説明

排ガスの余熱回収装置

【課題】構造が簡単であり、凝縮エコノマイザでの乾湿サイクルを防止することができる排ガスの余熱回収装置を提供する。
【解決手段】排ガスの余熱回収装置1は、排ガスを大気中に放出する煙突10に至るダクトに、排ガスの顕熱を利用して被加熱水を加熱する乾式エコノマイザ2と、乾式エコノマイザ2の下流側に配設されて排ガスの凝縮潜熱を利用して被加熱水を加熱する凝縮エコノマイザ4とを備える。ダクトは乾式エコノマイザ2が設けられる前段側ダクト6と、前段側ダクト6に接続して排ガス流を上昇流に変える後段側ダクト8から構成され、後段側ダクト8に凝縮エコノマイザ4を設置して、凝縮エコノマイザ4の上部5近傍で排ガスが凝縮温度に達するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスの余熱回収装置に係り、特に、排ガスを大気中に放出する煙突に至るダクトに、排ガスの顕熱を利用して被加熱水を加熱する乾式エコノマイザと、乾式エコノマイザの下流側に配設されて排ガスの凝縮潜熱を利用して被加熱水を加熱する凝縮エコノマイザとを備えた排ガスの余熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラからの排ガスが流通するダクトには、排ガスの余熱を利用してボイラ給水(被加熱水)を加熱するエコノマイザが設けられている。このエコノマイザは、ボイラ給水と熱交換することにより排ガスの余熱を回収している。特に、凝縮エコノマイザは、排ガス中の水蒸気が凝縮して水になるときに放出する潜熱をも回収できる構成となっているため、主に排ガスの顕熱を回収する乾式エコノマイザと併用することによって、より一層余熱を回収することができ、ボイラ熱効率を向上させることができるようになっている。
【0003】
このような排ガスの余熱回収装置として、例えば、特許文献1には、下降流の排ガスが流通するダクト内に乾式エコノマイザ、空気予熱器および凝縮エコノマイザを順次直列に配置したボイラが提案されている。特許文献1では、乾式エコノマイザを通過した排ガス中に含まれて残留する熱量を、管型の空気予熱器および凝縮エコノマイザによって回収することができるようになっている。また、凝縮エコノマイザの主要構成部である水管群では凝縮が促進されて、部分的に僅かな濡れ部が存在するようになる。
【0004】
また、特許文献2には、下降流の排ガスが流通するダクト内に顕熱伝熱域と凝縮伝熱域とを交互に設けた凝縮エコノマイザが提案されている。具体的には、特許文献2では、ボイラ給水が流通するフィンチューブを多段に配設して、多段フィンチューブの前段を高温の顕熱伝熱域、中段を凝縮伝熱域、後段を低温の顕熱伝熱域とし、各伝熱域で排ガスの顕熱および潜熱を回収するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−118104号公報
【特許文献2】特開2001−208302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のボイラの凝縮エコノマイザは、下降流の排ガスが流通するダクト内に配置され、排ガス中の水蒸気の凝縮によって水管群に部分的な濡れ部が生じるため、水管群が湿潤域および乾燥域を有するようになる。この湿潤域と乾燥域は、ボイラ負荷の変動に伴って位置が変動する。すなわち、ボイラ負荷が変動すると、凝縮エコノマイザを通過する排ガス温度が変動するので、排ガスが凝縮温度に達する位置が変動することで、湿潤域と乾燥域との境界位置が変動する。よって、排ガスが上方から流れるために、凝縮エコノマイザの上部で乾燥域が生じ、下部では湿潤域が生じ、中間部では、乾湿を繰り返すゾーンが生じる。この中間部では、水管群が冷却と加熱とを繰り返すので、水管に応力腐食割れ(SCC:Stress Corrosion Cracking)を引き起こす可能性がある。
【0007】
また、特許文献2は、顕熱伝熱域と凝縮伝熱域とを交互に設けているため、構造が複雑で大型化する。さらに、ボイラ負荷の変動により凝縮伝熱域の位置が変動する恐れがあるため、特許文献1と同様に、乾湿を繰り返すゾーンが生じ、応力腐食割れを引き起こす可能性がある。
【0008】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、構造が簡単であり、凝縮エコノマイザでの乾湿サイクルを防止することができる排ガスの余熱回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る排ガスの余熱回収装置は、排ガスを大気中に放出する煙突に至るダクトに、前記排ガスの顕熱を利用して被加熱水を加熱する乾式エコノマイザと、該乾式エコノマイザの下流側に配設されて排ガスの凝縮潜熱を利用して被加熱水を加熱する凝縮エコノマイザとを備えた排ガスの余熱回収装置において、
前記ダクトは前記乾式エコノマイザが設けられる前段側ダクトと、該前段側ダクトに接続して排ガス流を上昇流に変える後段側ダクトから構成され、該後段側ダクトに前記凝縮エコノマイザを設置して、該凝縮エコノマイザの上部近傍で前記排ガスが凝縮温度に達するように構成したことを特徴とする。
【0010】
この排ガスの余熱回収装置は、排ガス流を上昇流に変える後段側ダクトに凝縮エコノマイザを設置して、凝縮エコノマイザの上部近傍で排ガスが凝縮温度に達するように構成しているので、排ガス中の水蒸気が凝縮エコノマイザの上部近傍で凝縮してドレン(凝縮水)となる。発生したドレンは、凝縮エコノマイザの上部近傍から下へ落下して、凝縮エコノマイザを構成する水管群と接触するので、水管の管外壁を上部から下部にわたって湿潤状態に維持する。このため、凝縮エコノマイザでの水管群における乾湿サイクルを防止することができ、応力腐食割れを防止することができる。
また、発生したドレンは、凝縮エコノマイザの上部近傍から下へ落下するとき、水管群と接触するだけでなく、上昇流の排ガスと対向となるように落下するので、凝縮エコノマイザを流れる排ガス中の水蒸気分圧を増加させることができる。このため、凝縮エコノマイザでの凝縮量が増加して凝縮効率が上がり、排ガスの余熱回収率が上がる。
【0011】
さらに、この排ガスの余熱回収装置は、乾式エコノマイザが設けられる前段側ダクトと、前段側ダクトに接続して排ガス流を上昇流に変える後段側ダクトに凝縮エコノマイザを設置した構造であるので、簡単に構成することができる。
【0012】
また、上記排ガスの余熱回収装置において、前記煙突から大気中に放出される前記排ガスの白煙を検知する白煙検知手段と、前記前段側ダクトの排ガス熱を前記凝縮エコノマイザの排ガス流れ下流側に熱伝達して、前記凝縮エコノマイザの排ガス流れ下流側の前記排ガスを加熱する加熱手段と、前記白煙検知手段の検知結果に基づいて前記加熱手段の加熱状態を制御する加熱制御手段とを備えることが好ましい。
【0013】
通常、排ガスは、排ガス中の水蒸気が冷えて水滴に変わるため、煙突からそのまま大気中へ放出すると、白煙が生じやすい。そのため、上記排ガスの余熱回収装置では、前段側ダクトの排ガス熱を凝縮エコノマイザの排ガス流れ下流側に熱伝達して、凝縮エコノマイザの排ガス流れ下流側の排ガスを加熱する。これにより、凝縮エコノマイザの排ガス流れ下流側の排ガス温度を上昇させて混合後ガスの相対湿度を低下させることができるので、白煙の発生を抑制することができる。
また、煙突から大気中に放出される排ガスの白煙を検知する白煙検知手段の検知結果に基づいて、加熱手段の加熱状態を制御することができるので、白煙が発生しないように排ガス温度を調整することができる。
【0014】
この場合、前記加熱手段は、前記乾式エコノマイザの排ガス流れ下流側で前記排ガスの余熱を伝熱層板に与えて余熱回収する熱回収部と、該熱回収部で前記伝熱層板に回収した余熱により前記凝縮エコノマイザの排ガス流れ下流側で前記排ガスを再加熱する再加熱部とを有し、前記熱回収部と前記再加熱部とを交互に位置されるように前記伝熱層板を回転させるガスヒータであり、前記加熱制御手段は、前記白煙検知手段の検知結果に基づいて、白煙濃度の増加に応じて前記ガスヒータの回転数を上げてもよい。
【0015】
これにより、前段側ダクトの排ガス熱を凝縮エコノマイザの排ガス流れ下流側に熱伝達して、凝縮エコノマイザの排ガス流れ下流側で排ガスを再加熱することができるので、白煙の発生を抑制することができる。また、凝縮エコノマイザの排ガス流れ下流側に熱伝達される前段側ダクトの排ガス熱は、熱回収部で回収されることによって得られるので、乾式エコノマイザの排ガス流れ下流側の排ガス温度を下げることができる。よって、排ガスは、凝縮エコノマイザに流入する前に温度が下げられ、凝縮エコノマイザで凝縮しやすくなる。
また、白煙検知手段の検知結果に基づいて、白煙濃度の増加に応じてガスヒータの回転数を上げるので、白煙が発生しないように排ガス温度を効率よく調整することができる。
【0016】
あるいは、前記加熱手段は、前記前段側ダクトと前記後段側ダクトとを接続し、前記前段側ダクトの前記排ガスの一部を前記凝縮エコノマイザの排ガス流れ下流側で合流させるバイパス流路と、該バイパス流路の排ガス流量を調節するダンパとから構成され、前記加熱制御手段は、前記白煙検知手段の検知結果に基づいて、白煙濃度の増加に応じて前記ダンパの開度を大きくしてもよい。
【0017】
これにより、前段側ダクトの排ガスの一部を凝縮エコノマイザの排ガス流れ下流側で合流させることができるので、凝縮エコノマイザの排ガス流れ下流側の排ガス温度を上昇させ、白煙の発生を抑制することができる。
また、白煙検知手段の検知結果に基づいて、白煙濃度の増加に応じてダンパの開度を大きくすることができるので、白煙が発生しないようにバイパス流路の排ガス流量を調節できる。よって、排ガス温度を効率よく調整することができる。
さらに、バイパス流路とダンパとから構成されている加熱手段は、構造が簡単で設備コストを低減することができる。
【0018】
また、上記排ガスの余熱回収装置において、前記凝縮エコノマイザを流れる前記排ガスに向かって水を噴霧する噴霧ノズルを備え、該噴霧ノズルにより前記排ガス中へ噴霧する水の温度が凝縮エコノマイザへの被加熱水の入口温度と出口温度との間の温度に設定されてもよい。
これにより、凝縮エコノマイザを流れる排ガスに向かって水を噴霧するので、凝縮エコノマイザを流れる排ガス中の水蒸気分圧をより一層増加させることができる。このため、凝縮エコノマイザでの凝縮量が増加して凝縮効率が上がり、排ガスの余熱回収率が上がる。
また、噴霧ノズルにより排ガス中へ噴霧する水の温度が凝縮エコノマイザへの被加熱水の入口温度と出口温度との間の温度に設定されているので、排ガスを急激に冷却させることなく、凝縮効率の低下を防止できる。
【0019】
また、前記乾式エコノマイザおよび前記凝縮エコノマイザを流れる被加熱水の流れ方向は、前記排ガスの流れ方向に対向するように設けられることが好ましい。
これにより、排ガスの流れ方向に対向するように、乾式エコノマイザおよび凝縮エコノマイザを流れる被加熱水の流れ方向を設けたので、熱回収効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、排ガス流を上昇流に変える後段側ダクトに凝縮エコノマイザを設置して、凝縮エコノマイザの上部近傍で排ガスが凝縮温度に達するように構成しているので、排ガス中の水蒸気が凝縮エコノマイザの上部近傍で凝縮してドレンとなる。発生したドレンは、凝縮エコノマイザの上部近傍から下へ落下して、凝縮エコノマイザを構成する水管群と接触するので、水管の管外壁を上部から下部にわたって湿潤状態に維持する。このため、凝縮エコノマイザでの水管群における乾湿サイクルを防止することができ、応力腐食割れを防止することができる。
また、発生したドレンは、凝縮エコノマイザの上部近傍から下へ落下するとき、水管群と接触するだけでなく、上昇流の排ガスと対向となるように落下するので、凝縮エコノマイザを流れる排ガス中の水蒸気分圧を増加させることができる。このため、凝縮エコノマイザでの凝縮量が増加して凝縮効率が上がり、排ガスの余熱回収率が上がる。
【0021】
さらに、本発明の排ガスの余熱回収装置は、乾式エコノマイザが設けられる前段側ダクトと、前段側ダクトに接続して排ガス流を上昇流に変える後段側ダクトに凝縮エコノマイザを設置した構造であるので、簡単に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態1に係る排ガスの余熱回収装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】噴霧ノズルの設置例を示す概略図である。
【図3】実施形態1に係る排ガスの余熱回収装置の変形例を示す概略構成図である。
【図4】実施形態2に係る排ガスの余熱回収装置を示す概略構成図である。
【図5】実施形態3に係る排ガスの余熱回収装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0024】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る排ガスの余熱回収装置の一例を示す概略構成図である。図2は、凝縮エコノマイザの近傍に設置される噴霧ノズルの設置例を示す概略図である。
【0025】
本発明に係る排ガスの余熱回収装置1は、ボイラからの排ガスを大気中に放出する煙突10に至るダクトに設けられる。余熱回収装置1は、図1に示すように、主として、乾式エコノマイザ2と、凝縮エコノマイザ4とにより構成される。
乾式エコノマイザ2および凝縮エコノマイザ4は、被加熱水(ボイラ水)が流通する水管を備える。水管の材質は、耐食性を向上させる観点から、オーステナイト形ステンレスの中でも特にモリブデンを添加したSUS316Lを用いることが好ましい。
【0026】
乾式エコノマイザ2は、排ガスの顕熱を利用して被加熱水を加熱するものであり、ダクトの前段側(前段側ダクト6)に設けられる。乾式エコノマイザ2で被加熱水と熱交換された排ガスは、余熱回収されるために温度が低下する。例えば、乾式エコノマイザ2に流入する排ガス温度を300℃とした場合、乾式エコノマイザ2から流出する排ガス温度は180℃まで低下する。この場合、例えば、乾式エコノマイザ2への被加熱水の入口温度は150℃、出口温度は250℃としてもよい。
【0027】
凝縮エコノマイザ4は、乾式エコノマイザ2の下流側に配設されて排ガスの凝縮潜熱を利用して被加熱水を加熱するものであり、ダクトの後段側(後段側ダクト8)に設けられる。後段側ダクト8は、前段側ダクト6に接続して排ガス流を上昇流に変える。凝縮エコノマイザ4は、その上部5近傍で排ガスが凝縮温度に達するように設置される。本実施形態において、排ガスの凝縮温度とは、58〜62℃である。例えば、凝縮エコノマイザ4の上部5近傍で排ガスが凝縮温度に達するようにするために、凝縮エコノマイザ4の上流側に排ガス温度を低下させる別の乾式エコノマイザを設けてもよい。
【0028】
なお、乾式エコノマイザ2および凝縮エコノマイザ4を流れる被加熱水の流れ方向は、排ガスの流れ方向に対向するように設けられる。
これにより、排ガスの流れ方向に対向するように、乾式エコノマイザ2および凝縮エコノマイザ4を流れる被加熱水の流れ方向を設けたので、熱回収効率を向上させることができる。
【0029】
このように、上述する排ガスの余熱回収装置1は、排ガス流を上昇流に変える後段側ダクト8に凝縮エコノマイザ4を設置して、凝縮エコノマイザ4の上部5近傍で排ガスが凝縮温度に達するように構成しているので、排ガス中の水蒸気が凝縮エコノマイザ4の上部5近傍で凝縮してドレン(凝縮水)となる。
発生したドレンは、凝縮エコノマイザの上部5近傍から下へ落下して、凝縮エコノマイザ4を構成する水管群と接触するので、水管の管外壁を上部から下部にわたって湿潤状態に維持する。このため、凝縮エコノマイザ4での水管群において乾湿サイクルを防止することができ、応力腐食割れを防止することができる。
【0030】
また、発生したドレンは、凝縮エコノマイザ4の上部5近傍から下へ落下するとき、水管群と接触するだけでなく、上昇流の排ガスと対向となるように落下するので、凝縮エコノマイザ4を流れる排ガス中の水蒸気分圧を増加させることができる。このため、凝縮エコノマイザでの凝縮量が増加して凝縮効率が上がり、排ガスの余熱回収率が上がる。
なお、ドレンは、凝縮エコノマイザ4の水管群や上昇流の排ガスと接触した後、ドレン排出口7から排出される。
【0031】
さらに、本実施形態の余熱回収装置1は、乾式エコノマイザ2が設けられる前段側ダクト6と、前段側ダクト6に接続して排ガス流を上昇流に変える後段側ダクト8に凝縮エコノマイザ4を設置した構造であるので、簡単に余熱回収装置を組立、製造することができる。
【0032】
また、排ガスの余熱回収装置1は、図2に示すように、凝縮エコノマイザ4を流れる排ガスに向かって水を噴霧する噴霧ノズル9を備えてもよい。
噴霧ノズル9は、例えば、図2(a)に示すように、凝縮エコノマイザ4の下部側(排ガス流れ上流側)に設置してもよいし、図2(b)に示すように、凝縮エコノマイザ4の内部に設置してもよい。また、図2(c)に示すように、凝縮エコノマイザ4の上部側(排ガス流れ下流側)に設置してもよい。
【0033】
これにより、凝縮エコノマイザ4を流れる排ガスに向かって水を噴霧するので、凝縮エコノマイザ4を流れる排ガス中の水蒸気分圧をより一層増加させることができる。このため、凝縮エコノマイザ4での凝縮量が増加して凝縮効率が上がり、排ガスの余熱回収率が上がる。
特に、図2(c)に示すように、噴霧ノズル9を凝縮エコノマイザ4の上部側に設置した場合は、凝縮エコノマイザ4を構成する水管11の乾燥を防止することが期待でき、全体的に水管11の管外壁を湿潤状態に維持する。よって、排ガス中の水蒸気分圧を増加させるだけでなく、凝縮エコノマイザ4での乾湿サイクルを防止することができ、効果的に応力腐食割れを防止することができる。
【0034】
なお、噴霧ノズル9により排ガス中へ噴霧する水の温度は、凝縮エコノマイザ4への被加熱水の入口温度と出口温度との間の温度に設定されている。
例えば、凝縮エコノマイザ4への被加熱水の入口温度を20℃、出口温度を60℃とした場合、図2(a)に示すように、凝縮エコノマイザ4の下部側から噴霧する水の温度を55℃としてもよい。また、図2(c)に示すように、凝縮エコノマイザ4の上部側から噴霧する水の温度を20℃としてもよい。
これにより、噴霧ノズルにより排ガス中へ噴霧する水の温度が凝縮エコノマイザへの被加熱水の入口温度と出口温度との間の温度に設定されているので、排ガスを急激に冷却させることなく、凝縮効率の低下を防止できる。
【0035】
上述の実施形態では、乾式エコノマイザ2の設置例として、下降流の排ガス流を有する前段側ダクト6を挙げたが、乾式エコノマイザ2の設置箇所は一方向流の排ガス流を有するダクト内であれば特に限定されない。
【0036】
図3は、実施形態1に係る排ガスの余熱回収装置の変形例を示す概略構成図であり、乾式エコノマイザの設置箇所の一例である。
【0037】
乾式エコノマイザ2の設置箇所の一例として、例えば、図3(a)に示す水平方向の排ガス流を有する前段側ダクト6に設置してもよいし、図3(b)に示す上昇流の排ガス流を有する前段側ダクト6に設置してもよい。
【0038】
[実施形態2]
次に、実施形態2に係る排ガスの余熱回収装置について説明する。
図4は、実施形態2に係る排ガスの余熱回収装置を示す概略構成図である。
【0039】
実施形態2に係る余熱回収装置1は、煙突から大気中に放出される白煙を抑制するようにした点を除けば、実施形態1で説明した余熱回収装置1と同一の構成である。そのため、実施形態1と同一の構成については、その詳細な説明を省略する。
【0040】
余熱回収装置1は、図4に示すように、図1で説明した構成の他に、白煙検知手段12と、加熱手段14と、加熱制御手段22とを更に備える。
【0041】
白煙検知手段12は、煙突10から大気中に放出される排ガスの白煙を検知する。白煙検知手段12は、例えば、煙突10近傍に設けられる遠隔監視カメラである。また、排ガスの光透過度を計測するセンサであってもよい。
【0042】
加熱手段14は、前段側ダクト6の排ガス熱を凝縮エコノマイザ4の排ガス流れ下流側に熱伝達して、凝縮エコノマイザ4の排ガス流れ下流側の排ガスを加熱する。
本実施形態において、加熱手段14は、熱回収部16と再加熱部18とを有するガス・ガスヒータである。ガス・ガスヒータ14は、後述する熱回収部16と再加熱部18とが交互に位置されるように伝熱層板20を回転させることで、前段側ダクト6の排ガス熱を凝縮エコノマイザ4の排ガス流れ下流側に熱伝達して、凝縮エコノマイザ4の排ガス流れ下流側の排ガスを加熱する。
【0043】
熱回収部16は、乾式エコノマイザ2の排ガス流れ下流側で排ガスの余熱を伝熱層板20に与えて余熱回収する。このように、凝縮エコノマイザ4の排ガス流れ下流側に熱伝達される前段側ダクト6の排ガス熱は、熱回収部16で回収されることによって得られるので、乾式エコノマイザ2の排ガス流れ下流側の排ガス温度を下げることができる。よって、排ガスは、凝縮エコノマイザ4に流入する前に温度が下げられ、凝縮エコノマイザ4で凝縮しやすくなる。
例えば、乾式エコノマイザ2から流出した排ガス温度を180℃とした場合、熱回収部16で熱回収された排ガスは、60〜80℃まで低下する。
【0044】
再加熱部18は、熱回収部16で伝熱層板20に回収した余熱により凝縮エコノマイザ4の排ガス流れ下流側で排ガスを再加熱する。これにより、前段側ダクト6の排ガス熱を凝縮エコノマイザ4の排ガス流れ下流側に熱伝達して、凝縮エコノマイザ4の排ガス流れ下流側で排ガスを再加熱することができるので、排ガス温度を上昇させて混合後ガスの相対湿度を低下させ、白煙の発生を抑制することができる。
例えば、凝縮エコノマイザ4から流出した排ガス温度を30〜50℃とした場合、再加熱部18で再加熱された排ガスは、80〜100℃まで上昇する。
【0045】
加熱制御手段22は、白煙検知手段12の検知結果に基づいて加熱手段(ガス・ガスヒータ)14の加熱状態を制御する。本実施形態では、加熱制御手段22は、白煙検知手段12の検知結果に基づいて、白煙濃度の増加に応じてガス・ガスヒータ14の回転数を上げてもよい。なお、加熱制御手段22は、コントローラであり、白煙検知手段12の検知結果に基づいて、ガス・ガスヒータ14の伝熱層板20を回転させるモータ24を駆動する。
このように、白煙検知手段12の検知結果に基づいて、白煙濃度の増加に応じてガス・ガスヒータ14の回転数を上げるので、白煙が発生しないように排ガス温度を効率よく調整することができる。
【0046】
[実施形態3]
次に、実施形態3に係る排ガスの余熱回収装置について説明する。
図5は、実施形態3に係る排ガスの余熱回収装置を示す概略構成図である。
【0047】
実施形態3に係る余熱回収装置1は、加熱手段として、ガス・ガスヒータ14の代わりにバイパス流路およびダンパを設けた点を除けば、実施形態2で説明した余熱回収装置1と同一の構成であるので、同一の構成についてはその詳細な説明を省略する。
【0048】
加熱手段は、図5に示すように、バイパス流路28と、ダンパ32とにより構成される。バイパス流路28は、前段側ダクト6と後段側ダクト8とを接続し、前段側ダクト6の排ガスの一部を凝縮エコノマイザ4の排ガス流れ下流側で合流させる。ダンパ32は、バイパス流路28の排ガス流量を調節する。
【0049】
この場合、加熱制御手段36は、白煙検知手段12の検知結果に基づいて、白煙濃度の増加に応じてダンパ32の開度を大きくする。なお、加熱制御手段36は、コントローラであり、白煙検知手段12の検知結果に基づいて、ダンパ32を動作させるモータ38を駆動する。
【0050】
これにより、前段側ダクト6の排ガスの一部を凝縮エコノマイザ4の排ガス流れ下流側で合流させることができるので、凝縮エコノマイザ4の排ガス流れ下流側の排ガス温度を上昇させ、白煙の発生を抑制することができる。
また、白煙検知手段12の検知結果に基づいて、白煙濃度の増加に応じてダンパ32の開度を大きくすることができるので、白煙が発生しないようにバイパス流路28の排ガス流量を調節できる。よって、排ガス温度を効率よく調整することができる。
さらに、バイパス流路28とダンパ32とから構成されている上述の加熱手段は、構造が簡単なため、設備コストを低減することができる。
【0051】
なお、バイパス流路およびダンパの設置箇所や個数は、特に限定されず、設置箇所を変えて複数設けてもよい。例えば、凝縮エコノマイザ4の上部5近傍で排ガスが凝縮温度に達するようにするために、乾式エコノマイザ2とは別の低温乾式エコノマイザを設け、低温乾式エコノマイザの下流側にバイパス流路およびダンパを設けてもよい。
具体的には、図5に示すように、上述の構成の他に、低温乾式エコノマイザ26と、バイパス流路30と、ダンパ34とをさらに備えてもよい。
【0052】
低温乾式エコノマイザ26は、乾式エコノマイザ2の下流側の前段側ダクト6内に配設され、乾式エコノマイザ2よりも低温の温度域で排ガスの余熱回収を行う。例えば、乾式エコノマイザ2から流出した排ガス温度を180℃とした場合、低温乾式エコノマイザ26で余熱回収された排ガスが60〜80℃まで低下するような温度域に低温乾式エコノマイザ26を設けてもよい。
このような低温乾式エコノマイザ26によって、乾式エコノマイザ2から流出した排ガスの残留余熱を回収することにより、凝縮エコノマイザ4に流入される排ガス温度を低下させて、凝縮エコノマイザ4の凝縮効率を高めることができる。
なお、図示しないが、熱効率を向上させる観点から、脱気器を介して、熱交換後の低温乾式エコノマイザ26の出口被加熱水を乾式エコノマイザ2の入口被加熱水として利用してもよい。
【0053】
バイパス流路30は、前段側ダクト6と後段側ダクト8とを接続し、低温乾式エコノマイザ26の下流側の排ガスの一部を凝縮エコノマイザ4の排ガス流れ下流側で合流させる。ダンパ34は、バイパス流路30の排ガス流量、即ち低温乾式エコノマイザ26で余熱回収された排ガスの流量を調節する。ダンパ34の開度は、上述のダンパ32と同様に、白煙検知手段12の検知結果に基づいて、白煙濃度の増加に応じて加熱制御手段(コントローラ)36によりモータ40を駆動して大きくする。
【0054】
これにより、凝縮エコノマイザ4の排ガス流れ下流側で合流させる前段側ダクト6の排ガスの温度を選択することができる。例えば、白煙が発生しないように凝縮エコノマイザ4の排ガス流れ下流側の排ガス温度制御を確実に行う観点から、バイパス流路30およびダンパ34を介して低温乾式エコノマイザ26の下流側の排ガスの一部を合流させてもよい。また、熱効率の低下を抑制する観点から、図5に示すように、バイパス流路28およびダンパ32を介して、低温乾式エコノマイザ26の下流側の排ガスよりも高温となる乾式エコノマイザ2の下流側の排ガスの一部を合流させてもよい。
【0055】
以上、本発明の一例において詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよい。
例えば、上述の実施形態1〜3を適宜組み合わせてもよいのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0056】
1 余熱回収装置
2 乾式エコノマイザ
4 凝縮エコノマイザ
6 前段側ダンパ
7 ドレン排出口
8 後段側ダクト
9 噴霧ノズル
10 煙突
11 水管
12 白煙検知手段
14 ガス・ガスヒータ
16 熱回収部
18 再加熱部
20 伝熱層板
22 コントローラ(加熱制御手段)
26 低温乾式エコノマイザ
28 バイパス流路
30 バイパス流路
32 ダンパ
34 ダンパ
36 コントローラ(加熱制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスを大気中に放出する煙突に至るダクトに、前記排ガスの顕熱を利用して被加熱水を加熱する乾式エコノマイザと、該乾式エコノマイザの下流側に配設されて排ガスの凝縮潜熱を利用して被加熱水を加熱する凝縮エコノマイザとを備えた排ガスの余熱回収装置において、
前記ダクトは前記乾式エコノマイザが設けられる前段側ダクトと、該前段側ダクトに接続して排ガス流を上昇流に変える後段側ダクトから構成され、該後段側ダクトに前記凝縮エコノマイザを設置して、該凝縮エコノマイザの上部近傍で前記排ガスが凝縮温度に達するように構成したことを特徴とする排ガスの余熱回収装置。
【請求項2】
前記煙突から大気中に放出される前記排ガスの白煙を検知する白煙検知手段と、前記前段側ダクトの排ガス熱を前記凝縮エコノマイザの排ガス流れ下流側に熱伝達して、前記凝縮エコノマイザの排ガス流れ下流側の前記排ガスを加熱する加熱手段と、
前記白煙検知手段の検知結果に基づいて前記加熱手段の加熱状態を制御する加熱制御手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の排ガスの余熱回収装置。
【請求項3】
前記加熱手段は、前記乾式エコノマイザの排ガス流れ下流側で前記排ガスの余熱を伝熱層板に与えて余熱回収する熱回収部と、該熱回収部で前記伝熱層板に回収した余熱により前記凝縮エコノマイザの排ガス流れ下流側で前記排ガスを再加熱する再加熱部とを有し、前記熱回収部と前記再加熱部とを交互に位置されるように前記伝熱層板を回転させるガスヒータであり、
前記加熱制御手段は、前記白煙検知手段の検知結果に基づいて、白煙濃度の増加に応じて前記ガスヒータの回転数を上げることを特徴とする請求項2に記載の排ガスの余熱回収装置。
【請求項4】
前記加熱手段は、前記前段側ダクトと前記後段側ダクトとを接続し、前記前段側ダクトの前記排ガスの一部を前記凝縮エコノマイザの排ガス流れ下流側で合流させるバイパス流路と、該バイパス流路の排ガス流量を調節するダンパとから構成され、
前記加熱制御手段は、前記白煙検知手段の検知結果に基づいて、白煙濃度の増加に応じて前記ダンパの開度を大きくすることを特徴とする請求項2に記載の排ガスの余熱回収装置。
【請求項5】
前記凝縮エコノマイザを流れる前記排ガスに向かって水を噴霧する噴霧ノズルを備え、該噴霧ノズルにより前記排ガス中へ噴霧する水の温度が凝縮エコノマイザへの被加熱水の入口温度と出口温度との間の温度に設定されることを特徴とする請求項1乃至4に記載の排ガスの余熱回収装置。
【請求項6】
前記乾式エコノマイザおよび前記凝縮エコノマイザを流れる被加熱水の流れ方向は、前記排ガスの流れ方向に対向するように設けられることを特徴とする請求項1記載の排ガスの余熱回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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