説明

掃除機用吸込み口体及び電気掃除機

【課題】 押し引き操作がより軽くなり使い勝手が良い掃除機用吸込み口体を提供する。
【解決手段】 吸込み口体11は、吸込みヘッド12、回転清掃体23、駆動輪27、及び駆動装置33を具備する。吸込みヘッド12は、吸込み室19及びこの室に臨んで被掃除面に対向する吸込み開口を有する。回転清掃体23の下部を吸込み開口に露出させて吸込み室19に回転清掃体23を回転可能に収容する。駆動輪27を回転清掃体23とは別に吸込みヘッド12に回転可能に支持する。この駆動輪27は被掃除面に接した状態で回転駆動される。駆動装置33を吸込みヘッド12に内蔵し、この駆動装置33により、回転清掃体23を回転駆動するとともに駆動輪27を回転清掃体23よりも高速で回転駆動させるようにしたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被掃除面に接して回転駆動される駆動輪が取付けられた吸込みヘッドを備える掃除機用吸込み口体、及びこの吸込み口体を備える電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
じゅうたん上を前進する移動操作が軽くなるようにするために、回転子(回転清掃体)が回転自在に設けられた吸込具本体に、回転子を回転駆動する駆動源(モータ)及びベルトと、一対の駆動輪と、これらの駆動輪に駆動源の回転を伝動する歯車伝動機構を夫々設けた構成の掃除機用吸込具が、従来技術として知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この特許文献1には、一対の駆動輪が回転子の後側に配設されているとともに、駆動輪の径と回転子の径とは略同じであることが図示されている。しかし、これら駆動輪と回転子の回転速度については記載がない。
【0004】
又、じゅうたん上を前進する移動操作が軽くなるようにするために、吸込具本体に回転子(回転清掃体)を回転自在に設け、この回転子の両端部の夫々に駆動輪を同軸的に取付け、かつ、吸込具本体内に回転子を駆動するモータを有した駆動源を設け、この駆動源のベルトで片方の駆動輪のギヤに回転力を伝達することで、一対の駆動輪を回転子と一体に回転させる構成の掃除機用吸込具が、従来技術として知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この特許文献1には、駆動輪の径は回転子の径に対して略同じか少し小さいことが図示されている。しかし、これら駆動輪と回転子の回転速度については記載されていないが、駆動輪は回転子と一体に回転されるので、これらの回転速度は同じである。
【0006】
これらの従来技術によれば、吸込具の下面から突出されている駆動輪が回転駆動されることにより、吸込具に前進する推進力が与えられるので、じゅうたん上で吸込具を前進させる操作を軽くできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3033312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の技術は、既述のように吸込具に前進する推進力(自走力)を一対の駆動輪で与える構成であるので、じゅうたん面等の被掃除面に対する駆動輪のグリップ力(摩擦係合力)を大きく確保することが重視されていて、駆動輪の外周面を弾性材で形成する等の工夫が採用されている。
【0009】
そのために、前進した吸込具を使用者が後方へ引き戻す際には前記グリップ力が抵抗となるので、後方への引き戻し操作が重くなる、という課題がある。このように従来技術では、吸込具を前進させる自走力を高め得る半面で、吸込具の引き戻し操作が重くなることがあるので、その改善が求められている。更に、回転子及び一対の駆動輪の回転で吸込具に与えられる前方への自走力に応じた前進速度より速く吸込具が押し動かされる状況では、一対の駆動輪がブレーキ因子となって、吸込具を前方に押し動かす操作が重くなることがある、という課題がある。
【0010】
したがって、本発明の目的は、押し引き操作をより軽くでき使い勝手が良い掃除機用吸込み口体及びこれを備えた電気掃除機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の吸込み口体は、吸込み室及びこの室に臨んで被掃除面に対向する吸込み開口を有した吸込みヘッドに、回転清掃体を吸込み開口に露出させて回転可能に収容するとともに、被掃除面に接する駆動輪を回転清掃体とは別に回転可能に支持し、かつ、駆動装置を内蔵し、この駆動装置により、回転清掃体を回転駆動するとともに、駆動輪を回転清掃体よりも高速で回転駆動させるようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転清掃体の回転より高速で駆動輪を回転駆動するので、押し引き操作がより軽くなり使い勝手が良い掃除機用吸込み口体及びこれを備えた電気掃除機を提供できる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気掃除機を示す斜視図である。
【図2】図1の電気掃除機が備えた本発明の第1実施形態に係る吸込み口体を示す斜視図である。
【図3】図2の吸込み口体を示す正面図である。
【図4】図2の吸込み口体を示す下面図である。
【図5】図2の吸込み口体の前部を示す側面図である。
【図6】図2の吸込み口体の一端部を斜め上向きに見た状態で示す斜視図である。
【図7】図2の吸込み口体を一部切欠いた状態で示す正面図である。
【図8】図2の吸込み口体をその上ケースを外した状態で一部を切欠いて示す平面図である。
【図9】図8中F9部の拡大図である。
【図10】図2の吸込み口体の駆動装置を抽出して示す平面図である。
【図11】図10中F11−F11線に沿って示す駆動装置の略断面図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る吸込み口体の幅方向一端部を拡大して示す図9相当の平面図である。
【図13】図12の吸込み口体が備えた駆動輪を概略的に示す断面図である。
【図14】本発明の第3実施形態に係る吸込み口体の幅方向一端部を拡大して示す図9相当の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜図11を参照して本発明の第1実施形態について、詳細に説明する。
【0015】
図1中符号1は第1実施形態に係る吸込み口体11を備えた例えばキャニスタ型の電気掃除機を示している。この電気掃除機1は、掃除機本体2と、吸塵風路体5とを具備している。
【0016】
本体車輪3が取付けられた掃除機本体2の後部に電動送風機4が内蔵されている。掃除機本体2の前部は電動送風機4の上流側となっており、この前部に図示しない塵分離手段及びこの手段で分離された塵を溜める集塵部等が設けられている。塵分離手段には、そこに吸引された塵の慣性エネルギーを利用して塵と空気を分離するサイクロン式等の慣性分離式の塵分離装置を好適に用いることができるが、紙パックを用いてもよく、或いは粗塵を空気から分離する紙パックと、粗塵以外の塵を慣性分離により空気と分離する塵分離装置を併用した塵分離手段を用いることも可能である。
【0017】
図1に示すように吸塵風路体5は、可撓性の吸塵ホース6と、延長管7と、吸込み口体11とを備えている。吸塵ホース6の一端部6aは、例えば掃除機本体2がその前部上面に備える開閉蓋2aに設けた吸塵口2bに、取外し可能に差込み接続されている。この接続により吸塵ホース6内と前記塵分離手段とが連通される。延長管7が着脱可能に嵌合して連結される吸塵ホース6の他端部(先端部)6bに、延長管7を介して吸込み口体11を移動操作するためのハンドル8が設けられている。このハンドル8に電動送風機4の運転や後述の回転清掃体23の駆動等を指令する手元スイッチ9が取付けられている。
【0018】
延長管7は外管7aと内管7bとを例えば伸縮可能に組み合わせて形成されている。外管7aは吸塵ホース6の他端部6bに着脱可能に嵌合して接続されている。この外管7aの他端(先端)から突出された内管7bの先端部7cに、後述する吸込み口体11の接続管13が着脱可能に嵌合して接続されている。
【0019】
電動送風機4の運転に伴い、吸込み口体11の下面に開口している後述の吸込み開口11aを通って吸込まれた含塵空気が、吸込み口体11、延長管7、吸塵ホース6を、この記載順に通過して掃除機本体2内に導かれる。それにより、掃除機本体2内で空気と塵が分離されて、塵が集塵部内に溜められる一方で、電動送風機4に吸込まれるとともにこの電動送風機4から排出された空気が掃除機本体2の外部に放出される。
【0020】
次に、吸込み口体11について説明する。吸込み口体11は、掃除対象である部屋の絨毯面、畳面、フローリング面等の被掃除面を掃除するのに好適な床用である。図2〜図4等に示すように吸込み口体11は、吸込みヘッド12の後側中央部に接続管13を自在継手部により連結して平面視の形状が略T字状をなしている。これとともに、吸込み口体11には、その合成樹脂製の吸込みヘッド12に、バンパー20、回転清掃体23、複数例えば左右一対の駆動輪27、駆動装置33、第1のシール材51、第2のシール材53、及び一個の後車輪56等が取付けられている。
【0021】
吸込みヘッド12は、図5及び図7に示すように上ケース15と、被掃除面に対向する下ケース16と、これらの間に挟着された中ケース17とを有している。上ケース15は主として吸込みヘッド12の上壁部と後壁部を担う第1の外郭部材であり、下ケース16は主として吸込みヘッド12の底壁を担う第2の外郭部材である。下ケース16は、後向き突出部16aを有した下ケース本体16b(図4及び図6参照)と、この下ケース本体16bに着脱可能な一対の下ケース端部材16c(図4及び図6参照)を有している。
【0022】
後向き突出部16aは下ケース本体16bの長手方向中央部から後向きに突出されている。一対の下ケース端部材16cは下ケース本体16bの長手方向両端部に夫々配置されていて、これらと下ケース本体16bとで、吸込みヘッド12の左右方向、つまり、長手方向に延びる吸込み開口11a(図4参照)が形成されている。吸込み開口11aは下ケース本体16bの前部に寄せて設けられている。
【0023】
下ケース端部材16cの前端部は吸込み口体11の前方に臨むように上向きに曲がっている。それにより、吸込み開口11aは吸込み口体11の下面から前面にわたって開放されていて、吸込み口体11の前方からも吸塵できるように設けられている。
【0024】
図4及び図6中符号18はコイン等を用いて回転操作が可能なねじを示している。ねじ18は、下ケース端部材16cを上向きに貫通して、上ケース15又は中ケース17に設けられた図示しないねじ受け部に挿脱可能にねじ込まれている。ねじ18を締め付けることにより下ケース端部材16cが取付けられ、このねじ18を外すことにより下ケース端部材16cを取外せるようになっている。
【0025】
中ケース17は吸込みヘッド12の内部に吸込み室19(図7及び図8参照)を形成して設けられている。吸込み室19は、下ケース16の吸込み開口11aにその上側から臨んでいる。これら吸込み室19と吸込み開口11aは、吸込みヘッド12の左右方向、つまり、長手方向(幅方向)に延びて形成されている。図8に示すように中ケース17は、吸込み室19の長手方向中央部に連通する突出筒部17aを有しており、この突出筒部17aは後ろ向き(図8では上向き)に突出されている。
【0026】
図8中符号25は前記自在継手部のヘッド側継手部材を示している。ヘッド側継手部材25は、突出筒部17aにその中心軸線周りに回動可能に接続されていて、突出筒部17aを介して吸込み室19に連通されている。更に、このヘッド側継手部材25に接続管13の管側継手部材26が回転可能に接続されている。
【0027】
バンパー20は、ゴムやエラストマ等からなり、図2〜図4に示すように、吸込みヘッド12に、この吸込みヘッド12の前面部を覆って装着されている。このバンパー20は吸込みヘッド12の長手方向に延びていて、その下側の縁は、吸込み開口11aの前端を上側から仕切っている。
【0028】
図7に示すように回転清掃体23は、その清掃体軸23aの外周に軟質材からなるブレード等の複数の清掃部材23bを取付けて形成されている。清掃部材23bはブラシ毛の列で形成してもよく、このブラシ毛の列とブレードとを交互に設けても良いとともに、図7等に示すようにねじった状態ではなく真っ直ぐな状態で取付けられていても良い。
【0029】
図7に示すように回転清掃体23は、その清掃体軸23aの端部23c、23dを夫々吸込みヘッド12の軸受け部24に支持させて、吸込み室19に収められた状態で吸込みヘッド12に回転可能に支持されている。この回転清掃体23は、その下部が吸込み開口11aから下方に突出された状態で、吸込み開口11aに露出されている。清掃体軸23aの片方の端部23dは吸込み室19の壁を貫通している。この回転清掃体23の直径、つまり、各清掃部材23bの先端を通って描かれる円の径は、20〜35mmである。
【0030】
軸受け部24は、例えば中ケース17と下ケース端部材16cとで形成されていて、清掃体軸23aの端部を回転可能に上下から挟んでいる。なお、これに代えて、清掃体軸23aの端部に夫々軸受を取付け、この軸受を軸受け部24で上下から挟んで、回転清掃体23を吸込みヘッド12に回転自在に支持することもできる。
【0031】
左右の駆動輪27は、回転清掃体23と一体に回転しないようにこの回転清掃体23とは別に吸込みヘッド12に回転可能に支持されている。すなわち、駆動輪27は、例えば吸込み室19及び回転清掃体23を間に置いて吸込みヘッド12の長手方向(幅方向)両端部に図示しない軸受を介して夫々回転可能に支持されている。この駆動輪27が固定された後述の駆動軸44は、清掃体軸23aに対してその後方でかつ上方にずれて配置されている。これら駆動輪27の下部は、被掃除面に接するように回転清掃体23の下部と同程度に吸込みヘッド12の底壁をなした下ケース本体16bから下方に突出されている。駆動輪27の少なくとも周部は硬質合成樹脂製である。
【0032】
駆動軸44が清掃体軸23aとは別でかつ位置をずらして設けられていることにより、駆動輪27の直径は回転清掃体23の直径に制約されずに任意に定めることができる。好ましい例として駆動輪27の直径は回転清掃体23の直径より大きく、例えば40〜50mmに形成されている。このように駆動輪27を大径とすることは、その周速度を回転清掃体23の周速度より速くできる点で好ましい。
【0033】
吸込みヘッド12の左右両端部には下端が開放された車輪カバー29が形成されている。これら車輪カバー29は、上ケース15と一体に設けられていて、駆動輪27をその下部を除いて覆っている。それにより、駆動輪27の回転に伴う巻き込み等を防止する安全性が確保されている。これら車輪カバー29の吸込み室19側の仕切り壁部29a(図7〜図9参照)に、前記駆動軸44に取付けられた前記図示しない軸受が支持されている。
【0034】
図4〜図6に示すように吸込みヘッド12は左右の連通溝31を有している。即ち、連通溝31は、下ケース16の下ケース端部材16cに形成されている。この連通溝31は、吸込みヘッド12の下面(底面)、具体的には下ケース端部材16cの下面に開放されていて、吸込み口体11の使用時に被掃除面に対向するようになっている。
【0035】
図4及び図6に示すように連通溝31の一端31aは、吸込み室19に開放されていて、この吸込み室19と連通溝31が連続されている。連通溝31の他端31bは、開放されていて、駆動輪27の下端部側面に対向している。この連通溝31の他端31bは一端31aより吸込みヘッド12の後側に向けて広く形成されていて、車輪カバー29の下端部においてこの車輪カバー29内に連続している。
【0036】
駆動装置33は、図8に示すように突出筒部17aと吸込みヘッド12の幅方向一端との間に配設して、吸込みヘッド12に内蔵されている。なお、図8中符号34は駆動装置33の運転を制御するための駆動制御回路ユニットを示している。この駆動制御回路ユニット34は、突出筒部17aと吸込みヘッド12の幅方向他端との間に配設して、吸込みヘッド12に内蔵されている。
【0037】
図9〜図11に示すように駆動装置33は、駆動制御回路ユニット34によって制御される駆動モータ35と、これに接続された伝動機構36とからなる。駆動モータ35は一方向のみに回転する。伝動機構36は、第1駆動歯車37、第1従動歯車38、及び第1伝動ベルト39からなる第1減速部と、第2駆動歯車40、第2従動歯車41、及び第2伝動ベルト42からなるとともに第1減速部に連動する第2減速部とで形成されている。
【0038】
第1駆動歯車37は駆動モータ35のモータ軸35aに固定されている。第1従動歯車38は第1駆動歯車37より歯数が多く大径である。第1伝動ベルト39は、歯付きベルトからなり、第1駆動歯車37と第1従動歯車38にわたって巻き掛けられている。第2駆動歯車40は、例えば第1従動歯車38の一側面に一体に形成されていて。第1従動歯車38より歯数が少なく小径である。第2従動歯車41は第2駆動歯車40より歯数が多く大径である。第2伝動ベルト42は、歯付きベルトからなり、第2駆動歯車40と第2従動歯車41にわたって巻き掛けられている。したがって、第1、第2の減速部は、その伝動に滑りを生じることなく駆動モータ35の動力を伝達することができる。
【0039】
図9及び図10中符号43は吸込みヘッド12に支持された伝動機構36の機構フレームを示している。機構フレーム43にこれを左右方向に貫通する駆動軸44が回転自在に支持されていて、この駆動軸44にこれと一体に回転するように第1従動歯車38及び第2駆動歯車40が固定されている。なお、第1従動歯車38と第2駆動歯車40とは別体で、夫々が駆動軸44に固定されていても良い。
【0040】
駆動軸44の機構フレーム43側の一端部に、図8中右側に配置された駆動輪27が固定されている。駆動軸44の他端は図8中左方向に延びていて、この他端部に図8中右側に配置された駆動輪27が固定されている。これにより、左右の駆動輪27は、前記第1減速部で減速された駆動モータ35の動力で、回転清掃体23の回転より高速度、例えば回転清掃体23の回転速度の略2倍の速度で同期して回転駆動されるように駆動輪27の回転速度は5000〜7000rpm具体的には6000rpmに設定されている。
【0041】
前記第2減速部の第2従動歯車41の歯車軸41a(図9〜図11参照)は、吸込み室19外に突出された清掃体軸23aの端部23dに、軸継手28(図7参照)を介して接続されている。これにより、回転清掃体23は、前記第1減速部及び第2減速部で順次減速された駆動モータ35の動力で回転駆動されるようになっていて、例えば、回転清掃体23の回転速度は前記二段階の減速に従い例えば2500〜3500 rpm具体的には3000rpmに設定されている。軸継手28は清掃体軸23aに連結されていて、この軸継手28に第2従動歯車41の歯車軸41aは着脱可能である。
【0042】
以上のように駆動装置33により回転駆動される回転清掃体23及び左右の駆動輪27は、それらの回転で吸込みヘッド12が前進する方向に回転されるようになっている。この回転方向を図5に矢印で示す。
【0043】
図4及び図6に示すように第1のシール材51は、連通溝31の他端31bの後側に位置して吸込みヘッド12に取付けられている。具体的には、下ケース16の下ケース端部材16cに、これと一体に車輪カバー29の下端部に連続するブラケット部16dが形成され、このブラケット部16dに第1のシール材51が装着されている。第2のシール材53は、連通溝31の前側に位置して吸込みヘッド12に取付けられている。具体的には、下ケース16の下ケース端部材16cの前部下面から前面にわたって装着されている。これら第1のシール材51及び第2のシール材53は、起毛布、又は比較的短いブラシ毛、或いは布等からなり、吸込み口体11がフローリング面等の被掃除面に置かれた際にこの被掃除面に接するように設けられている。
【0044】
図4に示すように駆動輪27より後方に位置して吸込みヘッド12の底壁に後車輪56が支持されている。具体的には、下ケース16の後向き突出部16aに後車輪56が回転自在に取付けられている。この後車輪56と一対の駆動輪27は、吸込み口体11が被掃除面に置かれた状態で被掃除面に接触して、下ケース16の下面が被掃除面に対して略平行となるように保持して、絨毯面へ吸付きを防止するために設けられている。これとともに、後車輪56は吸込み口体11の前後方向の移動を円滑にするためにも用いられている。
【0045】
掃除の際、電動送風機4の運転により生じる吸込み力は、吸込み口体11の吸込み室19に波及し、吸込み開口11aを通って被掃除面上の含塵空気が吸込み口体11に吸込まれる。これとともに、掃除の際、駆動装置33の駆動モータ35が運転されるので、この駆動モータ35の動力で回転清掃体23が回転される。このため、清掃部材23bにより絨毯面等の被掃除面の塵を掻き出しながら、この塵を空気と共に吸込み口体11に吸込むことができる。
【0046】
この場合、吸込み力は吸込み室19に連通している連通溝31を介して車輪カバー29の内部にも波及する。連通溝31の他端31bは駆動輪27の下端部側面に対向しているため、被掃除面に接している駆動輪27の下端部付近の塵を、連通溝31を経由して吸込み室19に吸引できるとともに、車輪カバー29内の塵を吸込み室19に吸引できる。
【0047】
しかも、吸込みヘッド12の下ケース16に装着されて被掃除面に接して、吸込み口体11の移動に伴い被掃除面に付着している塵を擦って取除く第1のシール材51及び第2のシール材53が、連通溝31に対してその前側又は後側から吸い込まれようとする空気の流れを遮る前後の遮風部として機能するので、連通溝31を通る気流の速度が上がって、駆動輪27周りの塵を吸引する力が高められる。
【0048】
以上のように駆動輪27まわりの空気を連通溝31に経由させて吸込み室19に吸引できるので、この駆動輪27に被掃除面上の塵を付着し難くできる。
【0049】
又、絨毯面やフローリング面等の掃除において駆動装置33の駆動モータ35が運転されるので、伝動機構36の第1減速部を経由した動力で、左右の駆動輪27が同期して高速で回転駆動されるとともに、更に、伝動機構36の第2減速部を経由した動力で、回転清掃体23が駆動輪27より低速で回転駆動される。これら駆動輪27及び回転清掃体23の回転駆動に伴い吸込み口体11に前進する駆動力が与えられ、それによる吸込み口体11の自走力が、ハンドル8を握った手で延長管7を介して吸込み口体11を前方に向けて使用者が押し動かす操作力に加えて、吸込み口体11に与えられる。したがって、絨毯面を掃除する場合でも吸込み口体11を軽く前進させることができる。
【0050】
吸込み口体11の自走力は、回転清掃体23が有した清掃部材23bの被掃除面に対するグリップ力(摩擦係合力)、及び左右の駆動輪27の被掃除面に対するグリップ力(摩擦係合力)に依存している。この場合、駆動輪27が回転清掃体23より高速で回転されるので、これら駆動輪27は、被掃除面に対してスリップしつつ、吸込み口体11に自走力を与える。そのため、回転清掃体23のみが回転駆動される構成に比較して、吸込み口体11の自走力が高められる。加えて、駆動輪27は回転清掃体23より直径が大きくその周速度が速く、吸込み口体11に自走力をより与え易い。したがって、絨毯面を掃除する場合でも軽く吸込み口体11を前進させることができる。
【0051】
しかも、回転清掃体23のグリップ力に見合った移動速度を超える速度で、吸込み口体11が前進方向に延長管7を介して押し動かされる程、吸込み口体11の移動速度と駆動輪27の回転速度との隔たりが小さくなるので、駆動輪27の被掃除面に対するグリップ力(摩擦係合力)が向上される。それにより、回転清掃体23の回転が制動力として作用するにも拘らず、吸込み口体11の自走に対する前記制動力の影響を、駆動輪27の被掃除面に対するグリップ力の高まりにより相対的に低下させることができる。したがって、絨毯面を掃除する場合でも軽く吸込み口体11を前進させることができる。
【0052】
以上の前進操作に引続いて使用者により延長管7を介して吸込み口体11が後方へ引き動かされる場合、その移動に対して回転清掃体23及び駆動輪27の回転はいずれも抵抗因子となる。この場合、左右の駆動輪27は、既述のように被掃除面に対してスリップしつつ高速回転しているので、吸込み口体11の後退方向への移動に対する左右の駆動輪27による抵抗は比較的小さい。したがって、吸込み口体11の前進方向への自走力を高めるための駆動輪27を備えているにも拘らず、軽く吸込み口体11を後退させることができる。
【0053】
以上のように前記構成の吸込み口体11は、回転駆動される回転清掃体23の回転より高速で駆動輪27を回転駆動する構成により、吸込み口体11が吸付き易い絨毯面を掃除する場合にも、吸込み口体11を前進させる自走力を与える駆動輪27が絨毯面に対してスリップしつつ自走力を与えるので、吸込み口体11の押し引き操作がより軽くなる。したがって、使用者が必要とする速度で吸込み口体11を軽く動かすことが可能であり、使い勝手を向上できる。
【0054】
被掃除面に接する左右の駆動輪27の外周には、被掃除面の塵が付着することがある。この場合、駆動輪27が高速回転していて遠心力が大きいので、この遠心力で駆動輪27の周面に付着された塵を容易に剥がして駆動輪27の周囲に離脱させることができる。こうして離脱された塵は車輪カバー29で受止められる。この車輪カバー29の内部は、既述のように吸込み室19に連通されているので、車輪カバー29がない場合のように駆動輪27の周囲に塵が飛散されることがなく、吸込み室19に吸引することができる。更に、駆動輪27は、高速回転するとともに回転清掃体23より大径であるので、絨毯面の塵を掻き出す性能が高い。こうして掻き出された塵も既述のように吸込み室19に吸引することができる。
【0055】
図12及び図13を参照して本発明の第2実施形態を説明する。この第2実施形態で以下説明する事項以外は、図12及び図13に示されない部分を含めて第1実施形態と同じである。このため、第1実施形態と同一乃至は同様な構成については第1実施形態と同一符号を付してその説明を省略する。
【0056】
第2実施形態では駆動輪27の外周に起毛布からなる清掃体61が装着されている。この清掃体61は図12に示すように起毛布ベース61aとこの一面に設けられた起毛61bとからなる。起毛布ベース61aを駆動輪27の取付け溝27aに嵌めて接着止めすることによって、清掃体61は駆動輪27の周方向に一回り連続して取付けられていて、その起毛61bは駆動輪27の外周から突出されている。なお、清掃体61は、駆動輪27の外周面を全て覆って装着することもできるが、既述のように取付け溝27aに清掃体61を取付けた構成によれば、清掃体61にこれと交差する方向の力が作用した場合に、起毛布ベース61aが剥がれることを抑制できる。
【0057】
図13に示すように起毛61bは、駆動輪27の回転駆動に伴い被掃除面Fに食い付いて起きるように起毛されている。なお、図13中矢印は駆動輪27の回転方向を示している。そのため、この第2実施形態では、駆動輪27による被掃除面Fに対するグリップ力による自走力を高めることができるだけではなく、絨毯面等の被掃除面Fからの塵の掻き出し作用を高めることができる。
【0058】
以上説明した以外の構成は、図12及び図13に示されない構成を含めて第1実施形態と同じであるので、この第2実施形態においても、第1実施形態で既に説明した理由により本発明の課題を解決できる。更に、高速回転される駆動輪27に取付けられた清掃体61を用いての掃除ができるに伴い、片側の駆動輪27を壁際に沿わせるように吸込み口体11を動かして掃除することにより、前記片側の駆動輪27で壁際を掃除することができる。
【0059】
図14を参照して本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態で以下説明する事項以外は、図14に示されない部分を含めて第1実施形態と同じである。このため、第1実施形態と同一乃至は同様な構成については第1実施形態と同一符号を付してその説明を省略する。
【0060】
第3実施形態では駆動輪27の外周にモヘア等からなる清掃体63が装着されている。この清掃体63は、清掃体ベース63aとこの一面に設けられた拭き部材63bとからなる。拭き部材63bは布や短繊維等からなる。清掃体ベース63aを駆動輪27の取付け溝27aに嵌めて接着止めすることによって、清掃体63は駆動輪27の周方向に一回り連続して取付けられていて、その拭き部材63bは駆動輪27の外周から突出されている。なお、清掃体63は、駆動輪27の外周面を全て覆って装着することもできるが、既述のように取付け溝27aに清掃体63を取付けた構成によれば、清掃体63にこれと交差する方向の力が作用した場合に、清掃体ベース63aが剥がれることを抑制できる。
【0061】
拭き部材63bは駆動輪27の回転駆動に伴い被清掃面に接するので、この第3実施形態では、駆動輪27による絨毯面(被掃除面)に対するグリップ力による自走力を高めることができるだけではなく、フローリング面(被掃除面)を磨いて艶出しをすることができる。
【0062】
以上説明した以外の構成は、図14に示されない構成を含めて第1実施形態と同じであるので、この第3実施形態においても、第1実施形態で既に説明した理由により本発明の課題を解決できる。更に、高速回転される駆動輪27に取付けられた清掃体63を用いての拭き掃除ができるに伴い、片側の駆動輪27を壁際に沿わせるように吸込み口体11を動かして掃除することにより、前記片側の駆動輪27で壁際を拭き掃除することができる。
【0063】
なお、前記各実施形態では、駆動輪の回転により吸込み口体が前進する方向の駆動力を与えたが、これに代えて、吸込み口体が後退する方向の駆動力を駆動輪の回転で与えるとともに、この駆動輪の回転方向を回転清掃体の回転方向と同じとして実施することもできる。
【0064】
又、各実施形態では、回転清掃体はその下部を吸込み開口から突出させた状態で吸込み口体の吸込み開口に露出させたが、これに限らず、回転清掃体の下部を吸込み開口から突出させない状態で、回転清掃体を吸込み口体の吸込み開口に露出させることが可能であり、又、回転清掃体の下部を吸込み開口から突出させる場合にも、その吸込みヘッドの下面に対する突出寸法は、駆動輪の吸込みヘッド下面に対する突出寸法より短くても差し支えない。
【符号の説明】
【0065】
1…電気掃除機、2…掃除機本体、2b…吸塵口、5…吸塵風路体、6…吸塵ホース、7…延長管、7c…延長管の先端部、11…吸込み口体、11a…吸込み開口、12…吸込みヘッド、19…吸込み室、23…回転清掃体、27…駆動輪、33…駆動装置、35…駆動モータ、36…伝動機構、61…清掃体、61b…起毛、63…清掃体、63b…拭き部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込み室及びこの室に臨んで被掃除面に対向する吸込み開口を有した吸込みヘッドと、
前記吸込み開口に露出させて前記吸込み室に回転可能に収容された回転清掃体と、
この回転清掃体とは別に前記吸込みヘッドに回転可能に支持されて前記被掃除面に接した状態で回転駆動される駆動輪と、
前記吸込みヘッドに内蔵され前記回転清掃体を回転駆動するとともに前記駆動輪を前記回転清掃体よりも高速で回転駆動する駆動装置と、
を具備することを特徴とする掃除機用吸込み口体。
【請求項2】
前記回転清掃体及び前記駆動輪が、それらの回転で前記吸込みヘットが前進する方向に前記駆動装置で回転駆動されることを特徴とする請求項1に記載の掃除機用吸込み口体。
【請求項3】
前記駆動輪が前記回転清掃体を間に置いて前記吸込みヘッドの幅方向両端部に夫々配設されていて、これら駆動輪の外周に清掃体が装着されているとともに、この清掃体が前記駆動輪の回転駆動に伴い前記被清掃面に食い付いて起きるように起毛された構成の起毛布からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の掃除機用吸込み口体。
【請求項4】
前記駆動輪が前記回転清掃体を間に置いて前記吸込みヘッドの幅方向両端部に夫々配設されていて、これら駆動輪の外周に清掃体が装着されているとともに、この清掃体が前記駆動輪の回転駆動に伴い前記被清掃面を拭く拭き部材からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の掃除機用吸込み口体。
【請求項5】
吸塵口を有した掃除機本体と、
前記吸塵口に接続された吸塵ホース、この吸塵ホースの先端部に接続された延長管、及びこの延長管の先端部に接続された請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の吸込み口体を有した吸塵風路体と、
を具備することを特徴とする電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−206212(P2011−206212A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76196(P2010−76196)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】