きくなるよう展開され、左右方向の押力によって2枚の可撓性板体11,11の間の距離が小さくなるように圧縮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掃除具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、清掃用シートが装着される掃除具本体部と、掃除具本体部に連結される把手と、を備えた掃除具が知られている。
このような掃除具において、清掃用シートが装着される掃除具本体として断面視円弧形状の板状部にスリットを形成し、清掃時に押圧してスリットを広げることで、清掃用シートを被清掃面に広範囲に亘って押し付けることが可能な掃除具が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、清掃用シートが装着される掃除具本体が押圧によって適度なしなりを生じるように、当該掃除具本体の厚みを調整した清掃具が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−296712号公報
【特許文献2】特開2003−265391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の掃除具は、使用時に板状の掃除具本体が平面方向に広がって、平面方向の清掃用シートの掃面範囲を拡大するだけである。
また、特許文献2記載の掃除具においても、本体部分は板状であって、清掃用シートは本体部分のしなりに追従するだけである。
すなわち、特許文献1、2記載の掃除具は、清掃対象物に面で接触するだけなので、立体的な清掃対象物にはフィットすることができず、清掃を効率的に行なうことができないものであった。
また、特許文献1、2記載の掃除具は、奥は広いが間口が掃除具の幅より狭い隙間などに挿入するのは困難であって、清掃を効率的に行なうことができないものであった。
【0005】
本発明の課題は、清掃対象物や隙間の形状に対して追従性が高く、清掃を効率的に行なうことができる掃除具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
清掃用シートが装着される掃除具本体部と、
前記掃除具本体部に連結される把手と、を備えた掃除具において、
前記掃除具本体部は、所定の角度で交差する二つの仮想平面上にある2枚の可撓性板体を備えて構成され、
当該掃除具本体部は、上方向からの押力によって前記2枚の可撓性板体の間の距離が前端側から大きくなるよう展開され、左右方向の押力によって前記2枚の可撓性板体の間の距離が小さくなるように圧縮されることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の掃除具において、
前記2枚の可撓性板体は、基端から先端に向かって設けられたガイド部を備え、
前記ガイド部は、前記可撓性板体における当該ガイド部以外の部分よりも剛性が高いことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の掃除具において、
前記ガイド部は、先端側にいくにつれて外側に向かうよう設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の掃除具において、
前記2枚の可撓性板体の表面には、前記清掃用シートを係止する係止部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の掃除具において、
前記2枚の可撓性板体は、二股の挿入口を有する清掃用シートに装着されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の掃除具において、
前記2枚の可撓性板体は、それぞれ異なる機能を有する清掃用シートが装着されることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の掃除具において、
前記所定の角度は、30°〜120°の範囲内の値であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、掃除具本体部が、所定の角度で交差する二つの仮想平面上にある2枚の可撓性板体を備えて構成され、使用時において当該掃除具本体部は、上方向からの押力によって2枚の可撓性板体の間の距離が前端側から大きくなるよう展開され、左右方向の押力によって2枚の可撓性板体の間の距離が小さくなるように圧縮されるように構成されている。
よって、掃除具本体部は、清掃対象物の幅に合わせて前端側から展開し、2枚の可撓性板体によって清掃対象物を挟みこむことで、立体的な形状の清掃対象物にもフィットすることができる。
また、掃除具本体部は、清掃面に押し付けると隙間の幅に合わせて変形するため、幅の狭い隙間にも、広い隙間にも好適にフィットすることができる。そして、このため、隙間の幅方向に掃除具本体部を動作させなくても、隙間の奥行き方向にのみ掃除具本体部を動作させれば当該隙間の清掃を行えることとなり、清掃効率が良い。
また、掃除具本体部は、奥は広いが間口が掃除具の幅より狭い隙間などの清掃を行う場合、間口では2枚の可撓性板体の間の距離が小さくなるように圧縮し、奥では2枚の可撓性板体の間の距離が大きくなるよう展開するように変形でき、間口側と奥側の幅が違う隙間にも好適にフィットすることができる。
すなわち、清掃対象物や隙間の形状に対して追従性が高く、清掃を効率的に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態の掃除具の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の掃除具の平面図である。
【図3】図1の掃除具の分解斜視図である。
【図4】図1の掃除具の撓り方を説明するための図である。
【図5】本実施形態の掃除具を用いて清掃している状態の一例を示す図である。
【図6】本実施形態の掃除具を用いて清掃している状態の一例を示す図である。
【図7】本実施形態の掃除具を用いて清掃している状態の一例を示す図である。
【図8】掃除具本体部の変形例の一例を示す図である。
【図9】掃除具本体部の変形例の一例を示す図である。
【図10】清掃用シートの変形例の一例を示す図である。
【図11】掃除具本体部の変形例の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0016】
本発明に係る掃除具1は、例えば、室内や車内などで埃を除去する清掃作業などに用いられるハンディモップである。
なお、以下の説明では、掃除具1において、長手方向一端側を後側、他端側を前側とし、短手方向一端側を左側、他端側を右側とし、前後方向及び左右方向の双方に直交する方向を上下方向とする。
【0017】
掃除具1は、例えば、図1〜3に示すように、掃除具本体部10と、掃除具本体部10に連結された把手20と、掃除具本体部10に装着される清掃用シート30と、を備えている。
【0018】
掃除具本体部10は、表面(上面及び下面)の略全体を覆うように清掃用シート30が装着され、その表面の略全体により清掃面を構成するものである。
【0019】
掃除具本体部10は、例えば、図3に示すように、上方に凸となるよう所定の角度で交差する二つの仮想平面H,H上にある2枚の可撓性板体11,11備えて構成されている。
具体的に、可撓性板体11,11は、前後方向に長尺な矩形状の2枚のシート材であり、互いに30°〜120°の所定の角度を成すように配された状態で、後上端部において把手20の取付け部21に固定され、断面視ハの字形状を成すようになっている。
可撓性板体11,11の後上端部からは、把手20の取付け部21が後ろ方向に向かって突出している。
なお、2枚の可撓性板体11,11を取付け部21に固定するには、例えば、可撓性板体11,11の後上端部を内側に折り曲げ、その折り曲げた部位を取付け部21に固定するなどの方法が挙げられるが、これに限定されない。
【0020】
この可撓性板体11,11は、後上端部のみが取付け部21に固定され、二つの仮想平面H,Hが成す仮想の頂角Rが30°〜120°の所定の角度を成すよう構成されることにより、上方側や後上方側(把手20側)から押力が掛かった場合には、2枚の可撓性板体11,11の間の距離が前端側から大きくなるよう展開する。また、左右方向から押力が掛かった場合には、2枚の可撓性板体11,11の間の距離が小さくなるように圧縮する。そして、押力が外れた場合には、前端部の開きが元の状態に復元する可撓性を有している。
即ち、2枚の可撓性板体11,11は、押圧方向に対して傾いて設置されているため、把手20を被清掃部に対して垂直に押圧すると被清掃部に対して平行になろうとするが、後上端部で把手20に固定されているため変形度合いが制限される。この結果、可撓性板体11,11の自由端である先端部が、捩れるように弾性変形して展開する。
また、2枚の可撓性板体11,11は、互いに所定の角度を成した立体形状であるため、左右に押圧した場合には弾性変形して圧縮する。
具体的には、図4に示すように、可撓性板体11,11に上方側から、例えば自重の2〜20倍の加重を掛けると、力の大きさに応じて可撓性板体11,11が撓って前端部(前下端部)から左右に開くように展開し、加重を外すと元の状態に復元する。
なお、頂角Rの元の角度が30°未満であると展開させる時に開きづらく、120°より大きいと圧縮させるときに閉まりづらくなるため、成形時には角度を30°〜120°の範囲内の値とすることが好ましい。
【0021】
掃除具本体部10は、このような可撓性板体11,11から構成されることにより、清掃を行う場合の、清掃対象物や隙間の形状に追従して横方向(左右方向)及び縦方向(上下方向)に変形し、清掃対象物や隙間の形状にフィットするようになっている。
また、この可撓性板体11,11は、前方から徐々に展開していくため、隙間の奥で壁などの面に突き当たった場合に、当該面により前端部が左右に広がるように変形し、隙間の形状にフィットするようになっている。
【0022】
なお、可撓性板体11に用いられる材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、ポリスチレン、等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記樹脂材の他にも、例えば、木材、金属板、紙、樹脂含有紙、ゴム状板、などを用いることとしても良い。
また、可撓性板体11は、全体が同じ材質でも良いし、しなり方等を制御するため部分的に上記の材質を組み合わせることとしても良い。
具体的には、例えば、可撓性板体11の縁部の材料として中央部よりも柔らかい材質のものを用いることで、所望のしなり性を確保しつつ、縁部が被清掃部に当たっても被清掃部を傷付けないようにすることができる。
また、可撓性板体11を、例えば、3層構造にして、中層部に硬い材質のものを用い、表層部に中層部よりも柔らかい材質のものを用いてしなり方を調整してもよい。
【0023】
ここで、樹脂又はゴム状板を用いる場合には、インジェクションやブローで金型に入れて成型したり、塊を切削やキャスト法等で製板した後に加熱成型や真空成型したりすることで可撓性板体11を作製することができる。
また、木材を用いる場合には、板材に熱をかけて折り曲げた状態で固定したり、塊から削り出したりすることで作製することができる。
また、金属板を使用する場合には、板材をプレス加工又は折り曲げ加工することにより可撓性板体11を作製することができる。
また、樹脂含有紙を用いる場合には、紙を所定の形状とした状態で溶融樹脂を含浸し冷却したり、或いは紙を樹脂含有紙とした後に加熱成型することにより作製することができる。
【0024】
把手20は、図1〜3に示すように、掃除具本体部10に固定するための取付け部21と、掃除時に握るための把持部22とで構成されている。
取付け部21は、その一端部に可撓性板体11,11が固着され、他端部が把持部22に固定された棒状部材である。なお、取付け部21の長さは適宜設定される。
把持部22は、取付け部21の根元から後上方に延びる形状であり、使い勝手の観点から例えば10〜20cm程度の長さに形成されている。
【0025】
なお、このような把手20に用いられる材質については特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂、ポリスチレン、等の熱可塑性樹脂や、木材、紙、樹脂含有紙、ゴム状板、金属、などを用いて作製することができる。
具体的な作製方法としては、掃除具本体部10と同様の方法を適用可能である。
【0026】
清掃用シート30は、掃除具1の掃除具本体部10に装着して用いる、取り替え式の清掃用シートである。
清掃用シート30は、例えば、図2、3に示すように、二股の挿入口30a,30aを有し、挿入口30a,30aから可撓性板体11,11を差し込むことによって、掃除具本体部10の略全体を覆うように装着されて使用される。
清掃用シート30は、被清掃部にゴミ等の固形状汚れがある場合、主に繊維集合体32で当該固形状汚れを絡め取ることによって、当該固形状汚れを取り去るようになっている。
【0027】
具体的に、清掃用シート30は、モップ状の清掃用シートであり、互いに重ね合わされた2枚の基材シート31と、基材シート31の一方の面(外面)に接合され、繊維321,…が集合してなる繊維集合体32と、を備えて構成される。
【0028】
基材シート31,31は、例えば、前後方向に長尺なシート中央部に前後方向に沿ったスリット33の形成されたコの字形状に形成されており、繊維集合体32で覆われていない面同士が対向するように重ね合わされて、長手方向一端部(後端部)を除いた周縁部を接着することによって、長手方向一端部(後端部)を二股の開口部(挿入口30a,30a)とした袋状に形成されている。
この基材シート31,31は、掃除具本体部10を差し込むことによって、掃除具本体部10の形状に追従して上方に凸となるよう所定の角度折り曲げられた状態に変形する。
そして、清掃用シート30がこのような二股の挿入口30a,30aを有する形状であることで、可撓性板体11,11の開閉動作が妨げられることがなく、掃除具本体部10の展開及び圧縮の変形がスムーズに行われるようになっている。
なお、この清掃用シート30のスリット33の長さによって、可撓性板体11,11の開き具合を制御することができる。即ち、スリット33が後端部に近い位置まで形成されている程、可撓性板体11,11の最大の開き具合が広くなる。
また、この清掃用シート30の伸縮性によって、可撓性板体11,11の開き具合を制御することができる。即ち、清掃用シート30の伸縮性が高ければ可撓性板体11,11は開き易く、伸縮性が低ければ可撓性板体11,11は開き難い。
また、例えば、清掃用シート30の伸縮性を高くした場合には、清掃用シート30を二股の開口部(挿入口30a,30a)を有したコの字形状ではなく、一つの開口部の矩形状としても良い。
【0029】
基材シート31は、所定の繊維を繊維素材として、例えば、スパンレース、エアスルー、エアレイド、ポイントボンド、スパンボンド、ニードルパンチ等の周知の技術により製造される不織布である。所定の繊維としては、例えば、レーヨン、リヨセル、テンセル、コットン等のセルロース系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ナイロン等のポリアミド系繊維、アクリル繊維、獣毛、羽、等が挙げられる。これらは単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、基材シート31は、不織布に限ることはなく、シートであれば任意であり、例えば、織布であっても良い。
【0030】
繊維集合体32は、繊維321,…が所定の接合手段により基材シート31に接合されることによって、形成されている。所定の接合手段としては、例えば、ホットメルト等の公知の接着剤、ヒートシール、超音波シール、縫製、ステープラ、植毛が挙げられる。これらは単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。ここで、繊維321は、複数の繊維が集合してなる繊維束(トウ)をなしていることとする。
【0031】
また、繊維集合体32は、所定の繊維で形成された繊維束状の繊維321が集合してなるものである。所定の繊維としては、例えば、レーヨン、リヨセル、テンセル、コットン等のセルロース系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ナイロン等のポリアミド系繊維、アクリル繊維、獣毛、羽、等が挙げられる。これらは単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
次に、掃除具1の使用方法について説明する。
【0033】
まず、清掃用シート30の挿入口30a,30aから掃除具本体部10を挿入することによって、清掃用シート30を掃除具本体部10に装着する。
そして、ユーザは、清掃用シート30が装着された掃除具1の把持部22を握り、清掃用シート30で被清掃部(清掃対象物や隙間)を拭き掃除する。
このとき、掃除具本体部10は、清掃対象物を挟み込んで清掃できるようになっている。また、掃除具本体部10は、家具と家具との間の隙間や家具と壁との間の隙間に入り込んで、当該隙間を清掃できるようになっている。
【0034】
例えば、図5に示すように、立体形状の清掃対象物を清掃する場合、掃除具本体部10の可撓性板体11,11は、清掃対象物の幅(寸法)に応じて前端部から左右に開くように撓りつつ展開し、可撓性板体11,11の内面において清掃対象物を挟み込むようになる。このとき、掃除具本体部10は、当該清掃対象物の幅(寸法)に応じて変形しているため、清掃対象物の形状に好適にフィットすることとなる。また、清掃対象物を挟んだ際に、可撓性板体11,11の内面である2面によって清掃対象物を払拭でき、立体的な形状の清掃対象物であっても好適に清掃することができる。
そして、清掃後に掃除具1を清掃対象物から離すと、掃除具本体部10は元の形状に変形(復元)する。
【0035】
また、例えば、図6に示すように、所定の幅の隙間を清掃する場合、清掃面に掃除具本体部10を押し付けると、掃除具本体部10の可撓性板体11,11は、隙間の幅に応じて前端部から左右に開くように撓りつつ上面視V字状に展開する。このとき、掃除具本体部10は、当該隙間の幅に合わせて左右に展開しているため、隙間に好適にフィットすることとなる。また、この状態で前後方向にのみ動作を行えば当該隙間を清掃でき、左右方向に掃除具本体部10を動作させる必要がない。
そして、清掃後に掃除具1を清掃対象物から離すと、掃除具本体部10は元の形状に変形(復元)する。
【0036】
また、例えば、間口が掃除具の幅より狭く、奥は広い隙間などの清掃を行う場合、図7(a)に示すように、間口では左右方向の押力によって2枚の可撓性板体の間の距離が小さくなるように圧縮し、隙間の内部において2枚の可撓性板体の間の距離が大きくなるよう上面視V字状に展開していく。そして、隙間の奥に壁などの第3の面があった場合、図7(b)に示すように、掃除具本体部10の前端部は、奥側の面に押し付けられて左右に開き、上面視T字状に変形して当該隙間の形状に好適にフィットする。このとき、間口が狭いので把手20の動きが制限され、左右への往復や円弧を描くような拭き方はできないため、掃除具本体部の前後が同等の幅である場合にはその幅分しか清掃面積が確保できないが、本実施形態によれば、この状態で前後に動作するだけで、掃除具本体部10の前端部は開閉動作し、広範囲な清掃面積を清掃できることとなる。また、このとき、掃除具1を前後に動作させる際に、力の掛け方で奥側の隙間の清掃面積を調整しつつ清掃を行うことができる。
そして、清掃後に隙間から掃除具本体部10を引き出すと、掃除具本体部10は元の形状に変形(復元)する。
【0037】
また、元の形状を維持したまま清掃を行いたい場合には、図示は省略するが、掃除具1(掃除具本体部10)を上下逆向きとして用いることもできる。即ち、掃除具本体部10が断面視逆ハの字形状となった状態で用いることができる。このようにして、ユーザが把手20に対して上方から下方に押圧を掛けた場合、逆ハの字形状の掃除具本体部10の頂角R付近に力が加わるだけなので掃除具本体部10の形状が変形することがなく、上下方向の寸法を保ったまま清掃を行うことができる。
【0038】
以上のように、本発明の掃除具1によれば、掃除具本体部10は、所定の角度で交差する二つの仮想平面H,H上にある2枚の可撓性板体11,11を備えて構成され、使用時において当該掃除具本体部10は、上方向からの押力によって2枚の可撓性板体11,11の間の距離が前端側から大きくなるよう展開され、左右方向の押力によって2枚の可撓性板体11,11の間の距離が小さくなるように圧縮されるように構成されている。
よって、掃除具本体部10は、清掃対象物の幅に合わせて前端側から展開し、2枚の可撓性板体11,11によって清掃対象物を挟みこむことで、立体的な形状の清掃対象物にもフィットすることができる。
また、掃除具本体部10は、清掃面に押し付けると隙間の幅に合わせて変形するため、幅の狭い隙間にも、広い隙間にも好適にフィットすることができる。そして、このため、隙間の幅方向に掃除具本体部10を動作させず、隙間の奥行き方向にのみ掃除具本体部10を動作させれば、当該隙間の清掃を行えることとなり、清掃効率が良い。
また、掃除具本体部10は、奥は広いが間口が掃除具本体部10の幅より狭い隙間などの清掃を行う場合、間口では2枚の可撓性板体11,11の間の距離が小さくなるように圧縮し、奥では2枚の可撓性板体11,11の間の距離が大きくなるよう展開するように変形することとなり、間口側と奥側の幅が違う隙間にもフィットすることができる。
このように、掃除具1は清掃対象物や隙間の形状に対して追従性が高く、清掃対象物や隙間に好適にフィットするため、清掃作業を効率的に行なうことができる。
【0039】
また、本発明の掃除具1によれば、2枚の可撓性板体11,11は、二股の挿入口30a,30aを有する清掃用シート30に装着されているため、清掃用シート30が可撓性板体11,11の開閉動作を妨げることがなく、掃除具本体部10の展開及び圧縮の変形がスムーズに行われるようにすることができる。
【0040】
また、本発明の掃除具1によれば、2枚の可撓性板体11,11が、30°〜120°の範囲内の所定の角度を成すように設定されているため、掃除具本体部10の展開及び圧縮の変形がスムーズに行われるようにすることができる。
【0041】
なお、上記実施形態においては、2枚の可撓性板体11,11が、把手20の取付け部21の一端部に直接取り付けられた構成を例示して説明しているが、2枚の可撓性板体11,11を連結する連結部を介して取付け部21に取り付けることとしても良い。
【0042】
<変形例1>
変形例1の掃除具2は、例えば、図8に示すように、2枚の可撓性板体11,11が所定の角度を成すように固定する固定部材13を備えた掃除具本体部10Aを備えている。
固定部材13は、例えば、30°〜120°の所定の角度に折り曲げられ、両端部に固定用爪131,131を有する硬質部材であって、可撓性板体11,11の溝部111,111に固定用爪131,131を係止させることで、可撓性板体11,11が成す角度を固定させる。
この場合、使用前の時点では、2枚の可撓性板体11,11は、所定の角度を成していない。そして、使用時に、2枚の可撓性板体11,11は、固定部材13により所定の角度を成すように固定されることで断面視ハの字形状を成す。
なお、固定部材13は、清掃時の可撓性板体11,11の開閉動作を妨げないように、図8に示すように、可撓性板体11,11の後方部に備えることが好ましい。
また、固定部材13は、可撓性板体11,11が所定の角度を成すように固定できるものであれば、その形状や材質等は特に限定されない。また、可撓性部材であっても硬質部材であっても適用可能である。
変形例1の掃除具2は、このような構成により、使用時に立体形に組み立てることが可能であるので、未使用時には平面状にして収納することが可能である。
【0043】
<変形例2>
変形例2の掃除具3は、例えば、図9に示すように、可撓性板体11に、基端から先端(前端)に向かって可撓性板体11の他の部分よりも剛性の高いガイド部14を設けた掃除具本体部10Bを備えている。
ガイド部14は、上方から押力が掛かった場合に可撓性板体11の全体に均一に力が掛かるようにするものであって、例えば、可撓性板体11の一部を他の部分よりも肉厚とすることで剛性が高められ肉厚部によって構成され、先端側(前端側)にいくにつれて外側に向かうよう設けられている。
なお、ガイド部14は、可撓性板体11とは別部材として形成して、可撓性板体11に装着することとしても良い。このとき、ガイド部14を形成する素材としては特に限定はないが、例えば可撓性板体11の他の部分よりも硬質な素材を用いることが好ましい。
変形例2の掃除具3は、このような構成により、可撓性板体11,11を展開させる際に、均一に力を掛けることが可能であるので、清掃作業をより効率的に行うことができる。
なお、上記変形例2においては、ガイド部14が前端側にいくにつれて外側に向かうよう設けられた構成を例示して説明したが、ガイド部14は、可撓性板体11の基端から前端に向かって設けられるものであれば良く、例えば可撓性板体の11の左・右側部に平行となるように設けることとしても良い。
【0044】
<変形例3>
変形例3の掃除具4は、例えば、図10に示すように、2枚の可撓性板体11,11のそれぞれに別々に装着する清掃用シート40A,40Bからなる清掃用シート40を備えている。
掃用シート40A,40Bは、それぞれ異なる機能を有する清掃用シートであって、例えば、左側の清掃用シート40Aが袋形状のモップで、右側の清掃用シート40Bが袋形状の平面シートとなっている。つまり、2枚の可撓性板体11,11には、それぞれ異なる機能を有する清掃用シート40A,40Bが装着されている。
変形例3の掃除具4は、このような構成により、1つの掃除具を二通りの用途に用いることが可能であるので、清掃作業をより効果的に行うことができる。
このように、掃除具本体部10に装着する清掃用シート30の種類や形状は適宜変更可能である。例えば、清掃用シート40A,40Bは、同一の清掃用シートであっても良い。
また、シートの形状は、袋形状以外にも、筒状としても良いし、掃除具本体部10を包むように折り返して装着しても良い。
【0045】
<変形例4>
変形例4の掃除具5は、例えば、図11に示すように、可撓性板体11の表面に、清掃用シート50を係止する係止部15を設けた掃除具本体部10Cを備えている。
係止部15は、例えば、可撓性板体11の表面に付設した面ファスナなどの接着部材であり、掃除具本体部10Cの上面及び下面のそれぞれにおいて、係止部15の外面に、清掃用シート50,50が付着する構成となっている。
このとき、係止部15の形状に特に制限はないが、少なくとも可撓性板体11の周縁部に沿って設けることが好ましい。
また、清掃用シート50は、左右の可撓性板体11にそれぞれ別個に接着可能な板状の清掃用シート50A,50Bから構成されている。
なお、係止部15の構成はこれに限定されるものではなく、これ以外にも、例えば、可撓性板体11の表面に針や毛状の突起部を係止部として設け、清掃用シート50全体を突き刺して突起部の先端を清掃用シート50から露出させるようにすることで、清掃用シート50を取り付けることとしても良い。
また、可撓性板体11の表面にクリップ、マグネット、紐、ゴム、等を用いた係止部を設け、清掃用シート50を取り付けることとしても良い。
【符号の説明】
【0046】
1、2、3、4、5 掃除具
10、10A、10B、10C 掃除具本体部
11,11 可撓性板体
111,111 溝部
13 固定部材
131,131 固定用爪
14 ガイド部
15 係止部
20 把手
21 取付け部
22 把持部
30、40(40A,40B)、50(50A,50B) 清掃用シート
30a,30a 挿入口
31,31 基材シート
32 繊維集合体
321 繊維
33 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
清掃用シートが装着される掃除具本体部と、
前記掃除具本体部に連結される把手と、を備えた掃除具において、
前記掃除具本体部は、所定の角度で交差する二つの仮想平面上にある2枚の可撓性板体を備えて構成され、
当該掃除具本体部は、上方向からの押力によって前記2枚の可撓性板体の間の距離が前端側から大きくなるよう展開され、左右方向の押力によって前記2枚の可撓性板体の間の距離が小さくなるように圧縮されることを特徴とする掃除具。
【請求項2】
前記2枚の可撓性板体は、基端から先端に向かって設けられたガイド部を備え、
前記ガイド部は、前記可撓性板体における当該ガイド部以外の部分よりも剛性が高いことを特徴とする請求項1に記載の掃除具。
【請求項3】
前記ガイド部は、先端側にいくにつれて外側に向かうよう設けられていることを特徴とする請求項2に記載の掃除具。
【請求項4】
前記2枚の可撓性板体の表面には、前記清掃用シートを係止する係止部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の掃除具。
【請求項5】
前記2枚の可撓性板体は、二股の挿入口を有する清掃用シートに装着されることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の掃除具。
【請求項6】
前記2枚の可撓性板体は、それぞれ異なる機能を有する清掃用シートが装着されることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の掃除具。
【請求項7】
前記所定の角度は、30°〜120°の範囲内の値であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の掃除具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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